説明

飲料ディスペンサ

【課題】水槽内の冷却水を攪拌する手段に接触しないよう氷を投入し得る飲料ディスペンサを提供する。
【解決手段】冷却水を貯留する水槽22と、上下に開口するコイル状に巻回されて冷却水に浸漬した状態で水槽22に収容されて飲料が流通する飲料冷却パイプ28と、飲料冷却パイプ28の外周側に離間して設けられ、水槽22内に貯留した冷却水を氷結させる蒸発管26と、飲料冷却パイプ28を流通して冷却された飲料を注出する注出コック30とを設ける。そして、循環ポンプ34により、水槽22に貯留された冷却水を循環するよう構成すると共に、コイル状に形成した飲料冷却パイプ28の内周側に臨む氷投入口14を水槽22の上方に設けて、該氷投入口14を介して水槽22内への氷投入を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料ディスペンサに関し、更に詳細には、水槽内に配置した蒸発管の周囲に氷結させた氷塊の潜熱を用いて飲料を冷却する蓄氷式の飲料ディスペンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蓄氷式の飲料ディスペンサでは、水槽内に冷凍装置の蒸発管を浸漬して、水槽内に貯留した冷却水の一部を該蒸発管の周囲に氷結させると共に、該冷却水に浸漬させた飲料冷却パイプを飲料が流通し得るよう構成される。そして、前記飲料冷却パイプを注出コックに連通接続し、該コックを開放操作することで飲料冷却パイプを流通した飲料が注出されるよう構成されている。また、前記冷却水中には攪拌モータに接続した攪拌羽根が浸漬されており、該攪拌羽根の回転により水槽内で冷却水を循環させて水槽中の冷却水温度を均一に保つことにより、飲料冷却パイプを流通する飲料と冷却水との熱交換を効率的に行ない得るようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−170400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、蓄氷式の飲料ディスペンサでは、蒸発管の周囲に氷結する氷量がそのまま注出性能に影響する。すなわち、蒸発管に氷結した氷がなくなると、冷却水だけで飲料を冷却することになるため、飲料を連続的に注出すると冷却水温度が上昇して飲料の冷却が充分になされず、適正温度を超えた飲料の注出に繋がる。特に、飲料としてビールを注出する場合に適正温度を超えると、泡の多いビールが注出され易くなり、注出作業が難しくなると共に商品価値を損なうことにもなる。また、飲料として炭酸飲料を注出した場合には、注出時に炭酸ガスが抜けてしまい、飲料本来の風味を損なってしまう。
【0004】
このため、特許文献1に開示されるように、蒸発管の周囲に氷結した氷がなくなった場合には冷却水中に氷を直接投入し得るよう構成して、投入した氷により冷却水を冷却して適正温度の飲料を注出する飲料ディスペンサも提案されている。しかしながら、水槽内には冷却水攪拌用の攪拌羽根が設けられていることから、水槽内に投入された氷が攪拌羽根に接触して損傷する可能性がある。特に、冷却水温度を一定に保つには水槽内に多量の氷を投入する必要があるものの、多量の氷を投入すると攪拌羽根に氷が接触し易くなるため氷投入量を調整する必要がある。しかしながら、水槽内に投入した氷が攪拌羽根に接触するか否かを確認するのは困難なことから氷投入量を抑制する傾向にあり、氷を投入する頻度の増加に繋がる。
【0005】
また、前記攪拌羽根を回転駆動する攪拌モータが水槽の上部に配置されているため、氷投入時に冷却水が跳ねて攪拌モータにかかる可能性があり、攪拌モータの防水処理等のコスト増大に繋がる問題が指摘される。更に、前記攪拌モータを配置するため、氷の投入口を蒸発管の配置側に偏って形成せざるを得ず、投入した氷が蒸発管に接触して損傷するおそれも内在している。また、機械外部から蒸発管に氷結した氷量を確認できないため、氷結した氷がなくなったことに気付かずに飲料が注出される問題も指摘される。この他、冷却水の水位が低いときには、回転中の攪拌羽根が該冷却水内に空気を巻き込んで騒音を発生させる問題も内在している。
