説明

飲料の低温抽出装置およびその方法

【課題】雑味等の成分の抽出量を充分に減らすことによってクリアなコーヒー・茶類などの被抽出材料の飲料を抽出できる飲料の低温抽出装置およびその方法を提供する。
【解決手段】飲料の低温抽出装置10は、抽出室20と、その抽出室20内にて被抽出材料41を保持するフィルタ40と、そのフィルタ40で抽出された抽出水31を前記抽出室20内の下方にて貯留するボトル30と、そのボトル30内の抽出水31を前記フィルタ40に注いで循環させるチューブポンプ50と、前記抽出室20内を所定の低温に制御する機能を有する抽出室冷却装置60とを備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーや茶類などの被抽出材料の飲料を低温水によって抽出する飲料の低温抽出装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コーヒーや茶などの飲料を抽出する飲料抽出装置としては、フィルタを敷いた濾過用容器の中に挽いたコーヒーあるいは茶葉を入れる。その中に高温の湯を注いでドリップして抽出するものである。高温水で抽出する場合は、挽いたコーヒーや茶葉から主成分とは別の渋み、カフェイン、タンニン、雑味と呼ばれる成分まで抽出されてしまう。雑味等の成分はコーヒー・茶類の味を悪くする成分である。これに対して水で抽出する場合は、高温水で抽出するよりも、雑味等の成分の抽出量を減らすことができる。
【0003】
最近では、その嗜好の多様化によって、水出し飲料抽出装置が考案されている。しかし、水出し飲料抽出装置の場合は、冷水であるために抽出効率が低いので、例えば一晩、すなわち5〜8時間といった長い時間がかかる。
【0004】
特許文献1〜特許文献3などの公報に開示の技術は、雑味等の成分の抽出量を減らしながら短時間で水出しするよう工夫されている。すなわち、抽出運転の初期では、高温に加熱した高温水を、限定された一定時間だけ注いで蒸らして抽出効率を高め、その後は雑味等の成分の抽出を減らすために低温水を注いで抽出するものである。
【0005】
また、他の水出し飲料抽出装置としては、水による抽出効率の低さを補うためにポンプを用いて抽出水を循環させて何回もコーヒーや茶類から抽出させる方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−154833号公報
【特許文献2】特開平9−56597号公報
【特許文献3】特許第2732629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜特許文献3などの装置では、抽出効率を高めるために、初期の抽出運転では一定時間とはいえ高温水を用いて抽出しているので、全くの水出し抽出ではない。したがって、雑味等の成分の抽出量を減らす点では、全工程が水出し抽出の場合に比べて不充分である。
【0008】
また、ポンプを用いて抽出水を循環させて何回も抽出させる水出し飲料抽出装置の場合、全工程を水出しで行うといっても、抽出運転中に温度管理(温度制御)されていない。このため、最初に冷水を用いても長時間の抽出運転中に、外気温度、すなわち室温の影響を受けて抽出水の温度が室温付近まで上がってしまう。その結果、雑味等の成分の抽出量を充分には減らすことができない。例えば、ソフトな香りとクリアな口当たりのコーヒーを得るという点で、不充分である。また、温度管理(温度制御)されていないために、室温付近に上昇した場合には、循環系に雑菌が繁殖する可能性がある。
【0009】
さらに、従来のポンプ循環方式の水出し飲料抽出装置は、ポンプを簡単に洗浄することができない。洗浄するには、常温水を用いて一定時間、循環させてポンプ内と管路内を洗浄する。その後、常温水を水抜きしてから、洗浄液を混ぜた湯を用いて循環させることによって洗浄する必要があり、洗浄するのに手間がかかる。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、雑味等の成分の抽出量を充分に減らすことによってクリアなコーヒー・茶類などの抽出できる飲料の低温抽出装置およびその方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の飲料の低温抽出装置は、抽出室と、その抽出室内にて被抽出材料を保持するフィルタと、そのフィルタで抽出された抽出水を貯留する貯留部と、その貯留部内の抽出水を前記フィルタに注いで循環させる抽出水循環装置と、前記抽出室内を所定の低温に制御する抽出室冷却装置とを備えて構成されることを特徴とする。
