説明

駆動装置

【課題】肉厚増及び面振動を抑制することを可能とする駆動装置を提供する。
【解決手段】電動モータ15とこの電動モータ15に結合された減速機17とからなる駆動装置3であって、減速機17は、電動モータ15に結合された一側の側壁27に他側の側壁29が対向する減速機ケース23を備え、減速機ケース23内に、側壁27,29間に渡り電動モータ15から一側の側壁27に働く荷重を他側の側壁29へ伝達する突当部としてリブ45,47を設け、側壁27の面振動を抑制し、音、振動の発生を抑制し、減速機ケース23の肉厚増を抑制し、重量軽減を可能とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の駆動装置などに供される駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の駆動装置として、特許文献1に記載された電気自動車用駆動装置がある。この電気自動車用駆動装置は、モータとデファレンシャル装置とカウンタギヤ機構とを備えたものであり、カウンタギヤ機構のリヤ・ケースがモータのケース本体に結合されたものである。ケース本体はリヤ・ケースに対向する隔壁を備え、カウンタ軸等が隔壁及びリヤ・ケースに支持されている。
【0003】
かかる構造において、モータの荷重をリヤ・ケース及び隔壁に対して支えるため、ケース外面にリブを設けている。
【0004】
しかし、単にリブを設ける構造では、リブに入力された荷重を支えるためにリヤ・ケース及び隔壁等の肉厚を増加させなければならず、重量軽減が困難となる。
【0005】
また、モータの荷重がリヤ・ケースや隔壁に入力されるため、リヤ・ケースや隔壁の面振動を招き易く、音、振動が発生し易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−287142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、ケース外面にリブを設ける構造では、肉厚増を招いて重量軽減が困難となり、また、リヤ・ケースや隔壁の面振動を招き易く、音、振動が発生し易い点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、肉厚増及び面振動を抑制することを可能とするために、駆動源とこの駆動源に結合された減速機とからなる駆動装置であって、前記減速機は、前記駆動源に結合された一側の側壁に他側の側壁が対向する減速機ケースを備え、前記減速機ケース内に、前記側壁間に渡り前記駆動源から前記一側の側壁に働く荷重を前記他側の側壁へ伝達する突当部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記構成であるから、駆動源の荷重を減速機ケースの一側の側壁から突当部を介し他側の側壁へ伝達することができ、高い剛性で駆動源の荷重を受けることができる。
【0010】
したがって、減速機ケースの肉厚増を抑制し、重量軽減も可能とする。
【0011】
また、突当部を介し側壁相互間で荷重伝達が可能なため、側壁の面振動も抑制し、音、振動の発生を招き難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】車両のスケルトン平面図である。(実施例1)
【図2】駆動装置の一部切欠き正面図である。(実施例1)
【図3】減速機の一部切欠き側面図である。(実施例1)
【図4】(A)は、カウンタ・シャフトなどと共に示す他側合わせケース部、(B)は、一側合わせケース部、(C)は、(A)のIVC−IVC線矢視の一部断面図である。(実施例1)
【図5】(A)は、カウンタ・シャフトなどと共に示す他側合わせケース部、(B)は、一側合わせケース部、(C)は、(A)のVC−VC線矢視の一部断面図である。(実施例2)
【図6】(A)は、カウンタ・シャフトなどと共に示す他側合わせケース部、(B)は、一側合わせケース部、(C)は、(A)のVIC−VIC線矢視の一部断面図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0013】
肉厚増や面振動を抑制することを可能にするという目的を、減速機ケース内に、側壁間に渡り駆動源から一側の側壁に働く荷重を他側の側壁へ伝達する突当部を設けることにより実現した。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る駆動装置を適用した自動車のスケルトン平面図である。図1のように、自動車1は、駆動装置3により前輪5,7を駆動輪として駆動する。後輪9,11は従動輪である。
【0015】
駆動装置3は、フロント・デファレンシャル装置12が前輪車軸13,14に結合され、駆動源としての電動モータ15とこの電動モータ15に結合された減速機17とからなっている。
【0016】
