説明

駐車スペース付き建物

【課題】利用者と自動車の動線を適正化することにより、利用者の利便性の向上や建物の集客力の向上を図ることが可能となる、駐車スペース付き建物を提供すること。
【解決手段】自動車の駐車スペースを備える建物1であって、利用者が自動車を駐車した後に利用する利用スペース20と、利用スペース20に対して人が出入り可能となるように設定されたスペースであって、自動車を一次的に駐車するための一次駐車スペース30と、一次駐車スペース30に駐車された自動車を移動して駐車するための二次駐車スペース50とを備え、一次駐車スペース30と二次駐車スペース50との相互間において自動車を移動可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車スペースを備えた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な商業用建物や住宅用建物においては、利用者の利便性を図る観点から、駐車場が併設されることが一般的である。しかしながら、ガソリン自動車に特有の問題点として、排気ガス、騒音、あるいはガソリンエンジンの制御の困難性が知られており、このような問題を回避する観点から、一般的には、駐車場は建物から完全に分離して配置されていた。
【0003】
あるいは、駐車場を建物に一体化させることも提案されていたが、このような駐車場一体型建物においても、上記問題を回避するために開放空間を設けることが必須となっていた。例えば、特許文献1には、自走式駐車場を備えた建物が開示されているが、この建物においては、低層部の上方にボイド部を設け、ボイド部に自走式駐車場を設けていた。このような建物は、駐車場が建物に近接して配置されているものの、駐車場のみをボイド部に配置するものであり、実質的には駐車場が建物から分離して配置されたものに過ぎなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−273182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように駐車場を建物から分離して配置した場合には、自動車で建物に来た利用者が、建物から離れた位置で自動車を降り、建物まで歩かなければならない等、利用者と自動車の動線が適切に設定されているとは言い難く、利用者の利便性に改善の余地があった。
【0006】
一方、近年の電気自動車の普及に伴い、ガソリン自動車に特有の上記諸問題が低減したり完全になくなることが予想され、従来のように駐車場を建物から分離する必要性自体が低下することが考えられる。
【0007】
また、建物の運営者にとっても、建物の集客力を向上させることは常に課題になっており、電気自動車の普及に伴って建物に新たな工夫を加えることで、この課題を達成したいとの期待が高まることが考えられる。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、利用者と自動車の動線を適正化することにより、利用者の利便性の向上や建物の集客力の向上を図ることが可能となる、駐車スペース付き建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の駐車スペース付き建物は、自動車の駐車スペースを備える建物であって、当該建物に自動車で来た利用者が当該自動車を駐車した後に利用する利用スペースと、前記利用スペースの近傍に配置され、当該利用スペースに対して人が出入り可能となるように設定されたスペースであって、自動車を一次的に駐車するための一次駐車スペースと、前記一次駐車スペースに駐車された自動車を移動して駐車するためのスペースであって、当該自動車に対する所定のサービスを行うためのサービススペースを有する二次駐車スペースとを備え、前記一次駐車スペースと前記二次駐車スペースとの相互間において自動車を移動可能とした。
【0010】
請求項2に記載の駐車スペース付き建物は、請求項1に記載の駐車スペース付き建物において、上層部と下層部とを備え、少なくとも前記下層部に、前記利用スペース及び前記一次駐車スペースを設け、少なくとも前記上層部に、前記二次駐車スペースを設けた。
【0011】
請求項3に記載の駐車スペース付き建物は、請求項2に記載の駐車スペース付き建物において、前記下層部の前記一次駐車スペースから前記上層部の前記二次駐車スペースに至る走行路を設けることにより、前記一次駐車スペースと前記二次駐車スペースとの相互間において自動車を移動可能とした。
【0012】
