説明

飲料一杯抽出装置

【課題】静音性に優れ、軽量かつ小型で、容易に製造可能であり、さらに、安定して味の良い飲料を抽出可能な飲料一杯抽出装置を提供する。
【解決手段】抽出容器21内の所定量の飲料用粉粒体Fに湯を供給して一杯分の飲料を抽出する飲料一杯抽出装置であって、湯が貯えられたボイラー槽31と、抽出容器21内に湯を供給する供給口部19と、を連通連結する供給管10に、湯を送流するためのポンプPを介装し、ポンプPを、ダイヤフラムポンプPdとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料一杯抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーヒー等の飲料を抽出する飲料抽出装置は、ボイラー槽(湯タンク)から抽出部に湯を送流させるために、ギヤポンプを用いていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−75595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レギュラーコーヒー等の飲料用粉粒体から1杯分の飲料を抽出するための飲料一杯抽出装置は、特に、家庭向けの場合、小型かつ軽量なものが求められている(小型・軽量化がユーザーから望まれている)。しかし、ギヤポンプは小型・軽量化が困難なため、装置全体の小型・軽量化には限界があった。
また、ギヤポンプは、ギヤの噛み合わせや、湯垢等の異物流入による異音発生問題や故障問題があった。さらに、騒音対策として、ギヤポンプの周囲に吸音部材や防音部材を設けたり、飲料用粉粒体への供給湯量(ポンプ吐出量)を一定に保つために各種センサを設けたりと、部品点数が多く小型・軽量化をより困難にすると共に、組立作業が煩雑で容易に製造できないという問題もあった。また、遠心ポンプは、供給する湯量を一定に保持することが非常に困難であるため、抽出される飲料の濃さが安定せず良い味が出ないと共に、1杯分毎に味が変わってしまう(味の品質が安定しない)という問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、静音性に優れ、軽量かつ小型で、容易に製造可能であり、さらに、安定して味の良い飲料を抽出可能な飲料一杯抽出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の飲料一杯抽出装置は、抽出容器内の所定量の飲料用粉粒体に湯を供給して一杯分の飲料を抽出する飲料一杯抽出装置において、湯が貯えられたボイラー槽と、上記抽出容器内に湯を供給する供給口部と、を連通連結する供給管に、湯を送流するためのポンプを介装し、上記ポンプを、ダイヤフラムポンプとしたものである。
また、上記ダイヤフラムポンプは、複数個の椀型ダイヤフラムが一体状に形成された耐熱性ゴム製のダイヤフラム集合体を有するものである。
また、耐熱性ゴムは、EPDMである。
また、平面視で、上記ボイラー槽と上記抽出容器の間に、上記ダイヤフラムポンプを配設したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、飲料用粉粒体へ供給する湯量を一定に保持でき、かつ、静音性を得ることができる。味を落とすことなく、装置を小型・軽量化できる。また、部品点数を削減でき、容易かつ迅速に製造(組立)できる(製造コストを軽減できる)。また、ポンプへの異物流入による異音や故障の発生を大幅に軽減できる。また、定量供給により湯を糸状に垂らして供給できるため、味が良く、特に、ドリップ式のコーヒーマシン(飲料一杯抽出装置)として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態の斜視図である。
【図2】簡略配管図である。
