説明

駆動伝達機構および画像加熱装置並びに画像形成装置

【課題】駆動ローラーの揺動接離動作における回転抵抗を開放することで円滑な接離動作が可能となり、駆動回転体離間当接を円滑にすることが可能となる駆動伝達機構を提供する。
【解決手段】入口ローラー732の駆動経路において、例えば回転猶予ギア800に駆動力伝達の猶予を設けて、猶予分が揺動回転時の駆動列回転体の回転抵抗を吸収して、円滑な当接離間動作をすることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真方式を採用した複写機やプリンター、あるいはファクシミリ等の記録材上に画像形成可能な画像形成装置に搭載される画像加熱装置に用いられる、特に揺動接離動作をする駆動回転体を使用した駆動伝達機構に関する。画像加熱装置としては、記録材に形成された未定着画像を定着する定着装置や、記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢度を向上させる光沢処理加熱装置等が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置、静電記録装置などの画像形成装置においては、シート上にトナー画像を形成し、これを加熱、加圧して定着させることにより画像を形成している。このような定着装置として、内部にヒータを有する定着ローラーに加圧ローラーを圧接して定着ニップを形成し、定着を行うローラー定着方式が従来採用されている。
【0003】
そして特許文献1では、回転駆動する加圧ローラーを揺動回転により加熱ローラーと当接・離間する機構を有し、加圧ローラーの駆動経路のギアを加圧ローラーが当接離間する揺動中心と加圧アーム上に配置し、前記ギアを遊星ギアとする定着装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−83466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、ローラー対が当接している状態からの離間動作において、加圧ローラーの揺動動作により、揺動中心のギアの入出力側に隣接するギアに、揺動中心ギアを中心に公転する回転力が働く。しかし、駆動入力側では駆動源までの減速比と駆動モーター慣性モーメントによる負荷トルクにより、また出力側の加圧ローラー駆動側ではニップによる負荷トルクにより、公転され難い。また、ローラー対が離間している状態からの当接動作においては、ローラー対が接触し始めてから同様のことが起きる。
【0006】
上記の原因によりギアが公転され難いことで、加圧アームの揺動動作に負荷が生じ、当接離間を完了できないことが起きる。その対応策として加圧アームの揺動動作を行う駆動源の駆動力を上げる方法があるが、当接しているローラー対がスリップする。さらに、加圧ローラーが回転したとしてもローラー表面が摺擦してしまう為に、ローラー表面を傷つける可能性がある。
【0007】
また、遊星ギアを用いる構成においては、ギア位置が揺動可能であり、ニップによる回転体の負荷トルクに耐える揺動部支持構造が必要であり、遊星ギアの特徴として必要なギア同士の食い込み抑止部材の強化や遊星ギア周りの部材を強化する必要性がある。
【0008】
本発明の目的は、駆動回転体の揺動接離動作における駆動列回転体の回転抵抗を開放させて、駆動回転体の離間当接を円滑にする駆動伝達機構および画像加熱装置並びに画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係わる駆動伝達機構の代表的な構成は、回転駆動される第1の回転体と、支持部材に支持されていて、前記支持部材の揺動中心を中心とする揺動動作により前記第1の回転体に対して当接離間動作する第2の回転体と、前記支持部材に配設されていて前記第2の回転体を回転駆動するための駆動伝達部であって、前記支持部材の揺動中心に配設された駆動入力側回転体と、前記駆動入力側回転体と直接又は中間回転体を介して連結された、前記第2の回転体の側の駆動出力側回転体と、を有する駆動伝達部と、を有し、前記第2の回転体が前記第1の回転体から離間する方向に前記支持部材が揺動されたときに前記駆動出力側回転体に生じる回転抵抗を開放する回転猶予部を前記駆動入力側回転体を駆動する駆動源と前記駆動出力側回転体との間の駆動伝達経路に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