説明

飲料製造機及び該飲料製造機の運転方法

【課題】常に正常なアルカリ性水を給水利用することができる飲料製造機を提供する。
【解決手段】飲料製造機10は、一対の電極である陽極24a及び陰極24bによって水を電気分解してアルカリ性水を抽出する電極機構12を備え、アルカリ性水を給水利用する給水運転、及び、陽極24a及び陰極24bの極性を切り替えて電気分解を行う極性切替運転、及び、電極機構12の電解槽18内の水を入れ替えるリンス運転を実行可能に構成されている。この飲料製造機10は、給水運転及び極性切替運転及びリンス運転の運転動作を制御する制御装置22を備え、該制御装置22は、リンス運転と極性切替運転とを同期させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極によって水を電気分解してアルカリ性水を抽出する電極機構を備えた飲料製造機及び該飲料製造機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、茶や清涼飲料水等の各種飲料を製造する飲料製造機では、一対の電極を隔膜で隔てた電解槽を有する電解機構を備え、この電解機構によって水を電気分解することにより、健康によく風味のよいアルカリ性水を陰極側に抽出し、このアルカリ性水を給水利用(販売利用)することが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
上記のような電解機構を用いて水道水等を電気分解すると、アルカリ性水を抽出する陰極側の電極(陰極)表面には、カルシウムやカリウム等のスケールが付着し、電気分解能力が低下するという問題ある。そこで、前記スケールの付着を防止するために、一対の電極の極性を切り替える極性切替運転を行うことが一般に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−32818号公報
【特許文献2】特開2006−81666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のような極性切替運転を行った直後では、給水(販売)に利用する陰極側の水に酸性水が混入しており、この混入水を給水利用してしまうという問題があった。アルカリ性水を抽出する陰極側は、極性切替運転時には陽極側として電気分解が行われるからである。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、常に正常なアルカリ性水を給水利用することができる飲料製造機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る飲料製造機は、一対の電極によって水を電気分解してアルカリ性水を抽出する電極機構を備え、前記アルカリ性水を給水利用する給水運転、及び、前記一対の電極の極性を切り替えて電気分解を行う極性切替運転、及び、前記電極機構の電解槽内の水を入れ替えるリンス運転を実行可能な飲料製造機であって、前記給水運転及び前記極性切替運転及び前記リンス運転の運転動作を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記リンス運転と前記極性切替運転とを同期させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る飲料製造機の運転方法は、一対の電極によって水を電気分解してアルカリ性水を抽出する電極機構を備えた飲料製造機の運転方法であって、前記電極機構の電解槽内の水を入れ替えるリンス運転と、前記一対の電極の極性を切り替えて電気分解を行う極性切替運転とを同期させることを特徴とする。
【0009】
このような構成及び方法によれば、リンス運転と極性切替運転とを同期させることにより、極性切替運転を行った直後に陰極側に貯留されている酸性水をリンス運転によって新たな水と入れ替えることができるため、給水側に酸性水が混入することを防止して、常に正常なアルカリ性水を給水利用することができる。しかも、リンス運転と極性切替運転とが同期しているため、当該飲料製造装置のメンテナンス担当者や使用者は、電極の極性転換を意識することなく、従来通りの通常の使用方法でリンス運転を行うだけで、同時に電極表面のスケールも除去することができ、正常なアルカリ性水を効率よく使用することができる。
【0010】
前記極性切替運転を実行した直後の水を前記リンス運転のリンス水として使用することにより、該陰極側に混入している酸性水がリンス水として使用されるため、該酸性水が給水利用されることを確実に防止できる。
【0011】
前記制御装置は、前記リンス運転の実行開始動作を受けると、先ず、前記極性切替運転を所定時間実行し、次に、該極性切替運転の終了後に前記リンス運転を実行し、該リンス運転の終了後に前記給水運転を実行可能とする給水待機状態を設定するとよい。そうすると、リンス運転を開始させるだけで、自動的に極性切替運転が実行されて電極表面のスケールが除去され、さらに、この極性切替運転によって陰極側に生成された酸性水をリンス動作で排出した後、再び給水待機状態へと自動的に復帰することができ、メンテナンス担当者や使用者の手間を一層軽減することができる。