そこで、本発明は、水槽内の冷却水を攪拌する手段に接触しないよう氷を投入し得る飲料ディスペンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る飲料ディスペンサは、
冷却水を貯留する水槽と、上下に開口するコイル状に巻回され、冷却水に浸漬した状態で前記水槽に収容されて飲料が流通する飲料冷却パイプと、前記飲料冷却パイプの外周側に離間して設けられ、前記水槽内に貯留した前記冷却水を氷結させる蒸発管と、前記飲料冷却パイプを流通して冷却された飲料を注出する注出コックとを備えた飲料ディスペンサにおいて、
前記水槽に貯留された冷却水を吸い込んで、該水槽内に噴射する循環ポンプと、
前記水槽の上方に開設されて前記コイル状に形成した飲料冷却パイプの内周側に臨み、該水槽内への氷投入を可能にする氷投入口とを備えることを要旨とする。
【0007】
このように、循環ポンプにより水槽内の冷却水を攪拌・循環させるよう構成したことで、氷投入口から投入された氷が冷却水を攪拌する部材に接触して損傷することはない。また、コイル状に形成した飲料冷却パイプの内周側に氷投入口が臨むよう構成することで、氷投入口から投入された氷が蒸発管に接触するのを防止できる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記循環ポンプの冷却水吸込口は、前記コイル状に形成された飲料冷却パイプの内周側に位置するよう前記水槽の底面に設けられ、
前記循環ポンプの冷却水吐出口は、前記コイル状に形成された飲料冷却パイプの外周側で、かつ該飲料冷却パイプの最下端部より上方に位置するよう前記水槽の底面に設けられることを要旨とする。
【0009】
このように、循環ポンプの冷却水吸込口がコイル状に形成された飲料冷却パイプの内周側に位置し、冷却水吐出口が該飲料冷却パイプの外周側に位置するから、冷却水吐出口から噴射された冷却水は、飲料冷却パイプの外周に沿って上方移動した後に、飲料冷却パイプの内側に移動する。すなわち、循環ポンプで循環する冷却水が短絡するのを防止して、水槽内において冷却水を効率的に循環させ得る。また、前記循環ポンプの冷却水吐出口をコイル状に形成された飲料冷却パイプの最下端部より上方に位置させたことで、該冷却水吐出口から噴射された冷却水が、飲料冷却パイプの下側から冷却水吸込口へ移動するのをより確実に防止できる。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記冷却水吸込口に、上下方向に延在するフィルタが取り付けられ、該フィルタの側面に冷却水吸込口に連通する取込口を開設したことを要旨とする。
【0011】
このように、周面に取込口を開口したフィルタを冷却水吸込口に取り付けることで、氷投入口から投入された氷が冷却水吸込口を塞ぐのを防止でき、氷投入時であっても安定的に冷却水の循環を行なうことができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記冷却水吐出口は、前記蒸発管の内周側に、前記飲料冷却パイプに沿って、かつ等間隔で設けられることを要旨とする。
【0013】
このように、冷却水吐出口が蒸発管と飲料冷却パイプとの間において、該飲料冷却パイプに沿って等間隔で設けられるから、前記飲料冷却パイプの内部を流通する飲料が、該飲料冷却パイプの部位により過度に冷却されて凍結したり、冷却が不充分となることがなく均一に冷却される。また、蒸発管の外周に氷結した氷の形成を正常な状態に保ち、部分的に飲料冷却パイプに近接するまで氷が成長してパイプ内を流通する飲料を凍結させてしまうのを防止し得る。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記氷投入口は、前記水槽の上方に配設される天井面に凹設される蓋部材載置部に開設され、前記氷投入口を閉成する蓋部材は、該氷投入口を閉成した際に、前記蓋部材載置部内に収納されて前記天井面の上方に突出しないように構成されることを要旨とする。