動回転体の揺動接離動作における駆動列回転体の回転抵抗を開放させて、駆動回転体の離間当接を円滑にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)本発明の実施形態に係る駆動伝達機構を有する画像加熱装置の断面模式図、(b)は画像加熱時に定着ベルトユニットが定着ローラに当接した状態の入り口ローラに関連した説明図、(c)は非画像加熱時に加圧ベルトユニットが定着ローラから離間当初から離間完了の入り口ローラの離間に関連した説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像加熱装置を搭載した画像形成装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像加熱装置を搭載した画像形成装置の画像形成ステーション部分の拡大図である。
【図4】本発明の実施形態に係る駆動伝達機構を有する画像加熱装置の定着ベルトユニットの外観斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る駆動伝達機構を有する画像加熱装置の加圧機構および入口ローラー駆動部の斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る画像加熱装置の画像加熱時である第一の状態時の加圧機構の当接状態を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る画像加熱装置の非画像加熱時である第二の状態時の加圧機構の離間完了状態を示す図である。
【図8】当接状態である第一の状態時の入口ローラー駆動部の図である。
【図9】離間完了状態である第二の状態時の入口ローラー駆動部の図である。
【図10】本発明の実施形態に係る駆動伝達機構の駆動に関するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《第1の実施形態》
以下に、実施形態を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、実施形態は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は実施形態にて説明する各種構成にのみに限定されるものではない。即ち、本発明の思想の範囲内において実施形態にて説明する各種構成を他の公知の構成に代替可能である。
【0013】
(画像形成装置)
図2は本発明の実施形態に係わる画像加熱装置を定着装置として具備させた画像形成装置の一例の概略構成図である。図3はこの画像形成装置の画像形成ステーション部分の拡大図である。
本例の画像形成装置は、電子写真プロセスを用いた、複数の光走査手段を有する、4ドラムタンデムタイプのカラープリンターである。このプリンターは、本体100の上面側に配設したリーダ部200においてカラー原稿の画像情報をCCD等の光電変換素子により色分解読取り処理する。300はリーダ部200の原稿台カラス201に対する自動原稿給送装置または原稿圧着板である。リーダ部200における各色分解読取り画像情報に対応して変調されたレーザ光La,Lb,Lc,Ldを複数の光走査手段を有するレーザ走査部400から出力させる。
【0014】
Pa,Pb,Pc,Pdはマゼンタ,シアン,イエロー,ブラックの各色の画像を形成する4つの画像形成ステーションである。図3に拡大図を示すが、各画像形成ステーションPa,Pb,Pc,Pdには、それぞれ感光ドラム101a,101b,101c,101dが配置されている。各感光ドラムは矢印方向に回転駆動される。各感光ドラムの周囲には、帯電器102a,102b,102c,102d、現像装置103a,103b,103c,103d、そして、クリーナ104a,104b,104c,104dが上記感光ドラムの回転方向に沿って順次配設されている。
【0015】
各感光ドラムの下方には、転写装置105が配設されている。該転写装置105は、各画像形成ステーションに共通の記録材搬送手段たる転写ベルト106及び転写用帯電器107a,107b,107c,107dを有している。転写ベルト106はエンドレスベルトであり、駆動ローラー108とターンローラー109・110の3本のローラー間に懸回張設されている。
【0016】
