説明

飲料ディスペンサ

【課題】軟質の原水容器を飲料ディスペンサで使用する場合に、容器内の飲料水を自然に使い切ることができるようにすることである。
【解決手段】容器接続部10の通水筒12の内部を、通水孔14aが形成され、通水管16が接続される通水部14と、通水部14に開口する通気用小孔15aが形成された通気部15とに筒状の仕切り壁13で仕切り、通気部15に連通する基部12aの開口15bに、低温タンク2内へ垂下された通気管17を接続して、その先端に低温タンク2内の水位の低下で開く開閉弁19bを設けることにより、原水容器A内の飲料水が残り少なくなって、低温タンク2内の水位が低下したままとなったときに、開閉弁19bが開く通気管17から通気部15の通気用小孔15aを通して、低温タンク2内の空気を原水容器A内へ導入し、原水容器A内の負圧を解消して、残った飲料水を落下させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水容器に充填された飲料水をタンクに貯留して抽出バルブから抽出する飲料ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水が充填された原水容器の抽出口を上部で下向きに接続する容器接続部と、この容器接続部の下方に設けられ、原水容器内の飲料水を落下させて貯留するタンクと、このタンクに貯留された飲料水を抽出する抽出バルブとを備えた飲料ディスペンサでは、原水容器として、側壁部に柔軟性を持たせた軟質の原水容器を使用する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この側壁部に柔軟性を持たせた軟質の原水容器は、空容器を折り畳んで効率よく運送できるとともに、使用時には、充填された飲料水の落下に伴って大気圧により縮み、その内部に空気が流入しないので、空気中の細菌等で汚染されない利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−131277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した軟質の原水容器を飲料ディスペンサで使用する場合は、容器内の飲料水が残り少なくなると、折り重なるように縮んだ側壁部の剛性が大きくなって、それ以上側壁部が縮まなくなり、容器内が負圧となって、残った飲料水が落下しないようになる。このため、飲料水を完全に使い切ることができない問題がある。
【0006】
なお、容器内に残った飲料水は、原水容器を持ち上げて抽出口を容器接続部から浮かし、原水容器を傾けて負圧となった容器内へ空気を導入すれば排出できるが、高い位置で原水容器を安定して持ち上げることは難しく、抽出口から排出される飲料水が、容器接続部の周囲に飛散する問題もある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、軟質の原水容器を飲料ディスペンサで使用する場合に、容器内の飲料水を自然に使い切ることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、飲料水が充填された原水容器の抽出口を上部で下向きに接続する容器接続部と、この容器接続部の下方に設けられ、前記原水容器内の飲料水を落下させて貯留するタンクと、このタンクに貯留された飲料水を抽出する抽出バルブとを備え、前記容器接続部に、前記接続される原水容器の抽出口に上向きに挿入され、原水容器内の飲料水を通す通水孔を形成した下端側が開口する通水筒を設け、この通水筒の下端側の開口に前記タンク内へ飲料水を落下させる通水管を接続して、この通水管の先端に、タンク内の水位が低下したときに開く開閉弁を設け、前記原水容器として、側壁部に柔軟性を持たせて、充填された飲料水の落下に伴って大気圧により縮む軟質の原水容器を使用する飲料ディスペンサにおいて、前記容器接続部の通水筒の内部を、前記通水孔が形成され、下端側の開口に前記通水管が接続される通水部と、この通水部または前記原水容器の抽出口内に開口する通気用小孔を形成した通気部とに、横断面を分割するように仕切り、この通気部の下端側の開口に、前記タンク内へ垂下される通気管を接続して、この通気管の先端に、タンク内の水位が低下したときに開く開閉弁を設けた構成を採用した。
【0009】