【0015】
このように、天井面に凹設した蓋部材載置部に氷投入口を開設して、該氷投入口を閉成する蓋部材を蓋部材載置部に収納して上方に突出しないように構成したので、該水槽内で発生する冷却水の飛沫や、結露水等の外部への漏れ出しを防止し得る。また、天井面の上方に突出する部材がないため、各種物品を安定的に載置することができる。
【0016】
請求項6に係る発明は、前記蒸発管の周りに氷結した氷厚が一定値以下か否かを検出する氷残量検出センサと、
前記水槽内の冷却水温度を検出する水温センサと、
前記蒸発管の周りに氷結した氷厚が一定値以下になったことを前記氷残量検出センサが検出したことを表示する氷残量表示部と、
前記水温センサが検出した冷却水温度を表示する冷却水温度表示部とを設けたことを要旨とする。
【0017】
このように、蒸発管の周りに氷結した氷厚が一定値以下になったことを表示する氷残量表示部の表示と、冷却水温度を表示する冷却水温度表示部の表示により、水槽中への氷投入のタイミングを認識することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る飲料ディスペンサによれば、水槽内の冷却水を攪拌する手段に接触しないよう氷を投入し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明に係る飲料ディスペンサにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお、実施例では、飲料としてビールを注出する飲料ディスペンサを例にして説明する。
【0020】
〔第1実施例〕
図1は、第1実施例に係る飲料ディスペンサの全体構造を示すものであって、該飲料ディスペンサ10では、上方に開口する装置本体としての筐体12の内部底板12aに配設した架台20に、断熱構造の水槽22が載置されると共に、該水槽22の内部には、熱交換用の冷却水(水道水)が貯留される。また水槽22の内部には、筐体12に配置された圧縮機70や凝縮器72を含む冷凍装置24から導出する蒸発管26が、該水槽22の内周面に沿う矩形コイル状に巻回された状態で配置され、該冷凍装置24の冷却運転により水槽22に貯留されている冷却水を蒸発管26の周囲に氷結させるよう構成される。
【0021】
また、前記水槽22内には、矩形コイル状に形成した前記蒸発管26から所定距離内側に離間する位置に、上下に開口する円筒の密巻きコイル状に巻回形成された飲料冷却パイプ28が配設されている。前記飲料冷却パイプ28の一端は、装置外部に設けられた飲料タンク(図示せず)に連通接続されると共に、該飲料冷却パイプ28の他端は、筐体12の前部に配設された注出コック30に連通接続されている。この注出コック30には、該コック30を開閉する操作レバー32が傾動可能に配設されており、該操作レバー32を傾動することで飲料タンクの飲料が飲料冷却パイプ28を介して注出コック30に供給され、該コック30から図示しないコップ等の容器に注出されるようになっている。すなわち、前記蒸発管26により冷却された冷却水中の飲料冷却パイプ28内を飲料が流通することで、冷却された飲料が注出されるようになっている。また、前記筐体12の前部には、前記注出コック30の上部位置に、前記蒸発管26の周りに氷結した氷厚を表示する氷残量表示部60、および水槽22内の冷却水の温度を表示する冷却水温度表示部64(何れも後述)が設けられている。
【0022】
図1に示すように、前記筐体12の天井面12bには、前記円筒コイル状に形成した飲料冷却パイプ28の上方位置に氷投入口14が上下に開口するよう開設されると共に、蓋部材18により該氷投入口14を開閉し得るよう構成されている。すなわち、前記蓋部材18を取り外した状態で、前記氷投入口14を介して水槽22内に氷を投入し得るようになっている。また、前記筐体12の天井面12bには、前記氷投入口14から下方(水槽22側)へ延出する筒状の氷ガイド16が形成されており、氷投入口14から投入される氷をコイル状に形成した前記飲料冷却パイプ28の内周側に落下案内するよう構成されている。
