説明

養殖・天然物引上げ案内具

【課題】 貝類付きロープ等の海中からの引上げ時にそれらがスリップせず確実かつ容易に引上げられる養殖・天然物引上げ案内具を提供する。
【解決手段】 本願発明の養殖・天然物引上げ案内具は、貝類付きロープの案内部を複数本のロール状回転体で構成した。ロール状回転体の軸方向一端又は両端に側壁を設け、案内部からの脱落を防止した。ロール状回転体に滑り止め突起と滑り止め空間を設けた。引き込み側の端部を案内部の裏面方向に湾曲させ、貝類が案内部に引っ掛からないようにした。引き込み口側を送り出し口側よりも幅広に構成した。案内具の船上側の端部に船体取付け具を設け、船に取り付けられるようにした。隣接するロール状回転体を連結体で連結し、連動するようにした。案内具の引き込み口側の端部にガイドローラを設け、海中から引上げられる貝類付きロープ等を案内部に確実に誘導できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、帆立貝、あこや貝、牡蠣など(以下、これらをまとめて「貝類」という。)の吊下げ養殖に用いられる貝類付きロープ、篭養殖用の貝入り篭、天然の昆布や他の海産物等(以下、これらをまとめて「養殖・天然物」という。)を、船上又は陸上に引上げる際に使用される養殖・天然物引上げ案内具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貝類は吊下げ養殖(帆立貝の養殖では「耳吊り養殖」といわれている。)されることがある。耳吊り養殖は、図8〜図10に示すように、ロープ(縦ロープともいう)Aに差込んだ樹脂製の貝類係止具K(図8)又はテグスを、貝類Bに開けた孔に通して貝類BをロープAに係止し、この貝類付きロープCを海中に吊下げて養殖する方法である。
【0003】
従来の耳吊り養殖では、図8に示すように、ロープAに貝類Bが係止されている貝類付きロープCを、船の上から海中に突き出て設置された引上げ回転体(回転ドラム)Dの外周に掛け、その貝類付きロープCをモータ等の引き上げ装置で海中から引き上げていた。
【0004】
貝類Bの引上げには、前記ドラム状の引上げ回転体D(特許文献1)や図9に示す滑り台Eなどが利用されていた。図9に示す滑り台Eは貝類付きロープCを円滑に引上げできるように表面Fを平滑面にすると共に、表面Fの幅方向両側面に貝類付きロープCが表面Fの脱落(滑落)防止用の側壁G(図10)を備えている。この滑り台Eの表面Fは貝類付きロープCが海中に吊るされた鉛直姿勢から船内での水平姿勢に円滑に移行できるように、側面視曲線状に湾曲している。この表面Fの曲線形状と平滑面によって貝類付きロープCが円滑に船内に引上げられるようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−136833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
貝類Bを係止して海中に吊下げられたロープA(通常6〜8mm径程度)の場合、その長さと取付ける貝類Bの枚数にもよるが、例えば、海中に投入後半年程度で貝類Bや貝類付きロープCにザラボヤなどが大量に付着して、見かけ上100〜200mmの径となり、その重量も1本当たり30〜50kgとなることがある。このように太く、重くなった貝類付きロープCを引上げると、貝類付きロープCが引上げ回転体D(図8)の胴体の表面Fでスリップしてスムースに引上げられないとか、スリップすると貝類Bが引上げ回転体Dと擦れてロープAから落下するといった問題があった。図9、図10の滑り台Eは貝類付きロープCを引上げる力(駆動力)がないため、貝類付きロープCがスムースに引上がりにくいという問題があった。
【0007】
本願発明の解決課題は、養殖・天然物、特に、雑物が大量に付着している貝類付きロープを海中又は水中(まとめて「海中」という。)から引上げるときに、それらがスリップせずに確実に且つ容易に引上げることのできる養殖・天然物引上げ案内具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の養殖・天然物引上げ案内具は、海中から引上げられる養殖・天然物をガイドする案内部を備えた養殖・天然物引上げ案内具において、二本以上のロール状回転体を前記引上げ方向に並べて配置して、それらロール状回転体の外周面上面を養殖・天然物を引き上げる案内部としたものである。
