説明

飲料容器用フィッティング

【課題】口金と取付部材との間隙への異物や汚水等の侵入を完全に防止するとともにメインテナンス作業を軽減することのできる飲料容器用フィッティングを提供する。
【解決手段】飲料容器9の口金93と一体に設けられた取付部94と、前記取付部の内周側に設けられた弁座部95と、上端部が前記取付部に支持された管状のダウンチューブ5と、前記ダウンチューブの上端部に嵌合され、加圧ガスを容器内部に供給するためのガス弁3と、前記ダウンチューブの上端部内部に設けられ、飲料を容器外に注出するための飲料弁4とを有する。そして前記ガス弁は、前記弁座部の中央孔を通して交換可能なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビール樽等の飲料容器の口金に取り付けられて、ディスペンスヘッドと接続するための飲料容器用フィッティングに関するものであり、さらに詳しくは、口金と取付部材との間隙への異物や雨水等の侵入を完全に防止するとともにメインテナンス作業を軽減することのできる飲料容器用フィッティングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビール樽等の飲料容器の口金には、フィッティングが取り付けられており、そのフィッティングにディスペンスヘッドが接続される。このディスペンスヘッドを介して飲料容器内に二酸化炭素等の圧力ガスを供給し、飲料容器内の飲料を容器外に注出する。従来のフィッティングと口金の取り付け状態を、図8を参照して説明する。図8は、従来のフィッティングを飲料容器に取り付けた状態を示す正面からの断面図である。図8は、飲料は生ビールであり、飲料容器はビール樽の場合である。ビール樽9の上部に設けられた口金91の内側には、フィッティングの取付部材20がねじ込まれて固定されている。また、取付部材20にはばねで上方に付勢されたダウンチューブ5が取り付けられている。
【0003】
ダウンチューブ5の上端部にはガス弁3が固定されており、また、ダウンチューブ5の上端内部にはビール弁4が上方に付勢されて設けられている。ガス弁3およびビール弁4は、コイルばねによる付勢力によって閉状態となっている。口金91および取付部材20にはディスペンスヘッドが取り付け可能である。ディスペンスヘッドと取付部材20とは、係合突起22によるバヨネット機構等の接続機構によってワンタッチで結合することができる。
【0004】
ディスペンスヘッドは、ガス弁3およびビール弁4を操作し、二酸化炭素ガス等の圧力ガスをビール樽9内に供給し、ビール樽9の内圧を高めて生ビールをダウンチューブ5およびビール弁4を通して容器外に注出させるための装置である。口金91と取付部材20との間からのガス漏れを封止するために、口金91の下部内面と取付部材20との間にはパッキン24が設けられている。
【0005】
このような構成のフィッティングは、口金91に取付部材20がねじ込み固定されているとはいえ、口金91と取付部材20との間に微少な隙間が存在する。その隙間から雨水や生ビールが侵入する。隙間から侵入したそれらの汚水は、パッキン24によりビール樽9内への侵入は阻止されるが、口金91と取付部材20との間に長くとどまり、衛生上好ましいものではない。ビール樽を洗浄し高温殺菌する際に、この隙間内の汚水が沸騰して噴出することから、この隙間内に汚水が溜まっていることを確認することができる。この隙間内の汚水は、ビール樽を炎天下に放置した場合などには、熱膨張して隙間からしみ出てくるおそれがあり、さらには口金内に侵入して生ビールを汚染するおそれもある。
【0006】
そこで、本出願の発明者により、下記の特許文献1に記載されたフィッティングが提案されている。特許文献1のフィッティングは、口金の下部内面と取付部材との間の間隙を封止する第1封止部材に加えて、フィッティングの最上部にも第2封止部材を設け、口金と取付部材との間隙に異物や雨水等が侵入しにくくしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−79991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8に示すような従来のフィッティングでは、口金91と取付部材20との間に異物や汚水等が侵入して溜まってしまい衛生上好ましくない。さらに、パッキン24は、ゴム等の柔軟性材料であるため摩耗や腐食等による劣化が避けられず、定期的な交換が必要である。このように、従来はフィッティングのメインテナンスとして、殺菌・洗浄作業やパッキン24の交換作業を定期的に行う必要があった。