電動モータ15は、モータ・フランジ部19を備え、減速機17は、減速機フランジ部21を備えている。電動モータ15及び減速機17は、モータ・フランジ部19及び減速機フランジ部21を合わせ、締結結合される。
【0017】
図2は、駆動装置の一部切欠き正面図、図3は、減速機の一部切欠き側面図、図4(A)は、カウンタ・シャフトなどと共に示す他側合わせケース部、(B)は、一側合わせケース部、(C)は、(A)のIVC−IVC線矢視断面図である。
【0018】
図2〜図4のように、減速機17は、減速機ケース23を備えている。減速機ケース23は、一側合わせケース部24と他側合わせケース部25とを備え、合わせ構造となっている。一側合わせケース部24は、一側の側壁27を含み、他側合わせケース部25は、他側の側壁29を含んでいる。減速機ケース23は、一側の側壁27に他側の側壁29が対向する。
【0019】
一側合わせケース部24と他側合わせケース部25とは、側壁27,29に、第1、第2、第3軸受部31a,31b、33a,33b、35a,35bを備えている。一側合わせケース部24と他側合わせケース部25とには、合わせ面37,39が形成されている。合わせ面37には、ボルト挿通孔41を備えた締結部42が所定間隔で肉盛り形成され、他側合わせケース部25の合わせ面39には、ボルト挿通孔41に対応してねじ穴43を備えた締結部44が所定間隔で肉盛り形成されている。
【0020】
一側合わせケース部24には、前記減速機フランジ部21が一体に形成され、この減速機フランジ部21に締結用のねじ穴46が所定間隔で形成されている。
【0021】
減速機ケース23内には、突当部としてリブ45,47が設けられている。リブ45,47は、一側合わせケース部24に設けられた一側部45a,47aと他側合わせケース部25に設けられた他側部45b,47bとからなっている。
【0022】
リブ45,47の一側部45a,47aと他側部45b,47bとは、合わせ縁が合わせ面37,39と面一の平面に形成され、合わせ面37,39の合わせ結合により相互に突き当てられる構成となっている。
【0023】
この突き当てによりリブ45,47が側壁27,29間に渡り、電動モータ15から一側の側壁27に働く荷重を他側の側壁29へ伝達する機能を有する。
【0024】
リブ45の一側部45a及び他側部45bは、第1軸受部31a,31bの下方部に配置され、合わせ面37,39から第1軸受部31a,31bの中心寄りに下降傾斜して延出形成されている。一側部45a及び他側部45bは、締結部42及び締結部44からケース内方向へ突出し、減速機フランジ部21に対しては、その内縁側に沿って配置されている。
【0025】
一側部45aには、隣接してボルト挿通孔49を備えた締結当て部51が設けられ、他側部45bには、隣接してねじ穴53を備えた締結受け部55が形成されている。締結当て部51は、減速機フランジ部21側の凹部57を介して形成されている。ボルト挿通孔49を備えた締結当て部51及びねじ穴53を備えた締結受け部55は、ボルト56で締結結合され、一側部45a及び他側部45bの両者間を着脱自在に結合する締結構造を構成している。
【0026】
なお、締結構造は、リブ47側のみ、或いはリブ45,47の双方に設けることができる。
【0027】
リブ47の一側部47a及び他側部47bは、リブ45側に対し第1、第2、第3軸受部31a,31b、33a,33b、35a,35bが間に位置するように、且つ第2軸受部33a,33bの近傍で減速機フランジ部21の径方向外側に配置されている。リブ47の一側部47a及び他側部47bは、リブ45の一側部45a及び他側部45bに対し逆側から下降傾斜するように延出形成され、その延出方向の先端は、フロント・デファレンシャル装置12のリング・ギヤ59に指向し、第2減速ギヤ61の外周に沿っている。
【0028】
減速機ケース23は、一側合わせケース部24と他側合わせケース部25とが合わせ面37,39で突き合わせられ、各ボルト挿通孔41を通したボルト62(図2)を各ねじ穴43に締結し、相互に締結される。リブ45隣接のボルト挿通孔49には、ボルト56(図4C)が挿通され、ねじ穴53に締結され、一側部45a及び他側部45bが突き合わせ締結される。
【0029】
したがって、リブ45の一側部45a及び他側部45bは、締結当て部51及び締結受け部55間のボルト56による締結と、リブ45の基部での締結部42,44のボルト62による締結とにより確実に突き合わせ締結され、連続させることができる。
【0030】
リブ47の一側部47a及び他側部47bは、リブ47の基部での締結部42,44のボルトによる締結により確実に突き合わせ締結され、連続させることができる。
【0031】
一側合わせケース部24及び他側合わせケース部25が合わせ結合された減速機ケース23の第1軸受部31a,31bには、入力軸63が回転自在に軸支持される。第2軸受部33a,33bには、カウンター軸65が回転自在に軸支持され、第3軸受部35a,35bには、フロント・デファレンシャル装置12が回転自在に軸支持される。
