説明

飲料中に制御された氷結晶を形成する方法および装置

飲料中に所望の量の氷結晶を形成する方法は、飲料を大気圧で通常の氷結温度近傍以下の温度に冷却して冷飲料を形成する工程、前記飲料を前記飲料の凍結を防止するのに充分な圧力に維持する工程、前記冷却された飲料を容器内に分注する工程、冷却された表面であって、前記冷却された表面に前記冷却された飲料の一部が接触すると瞬間的に氷結するのに充分な低い温度を有する表面を得る工程、および前記冷却された表面を前記分注の際に前記飲料に充分な時間提示して、前記飲料中に所望の量の氷結晶を形成する工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、飲料を冷却し分注する方法および装置に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、飲料の分注の一部分として、上記方法を実施して飲料中に氷結晶を生成する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
暑い日には一杯の冷えたビールに勝るものはないが、すべてのグラスの冷えたビールが同じというわけではない。冷えたビールといっても使い捨てプラスチックカップの中のわずかに冷えたビールから氷と凍った水滴で曇った霜の降りたようなマグに凝縮を伴って滴下する真に冷えたビールに及んでいる。後者の提示は賞味者の視点からは最適ではないかもしれないが、わずかに冷えたパブの生ビールにはない「涼を求めること(cooling−off)」についてある示唆が得られる。
【0003】
例えば焼け付くように暑い日のゴルフコースや海縁のリゾートでの暑い日差しの下での日光浴の場合のように、冷たさが味わいにとって最も大切である場面では、「冷たく、美味しい(refreshing)」という究極の表現は飲料中に氷の結晶を実現することである。ジュース類等でも冷えた飲料に氷を添加することによりこれを実現することが可能であるが、ビールの場合は、氷が融けるにつれてビールが薄まり、ビールの味がスポイルされるので、一般には受け入れられない。代替案は、ビール、「ソーダ水(soda pop)」やワインその他のアルコール含有飲料であれば、飲料中にもともと含まれている水から氷結晶を形成することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
理論上は、飲料中に氷結晶を形成することはごく簡単なことであるが、実際には、これまでは、形成される氷結晶の量とコンシステンシーの程度を任意に調節してそのようにすることは実質的に不可能であった。ビールを単に凝固点より低く冷却するだけでは、一般に、容器が閉じている場合は「氷」のブロックが生じ、容器が開いている場合はビールが凍る前に凍結した「氷泥(slush)」が生じる。
【0005】
従って、本発明の目的は、少なくともビール、そしておそらく他の飲料において調節可能な量の氷結晶を形成する方法を実施する方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、飲料中に所望の量の氷結晶を形成する方法であって、
(i)飲料を大気圧で通常の氷結温度近傍以下の温度に冷却して冷飲料を形成する工程、
(ii)前記飲料を前記飲料の凍結を防止するのに充分な圧力に維持する工程、
(iii)前記冷却された飲料を容器内に分注する工程、
(iv)冷却された表面であって、前記冷却された表面に前記冷却された飲料の一部が接触すると瞬間的に氷結するのに充分な低い温度を有する表面を得る工程、および
(v)前記冷却された表面を前記分注の際に前記飲料に充分な時間提示して、前記飲料中に所望の量の氷結晶を形成する工程
を備えた方法が提供される。
【0007】
所望の量の氷結晶の形成が達成されると、前記冷却された表面は、前記飲料との接触を解かれるか、それより高い温度ではそれ以上氷結晶が形成されない温度に昇温することを許容するかの少なくとも一方にする。
【0008】
前記飲料は23.0°F(華氏)〜28.0°F(華氏)の温度および15psi〜110psi以上の圧力に冷却されたビールであってもよい。
【0009】
