説明

飲食品

【課題】 多価不飽和脂肪酸及びミネラルとして二価以上の遷移元素を含むにも拘らず、保存後の劣化臭が生じ難い飲食品を提供することを課題とする。特に、この劣化臭によりむせや嘔吐を誘発し易い流動食や介護用食品等の栄養食品に好適な飲食品を提供することを課題とする。
【解決手段】 多価不飽和脂肪酸、及びミネラルとして二価以上の遷移元素を含有した飲食品であって、前記ミネラルがミネラル含有乳酸菌由来である飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価不飽和脂肪酸及びミネラルとして二価以上の遷移元素を含むにも拘らず、保存後の劣化臭が生じ難い飲食品に関する。特に、この劣化臭によりむせや嘔吐を誘発し易い流動食や介護用食品等の栄養食品に好適な飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
人体を構成する種々のミネラルは、体組織の構成に必要な上に生理機能の調節作用等を有することから、必要量を摂取することが好ましい。このため、例えば、手術前後の患者や高齢者等に供される流動食や介護用食品、あるいは、種々の健康食品等には、ミネラル補給を主目的とした添加材が配合されている。
このようなミネラル補給を主目的とした添加材としては、従来、主に無機塩が用いられてきたが、無機塩はミネラル特有の味を有し風味の点で好ましくないこと等の理由から、ミネラルを菌体内に含有させたいわゆるミネラル含有酵母が近年用いられるようになってきた。このミネラル含有酵母は、従来無機塩として添加できる食品が制限されてきた銅や亜鉛等のミネラルを食品に補給できることもあって、広く採用されており、例えば、特開2000−125811号公報(特許文献1)にミネラル微生物、具体的には、ミネラル酵母を含有することを特徴とするミネラル含有食品が記載され、特開2000−201648号公報(特許文献2)には、亜鉛含有酵母を含有していることを特徴とする経腸的栄養補給用の栄養組成物が記載されている。
【0003】
しかしながら、これらミネラル含有酵母を配合した食品は無機塩を配合した食品に比べると風味の点で改善されてはいるものの、依然として次のような問題があり十分に満足できるものではなかった。つまり、本発明者の研究によると、ミネラル含有酵母を含有した食品は、製造直後の風味は問題がないものの、保存により経時的に劣化臭が生じてしまい好ましくなかった。特に、手術前後の患者や高齢者等に供される流動食や介護用食品等の栄養食品においては、更に、この劣化臭がむせや嘔吐を誘発することがあり問題であった。
【0004】
さらに、本発明者は、ミネラル含有酵母を含有させたときの経時的な劣化臭の原因を追究したところ、この経時的な劣化臭は、多価不飽和脂肪酸を含有した飲食品特有の現象であり、多価不飽和脂肪酸の含有量が多いほど生じ易いことを見出した。従って、脂質中の多価不飽和脂肪酸がミネラル含有酵母由来の二価以上の遷移元素の触媒作用により酸化が促進されて経時的に変質し、これにより、劣化臭が生じるのではないかと推察された。
【0005】
このことは、前述の特開2000−125811号公報[0013]に、「ミネラル微生物に含有した該ミネラルを利用する際の長所は、通常ミネラル原料として使用されている化成無機塩に比べ、ミネラル分はすべてイオンまたは分子の状態で菌体内の蛋白質などの有機体成分と結合し組込まれた状態で内在している」と記載されていること、また、前述の特開2000−201648号公報[0012]には、「菌体内に取り込まれた亜鉛は容易に菌体外に流出してくることがない」と記載されていることに反し、全く予期せざる知見であった。
【0006】
一方、脂質としては、その構成脂肪酸として、多価不飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸に分類されるが、これらの中でも多価不飽和脂肪酸は血清コレステロールの低下作用等の生理機能調節作用を有することから摂取することが好ましいと言われている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−125811号公報
