説明

香料供給装置及び舗装構造

【課題】舗装体の周辺の環境条件に応じて舗装体の香りを変更することができる散布装置を提供する。
【解決手段】香料供給装置3は、異なる香料を含有する複数の溶液Wを区分して貯蔵する地下水槽4と、舗装体2の周辺の環境条件を計測する計測装置5と、溶液W毎の供給条件を予め記憶する記憶部71と、複数の溶液Wのうち、供給条件が環境条件に適合した溶液Wを選択する溶液選択部72と、溶液選択部72で選択された溶液Wを地下水槽4から舗装体2に供給する供給装置6と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装体に香料を供給する香料供給装置及びこれを備える舗装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、舗装材の製造過程において香料を添加することが行われている。
例えば、特許文献1には、古タイヤ等のリサイクルゴムチップと、顔料、触媒、接着剤及び添加剤とを撹拌・混合して型枠に流し込み、乾燥させてなる舗装用ブロックの製造過程において、舗装用ブロックの設置箇所の風景(環境)に合わせた香料を添加することが開示されている。
【0003】
一方、環境条件に応じて、路面に凍結防止剤や融雪剤を供給することが行われている。
例えば、特許文献2には、降雪状況、外気温度および路面温度の環境条件の計測検知をセンサーにより行う計測検知手段を備え、計測検知手段からの電気信号に基づいて、予め気候・温度データとして設定入力されているデータを参照して、融雪剤等の溶液を路面上へ散布する散布ポンプ等の作動制御を行う路面凍結防止剤および融雪剤の散布装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3016413号公報
【特許文献2】特許第3170705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の舗装用ブロックでは、舗装材の製造過程において香料を添加しているため、環境や季節などに合わせて事後的に香りを変更することが困難であった。また、香りを持続させることが困難であった。
【0006】
なお、従来の散布装置では、凍結防止剤等の散布は行われているものの、香料を散布することについてはなんら開示されていない。また、複数の香料を区分して貯留すると共に、香料を選択して供給することについて、なんら開示されていない。
【0007】
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、舗装体に香料を供給することができる香料供給装置及び舗装構造を提供することを課題とする。
また、本発明は、舗装体の周辺の環境に応じて舗装体の香りを変更することができる香料供給装置及び舗装構造を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る香料供給装置は、複数の香料を区分して貯蔵する貯蔵手段と、舗装体の周辺の環境条件を計測する計測手段と、前記香料毎の供給条件を予め記憶する記憶手段と、前記複数の香料のうち、前記供給条件が前記環境条件に適合した前記香料を選択する香料選択手段と、前記香料選択手段で選択された前記香料を前記貯蔵手段から前記舗装体に供給する供給手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、舗装体の周辺の環境条件が計測手段によって計測されると、貯蔵手段に区分して貯蔵された複数の香料の中から、この環境条件に供給条件が適合した香料が香料選択手段によって選択され、選択された香料が供給手段によって舗装体に供給される。そのため、舗装体の周辺の環境条件に適した香りが舗装体に付与されることとなる。
【0010】
なお、前記計測手段は、環境条件として気温、湿度及び時間のうち少なくとも一つを計測するように構成するのが好ましい。また、各香料の供給条件は、前記計測手段で計測する環境条件をパラメータとするのが好ましい。
また、前記貯蔵手段における香料の貯蔵は、特に限定されるものではなく、香料を溶媒(例えば水)に混合した溶液の状態で貯蔵するようにしてもよいし、香料と溶媒を別々に貯蔵してもよい。
【0011】
