説明

飲料用油脂組成物およびこれを含有する飲料

【課題】優れた水分散性を有することから、各種用途に応用でき、特に飲料に配合することにより、食感や風味を改良できる、飲料用油脂組成物を提供する。
【解決手段】油脂とモノグリセリドとポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する飲料用油脂組成物。好ましい態様においては、アルコールを含有し、モノグリセリドの構成脂肪酸が飽和であり、ポリグリセリン脂肪酸エステルの平均重合度が3〜12である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用油脂組成物およびこれを含有する飲料に関し、詳しくは、油脂と乳化剤を含み、自己乳化性に優れ、水への分散性が容易である飲料用油脂組成物および当該油脂組成物を含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
水と油は互いに混ざり合わないため、水に油を分散させる場合は乳化剤が配合された油脂組成物が使用される。斯かる油脂組成物は水に混合された場合、乳化剤の界面張力低下能により、微細化された油滴となって分散する。
【0003】
乳化剤としてポリソルベイトが配合された油脂組成物はクレンジングオイルやエアゾール製品の他、生鮮肉加工食品用、麺練り込み用、炊飯用等に使用されている(特許文献1〜5参照)。
【0004】
油脂組成物は、主として食品分野に使用される。通常、食品の食感改良や食品へ油脂を均一に分散させるために、油脂組成物が使用されている。麺や米飯では、ほぐれ向上、劣化防止、離型性向上のために、フライや揚げ物では、揚げ立て感等の食感改良のために、冷凍食品では、電子レンジ等で暖めた場合でもサクサク感を維持させるために、油脂組成物が添加されている。また、畜肉、魚肉、調味料へ油脂を均一に分散させることや、ホットケーキやどら焼等のふっくら感をだす目的もある。
【0005】
このような食品に油脂組成物を含有させる場合、油脂組成物が食品に素早く馴染み、均一に分散することが必要である。通常、油脂組成物は、油に対する相溶性が良いため、油には容易に分散するが、水への分散性が劣る。
【0006】
このため、水への分散性を向上させる方法として、自己乳化型油脂を使用する方法が知られている。自己乳化とは、予め油脂に乳化剤を溶解しておき、乳化剤の界面張力低下能を利用することにより、水中に油を滴下させるだけで容易に自然乳化させる方法である。一般的には親水性の高い乳化剤が使用されており、水中では水中油型(O/W型)のエマルションを形成する。
【0007】
自己乳化型油脂を使用する方法としては、不飽和ジグリセリン脂肪酸エステルを0.2重量%以上油脂に含有させ、食品の味、匂い(風味)、食感、外観等を改良する方法(特許文献6参照)や、ジグリセリン脂肪酸エステル、レシチン及びHLB10以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを油脂に混合して食肉の品質改良剤とする方法(特許文献7参照)等が知られている。
【0008】
さらに、10℃における固体脂含有量が15〜35重量%であり、15℃における固体脂含有量が0〜10重量%である食用油脂100重量部に対し、グリセリン脂肪酸モノエステル及びグリセリン有機酸脂肪酸モノエステルのうち1種類以上を合計0.1〜5重量部を配合してバッター用油脂組成物とする方法(特許文献8参照)、食用油脂に不飽和ジグリセリン脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドを含有させた食品用油脂組成物を食肉加工用ピックル液に利用する方法(特許文献9参照)、食用油脂中にポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドを含有させ、煮物用の油脂組成物とする方法(特許文献10参照)等が知られている。
また、ミルクコーヒー、ミルクティー等の乳飲料におけるコスト低減のため牛乳の一部を油脂に置換する、或いは、乳原料を全く使用しない飲料を製造する際にコクを付与するために油脂を混合することが行われている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−81059号公報
【特許文献2】特開2006−55078号公報
【特許文献3】特開2006−55080号公報
【特許文献4】特開2006−180717号公報
【特許文献5】特開2006−204133号公報
【特許文献6】特開平8−149950号公報
【特許文献7】特開2001−269117号公報
【特許文献8】特開平10−271951号公報
【特許文献9】特開2000−50794号公報