【図3】各部の配置を示す簡略断面側面図である。
【図4】各部の配置を示す簡略平面図である。
【図5】抽出部の要部拡大断面図である。
【図6】当接部材の一例を示す底面図である。
【図7】ダイヤフラムポンプの一例を示す分解斜視図である。
【図8】ダイヤフラムポンプの一例を示す要部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明の飲料一杯抽出装置は、図1乃至図3に示す実施の形態のように、水を加熱するヒータ33と加熱された水(湯)を貯えるボイラー槽31とを有するボイラー部3と、所定量の飲料用粉粒体Fが収納された抽出容器21を有する抽出部2と、抽出部2の下方に設けられ飲料カップCが配設されるカップ受部4と、押しボタン等を有する操作部6と、操作部6の操作に従ってヒータ33やポンプPの動作を制御する制御基盤50を有する制御部5と、をケーシング本体1に備え、抽出容器21内の飲料用粉粒体Fに湯を供給して一杯分の飲料を抽出するものである。
【0010】
ケーシング本体1内には、ボイラー槽31と、抽出容器21内に湯を供給する供給口部19と、を連通連結する供給管10を備えている。そして、供給管10に、湯を送流(圧送)するためのポンプPを介装し、ポンプPの吸込口部81とボイラー槽31の底部とを連通連結(接続)する吸込管11と、ポンプPの吐出口部82と供給口部19とを連通連結(接続)する吐出管12と、を設けている。また、吐出管12に湯の逆流を防止するチェックバルブ13(図3に於ては図示省略)を介装している。吸込管11及び吐出管12は、耐熱性ゴム製であって、例えば、シリコンチューブである。
【0011】
飲料用粉粒体(飲料用原料)Fとは、珈琲豆を粉砕した粉粒体やレギュラーコーヒー、或いは、日本茶、中国茶、紅茶、ハーブ等の粉粒体(葉片を含む)である。つまり、抽出される飲料は、日本茶、中国茶、紅茶、ハーブティ等の茶、又は、珈琲(コーヒー)等である。所定量とは、一杯の飲料を抽出するのに最適な量である。
【0012】
図7及び図8に於て、ポンプPは、円柱形状のダイヤフラムポンプPdであって、円柱状の電動モータMを一体状に有し、電動モータMの出力軸Maの突出方向(軸心一方向La)に、円筒状の吸込口部81と円筒状の吐出口部82とを突設している。
また、複数の(3個の)椀型ダイヤフラム95aが一体状に形成されたダイヤフラム集合体95を有し、モータMの駆動によって、各ダイヤフラム95aにより形成される各ポンプ室80が、順次、圧縮と膨張とを繰り返すようにして、流体(湯)を定量的(吐出流速や吐出圧を一定)に送流(圧送)可能な流体用である。
【0013】
また、ダイヤフラムポンプPdは、湯に接触するゴム製部材全てを耐熱性ゴム製としている。具体的には、パッキン92、吸込弁本体94、ダイヤフラム集合体95を、耐熱性ゴムで形成している。耐熱性ゴムとは、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)である。特に、EPDMは、加硫剤としてパーオキサイドを用いて加硫したもの(パーオキサイド加硫のEPDM)が望ましい。イオウ加硫のEPDMに比べて、耐熱性が良い(熱による圧縮永久歪が増大しにくい)から、熱によって流量が変化しにくい。
【0014】
また、ダイヤフラムポンプPdは、湯に接触する樹脂製部材全てを耐熱性樹脂製としている。具体的には、蓋体91、中蓋体93を、耐熱性樹脂で形成している。耐熱性樹脂とは、SPS樹脂(シンジオタクチックポリスチレン樹脂)である。耐熱性が良いため、熱変形による流量変化や故障(不具合)が防止される。
【0015】
また、このダイヤフラムポンプPdは、吐出量(仕事量)が同じギヤポンプに比べ、定量性(吐出流量の安定性)が優れている。