また、本発明に係る香料供給装置は、香料を貯蔵する貯蔵手段と、前記香料を舗装体に供給する供給手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る舗装構造は、舗装体と、香料を貯蔵する貯蔵手段と、前記香料を前記舗装体に供給する供給手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、香料を貯蔵するとともに、必要に応じて香料を舗装体に供給することができる。そのため、香りを持続させることができると共に、貯蔵している香料を変更すれば、香りを変更することもできる。
【0013】
また、香料供給装置は、前記香料を舗装体に供給する時刻を予め記憶する記憶手段と、前記時刻に基づいて前記供給手段を制御する制御手段と、を備えるように構成するのが好ましい。
かかる構成によれば、予め設定した時刻に香料を舗装体に供給することができる。
【0014】
また、前記舗装体は、水分を保持可能な保水層を有するのが好ましい。
このようにすれば、香料を含有する溶液が舗装体の保水層に保持されるので、香りの持続期間を増大させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、舗装体に香料を供給することができる香料供給装置及び舗装構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る散布装置を備える舗装構造の断面図である。
【図2】制御部のブロック図である。
【図3】散布装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】変形例における舗装体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る散布装置を備える舗装構造の断面図である。
図1に示すように、舗装構造1は、道路や広場などの路面を構成する舗装体2と、舗装体2に香料を含有する溶液Wを供給する香料供給装置3と、を備えている。
【0019】
舗装体2は、例えばアスファルト舗装であり、表層、基層、路盤などで構成されている。舗装体2の内部には、後記する供給装置6の一部である供給パイプ21及びノズル22が配管されている。供給パイプ21は、道路の横断方向及び縦断方向(図示省略)に配管されている。供給パイプ21は、溶液Wを吐出するための複数のノズル22を備えている。ノズル22は、舗装体2の表面2aに露出(開口)している。
【0020】
なお、舗装体2の種類は、特に限定されるものではなく、アスファルト舗装の他、コンクリート舗装や、ブロック舗装、張石舗装など、どのような舗装であってもよい。また、保水性舗装、透水性舗装、半たわみ性舗装などの特殊舗装であってもよい。特に、透水性舗装を採用すれば、歩行者への水跳ねがなく好適である。
【0021】
香料供給装置3は、舗装体2に香料を含有する溶液Wを供給する装置である。香料供給装置3は、例えば道路脇の緑地などに設置されている。香料供給装置3としては、例えば、冬季に凍結防止剤を路面に散布する凍結防止剤散布装置などを改良して利用することができる。
香料供給装置3は、香料を含有する溶液Wを貯留する地下水槽4と、舗装体2の周辺の環境条件を計測する計測装置5と、溶液Wを舗装体2に供給する供給装置6と、供給装置6を制御する制御部7と、を主に備えている。
【0022】
地下水槽4は、香料を含有する溶液Wを貯留するコンクリート製の箱型の水槽であり、地下に埋設されている。地下水槽4は、2つの隔壁41によって、3つの空間S1,S2,S3に区分されている。地下水槽4の上部は、コンクリート製の蓋体42によって閉塞されている。
また、図示は省略するが、地下水槽4は、各空間S1,S2,S3内の溶液Wの残量を計測する計量装置と、各空間S1,S2,S3に溶液Wを供給(補充)する溶液供給部と、を備えている。
【0023】
地下水槽4に貯留される溶液Wは、例えば3種類の溶液W1,W2,W3で構成されている。溶液W1は、例えば凍結防止剤を含有する溶液であり、空間S1に貯留されている。溶液W2は、香料を含有する溶液であり、空間S2に貯留されている。溶液W3は、溶液W2と異なる香料を含有する溶液であり、空間S3に貯留されている。
【0024】
なお、本実施形態では、香料を溶媒に混合した状態(溶液状態)で貯蔵することとしたが、香料と溶媒(例えば水)とを別々に貯蔵して、舗装体2に供給する段階で両者を混合するようにしてもよい。
【0025】
香料は、植物や動物から抽出した天然香料、化学的に合成した合成香料、又は、これらを混合した香料など、どのような香料であってもよい。