【特許文献10】特開2001−78666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の油脂組成物は、飲料に用いた場合に、水分散性に優れ、かつ飲料中への分散均一性等について、充分満足のいくものではなかった。さらに飲料を調製する際に、油脂組成物をブレンダーに投入した時の油浮き、不均一混合の問題があった。これらの事情により、飲料用としては、水系製剤(油+水+乳化剤)の使用が余儀なくされていたが、水系製剤は、微生物増殖の懸念により冷蔵流通等が必要であった。
このため、自己乳化性に優れ、水への分散が容易であり、特に飲料に使用した際に、速やかに飲料中に均一分散でき、かつ常温流通が可能な飲料用油脂組成物の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者は、自己乳化性に優れた油脂組成物を提供すべく鋭意検討した結果、油脂に特定の乳化剤を混合した油脂組成物は、従来の油脂組成物よりも水分散性に優れ、特に食品中への分散性が良好であることを見出し、先に提案した(特願2008−040904号明細書参照)。本発明者らは、さらに上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、該油脂組成物が飲料用として好適であることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
本発明の要旨は、[1]〜[6]に記載の事項により特定される、次のとおりのものである。
[1]油脂とモノグリセリドとポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする飲料用油脂組成物。
[2]アルコールを含有する上記[1]に記載の飲料用油脂組成物。
[3]モノグリセリドの構成脂肪酸が飽和である上記[1]又は[2]に記載の飲料用油脂組成物。
[4]ポリグリセリン脂肪酸エステルの平均重合度が3〜12である上記[1]〜[3]の何れかに記載の飲料用油脂組成物。
[5]油脂の含有量が10〜99.9重量%、モノグリセリドの含有量が0.01〜50重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.01〜50重量%である上記[1]〜[4]の何れかに記載の飲料用油脂組成物。
[6]上記[1]〜[5]の何れかに記載の飲料用油脂組成物を含有することを特徴とする飲料。
【発明の効果】
【0013】
本発明の飲料用油脂組成物は、優れた水分散性を有することから、特に飲料に配合することにより、食感や風味を改良できる。また、分散均一性に優れるので、油脂組成物をブレンダー等の混合機に投入した時の油浮き、不均一混合の問題を解決することができる。また、本発明の飲料用油脂組成物は、水系製剤における微生物増殖の懸念が解決されたものであり、冷蔵流通等の必要は特にない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明するが、この説明は本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されるものではない。
【0015】
先ず、本発明の飲料用油脂組成物の概要について説明する。
本発明の飲料用油脂組成物は、油脂とモノグリセリドとポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、一般的にオイル型の自己乳化型油脂と呼ばれる。このため、本発明の飲料用油脂組成物は、水へ滴下するだけで、或いは簡単な攪拌を行うだけで、水中へ速やかに分散する。また、エタノール等のアルコールを併用することにより、保存安定性をより一層向上させることができる。従って、上記の特徴を利用することにより、飲料用として特に好ましく使用することができる。
【0016】
次に、本発明の飲料用油脂組成物に使用される成分、当該油脂組成物の調製方法に関し、詳細に説明する。
【0017】
[油脂]
本発明の飲料用油脂組成物に使用される油脂としては、食品用として使用し得るもの(以下これを「食用油脂」と称する)であれば特に限定されず、いずれの食用油脂も使用することができる。
【0018】
食用油脂としては、例えば、ナタネ油、ナタネ硬化油、コメ油、大豆油、コーン油、サフラワー油、ヒマワリ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ヤシ硬化油等の植物油;バターオイル、牛脂、豚脂、鶏脂、魚油等の動物油;それらの水素添加油、それらの1種以上の混合物によるエステル交換油等が挙げられる。これらの中で、バターオイル、ヤシ硬化油、ナタネ硬化油等を使用するのが好ましい。