前記抽出室冷却装置は、冷却用熱交換器と、圧縮機と、凝縮放熱器とを備えて構成され、前記冷却用熱交換器が前記抽出室内に設けられ、前記圧縮機と凝縮放熱器とが前記抽出室の外部に設けられていることが好ましい。
【0012】
また、前記抽出水循環装置は、前記貯留部内の抽出水を吸引して前記フィルタへ注ぐためのチューブを備えたチューブポンプを有して構成されることが好ましい。
【0013】
また、前記抽出室冷却装置を制御して前記抽出室内の温度を調整する機能と、前記抽出水循環装置を制御して前記抽出水の循環水量を調整する機能と、前記抽出水の循環時間を調整する機能とを備えた制御部を有することが好ましい。前記制御部は、前記抽出水の循環水量を、前記チューブポンプにおいて前記チューブを押圧してポンピングするために備えたローラの回転速度を制御して調整する構成であることが好ましい。前記制御部は、前記チューブポンプの作動時間と停止時間を調整する機能を備えることが好ましい。
【0014】
また、前記制御部は、抽出運転の初期における前記チューブポンプの作動時間と停止時間を、その後の抽出工程における前記チューブポンプの作動時間と停止時間より長い時間に調整する機能を備え、抽出運転の初期において蒸らし工程を実行可能であることが好ましい。
【0015】
また、前記抽出室内には、前記抽出水をフィルタへ分水するための分水板が、前記フィルタの上方に設けられていることが好ましい。前記分水板は、底面に複数の貫通孔を備えた皿状に形成され、かつ前記分水板の底面を水平状態に調整する分水板調整手段が設けられていることが好ましい。前記分水板の貫通孔の周囲には、底面から所定高さに設けた周壁により取り囲まれていることが好ましい。
【0016】
また、本発明の飲料の低温抽出方法は、被抽出材料を保持するフィルタとそのフィルタで抽出された抽出水を貯留する貯留部とを備えた抽出室内を、所定の低温に制御した状態で、かつ、前記貯留部内の抽出水を前記フィルタに注いで循環させることによって飲料を抽出することを特徴とする。1℃以上で、10℃以下の所定の温度に制御して抽出することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、所定の低温に制御される抽出室内に、フィルタ、貯留部及び抽出水循環装置を設けたので、前記貯留部内の抽出水を前記フィルタに保持した被抽出材料に注いで循環させる抽出運転が、確実に低温状態の抽出室内で行われることとなる。その結果、抽出水における雑味等の成分の抽出量を充分に減らすことができ、飲料の味を向上させることができる。
【0018】
常温以下の温度、好ましくは1℃以上で10℃以下の低温状態に温度管理される抽出室内で抽出運転することが好ましく、それにより、飲料の味がより良くなると共に、抽出水の循環系における雑菌の繁殖がより少なくなる。
【0019】
また、抽出室冷却装置として、圧縮機と凝縮放熱器を抽出室の外部に設けた構成とすると、抽出室内の場所を取らずに済む。
【0020】
前記抽出水循環装置として、チューブポンプを用いた構成とすると、チューブ内を洗浄する際は、チューブのみをポンプ本体部から外して容易に洗浄することができる。また、チューブ内の汚れがひどくなったときは、簡単に新しいチューブに交換することができる。また、ポンプ本体部は抽出水に直接に接触しないので洗浄する必要がない。また、チューブはポンプ本体部自体の発熱による影響を受けにくいので、循環する抽出水に与える熱影響が少ない。
【0021】
抽出水循環装置のチューブポンプの作動時間と停止時間を調整する制御部を設けることによって、抽出初期において低温条件下で蒸らし工程を実行することができる。また、抽出工程における抽出水の循環の作動時間と停止時間を細かく設定できるので、被抽出材料の条件に合わせて抽出条件を変えることができる。あるいは、ユーザーの嗜好に合わせて抽出条件を変えることができる。