ちなみに、本実施形態では、溶液W2には、夏季の早朝に良く似合う清々しい香り(例えば夏みかんの香り)の香料が混入されている。また、溶液W3には、昼間の活動を促す香り(例えばペパーミントの香り)の香料が混入されている。
【0026】
計測装置5は、舗装体2の周辺の環境条件を計測する装置である。具体的には、計測装置5は、気温T、湿度、降水量Q、時刻Hなどを計測している。計測装置5で計測した計測データは、後記する制御部7に送られる。
【0027】
供給装置6は、地下水槽4に貯留されている溶液Wを舗装体2に供給する装置である。供給装置6は、吸い上げ用パイプ61,62,63と、集合パイプ64と、ポンプPと、電磁弁V,V,Vと、前記した供給パイプ21と、複数のノズル22と、を備えている。
【0028】
吸い上げ用パイプ61,62,63は、地下水槽4の各空間S1,S2,S3から各溶液W1,W2,W3を吸い上げるためのパイプである。吸い上げ用パイプ61,62,63の下端側は、各空間S1,S2,S3に挿入されている。吸い上げ用パイプ61,62,63の上端側は、集合パイプ64に接続されている。
集合パイプ64は、吸い上げ用パイプ61,62,63とポンプPとを接続するパイプである。
ポンプPは、地下水槽4の各空間S1,S2,S3から各溶液W1,W2,W3を吸い上げる装置である。ポンプPの上流側には、集合パイプ64が接続されている。また、ポンプPの下流側には、前記した供給パイプ21が接続されている。
電磁弁V,V,Vは、吸い上げ用パイプ61,62,63をそれぞれ開閉する装置であり、吸い上げ用パイプ61,62,63の中間部に設置されている。電磁弁V,V,Vは、制御部7に電気的に接続されており、開閉の組み合わせを切り替えることにより、吸い上げる溶液W(香料)を選択できるようになっている。
【0029】
図2は、制御部のブロック図である。
制御部7は、供給装置6を制御する装置である。制御部7は、例えばCPUなどの演算処理装置と、RAMやROMなどの記憶装置と、を含んで構成されている。
制御部7は、記憶部71と、溶液選択部72と、バルブ制御部73と、ポンプ制御部74と、を備えている。
【0030】
記憶部71は、予め設定された各溶液W1,W2,W3の供給条件(すなわち各香料の供給条件)を記憶する機能を有している。
本実施形態では、溶液W1の供給条件は、降雨量Qが閾値Q(例えばQ=0mm/hour)よりも大きく、気温Tが閾値T(例えばT=0℃)以下の場合に、舗装体2に供給されるように設定されている(図3参照)。
また、溶液W2の供給条件は、降雨量Qが閾値Q以下であり、気温Tが閾値Tよりも大きく、かつ、時刻Hが6:00から9:00の間である場合に、舗装体2に供給されるように設定されている。
また、溶液W3の供給条件は、降雨量Qが閾値Q以下であり、気温Tが閾値Tよりも大きく、かつ、時刻Hが9:00から15:00の間である場合に、舗装体2に供給されるように設定されている。
また、記憶部71は、各溶液W1,W2,W3と、これらを貯留している各空間S1,S2,S3と、を関連付けて記憶している。
【0031】
溶液選択部72は、計測装置5から送られてくる環境条件の計測データに基づいて、記憶部71に予め記憶されている各溶液W1,W2,W3の供給条件を参照し、各溶液W1,W2,W3のうち、供給条件が環境条件に適合した溶液Wを、舗装体2に供給する溶液Wとして選択する機能を有している。
溶液選択部72は、選択した溶液Wに関する溶液選択信号を、バルブ制御部73に送信するように構成されている。
なお、かかる溶液選択部72が、特許請求の範囲における「香料選択手段」に相当する。
【0032】
バルブ制御部73は、溶液選択部72から送られた溶液選択信号に基づいて、選択された溶液Wが貯留されている空間Sに対応する電磁弁Vを開放し、それ以外の電磁弁Vを閉鎖する信号を、各電磁弁V,V,Vに送信する機能を有している。
バルブ制御部73は、各電磁弁V,V,Vに開閉信号を送信した後、ポンプ制御部74に開閉完了信号を送信するように構成されている。
【0033】
ポンプ制御部74は、ポンプPの駆動及び停止を制御する機能を有している。ポンプ制御部74は、バルブ制御部73から開閉完了信号を受信すると、ポンプPに駆動命令信号を送信してポンプPを駆動するように構成されている。また、ポンプ制御部74は、所定の作動時間が経過した後に、ポンプPを停止するように構成されている。