【特許文献2】特開2000−201648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、多価不飽和脂肪酸及びミネラルとして二価以上の遷移元素を含むにも拘らず、保存後の劣化臭が生じ難い飲食品を提供することを課題とする。特に、この劣化臭によりむせや嘔吐を誘発し易い流動食や介護用食品等の栄養食品に好適な飲食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成すべく、鋭意研究を重ねた結果、意外にも、ミネラル含有乳酸菌由来のミネラルを使用するならば、多価不飽和脂肪酸を含有した飲食品にも拘らず、保存後の劣化臭が生じ難く、特に、この劣化臭によりむせや嘔吐を誘発し易い流動食や介護用食品等の栄養食品に好適な飲食品が得られることを見出し遂に本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 多価不飽和脂肪酸、及びミネラルとして二価以上の遷移元素を含有した飲食品であって、前記ミネラルがミネラル含有乳酸菌由来である飲食品、
(2) 前記ミネラル含有乳酸菌由来のミネラルが鉄、銅、亜鉛及びマンガンから選ばれる1種又は2種以上である(1)記載の飲食品、
(3) 前記ミネラル含有乳酸菌由来のミネラル含有量が、飲食品100g当り、それぞれ鉄が1mg以上、銅が0.1mg以上、亜鉛が1mg以上及びマンガンが100μg以上である(2)に記載の飲食品、
(4) 前記多価不飽和脂肪酸の含有量が、飲食品100g当り、0.1g以上である(1)乃至(3)のいずれかに記載の飲食品、
(5) 100℃を超える温度で加熱殺菌されてなる(1)乃至(4)のいずれかに記載の飲食品、
(6) F値が4分以上の条件で、レトルト処理されてなる(5)に記載の飲食品、
(7) 飲食品が栄養食品である請求項(1)乃至(6)のいずれかに記載の飲食品、
(8) 栄養食品が流動食である(7)に記載の栄養食品、
(9) 栄養食品が介護用食品である(7)に記載の栄養食品、
である。
【発明の効果】
【0010】
以上の構成により、多価不飽和脂肪酸及びミネラルとして二価以上の遷移元素を含むにも拘らず、保存後の劣化臭が生じ難く、特に、この劣化臭が生じ難いことによりむせや嘔吐を誘発し難い飲食品を提供できる。
このため、ミネラル及び多価不飽和脂肪酸を補強した飲食品の更なる需要を拡大できるばかりでなく、これらを継続的に食する手術前後の患者や高齢者等のクオリティオブライフ(QOL)、つまり、生活の質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を説明する。なお、本発明において特に限定していない場合は、「%」は「質量%」を意味する。
【0012】
本発明においてミネラルとは、人体を構成する元素のうち、炭素、水素、酸素、窒素を除く元素の総称であり、このようなミネラルとしては、具体的には、例えば、カルシウム、鉄、リン、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、銅、ヨウ素、マンガン、セレン、亜鉛、クロム、モリブデン等が挙げられる。
これらミネラルのうち、本発明の二価以上の遷移元素としては、鉄、銅、亜鉛、マンガン、クロム及びモリブデン等が挙げられる。特に、鉄、銅、亜鉛及びマンガンは生理活性物質の成分・酵素反応の賦活物質であり重要なミネラルであるが、その一方で触媒作用が強く、食品中において脂質の酸化を促進する作用が強いものとして知られている。本発明によれば、多価不飽和脂肪酸及びミネラルとして二価以上の遷移元素を含むにも拘らず、保存後の劣化臭により、嘔吐やむせを誘発し難い飲食品が提供できるので、このような脂質の酸化を促進し易い鉄、銅、亜鉛及びマンガンを含む飲食品、特により強い劣化臭が生じ易いこれらミネラルの含有量が多い飲食品において本発明はより好適に実施できる。
また、鉄は、無機塩やミネラル含有酵母等のいずれの形態でも、前述の脂質の酸化による劣化臭に加え、鉄特有の異臭により嘔吐を誘発し易い傾向があるが、本発明によれば、鉄特有の異臭が生じ難いことにより、むせや嘔吐を誘発し難い飲食品を提供でき好ましい。
【0013】