【0012】
前記極性切替運転は、当該飲料製造機の1日の運転時間のうち、1回のみ実行するとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リンス運転と極性切替運転とを同期させることにより、極性切替運転を行った直後に陰極側に貯留されている酸性水をリンス運転によって新たな水と入れ替えることができるため、給水側に酸性水が混入することを防止して、常に正常なアルカリ性水を給水利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る飲料製造機の配管系統及び制御系統の構成図である。
【図2】図2は、図1に示す飲料製造機におけるリンス運転の動作タイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る飲料製造機について、この飲料製造機の運転方法との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る飲料製造機10の配管系統及び制御系統の構成図である。本実施形態に係る飲料製造機10は、電解機構12で水を電気分解してアルカリ性水を抽出し、このアルカリ性水を用いて茶を製造販売する給茶機である。勿論、飲料製造機10は、給茶機以外の用途、例えば給水機や給湯機、清涼飲料水の販売機等の各種飲料の製造機として用いることもできる。
【0017】
図1に示すように、飲料製造機10は、カセットタンク14から供給される水道水等の水を電気分解する電解機構(電解装置)12と、電解機構12で抽出されたアルカリ性水を給水用として利用するための給水配管16と、電解機構12に設けられた電解槽18内の水を排出するリンス配管20と、当該飲料製造機10を運転制御する制御装置22とを備える。
【0018】
電解機構12は、一対の電極である陽極(+極)24a及び陰極(−極)24bが隔膜26を隔てて配設された水槽である電解槽18を備え、制御装置22の制御下に図示しない電源装置から通電される電流によって電解槽18内に貯留された水を電気分解することができる。
【0019】
電解槽18は、隔膜26により、陽極24a側の陽極槽18aと、陰極24b側の陰極槽18bとに仕切られた2槽式である。電解槽18には、カセットタンク14に貯留された水道水が、図示しないポンプの駆動により、配管28を介して供給される。勿論、カセットタンク14を用いずに、水道配管等を電解槽18に直結してもよい。なお、陽極槽18aで生成された酸性水は、例えば、後述するリンス運転に供され、或いは配管29から外部に排出される。
【0020】
給水配管16は、陰極槽18b内の水が流通する配管30に接続されており、その途中に給茶装置32が連結されている。従って、給水弁(販売弁)34を開くことで、陰極槽18bからのアルカリ性水を用いて製造された茶をコップ36へと給茶することができる。勿論、給茶装置32の運転を停止しておくことにより、アルカリ性水やこれを沸かした湯をコップ36へと直接的に給水(給湯)することもできる。
【0021】
リンス配管20は、配管30の途中から分岐しており、リンス弁(リンス動作弁)38を開くことで、電解槽18や配管30等のリンス動作に用いられた排水であるリンス水を排水バケツ40へと排出することができる。給水弁34及びリンス弁38は、例えば電磁弁で構成される。
【0022】
制御装置22は、電解機構12、給水弁34及びリンス弁38を適宜駆動制御することで当該飲料製造機10を運転制御する。制御装置22の制御下に、飲料製造機10は、少なくとも、電解機構12を駆動制御して陰極槽18b内にアルカリ性水を抽出し、このアルカリ性水を給水配管16を介して給水利用する給水運転と、一対の電極である陽極24a及び陰極24bの極性を切り替えて(反転させて)電気分解を行うことで電極表面に付着したカルシウムやカリウム等のスケールを除去する極性切替運転と、電極機構12の電解槽18(陰極槽18b)や配管30内の水を入れ替えて清浄化させるリンス運転とを実行することができる。
【0023】
次に、以上のように構成される飲料製造機10の運転方法について、図1及び図2を参照して説明する。
【0024】
図2は、図1に示す飲料製造機10におけるリンス運転の動作タイムチャートであり、(1)極性切替運転のON−OFF(開閉)動作と、(2)リンス弁38のON−OFF(開閉)動作と、(3)陰極槽18b内の水の性状(アルカリ性又は酸性)とを経過時間との関係で示している。
【0025】
先ず、図2の時刻t1までは、通常の給水運転が実行されている。つまり、この給水運転時には、電解槽18内で陽極24a及び陰極24bを用いた水の電気分解が間欠的に又は連続的に実行され、陰極槽18b内にはアルカリ性水が貯留された状態(給水待機状態)となっている。この給水待機状態では、通常、リンス弁38がOFF(閉)されており、例えば、利用者が販売ボタン(図示せず)を押すと、給水弁34がON(開)されて、給茶装置32で製造されたアルカリ性水の茶をコップ36へと販売することができる。