【0009】
また、特許文献1のようなフィッティングでも異物や汚水等の侵入を完全に防止することは困難である。また、第1封止部材と第2封止部材もゴム等の柔軟性材料であるため摩耗や腐食等による劣化が避けられず、定期的な交換が必要である。したがって、特許文献1のフィッティングでも、メインテナンス作業の頻度を減少させることはできるが、殺菌・洗浄作業や第1封止部材と第2封止部材の交換作業を定期的に行う必要があった。
【0010】
そこで、本発明は、口金と取付部材との間隙への異物や汚水等の侵入を完全に防止するとともにメインテナンス作業を軽減することのできる飲料容器用フィッティングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の飲料容器用フィッティングは、飲料容器の口金と一体に設けられた取付部と、前記取付部の内周側に設けられた弁座部と、上端部が前記取付部に支持された管状のダウンチューブと、前記ダウンチューブの上端部に嵌合され、加圧ガスを容器内部に供給するためのガス弁と、前記ダウンチューブの上端部内部に設けられ、飲料を容器外に注出するための飲料弁とを有し、前記ガス弁は、前記弁座部の中央孔を通して交換可能なものである。
【0012】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記ガス弁は、一部の直径が他の部分の直径よりも小さくなるように形成された金属製の芯金と、当該芯金と一体的に成形された柔軟性の大きな弁部材とからなるものを使用することができる。前記ガス弁は、傾斜状態では前記弁座部の中央孔を通過可能であるが、水平状態では前記弁座部の中央孔を通過不能である。
【0013】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記ガス弁は、柔軟性の大きな弁部材と、一部の直径が他の部分の直径よりも小さくなるように形成され、前記弁部材の上面を覆う金属製のカバー金具とからなるものを使用することができる。前記カバー金具は、傾斜状態では前記弁座部の中央孔を通過可能であるが、水平状態では前記弁座部の中央孔を通過不能である。
【0014】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記弁部材を前記弁座部の中央孔を通過させて、前記ダウンチューブの上端部に嵌合し、その後、前記カバー金具を傾斜状態として前記弁座部の中央孔を通過させ、前記弁部材の上面に配置し固定して、前記ガス弁を組み立てることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0016】
飲料容器の口金に最初から取付部と弁座部を一体に設けたり、口金と取付部材の上面の間隙を溶接して封止したので、口金と取付部材との間隙への異物や汚水等の侵入を完全に防止することができる。これによって、口金部の殺菌処理や異物の除去作業等を軽減することができる。また、パッキンの交換作業をなくし、メインテナンス作業を軽減することができる。
【0017】
ダウンチューブ、ガス弁および飲料弁を有する従来と同様の構成のフィッティングであるため、従来品との互換性も十分である。また、従来のフィッティングを有効に利用して、本発明のフィッティングを製造することが容易に行える。これにより、本発明のフィッティングの導入コストを大幅に低減できるとともに、資源の有効利用が可能となる。
【0018】
ガス弁を、傾斜状態では弁座部の中央孔を通過可能であるが、水平状態では弁座部の中央孔を通過不能であるものとしたので、弁座部の中央孔を通してガス弁の交換作業を行うことができる。
【0019】
ガス弁が、傾斜状態では弁座部の中央孔を通過可能であるが、水平状態では弁座部の中央孔を通過不能であるカバー金具を有するものであるから、弁座部の中央孔を通してガス弁の交換作業を行うことができる。
【0020】
飲料容器の口金に最初から取付部と弁座部を一体に設けたものでは、飲料容器を新規に製造する場合の製造コストをさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明のフィッティングの断面図である。