請求項4に記載の駐車スペース付き建物は、請求項3に記載の駐車スペース付き建物において、当該建物の外周に前記走行路を設けた。
【0013】
請求項5に記載の駐車スペース付き建物は、請求項3又は4に記載の駐車スペース付き建物において、当該建物の内部に前記走行路を設けた。
【0014】
請求項6に記載の駐車スペース付き建物は、請求項4又は5に記載の駐車スペース付き建物において、前記下層部を複数階層により構成すると共に、これら複数階層における各階層に前記利用スペース及び前記一次駐車スペースを設け、前記走行路を、前記下層部の前記複数階層の前記一次駐車スペースを順次経てから前記上層部の前記二次駐車スペースに至るように、あるいは、前記上層部の前記二次駐車スペースから前記下層部の前記複数階層の前記一次駐車スペースを順次経るように、形成した。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の駐車スペース付き建物によれば、利用スペースの近傍に一次駐車スペースを設けたので、建物に自動車で来た利用者が、自動車を一次駐車スペースに駐車してその近傍の利用スペースに移動できるので、建物から遠く離れた駐車場に自動車を駐車する従来の建物に比べて、利用者の動線を適正化することが可能になる。また、二次駐車スペースを設けると共に、一次駐車スペースと二次駐車スペースとの相互間において自動車を移動可能としたので、利用者によって一次駐車スペースに駐車された自動車を機械や係員が二次駐車スペースに移動させて駐車しておくことができ、利用者が必要とする場合には二次駐車スペースに駐車された自動車を機械や係員が一次駐車スペースに移動させることができるので、建物から遠く離れた駐車場に自動車を駐車する従来の建物に比べて、自動車の動線を最適化することが可能になる。このように、従来は相互に分離されていた駐車スペースと利用スペースを一体的に融合させた新しい建物を構築することで、建物の付加価値を向上させることが可能になり、建物を利用する高齢者、幼少層を扱う者、あるいは身体に障害を持つ等の利用者の利便性を向上させることができると共に、建物の運営者にとっては建物の集客力を向上させることができる。
特に、二次駐車スペースにサービススペースを設けたので、二次駐車スペースに駐車された自動車に対してサービスを容易に提供することが可能になり、利用者にとっては自己の自動車に対するサービスを受けることができて利便性が向上し、建物の運営者にとっては利用者の自動車にサービスを提供することで、建物の集客力や収益性の向上に導く新事業の創出へ発展させることができる。
【0016】
請求項2に記載の駐車スペース付き建物によれば、下層部に利用スペース及び一次駐車スペースを設けると共に、上層部に二次駐車スペースを設けたので、建物を利用する利用者にとっては、外部からアクセスし易い下層部において、自動車を駐車して利用スペースに移動したり、自動車に乗って退出できるので、利用者の動線を一層適正化することが可能になる。また、建物の運営者にとっては、利用者が外部からアクセスし難いために相対的に付加価値が低い上層部に自動車を駐車させることができるので、建物のスペースを付加価値に応じた形態で使用することができる。
【0017】
請求項3に記載の駐車スペース付き建物によれば、一次駐車スペースから二次駐車スペースに至る走行路を設けたので、自動車を移動させるための特別な移動機構が不要になるため、建物の建設コストを低減することができる。
【0018】
請求項4に記載の駐車スペース付き建物によれば、建物の外周に走行路を設けたので、電気自動車に加えてガソリン自動車を走行させる場合であっても、ガソリン自動車から排出される排気ガスを建物の外部に容易に排出することができ、従来と同様にガソリン自動車も利用可能な建物とすることができる。また、建物の外周に走行路を設けることで、建物の内部スペースを利用スペースとして有効利用できる。
【0019】
請求項5に記載の駐車スペース付き建物によれば、建物の内部に走行路を設けたので、例えば、走行路の途中位置に一次駐車スペースを設けた場合には、この一次駐車スペースを全天候型の複数の利用者間のコミュニティスペースとして利用することができる。
【0020】
請求項6に記載の駐車スペース付き建物によれば、走行路を下層部の複数階層を順次経てから上層部の二次駐車スペースに至るように形成したので、利用者が、複数階層のうち任意の階層の利用スペースの近傍に自動車を一次的に駐車して、当該利用スペースを利用することができるので、複数階層に利用スペースがある場合における利用者の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る建物の構成を概念的に示す側面図である。
