説明

駆動装置とそれを備えた給紙装置及び画像形成装置

【課題】駆動出力部の回転速度を簡単な構成にて切り替えられ、また、長期間使用しても回転トルク、回転速度の変動を抑えられる駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置101は、モーター121の回転方向に応じて第1の方向と第2の方向とに回転可能に配置された駆動ギア122と、駆動ギア122に噛み合い、駆動ギア122に伝達された回転駆動力によって、モーター121の回転方向に応じて第1の位置と第2の位置との間で揺動可能に構成された揺動ギア123と、を備える。揺動ギア123が、第1の位置に移動し、第1ギア部124に噛み合う一方、第2の位置に移動し、第1ギア部124に対して減速比が異なる第2ギア部126に噛み合う。揺動ギア123を回転可能、且つ揺動可能に保持する摺動孔111を有するブラケット110は、揺動ギア123に比べて剛性が大きく、且つフレーム102に比べて摩擦係数が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリー、それらの複合機等に用いる駆動装置とそれを備えた給紙装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、カラー用画像形成装置は、黒色による単色の画像形成と、多色の画像形成とに切り換えることができるように構成されている。単色の画像形成と多色の画像形成とは現像プロセスの速度が異なり、単色の画像形成と多色の画像形成とを切り換えるための構成が備えられていた。このような切り換え機構を備えることで、画像形成装置の構成が不必要に複雑化し、画像形成装置の装置コストが増大していた。
【0003】
そこで、特許文献1は、単色及び多色の画像形成に共用される黒色の現像剤が収容された画像形成ユニットを駆動する駆動装置を備える。この駆動装置は、回転駆動力を発生するモーターと、モーターの回転方向に応じて第1の方向と第2の方向とに回転可能に配置された駆動ギアと、駆動ギアに噛み合い、駆動ギアに伝達された回転駆動力によって、モーターの回転方向に応じて第1の位置と第2の位置との間で揺動可能に構成された揺動ギアと、を備える。黒色によるモノクロ画像を形成する場合、モーターが第1の方向に回転駆動される。すると、駆動ギアの第1の方向への回転により、揺動ギアが、第1の位置に移動し、第1ギア列に噛み合う。第1ギア列の末端に位置するブラックギアが第1の回転速度で黒色の画像形成ユニットを回転駆動させる。一方、カラー画像を形成する場合、モーターが第2の方向に回転駆動される。すると、駆動ギアの第2の方向への回転により、揺動ギアが、第2の位置に移動し、第1ギア列に対して減速比が異なる第2ギア列に噛み合う。第2ギア列の末端に位置するブラックギアが第2の回転速度で黒色の画像形成ユニットを回転駆動させる。このように単一のモーターの回転方向を変えるだけで、モノクロの画像形成動作とカラーの画像形成動作とを切り換えることができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−72021号公報(段落[0123]〜[0127]、第4図、第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の駆動装置は、ギア列を構成する複数のギアが板状の互いに対向する二つのフレームに回転可能に保持されるとともに、揺動ギアが二つのフレームに形成された長円状の摺動孔に揺動可能で且つ回転可能に保持され、さらに、モーターが一方のフレームに固定されている。通常、フレームは、モーターやギア列を保持するための基台となるために、鉄製等の板金や、ガラス、カーボン等のフィラーを含有した樹脂等の剛性の高い材料によって形成される。駆動装置が長期間に亘って使用されると、揺動ギアの回転軸が剛性の高い材料からなる摺動孔内で回転及び揺動を繰り返すことになり、揺動ギアの回転軸の摺動性能が低下し、駆動装置の回転トルク、回転速度が変動するという問題があった。