前記飲料は分注タップを通して分注し、分注の間、前記分注タップの直前上流の圧力を減圧にして跳ねかけ(splash)を防止することが可能である。
【0010】
前記飲料が5体積%のアルコール含有量のビールであるならば、工程(i)の温度は24.0°F〜27.0°Fとし、昇圧は少なくとも60psiであるのが好ましい。
【0011】
本発明によれば、飲料分注装置であって、飲料の一部が氷結晶状態である飲料の容器を冷却し、提示する装置が提供される。前記装置は前記飲料の容器から前記飲料を受け取る飲料入口部を有する。前記装置は、さらに、前記飲料を前記容器に分注する弁付きタップを有する。飲料導管が前記タップと前記飲料入口部の間に延びており、前記タップと前記飲料入口部との間を流体連絡している。飲料圧縮機が前記導管と連絡して前記飲料の圧力を、凍結を防止するのに充分な圧力に昇圧する。飲料クーラーが前記飲料導管と連結され少なくとも前記導管内の飲料をその大気圧下氷結点よりも低いが前記昇圧された圧力下における氷結点よりも高い温度に冷却する。前記タップに隣接して、減圧器を設け、前記飲料の圧力を、前記導管内の昇圧された圧力から分注圧力に減圧して前記タップが開形状であるときに前記タップからの分注を容易にする。前記装置は、さらに、前記容器内に前記飲料を注入する際に前記飲料が接触して前記飲料の一部が凍結して前記注入の間に氷結晶を形成するようにする冷凍表面を持つ瞬間冷凍器を有する。瞬間凍結クーラーが前記瞬間冷凍器と連結され、前記凍結表面を、接触時に氷結晶を形成するように充分低い温度に冷却する。
【0012】
前記飲料クーラーはある長さの導管と、前記ある長さの導管を囲み、前記ある長さの導管を浸漬する冷えた冷却剤を受容する冷却剤浴とを備えていてもよい。飲料冷却剤冷凍ユニットを備え、前記浴中の冷却剤と連通させて冷却剤を冷却するようにすることが可能である。
【0013】
前記瞬間冷凍器クーラーは瞬間冷凍器冷凍ユニットを備え、前記冷凍表面と連通させて前記冷凍表面を冷却するようにすることが可能である。
【0014】
前記飲料冷却剤冷却ユニットと瞬間冷凍器冷凍ユニットは別個のユニットであってもよい。
【0015】
前記冷却剤浴に浸漬される、ある長さの導管はコイル状であってもよい。
【0016】
減圧器はタップの上流の流量制限器であってもよい。
【0017】
前記装置は、さらに、前記冷却剤が所定の温度以下になると前記浴中の冷却剤を加熱するヒーターと、冷却剤温度およびビール温度の少なくとも一方を感知するセンサとを備えていてもよい。前記センサと前記ヒーターは、活性化したり不活化したりし、あるいは前記冷却剤浴と前記飲料冷却ユニットとの間の冷却剤の流れを提供するポンプを不活化したり活性化したりするコントローラと連絡している。
【0018】
前記コントローラは、さらに飲料冷却ユニットと連絡し、この飲料冷却ユニットを不活化したり活性化したりするように構成することが可能である。
【0019】
前記瞬間冷凍器は注入の際に飲料を通過させられる冷却プローブであってもよい。
【0020】
あるいはまた、前記瞬間冷凍器は容器中の表面であってもよく、前記瞬間冷凍器クーラーは少なくとも注入の前に前記容器と接触する冷却表面であってもよい。
【0021】
前記瞬間冷凍器は前記タップとまたは前記タップ内に関連させることが可能である。
【0022】
前記流量制限器は弁、オリフィスおよび導管の縮小径部分の少なくとも1つであってもよい。
【0023】
飲料容器は冷飲料が容器内に分注される間に氷を形成するのを促進するようになっている。前記容器は基部と、前記基部から延出し、前記基部と対向する口部を画成する側壁部分とを有する。ヒートシンクが前記基部を貫通して延び密封裏に前記基部と係合している。前記ヒートシンクは前記基部の外面に隣接して冷却面と接触する外表面と前記基部の内面に隣接して飲料と接触して前記飲料から熱を奪う内表面とを有する。前記ヒートシンクは前記容器の残りの部分よりも熱伝動性が高い。
【0024】
前記容器の前記基部と前記壁はガラスまたはプラスチック製であってもよく、前記ヒートシンクは金属製であってもよい。
【0025】
前記ヒートシンクは、好ましくはアルミニウムまたは銅をベースとする合金である。
【0026】