【0023】
図1に示すように、前記架台20には、冷却水吸込口36および冷却水吐出口38を介して前記水槽22内に連通する循環ポンプ34が配設されており、該循環ポンプ34により水槽22内の冷却水を攪拌(循環)するよう構成されている。ここで、前記循環ポンプ34の冷却水吸込口36は、円筒コイル状に形成した前記飲料冷却パイプ28の内周側に位置するよう前記水槽22の底面22aに形成される。また、前記水槽22の底面22aには、前記飲料冷却パイプ28と蒸発管26との間に、上方(水槽22内)に突出する複数(第1実施例では8つ)のノズル40が形成されており、各ノズル40の先端に前記冷却水吐出口38が開設されている。ここで、前記ノズル40は、円筒コイル状に形成された前記飲料冷却パイプ28の最下端部より上方まで延在するよう形成され、循環ポンプ34の作動により、冷却水吸込口36を介して飲料冷却パイプ28の内周側の冷却水を吸い込むと共に、吸い込んだ冷却水を、冷却水吐出口38を介して飲料冷却パイプ28および蒸発管26の間へ向けて噴射するようになっている。
【0024】
前記冷却水吸込口36には、図1または図2に示すように、上下方向に延在する円柱状フィルタ(フィルタ)42が着脱可能に取り付けられる。前記円柱状フィルタ42は、前記水槽22の底面22aに設けた支持部(図示せず)に着脱可能に配設される円筒状の本体44と、該本体44の上端縁に周方向に離間するよう設けられて上方へ延在する複数(第1実施例では4本)の支持柱46と、該支持柱46の上端部に設けられた円板状の蓋体48と、当該支持柱46の補強部50とから構成されている。すなわち、前記各支持柱46、蓋体48および補強部50により画成される開口部(取込口)52を介して、水槽22内の冷却水が冷却水吸込口36から循環ポンプ34に吸い込まれるようになっている。また、前記蓋体48の上面には、上方へ突出する操作片48aが突設されており、該操作片48aを介して円柱状フィルタ42を水槽22に対して着脱操作し得るよう構成される。
【0025】
また、前記蒸発管26の近傍には、蒸発管26の周囲に氷結した氷を検出する一対の氷センサ54,54が設けられており、該氷センサ54,54の検出結果に応じて、図示しない制御手段が前記冷凍装置24を運転制御するよう構成されている。ここで、前記氷センサ54,54は電極センサであって、冷却水に接触して導通することで氷がないことを検出し、氷結した氷に覆われて導通しなくなることで氷があることを検出するものである。そして、前記一対の氷センサ54,54が冷却水に接触して導通(オン)した場合に前記冷凍装置24が動作するようになっている。すなわち、前記氷センサ54,54の検出結果に基づいて制御手段が冷凍装置24を運転制御することで、蒸発管26の周囲に氷結する氷の厚みを一定に維持するようになっている。
【0026】
また、前記氷センサ54,54より蒸発管26に近接した位置には、氷結した氷の最小量を検出する氷残量検出センサ56が設けられ、該氷残量検出センサ56の検出結果を、前記筐体12の前部に設けた氷残量表示部60に表示するよう構成されている。なお、前記氷残量検出センサ56は、前記氷センサ54,54と同様に電極センサを用いている。第1実施例では、蒸発管26の周りに氷結した氷で氷残量検出センサ56が覆われて非導通の状態(オフ)では、氷残量表示部60における「正常」表示に対応するランプ62が点灯し、氷残量検出センサ56が冷却水に接触して導通する状態(オン)では、氷残量表示部60における「氷なし」表示に対応するランプ62が点灯するよう構成される(図3参照)。
【0027】
すなわち、飲料の注出等により蒸発管26の周りに氷結した氷が溶けて氷厚が一定値以下になった場合に、前記氷残量検出センサ56が氷残量表示部60の「氷なし」に対応するランプ62を点灯するようになっている。なお、氷残量表示部60の表示態様は、これに限られるものではなく、少なくとも蒸発管26の周りに最小厚の氷がないことを表示し得る態様であればよい。