【図2】図2は、ガス弁3を上方から見た平面図である。
【図3】図3は、他の形態のガス弁3aを使用したフィッティングの断面図である。
【図4】図4は、ガス弁3a上方から見た平面図である。
【図5】図5は、ガス弁3aの組み立て手順を示す図である。
【図6】図6は、他の形態の封止部材25aの構成を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の他の形態のフィッティングを示す断面図である。
【図8】図8は、従来のフィッティングをビール樽に取り付けた状態を示す正面からの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明のフィッティングの断面図である。図1はフィッティングの口金91近傍部分を拡大して正面から見た断面図である。ここでは飲料として生ビール、飲料容器としてビール樽を例にとって説明する。ビール樽9の上部に設けられた口金91の内周には雌ねじ92が形成されており、その雌ねじ92にフィッティングの取付部材2がねじ込まれて固定されている。すなわち、取付部材2の外周上部に形成された雄ねじ21が雌ねじ92と螺合している。
【0023】
取付部材2にはばねで上方に付勢されたダウンチューブ5が取り付けられている。ダウンチューブ5の上端部にはガス弁3が圧入等により固定されており、また、ダウンチューブ5の上端内部にはビール弁4が上方に付勢されて設けられている。ガス弁3はダウンチューブ5とともにコイルばね6によって上方に付勢されており、取付部材2の弁座部23に押し付けられている。ビール弁4は、コイルばね7による付勢力によってガス弁3下部の弁座部分に押し付けられている。ガス弁3およびビール弁4は通常状態が閉状態である。
【0024】
取付部材2にはディスペンスヘッドが取り付け可能である。取付部材2の上部内周側には内方に突出する係合突起22が設けられており、ディスペンスヘッドと取付部材2とは、係合突起22によるバヨネット機構等の接続機構によってワンタッチで結合することができる。ディスペンスヘッドにより、ガス弁3およびビール弁4を操作し、二酸化炭素ガス等の圧力ガスをビール樽9内に供給し、ビール樽9の内圧を高めて生ビールをダウンチューブ5およびビール弁4を通して容器外に排出させることができる。
【0025】
口金91と取付部材2との間からのガス漏れを封止するために、口金91の下部内面と取付部材2との間には封止部材25が配置されている。本発明では、封止部材25は耐腐食性の軟質ステンレス綱からなるリング状の部材である。ステンレス綱の封止部材25であるから、従来のゴム製パッキンの場合に比較して、口金91に対する取付部材2のねじ込み力(ねじ締め付けトルク)を増加させることが好ましい。
【0026】
口金91に対して取付部材2を十分なトルクでねじ込んだ後、図1に示すように、口金91上端部と取付部材2上端部との間を溶接によって固着および封止する。溶接は円周全周にわたって両者の間の隙間を完全に塞ぐようになされている。このため、口金91と取付部材2との間隙への異物や汚水等の外部からの侵入を完全に防止することができる。また、ビール樽9内部の圧力ガスも封止部材25によって封止されて外部に漏れ出すことはない。さらに、封止部材25は耐腐食性の軟質ステンレス綱からなるので、ビール樽9の寿命の最後まで交換することなく使用することができる。このため、パッキン交換等のメインテナンス作業を軽減することができる。
【0027】
ガス弁3は、ゴム等の柔軟性部材からなる弁部材32がステンレス材等からなる芯金31と一体に成形されたものである。従来のガス弁では、この芯金の外周縁が円形であったが、本発明では、ガス弁3を弁座部23の中央孔を通して交換する必要があるため、芯金31の形状を従来とは異なるものとしている。
【0028】
図2は、ガス弁3を上方から見た平面図である。芯金31の外周縁には、中心に対して対称な2位置に互いに平行な平坦部が設けられている。このため平坦部が設けられた位置での芯金31の直径(短径=平坦部間の距離)は、これと直交する方向の直径(長径)に比較して小さくなっている。この平坦部が設けられた部分は、弁座部23の中央孔を通過可能な寸法となっている。すなわち、芯金31の短径寸法は弁座部23中央孔の直径よりも小さく、芯金31の長径寸法は弁座部23中央孔の直径よりも大きくなっている。
【0029】
