説明

香製品乾燥用トレー

【課題】 香製品乾燥用トレーの吸水性を維持したまま耐水性を高め、安価で平坦性に優れ、前処理することなくそのまま使用できるようにする。
【解決手段】 波板状中芯1と、その両面にそれぞれ貼合されたライナー2,3とからなる段ボール構造とし、前記各ライナーを坪量300g/m以上、サイズ度が30分以上、吸水度が50g/m以下である板紙で構成し、前記波板状中芯1とライナー2,3とを耐水性接着剤で貼合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は乾燥用トレー、特に、線香、お香或いは蚊取り線香等の香製品を乾燥するのに適した香製品乾燥用トレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、線香、お香或いは蚊取り線香等の香製品を製造する場合、原料粉末を所定比で配合し、水を加えて混練した後、所定形状に成形してトレーに載せ、自然乾燥又は強制乾燥することが行われている。例えば、線香の場合、原料組成物を線状に形成し、線状の生線香をトレー上に平行に載置し、前記トレー上で前記生線香の両端を切断して所定の長さに揃えた後、乾燥させるという方法で製造されている。この種のトレーとしては、伝統的に木製トレーが使用されていたが、多段に積重して使用すると乾燥に多大な時間を要し、また、反復使用するとトレーに反りやひび割れを生じたり、カビが発生する他、トレーのそり等によって香製品が湾曲したり、表面にヒビ後が残るという問題があった。
【0003】
このため、近年では、木製トレーに代えて軽量な段ボールや段ボール構造のシートを香製品乾燥用トレーとして使用することが案出され、その一部は実用に供されている。この種の香製品乾燥用トレーとしては、例えば、表ライナー及び裏ライナーの表面にフッ素系又はポリウレタン系等の防水剤を含浸させた段ボールからなる乾燥用シート(特許文献1参照)、及び波板状中芯と、その両面に貼着された長繊維パルプ含有ライナーとからなる段ボール構造を有し、前記各ライナーの表面に通気性及び復元性を有する耐水性板紙を貼着してなることを特徴とする乾燥用トレー(特許文献2)などがある。
【0004】
前者の段ボールシートでは、ライナー表面に防水剤を含浸させることによりシートへの線状成形物の密着及び水の吸収を阻止することはできるが、線状成形物を多数本載置したシートを多段に積み重ねて使用する場合、水の吸収が阻止されているため、熱風乾燥であっても乾燥に時間を要するという問題がある。
【0005】
他方、特許文献2に記載のものは、紙製とし、かつ、段ボール構造とすることによってトレーの軽量化と吸水性の向上を図ると共に、トレー表面の耐水性板紙が生香製品から吸収した水分をライナー及び中芯に浸透させ、その水分をライナーと中芯との間に形成された空間に流した乾燥用空気で蒸発させて生香製品の乾燥を促進させることを意図したものであり、この乾燥用トレーは反復使用しても湾曲や小皺或いはヒビ割れを生じることがなく、長期に渡って良質の香製品を製造できる利点があるが、使用開始から再使用するまでに必要なトレーの所要枚数が多く、通常の段ボールに比べて単価が高いため、一回の購入額が大きくなり、大規模事業者にとっては採用できても小規模事業者にとっては採用が困難である他、トレーが板製トレーに比べて軽量ではあるが従来の両面段ボールに比べて重いため使用時の取扱い性が悪いという問題があった。
【0006】
このため、小規模事業者では、もっぱら市販の両面段ボールシートが採用されている。しかしながら、両面段ボールシートは、安価ではあるが、耐久性に劣り、反復使用する間にシートの両側部が波打つようになり、また、これを線香の乾燥に適用した場合、同じ長さの生線香を同一トレー上で乾燥させても乾燥後の長さが不揃いになるなど香製品の品質が低下し、数回しか反復使用できないという問題があった。
【0007】
他方、この種の両面段ボールシートは、コルゲートマシンで中芯原紙を段成型し、その両面に順次ライナーを貼り合わせることにより製造されている。この場合、コルゲートマシンにセットされた中芯原紙を段ロールで加圧・加熱して段成型し、その片面側の段頂に糊剤を塗布し、これにライナーを貼り合わせて片面段ボールとした後、その中芯の段頂に糊剤を塗布し、これにライナーを貼り合わせ加圧・加熱することにより接着を完了させて両面段ボールとし、次いで、これを所定幅に切断した後、所定の長さに切断して所定寸法の段ボールシートに仕上げられる。
【0008】