すなわち、容器接続部の通水筒の内部を、通水孔が形成され、下端側の開口に通水管が接続される通水部と、この通水部または原水容器の抽出口内に開口する通気用小孔を形成した通気部とに、横断面を分割するように仕切り、この通気部の下端側の開口に、タンク内へ垂下される通気管を接続して、この通気管の先端に、タンク内の水位が低下したときに開く開閉弁を設けることにより、残り少なくなった容器内の飲料水が落下せずに、タンク内の水位が低下したままとなったときに、開閉弁が開く通気管から通気部の通気用小孔を通して、タンク内の空気を容器内へ導入し、容器内の負圧を解消して、残った飲料水を落下させ、容器内の飲料水を自然に使い切ることができるようにした。また、容器内へ導入されるタンク内の空気は外気よりも清浄であるので、容器内を汚染する恐れも少ない。
【0010】
前記残り少なくなった容器内の飲料水が落下せずに、タンク内の水位が低下したままとなって通気管の開閉弁が開いたときに、タンク内の空気が通気管から通気部へ流入する理由は明確ではないが、残り少なくなった容器内の飲料水が落下せずに、容器内から落下しようとする水圧と大気圧がバランスした状態では、容器内と小さな通気用小孔で連通する通気部は、容器内との間に圧力変動を生じやすく、この圧力変動による大気圧とのわずかな圧力バランスの崩れによって、通気部内の飲料水が落下し、通気管から通気部へタンク内の空気が流入するためと考えられる。通気部へ流入した空気は容器内へ気泡となって浮上し、容器内の負圧を解消する。なお、容器内の飲料水が十分にある定常状態で、タンク内の水位が低下して通気管の開閉弁が開くときは、通気部内に飲料水が充満した状態で、通気用小孔から通気部への流入量に見合った量の飲料水が少しずつ通気管の先から落下し、通気部へ空気が流入することはない。また、通気管に開閉弁を設けたのは、通水管の開閉弁が閉まっているときに、通気管から飲料水が少しずつ落下して漏れるのを防止するためである。
【0011】
前記通気用小孔の孔面積は、前記通気部の横断面積の1/5以下、好ましくは1/10以下とするのが望ましい。
【0012】
前記通気用小孔の孔径を3mm以下、好ましくは1.5mm以下とするのが望ましい。
【0013】
前記通気管を、前記通気部の下端側の開口から前記タンク内へ真直に垂下されたものとすることにより、通気管に流入する空気をスムーズに通気部へ送り込むことができる。
【0014】
前記通水管と通気管の開閉弁を、前記タンク内に浮かべた共用のフロートで開閉することにより、開閉弁用の部品点数を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の飲料ディスペンサは、容器接続部の通水筒の内部を、通水孔が形成され、下端側の開口に通水管が接続される通水部と、この通水部または原水容器の抽出口内に開口する通気用小孔を形成した通気部とに、横断面を分割するように仕切り、この通気部の下端側の開口に、タンク内へ垂下される通気管を接続して、この通気管の先端に、タンク内の水位が低下したときに開く開閉弁を設けたので、容器内の飲料水が少なくなってタンク内の水位が低下したときに、開閉弁が開く通気管から通気部の通気用小孔を通して、タンク内の空気を容器内へ導入し、容器内の負圧を解消して、残った飲料水を落下させ、容器内の飲料水を自然に使い切ることができる。また、容器内へ導入されるタンク内の空気は外気よりも清浄であるので、容器内を汚染する恐れも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態の飲料ディスペンサを示す縦断面図
【図2】図1の上部を拡大して示す縦断面図
【図3】aは図2の容器接続部を示す縦断面図、bはaのIII−III線に沿った断面図
【図4】第2の実施形態の飲料ディスペンサの上部を拡大して示す縦断面図
【図5】aは図4の容器接続部を示す縦断面図、bはaのV−V線に沿った断面図
【図6】図4の変形例を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。図1乃至図3は、第1の実施形態を示す。この飲料ディスペンサは、図1に示すように、ケーシング1の上面に、飲料水が充填され、側壁部に柔軟性を持たせた軟質の原水容器Aの抽出口を下向きに接続する容器接続部10が設けられ、その下方に低温タンク2と高温タンク3が設けられており、ケーシング1の前面に設けられた冷水と温水の各抽出バルブ4a、4bが、それぞれ抽出パイプ5a、5bで、低温タンク2の底と高温タンク3の天井に接続されている。軟質の原水容器Aは外周を支持枠Bで支持され、充填された飲料水の落下に伴って、図中に一点鎖線で示すように、大気圧により縮むようになっている。