ガス弁3をダウンチューブ5の上端部に取り付けるには、まず、ガス弁3を芯金31の長径方向に傾斜させて、弁座部23の中央孔を通過させる。弁部材32が弾性変形するので、芯金31の短径寸法を弁座部23の中央孔の直径より小さい範囲で適宜の値に設定しておくことにより、ガス弁3に弁座部23の中央孔を通過させることができる。ガス弁3をダウンチューブ5側に通過させた後、ガス弁3の下部小径部を図1に示すようにダウンチューブ5の上端部に嵌合する。
【0030】
ガス弁3をダウンチューブ5の上端部に嵌合すると、図示のように芯金31は水平状態となり傾斜不能となる。芯金31が水平状態では、芯金31の長径が弁座部23中央孔の直径よりも大きいため、ガス弁3は弁座部23に当接し中央孔を通過することはできない。ガス弁3をダウンチューブ5の上端部から取り除くときは、まず、ガス弁3をダウンチューブ5の上端部から取り外し、ガス弁3を芯金31の長径方向に傾斜させて、弁座部23の中央孔を上方に通過させて取り除くのである。
【0031】
このように、ガス弁3の芯金31を、一部の直径が他の部分の直径よりも小さくなるように形成することによって、ガス弁3が弁座部23の中央孔を通して交換可能となるのである。このため、溶接によって取付部材2を口金91に固着してしまっても、ガス弁3の交換作業に支障を来すことはない。なお、ガス弁3を取り除いてしまえば、ビール弁4、ダウンチューブ5、コイルばね6,7等の他の部材も全て弁座部23の中央孔を通して交換することができる。
【0032】
図3は、他の形態のガス弁3aを使用したフィッティングの断面図である。図3はフィッティングの口金91近傍部分を拡大して正面から見た断面図である。ガス弁3a以外のフィッティングの構成は、図1のものと同じであるため説明は省略する。ガス弁3aは、ゴム等の柔軟性部材からなる弁部材34がステンレス材等からなる芯金33と一体に成形されたものである。また、弁部材34の上面側にはステンレス材等からなるカバー金具35が配置され、弁部材34に固定されている。
【0033】
図4は、ガス弁3a上方から見た平面図である。弁部材34の上面にカバー金具35が配置され固定されている。この形態のガス弁3aは、弁部材34とカバー金具35とを分離した状態で、弁座部23中央孔を通過させ、交換を行うものである。芯金33の直径は弁座部23中央孔の直径よりも小さく形成されている。弁部材34が弾性変形可能であるため、弁部材34は弁座部23の中央孔を通過可能である。
【0034】
カバー金具35の外周縁には、中心に対して対称な2位置に互いに平行な平坦部が設けられている。このため平坦部が設けられた位置でのカバー金具35の直径(短径=平坦部間の距離)は、これと直交する方向の直径(長径)に比較して小さくなっている。この平坦部が設けられた部分は、弁座部23の中央孔を通過可能な寸法となっている。すなわち、カバー金具35の短径寸法は弁座部23中央孔の直径よりも小さく、カバー金具35の長径寸法は弁座部23中央孔の直径よりも大きくなっている。
【0035】
図5がガス弁3aの組み立て手順を示す図である。ガス弁3aをダウンチューブ5の上端部に取り付けるには、まず、弁部材34を傾斜させて弁座部23の中央孔を通過させ、次いで、弁部材34の下部小径部をダウンチューブ5の上端部に嵌合する。なお、図5ではダウンチューブ5は図示していない。次に、カバー金具35を長径方向に傾斜させて、弁座部23の中央孔を通過させる。
【0036】
そして、図示のように、カバー金具35を弁部材34の上面に配置した後、カバー金具35と弁部材34とを一体に固定してガス弁3aとする。カバー金具35の固定は、カバー金具35の小径部下端を専用工具により拡径することにより行う。カバー金具35の拡径した部分が芯金33の内周と係合して、カバー金具35の脱落を防止する。拡径は内周全周で行ってもよいが、適宜の複数点のみ拡径するだけでも十分である。
【0037】
ガス弁3aをダウンチューブ5の上端部に嵌合して組み立てると、図3に示すようにカバー金具35は水平状態となり傾斜不能となる。カバー金具35が水平状態では、カバー金具35の長径が弁座部23中央孔の直径よりも大きいため、ガス弁3aは弁座部23に当接し中央孔を通過することはできない。
【0038】
ガス弁3aをダウンチューブ5の上端部から取り除くときは、逆の手順で行う。まず、専用工具を使用してガス弁3aからカバー金具35を分離し、カバー金具35を傾斜させ弁座部23の中央孔を通過させて取り除く。次に、弁部材34をダウンチューブ5の上端部から取り外し、弁座部23の中央孔を通過させて取り除くのである。