しかしながら、ライナー原紙(CライナーやKライナー)及び中芯原紙は、巻取でコルゲートマシンにセットされ、そのまま段ボールに加工されるため巻き癖が抜け難く、しかも、表裏ライナーの貼合に時差があるため、段ボールシートに反りを生じ易いという難点がある。このため、所定寸法に裁断した段ボールシートを積み重ね、上部から荷重をかけることが行われてはいるが、反りの発生は避けられず、そのまま香製品乾燥用トレーとして使用できないという問題があった。このため、使用前に反りのある段ボールシートに水や水蒸気を噴霧して湿気を与えた後、平坦な場所に積み重ねて加圧・乾燥させて平坦性を高めるなどの前処理が行われている一般的である。
【0009】
【特許文献1】特開平10−182399
【特許文献2】特開平11−094467
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、吸水性を維持したまま耐水性を高め、平坦性に優れ、軽量で取扱い性に優れ、前処理することなくそのまま使用できる耐久性に優れた安価な乾燥用トレーを得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、乾燥用トレーの基本構造として軽量で耐圧性の高い段ボール構造を採用し、そのライナーを、吸水性を抑制すると共に耐水性を高めた厚い板紙で構成し、前記ライナーと中芯を耐水性接着剤で貼合するようにしたものである。
【0012】
即ち、本発明に係る香製品乾燥用トレーは、波板状中芯と、その両面にそれぞれ貼合されたライナーとからなる段ボール構造を有する香製品乾燥用トレーにおいて、前記各ライナーが坪量300g/m以上、吸水度が50g/m以下である板紙からなり、前記波板状中芯とライナーとを耐水性接着剤で貼合してなることを特徴とするものである。
【0013】
前記ライナーとしては、具体的には、坪量が300g/m以上、好ましくは、400g/m以上であって、長繊維パルプ又は古紙を主体としサイズ剤により吸水性を前記範囲に抑制された板紙を使用することができる。前記板紙には、例えば、紙の層を複数重ねて脱水・乾燥加工を施して得られる、坪量が300g/m以上でサイズ剤により吸水性及びサイズ度を前記範囲に抑制された厚肉のライナー原紙及び紙管原紙等が含まれる。経済的及び物理的な観点からは、坪量が300〜800g/mでサイズ剤により吸水性を前記範囲内に抑制された紙管原紙をライナー用板紙として使用するのが好適である。
【0014】
前記ライナー用板紙を製造する際に吸水性を抑制するのに使用するサイズ剤としては、ロジン系サイズ剤やゼラチン、でんぷん、合成樹脂など公知のものを使用できるが、マレイン化ロジンやフマル化ロジンなどの強化ロジン、ロジンエステルなどが好ましく、特に、強化ロジン或いはロジンエステルを高分子系分散剤で微細粒子として水中に分散させたエマルションサイズ剤及びそれらを混合して得られる混合エマルジョンサイズ剤などが好適である。
【0015】
前記高分子系分散剤としては、アクリルエステル−マレイン酸、スチレン−(メタ)アクリル酸、スチレン−マレイン酸、部分鹸化ポバール、ポリアクリルアミドなどの合成系高分子、及び変性澱粉、カゼインなどの天然高分子が挙げられる。
【0016】
また、前記サイズ剤は抄紙過程でパルプに添加して抄き込む、いわゆる内添サイズ剤として使用するのが好ましく、通常、吸水度が50g/m以下、好ましくは、20〜40g/m、また、サイズ度が30分以上、好ましくは、30分〜60分になるように添加される。また、所望のサイズ性を得るため、パルプに対して20%以下の硫酸バンドなどを併添加してもよい。
【0017】
なお、本明細書において、吸水度とはJIS−P8140に規定されているコッブ法による接触時間3分での吸水度(コッブ吸水度)をいい、サイズ度とは、JIS−P8122に規定されているステキヒト法によるサイズ度(ステキヒト・サイズ度)をいう。
【0018】
前記中芯原紙としては、通常の中芯原紙を使用してもよいが、坪量が160g/m以上でサイズ剤により吸水性を抑制した板紙を使用するのが好適である。この場合、サイズ剤はライナーに使用されるものと同様のものを使用すれば良い。また、香製品の乾燥促進とトレーの機械的強度及び製造コストの観点からは、中芯は一般に段ボールで汎用されているAフルート(段の高さ 約4.5〜5.0mm、段の数 30cmにつき約34)とするのが好ましいが、これのみに限定されるものではない。
【0019】