【0022】
また、フィルタの上方に分水板を設けることにより、抽出水を分水板の水平に制御した底面の複数の貫通孔からほぼ均一に下方のフィルタへ落下させることができる。その結果、フィルタ内の被抽出材料へ抽出水を満遍なく注ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施形態の飲料の低温抽出装置の概略的な正面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態の飲料の低温抽出装置の概略的な斜視図である。
【図3】図3(A)は、チューブポンプのポンプ本体部にチューブを装着する前の状態を示す斜視図であり、図3(B)は、チューブポンプのポンプ本体部にチューブを装着した状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、分水板の水平状態を調整する場合の要部断面を含む説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る飲料の低温抽出装置10は、図1および図2に示すように、抽出室20と、その抽出室20内に収容して抽出水31を貯留する貯留部を構成するボトル30と、前記ボトル30の上方に位置するフィルタ40と、前記ボトル30内の抽出水31を前記フィルタ40に注いで循環させる抽出水循環装置を構成するチューブポンプ50と、抽出室冷却装置60を有して構成される。
【0025】
前記抽出室20は、図1及び図2に示したように、手前側が開口する箱型形状をなしていると共に、前記開口を開閉する扉21が設けられており、抽出室20は室内温度を一定に保つ保冷庫となっている。
【0026】
抽出室冷却装置60は、前記抽出室20内を所定の低温に制御する。なお、ここでいう低温とは、常温以下の温度であり、特に、1°C以上10°C以下の範囲でほぼ一定の温度で制御されることが好ましい。
【0027】
抽出室冷却装置60は抽出室20内を冷却できればよく、例えば冷却用熱交換器(エバポレータ)62を抽出室20内に取り付けて構成することができる。
【0028】
抽出室冷却装置60としては、前記冷却用熱交換器62と、その冷却用熱交換器62に冷媒を供給する圧縮機63と、前記冷却用熱交換器62で熱を吸収した冷媒を放熱する凝縮放熱器(コンデンサ)64とを備えて構成することができる。圧縮機63と凝縮放熱器64は、抽出室20の外部に設置することによって、抽出室20内の場所を取らずに済む。なお、符号67は、ファンモータである。
【0029】
前記抽出室20の上部には、図1および図2に示すように、チューブポンプ50及び抽出室冷却装置60の運転を制御する制御部80が設けられている。制御部80は、前面の操作パネル81の各ボタンを操作することにより、チューブポンプ50の作動時間、停止時間、ローラ54の回転速度、抽出室冷却装置60の冷却温度等を制御する。
【0030】
前記抽出室20内の底面には、断面下向きコ字状をなすスノコ32が抽出室20の底面に載置される。前記スノコ32には抽出室20内の結露水を下方へ落下させるための貫通孔33が形成されている。さらに前記結露水を受けるためのバット34が前記貫通孔33の下方位置の抽出室20内の底面に載置される。
【0031】
ボトル30は、前記フィルタ40で抽出された抽出水31を貯留するための容器であり、前記スノコ32の上面に載置される。
【0032】
フィルタ40は、コーヒーや茶類などの被抽出材料41を保持するもので、図1に示す例では、上面開口の容器形状で、かつ底部に抽出水31をドリップするためのドリップ用貫通孔を有するフィルタ保持部材43内にろ過紙をセットしたものとして構成されている。すなわち、前記フィルタ保持部材43の内面にろ過紙を敷き、前記ろ過紙の内部に被抽出材料41を投入して用いられる。フィルタ保持部材43は、固定金具44を介して抽出室20内の所定の位置にセットされる。フィルタ40としては、フィルタ保持部材43の位置に、布フィルタをセットして用いることもできる。なお、フィルタ40に保持される被抽出材料41としては、コーヒーや茶類が典型であるが、飲料を抽出可能な材料であればこれらに限定されるものではないことはもちろんである。
【0033】
