説明

餅様食感含水チョコレート及びその製造方法

【課題】餅様の食感を有し、風味に優れ、且つ1年規模での長期流通が可能な含水チョコレート及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】含水チョコレートがゼリー強度が80〜200ブルームのゼラチンを2〜5重量%、二糖類以下の糖質を40〜65重量%、ハードバターを5〜20重量%、及び水分を13〜18重量%含有し、前記二糖類以下の糖質として、直鎖状多価アルコールを10〜25重量%含有し、水分活性が0.60未満であることによって前記課題が解決される。また、固形分含有量が70重量%以上である二糖類以下の糖質を含む水相成分と、ハードバターを含む油相成分を混合乳化し、二糖類以下の糖質及びハードバターを含有し、水分含有量が10〜13重量%の水中油型タイプの含水チョコレートを作製し、この水中油型含水チョコレートに膨潤させたゼラチン水溶液を加え混合することによって前記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、餅様の食感を有し、風味に優れ、且つ1年規模での長期流通が可能な含水チョコレート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の油脂性菓子は、チョコレートに代表されるようにお菓子市場で大きな市場を形成してきた。これは、油脂性菓子の食感のバラエティーを追求する事によって時代の嗜好性の要請に応えて来た面が寄与していると思われる。例えば、ビスケットの上に油脂性生地を載せてスナック風にしたり、油脂性生地の中心層にジャムや木の実等を入れて組み合わせによって新しい食感を出す試みをしたりする方向が主であった。また、ポリフェノール等の機能性を訴求した商品も一時流行の兆ししを見せた。しかし、これらの方向だけでは次第に消費者に飽きられ、市場の拡大は望めなくなりつつある。
【0003】
上記のような状況下で、チョコレート生地を改良することによって、全く別の食感を追求するという試みは極めて斬新なものである。この方向にそったものとして、例えば油脂性菓子生地とゼラチンを含有し、かつ、糖類とゼラチンからなる水溶性固形分が連続相となる組織を有することを特徴とし、さらに水分量が3.0重量%以下である耐熱油脂性菓子がある。一般に、チョコレート類等の油脂性菓子は、骨格となる連続相が体温付近で融解するココアバター等の油脂であるため、つかむとべとついて手を汚し、気温が上昇すると型くずれをおこしてとけてしまうし、また、とけたものを冷やして固めても、表面が白くなるファットブルームを生じてしまう等の欠点を有している。前記耐熱油脂性菓子は、このような従来のチョコレートの欠点を解決したものであり、油脂性生地がゼラチンを含有することで、従来のチョコレートとは異なり、弾力性を有する油脂性菓子である。ところが、この油脂性菓子の場合には、前記のように水分量が3.0重量%以下と低いことから、口溶けの点では従来のチョコレートに較べるとはるかに劣るものである。
【0004】
これを改良するものとして、油脂とゼラチン等のゲル化剤とを含有するゲル状油性菓子であって、ゲル状油性菓子全体重量中、ゲル化剤が1〜15重量%、水分が20重量%以下に設定されていることを特徴とするゲル状油性菓子がある(特許文献2)。これは、チョコレート規格の3重量%を越える水分量を設定しており、これによって、口溶けの改良を試みているが、前記ゲル状油性菓子の場合、ゲル化剤としてのゼラチンのゼリー強度が規定されていないことから、実際には口溶けの改良はあまり期待できないものになっている。実施例における製造方法からもそのことがうかがえ、砂糖煮詰め液とゲル化剤としてのゼラチン溶液をかなり高い温度で混ぜるために熱変性によりゼラチン強度が減少し、本来の弾力性も出にくいものになっている。
【0005】
また、本出願人は前記問題点を取り除いたチョコレートとして、ゼリー強度200ブルーム未満のゼラチンを膨潤溶解させたゼラチン溶液と糖類溶液を100℃以下の温度で混合し、該混合液を、溶融したチョコレート生地と混合した、カカオ分の含有量を21〜30重量%、ゼラチンの含有量を3〜10重量%、かつ水分含量を5〜20重量%に調整したチョコレートを提案した(特許文献3)。前記チョコレートは、弾力性があり、且つ口溶けの良い新しい食感のチョコレートであるが、水分を多く含むため水分活性値が高く、日持ちがしないという問題がある。
【0006】
保存の指標として現在注目されている水分活性は、食品中の水分の蒸気圧が関連する指標であり、水分活性を0.700未満に抑えれば、一般細菌、食中毒菌、酵母菌、カビ、好塩性細菌の増殖を防止することは可能であるが、耐乾性カビや耐浸透圧性酵母、Aspegills ecbinulatus、Monascus bisporusといった種類のカビの増殖を防止するためには、水分活性を0.600未満に抑える必要があることが一般的に知られている(非特許文献1)。このため、長期流通に向けて保存性を高めるためには水分活性を0.600未満に下げる必要があり、水分含有量が多い食品は必然的に水分活性が高くなり、水分活性を0.600未満にすることは非常に困難である。