各画像形成ステーションの感光ドラム101a,101b,101c,101dに、上記レーザ走査部400から出力されるレーザ光La,Lb,Lc,Ldで走査露光する工程を含む電子写真プロセスを適用する。そして、上記マゼンタ,シアン,イエロー,ブラックの各色のトナー画像を形成させる。
【0017】
図2において、111,112はプリンター本体100内に配設の第1または第2の給紙カセットである。上記の給紙カセット111または112から記録材供給手段により1枚分離給紙された記録材(転写紙、第2原図用紙、OHPシート等の用紙)Pは、転写ベルト106上に支持されて各画像形成ステーションPa,Pb,Pc,Pdへ順次に搬送される。そして、その搬送される記録材上に上記の各感光ドラム上に形成された各色のトナー画像を順次に重畳転写される。
【0018】
この転写工程が終了すると、記録材Pは転写ベルト106から分離されて定着装置1へと搬送される。本実施形態の定着装置1はベルト方式の画像加熱装置である。これについては後述する。
【0019】
記録材Pに転写されたトナー像は定着装置1において熱と圧力により記録材P上に定着され、フルカラー画像形成物として排紙処理装置500に搬送される。排紙処理装置500では記録材Pを搬送ローラー501で排紙トレイ502上に排出する。排紙トレイは下方に移動することで多数枚の排紙積載が可能となっている。また、排紙処理装置500では多数枚の記録材Pをスティップルしたりする処理も可能である。
【0020】
モノ黒画像形成モードのときは、ブラック画像を形成する画像形成ステーションPdが選択的に画像形成動作する。両面コピーモードのときは、ベルト定着装置1を出た片面側コピー済みの記録材Pは反転再搬送機構113側に進路変更され、この反転再搬送機構113で反転されて転写ベルト106に再給紙される。これにより、記録材Pの他方の面側にトナー画像が転写形成され、定着装置1に再び導入されて、両面コピーが排紙処理装置500に搬送される。
【0021】
(定着装置)
図1(a)で、定着装置1はベルト方式の画像加熱装置を示す。定着ローラー71と分離ローラー733および加圧パッド部740でニップ部Nが形成される。このニップ部を定着部として、第1の回転体としての定着ローラー71と第2の回転体としての定着ベルト731により画像形成部で形成された未定着画像を担持した記録材を狭持搬送して画像を加熱定着する。
【0022】
ここで定着装置またはこれを構成している部材について長手または長手方向とは記録材搬送方向において記録材搬送方向に直交する方向に並行な方向である。定着装置1は、定着ローラー部70と定着ベルト部73から構成されている。加熱回転体としての定着ローラー71は、アルミ等からなる芯金711の表層に、シリコンゴムからなる弾性層712が設けられ、その表層には定着ローラーとトナーの離型性を高めるためのPFAチューブからなる離型層713が設けられている。
【0023】
定着ローラー71は不図示の駆動機構により矢印方向Sに所定の速度で回転駆動される。定着ローラー内部にはヒーター721が中心部近傍に配置されている。このヒーター721に電力供給がなされると、該ヒータが発熱して、定着ローラー71が内部から加熱される。定着ローラー71の表面温度がサーミスタ722で測定される。このサーミスタ722で検知される温度に関する信号が制御回路部(不図示)に入力する。制御回路部は、サーミスタ722から入力する検知温度情報が所定の定着温度に維持されるようにヒーター721に対する電力供給を制御する。
【0024】
定着ベルト部73は、エンドレスの回動ベルトである定着ベルト731を有し、この定着ベルト731が、複数のベルト懸回部材である、入り口ローラー732、分離ローラー733、ステアリングローラー734により張架されている。また、内部に加圧部材としての加圧パッド部740を有する。そして、定着ベルト部73は定着ローラー71と定着ニップ(加熱ニップ)部Nを形成している。ニップの幅(定着ニップ部の記録材搬送方向の長さ)を広くとれるため、記録材上のトナーをより溶融でき、カラー画像形成装置における多量のトナーを使用する画像形成装置には適した構成である。
【0025】
入り口ローラー(第一のベルト懸回部材)732の内部にはベルトヒータ781が中心部近傍に配置されている。このヒーター781に電力供給がなされると、該ヒータが発熱して入り口ローラー732が内部から加熱される。この入り口ローラー732の熱により回動定着ベルト731が加熱される。定着ベルト731の表面温度が入り口ローラー732の近傍に配置されているサーミスタ736で測定される。このサーミスタ736で検知される温度に関する信号が制御回路部に入力する。制御回路部は、サーミスタ736から入力する検知温度情報が所定の定着ベルト温度に維持されるようにヒーター781に対する電力供給を制御する。