【0039】
このように、ガス弁3aを芯金33、弁部材34およびカバー金具35とから構成し、カバー金具35の一部の直径が他の部分の直径よりも小さくなるように形成することによって、ガス弁3aが弁座部23の中央孔を通して交換可能となるのである。このため、溶接によって取付部材2を口金91に固着してしまっても、ガス弁3aの交換作業に支障を来すことはない。
【0040】
なお、図1および図3のフィッティングは、従来から使用していたビール樽9を利用できる。従来のフィッティングの取付部材20を口金91から取り外して、さらにダウンチューブ5等を取り外しパッキン24を軟質ステンレス綱からなる封止部材25に交換する。そして、従来のガス弁を本発明のガス弁3またはガス弁3aに交換することにより、本発明の取付部材2となる。次に、口金91に対して取付部材2を十分なトルクでねじ込んだ後、図1および図3に示すように、口金91上端部と取付部材2上端部との間を溶接によって固着および封止すればよい。
【0041】
このように、従来から使用していたフィッティングを有効に利用して本発明のフィッティングとすることができるので、本発明のフィッティング導入のコストを大幅に低減できるとともに、資源の有効利用が可能となる。
【0042】
図6は、他の形態の封止部材25aの構成を示す断面図である。図1および図3の封止部材25は、図示のように断面が長方形である。すなわち、上面と下面が平行に形成されており、平面部分によって封止している。このため、口金91下部内面の段部または取付部材2の段部の平面度が悪い場合等に、封止性能が低下する場合がある。図6の封止部材25aは上面を傾斜面として、その傾斜面と取付部材2の段部角部とを線接触させることにより、安定した封止性能を得るものである。線接触のため封止部材25aが弾性変形または塑性変形しやすくなり、安定した封止性能を発揮する。なお、ここでは封止部材の上面を傾斜面としたが、下面を傾斜面としてもよい。
【0043】
図7は、本発明の他の形態のフィッティングを示す断面図である。図1および図3のフィッティングは、従来から使用していたビール樽9を利用できるものであったが、図7のフィッティングは、新規にビール樽9を製造する場合のものである。口金と取付部材は最初から一体の口金93として製造される。口金93と飲料容器としてのビール樽9は従来と同様に溶接によって接続されて密封容器となっている。口金93には一体的に取付部94が形成されており、口金93の内周側には弁座部95が形成されている。
【0044】
取付部94にはばねで上方に付勢されたダウンチューブ5が支持されている。ダウンチューブ5の上端部にはガス弁3が固定されており、また、ダウンチューブ5の上端内部にはビール弁4が上方に付勢されて設けられている。ガス弁3はダウンチューブ5とともにコイルばね6によって上方に付勢されており、取付部94の弁座部95に押し付けられている。ビール弁4は、コイルばね7による付勢力によってガス弁3下部の弁座部分に押し付けられている。ガス弁3およびビール弁4は通常状態が閉状態である。
【0045】
口金93にはディスペンスヘッドが取り付け可能である。口金93の上部内周側には内方に突出する係合突起22が設けられており、ディスペンスヘッドと取付部材2とは、係合突起22によるバヨネット機構等の接続機構によってワンタッチで結合することができる。ディスペンスヘッドにより、ガス弁3およびビール弁4を操作し、二酸化炭素ガス等の圧力ガスをビール樽9内に供給し、ビール樽9の内圧を高めて生ビールをダウンチューブ5およびビール弁4を通して容器外に排出させることができる。
【0046】
以上の構成は、図1、図3のフィッティングと類似している。異なるのは、口金93が最初から取付部94および弁座部95を一体のものとして備えている点である。この形態のフィッティングでは、封止部材25は必要なく、溶接によって口金と取付部材を結合する必要もない。このため、新規に製造する場合には、この形態のフィッティングの方が製造コストを低減できる。
【0047】
なお、図7ではガス弁3を使用したフィッティングを示しているが、図4および図5に示すガス弁3aを使用してもよい。ガス弁3およびガス弁3aはやはり定期的に交換する必要がある。ガス弁3およびガス弁3aの交換は、図1および図3のフィッティングにおいて説明したのと同様に行うことができる。