本発明は、二価以上の遷移元素のミネラルとして、ミネラル含有乳酸菌由来のミネラルを使用することを特徴とする。これにより、後述の試験例に示すように、多価不飽和脂肪酸及びミネラルとして二価以上の遷移元素を含むにも拘らず、保存後の劣化臭が生じ難く、更に、この劣化臭が生じ難いことによりむせや嘔吐を誘発し難い飲食品を提供できる。これに対して、ミネラル含有乳酸菌由来のミネラルを使用せず、ミネラル含有酵母由来のミネラルを用いた場合は、保存後に劣化臭が生じてしまい、むせや嘔吐を誘発し難い飲食品を提供できない。
【0014】
ここで、ミネラル含有乳酸菌とは、ミネラルを細胞内に含有した乳酸菌をいい、具体的には、例えば、鉄、銅、亜鉛及びマンガンをそれぞれ含有した鉄含有乳酸菌、銅含有乳酸菌、亜鉛含有乳酸菌及びマンガン含有乳酸菌等が挙げられる。このようなミネラル含有乳酸菌の製造方法は特に限定されるわけではないが、例えば、炭水化物・蛋白質等を含んだ栄養培地にミネラルを添加して、常法により乳酸菌を培養後に、菌体を分離後、熱処理・スプレードライ、あるいは、凍結乾燥することによって、製造することができる。ここで、ミネラルを含有させる乳酸菌としては、食用に供される乳酸菌であれば、特に制限はないが、具体的には、例えば、Lactobacillus属のLactobacillus bulgaricus 、Lactobacillus casei 、Lactobacillus delbreckii 、Lactobacillus acidophilus等、あるいは、Streptococcus属のStreptococcus lactis、Streptococcus thermophilus等が挙げられる。これらの中でも風味の点から、Lactobacillus属のLactobacillus bulgaricusが好ましい。
このようにして得られたミネラル含有乳酸菌のミネラル含有量は、含有させたミネラルの種類や処理条件等によって異なるが、通常、乳酸菌100g当りミネラルを0.1〜20g程度含有している。
なお、ミネラル含有乳酸菌は、市販されており、例えば、Grow Company Inc.(社)製の商品名「Biogurt」等が挙げられる。
【0015】
本発明の飲食品には、ミネラル含有乳酸菌由来のミネラルの中でも、鉄、銅、亜鉛及びマンガンから選ばれる1種又は2種以上を含有させると生理活性物質の成分や酵素反応の賦活物質として重要なミネラルを摂取できることから好ましい。
更に、ミネラル含有乳酸菌由来の鉄を含有させた場合は、貧血予防に効果的であることに加え、従来用いられていた無機鉄や鉄含有酵母は鉄そのもの自身の異臭により嘔吐を誘発し易い傾向があるが、鉄含有乳酸菌は異臭が少ないことより製造直後でも異臭が生じ難く、むせや嘔吐を誘発し難いことからも好ましい。
また、ミネラル含有乳酸菌由来の亜鉛を含有させた場合、特に、亜鉛に加えて銅を含有させた場合は、褥瘡予防に効果的であることからも好ましい。
【0016】
これらミネラル含有乳酸菌由来の鉄、銅、亜鉛及びマンガンの飲食品に対する含有量は、前述の生理活性作用等の効果を得るために、飲食品100g当り、それぞれ、鉄が好ましくは1mg以上、より好ましくは3mg以上、更に好ましくは5mg以上、銅が好ましくは0.1mg以上、より好ましくは0.3mg以上、更に好ましくは0.5mg以上、亜鉛が好ましくは1mg以上、より好ましくは3mg以上、更に好ましくは5mg以上、マンガンが好ましくは100μg以上、より好ましくは200μg以上、更に好ましくは300μg以上である。また、本発明において、飲食品に対するこれらミネラルの含有量の上限は特に制限はなく、一日当りの摂取許容量を超えないように適宜決定すれば良いが、その他の配合原料を考慮すると飲食品100g当り、それぞれ、10g以下が好ましく1g以下がより好ましい。
【0017】
本発明において多価不飽和脂肪酸とは、脂肪酸の炭化水素鎖に部分的に二重結合のあるものであって、二重結合の数が2個以上あるものをいい、具体的には、例えば、リノール酸、リノレン酸、イコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸及びアラキドン酸等が挙げられる。本発明においては、このような多価不飽和脂肪酸を飲食品に含有させることにより、血清コレステロールの低下作用等の生理機能調節作用が得られる上に、保存後の劣化臭が生じ難く、更に、この劣化臭によりむせや嘔吐を誘発し難い飲食品を提供できる。