【0026】
金属からなる分離ローラー(第二のベルト懸回部材)733は圧接手段により定着ベルト731を介して定着ローラー71に圧接される。定着ローラー71の弾性層712が分離ローラー733の圧接で変形する。特に分離ローラー733と接触している端部では弾性層712の円弧形状が反対方向になる。記録材上のトナーは定着ニップNで溶融、圧接されるため、トナーと定着ローラー表層はその表面張力により張り付いた状態となる。しかし、定着ローラー71の弾性層712で分離ローラー733によりその円弧形状が反対方向になっているため、定着ローラー71に張り付いたトナーは剥離され、記録材は定着ローラー71から分離して排出される。
【0027】
図4は、定着ベルトユニット73の外観斜視図である。定着ベルトユニット73は前側板110と後側板120が加圧パッド部740に固定されている。この前側板110と後側板120に対し入り口ローラー732が回動自在に支持されている。分離ローラー733の長手両端部733a、733bにベアリング733c、733dが取り付けられていている。
【0028】
ステアリングローラー734の長手一方の端部734aにベアリング734cが設けられ、前圧接アーム153の長穴153aに取り付けられている。ステアリングローラー734はこの前圧接アーム153の長穴153aに対して矢印Bの方向に移動する。また、前圧接アーム153は加圧バネ154aにより矢印C方向にステアリングローラー732を圧接していて、これにより定着ベルト731にテンションを加えている。
【0029】
同様に、後側板120側でもステアリングローラー734の長手他方の端部734bにベアリング734dが設けられ、後圧接アーム155の長穴155aに取り付けられている。ステアリングローラー734はこの後圧接アーム155の長穴155aに対して矢印Bの方向に移動する。また、後圧接アーム155は加圧バネ(不図示)により矢印C方向にステアリングローラー734を圧接していて、これにより定着ベルト731にテンションを加えている。
【0030】
そして、後述するように、定着ベルトユニット73が定着ローラー71から離間すると、加圧バネ154aにより矢印C方向にステアリングローラー734を圧接しているため、ステアリングローラー734がC方向に移動する。このステアリングローラー734の移動により、定着ベルト731にテンションを加えている。そのため、定着ベルトユニット73が定着ローラー71から離間しても、定着ベルト731はたるむことなく、入り口ローラー732、分離ローラー733、ステアリングローラー734により張架されている。
【0031】
上記のようにステアリングローラー734の端部は矢印B方向に移動可能となっていて、不図示の揺動機構により移動制御されて、定着ベルト731の回動時における幅方向の寄りが修正される。この揺動機構は本発明の要点外であるのでその説明は省略する。
【0032】
また図1(a)に戻って、加圧パッド部740は、SUS等の金属からなるベース741、シリコンゴム等からなる加圧パッド742、加圧パッド742と定着ベルト731の間に配置されたPIフィルム等からなる摺動シート743、等から構成されている。
【0033】
入り口ローラー732と加圧パッド部740の間には、定着ベルト731の内面に潤滑剤(オイル)を塗布する潤滑剤塗布部材としてのオイル塗布ローラー735が設けられている。このオイル塗布ローラー735は定着ベルトユニット73のフレームである前側板110と後側板120(図4)との間に回転自由に位置固定されて配設してある。潤滑剤塗布部材735は回転自在のローラー形状に限られず、非回転の部材にすることもできる。オイル塗布ローラー735は、主要構成要素として、軸芯の周りにオイル保持層と、その外周にさらにオイル塗布量制御層とを有し、その端面が当該オイル塗布量制御層を構成する多孔質膜の両端延長部の折り畳み部により覆われて成る。
【0034】
(加圧機構)