このように、制御部7は、環境条件に基づいて供給装置6(より詳しくは電磁弁V及びポンプP)を制御することにより、供給パイプ21及びノズル22を介して舗装体2に、選択された溶液Wを供給するように構成されている。
【0034】
つづいて、本実施形態に係る香料供給装置3の動作について、主に図3(適宜図1,2)を参照して説明する。図3は、散布装置の動作を示すフローチャートである。
【0035】
図3に示すように、始めに、香料供給装置3の制御部7の溶液選択部72(図2参照)は、計測装置5によって計測された降雨量Qが、閾値Q(例えばQ=0mm/hour)よりも大きいか否かを判定する(ステップS1)。
【0036】
降雨量Qが0mm/hour以下である場合(ステップS1,No)には、溶液選択部72は、次に、気温Tが閾値T(例えばT=0℃)よりも大きいか否かを判定する(ステップS2)。
【0037】
気温Tが0℃よりも大きい場合、つまり、雨が降っておらず凍結のおそれもない場合(ステップS2,Yes)は、溶液選択部72は、時刻Hが、6:00から9:00の間であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0038】
時刻Hが6:00から9:00の間である場合(ステップS3,Yes)は、溶液選択部72は、記憶部71に予め記憶されている各溶液Wの供給条件を参照して、舗装体2に供給する溶液Wとして、夏季の早朝に良く似合う清々しい香りの香料を含有する溶液W2を選択する。そして、溶液選択部72は、バルブ制御部73に溶液W2を選択した旨の信号を送信する。
【0039】
バルブ制御部73は、溶液W2が選択された旨の信号を受けると、記憶部71に予め記憶されている各溶液Wと各空間Sとの対応関係を参照して、溶液W2が貯留されている空間S2に対応する電磁弁Vを開状態にし、他の電磁弁V,Vを閉状態にする(ステップS8)。
また、バルブ制御部73は、各電磁弁Vの開閉を設定した後に、ポンプ制御部74に開閉完了信号を送信する。
【0040】
開閉完了信号を受信したバルブ制御部73は、ポンプPを作動し(ステップS10)、溶液W2を吸い上げ、供給パイプ21及びノズル22を介して舗装体2に溶液W2を供給する。これにより、舗装体2に夏季の早朝に良く似合う清々しい香りの香料が供給され、道路を利用する人の気分が良くなる。
【0041】
一方、時刻Hが6:00から9:00の間ではなく(ステップS3,No)、9:00から15:00の間である場合(ステップS4,Yes)には、溶液選択部72は、記憶部71に予め記憶されている各溶液Wの供給条件を参照して、舗装体2に供給する溶液Wとして、昼間の活動を促す香りの香料を含有する溶液W3を選択する。そして、溶液選択部72は、バルブ制御部73に溶液W3を選択した旨の信号を送信する。
【0042】
バルブ制御部73は、溶液W3が選択された旨の信号を受けると、記憶部71に予め記憶されている各溶液Wと各空間Sとの対応関係を参照して、溶液W3が貯留されている空間S3に対応する電磁弁Vを開状態にし、他の電磁弁V,Vを閉状態にする(ステップS9)。
また、バルブ制御部73は、各電磁弁Vの開閉を設定した後に、ポンプ制御部74に開閉完了信号を送信する。
【0043】
開閉完了信号を受信したバルブ制御部73は、ポンプPを作動し(ステップS10)、溶液W3を吸い上げ、供給パイプ21及びノズル22を介して舗装体2に溶液W3を供給する。これにより、舗装体2に昼間の活動を促す香りの香料が供給され、道路を利用する人の活動が促される。
【0044】
なお、時刻Hが、6時前又は15時以降である場合には、節約のため、ポンプPを停止して、舗装体2への溶液Wの供給を見合わせる(ステップS5)。
【0045】
ところで、降雨量Qが0mm/hourよりも大きい場合(ステップS1,Yes)には、溶液選択部72は、次に、気温Tが閾値T(例えばT=0℃)よりも大きいか否かを判定する(ステップS6)。
【0046】
そして、気温Tが0℃以下の場合(ステップS6,No)は、溶液選択部72は、記憶部71に予め記憶されている各溶液Wの供給条件を参照して、舗装体2に供給する溶液Wとして、凍結防止剤を含有する溶液W1を選択する。そして、溶液選択部72は、バルブ制御部73に溶液W1を選択した旨の信号を送信する。
【0047】