前記抽出水循環装置であるチューブポンプ50は、ボトル30内の抽出水31を吸引してフィルタ40へ注ぐためのチューブ51とポンプ本体部52を有して構成される。チューブ51はポンプ本体部52に着脱可能に設けられている。また、チューブ51は、例えば柔軟性を有する樹脂のチューブ、例えばシリコンチューブを用いることができる。
【0034】
ポンプ本体部52は、図3(A)に示すように、外周に1つないし複数の突起部53を有するローラ54が回転可能に設けられている。また、このローラ54の外周にチューブ51を押し当てるためのガイド部56が、ヒンジ部57を支点として回動自在に設けられている。符号58は、前記チューブ51を押し当てる位置でガイド部56を固定するためのノブ付きねじである。
【0035】
チューブ51をセットする際には、図3(A)に示すように、ガイド部56を持ちあげて開放する。図1に示すように、チューブ51の下端側をボトル30内の抽出水31へ投入してから、チューブ51の上端側を図3(A)の二点鎖線の位置に設置する。次いで、図3(B)に示すように、ガイド部56を回動してチューブ51をローラ54の外周に押し当ててノブ付きねじ58によってガイド部56を固定する。このとき、チューブ51の上端側の先端が、図1および図3(B)に示すように、下方の分水板70へ向けられる。
【0036】
前記ガイド部56でチューブ51をローラ54の外周に押し当てた状態で、ローラ54を回転すると、ローラ54の突起部53が回転移動する際にチューブ51をガイド部56との間で押圧しながらしごく動作をし、抽出水31を吸引する。なお、前記ローラ54を回転するモータとしてはステッピングモータを使用することが好ましい。低速から高速までの回転数を同一トルクで回転させることができるため、チューブ51のしごき動作を円滑にすることができる。
【0037】
分水板70は、抽出水31をフィルタ40へ分水するためのもので、前記フィルタ40の上方に設けられる。また、分水板70は平らな底面71を有する皿状に形成されており、前記平らな底面71には複数の貫通孔72が設けられている。
なお、上記の貫通孔72は、分水板70の底から反対方向にバーリング(打ち出し)加工により形成することが好ましい。バーリング加工により、貫通孔72を取り囲む周壁が形成される。これにより、周壁の頂部に至るまで抽出水が一旦たまるため、各貫通孔72からの滴下量をほぼ均一にすることができる。滴下量をより均一にするために、各貫通孔72を取り囲む周壁の高さは一様に揃っていることが好ましい。なお、貫通孔72を取り囲む周壁の形成手段はバーリング加工に限らず、他の加工方法により形成してもよい。
【0038】
また、分水板70は、分水板支持部材73によって支持され、その底面71の水平状態を調整可能に構成している。分水板支持部材73は、図4に示すように、フィルタ保持部材43を支持する固定金具44の上方に配置され、分水板支持部材73に適宜間隔で配置した複数の調整ねじ75の下端を固定金具44の表面に突き当てることによって支持される。従って、各調整ねじ75を回すことによって固定金具44に対する分水板支持部材73の高さ位置を調整できる。なお、前記各調整ねじ75には、ロックナットの役目をする蝶ナット76が螺合されている。したがって、複数の調整ねじ75を回すことによって分水板70の底面71の水平状態を調整し、蝶ナット76で調整位置をロックする。なお、分水板支持部材73、調整ねじ75、蝶ナット76が、分水板70の底面71を水平状態に調整する分水板調整手段を構成する。
【0039】
チューブ51の先端から抽出水31が分水板70へ注がれると、抽出水31が溜まるとともに底面71の複数の貫通孔72から下方のフィルタ40内の被抽出材料41上へ落下する。このとき、分水板70の底面71が水平状態になるように分水板70を調整することによって、抽出水31が複数の貫通孔72から均等に滴下する。その結果、抽出水31がフィルタ40内の被抽出材料41へ満遍なく注がれることとなる。
【0040】
また、前記分水板70は、外側から目視可能に設けることが望ましい。それにより、分水板70が水平であるか否か、あるいは、抽出水31が均等に滴下されているか否かを容易に確認できる。従って、例えば、図2に示したように、扉21に透明な材料からなる窓部21aを設けることが好ましい。