また、ダイヤフラムポンプPdは、ギヤポンプに比べ、静音性に優れている。例えば、ダイヤフラムポンプPdから300mm離れた位置で騒音計によって駆動音(作動音)を測定すると、37.2dbである。ギヤポンプの場合は、60.5dbである。さらに、ギヤポンプを防音ボックスに内装した(防音ボックスで包囲した)場合は、51.5dbであった。つまり、ダイヤフラムポンプPdは、防音ボックスに内装した(防音対策した)ギヤポンプの騒音を100%として比較すると、約72%〜73%と静かである。
【0016】
また、ダイヤフラムポンプPdは、上記ギヤポンプに比べ、小型である。例えば、ダイヤフラムポンプPdは、直径約30mm×長さ約60mmの略円柱形状(突出円筒部除く)であるが、ギヤポンプは約70mm×約55mm×約80mmの縦・横・高さの各寸法であり、防音ボックスの大きさは、約80mm×約80mm×約80mmの略立方体形状である。防音ボックスの体積を100%として比較すると、約9%(突出円筒部を考慮しても10%〜13%)と小型である。
また、ダイヤフラムポンプPdは、60g〜70gであり、防音ボックスとギヤポンプを足した重量よりも軽量である。
【0017】
また、図3に示すように、側面視で、ダイヤフラムポンプPdを、ボイラー槽31と抽出容器21の間に配設し、ボイラー槽31の軸心L3と、抽出容器21の軸心L2と、ダイヤフラムポンプPdの軸心Lpと、を平行状に並設している。
また、図4に示すように、平面視で、ダイヤフラムポンプPdを、ボイラー槽31と抽出容器21の間に配設している。平面視で、(平面視円形状の)ボイラー槽31の中心点Oaと、(平面視円形状の)抽出容器21の中心点Obと、を直線上に(一直線E上に)配設している。ダイヤフラムポンプPdを平面視円形に配設し、その中心点Odが、一直線Eから離間している位置(一直線E上でなく)、かつ、(ケーシング本体1内において)ボイラー槽31の中心点Oaと抽出容器21の中心点Obの間の範囲に配設している。
さらに、一直線Eから最も遠いダイヤフラムポンプPdの外周面までの離間寸法Ypを、一直線Eから最も遠いボイラー槽31の外周面までの離間寸法(外径寸法)Yaよりも小さくなるように設定している。
【0018】
このように、ボイラー槽(湯タンク)31の下方位置や上方位置にダイヤフラムポンプPdを配設しないことで、ケーシング本体1(装置)の高さ寸法Hを小さく(或いは、ボイラー槽31の高さ寸法を大きく)設定することを可能としている。また、抽出容器21とボイラー槽31とを相互に接近させて配設することが可能となり、奥行き寸法Dを小さく設定することを可能としている。また、ダイヤフラムポンプPdによって、幅寸法Wを大きく設定する必要がない(ボイラー槽31を包囲する程度の幅寸法Wであれば良い)。
具体的には、ケーシング本体1(装置)は、幅寸法Wが80mm〜120mm、奥行き寸法Dが190mm〜235mm、高さ寸法Hが190mm〜240mm、といった外形寸法であって、幅狭縦長状であり、小型・軽量で、家庭向けに最適である。
【0019】
また、図3に於て、ボイラー槽31は有底円筒状に形成され、内部に、水を加熱するためのヒータ(伝熱管)33と、ヒータ33を保護するカバー部材32と、を備えている。また、ボイラー槽31の上方開口部に着脱自在なタンク蓋部材34が設けられている。また、ボイラー槽31は、2杯乃至4杯或いは、4杯以上の飲料を抽出可能な湯を貯えることが可能な容量を有している。具体的には、400cc〜600cc程度の容量である。ボイラー槽31の下方位置に、制御部5(制御基盤50)が配設されている。
【0020】
また、ケーシング本体1内には、ダイヤフラムポンプPdを用いることで、フローメータ等の流量センサ(計)、吐出圧センサ(計)、流速センサ(計)等の供給量調整用センサを省略し、ボイラー槽31内の湯量を調整するための水位センサ(計)や調整(補充)タンクを省略して、軽量・小型化している。また、ポンプP内の残留湯を吐出させるためにポンプPにエアを送るための三方切換弁及びエア流路を省略し、軽量・小型化している。