【図2】図1の建物の二次駐車スペースを含む平面図である。
【図3】駐車管理制御装置を機能概念的に示すブロック図である。
【図4】運転者情報の構成例を示す図である。
【図5】自動車情報の構成例を示す図である。
【図6】利用履歴情報の構成例を示す図である。
【図7】入庫制御処理のフローチャートである。
【図8】図7に続く、入庫制御処理のフローチャートである。
【図9】二次駐車制御処理のフローチャートである。
【図10】出庫制御処理のフローチャートである。
【図11】実施の形態2に係る建物の構成を概念的に示す側面図である。
【図12】図11の建物の二次駐車スペースを含む平面図である。
【図13】実施の形態3に係る建物の構成を概念的に示す側面図である。
【図14】図13の建物の二次駐車スペースを含む平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る駐車スペース付き建物の各実施の形態を詳細に説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
建物の利用形態や規模は、特記する場合を除いて任意であり、例えば、ショッピングセンターや病院の如き商業用建物や、マンションの如き住宅用建物が該当する。以下では、建物が商業用建物である場合について説明する。
【0024】
この建物は、少なくとも「利用スペース」、「一次駐車スペース」、「二次駐車スペース」、及び「移動スペース」を有し、さらに必要に応じて「サービススペース」を有する。
【0025】
「利用スペース」とは、当該建物に自動車で来た利用者が、当該自動車を駐車した後に利用するスペースであり、例えば、商業用建物の場合にはショッピングスペースや診療スペースが該当し、住宅用建物の場合には居住用スペースが該当する。なお、建物を利用する者を「利用者」と称する。この利用者には、自動車の運転者の他、自動車の同乗者を含む。
【0026】
「一次駐車スペース」とは、利用スペースの近傍に配置され、当該利用スペースに対して人が出入り可能となるように設定されたスペースであって、自動車を一次的に駐車するためのスペースである。ここで、「駐車」とは、自動車を停める行為又は状態を広く含むものとし、自動車を比較的短時間だけ停める「停車」についても「駐車」に含まれるものとする。この一次駐車スペースは、「一次入庫スペース」と「一次出庫スペース」を含む。「一次入庫スペース」とは、外部から建物に来た利用者が自動車を駐車するためのスペースである。「一次出庫スペース」とは、建物から外部に出る利用者が自動車に乗るためのスペースである。ただし、一次入庫スペースと一次出庫スペースとを共通化してもよい。
【0027】
「二次駐車スペース」とは、一次駐車スペースに駐車された自動車を移動して駐車するためのスペースである。この二次駐車スペースは、「二次入庫スペース」、「待機スペース」、及び「二次出庫スペース」を含む。「二次入庫スペース」とは、一次入庫スペースから移動された自動車を二次駐車スペースに入庫するためのスペースである。「待機スペース」とは、二次入庫スペースに入庫された自動車を出庫までの間に待機させるためのスペースである。「二次出庫スペース」とは、待機スペースで待機された自動車を一次出庫スペースに出庫するためのスペースである。ただし、これら「二次入庫スペース」、「待機スペース」、及び「二次出庫スペース」は相互に共通化してもよい。
【0028】
「移動スペース」とは、「一次駐車スペース」と「二次駐車スペース」との相互間において自動車を移動させるためのスペースである。この移動方式は、「機械による移動」と「係員による移動」に大別される。機械による移動は、車両移動装置による機械的な移動を意味する。係員による移動は、専用係員による人的な移動(バレットパーキング)を意味する。ただし、自動車の利用者自身が移動を行うことを排除するものではなく、あるいは、これら各方式の移動を組み合わせてもよい。
【0029】
「サービススペース」とは、自動車に対する各種のサービスを行うためのスペースである。このサービスの具体的内容は任意であるが、以下では、「充放電」と「カーケア」を行う場合について説明するものとし、サービススペースの中で、充放電を行うスペースを「充放電スペース」、カーケアを行うスペースを「カーケアスペース」とそれぞれ称する。
【0030】