冷却ジャケットを前記タップに隣接する導管の周りに設けて前記浴と前記タップとの間で冷却剤を前記導管の周りに循環させるようにすることが可能である。
【0027】
前記冷却剤ジャケットは、前記冷却剤浴と前記冷却剤ジャケットとの間に接続された冷却剤ジャケットポンプを通して前記冷却剤浴と流体連絡している。前記冷却剤ジャケットの出口は前記冷却剤浴と直接流体連絡して前記冷却剤ジャケットから前記冷却剤浴への流体帰還として動作する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
添付図面において、本発明による飲料分注装置(装置)は全体を符号10により示す。装置10は飲料入口12を有し、ビールのような飲料14を、ビール樽であってもよい飲料溜16から受ける。ガス・キャニスタを設けて飲料14を溜からポンプ20のような飲料加圧器に圧送してもよい。以下に、より詳細に説明するように、ポンプは装置内の飲料14(ビール)の圧力を増加させてその凝固点を降下させる。
【0030】
ポンプ20はビールを飲料導管22を通して圧送する。飲料導管22の対向端は弁付きタップ24である。飲料導管22はその長さの一部分がコイル26に形成されており、コイル26はコイル26、そしてその中のビール(または他の飲料14)を大気圧(すなわち1気圧)下で凍結する温度以下であるがポンプ20によりもたらされる昇圧下ではその凍結点より高い温度に冷却するための、グリコールその他の適切な冷却剤のような、冷却剤30を含む冷却剤浴中に浸漬される。
【0031】
飲料14は高圧で分注されると容器から跳ね飛ぶ傾向があるので、減圧器32がタップ24に隣接して設けられる。減圧器は流量制限オリフィス、弁および飲料導管22の縮小径部分の任意の1つまたはこれらの組合せであることができる。
【0032】
図示されたプローブのような瞬間冷凍器34がタップ24に隣接して設けられ、飲料に少なくともその一部が注がれる間、接触するようにする。瞬間冷凍器34は冷凍表面36を有し、冷凍表面36は飲料が容器40内に注入され、充填される間に飲料と接触し、冷凍して飲料14の水分から氷を形成する。温度、熱伝達性能および接触時間をどのように選択するかによって氷結晶の性質と量とが決まる。
【0033】
全体を符号50で示し、以下により詳細に説明する飲料クーラーが冷却剤30を冷やすために設けられる。全体を符号100で示し、以下により詳細に説明する瞬間冷凍クーラーが少なくとも冷凍表面36を充分に低い温度に冷やして飲料14が接触すると氷結晶を形成するようにするために設けられる。
【0034】
飲料クーラー50は飲料冷却剤冷凍ユニット52(「b/c冷凍ユニット52」)を備え、このユニット52は蒸発コイル54を有する市販の冷凍システムであってもよく、蒸発コイル54は飲料冷却剤グリコールタンク56(「b/cグリコールタンク56」に浸漬される。冷凍ユニット52は冷却剤浴28と飲料冷却剤グリコールライン60(「b/cグリコールライン60」を介して熱的に連絡しており、飲料冷却剤グリコールライン60はグリコール70(または他の適切な冷却剤)をb/cグリコール56から入れる入口62と、グリコール70をb/cグリコールタンク56に戻すための出口64を有する。b/cグリコールライン60は熱伝達コイル68を備え、この熱伝達コイル68は冷却剤浴28内の冷却剤30に浸漬されて冷却剤浴28を冷却する。ポンプ66がb/cグリコールライン60に設けられ、b/cグリコールタンクから熱伝達コイル68を通ってb/cグリコールタンク56に戻るグリコール70の流れを起こす。
【0035】
直接冷却剤浴28をb/c冷凍ユニット52で冷却しようとするのではなく、むしろb/cグリコールライン60とb/cグリコールタンク56を使用する目的は、温度の制御をよりよくすることにある。b/cグリコールタンク56中のグリコール70の冷たさ(約15°F/−9℃)の供給を維持し、かつ比較的高性能のポンプ66(約2gpm)を使用すると、冷却剤浴28内の冷却剤30に直接作用した場合にb/c冷凍ユニット52で単に達成できるよりも、注入のような間欠的な熱要求に対する応答をより良くすることが可能になる。
【0036】