【0009】
二本以上のロール状回転体は駆動源で回転されるようにしてある。二本以上のロール状回転体を、引上げ方向上部と下部のロール状回転体が引上げ方向中間部のロール状回転体よりも船体側に湾曲するように配置して、それらロール状回転体の外周面上面で形成される案内部を湾曲させて、引き上げられる養殖・天然物が案内具の下端に引っ掛からずに案内面に引き上げられ、上端に引っ掛からずに案内面から送り出されるようにするのが望ましい。
【0010】
二本以上のロール状回転体の軸方向両端側には側縁を設け、側縁はロール状回転体の外周面上面よりも上方に突出させて、ロール状回転体の上を引き上げられる養殖・天然物がロール状回転体の軸方向端部から滑落しないようにするのが望ましい。
【0011】
本願発明の養殖・天然物引上げ案内具は、前記養殖・天然物引上げ案内具において、ロール状回転体の外周面は凹凸にすることができる。
【0012】
本願発明の養殖・天然物引上げ案内具は、前記養殖・天然物引上げ案内具において、網をロール状に巻いてロール状回転体として、外周面に滑り止め突起と滑り止め空間の双方を設けて、引き上げられる養殖・天然物が受面でスリップし難くするのが望ましい。
【0013】
本願発明の養殖・天然物引上げ案内具は、前記養殖・天然物引上げ案内具において、養殖・天然物引上げ方向下部のロール状回転体の軸長を、上部のロール状回転体の軸長よりも長くして案内部を下方広がりにして、案内具の側方からも案内面に引上げ易くするのが望ましい。
【0014】
本願発明の養殖・天然物引上げ案内具は、前記養殖・天然物引上げ案内具において、引上げ方向下部のロール状回転体の軸方向端側にガイドローラを設け、ガイドローラはその回転軸をロール状回転体の軸方向に対して交差する向きに配置すると共に、受面よりも先方に突出させて、案内具の案内面に引き上げられる養殖・天然物が、案内面の外側に滑落し難くするのが望ましい。
【0015】
本願発明の養殖・天然物引上げ案内具は、前記養殖・天然物引上げ案内具において、案内具を海上から船上まで引上げ可能に船に取付けて、不使用時に案内具を船上に引き上げて船舶の航行の邪魔にならないようにするのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の養殖・天然物引上げ案内具は次のような効果がある。
(1)養殖・天然物を引き上げる案内部が二以上のロール状回転体で構成されているため、案内部が平滑な面の場合よりも引上げ易くなる。
(2)二以上のロール状回転体が駆動回転するので、養殖・天然物を海中から確実に引上げ可能であり、引上げ中の貝の脱落も減少する。
(3)二本以上のロール状回転体が、引上げ方向上部と下部のロール状回転体が引上げ方向中間部のロール状回転体よりも船体側に湾曲するように配置されているので、海中から引き上げられる養殖・天然物が案内具の下端に引っ掛からずに案内面に引き上げられ、上端に引っ掛からずに案内面から送り出され、引上げ作業がスムースになる。
(4)二本以上のロール状回転体の軸方向両端側に側縁があり、側縁がロール状回転体の外周面上面よりも上方に突出しているので、引き上げられる養殖・天然物がロール状回転体の軸方向端部から滑落し難くなる。
(5)ロール状回転体の外周面を凹凸にしたので、養殖・天然物の引き上げが確実にできる。
(6)網をロール状に巻いてロール状回転体として、外周面に滑り止め突起と滑り止め空間の双方を設けてあるので、引き上げられる養殖・天然物が受面でスリップし難くなる。
(7)養殖・天然物引上げ方向下部のロール状回転体の軸長を、上部のロール状回転体の軸長よりも長くして案内部を下方広がりにしたので、養殖・天然物を案内具の側方から案内面に引上げ易くなり、引上げが確実になる。
(8)引上げ方向下部のロール状回転体の軸方向端側にガイドローラを設け、ガイドローラはその回転軸をロール状回転体の軸方向に対して交差する向きに配置し、受面よりも先方に突出させて有るので、案内具の案内面に引き上げられる養殖・天然物が、案内面の外側に外れなくなり、引上げが確実になる。
(9)二以上のロール状回転体を連動回転させれば、回転用の駆動源が一つですむため、装置の小型化を実現できる。