上記の駆動装置は、カラー用画像形成装置における単色の画像形成と多色の画像形成との切り換えの他に、画像形成するために種々の用紙を搬送する給紙装置に用いられ、この場合にも上記と同様に、回転トルク、回転速度が変動するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、駆動出力部の回転速度を簡単な構成にて切り替えられ、また、長期間使用しても回転トルク、回転速度の変動を抑えられる駆動装置と、それを備えた給紙装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために第1の発明は、駆動出力部の回転速度を切り替える駆動装置であって、回転駆動力を発生するモーターと、該モーターの正逆回転に応じて第1の方向と第2の方向とに回転可能に配置された駆動ギアと、該駆動ギアと噛み合うように配置されていて、前記駆動ギアから伝達される回転駆動力によって第1の位置と第2の位置との間で揺動可能に構成された揺動ギアと、前記駆動ギアが第1の方向に回転することにより前記揺動ギアが第1の位置に揺動した場合に前記揺動ギアに噛み合う第1ギア部と、該第1ギア部に噛み合い前記駆動ギアの回転駆動力を前記駆動出力部に伝達するギア列と、前記駆動ギアが第2の方向に回転することにより前記揺動ギアが第2の位置に揺動した場合に前記揺動ギアに噛み合うとともに前記第1ギア部に対して減速比が異なる第2ギア部と、該第2ギア部と前記ギア列とを噛み合わせるアイドルギアと、前記第1ギア部、前記第2ギア部、前記ギア列、及び前記アイドルギアを回転可能に保持するフレームと、前記揺動ギアの回転軸を摺動可能で且つ回転可能に保持することにより前記揺動ギアを前記第1の位置と前記第2の位置とに案内する摺動孔を有し、前記フレームに取り付けられるブラケットと、を備え、前記ブラケットは、前記揺動ギアの回転軸に比べて剛性が大きく、且つ前記フレームに比べて摩擦係数が小さいことを特徴としている。
【0008】
また、第2の発明では、上記の駆動装置において、前記摺動孔は、前記駆動ギアのピッチ円と略同心円を描く円弧状に形成されることを特徴としている。
【0009】
また、第3の発明では、上記の構成の駆動装置を備えた給紙装置である。
【0010】
また、第4の発明では、上記の構成の駆動装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、モーターの回転駆動により駆動ギアが第1の方向に回転すると、揺動ギアが摺動孔内で回転しながら第1の位置に移動し、第1ギア部に噛み合う。第1ギア部はギア列に噛み合っていることで、モーターの回転駆動力はギア列を介して駆動出力部に伝達される。一方、モーターの逆方向の回転駆動により駆動ギアが第2の方向に回転すると、揺動ギアが回転しながら第2の位置に移動し、第2ギア部に噛み合う。第2ギア部はアイドルギアを介してギア列に噛み合っていることで、ギア列の各ギアは、揺動ギアが第1の位置に移動した場合と同じ方向に回転し、また、第2ギア部は第1ギア部に対して減速比が異なるために、ギア列は、揺動ギアが第1の位置に移動した場合に対して異なる回転速度で回転する。従って、揺動ギアが第2の位置に移動した場合、駆動出力部は、ギア列を介してモーターの回転駆動力を受け取るが、揺動ギアが第1の位置に移動した場合に対して、異なる回転速度で且つ同じ回転方向の駆動力を出力する。そして、ブラケットは、揺動ギアの回転軸に比べて剛性が大きく、且つ、フレームに比べて摩擦係数が小さい材料からなり、揺動ギアの回転軸は、このブラケットの摺動孔に回転及び揺動可能に保持される。これによって、揺動ギアの回転軸が摺動孔内で回転及び揺動を繰り返しても、揺動ギアの回転軸の摺動性能が低下することがなく、駆動出力部の回転トルク、回転速度の変動が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である画像形成装置を概略的に示す図
【図2】実施形態に係る駆動装置を示す斜視図
【図3】実施形態に係る駆動装置の内部構成を示す斜視図
【図4】実施形態に係る駆動装置の要部のギアを示す斜視図
【図5】実施形態に係る駆動装置の揺動ギアを保持するブラケットを示す斜視図
【図6】実施形態に係る駆動装置の揺動ギアとブラケットを断面して示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。画像形成装置1は、直方体状の装置本体1aを備え、装置本体1a内の上部には、画像形成部10が配設される。画像形成部10は、感光体11と、帯電装置13と、露光ユニット12、現像装置2と、クリーニング装置14と、除電装置14aとを備える。
【0015】
感光体11は、回転自在に保持され、感光層を形成する感光材料として、アモルファスシリコン感光体や有機感光体(OPC感光体)が用いられる。現像装置2は、感光体11の右方に対向して配置され、感光体11にトナーを供給する。帯電装置13は、感光体回転方向に対し現像装置2の上流側であって感光体11の表面に対向して配置され、感光体11の表面を一様に帯電させる。
【0016】
露光ユニット12は、読み取った画像データに基づいて、帯電装置13に対して感光体回転方向の下流側から感光体11の表面にレーザー光を照射する。照射されたレーザー光により、感光体11の表面には静電潜像が形成され、この静電潜像が現像装置2によりトナー像に現像される。