【0018】
前記低温タンク2の下部外周には冷却装置6が設けられ、冷却装置6よりも上方に突出する漏斗状の流出口7に、高温タンク3への接続パイプ8が接続されており、冷却装置6で冷却された底部の冷水が抽出パイプ5aで抽出され、比較的温かい飲料水が流出口7から高温タンク3へ供給される。高温タンク3には加熱装置9が設けられ、接続パイプ8から供給される飲料水を加熱して、低温タンク2からの水圧によって、加熱された温水を天井に接続された抽出パイプ5bから抽出する。
【0019】
図1および図2に示すように、前記容器接続部10は、原水容器Aの抽出口が嵌め込まれる凹部11が形成され、凹部11の中心の孔に、原水容器Aの抽出口に上向きに挿入される通水筒12が、上方へ突出するように嵌め込まれている。図2は、原水容器A内の飲料水が残り少なくなって、原水容器Aの側壁部が折り重なるように縮んだ状態を示す。
【0020】
図3(a)、(b)に示すように、前記通水筒12は、筒状の仕切り壁13で、通水孔14aが形成された外側の通水部14と、通水部14に開口する通気用小孔15aが形成された内側の通気部15とに、横断面を分割するように内部を仕切られている。通水筒12の下部には、凹部11の下面に係止されるように拡径された基部12aが設けられ、仕切り壁13は基部12aの底まで到達している。通気用小孔15aは孔径が1.5mm以下で、孔面積は通気部15の横断面積の1/10以下とされている。なお、通水孔14aは孔径が10mmで、孔面積は通水部14の横断面積とほぼ等しくされている。
【0021】
図2および図3(a)、(b)に示すように、前記通水筒12の基部12aの側面には、通水部14に連通する開口14bが設けられ、開口14bに接続された通水管16が、屈曲して低温タンク2内へ垂下されている。また、基部12aの底中心には、仕切り壁13の内側の通気部15に連通する開口15bが設けられ、開口15bに接続された通気管17が、低温タンク2内へ真直に垂下されている。通水管16と通気管17の先端には、それぞれ低温タンク2内に浮かぶフロート18の動きによって、水位が低下したときに開く開閉弁19a、19bが設けられている。
【0022】
図1に示したように、前記原水容器A内の飲料水が十分にある定常状態では、低温タンク2内の水位が低下すると、開閉弁19aが開いて原水容器A内の飲料水が通水部14の通水孔14aから通水管16を通して補給され、水位が一定に保たれる。このとき、開閉弁19bも開いて、通気部15の通気用小孔15aから通気管17を通しても、飲料水が少し落下する。
【0023】
図2に示したように、前記原水容器A内の飲料水が残り少なくなって、その側壁部が折り重なるように縮み、それ以上側壁部が縮まなくなると、原水容器A内が負圧となって通水管16からの飲料水の落下が止まり、低温タンク2内の水位が低下したままとなり、通水管16と通気管17の開閉弁19a、19bが開いた状態となる。このとき、開閉弁19bの開いた通気管17から通気部15へ流入する低温タンク2内の空気が、通気用小孔15aを通して通水部14の通水孔14aから原水容器A内へ導入され、原水容器A内の負圧が解消されて、内部に残った飲料水が通水管16と通気管17から落下し、原水容器Aが空になる。
【0024】
図4および図5(a)、(b)は、第2の実施形態を示す。この飲料ディスペンサは、基本的な構成は第1の実施形態のものと同じであり、前記通水筒12の内部を通水部14と通気部15に仕切る仕切り壁13が、円形の横断面を中心線で分割する板状のものとされ、通気部15の通気用小孔15aが原水容器の抽出口内に開口し、通気管17が接続される通気部15の開口15bが、基部12aの底の通気部15側へ偏った位置に設けられている点が異なる。その他の部分は第1の実施形態のものと同じであり、仕切り壁13は拡径された基部12aの底まで到達し、基部12aの側面に、通水管16が接続される通水部14の開口14bが設けられている。また、通気用小孔15aも、孔径が1.5mm以下で、孔面積が通気部15の横断面積の1/10以下とされている。
【0025】