【0028】
更に、前記水槽22内には、冷却水温度を検出する水温センサ58が設けられており、該水温センサ58が検出する水温を基準に、前記制御手段が冷凍装置24を運転および運転停止する。すなわち、前記水温センサ58が検出する冷却水温度が設定値以上になると前記冷凍装置24が作動し、冷却水温度が設定値を下回ると冷凍装置24が停止するようになっている。なお、前記冷凍装置24の運転・運転停止を切換える冷却水の設定温度は、注出される飲料の適正温度より一定値低く設定される。また、前記水温センサ58は、蒸発管26の周りに氷結した氷で覆われない位置に配設してある。
【0029】
〔第1実施例の作用〕
次に、前述した第1実施例に係る飲料ディスペンサの作用につき説明する。前記飲料ディスペンサ10では、前記冷凍装置24が冷却運転を開始すると、前記蒸発管26に冷媒が循環供給される。この冷媒が循環供給されることにより、該蒸発管26が次第に冷却され、前記水槽22に貯留されている冷却水の一部が蒸発管26の表面から氷結を開始する。この蒸発管26の表面で成長する氷は、相互に連結し合うことにより筒状の氷塊となり、その潜熱によって水槽22に貯留された冷却水を冷却する。また冷凍装置24の運転開始から所定のタイミングで前記循環ポンプ34が運転されると、水槽22に貯留されている冷却水が氷の周りを巡回して効率的に冷却される。そして、この冷却水により、前記飲料冷却パイプ28内の飲料水が冷却される。
【0030】
ここで、前記循環ポンプ34の冷却水吸込口36をコイル状に形成された飲料冷却パイプ28の内周側に位置するよう設けると共に、冷却水吐出口38を該飲料冷却パイプ28の外周側に位置するよう設けてあるから、冷却水吐出口38から噴射された冷却水は、飲料冷却パイプ28と蒸発管26との間を上方移動し、飲料冷却パイプ28の上端部から内周側に移動する。すなわち、循環ポンプ34の運転により冷却水吐出口38から吹き出された冷却水が冷却水吸込口36に短絡するのを防止し得るから、水槽22内において冷却水を効率的に循環させ得ると共に、循環により冷却水が蒸発管26の周囲に氷結した氷と効率よく熱交換して冷却される。ここで、コイル状に形成された前記飲料冷却パイプ28の最下端部より上方まで延在するよう水槽22の底面22aに設けたノズル40の先端部に、前記循環ポンプ34の冷却水吐出口38を設けたことで、該冷却水吐出口38から噴射された冷却水が飲料冷却パイプ28の下側から冷却水吸込口36側に移動するのをより確実に防止できる。
【0031】
また、第1実施例では、蒸発管26を矩形コイル状に巻回すると共に、飲料冷却パイプ28を円形コイル状に巻回するよう構成したことで、蒸発管26と飲料冷却パイプ28との間に画成される冷却水の流通領域を大きく確保できる。従って、蒸発管26と飲料冷却パイプ28との間に冷却水を噴射するよう構成しても、冷却水を水槽22内で効率よく循環することができる。
【0032】
また、第1実施例の飲料ディスペンサ10では、筐体12の天井面12bに氷投入口14を形成し、該氷投入口14を着脱可能な蓋部材18で閉成するよう構成してある。従って、飲料の注出を連続的に行なって蒸発管26の周囲に氷結した氷が融解して、冷却水と氷との熱交換が不十分になった場合には、蓋部材18を取り外して氷投入口14から水槽22内に氷を投入することにより冷却水の冷却を図り得るから、飲料を適正温度で注出することができる。このとき、コイル状に形成した飲料冷却パイプ28の内周側に氷投入口14が臨むよう構成することで、氷投入口14から投入された氷を飲料冷却パイプ28の内周側に投入でき、投入された氷が蒸発管26に接触する不具合を防止できる。また第1実施例では、前記氷投入口14に氷ガイド16を設けて、該氷投入口14から投入される氷を飲料冷却パイプ28の内周側に案内するよう構成してあるから、投入された氷が蒸発管26に接触するのをより確実に阻止し得る。
【0033】