【0017】
搬送ベルト17が転写ローラー25及び従動ローラー27に張架され、転写ローラー25が転写搬送ベルト17を介して感光体11に対向して配設される。感光体11の表面に形成されたトナー像は、転写バイアスを印加した転写ローラー25により、搬送ベルト17を介して搬送される用紙Pに転写される。
【0018】
クリーニング装置14が用紙に転写されずに感光体11の表面に残ったトナーを除去し、また、除電装置14aが感光体11の表面に残った電荷を除電する。
【0019】
給紙部46は、給紙カセット47、48と、大容量デッキ49、50と、手差しトレイ51等から構成される。給紙カセット47、48が装置本体1aの底部に上下方向に並べて配設され、用紙Pが各給紙カセット47、48の各載置板47a、48a上に載置される。給紙カセット48の上方には、大容量デッキ49、50が左右に並べて配設され、用紙Pが大容量デッキ49、50の各載置板49a、50a上に載置される。給紙部46は、載置板47a〜50a上の用紙Pを1枚ずつ用紙搬送路に送り出すために、給紙カセット47、48、大容量カセット49、50の各右上部にピックアップローラー47b〜50bが配設される。さらに、装置本体1aの右側面には、別途給紙できるように手差しトレイ51が設けられ、手差しトレイ51にも用紙Pを1枚ずつ用紙搬送路に送り出すためのピックアップローラー51bが設けられる。そして、転写ローラー25の右方には、用紙Pの画像形成部10への搬送タイミングを制御するためのレジストローラー53が配置される。
【0020】
用紙搬送部70は、装置本体1a内で用紙Pを搬送するためのものであり、給紙搬送路71と、画像形成搬送路72と、排出搬送路73と、分岐搬送路74と、反転搬送路75と、再搬送路76とを備える。
【0021】
給紙搬送路71は、給紙部46からレジストローラー53に至る搬送路であり、装置本体1aの右方で下段の給紙カセット47から上方に延びて形成される。この給紙搬送路71は、給紙カセット47の上方に向けて順に、上段の給紙カセット48の搬送路が合流し、さらに大容量デッキ50の搬送路が合流し、また大容量デッキ49の搬送路が合流している。
【0022】
画像形成搬送路72は、レジストローラー53から定着部18に至る搬送路であり、装置本体1aの略水平方向に形成される。画像形成搬送路72には、画像形成部10と定着部18が配置され、画像形成部10にて用紙Pにトナー像が転写され、用紙Pに転写されたトナー像が定着部18にて用紙Pに定着される。
【0023】
排出搬送路73は、定着部18から排出ローラー54に至る搬送路であり、定着部18から左方に略水平方向に延びて形成される。排出搬送路73では、トナー像が定着された用紙Pが排出ローラー54を介して排出トレイ81上に排出される。
【0024】
分岐搬送路74は、用紙Pの表面にトナー像が定着された後、必要に応じて用紙の裏面にもトナー像を形成するときに用いられるものであり、排出搬送路73の途中から分岐してU字状に定着部18の下方に延び、反転搬送路75に至る搬送路である。
【0025】
反転搬送路75は、用紙Pの表裏を反転させて、再搬送路76に向けて用紙を搬送するものである。再搬送路76は画像形成搬送路72の下方で左方から右方に延びて形成され、大容量デッキ49の搬送路43aの上方で給紙搬送路71に合流している。
【0026】
給紙部46から供給される用紙Pは、給紙搬送路71を上方に向けて搬送され、さらにレジストローラー53によって搬送のタイミングを取って転写ローラー25に搬送されると、転写ローラー25によりトナー像が用紙Pに転写される。トナー像が転写された用紙Pは、画像形成搬送路72上で定着部18に搬送され、定着部18により加熱および加圧されると、トナー像が用紙Pに溶融定着される。トナー像が定着された用紙Pは、排出搬送路73を通って排出ローラー54によって排出トレイ81に排出される。
【0027】
両面印刷する場合には、定着部18で定着された用紙Pは、分岐搬送路74に搬送され、反転搬送路75で用紙Pの表裏が反転され、反転された用紙Pは再搬送路76を介して再び給紙搬送路71に搬送される。給紙搬送路71に搬送された用紙Pは、画像形成部10でその裏面にトナー像を転写され、定着部18によりトナー像を溶融定着されると、排出トレイ81に排出される。
【0028】
給紙カセット47、48の各ピックアップローラー47b、48bは、図2〜図4に示す駆動装置によって回転駆動する。図2は駆動装置のピックアップローラー47b、48b側(正面側)の外観を示す斜視図であり、図3は、フレームの一部を取り外して裏面側から見た駆動装置の内部構成を示す斜視図であり、図4は、正面側から見た駆動装置の要部のギアを示す斜視図である。