【0007】
それぞれ目的は異なるが、ゼラチンを含むゲル化剤とチョコレートを組み合わせた例としては、ゲル化剤が0.4〜1重量%、水分が7〜20重量%、チョコレート生地が80〜93重量%であって、水に対するゲル化剤の量が5.5重量%以下である新食感の加工チョコレート類や(特許文献4)、ざらつきを解消する目的として、ゲル化開始温度が40℃以下のゲル化剤を含有する含水チョコレート類があるが(特許文献5)、いずれも水分活性についての記載はなく、保存性という点では何ら触れられていない。
【0008】
具体的に水分活性を明記したチョコレートとゼラチンを組み合わせた菓子の例としては、5重量%のゼラチン水溶液を30℃に保持したときゲル化しないゼラチンを0.2〜4重量%含有する油中水型含水チョコレートや(特許文献6)、ゼラチン及びチョコレートを含有し、水分若しくは水分及びエタノールを合計5重量%〜20重量%含有し、かつ、オーバーランが300〜600であって気相が連続層をなすことを特徴とするパン食感の多孔性ゲル状油性菓子があるが(特許文献7)、いずれも水分値が15%程度の場合の水分活性は約0.75であり、保存性という点では問題がある。
【0009】
また、チョコレートとゼラチンを混ぜ合わせた菓子の製造方法として、ゼラチン溶液に関する製造方法においては前記特許文献4〜7においていずれも記載されているが、チョコレート部分に関しての製造方法に関しては何ら記載されておらず、結果的に油中水系タイプのチョコレートであることが容易に推察される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2788375号公報
【特許文献2】特開平06−296458号公報
【特許文献3】特開2002−209522号公報
【特許文献4】特許第3711674号公報
【特許文献5】特開10−295273号公報
【特許文献6】特開2002−306077号公報
【特許文献7】特許第3845991号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】食品包装便覧 日本包装技術協会 P228, 229(1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、餅様の食感を有し、風味が良く、且つ1年規模での長期保存が可能な含水チョコレート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことにゼラチンの強度とその含有量、直鎖状多価アルコールを含む二糖類以下の糖質、ハードバターの含有量、及び水分含有量に着目することによって、餅様の食感を有し、更に水分活性が0.600未満と長期保存が可能であることを発見し、本発明を完成するに至った。更に無脂カカオ成分を5〜15重量%することによって、食感に弾力性を有し、更に食感が向上することを発見した。また、二糖類以下の糖質を含有する水相成分と、ハードバターを含有する油相成分とを油中水系型に混合乳化した後、ゼラチン溶液を添加し攪拌混合することによって前記目的を達成する餅様食感含水チョコレートが得られることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、ゼリー強度が80〜200ブルームのゼラチンを2〜5重量%、二糖類以下の糖質を40〜65重量%、ハードバターを5〜20重量%、及び水分を13〜18重量%含有し、前記二糖類以下の糖質として、直鎖状多価アルコールを10〜25重量%含有し、水分活性が0.60未満であることを特徴とする餅様食感含水チョコレートに関する。
【0015】
また、本発明は、無脂カカオ成分を5〜15重量%含有することを特徴とする前記餅様食感含水チョコレートに関する。
【0016】
更に、本発明は、固形分含有量が70重量%以上である二糖類以下の糖質を含む水相成分と、ハードバターを含む油相成分を混合乳化し、二糖類以下の糖質及びハードバターを含有し、水分含有量が10〜13重量%の水中油型タイプの含水チョコレートを作製する工程、前記水中油型含水チョコレートに膨潤させたゼラチン水溶液を加え混合する工程を有することを特徴とする前記餅様食感含水チョコレートの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、餅様の食感を有し、風味に優れ、且つ1年規模での長期保存が可能な含水チョコレートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の餅様食感含水チョコレートは、ゼリー強度が80〜200ブルームのゼラチンを2〜5重量%、二糖類以下の糖質を40〜65重量%、ハードバターを5〜20重量%、及び水分を13〜18重量%含有し、前記二糖類以下の糖質として、直鎖状多価アルコールを10〜25重量%含有し、水分活性が0.60未満であることを特徴とする。