(10)案内具を海上から船上まで引上げ可能に取付けたので、案内具の不使用時に案内具を船上に引き上げて、船舶を航行し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明の養殖・天然物引上げ案内具を船のカイシングに取り付けた場合の一例を示す側面図。
【図2】(a)は引き込み口を送り出し口よりも幅広に構成した養殖・天然物引上げ案内具であって、下端側に誘導ローラを設けた場合の一例を示す斜視図、(b)はその正面図。
【図3】(a)は案内ローラの一例を示す斜視図、(b)は図3(a)の軸に取付けられるギヤの一例を示す斜視図、(c)は図3(b)のギヤに巻いてある鋼材の正面図。
【図4】(a)は引き込み口と送り出し口を同幅に構成した養殖・天然物引上げ案内具であって、下端側に誘導ローラを設けた場合の一例を示す斜視図、(b)はその正面図。
【図5】(a)は図2、図4に示す養殖・天然物引上げ案内具の側面図、(b)は誘導ローラの取付け構造の説明図。
【図6】船への養殖・天然物引上げ案内具の取付けに用いる取付具の一例を示す分解斜視図。
【図7】カイシングに取り付けた養殖・天然物引上げ案内具の動作説明の側面図。
【図8】従来のドラム状の引上げ回転体の一例を示す側面図。
【図9】従来の滑り台の一例を示す側面図。
【図10】従来の滑り台の一例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態)
本願発明の養殖・天然物引上げ案内具の実施形態について、船のカイシング21に取り付けて貝類付きロープ2を海中から船上に案内する(引き上げる)場合(図1)を一例として説明する。
【0019】
図2(a)、(b)に示す養殖・天然物引上げ案内具1は、ハの字状に下方広がりにしてある2枚の側壁4a、4b間に、多数本(二本以上)のロール状回転体3が配置され、それらロール状回転体3の長手方向両端部が前記2枚の側壁4a、4bを貫通して軸受け28によりそれら側壁4a、4bに回転自在に支持されている。図2(a)、(b)の多数本のロール状回転体3は間隔をあけて平行に配置されているが、必ずしも平行である必要はない。また、ロール状回転体3は等間隔で配置することも、異なる間隔で配置することもできる。
【0020】
図2(a)、(b)の実施形態の養殖・天然物引上げ案内具1は、ロール状回転体3の上に貝類付きロープ2を引上げ易くするために、下方の引き込み口(海側)5を、情報の送り出し口(船側)6よりも幅広にしてある。この場合、引き込み口5側のロール状回転体3を送り出し口6側のロール状回転体3よりも徐々に長くして、ロール状回転体3の軸方向両端面と、ハの字状に下方広がりになっている2枚の側壁4a、4b間に隙間ができないようにしてある。
【0021】
図2(a)、(b)に示す多数本のロール状回転体3の夫々は、図3(a)、(b)のようにローラシャフト8の軸方向両端側にギヤ13(図3(b))が固定され、両ギヤ13及び両ギヤ13間の外周に、図3(c)に示すような金属製の網材3cがロール状に巻かれている。鋼材3cには滑り止め突起3a及び滑り止め空間3bが形成され、引上げ中の貝類付きロープ2がスリップし難くしてある。
【0022】
図3(a)のギヤ13は図3(b)に示すものであり、軸孔13aの外周にキー溝13bがあり、ギヤ部13cの外側に突設されている筒状の固定部13dにネジ孔13eがあり、そのネジ孔13eにねじ込んだネジ(図示せず)でローラシャフト8にネジ止めしてある。更に、キー溝13bにキー(図示せず)を差し込んでローラシャフト8に固定して空転しないようにしてある。
【0023】
図3(a)の網材3cは図4(c)に示すように、金属製の波板12が連結棒12aで網状に連結されたものであり、その網目に前記ギヤ13のギヤ部13cが入り込むようにギヤ13の外周に巻いて、ローラシャフト8が回転するとギヤ13が回転し、ギヤ13のギヤ部13cで網材3cが回転するようにしてある。
【0024】
ロール状回転体3は前記した以外の形状、構造であってもよい。例えば、前記網材3cに代えて三角状の網目が連続する網材を使用し、それを図3(a)と同様にギヤ13の外周にロール状に巻いたものであってもよい。ギヤの外に網材を巻くのではなく、回転ロールの外周面に凹凸を設けたり、回転ロールを三角柱や四角柱などの多角柱ローラにしたり、回転ロールの外周面に鋸状の突起が形成された板材を固定したもの等であってもよい。要は、海中から引き上げる異物付着の貝付きロープがスリップせずに引上げられる構造、形状であればどのようなものであってもよい。