【0021】
また、図5に示すように、所定量の飲料用粉粒体Fは、(予め)充填容器40に収容(充填)されている。
充填容器40は、不織布から成ると共に、1杯の飲料を抽出するのに最適な量(所定量)の飲料用粉粒体Fが収納される椀型のフィルタ部41と、フィルタ部41を施蓋する円板状の蓋部42と、を有している。
蓋部42は、フィルタ部41側に配設され透水性を有しておらず一乃至複数層の樹脂フィルムから成る第1シート42aと、透水性を有し第1シート42a上に積層され不織布から成る第2シート42bと、によって構成されている。そして、第1シート42aの略中央部に湯を通過させるための湯通孔42cが形成されるものである。つまり、飲料用粉粒体Fは充填容器40に収容された状態で、抽出容器21に収納される。
【0022】
抽出容器21は、充填容器40の蓋部42の外周縁部(外鍔部)42dを係止する係止平面21aを、上面の開口縁部に有している。さらに、内周壁の断面形状が椀型形状(椀型乃至U字状)に形成されており、充填容器40のフィルタ部41の外周面(外側面乃至外底面)と、抽出容器21の内周面(内側面乃至内底面)の間に、所定の間隙が形成されるように設けられている。言い換えるとフィルタ部41の外周形状に沿って、抽出容器21の内周形状を形成し、(収容状態で)抽出容器21と充填容器40の間に、椀型空間49を形成している。
湯が注がれると、充填容器40内の飲料が、フィルタ部41から染み出て(抽出され)フィルタ部41の外周面に沿って降下し、抽出容器21の抽出口21bから流出する。このような流れは、ペーパードリップの理想的な抽出を再現したものであり、香り高く味の良い飲料(コーヒーや茶等の嗜好品飲料)が得られる。
【0023】
また、抽出容器21の上方開口部に対して施蓋状態と開口状態とに切換自在に揺動するようにケーシング本体1に枢着された抽出蓋部材22は、施蓋状態で充填容器40の略中央部に当接する耐熱性ゴム製(シリコンゴム製)の当接部材23を下方突出状に有している。
当接部材23は、中心貫孔をもって、供給管10に連通する供給口部19を形成している。また、当接部材23は、充填容器40の略中央部(湯通孔42cの開口縁部に対応する位置)を包囲して、蓋部42に密着し、湯を注入する際に、湯が蓋部42の上面に広がるように溢れるのを防止する環状(円環状)のシール部29を有している。
【0024】
シール部29は、下方膨出円環状に形成され、図6に示すように、供給口部19の下方開口縁部を包囲する円環状第1シール部29aと、第1シール部29aを包囲する円環状第2シール部29bと、第2シール部29bを包囲する円環状第3シール部29cと、を有している。所定量の湯を無駄なく、確実に飲料用粉粒体F(充填容器40内)に供給でき、味(品質)を一定に保つことを可能としている。言い換えると、供給口部19を包囲する二重乃至三重円環状のシール部29を有している。
【0025】
次に、本発明の飲料一杯抽出装置の作用(使用方法)について説明する。
上述した実施の形態は、抽出容器21内に、充填容器40をセットし、操作部6を所定操作行なうことで制御部5によって、ダイヤフラムポンプPdが制御され、湯が充填容器40に第1所定時間(例えば4秒間)送られた後、供給が自動一時停止する。この第1所定時間で送られた湯によって、充填容器40内の飲料用粉粒体Fを蒸らす。そして、第二所定時間(例えば4秒間)蒸らした後に、湯の供給が再開する。第3所定時間(例えば20〜30秒間)湯を供給することで、抽出された飲料がカップCに注がれ、1杯分の抽出作業が終了する。2杯目をつくる場合は、1杯目の充填容器40を抽出容器21内から破棄し、新たな充填容器40をセットして、湯を供給する。
【0026】