【0019】
本発明で使用するゼラチンは、ゼリー強度が80〜200ブルームのものを用いることが必要であり、ゼリー強度が100〜150ブルームの範囲のゼラチンを用いることがより好ましい。ゼリー強度が80ブルーム未満の場合、弾力性がなく、餅様の食感にならない。一方、ゼリー強度が200ブルームを超えると、弾力が強すぎるため、グミの様な食感となり、餅様の食感とは異なる。ゼラチンとしては、通常の食品用ゼラチンを用いることができ、例えばアルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン等を用いることができる。本発明の餅様食感含水チョコレート中のゼラチンの含有量は2〜5重量%であり、好ましくは2.5〜4重量%である。ゼラチンの含有量が2重量%未満の場合、口溶けが早くなり、餅のような持続性のある食感にならない。一方、ゼラチンの含有量が5重量%を超えると弾力性が強くなり、グミのような食感になる。なお、前記ゼリー強度は、常法に基づいて測定することができる。
【0020】
次に本発明に使用する糖質としては、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等の二糖類、異性化糖、オリゴ糖、これらの二糖類以下の糖類を主成分として含有する砂糖、水飴類等、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン等の糖アルコール等の二糖類以下の糖質が挙げられる。本発明の餅様食感含水チョコレートでは、前記糖質のうち二糖類以下の糖質の含有量は40〜65重量%であり、前記二糖類以下の糖質として直鎖状多価アルコールが10〜25重量%であることが大きな特徴の一つである。直鎖状多価アルコールとは、環状構造をとらず、且つ水酸基を2つ以上持つ糖アルコールのことを示し、例としてソルビトール、キシリトール、マンニトール、グリセリン、エリスリトール等が挙げられる。二糖類以下の糖質の含有量が40重量%未満では、得られる餅様食感含水チョコレートの水分活性が高くなり1年規模での長期流通が困難になる。一方、二糖類以下の糖質の含有量が65重量%を越えると、得られる餅様食感含水チョコレートの水分活性は十分に低いものの非常に甘くなり風味として好ましくない。直鎖状多価アルコールの含有量も同様な理由が当てはまる。
【0021】
二糖類以下の糖質及び直鎖状多価アルコールの適切な含有量の範囲は水分含有量によって異なるが、二糖類以下の糖質は50〜60重量%、そのうち直鎖状多価アルコールは15〜23重量%が好ましい。また、二糖類以下の糖質については、2種以上組み合わせてもよく、特に限定はないが、例えば、より風味を向上させるために、砂糖を20重量%以上、トレハロースを少なくとも直鎖状多価アルコールの5重量%含有させると良い。
【0022】
前記二糖類以下の糖質としてショ糖(スクロース)を用いる場合、必要によってカラメル化してもよい。ショ糖をカラメル化することによって水分活性が減少し、直鎖状多価アルコールの含有量を低く抑えることができる。また、カラメル化する際は同時に生クリームや練乳、バター等の乳製品を加えキャラメル風味にすると風味の点でより好ましい。
【0023】
なお、前記直鎖状多価アルコールは、風味や物性的な面、及び製造コストの面からソルビトールであることが好ましい態様である。風味の点では前記直鎖状多価アルコールがキシリトールであることもまた好ましい態様であり、キシリトールとソルビトールとを併用することによって結晶化等の物性的な問題の解消や製造コストを削減することができ、キシリトール単独で用いるよりも好ましい。マンニトール、エリスリトール、グリセリン等のその他の直鎖状多価アルコールは単独で用いる場合、風味が悪かったり、結晶化が起こったりする等の物性的な問題があるが、ソルビトール及び/又はキシリトールと併用することによってこれらの問題は解消できる。なお、風味及び物性に影響が出ない範囲であれば、ソルビトールとキシリトール以外の直鎖状多価アルコールのうち、単独及びそれらの混合物としてのみで使用しても構わない。
【0024】
更に、本発明の餅様食感含水チョコレートには、前記二糖類以下の糖質に加えて、食品に添加できる三糖類、四糖類、五糖類以上のオリゴ糖、多糖類等の糖類も含有することができる。これらの食品に添加できる糖類の含有量としては、餅様食感含水チョコレートの物性、風味、食感に悪影響を与えなければよく、特に限定はない。