【0032】
入力軸63の第1減速ギヤ67は、カウンター軸65の第2減速ギヤ61に噛み合い、カウンター軸65の第3減速ギヤ(図示せず。)は、リング・ギヤ59に噛み合う。
【0033】
モータ・フランジ部19及び減速機フランジ部21が突き合わせられ、モータ・フランジ部19側から挿通したボルトを減速機フランジ部21のねじ穴46に締結することで、入力軸63の端部内周に、電動モータ15の出力軸がスプライン嵌合により結合され、図2の駆動装置3となる。
【0034】
したがって、電動モータ15の出力により電動モータ出力軸に連動して入力軸63が回転し、第1減速ギヤ、第2減速ギヤ61、第3減速ギヤ、リング・ギヤ59を介してフロント・デファレンシャル装置12にトルクが伝達され、左右の前輪車軸13,14を介して左右の前輪5,7へ伝達することができる。
【0035】
かかる構造の駆動装置3は、電動モータ15の重量がモータ・フランジ部19及び減速機フランジ部21を介して一側合わせケース部24の側壁27に入力される。特に図2〜図4のように、入力軸63側が上部、フロント・デファレンシャル装置12側が最下部に配置され、側壁27への入力は、モータ・フランジ部19及び減速機フランジ部21の下部側で側壁27の上下中間部となる。
【0036】
この荷重は、側壁27からリブ45,47の一側部45a,47aへ伝達され、一側部45a,47aに対する他側部45b,47bの突き当てを介して減速機ケース23の他側の側壁29へと伝達され、全体に分散される。
【0037】
側壁27が電動モータ15側へ引かれる力を受けた時は、一側部45aの締結当て部51からボルト56を介して締結受け部55へ荷重伝達が行われる。
【0038】
したがって、電動モータ15から働く押し方向、引き方向の何れの荷重に対しても側壁27の面振動や変形を抑制することができる。
[実施例の効果]
本発明実施例は、電動モータ15とこの電動モータ15に結合された減速機17とからなる駆動装置3であって、減速機17は、電動モータ15に結合された一側の側壁27に他側の側壁29が対向する減速機ケース23を備え、減速機ケース23内に、側壁27,29間に渡り電動モータ15から一側の側壁27に働く荷重を他側の側壁29へ伝達する突当部としてリブ45,47を設けた。
【0039】
このため、側壁27の面振動を抑制し、音、振動の発生を抑制することができる。減速機ケース23の肉厚増を抑制し、重量軽減が可能となる。
【0040】
リブ47は、フロント・デファレンシャル装置12のリング・ギヤ59に指向し、第2減速ギヤ61の外周に沿っているため、飛散した潤滑オイルをガイドすることができる。
【0041】
減速機ケース23は、一側の側壁27を含む一側合わせケース部24と他側の側壁29を含む他側合わせケース部25とを備えた合わせ構造であり、リブ45,47は、一側合わせケース部24に設けられた一側部45a,47aと他側合わせケース部25に設けられた他側部45b,47bとからなり、一側合わせケース部24及び他側合わせケース部25を合わせて一側部45a,47a及び他側部45b,47bを突き合わせリブ45,47を構成する。
【0042】
このため、部品点数の増大は無く、組み付けも一側合わせケース部24及び他側合わせケース部25を合わせるだけで良く、組み付け、部品管理も容易である。
【0043】
ボルト挿通孔49を備えた締結当て部51及びねじ穴53を備えた締結受け部55は、一側部45a及び他側部45bの両者間を着脱自在に結合する締結構造を備えた。
【0044】
このため、側壁27が電動モータ15側へ引かれる力を受けた時でも一側合わせケース部24の変形が抑制され、面振動等を抑制することができる。
【0045】
突当部がリブ45,47であり、側壁27,29の剛性を向上させることができ、電動モータ15側から伝達される荷重を確実に分散させることができる。
【実施例2】
【0046】
図5(A)は、カウンタ・シャフトなどと共に示す他側合わせケース部、(B)は、一側合わせケース部、(C)は、(A)のVC−VC線矢視断面図である。なお、基本的な構成は実施例1と同様であり、同一構成部分には同符号を付し、対応する構成部分には同符号にAを付し、重複した説明は省略する。
【0047】
本実施例の駆動装置3Aでは、突当部としてのリブ45A,47Aが、締結構造を備えず、リブ45Aが減速機フランジ部21に入力軸63等の軸芯方向で一部オーバーラップする配置とした。
【0048】
したがって、電動モータ15側の荷重が減速機フランジ部21及び減速機フランジ部21を介して減速機ケース23へ入力されたときリブ45Aで直接的に受け、分散することができ、減速機ケース23の面振動等をより確実に抑制することができる。
【0049】
また、リブ45A,47Aの双方を潤滑オイルのガイドとして機能させることができる。
【0050】
本実施例でも、実施例1と同様の締結構造を、リブ45A,47Aの一方、或いはリブ45A,47Aの双方に設けることができる。