【0029】
図2に示すように、駆動装置101は、第1カップリング105と、第2カップリング106と、第3カップリング107とを備える。駆動出力部である第1〜第3カップリング105〜107は、夫々直方体状のフレーム102の外周面から突出して配設される。第1カップリング105は、フレーム102の上側に回転可能に保持され、ピックアップローラー48b(図1参照)に結合しピックアップローラー48bを回転可能としている。第2カップリング106は、フレーム102の下側に回転可能に保持され、ピックアップローラー47b(図1参照)に結合しピックアップローラー47bを回転可能としている。第3カップリング107は、第1カップリング105の右側にて、フレーム102に回転可能に保持され、給紙搬送路71(図1参照)の搬送ローラーに結合し搬送ローラーを回転可能としている。
【0030】
図3に示すように、駆動装置101は、一方が開放された箱状のフレーム102と、図示しないがフレーム102の開放側に対向する平板状の平板フレームと、揺動ギア123を揺動可能に保持するブラケット110とを備える。ブラケット110はフレーム102に固定保持される。
【0031】
また、駆動装置101は、モーター121(図4参照)と、駆動ギア122(図4参照)と、揺動ギア123と、第1ギア部124と、第2ギア部126と、アイドルギア128と、ギア列130と、を備える。駆動ギア122と、第1ギア部124と、第2ギア部126と、アイドルギア128と、ギア列130は、フレーム102と図示しない平板フレームとに設けた各軸受け部に回転可能に保持される。モーター121(図4参照)が回転駆動すると、その回転駆動力は、駆動ギア122(図4参照)と、揺動ギア123と、第1ギア部124と、ギア列130とを介して、第1〜第3カップリング105〜107に伝達されるか、或いは、揺動ギア123と、第2ギア部126と、アイドルギア128と、ギア列130とを介して、第1〜第3カップリング105〜107に伝達される。
【0032】
モーター121は、正逆回転可能なDCブラシレスモーターからなり、フレーム102内の下側に固定保持される。モーター121に印加する電圧を替えることで、モーター121は、所定の回転速度に対して略3倍の範囲で変速することができる。尚、モーター121はステッピングモーターでもよい。
【0033】
モーター121のモーター軸には平歯車からなる駆動ギア122(図4参照)が固着される。駆動ギア122は、平歯車からなる揺動ギア123に噛合している。尚、駆動ギア122は、モーター121に固着したギアに限らず、モーター121のモーター軸ギアに噛合するギアであってもよい。また、駆動ギア122は、はすば歯車を用いることもできる。これにより、騒音や振動を低減させることができる。
【0034】
図4に示すように、揺動ギア123の回転軸123aは、ブラケット110に形成した円弧状の摺動孔111内に揺動可能に保持される。摺動孔111は駆動ギア122のピッチ円と略同心円を描く円弧状にて形成され、これによって、揺動ギア123は駆動ギア122に噛み合いを維持しながら回転軸123aが摺動孔111内を揺動し易くなる。揺動ギア123は、図4の摺動孔111内の右側端面に回転軸123aが当接する第1の位置と、摺動孔111内の左側端面に回転軸123aが当接する第2の位置とに、移動可能に配置される。
【0035】
モーター121の回転駆動により、駆動ギア122が第1の方向(図4のA方向)に回転すると、駆動ギア122の回転駆動力が揺動ギア123に伝達され、その回転駆動力によって、摺動孔111内を回転軸123aが右側に移動し、揺動ギア123は第1の位置に至る。
【0036】
一方、モーター121の逆方向の回転駆動により、駆動ギア122が第2の方向(図4のB方向)に回転すると、駆動ギア122の回転駆動力が揺動ギア123に伝達され、その回転駆動力によって、摺動孔111内を回転軸123aが左側に移動し、揺動ギア123は第2の位置に至る。
【0037】
揺動ギア123が第1の位置に移動したとき(回転軸123aが図4の摺動孔111内の右側端面に位置するとき)、第1ギア部124に噛合する。一方、揺動ギア123が第2の位置に移動したとき(回転軸123aが図4の摺動孔111内の左側端面に位置するとき)、第2ギア部126に噛合する。
【0038】
第1ギア部124は第1入力ギア124aと第1出力ギア124bからなる。第1入力ギア124aと第1出力ギア124bは同軸に一体に設けられ、夫々平歯車からなる。