「充放電」とは、電気自動車が備える蓄電池に対して充電を行う行為と、電気自動車が備える蓄電池から放電させる行為を意味する。「電気自動車」とは、蓄電池に蓄えた電力を用いて走行を行うことができる自動車を意味し、電力のみでモータ走行する電気自動車のみならず、電力によるモータ走行とガソリンによるエンジン走行とを切り替えて走行が可能なハイブリッド自動車を含む。また、以下では、電気自動車の蓄電池に充電を行った場合には、自動車の運転者に対して充電料金を請求し、電気自動車の蓄電池から放電を行った場合には、運転者に対して放電料金を支払うことを想定している。このような電気自動車の蓄電池に対する充電又は放電の具体的な構造は任意であり、例えば、コンセントプラグを用いたプラグイン式の充放電構造の他、電界や磁界を用いた非接触式の充放電構造であってもよい。以下では、電気自動車が、プラグイン式の充放電が可能な電気自動車である場合について説明するものとし、電気自動車を単に「自動車」と称する。ただし、駐車スペースに駐車可能な自動車としては、ガソリン自動車を完全に排除するものではなく、「自動車」にはガソリン自動車も含むものとする。
【0031】
「カーケア」とは、自動車に関する各種のメンテナンスを行う行為を意味し、例えば、洗車、蓄電池交換、オイル交換、あるいは点検等が該当する。
【0032】
なお、「サービススペース」は、「二次駐車スペース」と分離して設けてもよいが、一体に設けてもよく、以下では一体に設けた場合について説明する。具体的には、「二次駐車スペース」に、「二次入庫スペース」、「待機スペース」、及び「二次出庫スペース」に加えて、「充放電スペース」及び「カーケアスペース」を設けた場合について説明する。
【0033】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1について説明する。実施の形態1は、一次駐車スペースと二次駐車スペースとの相互間における自動車の移動を、機械による移動により行う形態である。
【0034】
(構成)
最初に、実施の形態1に係る建物の構成について説明する。図1は、実施の形態1に係る建物の構成を概念的に示す側面図、図2は、図1の建物の二次駐車スペースを含む平面図である。この建物1は、複数階層(本実施の形態1では5階層)の直方形状のビルとして構成されており、下層部(本実施の形態1では1階から4階)には利用スペース20、一次駐車スペース30、及び移動スペース40が設けられ、上層部(本実施の形態1では5階)には二次駐車スペース50が設けられている。
【0035】
また、建物1には、外部から一次駐車スペース30に自動車を乗り入れるための入庫口2、一次駐車スペース30から利用スペース20に利用者が入るための入口3、利用スペース20から一次駐車スペース30に利用者が出るための出口4、一次駐車スペース30から外部に自動車を乗り出すための出庫口5が設けられている。さらに、建物1の外部において、入庫口2の近傍位置には、自動車が入庫口2に進入するための進入路6、自動車に駐車券を発券する発券機7、及び自動車の進入を規制する進入ゲート8が設けられ、出庫口5の近傍位置には、自動車が出庫口5から退出するための退出路9、自動車の駐車料金を駐車券に基づいて精算する精算機10、及び自動車の退出を規制する退出ゲート11が設けられている。
【0036】
また、建物1には、各種の制御を行うための駐車管理制御装置60が設けられている。この駐車管理制御装置60は、図1及び図2では図示を省略するが、実際には建物1の内部の管理室(図示省略)等に配置される。
【0037】
(構成−利用スペース)
利用スペース20は、建物1の下層部(本実施の形態1では1階から4階)における図示左右の中央位置に設けられている。この利用スペース20の具体的な構成は、従来の各種の建物の利用スペースと同様とすることができ、例えば、利用スペース20には、各階層を利用者が移動するためのエスカレータやエレベータ(図示省略)、あるいは、利用者が商品購入を行った場合に料金清算するためのレジカウンタ(図示省略)等が設けられる。特に、これらエスカレータ、エレベータ、あるいはレジカウンタは、利用者の動線を適正化する観点から、入口3や出口4の近傍位置に配置することが好ましい。
【0038】
(構成−一次駐車スペース)
一次駐車スペース30は、利用スペース20の近傍において、少なくとも1台の自動車を駐車することが可能な広さ及び構造で形成されるものであり、本実施の形態1では、建物1の1階部分における利用スペース20の側方位置に形成されている。この一次駐車スペース30は、一次入庫スペース31と一次出庫スペース32を有する。
【0039】