【0026】
次に、図2の時刻t1において、リンス運転が開始される。このリンス運転は、例えば1日に1回、電解槽18や配管30内の水を入れ替えて清浄化するためのメンテナンス運転であり、当該飲料製造機10のメンテナンス担当者がリンスボタン(図示せず)を押すことにより、或いは制御装置22によって一定時間毎に自動的に実行される。
【0027】
そこで、制御装置22は、上記のような手動又は自動によるリンス運転の実行開始動作を受けると、先ず、極性切替運転を実行し、陽極24a及び陰極24bをそれぞれ陰極及び陽極として反転動作させる(時刻t1〜t2)。これにより、陰極槽18b内の水は、アルカリ性から次第に酸性へと変化する。つまり、当該極性切替運転もリンス運転と等しく1日に1回実行されることになる。
【0028】
所定の設定時間が経過して極性切替運転を終了すると(時刻t2)、続いて、制御装置22は、リンス弁38をON(開)して、実質的なリンス運転(リンス動作)を開始する。このリンス動作により、電解槽18(陰極槽18b)内の酸性水がリンス弁38を通して排水バケツ40へと排出され、同時にカセットタンク14内の水が電解槽18(陰極槽18b)へと吸い上げられる。リンス動作では、少なくとも陰極槽18b内の水が全てカセットタンク14内の新たな水と入れ替えされる。
【0029】
一定時間が経過してリンス運転が終了すると(時刻t3)、制御装置22は、再び当該飲料製造機12を給水待機状態とし、新たな水がカセットタンクから供給された陰極槽18b内に再びアルカリ性水を生成し、このアルカリ性水を常時給水可能な状態に設定する。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る飲料製造装置10によれば、制御装置22により、リンス運転と極性切替運転とを同期させる。これにより、極性切替運転を行った直後の陰極槽に貯留されている酸性水を、リンス運転時のリンス水として使用・排出することができるため、給水側に酸性水が混入することを防止して、常に正常なアルカリ性水を給水利用することができる。しかも、リンス運転と極性切替運転とが同期しているため、当該飲料製造装置10のメンテナンス担当者や使用者は、電極の極性転換を意識することなく、従来通りの通常の使用方法でリンス運転を行うだけで、同時に電極表面のスケールも除去することができ、正常なアルカリ性水を効率よく使用することができる。
【0031】
当該飲料製造装置10では、例えば、リンス運転を1日の運転時間のうち1回のみ行うことで、極性切替運転も1日の運転時間のうち1回のみ確実に行うことができ、電極表面のスケールが増大し、電解効率が低下することを容易に防止することができる。
【0032】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
10 飲料製造機
12 電解機構
16 給水配管
18 電解槽
18a 陽極槽
18b 陰極槽
20 リンス配管
22 制御装置
24a 陽極
24b 陰極
34 給水弁
38 リンス弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極によって水を電気分解してアルカリ性水を抽出する電極機構を備え、前記アルカリ性水を給水利用する給水運転、及び、前記一対の電極の極性を切り替えて電気分解を行う極性切替運転、及び、前記電極機構の電解槽内の水を入れ替えるリンス運転を実行可能な飲料製造機であって、
前記給水運転及び前記極性切替運転及び前記リンス運転の運転動作を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記リンス運転と前記極性切替運転とを同期させることを特徴とする飲料製造機。
【請求項2】
請求項1記載の飲料製造機において、
前記極性切替運転を実行した直後の水を前記リンス運転のリンス水として使用することを特徴とする飲料製造機。
【請求項3】
請求項2記載の飲料製造機において、
前記制御装置は、前記リンス運転の実行開始動作を受けると、先ず、前記極性切替運転を所定時間実行し、次に、該極性切替運転の終了後に前記リンス運転を実行し、該リンス運転の終了後に前記給水運転を実行可能とする給水待機状態を設定することを特徴とする飲料製造機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲料製造機において、
前記極性切替運転は、当該飲料製造機の1日の運転時間のうち、1回のみ実行することを特徴とする飲料製造機。
【請求項5】
一対の電極によって水を電気分解してアルカリ性水を抽出する電極機構を備えた飲料製造機の運転方法であって、
前記電極機構の電解槽内の水を入れ替えるリンス運転と、前記一対の電極の極性を切り替えて電気分解を行う極性切替運転とを同期させることを特徴とする飲料製造機の運転方法。

【図1】
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【図2】
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