説明

飲料冷却装置

【課題】攪拌手段の構成を簡単にするとともに、攪拌部材の回転駆動時の芯ブレを防止して、コストが安く、故障が少ない飲料冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却水を貯留する冷却水槽3と、冷却水に浸漬されて飲料を冷却する飲料冷却管5,6と、冷却水に浸漬されて該冷却水を冷却する冷却管8と、冷却水を攪拌する攪拌手段9とを備えた飲料冷却装置1において、攪拌手段9は、駆動手段11と攪拌部材12を有し、攪拌部材12は、縦長に形成される軸部12aと、その一方の端部に設けられた攪拌羽根部12cと、その他方の端部に設けられ駆動手段11と連結する連結部12bとを一体的に備え、軸部12aが連結部12bから攪拌羽根部12cに向けて広がるように略円錐形状に延びて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料ディスペンサやカップ式自動販売機などに適用する飲料冷却装置に関し、特に水槽内に貯留される冷却水を用いて飲料を冷却するものであって、その冷却水を攪拌する攪拌手段を備えた飲料冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこのような飲料冷却装置としては、先に本出願人が出願し、公開された特開2006−206149号公報(特許文献1)に記載されるような飲料冷却装置が知られている。この特許文献1に記載される飲料冷却装置は、冷却水を貯留する冷却水槽と、冷却水を攪拌するための攪拌手段を備え、その冷却水により冷却された飲料を提供するための飲料ディスペンサに適用されるものであって、攪拌手段は、冷却水に浸漬された状態でその冷却水を攪拌する攪拌部材と、攪拌部材を駆動させる攪拌モータと、攪拌部材と攪拌モータとを連結する連結部材とを有してなり、連結部材は、攪拌モータからの駆動力を攪拌部材に伝達する一方、攪拌部材から攪拌モータへの熱の伝達を低減させる部材により構成されるものである。
【0003】
これによれば、攪拌部材と攪拌モータとを連結する連結部材が、攪拌モータからの駆動力を攪拌部材に伝達する一方、攪拌部材から攪拌モータへの熱の伝達を低減させることができるので、攪拌モータの運転が停止されてその発熱がない場合に、冷却水の冷熱が攪拌モータに伝達されてその内部を冷却し、それによりその内部に水滴等が生じて故障する不具合を防止することができるというものである。また、これにより、攪拌手段を適宜に間欠運転することが可能となるから、消費電力の一層の低減化を図ることができるという効果を奏するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−206149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような従来の冷却装置においては、攪拌手段による冷却水の攪拌効率を向上させるためと、水槽水面の水跳ねを防止するために、攪拌手段の攪拌部材に設けられる攪拌羽根は、水槽の水面下深くに延びた縦長の回転軸の下端部に形成されている。また、攪拌部材と攪拌モータは、その間の熱伝達を低減するため、熱伝導性の低い樹脂などから成る連結部材により連結されている。そのため、この攪拌手段は、構成部品が多いためにコストが高く、また攪拌部材の回転駆動時に芯ブレが生じて振動等の異常が発生し易い構造であった。
【0006】
本発明は、このような問題に対応するため、攪拌手段の構成を簡単にするとともに、攪拌部材の回転駆動時の芯ブレ等を防止して、コストを安くするとともに、故障が少ない飲料冷却装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、冷却水を貯留する冷却水槽と、前記冷却水に浸漬されて飲料を冷却する飲料冷却管と、前記冷却水に浸漬されて該冷却水を冷却する冷却器と、前記冷却水を攪拌する攪拌手段とを備えた飲料冷却装置において、前記攪拌手段は、駆動手段と攪拌部材を有し、前記攪拌部材は、縦長に形成される軸部と、その一方の端部に設けられた攪拌羽根部と、その他方の端部に設けられ前記駆動手段と連結する連結部とを一体的に備え、前記軸部が前記連結部から前記攪拌羽根部に向けて広がるように略円錐形状に延びて形成されるものである。