【0025】
図2(a)、(b)の多数本のロール状回転体3は、一方の側壁(図2(a)では右側の側壁4b)の外側に突出した突出部に、内側スプロケット10aと外側スプロケット10bを間隔をあけて設け、内側スプロケット10aは駆動用、外側スプロケット10bは隣接するロール状回転体3に動力を伝達する伝達用としてある。
【0026】
図2(a)、(b)では、最上段のロール状回転体3(説明の便宜上、最上段のロール状回転体3を「第1ローラ」といい、以下、下方向に続く順に「第2ローラ」、「第3ローラ」、「第nローラ」という。以下、同じ。)の内側スプロケット10aが駆動モータMに連結され、第1ローラの外側スプロケット10bと第2ローラの内側スプロケット10aにチェーン11を巻回してある。同様に、第2ローラの外側スプロケット10bと第3ローラの内側スプロケット10aの外周にチェーン11を、第3ローラの外側スプロケット10bと第4ローラの内側スプロケット10aの外周に連結チェーンを巻回し、それ以降も同様の組合せでチェーン11を巻回してある。これにより、全てのロール状回転体3が連結されるため、1つの駆動モータMを動作させることで、動力が全てのロール状回転体3に伝達され、全てのロール状回転体3が連動して同方向に回転する。ロール状回転体3は正・逆方向に切り替え回転可能とすることができる。この実施形態では無端のチェーンを使用する場合を一例として説明しているが、チェーン11に代えて無端ベルトなどを用いることもできる。この場合は、スプロケットをタイミングローラに代えるのがよい。
【0027】
図4は側壁4a、4bを平行に配置した例である。この場合は、夫々のロール状回転体3のスプロケット10cを一つにし、それらスプロケット10cに1本のチェーン11を掛け、駆動モータMで駆動スプロケット10dを回転させるとチェーン11が回転し、他のスプロケット10cがチェーンの回転に従って従動回転して、個々のロール状回転体3が回転するようにしてある。
【0028】
スプロケット10a〜10dや側壁4a、4bはステンレス製、樹脂製といった各種材質製とすることができるが、海水によって錆びたり故障したりし易くなるため、図2(b)に示すように、スプロケット10a〜10d、側壁4a、4b、スプロケット10a〜10dと側壁4a、4bの隙間をそれらの上からカバーN(図2(b))で被覆することもできる。カバーNを設けた場合、ロール状回転体3の両端と側壁4a、4bとの隙間に貝類付きロープ2が引っ掛かって貝類がロープから脱落したり、貝類付きロープ2が引上げ難くなったりするのを防止することができる。
【0029】
図2(a)、(b)、図4(a)、(b)の側壁4a、4bは、海中からロール状回転体3の表面(案内部7)に引き上げられた貝類付きロープ2が、ロール状回転体3の側方から外に外れないようにするためのものである。両側壁4a、4bは引き上げられる貝類が両側壁4a、4bの下端部に引っ掛かって不用意に脱落しないようにするため、図5のように、海中側端部(図5(a)の下端部)を船体側に向けて湾曲させてある。
【0030】
図2(a)、(b)、図4(a)、(b)の両側壁4a、4bの海中側端部にはガイドローラ(誘導ローラ)16が設けられている。海中の波の動きや潮の流れは不規則であるため、海中に吊るされている貝類付きロープ2を船上に引き上げる際に、貝類付きロープ2が潮や波の動きによって左右に振られて案内部7から外れてしまう場合がある。誘導ローラ16は海中から引上げられる貝類付きロープ2を案内部7に誘導し易くするためのものである。誘導ローラ16は円柱状であり、図5(a)、(b)に示すように軸受け(例えば、ベアリング式軸受け)14を介してシャフト17に回転自在に取付けられている。図5(a)、(b)に示す誘導ローラ16は表面が平滑なものが、貝類付きロープ2を案内部7に誘導し易い。誘導ローラ16は任意長とすることができる。
【0031】
(養殖・天然物引上げ案内具の船への取付け)
本願発明の養殖・天然物引上げ案内具1を船のカイシング21に取付けるには、例えば、図6に示す取付け具25を用いることができる。この取付け具25は、カイシング21に固定する固定台座22と、その固定台座22に取り付けて養殖・天然物引上げ案内具を支持する支持台23を備えるものである。
【0032】