【0025】
また、本発明に使用されるハードバターとは、ココアバターとココアバター代用脂の総称を示し、その含有量は餅様食感含水チョコレート中において5〜20重量%である。ハードバターの含有量が5重量%未満では、餅のようなコシのある食感にならない。一方、ハードバターの含有量が20重量%を超えると、低水分条件化での乳化が困難になり、ゼラチン溶液とうまく混合できず、水分活性が高くなる可能性が大きい。また、前記ハードバターの含有量は8〜15重量%の範囲が好ましく、特にココアバターを用いるのが好ましい。ココアバター代用脂とは、チョコレートの物性改良や製造コストの節約を目的として、ココアバターの一部または全部に代えて用いられるもので、主にCBEと称される1、3位飽和、2位不飽和のトリグリセリド型油脂に富むものと、CBRと称されるラウリン系もしくは高エライジン酸タイプのものがある。ココアバター代用脂の油脂原料としては、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サンフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂及び乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂を例示することができ、上記油脂類若しくは2種以上の混合した油、又はそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂を用いることができる。
【0026】
また、本発明の餅様食感含水チョコレートの水分含有量は13〜18重量%である。水分含有量が18重量%を超えると、得られる餅様食感含水チョコレートの水分活性が高くなるため長期的な日持ちがせず、またベタツキが大きく、好ましくない。一方、水分含有量が13重量%未満では水中油型含水チョコレートとゼラチン溶液の均一な混合が困難であり、グミのような食感を持つ部分が生じやすい。より好ましい水分含有量の範囲は14〜16重量%である。
【0027】
更に、本発明の餅様食感含水チョコレートでは必要により、乳化剤、卵、安定剤、呈味成分、洋酒、保存料、塩、酸味料、抗菌剤、着色料、フレーバー、酸化防止剤等を加えることができる。
【0028】
乳化剤としては、モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等を必要により用いることができる。乳化剤は餅様食感含水チョコレート中に0.01重量%以上で風味に影響を与えない範囲内で使用するのが好ましい。また、卵としては、全卵、卵黄、卵白、酵素処理卵等を用いることができる。但し、これらを加えることによって、得られる餅様食感含水チョコレート中の水分活性が減少することはない。
【0029】
呈味成分としては、果汁、果肉、ジャム、果汁パウダー、コーヒーパウダー、アーモンドペースト及びピーナッツペースト等を必要により用いる。呈味成分を使用する場合は餅様食感含水チョコレート中に、呈味成分を好ましくは0.1〜25重量%、さらに好ましくは1〜20重量%添加する。但し、前記呈味成分に二糖類以下の糖質が含有される場合には、前記二糖類以下の糖質の含有量としてカウントするため、最終的な含有量が規定範囲内になるように、二糖類以下の糖質及び呈味成分の量を調整する必要がある。
【0030】
洋酒としては、ラム酒、ブランデー等が挙げられる。洋酒を使用する場合は、餅様食感含水チョコレート中に0.1〜5重量%添加するのが好ましい。
【0031】
塩、酸味料としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。風味の調整のために塩、酸味料を添加する場合、本発明の餅様食感含水チョコレート中1重量%以下が好ましい。また、塩は水分活性を下げる効果があるのは既知であるが、前記添加量の範囲では大きな効果は期待できず、酸味料はpHを低くすることによって抗菌性を向上することはできる。但し、pHを低くしすぎることは風味の点であまり好ましくない。本発明の餅様食感含水チョコレートのpHは6.0〜7.5の範囲が好ましい。
【0032】
抗菌剤としては、甘草抽出物、緑茶抽出物、ササエキス、タンニン、リゾチーム、等が挙げられ、餅様食感含水チョコレート中に0.01〜0.5重量%程度で風味に影響が生じない範囲で使用するのが好ましい。
【0033】
また、本発明の餅様食感含水チョコレートは無脂カカオ成分を5〜15重量%含有することが好ましい。より好ましい範囲は7〜13重量%である。無脂カカオ成分を前記の量含有することによって、チョコレートとしての風味が向上するだけでなく、食感にもコシが付与される。無脂カカオ成分とは、カカオ成分からココアバターを除いた成分のことを示し、無脂カカオ成分を含有するものとしては、ホワイトチョコレートを除くチョコレート生地、カカオマス、カカオパウダー等が挙げられる。前記チョコレート生地は、カカオマス及び/又はココアと砂糖等の糖質、粉乳、油脂等を使用し、これらを常法通りロール掛けし、所望によりコンチングしたチョコレート生地であればよい。