これらの油脂は、混合物としても使用することもできるが、その融点は40℃以下が好ましい。
本発明の飲料用油脂組成物中の油脂の含有量は、通常10〜99.9重量%、好ましくは50〜98重量%、より好ましくは80〜96重量%である。
【0019】
[モノグリセリド]
本発明の飲料用油脂組成物に使用されるモノグリセリドは、グリセリン1分子に脂肪酸1分子がエステル結合したものである。一般には、未反応原料、モノグリセリド、ジグリセリド等の混合物である反応モノグリセリドや、モノグリセリドの純度を高めた蒸留モノグリセリドを使用することができる。
【0020】
構成脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、べへン酸等の炭素数8〜22の飽和脂肪酸やパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エルカ酸等の炭素数8〜22の不飽和脂肪酸を好ましく使用することができる。その中でも、飽和であるものが風香味の点で好ましく、特にステアリン酸を主成分とするものが好ましい。
【0021】
これらモノグリセリドは、それ自体既知の食品用添加剤であり、市販されているものを使用できる。モノグリセリドの市販品としては、例えば、「エキセルT−95」、「エキセルVS−95」、「エキセルO−95R」、「エキセル122V」、「エキセル200」(商品名、花王(株)製);「エマルジー MS」、「エマルジー ML」、「エマルジー MH」、「エマルジー OL−100H」、「エマルジー HRO」、「エマルジー MU」、「ポエム M−100」、ポエム M−200」、ポエム M−300」、「ポエム V−200」、「ポエム B−200」、「ポエム P−200」、「ポエム L−200」、「ポエム OL−200V」、「ポエム CS−200」(商品名、理研ビタミン(株)製)等が挙げられる。
【0022】
本発明の飲料用油脂組成物中のモノグリセリドの含有量は、通常0.01〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは1〜10重量%である。
【0023】
[ポリグリセリン脂肪酸エステル]
本発明の飲料用油脂組成物に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、親水性が高く、水分散性に優れているものが好ましい。このようなポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンの平均重合度が、通常3〜12、好ましくは3〜6であり、構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、べへン酸等の炭素数8〜22の飽和脂肪酸やパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エルカ酸等の炭素数8〜22の不飽和脂肪酸である。その中でも風香味の点から特にステアリン酸を主成分とするものが好ましい。
【0024】
これらポリグリセリン脂肪酸エステルは、それ自体既知の食品用添加剤であり、それ自体既知の方法(例えば、特許第3301182号公報、特許第3744015号公報等に記載の方法)により合成するか、市販されているものを使用できる。
【0025】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、「リョートーポリグリエステルS−10D」、「リョートーポリグリエステルP−8D」、「リョートーポリグリエステルM−10D」、「リョートーポリグリエステルL−10D」、「リョートーポリグリエステルO−15D」、「リョートーポリグリエステルO−50D」(商品名、三菱化学フーズ(株)製);「SYグリスターMSW−7S」、「SYグリスターMS−5S」、「SYグリスターMS−3S」、「SYグリスターMO−3S」、「SYグリスタML−750」、「SYグリスターHB−750」、「SYグリスターCR−500」(商品名、阪本薬品工業(株)製);「サンソフトQ−18S」、「サンソフトQ−14S」、「サンソフトQ−12S」、「サンソフトA−141E」、「サンソフトA−17E」(商品名、太陽化学(株)製)等が挙げられる。
【0026】
本発明の飲料用油脂組成物中のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、通常0.01〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは1〜10重量%である。
【0027】
[その他の成分]