前記固定台座22は、横長の台座本体22aと、その横幅方向両端に設けられた側面視コ字状の係止部22bと、台座本体22aの中心部上方に突設されたポスト22cを備えるものである。固定台座22はポスト22cが上向きとなるようにカイシング21の外周に被せ、締め具22dを回転させてカイシング21を挟着保持できるようにしてある。
【0033】
前記支持台23は支持台本体23aと、その支持台本体23aの中心部下方に突設された円筒状の嵌合部23bと、支持台本体23aの上に取付ける側方支持体23cを備えるものである。嵌合部23bはポスト22cに被せることの内径であり、ポスト22cに被せることによって支持台23を水平(図6のX−X方向)に首振り回転できるようにしてある。嵌合部23bには支持台23を所望の水平回転位置で固定するための固定手段(図示しない)を設けることができる。固定手段には緩めると嵌合部23bが回転可能となり、締めると嵌合部23bが固定されるネジ調節式のものなどを使用することができる。
【0034】
図6の側方支持体23cは支持台23と養殖・天然物引上げ案内具1とを連結するものであり、支持台本体23aに固定するための横板23dとそれから上方に立ち上げた縦板23eを備えたL字状である。縦板23eには養殖・天然物引上げ案内具1を軸支する連結軸24を挿通することができる。
【0035】
図6の取付け具25を用いて養殖・天然物引上げ案内具1をカイシング21に取り付けるには例えば次のようにする。
1.固定台座22をカイシング21の外周に被せ、係止部22bの締め具22dを調節してカイシング21に固定する。
2.固定台座22のポスト22cに支持台23の嵌合部23bを被せて、支持台23を固定台座22にセットする。このとき、支持台23は所望の向きに回転させ、その位置で固定しておく。
3.支持台23の側方支持体23cの間に養殖・天然物引上げ案内具1をセットし、両側壁4a、4bに設けられた連結片26の貫通孔26aと側壁支持体23cの縦板23eに形成された貫通孔23fの位置を合わせる。
4.連結軸24を、一方の側方支持体23cの縦板23eの外側から左右の連結片26を貫通して他方の連結片26まで挿通させる。
5.連結軸24が抜け落ちないように連結軸24の両端に図示しない抜け止め材を取り付ける。
【0036】
前記要領で取り付けられた養殖・天然物引上げ案内具1は、連結軸24を回転軸として、図7の矢印方向に往復回転させることができる。これにより、漁場(水揚げ場)へ向かう間は養殖・天然物引上げ案内具1を上方に回転させて船側に上げておき、水揚げ場で下方に回転させて海側に下ろすことができる。
【0037】
図1は貝類付きロープ2を引き上げるときの例であり、貝付きロープ2を海中から引き上げて本願発明の養殖・天然物引上げ案内具1のロール状回転体3の上(案内部7)に引き上げ、その貝類付きロープ2の先端部を引上げ装置Oにセットする。引上げ装置OのロールPを図示しないモータで回転させると、貝類付きロープ2が連続して引き上げられる。このとき、養殖・天然物引上げ案内具1のロール状回転体3をも駆動回転させることができる。
【0038】
本願発明の養殖・天然物引上げ案内具1により貝類付きロープ2を海中からロール状回転体3の上(案内部7)に引き上げるには、その貝類付きロープ2の先端部を洗浄装置にセットし、洗浄装置のロールPを図示しないモータで回転させると、貝類付きロープ2が連続して洗浄装置に引き込まれ、そのまま洗浄することもできる。このとき、養殖・天然物引上げ案内具1のロール状回転体3をも駆動回転させることができる。洗浄装置には本件出願人が以前に開発した洗浄装置(特許第3917107号)などを使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本願発明の養殖・天然物引上げ案内具は、図1に示すように船に取り付けて使用することは勿論のこと、陸上でも使用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 養殖・天然物引上げ案内具
2 貝類付きロープ
3 ロール状回転体
3a 滑り止め突起
3b 滑り止め空間
3c 網材
4a 側壁
4b 側壁
5 引き込み口
6 送り出し口
7 案内部
8 ローラシャフト
10a 内側スプロケット
10b 外側スプロケット
10c スプロケット
10d 駆動スプロケット
11 チェーン
12 波板
12a 連結棒
13 ギヤ
13a 軸孔