【0008】
これによれば、前記攪拌手段の構成を攪拌モータ等から成る前記駆動手段と、前記軸部の両端部にそれぞれ前記連結部と前記攪拌羽根とを備えた前記攪拌部材とにより構成することができるから、その構成を簡単にすることができる。また、前記軸部を略円錐状に形成し、前記攪拌羽根が設けられる側の一方の径を前記連結部が設けられる側の他方の径より大きくすることでその曲がりを抑え、前記軸部の他方に対する一方の芯ブレを少なくすることができる。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の飲料冷却装置において、前記攪拌手段の軸部に設けえられる前記連結部は、前記冷却水槽に貯留される冷却水の水面から突出する状態で前記駆動手段と連結されるとともに、前記攪拌部材は低熱伝導部材により形成されるものである。
【0010】
これによれば、前記冷却水槽内の冷却水の冷熱が前記攪拌部材を介して前記駆動手段に伝達され、その内部が冷却されることが防止されるから、前記駆動手段の内部に水滴等が生じる不具合を防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように請求項1に係る発明によれば、攪拌手段の構成を簡単にすることができるからコストを安くし、また、攪拌手段の軸部の芯ブレを少なくすることで振動の発生等を抑止し、それによる故障を少なくすることができる飲料冷却装置を提供することができる。
また、請求項2に係る発明によれば、攪拌手段を構成する駆動手段の内部に水滴等が生じる不具合を防止することができるから、故障の少ない高品質の飲料冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の飲料冷却装置の構造を模式的に示す図であって、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態の飲料冷却装置を構成するアジテータを示す図であって、(a)は正面断面図、(b)は底面図、(c)はその攪拌部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態の飲料冷却装置の構造を模式的に示す図であって、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
この飲料冷却装置1は、カップ式自動販売機や、飲料ディスペンサにおいて、カップに吐出して供給される飲料水等を冷却する装置として用いられるもので、図に示すように、冷却水を満たした冷却水槽3と、その冷却水槽3内に浸漬配備した飲料冷却コイル(飲料冷却管)5と、同様に冷却水槽内に配備した複数のシロップ冷却コイル(飲料冷却管)6と、カーボネータ7と、冷凍機(図示なし)に接続される蒸発管(冷却器)8と、冷却水の攪拌用のアジテータ(攪拌手段)9とを備えている。ここで、飲料冷却コイル5は、図示しない水リザーバタンクなどから供給される飲料水等を冷却水槽3に満たされた冷却水中を通過させることにより冷却し、また、シロップ冷却コイル6は、同様に図示しないシロップタンクから供給されるシロップ液を冷却水槽3に満たされた冷却水中を通過させることにより冷却し、これらを図示しないベンドステージ上のカップ等に吐出して供給するためのものである。なお、本実施の形態においては、3種類のシロップ液に対応するため3本のシロップ冷却コイル6が配置されている。また、カーボネータ7は、冷却水槽3内の冷却水に浸漬され冷却された状態において、水に炭酸ガスを効率的に溶融して炭酸水を製造し、同様に図示しないベンドステージ上のカップ等に吐出、供給するためのものである。
【0014】
冷却水槽3内では、図示のようにその中部領域の内面3aに沿って冷凍機の蒸発管8をU字形状に折り曲げて積み重さなるように配管するとともに、そのU字形状の蒸発管8の内側に螺旋状に幾重にも巻回された飲料冷却コイル5を配置し、さらにその螺旋状の飲料冷却コイル5の内側にカーボネータ7、および冷却水の攪拌用のアジテータ9を水平方向に略並列に配置している。また、アジテータ9の周囲には、その攪拌部材12を囲繞するように中空状の送水ガイド15が備えられている。