一次入庫スペース31は、建物1の1階部分における図示左側端部に形成されている。そして、外部から自動車に乗ってきた利用者は、進入ゲート8を通過した後、入庫口2を介して一次入庫スペース31に自動車を駐車し、自動車を降りて入口3から直ぐに利用スペース20に入ることができる。特に、これら入庫口2、一次入庫スペース31、入口3、及び利用スペース20が相互に同一直線上に配置されているので、このような移動を行う際における自動車及び利用者の動線が最短距離となる。この一次入庫スペース31には、パレット12が配置されており、このパレット12に駐車された自動車が、当該パレット12を介して移動スペース40を通って二次駐車スペース50の二次入庫スペース51に向けて上昇移動される。二次入庫スペース51でパレット12から自動車が降ろされた後、このパレット12は、同じ移動スペース40を介して一次入庫スペース31に下降させてもよいが、図示しない移動スペース40を介して回転循環等させて一次入庫スペース31に戻してもよい。なお、図示では、建物1の一箇所のみに入庫口2や一次入庫スペース31を設けているが、複数箇所に設けてもよく、例えば、建物1の各側面に設けてもよい。また、図示では、一次入庫スペース31にパレット12を1枚のみ配置しているが、実際には、複数台分のパレット12を並設すると共に、各パレット12に対応するように複数の入庫口2を設けることで、複数台を同時に移動可能としてもよい。
【0040】
また、一次出庫スペース32は、建物1の1階部分における図示右側端部に形成されている。そして、利用スペース20の出口4から出てきた利用者は、直ぐに一次出庫スペース32に入り、自動車に乗って出庫口5を介して一次出庫スペース32から出て、退出ゲート11に向うことができる。特に、これら利用スペース20、出口4、一次出庫スペース32、及び出庫口5が相互に同一直線上に配置されているので、このような移動を行う際における自動車及び利用者の動線が最短距離となる。この一次出庫スペース32には、パレット12が配置されており、二次駐車スペース50の二次出庫スペース55でこのパレット12に移動された自動車が、当該パレット12を介して移動スペース40を通って一次出庫スペース32に向けて下降移動される。一次出庫スペース32でパレット12から自動車が降ろされた後、このパレット12は、同じ移動スペース40を介して二次出庫スペース55に上昇させてもよいが、図示しない移動スペース40を介して回転循環等させて二次駐車スペース50に戻してもよい。なお、図示では、建物1の一箇所のみに出庫口5や一次出庫スペース32を設けているが、複数箇所に設けてもよく、例えば、建物1の各側面に設けてもよい。また、図示では、一次出庫スペース32にパレット12を1枚のみ配置しているが、実際には、複数台分のパレット12を並設すると共に、各パレット12に対応するように複数の出庫口5を設けることで、複数台を同時に移動可能としてもよい。
【0041】
特に、一次駐車スペース30は、複数の利用者間のコミュニティスペースとして利用することもできる。すなわち、一次入庫スペース31に複数台の自動車を駐車可能とした場合には、一次入庫スペース31に駐車させた各自動車から降りた利用者が、一次入庫スペース31という空間を共有することになり、相互に対話することが容易になる。また同様に、一次出庫スペース32に複数台の自動車を駐車可能とした場合には、一次出庫スペース32で自動車に乗るために集まった利用者が、一次出庫スペース32という空間を共有することになり、相互に対話することが容易になる。このような効果を促進するため、例えば、一次入庫スペース31や一次出庫スペース32にモニタ等を設け、自動車や利用スペース20に関する各種の情報を出力させてもよい。
【0042】
(構成−移動スペース)
移動スペース40は、本実施の形態1では、建物1の内部の図示左端において、一次入庫スペース31から二次入庫スペース51に至るスペースとして形成されると共に、建物1の内部の図示右端において二次出庫スペース55から一次出庫スペース32に至るスペースとして形成されている。この移動スペース40の内部には、実際には、パレット12や当該パレット12を昇降させるための公知の昇降機構が配置されているが、これらについては図示を省略する。
【0043】
(構成−二次駐車スペース)