この実施形態では、図4に示すように、前記原水容器A内の飲料水が残り少なくなって、その側壁部が折り重なるように縮み、原水容器A内が負圧となって通水管16からの飲料水の落下が止まって、低温タンク2内の水位が低下したままとなり、通水管16と通気管17の開閉弁19a、19bが開いた状態になると、開閉弁19bの開いた通気管17から通気部15へ流入する低温タンク2内の空気が、通気用小孔15aを通して直接原水容器A内へ導入され、原水容器A内の負圧が解消されて、内部に残った飲料水が通水管16と通気管17から落下する。
【0026】
図6は、第2の実施形態の変形例を示す。この変形例では、前記通水筒12の基部12aの底面に、通水部14の開口14bと通気部15の開口15bが並べて設けられ、これらの開口14b、15bから、それぞれ通水管16と通気管17が真直に垂下されており、互いに近接する通水管16と通気管17の先端の各開閉弁19a、19bが、共通のフロート18で開閉されるようになっている。
【0027】
上述した各実施形態では、飲料ディスペンサを低温タンクと高温タンクを備え、飲料として水を供給するものとしたが、本発明に係る飲料ディスペンサは、少なくとも1つのタンクを備えたものであればよく、供給する飲料も水に限定されることはない。
【符号の説明】
【0028】
A 原水容器
B 支持枠
1 ケーシング
2 低温タンク
3 高温タンク
4a、4b 抽出バルブ
5a、5b 抽出パイプ
6 冷却装置
7 流出口
8 接続パイプ
9 加熱装置
10 容器接続部
11 凹部
12 通水筒
12a 基部
13 仕切り壁
14 通水部
14a 通水孔
14b 開口
15 通気部
15a 通気用小孔
15b 開口
16 通水管
17 通気管
18 フロート
19a、19b 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料水が充填された原水容器の抽出口を上部で下向きに接続する容器接続部と、この容器接続部の下方に設けられ、前記原水容器内の飲料水を落下させて貯留するタンクと、このタンクに貯留された飲料水を抽出する抽出バルブとを備え、前記容器接続部に、前記接続される原水容器の抽出口に上向きに挿入され、原水容器内の飲料水を通す通水孔を形成した下端側が開口する通水筒を設け、この通水筒の下端側の開口に前記タンク内へ飲料水を落下させる通水管を接続して、この通水管の先端に、タンク内の水位が低下したときに開く開閉弁を設け、前記原水容器として、側壁部に柔軟性を持たせて、充填された飲料水の落下に伴って大気圧により縮む軟質の原水容器を使用する飲料ディスペンサにおいて、前記容器接続部の通水筒の内部を、前記通水孔が形成され、下端側の開口に前記通水管が接続される通水部と、この通水部または前記原水容器の抽出口内に開口する通気用小孔を形成した通気部とに、横断面を分割するように仕切り、この通気部の下端側の開口に、前記タンク内へ垂下される通気管を接続して、この通気管の先端に、タンク内の水位が低下したときに開く開閉弁を設けたことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項2】
前記通気用小孔の孔面積を、前記通気部の横断面積の1/5以下とした請求項1に記載の飲料ディスペンサ。
【請求項3】
前記通気用小孔の孔径を3mm以下とした請求項1に記載の飲料ディスペンサ。
【請求項4】
前記通気管を、前記通気部の下端側の開口から前記タンク内へ真直に垂下されたものとした請求項1乃至3のいずれかに記載の飲料ディスペンサ。
【請求項5】
前記通水管と通気管の開閉弁を、前記タンク内に浮かべた共用のフロートで開閉するようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の飲料ディスペンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−228807(P2010−228807A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81655(P2009−81655)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【特許番号】特許第4317262号(P4317262)
【特許公報発行日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(397077807)株式会社コスモライフ (15)
【Fターム(参考)】