前記波板状中芯とライナーとを貼合する耐水性接着剤としては、コーンスターチ等の澱粉又は加工澱粉をベースとし、耐水化剤を澱粉に対して30%以下、好ましくは、2〜20%添加してなる接着剤、酢酸ビニール系接着剤、酢酸ビニルーポリビニルアルコール系接着剤が好適である。前記耐水化剤としては、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ケトンアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、変性ポリアミン等など硬化性耐水化剤が挙げられ、市販品では、HR-SA-30(商品名、ホーネン(株))、SPレジン(商品名、榊原商事(株))、S16460(商品名、星光PMC(株))などが挙げられる。
【0020】
さらに、他の実施態様においては、前記各ライナーは、その少なくとも一部に、前記各ライナーと前記中芯との間に形成される波形空間の延在方向と直交方向に沿って無数の微細貫通孔を形成されている。
【0021】
前記乾燥用トレーは、基本的には、段ボールと同様にコルゲートマシンを用いて製造できるが、表裏両ライナーが通常の段ボールに比べて極めて厚いため、ヒーティングセクションとクーリングセクションとで構成されるダブルファイサーにより、グルーマシンで糊を塗布された片面段ボールと表ライナーを密着させながら加熱・冷却し、接着を完結させた両面段ボールを所定寸法に裁断し、得られた段ボール構造シートを積み重ね、その上から荷重をかける方法では、先に貼合した裏ライナーと中芯との接着剤と、後から貼合した表ライナーと中芯との接着剤との乾燥度の違いから反りの発生が避けられない。このことから、本発明においては、所定寸法に裁断した各段ボール構造シートをアイロン機にかけ、両面から110〜140℃の範囲内の温度に加熱維持された加熱板で10〜60秒間押圧・加熱することにより反りの発生を防止している。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る乾燥用トレーは、その基本構造として段ボール構造を採用し、そのライナーを坪量300g/m以上で吸水性を抑制すると共に耐水性を高めた板紙で構成し、前記波板状中芯とライナーとを耐水性接着剤で貼合するようにしたので、生香製品の乾燥時に生香製品から水を吸収するのに必要な吸水性を失うことなく反復使用するのに十分な耐水性を示し、しかも、ライナーが圧縮強度の高い紙管原紙などの厚い板紙で形成されているので安価で平坦度が高く耐久性に優れ、軽量で操作性の良い香製品乾燥用トレーを得ることができる。
【0023】
また、乾燥用トレーを両面段ボール構造シートとした後、各シートをアイロン機にかけ、所定温度で所定時間押圧・加熱するようにしているので、表裏ライナーが通常の両面段ボールのライナーよりも厚いにも拘わらずライナーの巻癖を除去することができると同時に、接着剤が中芯及びライナーに十分に浸透した状態で硬化する投錨効果により、平坦性及び耐水性に優れた乾燥用トレーを得ることができる。
【0024】
しかも、トレーの材料全てが紙でできているので、未乾燥品から水分を吸収し、全面乾燥させることができ、多段に積層した場合でも線香等の未乾燥品からの水分が水滴となって下段に落下することがなく、トレーとして使用不能になった後でも、古紙として再生利用することができ、例え、焼却した場合でもダイオキシンその他の有害物質を生成することがない、など優れた効果が得られる。
【0025】
また、本発明に係る乾燥用トレーは、その使用が線香の乾燥にのみ限定されるものではなく、お香や蚊取り線香等などを乾燥するのに使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明に係る香製品乾燥用トレーは、図1に示すように、波板状中芯1と、その両面にそれぞれ貼合されたライナー2,3とからなる段ボール構造を有し、前記各ライナー2,3が坪量300g/m以上、サイズ度が30分以上、吸水度が50g/m以下である板紙からなり、前記波板状中芯1とライナー2,3とを耐水性接着剤で貼合されている。なお、前記各ライナー2,3には、図示の様に、各ライナー2,3と中芯1との間に形成される波形空間4の延在方向(X方向)と直交方向に沿って無数の微細貫通孔(直径0.2〜1mm)5を形成しても良い。
【0027】
前記香製品乾燥用トレーは、例えば、次のようにして製造することができる。まず、中芯原紙として坪量が160g/mでステキヒト・サイズ度30分、吸水度50g/mの板紙を用意する一方、表裏ライナー原紙として坪量が400g/m、ステキヒト・サイズ度30分、吸水度50g/mの紙管原紙を用意し、接着剤としてサイビノール(商品名、サイデン化学(株))を用い、これらをコルゲートマシンにセットし、中芯を段ロールで段成型し、その片面側に接着剤を塗布した後、裏ライナー2を貼り合わせて片面段ボール構造とし、その中芯側に接着剤を塗布して表ライナー3を貼り合わせ、加圧しながら加熱して接着を完了させて両面段ボール構造シートとし、これを所定幅に切断した後、所定の長さに切断し両面段ボール構造シートを得る。得られた各シートをアイロン機にかけ、130℃の範囲の温度に加熱維持された加熱板で15秒間加圧・加熱して厚さ8mmの乾燥用トレーを得る。