ここで、前述のように水槽22内の冷却水は、前記循環ポンプ34の運転により攪拌・循環される。すなわち、冷却水中に攪拌羽根等の攪拌部材が配設されていないから、氷投入口14から投入された氷の攪拌部材に対する接触による不具合を気にする必要がなく、作業性の向上が図られる。また、水槽22内の冷却水の水位が低下した場合であっても、攪拌部材によって冷却水が攪拌・循環されるわけではないから、該攪拌・循環に係る空気の巻き込みに由来する騒音を防止し得る。
【0034】
更に、周面に取込口を開口した円柱状フィルタ42を前記冷却水吸込口36に取り付けたことで、投入された氷が循環ポンプ34の冷却水吸込口36を塞ぐことはない。従って、水槽22内に氷を投入した状態でも、循環ポンプ34が水槽22内の冷却水を安定して循環させることができるから、水槽22内の冷却水温度が均一に保持される。また、前記飲料冷却パイプ28の内周側に前記円柱状フィルタ42を配設することで、前記氷投入口14を介して円柱状フィルタ42を着脱することができ、円柱状フィルタ42を容易にメンテナンスすることができる。特に、第1実施例では、円柱状フィルタ42の上端部に操作片48aを設けたから、該フィルタ42の着脱作業性が一層向上する利点がある。
【0035】
また、第1実施例では、氷残量検出センサ56を設けて前記蒸発管26の周りに氷結した氷の最小量を検出するよう構成し、該蒸発管26の周りに氷結した氷の氷厚が一定値以下になったことを氷残量検出センサ56が検出した場合に、筐体12の前部に設けた氷残量表示部60に表示すると共に、水槽22内の冷却水温度を検出する水温センサ58を設けて、筐体12の前部に設けた水温表示部に該水温センサ58の検出温度を表示するよう構成してある。従って、飲料ディスペンサ10からの飲料注出に際して、前記氷残量表示部60および冷却水温度表示部64の表示を確認することで、前記水槽22内への氷投入タイミングを認識することが可能となる。
【0036】
すなわち、前記氷残量表示部60において「氷なし」に対応するランプ62が点灯し、かつ冷却水温度表示部64の表示が適正温度を超えている場合には、水槽22内に氷を投入する必要が認識され、氷残量表示部60において「氷なし」に対応するランプ62が点灯した状態で冷却水温度表示部64の表示が設定温度範囲内の場合には、飲料注出の頻度・量等に応じて水槽22内に氷を投入するかを適宜決定することができる。このように、前記氷残量表示部60および冷却水温度表示部64の表示に従って氷投入タイミングを適宜決定することで、水槽22内の氷量を確認することなく適正温度の飲料を注出でき、作業負担を軽減し得ると共に、注出飲料が無駄になるのを防止し得る。
【0037】
〔第2実施例〕
図4は、第2実施例に係る飲料ディスペンサ10の氷投入口14付近を拡大して示すものである。第2実施例の飲料ディスペンサ10は、氷投入口14および蓋部材18の構造を除いて第1実施例の飲料ディスペンサ10と同様の構造を有しているので、同様の構造を有している部分については説明を省略する。
【0038】
第2実施例における天井面12bには、前記円筒コイル状に形成した飲料冷却パイプ28の上方位置に円形の蓋部材載置部15が凹設されている(図4(a))参照。そして、前記該蓋部材載置部15の底面には、飲料冷却パイプ28の内周側に氷を投入し得る上方位置に氷投入口14が上下に開口するよう開設されると共に、蓋部材18により該氷投入口14を開閉し得るよう構成されている。また、前記蓋部材載置部15には、前記氷投入口14から下方(水槽22側)へ延出する筒状の氷ガイド16が形成されている。なお、本第2実施例では、蓋部材載置部15の形状を円形としているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