バルブ制御部73は、溶液W1が選択された旨の信号を受けると、記憶部71に予め記憶されている各溶液Wと各空間Sとの対応関係を参照して、溶液W1が貯留されている空間S1に対応する電磁弁Vを開状態にし、他の電磁弁V,Vを閉状態にする(ステップS7)。
また、バルブ制御部73は、各電磁弁Vの開閉を設定した後に、ポンプ制御部74に開閉完了信号を送信する。
【0048】
開閉完了信号を受信したバルブ制御部73は、ポンプPを駆動し、凍結防止剤を含有する溶液W1を吸い上げ、供給パイプ21及びノズル22を介して舗装体2に溶液W1を供給する。これにより、路面の凍結が防止される。
【0049】
一方、降雨量Qが0mm/hourより大きく、かつ、気温Tが0℃よりも大きい場合(ステップS6,Yes)は、凍結防止剤を散布する必要がなく、また、香料を散布してもすぐに流れ去ってしまうので、ポンプPを停止して、舗装体2への溶液Wの供給を見合わせる(ステップS5)。
【0050】
また、降雨量Qが0mm/hour以下で、かつ、気温Tが0℃以下である場合(ステップS2,No)は、香料を含有する溶液Wを散布すると凍結するおそれがあるため、ポンプPを停止して、舗装体2への溶液Wの供給を見合わせる(ステップS5)。
【0051】
以上のような香料供給装置3によれば、舗装体2の周辺の環境条件を計測装置5によって計測し、地下水槽4に区分して貯蔵された複数の溶液W1,W2,W3の中から、この環境条件に供給条件が適合した溶液Wを制御部7の溶液選択部72によって選択し、選択された溶液Wを供給装置6によって舗装体2に供給するので、環境条件に適した香りを舗装体2に付与することができる。
【0052】
また、地下水槽4に貯留されている溶液Wの種類を変更することにより、香りを容易に変更することができる。そのため、舗装体2の使用条件に合わせて香りを変更することができる。例えば、舗装体2が公園などの広場の路面を構成している場合、広場で行われるイベントに合わせて香料を変更することにより、イベントに適した香りを提供することができる。
【0053】
<変形例>
前記した実施形態においては、舗装体2を通常のアスファルト舗装としたが、舗装体2としていわゆる保水性舗装を用いてもよい。なお、保水性舗装とは、その表面から水蒸気を発散させることにより、気化熱によって路面の熱を奪い、路面温度を低下させる機能を有する舗装である。
【0054】
以下に、舗装体2として保水性舗装を用いた変形例について、図4を参照して説明する。説明において、前記した実施形態と同一の要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0055】
図4は、変形例における舗装体の断面図である。
図4に示すように、保水性舗装10は、路盤11と、遮水層12と、給水層13と、保水層14と、をこの順番に積層して構成されており、給水層13には、供給パイプ21が配管されている。
【0056】
遮水層12は、給水層13に供給される水が路盤11に染み込むのを防止する層であり、例えば、比較的密度の高い粘土層などによって構成されている。なお、遮水層12として、合成樹脂製の遮水シートを用いてもよい。
【0057】
給水層13は、保水層14に水分を供給するための層である。給水層13は、例えば、粒径が2mm〜20mm程度の骨材13aとアスファルトとを混合して形成したいわゆる開粒度アスファルト混合物の連続空隙に、粒径が0.15mm〜0.6mm程度の珪砂13bを充填して構成されている。また、給水層13には、供給パイプ21が配置されている。供給パイプ21には複数の貫通孔21aが設けられており、香料供給装置3(図1参照)のポンプPから供給された溶液Wを給水層13に供給するようになっている。給水層13に供給された溶液Wは、珪砂13bの毛細管現象によって吸い上げられて、保水層14に供給される。
【0058】
保水層14は、例えば、粒径が2mm〜20mm程度の骨材14aとアスファルトとを混合して形成した開粒度アスファルト混合物の連続空隙に、保水性グラウト14bを充填して構成されている。
保水性グラウト14bは、公知のものを利用可能であるが、例えば、シルト系粉末と、セメント系固化剤と、減水剤あるいは凝結遅延剤等の添加剤とを所定配合で混合したものを用いることができる。
【0059】