さらに制御を良好にするために、冷却剤浴28を冷却剤浴28内の冷却剤30に浸漬したヒーター80を追加することにより「プッシュ・プル」システムとして構築することが可能である。冷却剤30の温度が温度設定点以下に低下するとヒーター80を付勢し、グリコールポンプ66を閉じることが可能である。コントローラ90を冷却剤浴中に温度センサ92、ヒーター80およびポンプ66と連絡して設けて必要に応じてヒーター80とポンプ66を活性化および不活性化することが可能である。
【0037】
タップ24に隣接する飲料導管22の周りに冷却ジャケット80を設けて注入と注入の間、コイル26とタップ24の間の導管の部分を冷たく維持するようにしてもよい。冷却ジャケット80は冷却剤浴28から冷却剤30を受け取る入口82と、冷却剤浴28へ冷却剤を戻す出口84と、冷却剤の流れを増加させるポンプ86とを有していてもよい。
【0038】
瞬間冷凍クーラー100は、好ましくは、独自の冷凍ユニット110(「ffc冷凍ユニット110」)を設けられているが、これは一般に飲料クーラー50に要求されるよりも低い温度を要求するからである。
【0039】
冷凍ユニット110は市販のユニットでもよく、蒸発コイル112を有し、これを瞬間冷凍器グリコールタンク114(「ffグリコールタンク114」)内に浸漬し、典型的には約10°F(−26℃)の温度に冷却されたグリコール120(その他の適切な冷却剤)を独自に供給される。小ポンプ116その他の攪拌機をffグリコールタンク114に設けて冷却剤120を循環させて蒸発コイル112とグリコール120との間の対流を促進するようにすることが可能である。
【0040】
冷凍ユニット110は瞬間冷凍器34に、例えば瞬間冷凍器冷却剤ライン130(「ff冷却剤ライン130」)を通って熱的に連絡しており、瞬間冷凍器冷却剤ライン130はffグリコールタンク114からグリコール120を受ける入口132、グリコール120をffグリコールタンク114に戻す出口134を有する。ポンプ136を設けてff冷却剤ライン130に沿ってグリコール120の流れを生じるようにしてもよい。
【0041】
あるいはまた、単一の冷凍ユニットを設けて瞬間冷凍器用のグリコールを冷却するのに適した温度に設定することが可能である。この場合、グリコールはグリコールタンク56に直接か、または熱伝達コイル68を通して間接的に循環させることが可能である。
【0042】
図1に示すように、瞬間冷凍器34は非反応性金属プローブ(例えばステンレス鋼)の形状にしてもよく、ff冷却剤ライン130と流体連絡していることによりこのプローブをグリコール120が通過するようにしてもよい。プローブは最初に容器40により押されて外されるように搭載することが可能である。プローブはこの動きに応答して、ff冷却剤ライン130に沿う流れを開始するように構成することが可能である。例えば、プローブ34は、ポンプ136を活性化するスイッチ140に接続することが可能である。注入が開始されると、容器40は下降されてプローブ34と接触しなくなり、プローブ34が、タップ24から分注されている飲料14の流れ42が通るように戻る。
【0043】
ばねその他のバイアス機構144をプローブ34と結合して飲料14の流れ40が通るようにプローブが戻るようにすることが可能である。
【0044】
上記は、しかし、冷凍表面36を飲料14と接触させる一つの可能な配置である。他の配置も採用できることはこのような装置の当業者には明かである。例えば、冷凍表面36はタップと一体であっても、タップ24に取り付けられるようにしてもよい。タップの残部は好ましくは比較的に熱伝動性を低くして氷形成や誤って瞬間冷凍表面として作用することがないようにする。あるいはまた、図2に図示し、以下に説明するように、容器40に冷凍表面36を設けることが可能である。
【0045】
容器40は基部42と、基部42に対向する口部46を画成する直立した側壁部44とを有する。ヒートシンク48が基部40に貫通して延び、基部40と密封係合している。ヒートシンク48は内側瞬間冷凍表面36を容器40の内側表面41に隣接して有する。ヒートシンク48は外側冷却表面49を、瞬間冷凍表面36の反対側で容器40の外側表面43に隣接して有する。
【0046】