【0039】
図3に戻り、第2ギア部126は第2入力ギア126aと第2出力ギア126bからなる。第2入力ギア126aと第2出力ギア126bは同軸に一体に設けられ、夫々平歯車からなる。第2ギア部126は、第1ギア部124に対して減速比が異なるように、第2入力ギア126aと第2出力ギア126bの歯数が設定されている。第2出力ギア126bはギア平歯車からなるアイドルギア128に噛合している。
【0040】
アイドルギア128と、第1ギア部124の第1出力ギア124bは、ともにギア列130に噛合している。ギア列130は、回転駆動力が伝達される順に、先端ギア131、第1中間ギア132、第2中間ギア133、終端ギア134を備える。ギア131〜134は、夫々平歯車からなり、互いに隣接するギアに噛合している。
【0041】
先端ギア131は、第1ギア部124の第1出力ギア124に噛合するとともにアイドルギア128に噛合している。終端ギア134は、第1カップリング105に設けたギアに噛合し、ギア列130を介して駆動ギア122の回転駆動力を第1カップリング105に伝達する。また、終端ギア134は、第3カップリング107に設けたギアに噛合し、ギア列130を介して駆動ギア122の回転駆動力を第3カップリング107に伝達する。さらに、ギア列130の第1中間ギア132は、第2カップリング106(図2参照)に設けたギアに噛合し、ギア列130の一部を介して駆動ギア122の回転駆動力を第2カップリング106に伝達する。
【0042】
モーター121が正方向に回転駆動する場合、駆動ギア122が第1の方向(図4のA方向)に回転し、駆動ギア122の回転駆動力が揺動ギア123に伝達され、揺動ギア123は、その回転駆動力によって第1の位置(図4の右端位置)に移動する。第1の位置では、揺動ギア123は第1ギア部124に噛合し、回転駆動力は第1ギア部124を介してギア列130に伝達され、ギア列130に噛合する第1〜第3カップリング105〜107が夫々所定の回転速度で回転する。
【0043】
第1カップリング105及び第3カップリング107は、ギア列130を介して回転駆動力が伝達される一方、第2カップリング106は、ギア列130の一部(先端ギア131及び第1中間ギア132)を介して回転駆動力が伝達されることで、第1及び第3カップリング105、107は第2カップリング106に対して異なる回転速度で回転する。さらに、第1及び第3カップリング105、107に設けた夫々のギアの歯数を異ならせておくことで、第1カップリング105と第3カップリング107の各回転速度を異なるようにすることができる。従って、第1及び第2カップリング105、106は夫々給紙カセット47、48(図1参照)のピックアップローラー47b、48bを異なる回転速度で回転させることができ、さらに、第3カップリング107は給紙搬送路71(図1参照)の搬送ローラーを所定の回転速度で回転させることができる。
【0044】
モーター121が逆方向に回転駆動する場合、駆動ギア122が第2の方向(図4のB方向)に回転し、駆動ギア122の回転駆動力が揺動ギア123に伝達され、揺動ギア123は、その回転駆動力によって第2の位置(図4の左端位置)に移動する。第2の位置では、揺動ギア123は第2ギア部126に噛合し、回転駆動力は第2ギア部126及びアイドルギア128を介してギア列130に伝達される。アイドルギア128が第2ギア部126とギア列130に噛み合うことで、駆動ギア122が第2の方向に回転しても、ギア列130は、駆動ギア122が第1の方向に回転した場合と同じ方向に回転する。ギア列130の回転によって、ギア列130に噛合する第1〜第3カップリング105〜107が夫々所定の回転速度で回転する。駆動ギア122が第2の方向に回転した場合、第1〜第3カップリング105〜107は、第1ギア部124に対する第2ギア部126の減速比の差異に応じて、駆動ギア122が第1の方向に回転した場合に対して、異なる回転速度で夫々回転することになる。
【0045】
上記ように駆動装置101を構成することによって、モーター121の回転方向を切り替えることで、第1〜第3カップリング105〜107の回転速度が簡単に切り替わる。
【0046】