【0018】
多価不飽和脂肪酸を本発明の飲食品に含有させるには、例えば、多価不飽和脂肪酸を含む脂質原料をその脂肪酸組成を考慮して配合すること等により本発明の飲食品に含有させることができる。このような脂質原料としては、食用であればその種類は特に問わないが、具体的には、例えば、菜種油、コーン油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、米油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ゴマ油、これらを精製したサラダ油等の植物性油脂並びに鶏油、豚脂、牛脂、乳脂、魚油等の動物性油脂、更に、これらの油脂を硬化、エステル交換等の処理を施したものの他、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド等のように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂等が挙げられる。また、レシチン等のリン脂質等が挙げられる。
【0019】
本発明において、多価不飽和脂肪酸の飲食品に対する含有量は、生理機能調節作用を得るために、飲食品100g当り、好ましくは0.1g以上、より好ましくは0.6g以上、更に好ましくは1.5g以上である。また、本発明において、多価不飽和脂肪酸の飲食品に対する含有量の上限は特に制限はないが、その他の配合原料を考慮すると飲食品100g当り50g以下が好ましく30g以下がより好ましい。なお、多価不飽和脂肪酸の含有量は、試料を脂質抽出後、エステル化処理して調製した後、水素炎イオン化検出−ガスクロマトグラフ法で常法により測定した値である。
【0020】
本発明において飲食品とは、食用に供される飲食品であれば特に制限はなく、具体的には、例えば、手術前後の患者や高齢者等に経口あるいは経管投与するための流動食、咀嚼嚥下が困難な高齢者等のために食品の物性と形状を調整した介護用食品、蛋白質含有量やカロリーを調整した腎臓病食やカロリー調整食等の病態別食品及び乳幼児や幼児のための育児食品等の栄養補給を主目的とした栄養食品が挙げられる。また、通常の食事で不足しがちなミネラルを補足的に摂取することを主目的として比較的高濃度にミネラルを含有した錠剤タイプ、カプセルタイプ、顆粒タイプ及び液状タイプ等のいわゆる健康食品が挙げられる。更に、トマトソース、ホワイトソース、スープ、味噌汁、お粥、雑炊、リゾット、野菜炒め、煮込みもの等の調理食品、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ等の調味料、麺類、食パン等の穀物加工品、ハム、ソーゼージ等の食肉加工品、かまぼこ等の水産加工品、ジャム等の果実加工品、漬物などの野菜加工品、チョコレート、ビスケット、ケーキなどの菓子類及びスポーツ飲料、牛乳等の各種飲料等が挙げられる。
【0021】
これら飲食品の中でも、流動食、介護用食品、病態別食品及び育児食品等の栄養補給を主目的とした栄養食品は、継続的に食される飲食品であり、劣化臭の改善が望まれていることから、本発明の飲食品として好適であり、中でも、劣化臭により、嘔吐やむせが誘発され易い流動食及び介護用食品は、特に好適である。
【0022】
なお、前述の介護用食品としては、具体的には、例えば、咀嚼や嚥下がし易いようにゲル状又はゾル状の形態とした咀嚼嚥下困難者用食品が挙げられ、咀嚼や嚥下がし易いようにする点から、ゾル状の咀嚼嚥下困難者用食品においては、そのかたさは好ましくは2×10〜5×10N/m、より好ましくは1×10〜5×10N/mであり、ゲル状の咀嚼嚥下困難者用食品においては、そのかたさは好ましくは1×10〜5×10N/m、より好ましくは3×10〜1×10N/mのかたさである。なお、かたさは、厚生省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長通知(平成6年2月23日発行)衛新第15号「高齢者用食品の表示許可の取扱いについて」記載の別紙「高齢者用食品の試験方法(直径20mmのプランジャー使用、圧縮距離10mm/s、クリアランス5mm、測定温度20±2℃)」に準じて測定された値である。