図2の実施形態では、瞬間冷凍クーラー100は冷却表面49を接触させてヒートシンク48から熱を奪う冷却表面150であってもよい。瞬間冷凍器クーラー100は瞬間冷凍器冷却剤ライン130により供給される冷グリコール120により冷却される熱伝導プレート152であってもよい。
【0047】
簡単にするために、ヒートシンクは容器の基部42にあると期待されるが、これは絶対的な要件ではない。例えば、ヒートシンクは側壁部44のスリーブ形成部であってもよく、または基部42全体を形成し、側壁部44にねじ係合していてもよい。さらに、衛生上の理由から、瞬間冷凍表面36を内側表面41に隣接させるが、完全に貫通させるのではなく内側表面41により覆われるようにして飲料14が間に侵入しないようにするのが望ましい。また、瞬間冷凍表面を容器40内に延びさせるのではなく容器40と連続的にすることが望ましい。
【0048】
ヒートシンク48を比較的に良好な熱伝導体、例えばアルミニウムまたは銅をベースとする合金にすると冷凍表面36の急速冷却を促進することが期待されるが、ステンレス鋼その他の適切な材料も使用可能である。容器の残部は典型的には、飲料容器用として周知のガラスやプラスチック、またはセラミック製にする。容器の残部が少なくとも若干の断熱性を有するようにして、形成された氷がより長期間維持されるようにするのが好ましい。
【0049】
経験的な手段により確認された理論的分析により、飲料を、本発明の方法により若干の飲料が冷凍されて氷結晶状態にすることが可能である、必要とされる状態にするのに必要な温度と圧力は飲料の化学的組成によって変化することが示されている。例えば、アルコール含有量は同じであるが、溶質の含有量が異なる2種類のビールにおける氷形成の最適温度範囲は1°Fより多くずれる。アルコール含有量が5体積%である高圧下のビールはアルコール含有量が4体積%であり同じ圧力下のビールよりも4°低い温度で氷結した。圧力要件もCO2 含有量およびアルコール含有量のような変数によってずれる。従って、ビールが本発明の方法および装置に従って氷結晶を中に含んで提供される飲料である場合は、温度範囲は23.0°Fから32°Fに向かう(−5℃〜0℃)範囲で変化することが予想される。これは大部分アルコール含有量によって決まる。「5%」ビールに対して、適切な結果が約24.0°F〜27.0°F(−4.4℃〜−2.7℃)の好適な範囲内になることが予想される。よりアルコール含有量の高いビール(5%超)、またはよりアルコール含有量の低いビール(4%、3%)、あるいはさらに「ノン−アルコール」(0.5%未満)ビールに対して、上記のより広い範囲の両端に向かう偏差値が該当する。同様に、所与のアルコール含有量の範囲内でさえ、特定のブランドに併せるために若干の「微調整」が必要とされる。
【0050】
背後にある機作(メカニズム)は、瞬間冷凍表面に隣接する局所領域においてこの表面の瞬間冷凍温度により水溶液から溶質が追い出されることであると考えられる。さらに詳しくは、溶質(例えばアルコールまたは食塩)が水に溶解するとき、この系の凝固点が降下する。局所化された排熱(瞬間冷凍表面)は影響を受けた溶液から溶質を追い払い、その結果水が凝固して氷結晶となり、この氷結晶がいまやさらに濃くなった溶液中に残存することになる。上述の理論は可能な説明として提供されるものであって制限的または拘束的意味に解されるべきではない。
【0051】
上述の説明は制限的意味のものではなく例示的意味のものである。特許請求の範囲により定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更をなすことが可能であることが当業者には明かである。例えば、瞬間冷凍表面が充分冷えているならば、飲料を加圧して大気圧下の氷点より低く冷却することなく所望の結果を達成することが可能である。ビールがどの程度の温かさであって欲しいと人が思うかについては限界があるが、これは温かいとそのようにして形成された氷結晶が急速に融けるからである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の装置を示す概略図である。
【図2】実際に本発明の一実施形態において使用される飲料グラスを示す軸方向断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料中に所望の量の氷結晶を形成する方法であって、