画像形成装置1は、印刷速度、印刷する用紙サイズに応じて多品種の機種が取り揃えられる。即ち、画像形成装置1は、高速から低速までの間に種々の印刷速度の機種があり、給紙カセットのピックアップローラー及び搬送ローラーの各回転速度は、印刷速度に応じて切り替える必要である。また、画像形成装置は、種々の用紙サイズの機種があり、用紙サイズによって印刷速度が異なるために、用紙サイズに応じてピックアップローラー、及び搬送ローラーの回転速度を切り替える必要がある。そこで、種々の画像形成装置1のピックアップローラー及び搬送ローラーの回転速度に対応するために、本実施形態の駆動装置101を給紙カセット48、49の近傍に組み込む。画像形成装置1の印刷速度及び用紙サイズに応じて、まず、駆動装置101のモーター121を所定の回転速度に対して略3倍の範囲内で切り替え、さらにモーター121の回転方向を切り替える。これによって、回転速度の切り替えレンジが拡がり、種々の画像形成装置1に対応させて駆動装置を用意するが必要でなく、一つの駆動装置101を用意することで、上記のような多品種の画像形成装置1に対応させることができる。
【0047】
尚、上記実施形態では、駆動装置101を給紙装置に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、駆動装置101は、カラー用画像形成装置の黒色による単色の画像形成と、多色の画像形成とに切り換えることが可能である画像形成ユニットに適用することができる。
【0048】
図5、図6は、揺動ギアを保持するブラケットを示す図である。図5はブラケットを示す斜視図であり、図6は揺動ギアとブラケットを断面して示す斜視図である。
【0049】
図5に示すように、ブラケット110は、前述の摺動孔111と、側面基部110a、110bと、取り付け孔110c、110dと、一対の組み込み孔110e(図6参照)とを有する。
【0050】
側面基部110a、110bは、互いに対向して形成されるとともに、その下側で互いに連結され、揺動ギア123がその一部を突出させて収容することができるように、その上側が開放して形成されている。
【0051】
側面基部110aの左右両側には、取り付け孔110c、110dが形成される。取り付け孔110c、110dをフレーム102(図3参照)に形成された一対の突起に嵌め込むことで、ブラケット110はフレーム102に固定される。
【0052】
側面基部110a、110bの各中央の上側には、摺動孔111が形成される。各摺動孔111には、側面基部110a、110bから互いに外側に向かって突出するフランジ部111aと、フランジ部111a内で貫通する円弧孔部111bと、円弧孔部111bの両端に設けられ半円状の当接部111c、111dが形成される。各円弧孔部111bは、揺動ギア123の回転軸123aが当接部111c、111dの間を移動可能であるように形成されている。揺動ギア123の回転軸123aは、円弧孔部111b内を移動可能であり、また、当接部111c、111dのいずれかに当接した状態で回転可能となる。
【0053】
揺動ギア123の回転軸123aが摺動孔111の当接部111c、111dのいずれかに長期間に亘って片当りした状態にて回転しても、また、摺動孔111の円弧孔部111b内を繰り返し摺動しても、揺動ギア123の回転軸123aが磨耗し、また、摺動孔111の当接部111c、111dが擦り減ることが抑えられるように、ブラケット110及び揺動ギア123の回転軸123aの各材料が組み合わされる。即ち、ブラケット110は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂にて上記の所定の形状に成形され、揺動ギア123は、ポリアセタール樹脂からなる。従って、ブラケット110は、揺動ギア123に比べて剛性が大きく、揺動ギア123の回転軸123aがブラケット110の摺動孔111のいずれかの端面に長期間に亘って片当りした状態にて回転しても、摺動孔111の端面が擦り減ることが抑えられる。また、フレーム102は、ガラスフィラーを含有したPPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂からなり、モーター121や複数のギアを保持する強度を備える一方、ブラケット110はフレーム102に比べて摩擦係数が小さく摺動性能が良好であるために、揺動ギア123の回転軸123aが磨耗するおそれがない。
【0054】
従って、揺動ギア123の回転軸123aが摺動孔111内で回転及び揺動を繰り返しても、回転軸123aの摺動性能が低下することがなく、第1〜第3カップリング105〜107の回転トルク、回転速度の変動が抑えられる。
【0055】
図6に示すように、ブラケット110の側面基部110a、110b、及び各フランジ部111aには、それらの上側に穿った組み込み孔110eが夫々形成される。組み込み孔110eは、揺動ギア123をブラケット110に組み込むためのものである。一対の組み込み孔110eは、揺動ギア123の回転軸123aの軸方向の長さより僅かに短く、また、幅方向には回転軸123aの外周部より僅かに大きく穿設されている。一対の組み込み孔110eの軸方向の端面には傾斜面110fが形成され、また、揺動ギア123の回転軸123aの端面には面取り部123bが形成されていることで、揺動ギア123の回転軸123aを一対の組み込み孔110eに挿入し易くなっている。