【0034】
次に本発明の餅様食感含水チョコレートに関わる製造方法であるが、先ず、主成分として直鎖状多価アルコールを含む二糖類以下の糖質、必要により乳製品やその他水溶成分等を含有する水相成分を、固形分含有量が70重量%以上になるまで加熱して煮詰める。前記水相成分は、二糖類以下の糖質、乳製品等を水に溶解したものである。水相成分の固形分含有量が70重量%未満の場合、必須成分において規定の含有量を満たさない成分が生じる可能性が高くなり、結果的に得られる餅様食感含水チョコレートの風味や食感の劣化、及び水分活性が0.600を超える可能性が高くなる。また、固形分含有量の好ましい範囲は75重量%以上である。更に好ましくは80重量%以上である。なお、二糖類以下の糖質はその全量を水相成分として使用してもよいが、その一部を後述のチョコレート生地に含有させて油相成分として使用してもよく、加熱しても風味を損なわない油相成分であれば水相成分中に予め混合してもよい。
【0035】
そして、前記水相成分と、ハードバターを含む油相成分とを水分値が10〜13重量%になるように水中油型に混合乳化する。水分値が10重量%未満の場合、水中油型の乳化が困難である。一方、水分値が13重量%を超えると、ゼラチン溶液を混合した後の水分値が高くなり、水分活性が高くなる可能性が高い。また、前記油相成分としては、ハードバター、チョコレート生地及びカカオマスから選ばれる1種又は2種以上との混合物である。必要であればパーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油、サンフラワー油等の各種植物性油脂、牛脂、豚脂、魚脂、乳脂等の各種動物性油脂を添加することができる。但し、混合後ハードバターの含有量が5〜20重量%の範囲なるように前記油相成分の量を調整する必要があり、油脂全体の合計含有量は35重量%以下であることが望ましい。
【0036】
前記チョコレート生地は、スイートチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート等、カカオマス及び/又はココアと砂糖等の糖質、粉乳、油脂等を使用し、これらを常法通りロール掛けし、所望によりコンチングしたチョコレート生地であればよく、例えばカカオマス若しくはカカオパウダーを使用した通常のダークチョコレート類、あるいは乳固形分(粉乳)や糖質(粉糖)を主成分として使用したホワイトチョコレート等が例示できる。また、前記油相成分にチョコレート生地を含む場合、混合後に二糖類以下の糖質が規定の範囲の含有量になるように調整すればよい。また、前述した通り、この工程で無脂カカオ成分量を5〜15重量%に調整することにより、更なる食感の向上を付与することができる。
【0037】
更に必要により、卵、乳化剤、安定剤、呈味成分、洋酒、保存料、塩、酸味料、着色料、フレーバー、酸化防止剤等の任意成分を加える場合は、前記水相成分に含有させるか、あるいは水相成分と油相成分とを混合乳化後に添加する。但し、任意成分が油性の場合は、前記油相成分に添加してもかまわない。
【0038】
最後に、前記水中油型含水チョコレートとゼラチン溶液とを混合し攪拌する。ゼラチンの溶解に用いる溶媒は、ゼラチンが溶解するものであれば特に限定されない。例えば糖質を含む水溶液や、水が挙げられるが、水に溶解させるのが最も簡便であるため好ましい。また、攪拌方法としては、ホイッパー等の攪拌装置を用いた攪拌やニーダー等の混練装置等が挙げられ特に限定はされないが、ゼラチン溶液を入れると、粘度が急激に増加するため、量が多い場合はニーダーのような混練装置を用いるのが好ましい。
【0039】
前記混合後に得られた餅様食感含水チョコレートは、所望の大きさにカットし、四角型や球型に成型してもよいし、又はプレスしてシート状にしてもよい。また、成型した前記餅様食感含水チョコレートを別のチョコレートでエンローブしたり、ココアパウダーや粉糖等の可食性粉末でコーティングしたりしてもよい。更には、キャンディ、ソフトキャンディ、グミ及び生チョコレート等の菓子の中に入れることも可能である。
【実施例】
【0040】
次に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例中の数字は重量部、「%」は重量%を意味する。また、水分活性の測定にはnovasina社の水分活性恒温測定装置「LabMASTER−aw BASIC」(商品名)を用いた。
【0041】
(チョコレート生地1〜3の作製)
表1に示す配合に従い、ロール掛け及びコンチングを行いチョコレート生地1〜3を得た。
【0042】
【表1】