次に、図5により、定着ローラー71に対する定着ベルト部73の加圧機構について説明する。定着ベルト部73の両端には加圧機構75が設けられている。両側はほぼ同構成であり、図5では片側のみ図示して説明する。定着入り口ローラー732の端部には軸受け732aが設けられ、ローラー加圧ホルダー751に軸受け732aが配置されている。また、分離ローラー733の端部にも軸受け733aが設けられローラー加圧ホルダー751に軸受け733aが配置されている。
【0035】
加圧パッド部740のベース741の端部はパッド加圧ホルダー752に配置されている。ローラー加圧ホルダー751、パッド加圧ホルダー752の下方には加圧ホルダー753が配置されている。ローラー加圧ホルダー751、パッド加圧ホルダー752、加圧ホルダー753は回動軸754を中心に回動自在に構成され、定着ベルト731を支持する支持部材として機能する。また、この支持部材に支持される回転軸754、回転猶予ギア800、アイドラーギア803、入り口ローラギア802、入り口ローラー732が定着ベルト731を回転駆動するための駆動伝達部として連結されている。
【0036】
また、加圧ホルダー753とローラー加圧ホルダー751の間にはローラー加圧バネ757が配置され、加圧ホルダー753に固定されたガイド軸755はローラー加圧バネ内部を通り、ローラー加圧ホルダー751に設けられて穴を通り配置されている。
【0037】
また、加圧ホルダー753とパッド加圧ホルダー752の間にはパッド加圧バネ758が配置され、加圧ホルダー751に固定されたガイド軸756はパッド加圧バネ758の内部を通り、パッド加圧ホルダー752に設けられる穴を通り配置されている。加圧パッドホルダー753の側面には受部759が設けられ、その下には回動軸760に加圧カム761が設けられている。
【0038】
図6は定着ローラー71に定着ベルト部73が圧接されている状態(第一の状態)を示し、図7は定着ローラー71から定着ベルト部73が離間している状態(圧接していない状態:第二の状態)を示している。図6において、加圧カム761が回動軸760を中心に図示しない駆動系により回転し、加圧カム761の長径761aが頂上に位置する状態にすると受部759が上方に押し上げられ、回動軸754を中心に加圧ホルダー753が矢印V方向に回転する。
【0039】
これによりローラー加圧バネ757によりローラー加圧ホルダー751が回動軸754を中心に回動して分離ローラー731が定着ローラー71に加圧力SFで圧接される。また、同様にパッド加圧バネ758によりパッド加圧ホルダー752が回動軸754を中心に回動して定着パッド部740が定着ローラー71に加圧力PFで圧接される。この状態で図10の当接センサー901から制御部900に信号が入力され、カム駆動モーター903を停止させて、圧接状態が完了する。
【0040】
この状態で制御部900は定着駆動モーター904に回転開始信号を送り、矢印S方向に定着ローラー71を回転させて、定着ベルト731を従動回転させつつ入口ローラー732の駆動アシストにより、定着ベルト731が矢印J方向に回転する。記録材が矢印H方向から搬送されて定着ローラー71と定着ベルト731のニップ部Nに挟持搬送されると、定着ローラー71、定着ベルト731との熱で記録紙上のトナーが溶融され、定着加圧パッド部740の圧によりトナーが記録紙に押し付けられ定着する。
【0041】
図7において、加圧カム761が回動軸760を中心に図示しない駆動系により回転し、加圧カム761の短径761bが頂上に位置する状態にする。これにより、受部759が前記状態から下方に下げられ、回動軸754を中心に加圧ホルダー753が矢印W方向に回転する。このためローラー加圧バネ757の付勢力はガイド軸755のストッパ部により付加されなくなり、ローラー加圧ホルダー751が回動軸754を中心に回動して分離ローラー731が定着ローラー71から離間する。
【0042】
また、同様にパッド加圧バネ758の付勢力はガイド軸756のストッパ部により付加されなくなりパッド加圧ホルダー752が回動軸754を中心に回動して定着パッド部740が定着ローラー71から離間する。この状態で図10の離間センサー902から制御部900に信号が入力され、カム駆動モーター903を停止させて、離間状態が完了する。
【0043】
(回転猶予部)
図1(b)、図8は定着ローラー71に定着ベルト部73が圧接されている状態(第一の状態)の入口ローラー732の駆動部を示す。また、図1(c)は定着ローラー71から定着ベルト部73が離間する当初状態から完了状態への説明図であり、、図9は離間が完了している状態(圧接していない状態:第二の状態)の入口ローラー732の駆動部を示している。