(i)飲料を大気圧で通常の氷結温度近傍以下の温度に冷却して冷飲料を形成する工程、
(ii)前記飲料を前記飲料の凍結を防止するのに充分な圧力に維持する工程、
(iii)前記冷却された飲料を容器内に分注する工程、
(iv)冷却された表面であって、前記冷却された表面に前記冷却された飲料の一部が接触すると瞬間的に氷結するのに充分な低い温度を有する表面を得る工程、および
(v)前記冷却された表面を前記分注の際に前記飲料に充分な時間提示して、前記飲料中に所望の量の氷結晶を形成する工程
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記工程(i)における前記温度は前記通常の氷結温度以下であり、かつ
前記所望量の氷結晶形成の形成が達成されると、前記冷却表面は前記飲料との接触を解かれるか、それより高い温度ではそれ以上氷結晶が形成されない温度に昇温することを許容するかの少なくとも一方にする
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記飲料はビールであり、
前記工程(i)における前記温度はビールのアルコール含有量28.4°Fにより決定される23.0°F(華氏)から28.0°F(華氏)に向かう温度であり、そして
前記圧力は15psi〜110psi以上である
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記飲料は、分注タップを通して分注され、かつ
前記圧力は前記分注タップの間、前記タップの直前上流の圧力を減圧にして跳ねかけ(splash)および前記タップの上流での氷結を防止する
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記飲料は5体積%のアルコール含有量のビールであり、
前記工程(i)の前記温度は24.0°F〜27.0°F(−4.4℃〜−2.7℃)であり、かつ
前記圧力は、少なくとも60psiである
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
飲料の一部が氷結晶状態である飲料の容器を冷却し、提示する飲料分注装置であって、
前記飲料の容器から前記飲料を受け取る飲料入口部と、前記タップおよび前記飲料入口の間に延び、前記タップと前記飲料入口との間に柳端連絡を与える飲料導管と、
前記導管と連絡して前記飲料の圧力を、氷結を防止するのに充分な圧力に昇圧する飲料圧縮機と、
前記飲料導管と関連し、前記導管内の少なくとも前記飲料を大気圧下でその氷点より低い温度まで冷却するが前記昇圧下ではその氷結点より高い温度に冷却する飲料クーラーと、
前記タップに隣接し前記飲料の圧力を、前記導管内の昇圧された圧力から分注圧力に減圧して前記タップが開形状であるときに前記タップからの分注を容易にする、減圧器と、
前記容器内に前記飲料を注入する際に前記飲料が接触して前記飲料の一部が凍結して前記注入の間に氷結晶を形成するようにする冷凍表面を持つ瞬間冷凍機と、
前記瞬間凍結器と連結され、前記凍結表面を、接触時に氷結晶を形成するように充分低い温度に冷却する瞬間凍結クーラー
を備えたことを特徴とする飲料分注装置。
【請求項7】
前記飲料クーラーは、
ある長さの導管と、
前記ある長さの導管を囲み、前記ある長さの導管を浸漬する冷えた冷却剤を受容する冷却剤浴と、
前記浴中の前記冷却剤と連通させて前記冷却剤を冷却する飲料クーラー冷却ユニットを備え、
前記タップは、前記飲料と接触する少なくともその一部分において低熱伝動性材料製である
ことを特徴とする請求項6に記載の飲料分注装置。
【請求項8】
前記瞬間冷凍機クーラーは、前記冷凍表面と連通し前記冷凍表面を冷却する瞬間冷凍機冷凍ユニットを備えたことを特徴とする請求項6に記載の飲料分注装置。
【請求項9】
前記飲料冷却剤冷凍ユニットおよび前記瞬間冷凍機冷凍ユニットは別個のユニットであることを特徴とする請求項8に記載の飲料分注装置。
【請求項10】
前記冷却剤浴中に浸漬される前記導管の前記長さはコイル状であることを特徴とする請求項9に記載の飲料分注装置。
【請求項11】
前記減圧器は前記タップ上流の流量制限器であることを特徴とする請求項10に記載の飲料分注装置。