13b キー溝
13c ギヤ部
13d 固定部
13e ネジ孔
14 軸受け
16 誘導ローラ
17 シャフト
21 カイシング
22 固定台座
22a 台座本体
22b 係止部
22c ポスト
22d 締め具
23 支持台
23a 支持台本体
23b 嵌合部
23c 側方支持体
23d 横板
23e 縦板
23f 貫通孔
24 連結軸
25 取付け具
26 連結片
26a 貫通孔
28 軸受け
A ロープ
B 貝類
C 貝類付きロープ
D 回転ドラム
E 滑り台
F 表面
G 側壁
K 貝係止具
M 駆動モータ
N カバー
O 引上げ装置
P ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中から引上げられる養殖・天然物をガイドする案内部を備えた養殖・天然物引上げ案内具において、二本以上のロール状回転体を引上げ方向に並べて配置して、それらロール状回転体の外周面上面を養殖・天然物を引き上げる案内部としたことを特徴とする養殖・天然物引上げ案内具。
【請求項2】
請求項1記載の養殖・天然物引上げ案内具において、二本以上のロール状回転体は駆動源で回転されることを特徴とする養殖・天然物引上げ案内具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の養殖・天然物引上げ案内具において、二本以上のロール状回転体のうち引上げ方向下部と上部のロール状回転体が、引上げ方向中間部のロール状回転体よりも船体側に湾曲して配置され、それらロール状回転体の外周面上面で形成される案内部を同方向に湾曲させたことを特徴とする養殖・天然物引上げ案内具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の養殖・天然物引上げ案内具において、二本以上のロール状回転体の軸方向両端側に側縁を設け、当該側縁はロール状回転体の外周面上面よりも上方に突出して、ロール状回転体の上に引き上げられる養殖・天然物がロール状回転体の軸方向端部から滑落しないようにしたことを特徴とする養殖・天然物引上げ案内具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の養殖・天然物引上げ案内具において、ロール状回転体の外周面に、引き上げられる養殖・天然物に係止可能な滑り止めが設けられたことを特徴とする養殖・天然物引上げ案内具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の養殖・天然物引上げ案内具において、網をロール状に巻いてロール状回転体とし、外周面に滑り止め突起と滑り止め空間の双方を設けて、引き上げられる養殖・天然物が受面でスリップし難くしたことを特徴とする養殖・天然物引上げ案内具。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の養殖・天然物引上げ案内具において、引上げ方向下部のロール状回転体の軸長を、引上げ方向上部のロール状回転体の軸長よりも長くして案内部を下方広がりにしたことを特徴とする養殖・天然物引上げ案内具。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の養殖・天然物引上げ案内具において、引上げ方向下部のロール状回転体の軸方向両端側にガイドローラを設け、当該ガイドローラをロール状回転体の軸方向に対して交差する向きに配置すると共にロール状回転体の外周面で形成される案内部よりも先方まで突出させたことを特徴とする養殖・天然物引上げ案内具。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の養殖・天然物引上げ案内具において、案内具が海上から船上まで引上げ可能に船に取付け可能であることを特徴とする養殖・天然物引上げ案内具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−200212(P2012−200212A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68228(P2011−68228)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(398000288)株式会社むつ家電特機 (17)
【Fターム(参考)】