ここで、第1所定時間で送られる湯量(蒸らし湯量)によって、蒸らしが十分に効果的に行なわれたか否かが決定し、抽出される飲料の香りや味(濃さ)や色等に影響を及ぼす。蒸らしに必要な湯量は僅かな量で良いが、少なすぎると、蒸らしが不十分となり、多すぎると飲料が多く抽出されてしまうため、所定量供給することが重要である。
【0027】
そこで、ダイヤフラムポンプPd(実施例A)の場合と、ギヤポンプ(比較例A)の場合とで、1杯分の抽出作業において秒数毎の流量を測定し、その測定を5杯分(5回)行なって、5回の測定結果の最大流量と最小流量の差(抽出毎における流量差)を計算した。結果(比較表)を下記表1に示す。なお、雰囲気温度は20℃〜25℃、湯温は80℃〜90℃である。
【0028】
【表1】

【0029】
上記表1から明らかなように、実施例Aは、比較例Aに比べ、流量が安定している。特に、味と香りに重要な蒸らし効果を得るための最初の4秒間において、流量差がギヤポンプの75%〜50%に抑えられ、供給開始から5秒以下の僅かな時間であっても流量が安定していることが明らかである。また、抽出を行なうための(30秒での)供給量も実施例Aの方が安定している。
【0030】
さらに、ポンプPを上述のダイヤフラムポンプPdとした装置を実施例1とし、ポンプPを遠心ポンプとしたものを比較例1、ギヤポンプとしたものを比較例2、バイブレーションポンプとしたものを比較例3として、定量性、耐熱性、静音性、大きさ、について、比較したものを下記表2に示す。なお、飲料用粉粒体Fはレギュラーコーヒーとした。
【0031】
【表2】

【0032】
比較例1(遠心ポンプ)は、エア噛みが発生する場合や、吐出圧が小さくチェックバルブが抵抗となって、湯の供給量が変化したり、供給が停まったりと、安定供給できず、一杯毎に味や香りが変化した。
比較例2(ギヤポンプ)は、作動音が大きく、装置全体の寸法も大きくなった(家庭向けに不向き)。
比較例3(バイブレーションポンプ)は、脈動が激しく、騒音も大きく、定量性も確保できず、味(品質)を一定に保つことができなかった。
実施例1は、流量が大きく変化することなく、十分な定量性を得ることができた。また、静かで、80℃〜90℃の熱湯であっても、不具合はなかった。
【0033】
また、実施例1は、チェックバルブの抵抗が原因で流量にバラツキが発生するようなことがなく、かつ、湯が飲料用粉粒体Fへ噴射状に当たることなく、自然落下状(定量的に糸状)に注がれ、ドリップ式に好適であった。例えば、湯の供給圧が高く、勢い良く(一気に)供給され過ぎると、飲料用粉粒体Fが湯の勢いで側外方へ押し退けられ(飲料用粉粒体F自体が)漏斗状になって、飲料用粉粒体Fの中央を湯が素通りする(抽出される飲料が薄くなる)問題が発生するが、実施例1では発生しなかった。
【0034】
また、実際に、抽出したコーヒーの味や香り等を比較してみると、比較例1〜3に比べて実施例1は、香りと味の両方で高い評価を得ることができた。これは、設定どおりの湯が供給されたためだと考えられる。また、複数杯分つくって、比較しても、抽出されるコーヒーの濃さが一杯毎に変化せず、味と香りにバラツキが少なく、誰が操作してもおいしいコーヒーが得られた。これは、何度操作(抽出作業)しても、供給される湯量が変化せず、定量性が良いからだと考えられる。
【0035】
なお、本発明は設計変更可能であって、充填容器40を用いずに、抽出容器21内にドリップ用のフィルター(紙)を敷設(内装)して、飲料用粉粒体Fを収納しても良い。ケーシング本体1の外観形状は図示した以外の形状とするも良い。ポンプPは、椀形ダイヤフラム95aが形成するポンプ室80に湯を流入させて、吐出させるものであれば、図示した以外のダイヤフラムポンプPdとするも良い。ダイヤフラム集合体95は、2個又は4個の椀型ダイヤフラム95aが一体状に形成されたものでも良い。ポンプPの軸心(一軸心)Lpは、モータMの出力軸Maの軸心とも言える。