【0028】
なお、前記各ライナーの少なくとも一部に、前記各ライナーと前記中芯との間に形成される波形空間の延在方向と直交方向に沿って無数の微細貫通孔を形成する場合、予め微細貫通孔を穿設した板紙を使用するか、貼合前に板紙に微細貫通孔を穿設するようにすれば良い。
【0029】
また、前記アイロン機は、加熱手段をそれぞれ備えた上下一対の加熱板と、当該加熱板を上下動可能に支持する複数のガイドポストと、前記加熱板の一方又は双方を上下方向に駆動する加熱板駆動手段と、押圧・加熱時に前記加熱板同士の平行を維持する平行維持手段と、前記加熱板駆動手段、平行維持手段及び加熱手段を制御する制御装置とで構成されている。前記加熱板駆動手段及び平行維持手段は、油圧シリンダやエアシリンダなどの流体圧式駆動手段で構成される。通常、下側加熱板を固定し、上側加熱板を流体圧式駆動手段で上下動させてシートを所定の圧力及び110〜130℃の温度で10〜60秒押圧・加熱するようにしてある。
【0030】
前記構造の乾燥用トレーを線香乾燥用として用い、この線香乾燥用トレーの上に、線香原料を水で混練して押出し成形した細棒状生線香(含水量50〜60%)を並べて多段に積み重ね、この積重体を乾燥炉に入れ、35℃の温風を対流させながら乾燥させた後、線香をトレーから回収し、当該トレーを積み重ねて24時間放置乾燥させて再使用するという操作を繰り返したところ、二十数回反復使用した後でも、全く反りがなく長さの揃った線香が得られ、従来の両面段ボールシートからなる乾燥用トレーに比べて3倍以上の耐久性を示した。
【0031】
また、前記乾燥トレーはライナー及び中芯が所定の吸水性を保有するため、その吸水現象及び毛管現象等により生線香の水分が吸収され、中芯表面から当該中芯とライナー間に形成される空間を流れる温風により蒸発させられるため、効率よく乾燥させることができた。しかも、生線香を17〜18時間で乾燥でき、従来の両面段ボールを用いた場合の所要乾燥時間(24時間)に比べて乾燥時間を短縮できた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る乾燥用トレーの斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1: 中芯
2: 裏ライナー
3: 表ライナー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
波板状中芯と、その両面にそれぞれ貼合されたライナーとからなる段ボール構造を有し、前記各ライナーが坪量300g/m以上、サイズ度が30分以上、吸水度が50g/m以下である板紙からなり、前記波板状中芯とライナーとを耐水性接着剤で貼合してなることを特徴とする香製品乾燥用トレー。
【請求項2】
前記板紙が長繊維パルプからなることを特徴とする請求項1に記載の香製品乾燥用トレー。
【請求項3】
前記板紙が坪量400g/m以上で古紙を主体とする板紙であることを特徴とする請求項1に記載の香製品乾燥用トレー。
【請求項4】
前記板紙が紙管原紙からなる請求項1に記載の香製品乾燥用トレー。
【請求項5】
前記各ライナーがその少なくとも一部に、前記各ライナーと前記中芯との間に形成される波形空間の延在方向と直交方向に沿って無数の微細貫通孔を形成されていることを特徴とする請求項1に記載の香製品乾燥用トレー。
【請求項6】
前記耐水性接着剤が澱粉をベースとし、硬化性耐水化剤を澱粉に対して2〜20%添加してなる接着剤である請求項1〜4のいずれか一に記載の香製品乾燥用トレー。

【図1】
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【公開番号】特開2006−57953(P2006−57953A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242020(P2004−242020)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(594168517)株式会社薫寿堂 (6)
【出願人】(500485567)株式会社ザ・ワールドプリンティング (1)
【出願人】(592020954)東洋精版印刷株式会社 (2)
【Fターム(参考)】