尚、本発明の飲料用油脂組成物には、その他の乳化安定剤、甘味料、香料、ビタミン、抗酸化剤等の公知の配合剤等を本発明の効果を損なわない範囲で加えてもよい。その他の乳化安定剤として、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル等が例示できる。これらその他成分は、食品用添加剤として市販されているものを使用すればよい。
なお、発明の飲料用油脂組成物において、水は、上記成分に含有するもの以外には、特に含有しない。
【0028】
[油脂組成物の調製方法]
本発明の飲料用油脂組成物は油脂にモノグリセリドとポリグリセリン脂肪酸エステルを加熱溶解させることにより調製される。この際、エタノール等のアルコールを添加すると、保存中の微生物増殖を抑制することができるために好ましい。油脂組成物中のアルコール含有量は、通常1〜40重量%、好ましくは2〜10重量%である。
【0029】
本発明の飲料用油脂組成物は、飲料、例えば、ミルクコーヒー、ミルクティー等の乳飲料;コーヒーと植物油と砂糖等からなるコーヒー飲料等の飲料に特に好適に使用することができる。この場合、油脂組成物を直接飲料に使用してもよいし、水に希釈してエマルションとしたものを飲料に使用してもよい。あるいは、油脂組成物をその構成成分の油とは別の種類の油に混合し、これを使用しても構わない。
油脂組成物の飲料への添加量は、通常0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%、更に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0030】
本発明の飲料は、それ自体既知の方法、例えば次の方法により、容易に調製することができる。
先ず、通常、コーヒーや紅茶抽出液と砂糖、必要に応じて牛乳等の乳成分を混合する(調合液A)。一方、生クリーム、粉乳、乳化剤等と上記油脂組成物を、適当な混合分散装置、例えばホモミキサー(プライミクス社製「T.K.ロボミックス」)、パウ・ブレンダー(オサメ工業社製)等に投入して加熱しながら撹拌混合し、さらにホモジナイザーで予備乳化する(調合液B)。調合液Aと調合液Bを混合し、重曹を加えてpHを調整した後に、例えばバルブホモジナイザー等で高圧均質化する。
【0031】
通常、乳飲料のpHを調整するために加熱殺菌前にpH調整剤(炭酸水素ナトリウム等)が添加されるが、炭酸水素ナトリウムの添加量が多いと、炭酸水素ナトリウムの加熱臭が生じ、コーヒー本来の香りが変化するため、例えばミルクコーヒーのpHとしては5.0〜7.0が好ましく、6.0〜6.6がより好ましい。
【0032】
このようにして調製した飲料は、加熱による殺菌が施される。殺菌方法は、レトルト殺菌、UHT殺菌のいずれでもよい。レトルト殺菌は缶などの耐熱・耐圧容器に充填密閉された飲料をレトルト殺菌機により、殺菌温度120〜130℃で20〜40分間、121℃の殺菌価(F0)が10〜50に相当するような加圧殺菌である。
一方、UHT殺菌は、殺菌温度130〜150℃で、121℃の殺菌価(F0)が10〜50に相当するような超高温殺菌である。飲料をUHT殺菌し、無菌的にPETボトルなどに充填する。UHT殺菌は飲料に直接蒸気を吹き込むスチームインジェクション式や飲料を水蒸気中に噴射して加熱するスチームインフュージョン式等の直接加熱方式、プレートやチューブ等表面熱交換器を用いる間接加熱方式等公知の方法で行うことができ、例えばプレート式殺菌装置を用いることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、「%」及び「部」は、それぞれ、重量%および重量部を表す。また、水分散性の評価方法は以下の通りである。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
製造例1:
トリグリセリン(Solvey社製「polyglycerol−3」、平均重合度3.39、平均分子量269、水酸基価1125)122.7g(0.456モル)とオレイン酸(AcidChem社製「Palmac760」、平均分子量277)136.2g(0.492モル)を加熱ジャケット付き攪拌型反応槽に仕込み、0.0067g/mL水酸化ナトリウム0.96mL(対原料合計0.0025%)を加えて、窒素気流下、240℃に昇温して3時間反応させた後、更に、260℃で4時間反応させてトリグリセリンオレイン酸エステル250gを得た。
【0037】
実施例1〜9:
モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、植物油の3成分を全て含有する表3に記載の混合物を70℃で20分間加熱して油脂組成物を調製した。これらの油脂組成物1部をサンプル瓶に秤量し、脱塩水9部を徐々に加えてスターラーで1分間攪拌し、室温で水分散性の評価を実施した。また、HOLIBA社製「LA−920」により粒子径を測定し、メジアン径(粒子径の出現頻度の合計が50%となる粒子径)を求めた。評価結果を表4に示す。