二次駐車スペース50は、本実施の形態1では、建物1の内部の5階部分の全域に設けられており、二次入庫スペース51、待機スペース52、充放電スペース53、カーケアスペース54、及び二次出庫スペース55を含んで構成されている。これら各スペースは、図2に示すように、それぞれ複数台分ずつ設けることができる。これら各スペースは、図1や図2に示す位置に配置される必要は必ずしもなく、例えば、二次入庫スペース51に隣接するように充放電スペース53やカーケアスペース54を配置したり、充放電スペース53とカーケアスペース54の相互間に待機スペース52を配置してもよい。これら各スペースの相互間において、自動車はパレット12に載せられた状態で、公知の移動機構を介して自動的に水平移動させることが可能となっている。また、実際には、これら各スペースの他に、自動車を二次駐車スペース50の内部で移動させるためのスペースを設けてもよい。また、充放電スペース53には、自動車の蓄電池に対する充放電を行うための充放電装置(図示省略)が設けられており、カーケアスペース54には、自動車に対するカーケアを行うための洗車機(図示省略)等が設けられている。また、本実施の形態1では、二次駐車スペース50を5階の一階層のみに設けているが、複数階層に設けて、例えば機械式立体駐車場のように構成してもよい。
【0044】
また、建物1の外周には、掲示板13、FM送信装置14、及びFMアンテナ15が配置されている。掲示板13は、建物1の二次駐車スペース50の混雑状況に関する情報に加えて、充電又は放電の条件に関する情報を文字によって掲示する出力手段である。FM送信装置14及びFMアンテナ15は、建物1の二次駐車スペース50の混雑状況に関する情報に加えて、充電又は放電の条件に関する情報をFM放送信号により出力する出力手段である。
【0045】
(構成−駐車管理制御装置)
次に、駐車管理制御装置60の構成について説明する。図3は、駐車管理制御装置60を機能概念的に示すブロック図である。この図3に示すように、駐車管理制御装置60は、自動車を管理するための制御を行う装置であり、入力部61、出力部62、ネットワークインタフェース(以下、ネットワークIFと略記する)63、記憶部64、及び制御部65を備えて構成されている。なお、実際には、この駐車管理制御装置60は、公知のパーソナルコンピュータやサーバを用いて構成することが可能である。
【0046】
入力部61は、駐車管理制御装置60が実行する各種処理に必要な情報を当該駐車管理制御装置60に入力する入力手段であり、本実施の形態1では、キーボード及びマウスとして構成されている。
【0047】
出力部62は、駐車管理制御装置60からの情報を外部に出力する出力手段であり、本実施の形態1では、モニタ及びスピーカとして構成されている。
【0048】
ネットワークIF63は、LAN(Local Area Network)を介して通信を行うためのインタフェースであり、例えば、所定の通信規格(例えば、イーサネット(登録商標))にて通信を行うネットワークボードとして構成されている。このネットワークIF63は、発券機7、精算機10、充放電端末、洗車機、掲示板13、及びFM送信装置14に接続されている。
【0049】
記憶部64は、駐車管理制御装置60の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記憶する記憶手段であり、例えば、外部記憶装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、DVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体、あるいは、その他の任意の記録媒体を用いてもよい。
【0050】
この記憶部64には、駐車状況情報が記憶されていると共に、運転者情報データベース(以下、データベースをDBと表記する)64a、自動車情報DB64b、及び利用履歴情報DB64cが設けられている。ただし、記憶部64には、さらに他の情報が記憶されているが、この点については後述する。
【0051】
駐車状況情報は、二次駐車スペース50における自動車の駐車状況に関する情報であり、本実施の形態1では、二次駐車スペース50に駐車可能な自動車の総数(以下、駐車可能数)と、二次駐車スペース50に現在駐車されている自動車の総数(以下、現在駐車数)である。このうち、駐車可能数は、駐車管理制御装置60の管理者によって入力部61を介して予め入力されて記憶部64に記憶され、現在駐車数は、後述する入庫制御処理や出庫制御処理によって自動的に更新される。
【0052】
運転者情報DB64aは、運転者に関する情報(以下、運転者情報)を格納する運転者情報格納手段である。この運転者情報は、例えば、図4の構成例に示すように、項目「運転者ID」及び項目「メールアドレス」と、これら各項目に対応する情報とを、相互に関連付けて構成されている。項目「運転者ID」に対応する情報は、運転者を一意に識別するための運転者識別情報である。項目「メールアドレス」に対応する情報は、運転者が保有する携帯電話の電子メールアドレスである。運転者IDは、管理者により任意の方法で付与されて運転者情報DB64aに記憶され、メールアドレスは、運転者が任意の方法で管理者に申請し、駐車管理制御装置60の管理者によって入力部61を介して予め入力されて運転者情報DB64aに記憶される。