【0023】
前述したように、本発明の飲食品としては、特に制限はなく種々の飲食品が挙げられるが、より本発明の効果が得られ易いことから、保存中に多価不飽和脂肪酸の酸化が促進され易い液状の飲食品においてより好適に実施できる。
更に、100℃を超える温度で加熱殺菌された飲食品、具体的には、例えば、当該飲食品を耐熱性合成樹脂あるいはアルミ箔等の金属と耐熱性合成樹脂のラミネート等からなる耐熱性容器に充填密封後、100℃を超える温度で加熱殺菌されたものや、当該飲食品を100℃を超える温度で高温短時間殺菌後、無菌的に容器に充填する、通常、アセプティック包装と呼ばれる方法で製されたもの等は、加熱により多価不飽和脂肪酸の酸化が促進され易く、特に、長期常温保存を可能とするために、耐熱性容器に充填密封後にF値が4分以上の条件で加熱殺菌したいわゆるレトルト処理された飲食品は、過度の加熱により多価不飽和脂肪酸の酸化が大幅に促進され易いが、本発明によれば、多価不飽和脂肪酸及びミネラルとして二価以上の遷移元素を含むにも拘らず、保存後の劣化臭が生じ難く、更に、この劣化臭によりむせや嘔吐を誘発し難い飲食品を提供できるので、このような過度に加熱される飲食品において本発明はより好適に実施できる。
【0024】
本発明の飲食品の製造方法は、前述したミネラル含有乳酸菌及び多価不飽和脂肪酸を含有させる以外は、特に制限はなく、これら飲食品において通常採用される製法によって製すれば良い。また、必要な栄養を摂取できるように本発明の効果を損なわない範囲でその他の原料を配合してもよく、このような原料としては、具体的には、例えば、牛乳、脱脂粉乳、ホエー、カゼインナトリウム、ラクトアルブミン等の乳蛋白、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白等の大豆蛋白、卵、卵黄、卵白、卵白アルブミン等の卵蛋白、魚肉蛋白、畜肉蛋白、血清蛋白、小麦蛋白、ゼラチン等の蛋白質原料、澱粉、デキストリン、フルクトース、グルコース、乳糖、オリゴ糖及び糖アルコール等の糖質原料、カルシウム、ナトリウム等のミネラル類、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ナイアシンなどのビタミン類原料、難消化性デキストリン、結晶セルロース、アップルファイバー等の食物繊維、キサンタンガム、カラギーナン等のガム質、寒天、ゼラチン等のゲル化材、増量剤、結合剤、滑沢剤、保存剤、酸化防止剤、香料等の賦形剤等が挙げられる。
【0025】
次に、本発明を実施例、比較例及び試験例に基づき、更に詳細に説明する。なお、発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
[実施例1]
下記に示す原料をそれぞれ秤量した。次に、65℃の清水に鉄含有乳酸菌、銅含有乳酸菌、亜鉛含有乳酸菌、マンガン含有乳酸菌、大豆蛋白質(乾燥物)、カゼインナトリウム、デキストリン、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、乳酸カルシウム、塩化マグネシウム、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンB、ナイアシン、ビタミンB、葉酸、ビタミンB12、パテントン酸及びビタミンCを加え、ミキサーに入れて混合撹拌した。これとは別に、容器中でコーン油、菜種油及び中鎖脂肪酸トリグリセリドを80℃に加温し、グリセリン脂肪酸エステルを加えた後、これを先に混合調製した水溶液に加え、更にミキサーで混合攪拌した。得られた混合液を高圧ホモゲナイザー(条件:50MPa)で乳化した後、125mlずつ缶に充填し、120℃で20分間加熱殺菌(F値=6分)することにより流動食を得た。なお、製した流動食100g当り、多価不飽和脂肪酸が約1.8g、鉄が約6mg、銅が約0.6mg、亜鉛が約6mg、マンガンが約330μg含有していた。
この製した流動食を25℃の恒温室で3ヵ月保存後に要介護者に経口摂取させたところ、劣化臭がなく、嘔吐やむせも誘発されなかった。