【0044】
先ず当接する第一の状態について、図5および図8により、定着ベルト731の回転に際して駆動力アシストしている入口ローラー732の回転駆動における駆動部の状態について説明する。図5において、駆動源(不図示)が回転することにより発生した駆動力は、駆動経路(不図示)を通って、入力ギア801から入力され、入力ギア801とDカットで一体となった回動軸754に伝達される。図8において、前記駆動力は回動軸754にX方向に駆動力が働き、回動軸754に圧入された平行ピン804に伝達し、平行ピン804が回転して、回転猶予ギア800の扇穴800aの面に突き当たり、回転猶予ギア800をX方向に回転させる。
【0045】
回転猶予ギア800の駆動力はアイドラギア803を介して入口ローラーギア802に伝達されて入口ローラー732を回転させて定着ベルト731に駆動力が伝達される。画像形成状態は図8の状態となっている
次に、図7および図8および図9により、駆動経路に設けた、駆動伝達の回転猶予手段について、定着ローラー71に定着ベルト部73が、圧接されている状態(第一の状態)から離間している状態(第二の状態)に至る過程において説明する。図8が定着ローラー71に定着ベルト部73が圧接されている状態(第一の状態)の入口ローラー駆動部の状態を表している。この状態から離間動作に入ると、図7に示す、W方向に定着ベルト部73が回動する。この時に、加圧ホルダー753がW方向に回転することで、加圧ホルダー753に具備されたアイドラギア803が回転軸754にある回転猶予ギア800の回りを公転しつつ自転しようとする回転力が生まれる。
【0046】
離間動作の当初においては、定着ローラー71に定着ベルト部73が圧接されてニップ部Nを形成している状態であり、入口ローラーギア802の回転には負荷(回転抵抗)が働いている。この為に、図1(c)に示すように、アイドラギア803の自転する回転力では回転トルクが足りず、アイドラギア803が自転できない為に、回転力が公転力として回転猶予ギア800に伝わる。すると、図1(c)に示す揺動動作の際に、回転猶予ギア800が回転軸754を揺動中心として揺動回転方向であるY方向に揺動角としてθだけ回され、且つ回転猶予ギア800が自転方向として逆方向に角度αだけ回される。そして回転猶予ギア800が逆方向に回転猶予量として角度αだけ回されることで、回転猶予部である扇穴800aが上述の負荷(回転抵抗)を開放する。このことにより、図8の平行ピン804と扇穴800aの状態から、図9の平行ピン804と扇穴800aの状態に変化する。
【0047】
ここで、回転猶予ギア800に扇穴800aが具備されていなければ、回転猶予ギア800の自転力が駆動列を通り、本体フレーム(不図示)に固定された駆動源(不図示)まで伝わるが、離間動作が円滑ではなくなる。回転力を駆動列の減速比や駆動源の慣性モーメントにより駆動源が回転できない為である。
【0048】
次に、図6および図8および図9により、駆動経路に設けた、駆動伝達の回転猶予手段について、定着ローラー71に定着ベルト部73が、離間されている状態(第二の状態)から圧接されている状態(第一の状態)に至る過程において説明する。図9が定着ローラー71と定着ベルト部73が離間されている状態(第二の状態)の入口ローラー駆動部の状態を表している。この状態から当接動作に入ると、図6に示す、V方向に定着ベルト部73が回動する。この時に、加圧ホルダー753がV方向に回転することで、加圧ホルダー753に具備されたアイドラギア803が回転軸754にある回転猶予ギア800の回りを公転しつつ自転しようとする回転力が生まれる。
【0049】
当接動作の当初においては、定着ローラー71に定着ベルト部73が離間している状態であり、入口ローラーギア802の回転には負荷が働いておらず、アイドラギア803の自転する回転力で入口ローラーギア802が自転できる。しかし、定着ローラー71に定着ベルト部73が接触した段階から入口ローラーギア802には負荷が入り、アイドラギア803の自転する回転力では回転トルクが足りず、アイドラギア803が自転でき無くなる。
【0050】
この段階から、回転力が公転力として回転猶予ギア800に伝わり、回転猶予ギア800がZ方向に回されることにより、図9の平行ピン804と扇穴800aの状態から、図8の平行ピン804と扇穴800aの状態となる。
【0051】