【0041】
次に、上記構成の飲料の低温抽出装置10における作用を説明する。まず、予め所望量の水を入れたボトル30を、抽出室20内のスノコ32の上面に載置する。また、所望量の被抽出材料41として例えば挽いたコーヒーを、フィルタ保持部材43の内面に敷いたろ過紙の内部に投入し、フィルタ保持部材43を抽出室20内におけるボトル30の上方の所定の位置にセットする。また、チューブポンプ50におけるチューブ51の下端側をボトル30内の水中へ投入して、前述したようにチューブ51の上端側をポンプ本体部52に装着する。以上のようにセッティングしてから、抽出室20の扉21を閉じる。
【0042】
次に、制御部80の操作パネル81を操作して低温抽出装置10の電源をONにする。それにより、まず、抽出室冷却装置60が稼働し、抽出室20内が所定の低温に調整される。
【0043】
次に、操作パネル81を操作して、チューブポンプ50の運転を開始する。すると、ボトル30内の水(初めは水であるが、抽出されると抽出水31になるので、以下、「抽出水」という)が、チューブ51により吸い上げられて上昇し、チューブ51の上端側の先端から下方の分水板70へ注がれる。分水板70では抽出水31が溜まる。このとき、分水板70の底面71が水平状態に調整されているので、抽出水31が底面71の複数の貫通孔72から均等に滴下し、下方のフィルタ40内の被抽出材料41へ満遍なく注がれる。
被抽出材料41を抽出した抽出水31はフィルタ40を通過してフィルタ保持部材43のドリップ用貫通孔から下方のボトル30内へドリップする。ボトル30内の抽出水31は再びチューブ51で吸い上げられて再び分水板70を経てフィルタ40へ滴下される。抽出水31がチューブポンプ50の動作によって循環して被抽出材料41の抽出が繰り返される。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、ボトル30内の抽出水31をフィルタ40に保持した被抽出材料41へ注いで循環させる抽出運転が、低温で一定温度に調整された抽出室20の内部で行われる。従って、抽出された抽出水31には、雑味等の成分の混入が少ない。
【0045】
また、常温以下の温度、好ましくは1℃以上10℃以下の範囲の低温状態に温度管理される抽出室20内で抽出運転するので、抽出水31の循環ルートであるチューブ51等における雑菌の繁殖が少ない。
【0046】
また、チューブポンプ50は、チューブ51がポンプ本体部52に着脱可能であるので、チューブ51内を洗浄する際は、チューブ51をポンプ本体部52から外して容易に洗浄することができる。また、チューブ51内の汚れがひどくなったときは、簡単に新しいチューブ51に交換することができる。また、ポンプ本体部52は抽出水31に直接に接触しないので洗浄する必要がない。また、チューブ51はポンプ本体部52自体の発熱による影響を受けにくいので、循環する抽出水31に与える熱影響が少なく、この点も雑味成分の抽出の防止に役立つ。
【0047】
なお、本実施形態の低温抽出装置10では、被抽出材料41の冷水(抽出水31)による抽出効率を上げるため、抽出水31を循環させて抽出する抽出工程の前、すなわち、抽出運転の初期に、被抽出材料41を抽出水31(冷水)に馴染ませるための蒸らし工程を設けることが好ましい。この蒸らし工程は、チューブポンプ50の作動時間(抽出水31の循環している時間)と停止時間(抽出水31が循環していない時間)を、その後の抽出工程におけるチューブポンプ50の作動時間と停止時間よりも長い時間とすることで行うことができる。なお、この場合の蒸らし工程は、高温で行うのではなく、あくまで、低温で、好ましくは1℃以上10℃以下の範囲で行うものである。
また、蒸らし工程における抽出条件と抽出工程における抽出条件(作動時間、停止時間、循環水量、抽出室内温度等の制御部80による制御条件)は、挽いたコーヒーの顆粒の大きさや油等の含有量、あるいは茶葉の状態等の被抽出材料41の条件に対応して、制御部80の操作パネル81を操作してきめ細かく設定できるようにすることが好ましい。なお、抽出水31の循環水量は、チューブポンプ50におけるローラ54の回転速度で調整することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 飲料の低温抽出装置