【0043】
(含水チョコレート1〜25の作製)
次に表2〜6に示す配合に従い、二糖類以下の糖質を含む水相成分とハードバターを含む油相成分とを混合乳化し、水中油型タイプの含水チョコレート1〜23、25を得た。なお、含水チョコレート24は、水分含有量が低いために水中油型の乳化構造を形成できなかった。
【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
(ゼラチン溶液1〜6の作製)
次に前記含水チョコレート1〜25と混合するゼラチン溶液1〜6を表7の配合で作製した。
【0050】
【表7】

【0051】
(実施例1〜13、及び比較例1〜12の含水チョコレートの作製)
次に前記含水チョコレート1〜25と前記ゼラチン溶液1〜6を表8〜9の配合で混合し、実施例1〜13、及び比較例1〜12の含水チョコレートを得た。
【0052】
【表8】

【0053】
【表9】

【0054】
実施例1〜13、比較例1〜12の含水チョコレートの組成等を表10〜13に示す。
【0055】
【表10】

【0056】
【表11】

【0057】
【表12】

【0058】
【表13】

【0059】
実施例1〜13、及び比較例1〜12の含水チョコレートの風味、食感、及び水分活性の結果を表14、15に示した。前記含水チョコレートの食感と風味に関しては、30名のパネラーが食べて、「◎」は非常に良い、「○」は良い、「×」は悪いの三段階で評価した。なお、表中の結果は、最も多い評価を示す。
【0060】
【表14】

【0061】
【表15】

【0062】
表14、15に示す結果より、実施例1〜13はいずれも食感、風味共に良く、水分活性も0.600未満であった。比較例1〜4はゼラチン強度若しくはゼラチン含有量が規定値外であることにより餅様の食感とならず、また比較例9はハードバターの含有量が少ないため、グミのような食感となり餅様の食感とはならなかった。比較例5及び7は糖質の量が規定値よりも大きいため甘味が非常に強く、風味として好ましくない結果となった。比較例6及び8は、糖質の量が規定値よりも小さく、また比較例10はハードバター含有量が多いため乳化構造が不十分となり、そして比較例12は水分含有量が高いためいずれも水分活性が0.600以上となり、1年規模での長期保存には適さない結果となった。比較例11に関しては、食感、風味の結果共に示されていないが、これは含水チョコレート24が、水分含有量が低いために水中油型の乳化構造を形成できず、結果的に本発明の餅様食感含水チョコレートとは全く異なるものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼリー強度が80〜200ブルームのゼラチンを2〜5重量%、二糖類以下の糖質を40〜65重量%、ハードバターを5〜20重量%、及び水分を13〜18重量%含有し、前記二糖類以下の糖質として、直鎖状多価アルコールを10〜25重量%含有し、水分活性が0.60未満であることを特徴とする餅様食感含水チョコレート。
【請求項2】
無脂カカオ成分を5〜15重量%含有する請求項1記載の餅様食感含水チョコレート。
【請求項3】
固形分含有量が70重量%以上である二糖類以下の糖質を含む水相成分と、ハードバターを含む油相成分を混合乳化し、二糖類以下の糖質及びハードバターを含有し、水分含有量が10〜13重量%の水中油型タイプの含水チョコレートを作製する工程、前記水中油型含水チョコレートに膨潤させたゼラチン水溶液を加え混合する工程を有することを特徴とする請求項1又は2記載の餅様食感含水チョコレートの製造方法。