【0048】
以上のように、本発明によれば、口金と取付部材との間隙への異物や汚水等の侵入を完全に防止することができる。これによって、口金部の殺菌処理や異物の除去作業等を軽減することができる。また、パッキンの交換作業をなくし、メインテナンス作業を軽減することができる。
【0049】
なお、以上の実施の形態では、飲料として生ビール、飲料容器としてビール樽を例に挙げて説明したが、それ以外の任意の飲料と飲料容器にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、口金と取付部材との間隙への異物や汚水等の侵入を完全に防止して衛生的に優れた飲料容器用フィッティングを低コストで提供することができる。また、飲料容器用フィッティングのメインテナンス作業を軽減することができる。
【符号の説明】
【0051】
2 取付部材
3,3a ガス弁
4 ビール弁
5 ダウンチューブ
6,7 コイルばね
9 ビール樽
20 取付部材
21 雄ねじ
22 係合突起
23 弁座部
24 パッキン
25,25a 封止部材
31,33 芯金
32,34 弁部材
35 カバー金具
91,93 口金
92 雌ねじ
94 取付部
95 弁座部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料容器(9)の口金(93)と一体に設けられた取付部(94)と、
前記取付部(94)の内周側に設けられた弁座部(95)と、
上端部が前記取付部(94)に支持された管状のダウンチューブ(5)と、
前記ダウンチューブ(5)の上端部に嵌合され、加圧ガスを容器内部に供給するためのガス弁(3,3a)と、
前記ダウンチューブ(5)の上端部内部に設けられ、飲料を容器外に注出するための飲料弁(4)とを有し、
前記ガス弁(3,3a)は、前記弁座部(95)の中央孔を通して交換可能なものである飲料容器用フィッティング。
【請求項2】
請求項1に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記ガス弁(3)は、
一部の直径が他の部分の直径よりも小さくなるように形成された金属製の芯金(31)と、当該芯金(31)と一体的に成形された柔軟性の大きな弁部材(32)とからなり、
傾斜状態では前記弁座部(95)の中央孔を通過可能であるが、水平状態では前記弁座部(95)の中央孔を通過不能である飲料容器用フィッティング。
【請求項3】
請求項1に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記ガス弁(3a)は、柔軟性の大きな弁部材(34)と、一部の直径が他の部分の直径よりも小さくなるように形成され、前記弁部材(34)の上面を覆う金属製のカバー金具(35)とからなり、
前記カバー金具(35)は、傾斜状態では前記弁座部(95)の中央孔を通過可能であるが、水平状態では前記弁座部(95)の中央孔を通過不能である飲料容器用フィッティング。
【請求項4】
請求項3に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記弁部材(32)を前記弁座部(95)の中央孔を通過させて、前記ダウンチューブ(5)の上端部に嵌合し、
その後、前記カバー金具(35)を傾斜状態として前記弁座部(95)の中央孔を通過させ、前記弁部材(34)の上面に配置し固定して、前記ガス弁(3a)を組み立てるようにした飲料容器用フィッティング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−84345(P2011−84345A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17767(P2011−17767)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【分割の表示】特願2005−239334(P2005−239334)の分割
【原出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(591036996)フジテクノ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】