かかる構成によれば、保水性舗装10によって路面の温度上昇を抑制することができると共に、香料を含有する溶液Wが保水性舗装10に保水されるので、香りの持続時間を長くすることができる。また、香料として、暑さを緩和するタイプの香料を用いれば、路面を涼しくする効果を向上させることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0061】
例えば、本実施形態では、貯蔵手段たる地下水槽4において、複数の香料を区分して貯蔵することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、1種類の香料を貯蔵するようにしてもよい。
かかる場合においても、舗装体2に香料を供給することができるので、香りを長時間持続させることができる。また、貯蔵する香料を変更することにより、香りを事後的に変更することができる。
【0062】
また、本実施形態では、計測装置5で計測した舗装体2の周辺の環境条件に基づいて香料を舗装体2に供給することとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、香料を供給する時刻を予め記憶部71に記憶しておき、計測装置5で計測した時刻と記憶部71に記憶した時刻が一致した香料を舗装体2に供給するようにしてもよい。このようにすれば、計測装置5を簡略化することにより、コストを削減することができる。
【0063】
また、本実施形態では、舗装体2の内部に配管21を埋設したが、舗装体2の表面2aに溝を形成し、その溝に香料(又は香料を含む溶液)を流すようにしてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、溶液Wに香料を含有させることとしたが、例えば、臭気の強い環境では、消臭成分を含有した溶液を散布するようにしてもよい。また、防虫臭を発する香料を含有させてもよい。
【0065】
また、舗装体2を利用する利用者に応じて、香りを変更してもよい。利用者としては、幼児、小学生、中学生、高校生、大学生、社会人、老人、男性、女性などが考えられる。これらの利用者のうち、特定の利用者が多い時間帯(例えば小学生の通学時間)に合わせて、特定の利用者に好まれる香料を含有する溶液Wを舗装体2に供給するようにしてもよい。
【0066】
また、本発明とは異なるが、路面にカビ等が発生しやすい場所では、防カビ剤を含有する溶液を散布するようにしても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 舗装構造
2 舗装体
3 散布装置
4 地下水槽
41 隔壁
5 計測装置
6 溶液供給装置
7 制御部
71 記憶部
72 溶液選択部
73 バルブ制御部
74 ポンプ制御部
P ポンプ
W 溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の香料を区分して貯蔵する貯蔵手段と、
舗装体の周辺の環境条件を計測する計測手段と、
前記香料毎の供給条件を予め記憶する記憶手段と、
前記複数の香料のうち、前記供給条件が前記環境条件に適合した前記香料を選択する香料選択手段と、
前記香料選択手段で選択された前記香料を前記貯蔵手段から前記舗装体に供給する供給手段と、
を備えることを特徴とする香料供給装置。
【請求項2】
前記計測手段は、前記環境条件として気温、湿度及び時間のうち少なくとも一つを計測することを特徴とする請求項1に記載の香料供給装置。
【請求項3】
香料を貯蔵する貯蔵手段と、前記香料を舗装体に供給する供給手段と、を備えることを特徴とする香料供給装置。
【請求項4】
前記香料を舗装体に供給する時刻を予め記憶する記憶手段と、
前記時刻に基づいて前記供給手段を制御する制御手段と、を備える請求項3に記載の香料供給装置。
【請求項5】
舗装体と、香料を貯蔵する貯蔵手段と、前記香料を前記舗装体に供給する供給手段と、を備えることを特徴とする舗装構造。
【請求項6】
前記舗装体は、水分を保持可能な保水層を有することを特徴とする請求項5に記載の舗装構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−159544(P2010−159544A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−822(P2009−822)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(390002185)大成ロテック株式会社 (90)
【Fターム(参考)】