【0036】
なお、ダイヤフラムポンプPdについて、さらに具体的に説明すると、図7及び図8に示すように、吸込用円筒部(吸込口部)81及び吐出用円筒部(吐出口部)82を有する樹脂製の蓋体91と、樹脂製の中蓋体93と、蓋体91と中蓋体93の間に介装されるゴム製のパッキン92と、中蓋体93に取着されるゴム製の傘状の吸込弁本体94と、複数(2個乃至4個)の椀型ダイヤフラム95aが一軸心Lpに直交する平面状の横隔膜95bにて連結されたゴム製のダイヤフラム集合体95と、ダイヤフラム集合体95の横隔膜95bを支持する樹脂製のリテーナ部材96と、モータMの出力軸Maによって回転する樹脂製の偏心用回転体99と、偏心用回転体99に傾斜状に取着され一軸心Lp廻りに回転(旋回)する金属製クランク軸98と、クランク軸98に伴って揺動する放射状の樹脂製揺動板97と、リテーナ部材96を支持する樹脂製の有底の円筒ケース体90と、を備えている。
【0037】
また、リテーナ部材96を、耐磨耗性樹脂で形成している。耐磨耗性樹脂とは、ポリアセタールである。なお、リテーナ部材96を耐熱性樹脂(SPS樹脂)で形成するも良い。また、円筒ケース体90を耐熱性樹脂(SPS樹脂)で形成するも良い。
【0038】
ダイヤフラム集合体95は、3つのダイヤフラム95aを一軸心(ポンプ軸心)Lp廻りに円周等分配(3つの場合は120度毎)に配設され横隔膜95bによって連結されている。また、各ダイヤフラム95aは、ダイヤフラム95aの開口縁部を横隔膜95bから軸心一方向Laに延設して形成した短円筒状の吐出弁膜95cを有している。ダイヤフラム95aを圧縮・膨張させるダイヤフラム駆動部95dがダイヤフラム95aから軸心他方向Lbに突設されている。横隔膜95bの外周縁部にパッキン縁部95eを有している。
【0039】
中蓋体93は、軸心他方向Lb側に、流体を吐出口部82から吐出させるための共通吐出凹部93cを形成している。そして、軸心他方向Lbに有底短円筒状の弁座部93eを突設している。弁座部93eの外周壁部(の一部)を、ダイヤフラム95aの膨縮に伴って吐出弁膜95cが密着分離自在に覆う吐出弁座部としている。
弁座部93eの底壁部に、吸込弁本体94の取付貫孔と、吸込弁本体94の弁部94aによって開閉され開状態でポンプ室80と吸込口部81を連通させる吸込貫孔93fと、を形成し、底壁部において弁部94aが接触離間する場所を、吸入弁座部としている。なお、ダイヤフラム95a及び弁座部93eは、3個に限らず、2個又は4個とするも良い。
蓋体91は、軸心他方向Lb側に吸込口部81と連通する吸込凹部91cと、吸込凹部91cと円環状壁によって仕切られると共に吐出口部82と連通する吐出凹部91dと、を有している。
【0040】
そして、偏心用回転体99と、クランク軸98と、揺動板97と、によって、各ダイヤフラム駆動部95dが、順次、往復運動し、各ダイヤフラム95a(各ダイヤフラム95aと各弁座部93eによって形成される各ポンプ室80)が、順次、圧縮と膨張とを繰り返すように構成している。また、横隔膜95bの軸心他方向Lb側とリテーナ部材96と円筒ケース体90で囲まれた駆動部空間83内には、湯が浸入しないように構成されている。言い換えると、ポンプ室80(ダイヤフラム95a)を圧縮・膨張させるための駆動部(出力軸Maと偏心用回転体99とクランク軸98と揺動板97とダイヤフラム駆動部95d)に湯が接触しない構成となっている。
【0041】