【0027】
<配合割合>
鉄含有乳酸菌(※1) 0.6g
銅含有乳酸菌(※2) 0.3g
亜鉛含有乳酸菌(※3) 0.6g
マンガン含有乳酸菌(※4) 0.03g
大豆蛋白質(乾燥物) 20g
カゼインナトリウム 40g
デキストリン 200g
コーン油 18g
菜種油 30g
中鎖脂肪酸トリグリセリド 10g
クエン酸三カリウム 8g
クエン酸三ナトリウム 1.2g
乳酸カルシウム 1g
塩化マグネシウム 2g
グリセリン脂肪酸エステル 2g
ビタミンA 3000IU
ビタミンD 300IU
ビタミンE 18mg
ビタミンK 90μg
ビタミンB 1.8mg
ビタミンB 2mg
ナイアシン 30mg
ビタミンB 3mg
葉酸 300μg
ビタミンB12 4μg
パテントン酸 8mg
ビタミンC 150mg
清水 残量
―――――――――――――――――――――――
合計 1000g
(※1)Grow Company Inc.(社)製の商品名「Biogurt Iron」、鉄含有量:約10g/100g
(※2)Grow Company Inc.(社)製の商品名「Biogurt Copper」、銅含有量:約2g/100g
(※3)Grow Company Inc.(社)製の商品名「Biogurt Zinc」、亜鉛含有量:約10g/100g
(※4)Grow Company Inc.(社)製の商品名「Biogurt Manganese」、マンガン含有量:約11g/100g
【0028】
[実施例2]
下記に示す原料をそれぞれ秤量した。
次に、攪拌機付きニーダーで鶏肉及びタマネギをコーン油及び菜種油の混合油でソテーし、これに清水に混合分散した鉄含有乳酸菌、銅含有乳酸菌、亜鉛含有乳酸菌、マンガン含有乳酸菌、醤油、食塩、キサンタンガム、ローカストビーンガム、大豆蛋白質(乾燥物)及びデキストリン、中鎖脂肪酸トリグリセリドを加えて攪拌混合した後、コミトロール(アーシャル社製、モデルナンバー1700、200ブレード)でペースト化処理した。
続いて、前記ペースト化処理した原料をカップ型の耐熱性合成樹脂製容器(70ml容量)に60gずつ充填し、イージーピール可能な耐熱性合成樹脂製の蓋材で密封後、熱水式レトルト中で120℃で20分間加熱殺菌(F値=6分)した後、冷却して、ゲル状の咀嚼嚥下困難者用食品を得た。なお、製したゲル状の咀嚼嚥下困難者用食品100g当り、多価不飽和脂肪酸が約4.5g、鉄が約6mg、銅が約0.6mg、亜鉛が約6mg、マンガンが約330μg含有していた。また、ゲル状の咀嚼嚥下困難者用食品のかたさは、7×10N/mであった。
この製したゲル状の咀嚼嚥下困難者用食品を25℃の恒温室で3ヵ月保存後に要介護者に経口摂取させたところ、劣化臭がなく、嘔吐やむせも誘発されなかった。
【0029】
<配合割合>
鶏肉 100g
タマネギ 20g
コーン油 40g
菜種油 67g
中鎖脂肪酸トリグリセリド 22g
鉄含有乳酸菌(※1) 0.6g
銅含有乳酸菌(※2) 0.3g
亜鉛含有乳酸菌(※3) 0.6g
マンガン含有乳酸菌(※4) 0.03g
醤油 3g
食塩 1g
キサンタンガム 3g
ローカストビーンガム 3g
大豆蛋白質(乾燥物) 35g
デキストリン 20g
清水 残量
―――――――――――――――――――――――――――
合計 1000g
(※1)Grow Company Inc.(社)製の商品名「Biogurt Iron」、鉄含有量:約10g/100g
(※2)Grow Company Inc.(社)製の商品名「Biogurt Copper」、銅含有量:約2g/100g
(※3)Grow Company Inc.(社)製の商品名「Biogurt Zinc」、亜鉛含有量:約10g/100g
(※4)Grow Company Inc.(社)製の商品名「Biogurt Manganese」、マンガン含有量:約11g/100g
【0030】
[比較例1]