さらに、U字形状に形成された蒸発管8の開放側には、横方向に螺旋状に巻回されたシロップ冷却コイル6が、U字形状の蒸発管8の開放側と対向するように備えられている。なお、U字形状に折り曲げて形成される蒸発管8の内面側と螺旋状に巻回される飲料冷却コイル5の外周の間には、蒸発管8の周りに生成される氷塊が、その内側の飲料冷却コイル5に及ばない程度の間隔が設けられている。また、同様に蒸発管8の開放側に配置されるシロップ冷却コイル6と蒸発管8の開放側端部の間にも同程度の間隔が設けられている。
【0015】
また、蒸発管8の周りには、その周りに生成される氷塊を検知する図示しない電極式のコントロールセンサを備えている。これらの電極式のコントロールセンサは、氷と水の電導度(抵抗値)が違う性質(水よりも氷の方が比抵抗が大きい)を利用して、蒸発管8の周囲に生成される氷塊の氷厚(大きさ)を制御する。そして、蒸発管8の周りに生成した氷塊を蓄熱源として、アジテータ9の運転により冷却水槽3内に満たした冷却水を攪拌、循環し、飲料冷却コイル5内を通過する飲料水、シロップ冷却コイル6内を通過するシロップ液、及びカーボネータ7によって生成される炭酸水を冷却するようにしている。
【0016】
図2は、本発明の実施形態の飲料冷却装置を構成するアジテータ9を示す図であって、(a)は正面断面図、(b)は底面図、(c)はその攪拌部材の斜視図である。図に示すようにアジテータ9は、駆動源となる攪拌モータ(駆動手段)11と、冷却水槽3内の冷却水を攪拌する攪拌部材12を備えて構成されている。攪拌部材12は、例えばポリアセタール等の低伝熱性の樹脂から形成され、縦長の軸部12aと、軸部12aの一方の端部に形成された連結部12bと、その他方の端部の周囲に形成されたプロペラ部(攪拌羽根部)12cを有している。連結部12bは、攪拌モータ11の出力軸11aの外径に適合する内径を有して筒状に形成され、攪拌モータ11の出力軸11aを挿入した後、取付ピン13をそれらに貫通するように装着することにより、攪拌モータ11の出力軸11aと攪拌部材12を連結するように構成されている。また、縦長の軸部12aは、連結部12bが形成される一方の端部からプロペラ部12cが形成される他方の端部に向けて径が大きくなるように略円錐形状に延びて形成されている。これにより、攪拌モータ11に連結されて固定される連結部12bに対し、プロペラ部12cが設けられる自由端側の撓み(曲がり)量を少なくして、軸部12aの軸心に対するプロペラ部12cの芯ブレを少なくすることができる。なお、軸部12aを図に示すように均等肉厚のテーパ筒形状に形成すれば、攪拌部材12を樹脂射出成型により成型する場合に、ソリやヒケを少なくして芯ブレや変形の少ない攪拌部材12を製造することができる。また、攪拌部材12には、軸部12aの連結部12b側であって、冷却水槽3内の冷却水の水面の上方に位置する部位に平板状の水跳ね防止板16を設けても良い。これにより、冷却水の水面から跳ねた水滴が、攪拌部材12を回転駆動する攪拌モータ11の内部に付着しないようにすることができる。
【0017】
また、送水ガイド15に囲繞されたアジテータ9は飲料冷却コイル5の内側であって、冷却水槽3の略中央に配置されている。そして、送水ガイド15は、アジテータ9の回転によりその下方から吐出される冷却水が、垂直に流下して冷却水槽3の底面に到達し、その底面に沿って拡散するように、その下端をアジテータ9のプロペラ部12cの下方に延ばして形成されている。なお、送水ガイド15の周面には、冷却水をその内側に取り込むための複数のスリット部15aが形成されている