【0038】
比較例1〜6:
モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、植物油の3成分全てを含有しない表3に記載の混合物から油脂組成物を調製し、実施例と同様に水分散性評価と粒子径測定を実施した。また、市販の食用加工油脂の水分散性についても評価した。評価結果を表4に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
表4から、本発明の飲料用油脂組成物は、水分散性に優れ、乳化安定性も良好であることが分かる。
【0042】
実施例10、11:
実施例1、2で調製した油脂組成物を使用して、次のとおりコーヒー飲料を調製した。
コーヒー焙煎豆粉110gとグラニュー糖84gを60℃で脱塩水500gに溶解した。一方、乳化剤製剤1g(三菱化学フーズ社製「リョートーエステルCP−Y040」)を脱塩水1000gに加えて60℃で撹拌分散し、ホモミキサー(プライミクス社製「T.K.ロボミックス」)で撹拌しながら、実施例1又は2で調製した油脂組成物8gを徐々に混合し、乳化液を調製した。
【0043】
この乳化液に、先に調製したコーヒー液を60℃で混合し、さらに殺菌後のpHが6.2になるように重曹を加えて全量を2000mlとした。続いてバルブホモジナイザー(イズミマシナリー社製「型式HV−OA−2.4−2.2S」)にて65〜70℃で20MPa(一次圧/二次圧=15MPa/5MPa)の圧力で均質化処理を2回実施し、室温まで冷却した後、100mlの耐熱瓶に充填後、高温高圧調理殺菌機(日阪製作所社製「型式RCS−40RTGN−FAM」)により、121.1℃、20分間(F=20)の条件でレトルト殺菌を実施してコーヒー飲料を調製した。得られたコーヒー飲料は60℃で7日間保存した。なお、実施例10および11は、それぞれ、実施例1および2の油脂組成物を用いたものである。
【0044】
このコーヒー飲料について、HOLIBA社製「LA−920」により粒子径を測定し、メジアン径(粒子径の出現頻度の合計が50%となる粒子径)を求めた。評価結果を表5に示す。また、レトルト殺菌前後および、60℃4日間保存後、60℃7日間保存後の風味についても官能評価した。
【0045】
【表5】

【0046】
表5の結果から、レトルト殺菌前後および60℃7日間保存後までのメジアン径に変化が認められなかったこと、および官能評価では油脂劣化や酸化臭などが感じられなかったことから、本発明の油脂組成物を添加したコーヒー飲料は乳化安定性に優れ、風香味の変化も抑制されることが確認された。
【0047】
比較例7:
実施例1、2で調製した油脂組成物の代わりに、油脂組成物の各成分を個々に配合した以外は、実施例10、11と同様な操作を行ったが、油脂組成物の各成分を個々に脱塩水に撹拌混合する時に、油脂が油滴の状態で液面に分離し、他成分と均一に混合することが出来ず、コーヒー飲料を調製することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂とモノグリセリドとポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする飲料用油脂組成物。
【請求項2】
アルコールを含有する請求項1に記載の飲料用油脂組成物。
【請求項3】
モノグリセリドの構成脂肪酸が飽和である請求項1又は2に記載の飲料用油脂組成物。
【請求項4】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの平均重合度が3〜12である請求項1〜3の何れか1項に記載の飲料用油脂組成物。
【請求項5】
油脂の含有量が10〜99.9重量%、モノグリセリドの含有量が0.01〜50重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.01〜50重量%である請求項1〜4の何れか1項に記載の飲料用油脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の飲料用油脂組成物を含有することを特徴とする飲料。

【公開番号】特開2009−284824(P2009−284824A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140591(P2008−140591)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】