20 抽出室
30 ボトル
31 抽出水
40 フィルタ
41 被抽出材料
43 フィルタ保持部材
44 固定金具
50 チューブポンプ
51 チューブ
52 ポンプ本体部
53 突起部
54 ローラ
56 ガイド部
60 抽出室冷却装置
62 冷却用熱交換器
63 圧縮機
64 凝縮放熱器
70 分水板
71 底面
72 貫通孔
73 分水板支持部材
75 調整ねじ
76 蝶ナット
80 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出室と、その抽出室内にて被抽出材料を保持するフィルタと、そのフィルタで抽出された抽出水を貯留する貯留部と、その貯留部内の抽出水を前記フィルタに注いで循環させる抽出水循環装置と、前記抽出室内を所定の低温に制御する抽出室冷却装置と
を備えて構成されることを特徴とする飲料の低温抽出装置。
【請求項2】
前記抽出室冷却装置は、冷却用熱交換器と、圧縮機と、凝縮放熱器とを備えて構成され、
前記冷却用熱交換器が前記抽出室内に設けられ、前記圧縮機と凝縮放熱器とが前記抽出室の外部に設けられている請求項1記載の飲料の低温抽出装置。
【請求項3】
前記抽出水循環装置は、前記貯留部内の抽出水を吸引して前記フィルタへ注ぐためのチューブを備えたチューブポンプから構成される請求項1又は2記載の飲料の低温抽出装置。
【請求項4】
前記抽出室冷却装置を制御して前記抽出室内の温度を調整する機能と、前記抽出水循環装置を制御して前記抽出水の循環水量を調整する機能と、前記抽出水の循環時間を調整する機能とを備えた制御部を有する請求項1〜3のいずれか1に記載の飲料の低温抽出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記抽出水の循環水量を、前記チューブポンプにおいて前記チューブを押圧してポンピングするために備えたローラの回転速度を制御して調整する構成である請求項4記載の飲料の低温抽出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記チューブポンプの作動時間と停止時間を調整する機能を備える請求項1〜5のいずれか1に記載の飲料の低温抽出装置。
【請求項7】
前記制御部は、抽出運転の初期における前記チューブポンプの作動時間と停止時間を、その後の抽出工程における前記チューブポンプの作動時間と停止時間より長い時間に調整する機能を備え、抽出運転の初期において蒸らし工程を実行可能である請求項1〜6のいずれか1に記載の飲料の低温抽出装置。
【請求項8】
前記抽出室内には、前記抽出水をフィルタへ分水するための分水板が、前記フィルタの上方に設けられている請求項1〜7のいずれか1に記載の飲料の低温抽出装置。
【請求項9】
前記分水板は、底面に複数の貫通孔を備えた皿状に形成され、かつ前記分水板の底面を水平状態に調整する分水板調整手段が設けられている請求項8記載の飲料の低温抽出装置。
【請求項10】
前記分水板の貫通孔の周囲には、底面から所定高さに設けた周壁により取り囲まれている請求項9記載の飲料の低温抽出装置。
【請求項11】
被抽出材料を保持するフィルタとそのフィルタで抽出された抽出水を貯留する貯留部とを備えた抽出室内を、所定の低温に制御した状態で、かつ、前記貯留部内の抽出水を前記フィルタに注いで循環させることによって飲料を抽出することを特徴とする飲料の低温抽出方法。
【請求項12】
1℃以上で、10℃以下の所定の温度に制御して抽出する請求項11記載の飲料の低温抽出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−83446(P2011−83446A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238836(P2009−238836)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(503020242)西山工業株式会社 (6)
【出願人】(000202062)早川産機株式会社 (7)
【Fターム(参考)】