実施例1において、鉄含有乳酸菌、銅含有乳酸菌、亜鉛含有乳酸菌及びマンガン含有乳酸菌に代えて、鉄含有酵母(オリエンタル酵母工業(株)社製の商品名「ミネラル酵母−Fe」、鉄含有量:約1500mg/100g)、銅含有酵母(オリエンタル酵母工業(株)社製の商品名「ミネラル酵母−Cu」、銅含有量:約300mg/100g)、亜鉛含有酵母(オリエンタル酵母工業(株)社製の商品名「ミネラル酵母−Zn」、亜鉛含有量:約2000mg/100g)及びマンガン含有酵母(マリーンバイオ(株)社製の商品名「ビール酵母(マンガン含有)」、マンガン含有量:5500mg/100g)を配合して、流動食の鉄、銅、亜鉛及びマンガン含有量が実施例1と同じになるようにし、その増加分を清水で補正した他は実施例1と同じ配合と製法にて流動食を得た。なお、製した流動食100g当り、多価不飽和脂肪酸が約1.8g、鉄が約6mg、銅が約0.6mg、亜鉛が約6mg、マンガンが約330μg含有していた。
【0031】
[比較例2]
比較例1において、コーン油及び菜種油に代えて中鎖脂肪酸トリグリセリドを配合した他は、同じ配合と製法にて流動食を得た。なお、製した流動食100g当り、多価不飽和脂肪酸が約0.5g、鉄が約6mg、銅が約0.6mg、亜鉛が約6mg、マンガンが約330μg含有していた。
【0032】
[比較例3]
比較例1において、鉄含有酵母、銅含有酵母、亜鉛含有酵母及びマンガン含有酵母の配合量をそれぞれ半分に減らして、その減少分を清水で補正した他は、同じ配合と製法にて流動食を得た。なお、製した流動食100g当り、多価不飽和脂肪酸が約1.8g、鉄が約3mg、銅が約0.3mg、亜鉛が約3mg、マンガンが約165μg含有していた。
【0033】
[試験例]
本発明の飲食品が、保存後の劣化臭が生じ難いことを立証するため、以下の試験を行った。
すなわち、実施例1の飲食品(本発明品)、及び比較例1〜3の飲食品(比較品)のそれぞれについて製造直後のサンプルと、55℃の恒温室で2週間保存した促進保存試験後のサンプルを用意した。
これらを要介護者に経口摂取させ、劣化臭を評価させた。
結果を表1に示す。
【0034】
<劣化臭の評価基準>
ランク 評価
A:劣化臭がない
B:わずかに劣化臭がある
C:劣化臭がある
D:強い劣化臭がある
【0035】
【表1】

【0036】
表1より、ミネラル含有酵母由来の二価以上の遷移元素及び多価不飽和脂肪酸を含有する比較例1乃至3の流動食は、保存後に劣化臭が生じることが理解できる。また、比較例1と比較例2の流動食を比べると、多価不飽和脂肪酸含有量が多い比較例1の流動食の方が保存後の劣化臭が強いことが理解でき、同様に、比較例1と比較例3の流動食を比べると、ミネラル含有酵母由来の二価以上の遷移元素の合計含有量が多い比較例1の流動食の方が保存後の劣化臭が強いことが理解できる。従って、保存後の劣化臭は、ミネラル含有酵母由来の二価以上の遷移元素と多価不飽和脂肪酸が原因であると推察できる。
一方、ミネラル含有乳酸菌由来の二価以上の遷移元素を含有した実施例1の飲食品は、多価不飽和脂肪酸を含有するにも拘らず、保存後の劣化臭が生じ難いことが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価不飽和脂肪酸、及びミネラルとして二価以上の遷移元素を含有した飲食品であって、前記ミネラルがミネラル含有乳酸菌由来であることを特徴とする飲食品。
【請求項2】
前記ミネラル含有乳酸菌由来のミネラルが鉄、銅、亜鉛及びマンガンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の飲食品。
【請求項3】
前記ミネラル含有乳酸菌由来のミネラル含有量が、飲食品100g当り、それぞれ鉄が1mg以上、銅が0.1mg以上、亜鉛が1mg以上及びマンガンが100μg以上である請求項2に記載の飲食品。
【請求項4】
前記多価不飽和脂肪酸の含有量が、飲食品100g当り、0.1g以上である請求項1乃至3のいずれかに記載の飲食品。
【請求項5】
100℃を超える温度で加熱殺菌されてなる請求項1乃至4のいずれかに記載の飲食品。
【請求項6】
値が4分以上の条件で、レトルト処理されてなる請求項5に記載の飲食品。
【請求項7】
飲食品が栄養食品である請求項1乃至6のいずれかに記載の飲食品。
【請求項8】
栄養食品が流動食である請求項7に記載の栄養食品。
【請求項9】
栄養食品が介護用食品である請求項7に記載の栄養食品。