【0056】
揺動ギア123をブラケット110に組み込む場合、揺動ギア123の回転軸123aをブラケット110の組み込み孔110eに対向させて押し込むと、ブラケット110の組み込み孔110eが回転軸123aの軸方向に拡がり、揺動ギア123の回転軸123aは、傾斜面110f及び面取り部123bに案内され、ブラケット110の組み込み孔110e内に挿入される。揺動ギア123の回転軸123aがブラケット110の組み込み孔110e内に挿入されると、拡がった組み込み孔110eは復元し、揺動ギア123の回転軸123aがブラケット110の摺動孔111に嵌装されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリー、それらの複合機等に用いる駆動装置とそれを備えた給紙装置及び画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 画像形成装置
46 給紙部
47、48 給紙カセット
47b、48b ピックアップローラー
101 駆動装置
102 フレーム
105 第1カップリング(駆動出力部)
106 第2カップリング(駆動出力部)
107 第3カップリング(駆動出力部)
110 ブラケット
110a、110b 側面基部
110c、110d 取り付け孔
110e 組み込み孔
110f 傾斜面
111 摺動孔
111a フランジ部
111b 円弧孔部
111c、111d 当接部
121 モーター
122 駆動ギア
123 揺動ギア
123a 回転軸
123b 面取り部
124 第1ギア部
124a 第1入力ギア(第1ギア部)
124b 第1出力ギア(第1ギア部)
126 第2ギア部
126a 第2入力ギア(第2ギア部)
126b 第2出力ギア(第2ギア部)
128 アイドルギア
130 ギア列
131 先端ギア(ギア列)
132 第1中間ギア(ギア列)
133 第2中間ギア(ギア列)
134 終端ギア(ギア列)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動出力部の回転速度を切り替える駆動装置であって、
回転駆動力を発生するモーターと、
該モーターの正逆回転に応じて第1の方向と第2の方向とに回転可能に配置された駆動ギアと、
該駆動ギアと噛み合うように配置されていて、前記駆動ギアから伝達される回転駆動力によって第1の位置と第2の位置との間で揺動可能に構成された揺動ギアと、
前記駆動ギアが第1の方向に回転することにより前記揺動ギアが第1の位置に揺動した場合に前記揺動ギアに噛み合う第1ギア部と、
該第1ギア部に噛み合い前記駆動ギアの回転駆動力を前記駆動出力部に伝達するギア列と、
前記駆動ギアが第2の方向に回転することにより前記揺動ギアが第2の位置に揺動した場合に前記揺動ギアに噛み合うとともに前記第1ギア部に対して減速比が異なる第2ギア部と、
該第2ギア部と前記ギア列とを噛み合わせるアイドルギアと、
前記第1ギア部、前記第2ギア部、前記ギア列、及び前記アイドルギアを回転可能に保持するフレームと、
前記揺動ギアの回転軸を摺動可能で且つ回転可能に保持することにより前記揺動ギアを前記第1の位置と前記第2の位置とに案内する摺動孔を有し、前記フレームに取り付けられるブラケットと、を備え、
前記ブラケットは、前記揺動ギアの回転軸に比べて剛性が大きく、且つ前記フレームに比べて摩擦係数が小さいことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記摺動孔は、前記駆動ギアのピッチ円と略同心円を描く円弧状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の駆動装置を備えた給紙装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の駆動装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−200929(P2012−200929A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65623(P2011−65623)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】