前記蓋部材18は、筒状の前記氷ガイド16内に嵌合する蓋部18aと、該蓋部18aの外周上端部から外方に延出し、前記蓋部材載置部15の底面に載置される載置部18bと、該蓋部18aの中心部に上方において突設される取手18cとから構成されている。ここで、前記蓋部18aは、上方に開口した有底円筒形状に形成され、筒状の前記氷ガイド16の内径と略同等に設定された外径を備えている。すなわち、蓋部材18で氷投入口14を閉成することで、該氷ガイド16の内周面と蓋部18aの外周面とが摺接して略密閉構造となるように構成されて、飲料ディスペンサ10が作動する際の水槽22内で発生する冷却水の飛沫や、結露水等が天井面12b上に漏れ出すことはない。
【0040】
前記取手18cは、蓋部材18が氷投入口14を閉成した際に、天井面12bから上に突出しないように高さ寸法が設定される。すなわち、蓋部材18によって氷投入口14が閉成された際に、図4(b)に示す如く、蓋部材18全体が前記天井面12bに凹設された蓋部材載置部15内に収納されて、前記天井面12bより上に突出する部材がなくなり、該天井面12b上に各種物品を安定的に載置可能となるため、飲料ディスペンサ10の使い勝手が向上する。また、不規則な出っ張りがなくなるため、飲料ディスペンサ10は外観的にも良好なものとなる。更に、前記取手18cを大型化し得るので、前記蓋部材18の取り外しを容易になし得る。
【0041】
〔変更例〕
本発明は前述した実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
【0042】
各実施例では、先端に冷却水吐出口38が開設されている各ノズル40は、図2に示す如く、前記飲料冷却パイプ28と蒸発管26との間に、水槽22の前方、後方、両側方の略中央部付近に近接して夫々2本づつ計8本が形成されているが、これに限られるものではない。例えば、図5に示す如く、複数(本変更例では8本)のノズル40を、前記飲料冷却パイプ28と蒸発管26との間に、該飲料冷却パイプ28に沿った円上に位置するように等間隔で形成するようにしてもよい。このようにノズル40を形成することで、水槽22内の冷却水が前記飲料冷却パイプ28の円周方向に均一に流れるため、前記蒸発管26の周囲に氷結される氷が前記飲料冷却パイプ28の外形状に沿った形状となり、該氷が部分的に飲料冷却パイプ28に接触するまで成長したり、過度に溶けてしまうことを防止し得る。すなわち、前記飲料冷却パイプ28の内部を流通する飲料が、該飲料冷却パイプ28の部位により過度に冷却されて凍結したり、冷却が不充分となることがない。従って、前記飲料冷却パイプ28の冷却均一性が高まり、該飲料冷却パイプ28内を流通する飲料を効率的に冷却し得る。
【0043】
各実施例では、飲料冷却パイプを円筒の密巻コイル状に巻回するよう構成したが、これに限られるものではなく、コイル状に形成した飲料冷却パイプの上部位置において隣接するパイプ間に隙間を形成するようにしてもよい。この場合には、冷却水の流通空間が確保されるため、水槽内に氷を投入した状態における冷却水の攪拌効率をより向上し得る。
【0044】
各実施例では、氷投入口に対して円筒状の氷ガイドを設けるようにしたが、水槽側に向かうにつれて縮径する擂鉢状に氷ガイドを形成すれば、該氷投入口から投入された氷を安定して飲料冷却パイプの内周側に案内できる。
【0045】
各実施例は、蒸発管を矩形コイル状に巻回するよう構成したが、円形コイル状に巻回するようにしてもよく、また飲料冷却パイプの外周側に離間する位置に蛇行状に設けることも可能である。
【0046】
各実施例では、循環ポンプの冷却水吸込口に取り付けたフィルタを円柱状に形成したが、これに限られるものではなく、水槽の底面から所定高さ位置まで延在する長さ寸法を有する形状であれば、任意の形状に形成することができる。また、フィルタの取込口の開口形状に関しても、実施例のものに限られるものではなく、メッシュ状に開口するよう形成してもよく、水槽内の冷却水が流通し得る開口形状であればよい。
【0047】
各実施例では、ビールを注出する構成の飲料ディスペンサを例に挙げて説明したが、注出する飲料の種類は何ら限定されるものではない。また、注出コックに濃縮飲料等を別途供給し、冷却された飲料水で濃縮飲料を希釈するよう構成した飲料ディスペンサに対しても、本発明を好適に採用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施例に係る飲料ディスペンサを示す縦断側面図である。