【0051】
その他、本実施例でも、実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
【実施例3】
【0052】
図6(A)は、カウンタ・シャフトなどと共に示す他側合わせケース部、(B)は、一側合わせケース部、(C)は、(A)のVIC−VIC線矢視断面図である。なお、基本的な構成は実施例1と同様であり、同一構成部分には同符号を付し、対応する構成部分には同符号にBを付し、重複した説明は省略する。
【0053】
本実施例の駆動装置3Bでは、突当部としてのリブ45B,47Bが、締結構造を備えず、リブ45Bが減速機フランジ部21に入力軸63等の軸芯方向で一部オーバーラップする配置とし、リブ45B,47B共に円形の減速機フランジ部21の径方向へ指向するように配置した。
【0054】
したがって、電動モータ15の出力軸側を中心としたモーメントを受けるとき、径方向に指向したリブ45B,47Bにより、より確実に荷重伝達を行わせることができる。
【0055】
本実施例でも、実施例1と同様の締結構造を、リブ45B,47Bの一方、或いはリブ45B,47Bの双方に設けることができる。
【0056】
その他、本実施例でも、実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
[その他]
各実施例のリブの合わせ縁は、一側部45a,47a又は他側部45b,47bの一方を、合わせ面37又は合わせ面39に対して面一ではなく、一側合わせケース部24又は他側合わせケース部25内に位置するように形成し、他方を同外へ位置するように突出形成することもできる。この場合、合わせ面37,39の合わせ結合により他方が一方に一側合わせケース部24又は他側合わせケース部25内で相互に突き当てられる。そして、リブ45,47、45A,47A、45B,47Bにより、合わせ面37,39の面方向の位置決めを行わせることができる。
【符号の説明】
【0057】
3,3A,3B 駆動装置
15 電動モータ(駆動源)
17 減速機
19 モータ・フランジ部
21 減速機フランジ部
23 減速機ケース
24 一側合わせケース部
25 他側合わせケース部
27,29 側壁
45,47,45A,47A,45B,47B リブ(突当部)
45a,47a、45Aa,47Aa、45Ba,47Ba 一側部
45b,47b、45Ab,47Ab、45Bb,47Bb 他側部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源とこの駆動源に結合された減速機とからなる駆動装置であって、
前記減速機は、前記駆動源に結合された一側の側壁に他側の側壁が対向する減速機ケースを備え、
前記減速機ケース内に、前記側壁間に渡り前記駆動源から前記一側の側壁に働く荷重を前記他側の側壁へ伝達する突当部を設けた、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の駆動装置であって、
前記減速機ケースは、前記一側の側壁を含む一側合わせケース部と前記他側の側壁を含む他側合わせケース部とを備えた合わせ構造であり、
前記突当部は、前記一側合わせケース部に設けられた一側部と前記他側合わせケース部に設けられた他側部とからなり、
前記一側合わせケース部及び他側合わせケース部を合わせて前記一側部及び他側部を突き合わせ前記突当部を構成する、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の駆動装置であって、
前記一側部及び他側部は、両者間を着脱自在に結合する締結構造を備えた、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の駆動装置であって、
前記突当部は、リブである、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の駆動装置であって、
前記駆動源は、モータ・フランジ部を備え、
前記減速機は、減速機フランジ部を備え、
前記駆動源及び減速機の結合は、前記モータ・フランジ部及び減速機フランジ部の締結結合である、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の駆動装置であって、
前記駆動源は、電動モータである、
ことを特徴とする駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−241841(P2012−241841A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114387(P2011−114387)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000225050)GKNドライブラインジャパン株式会社 (409)
【Fターム(参考)】