このような構成において、アジテータ9の攪拌部材12が回転駆動されると、そのプロペラ部12cの回転力により生じた冷却水の水流は、略垂直に流下して冷却水槽3の底面に達し、その底面に沿って拡散する。そして、冷却水槽3の側面に沿って上昇し、冷却水槽3の側面に沿ってU字形状に形成された蒸発管8の周りに生成された氷塊と接触して熱交換することで冷却される。このようにして冷却された冷却水は、蒸発管8の内側に配置される飲料冷却コイル5、カーボネータ7と接触しこれらと熱交換を行うことで飲料冷却コイル5を通過する飲料や、カーボネータ7内で生成される炭酸水を冷却する。また、同様に蒸発管8の開放側に配置されるシロップ冷却コイル6と接触してその内部を通過するシロップ液を冷却する。その後、この冷却水は送水ガイド15の周面に形成されるスリット部15aを介して送水ガイド15に囲繞されたアジテータ9の攪拌部材12に還流する。このようにして冷却水槽3内の冷却水が循環し、飲料が冷却される。
【0018】
以上のように、本発明の飲料冷却装置1は、アジテータ9の構成を攪拌モータ11と、軸部12aの両端部にそれぞれ連結部12bとプロペラ部12cとを一体に備えた攪拌部材12とにより構成することができるから、その構成を簡単にすることができる。また、その軸部12aを略円錐状に形成し、プロペラ部12cが設けられる側の一方の径を連結部12bが設けられる側の他方の径より大きくすることでその曲がりを抑え、軸部12aの他方に対する一方の芯ブレを少なくすることができる。したがって、これによりアジテータ9の構成を簡単にすることができるからコストを安くし、また、アジテータ9の軸部12aの芯ブレを少なくすることで振動の発生等を抑止し、それによる故障を少なくすることができる飲料冷却装置1を提供することができる。
また、攪拌部材12を低伝熱性の樹脂により形成することにより、冷却水槽3内の冷却水の冷熱が攪拌部材12を介して攪拌モータ11に伝達され、その内部が冷却されることが防止されるから、攪拌モータ12の内部に水滴等が生じる不具合を防止することができる。すなわち、これにより故障の少ない高品質の飲料冷却装置1を提供することができる。
【0019】
なお、本発明は、言うまでもなく本実施の形態に示す装置にのみ限定されず、その趣旨の包含する範囲で応用変更が可能である。例えば、この飲料冷却装置1を構成する冷却水槽3や蒸発器8、飲料冷却コイル5等の構成、形状や、攪拌部材12の連結部12b、プロペラ部12c等の形状等は、この実施形態に示すものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0020】
1 飲料冷却装置
3 冷却水槽
5 飲料冷却コイル(飲料冷却管)
6 シロップ冷却コイル(飲料冷却管)
8 蒸発管(冷却器)
9 アジテータ(攪拌手段)
11 攪拌モータ(駆動手段)
12 攪拌部材
12a 軸部
12b 連結部
12c プロペラ部(攪拌羽根部)
15 送水ガイド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水を貯留する冷却水槽と、前記冷却水に浸漬されて飲料を冷却する飲料冷却管と、前記冷却水に浸漬されて該冷却水を冷却する冷却器と、前記冷却水を攪拌する攪拌手段とを備えた飲料冷却装置において、前記攪拌手段は、駆動手段と攪拌部材を有し、前記攪拌部材は、縦長に形成される軸部と、その一方の端部に設けられた攪拌羽根部と、その他方の端部に設けられ前記駆動手段と連結する連結部とを一体的に備え、前記軸部が前記連結部から前記攪拌羽根部に向けて広がるように略円錐形状に延びて形成されることを特徴とする飲料冷却装置。
【請求項2】
前記攪拌手段の軸部に設けられる前記連結部は、前記冷却水槽に貯留される冷却水の水面から突出する状態で前記駆動手段と連結されるとともに、前記攪拌部材は低熱伝導部材により形成されることを特徴とする請求項1に記載の飲料冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−121620(P2012−121620A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275731(P2010−275731)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】