【図2】第1実施例に係る水槽の横断平面図である。
【図3】第1実施例に係る表示部を示す概略図である。
【図4】第2実施例に係る飲料ディスペンサの氷投入口付近を拡大し、(a)氷投入口が開放している状態と、(b)蓋部材が氷投入口を閉成した状態とを示す縦断側面図である。
【図5】変更例に係る水槽の横断平面図である。
【符号の説明】
【0049】
12a 天井面,14 氷投入口,15 蓋部材載置部,18 蓋部材,22 水槽
22a 底面,26 蒸発管,28 飲料冷却パイプ,30 注出コック
34 循環ポンプ,36 冷却水吸込口,38 冷却水吐出口
42 円柱状フィルタ(フィルタ),52 開口部(取込口),56 氷残量検出センサ
58 水温センサ,60 氷残量表示部,64 冷却水温度表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水を貯留する水槽(22)と、上下に開口するコイル状に巻回され、冷却水に浸漬した状態で前記水槽(22)に収容されて飲料が流通する飲料冷却パイプ(28)と、前記飲料冷却パイプ(28)の外周側に離間して設けられ、前記水槽(22)内に貯留した前記冷却水を氷結させる蒸発管(26)と、前記飲料冷却パイプ(28)を流通して冷却された飲料を注出する注出コック(30)とを備えた飲料ディスペンサにおいて、
前記水槽(22)に貯留された冷却水を吸い込んで、該水槽(22)内に噴射する循環ポンプ(34)と、
前記水槽(22)の上方に開設されて前記コイル状に形成した飲料冷却パイプ(28)の内周側に臨み、該水槽(22)内への氷投入を可能にする氷投入口(14)とを備える
ことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項2】
前記循環ポンプ(34)の冷却水吸込口(36)は、前記コイル状に形成された飲料冷却パイプ(28)の内周側に位置するよう前記水槽(22)の底面(22a)に設けられ、前記循環ポンプ(34)の冷却水吐出口(38)は、前記コイル状に形成された飲料冷却パイプ(28)の外周側で、かつ該飲料冷却パイプ(28)の最下端部より上方に位置するよう前記水槽(22)の底面(22a)に設けられる請求項1記載の飲料ディスペンサ。
【請求項3】
前記冷却水吸込口(36)には、上下方向に延在するフィルタ(42)が取り付けられ、該フィルタ(42)の側面に冷却水吸込口(36)に連通する取込口(52)を開設した請求項2記載の飲料ディスペンサ。
【請求項4】
前記冷却水吐出口(38)は、前記蒸発管(26)の内周側に、前記飲料冷却パイプ(28)に沿って等間隔で設けられる請求項2または3記載の飲料ディスペンサ。
【請求項5】
前記氷投入口(14)は、前記水槽(22)の上方に配設される天井面(12b)に凹設される蓋部材載置部(15)に開設され、前記氷投入口(14)を閉成する蓋部材(18)は、該氷投入口(14)を閉成した際に、前記蓋部材載置部(15)内に収納されて前記天井面(12b)の上方に突出しないように構成される請求項1〜4の何れか一項に記載の飲料ディスペンサ。
【請求項6】
前記蒸発管(26)の周りに氷結した氷厚が一定値以下か否かを検出する氷残量検出センサ(56)と、
前記水槽(22)内の冷却水温度を検出する水温センサ(58)と、
前記氷残量検出センサ(56)の検出に基づいて前記蒸発管(26)の周りに氷結した氷厚が一定値以下になったことを表示する氷残量表示部(60)と、
前記水温センサ(58)が検出した冷却水温度を表示する冷却水温度表示部(64)とを設けた請求項1〜5の何れか一項に記載の飲料ディスペンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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