本例では回転猶予ギア800は回転軸754と同軸上に設けているが、その限りではない。回転軸754と同軸上であれば、公転力を与えるギアが自転する為に、回転猶予を設けるギアは一ヶ所となる。回転軸754と同軸上でなければ、公転力を与える回転軸754と同軸のギアの駆動源側と入口ローラ側の両方に回転猶予を有するギアを二箇所具備することで同効果が得られる。
【0052】
以上説明したように、当接離間動作におけるアイドラギア803の公転による自転力を、回転猶予ギア800に設けた、扇穴800aと平行ピン804との間に設けられた回転力猶予部により吸収することで、円滑な当接離間動作が達成できる。
【0053】
(変形例)
上記実施形態では、駆動入力側回転体としての回転用猶予ギア800と、駆動出力側回転体としての入り口ローラーギア802とを、中間回転体としてのアイドラーギア803を介して連結するものとして説明した。しかし、本発明はこれに限らず、中間回転体を介さずに直接連結するものであっても良い。また、加圧ベルト方式について詳述したが、加圧ローラー方式(前述の特許文献1)にも同様に適用できる。
【0054】
また、回転体としてギアについて説明したが、本発明はこれに限らずタイミングベルトなどであっても良い。
【0055】
更に、回転猶予部は回転猶予ギア800に設けられる他、駆動入力側回転体である回転猶予ギア800を駆動する駆動源と駆動出力側回転体である入り口ローラギア802との間の駆動伝達機構の駆動伝達経路のいずれかに設けられても良い。例えば、アイドラーギア803が公転できるように加圧ホルダー753に回転軸754を中心とする円弧状の長穴部を設ける、あるいは加圧ホルダー753を回転軸754を中心として回転可能としても良い。
【符号の説明】
【0056】
1・・定着装置、71・・定着ローラー、73・・定着ベルト部、731・・定着ベルト、732・・入り口ローラー、733・・分離ローラー、734・・ステアリングローラー、735・・オイル塗布ローラー、740・・加圧パッド部、754・・回転軸、760・・回動軸、761・・加圧カム、800・・回転猶予ギア、800a・・扇穴、801・・入力ギア、802・・入口ローラーギア、803・・アイドラギア、804・・平行ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される第1の回転体と、
支持部材に支持されていて、前記支持部材の揺動中心を中心とする揺動動作により前記第1の回転体に対して当接離間動作する第2の回転体と、
前記支持部材に配設されていて前記第2の回転体を回転駆動するための駆動伝達部であって、前記支持部材の揺動中心に配設された駆動入力側回転体と、
前記駆動入力側回転体と直接又は中間回転体を介して連結された、前記第2の回転体の側の駆動出力側回転体と、を有する駆動伝達部と、を有し、
前記第2の回転体が前記第1の回転体から離間する方向に前記支持部材が揺動されたときに前記駆動出力側回転体に生じる回転抵抗を開放する回転猶予部を前記駆動入力側回転体を駆動する駆動源と前記駆動出力側回転体との間の駆動伝達経路に設けたことを特徴とする駆動伝達機構。
【請求項2】
前記駆動出力側回転体に生じる回転抵抗により回転される前記回転猶予部の自転方向と、前記第2の回転体の前記第1の回転体からの離間動作における前記回転猶予部の揺動回転方向とが互いに異なる方向であることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達機構。
【請求項3】
前記回転猶予部の回転猶予量は前記第2の回転体の前記第1の回転体に対する当接離間動作の揺動角よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動伝達機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達機構を有する画像加熱装置であって、前記第1の回転体と前記第2の回転体とにより画像を担持した記録材を挟持搬送して画像を加熱することを特徴とする画像加熱装置。
【請求項5】
記録材に未定着画像を形成する画像形成部と、前記未定着画像を記録材に加熱定着する定着部とを有する画像形成装置であって、前記定着部が請求項4に記載の画像加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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