以上のように、本発明の飲料一杯抽出装置は、抽出容器21内の所定量の飲料用粉粒体Fに湯を供給して一杯分の飲料を抽出する飲料一杯抽出装置において、湯が貯えられたボイラー槽31と、抽出容器21内に湯を供給する供給口部19と、を連通連結する供給管10に、湯を送流するためのポンプPを介装し、ポンプPを、ダイヤフラムポンプPdとしたので、飲料用粉粒体Fへ供給する湯量を一定に保つことができ、かつ、静音性を得ることができる。味を落とすことなく、装置を小型・軽量化できる。また、ボイラー槽31の水位を調整するための水位センサ等の部品点数を削減でき、容易かつ迅速に製造(組立)可能となって、製造コストを軽減できる。また、ポンプPへの異物流入による異音や故障の発生を大幅に軽減できる。また、湯を定量で糸状に垂らして連続的に供給できるため、味が良く、特に、ドリップ式のコーヒーマシン(飲料一杯抽出装置)として最適である。ギヤポンプのような防音対策用部材(防音ボックス部材)等が必要なく、静音性を実現でき、軽量・小型化、部品点数の削減に貢献できる。
【0042】
また、ダイヤフラムポンプPdは、複数個の椀型ダイヤフラム95aが一体状に形成された耐熱性ゴム製のダイヤフラム集合体95を有するので、ダイヤフラムポンプPdの部品点数を少なくでき、小型かつ軽量なものにすることができる。複数のポンプ室80(椀型ダイヤフラム95a)を連続的に膨縮させることができ安定して所定の流量を得ることができる。異物が浸入しても、ゴム製であるため噛み込んでモータMに過負荷が係る虞がなくポンプP内を素通りさせて、故障の虞を少なくできる。
【0043】
耐熱性ゴムは、EPDMであるので、湯が80℃〜90℃の高温であっても、ポンプ室80を形成する椀型ダイヤフラム95aが熱変形するのを防止でき、ポンプ室80に吸い込む湯量や、ポンプ室80から吐出する湯量を一定に保つことができる。つまり、抽出容器21内の飲料用粉粒体Fに所定量の湯を供給でき、一杯抽出毎の味(濃さや風味)を安定させることができる。
【0044】
平面視で、ボイラー槽31と抽出容器21の間に、ダイヤフラムポンプPdを配設したので、ケーシング本体1(装置全体)の奥行き寸法D、幅寸法W、高さ寸法H、を小さくでき、家庭向けとして好適な装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
10 供給管
19 供給口部
21 抽出容器
31 ボイラー槽
95 ダイヤフラム集合体
95a 椀型ダイヤフラム
F 飲料用粉粒体
P ポンプ
Pd ダイヤフラムポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出容器(21)内の所定量の飲料用粉粒体(F)に湯を供給して一杯分の飲料を抽出する飲料一杯抽出装置において、
湯が貯えられたボイラー槽(31)と、上記抽出容器(21)内に湯を供給する供給口部(19)と、を連通連結する供給管(10)に、湯を送流するためのポンプ(P)を介装し、
上記ポンプ(P)を、ダイヤフラムポンプ(Pd)としたことを特徴とする飲料一杯抽出装置。
【請求項2】
上記ダイヤフラムポンプ(Pd)は、複数個の椀型ダイヤフラム(95a)が一体状に形成された耐熱性ゴム製のダイヤフラム集合体(95)を有する請求項1記載の飲料一杯抽出装置。
【請求項3】
耐熱性ゴムは、EPDMである請求項1又は2記載の飲料一杯抽出装置。
【請求項4】
平面視で、上記ボイラー槽(31)と上記抽出容器(21)の間に、上記ダイヤフラムポンプ(Pd)を配設した請求項1,2又は3記載の飲料一杯抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−27469(P2013−27469A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164238(P2011−164238)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(390006600)ユーシーシー上島珈琲株式会社 (28)
【出願人】(511182644)電装産業株式会社 (1)
【出願人】(593057263)多田プラスチック工業株式会社 (26)
【Fターム(参考)】