【請求項12】
さらに、
前記冷却剤の温度が所定の温度より低くなったときに前記浴中の前記冷却剤を加熱するヒーターと、
冷却剤温度およびビール温度の少なくとも一方を感知するセンサと、
前記ヒーターと前記センサに連絡し、前記ヒーターを活性化および不活性化し、かつ前記冷却剤浴と前記飲料冷却剤冷凍ユニットの間に冷却剤の流れを提供するポンプを不活性化および活性化するコントローラ
を備えたことを特徴とする請求項11に記載の飲料分注装置。
【請求項13】
前記コントローラは、さらに前記飲料冷凍ユニットと連絡し、前記飲料冷凍ユニットを不活性化および活性化するように、一方前記ヒーターを活性化および不活性化するように構成されていることを特徴とする請求項12に記載の飲料分注装置。
【請求項14】
前記瞬間冷凍機は、前記注入の間、前記飲料を通される冷却されたプローブであることを特徴とする請求項12または13に記載の飲料分注装置。
【請求項15】
前記瞬間冷凍機は前記容器の表面であり、前記瞬間冷凍機クーラーは少なくとも前記分注の前は前記容器と接触する冷表面であることを特徴とする請求項13に記載の飲料分注装置。
【請求項16】
前記瞬間冷凍機は前記タップと関連していることを特徴とする請求項13に記載の飲料分注装置。
【請求項17】
前記流量制限器は弁、オリフィスおよび前記導管の縮小径部分の少なくとも1つであることを特徴とする請求項14に記載の飲料分注装置。
【請求項18】
前記流量制限器は弁、オリフィスおよび前記導管の縮小径部分の少なくとも1つであることを特徴とする請求項15に記載の飲料分注装置。
【請求項19】
前記流量制限器は弁、オリフィスおよび前記導管の縮小径部分の少なくとも1つであることを特徴とする請求項16に記載の飲料分注装置。
【請求項20】
冷飲料が容器に分注される間に氷形成を促進するための飲料容器であって、前記飲料容器は、
基部と、
前記基部から延出し、前記基部と対向する口部を画成する側壁部分と、
前記基部を貫通して延び密封裏に前記基部と係合しているヒートシンクであって、前記基部の外面に隣接して冷却面と接触する外表面と前記基部の内面に隣接して飲料と接触して前記飲料から熱を奪う内表面とを有する前記ヒートシンクとを備え、
前記ヒートシンクは前記容器の残りの部分よりも熱伝動性が高い
ことを特徴とする飲料容器。
【請求項21】
前記容器の前記基部と前記側壁はガラスまたはプラスチック製であり、かつ前記ヒートシンクは金属製であることを特徴とする請求項20に記載の容器。
【請求項22】
前記ヒートシンクはアルミニウムまたは銅をベースとする合金であることを特徴とする21に記載の容器。
【請求項23】
前記ヒートシンクは前記基部を貫通して延びていることを特徴とする請求項22に記載の容器。
【請求項24】
冷却剤ジャケットが前記タップに隣接する前記導管の周りに設けられており、前記浴と前記タップとの間で前記導管の周りの前記冷却剤の循環をすることを特徴とする請求項12に記載の飲料分注装置。
【請求項25】
冷却剤ジャケットへの入口が、前記冷却剤浴と前記冷却剤ジャケットの間に接続された冷却剤ジャケットポンプを介して前記冷却剤浴と流体連絡し、かつ前記冷却剤ジャケットの出口が前記冷却剤浴と直接流体連絡して、前記冷却剤ジャケットから前記冷却剤浴への流体戻しとして動作することを特徴とする請求項13に記載の飲料分注装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−510594(P2007−510594A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538615(P2006−538615)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/CA2004/001814
【国際公開番号】WO2005/047172
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506155989)アイスフロー テクノロジーズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】