【0053】
図3の自動車情報DB64bは、自動車に関する情報(以下、自動車情報)を格納する自動車情報格納手段である。この自動車情報は、例えば、図5の構成例に示すように、項目「自動車ID」及び項目「充放電情報」と、これら各項目に対応する情報とを、相互に関連付けて構成されている。項目「自動車ID」に対応する情報は、自動車を一意に識別するための自動車識別情報である。項目「充放電情報」に対応する情報は、自動車の蓄電池に対して充電又は放電を行う上で必要になる情報であり、自動車メーカーが予め設定した充放電方式、蓄電池の種類、蓄電池の電圧、蓄電池の耐用年数、充放電用端子位置等である。自動車IDは、管理者により任意の方法で付与されて自動車情報DB64bに記憶され、充放電情報は、運転者が任意の方法で管理者に申請し、駐車管理制御装置60の管理者によって入力部61を介して予め入力されて自動車情報DB64bに記憶される。
【0054】
図3の利用履歴情報DB64cは、二次駐車スペース50の利用履歴に関する情報(以下、利用履歴情報)を格納する利用履歴情報格納手段である。この利用履歴情報は、例えば、図6の構成例に示すように、項目「運転者ID」、項目「自動車ID」、項目「現在位置」、項目「入庫日時」、項目「出庫予定日時」、項目「出庫日時」、項目「充電履歴」、項目「放電履歴」、及び項目「カーケア履歴」と、これら各項目に対応する情報とを、相互に関連付けて構成されている。項目「運転者ID」に対応する情報は、図4の運転者情報における同一項目名に対応する情報と同じである。項目「自動車ID」に対応する情報は、図4の自動車情報における同一項目名に対応する情報と同じである。項目「現在位置」に対応する情報は、二次駐車スペース50における自動車の位置を特定するための位置特定情報であり、本実施の形態1では、自動車を載せているパレット12の座標である。項目「入庫日時」に対応する情報は、自動車が一次入庫スペース31に入庫された日時であり、例えば、「3020/12/20/1502」は3020年12月20日の13時02分を示す(他の日時情報の形式についても同様)。項目「出庫予定日時」に対応する情報は、自動車が一次出庫スペース32から出庫される予定の日時である。項目「出庫日時」に対応する情報は、自動車が一次出庫スペース32から出庫された日時である。なお、この情報が空欄になっている場合には、自動車が一次出庫スペース32から未だ出庫されていないことを示す。項目「充電履歴」に対応する情報は、自動車の蓄電池に対して充電を行った充電量である。項目「放電履歴」に対応する情報は、自動車の蓄電池から放電を行った放電量である。項目「カーケア履歴」に対応する情報は、二次駐車スペース50で自動車に対して行ったカーケアの名称である。なお、項目「充電履歴」、項目「放電履歴」、及び項目「カーケア履歴」にそれぞれ対応する情報に関して、「予定」との文字が格納されている場合には、実施が予定されているが未だ完了していないサービスを示している。この利用履歴情報は、後述する入庫制御処理、二次駐車制御処理、及び出庫制御処理で自動的に利用履歴情報に記憶される。
【0055】
図3の制御部65は、駐車管理制御装置60に関する計算処理を行う処理手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及び充放電制御プログラムを含む各種のプログラムや各種のデータを格納するための内部記憶素子を備えて構成されるコンピュータである。プログラムは、磁気的記録媒体や光学的記録媒体を含む任意のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、記憶部64にインストールされることで、制御部65の各部を実質的に構成する。
【0056】
この制御部65は、機能概念的に、入庫制御部65a、二次駐車制御部65b、出庫制御部65cを備えて構成されている。入庫制御部65aは、自動車の進入から二次駐車スペース50への入庫までの処理を行う入庫制御手段である。二次駐車制御部65bは、自動車の二次駐車スペース50への入庫から出庫までの処理を行う二次駐車制御手段である。出庫制御部65cは、自動車の二次駐車スペース50からの出庫から退出までの処理を行う出庫制御手段である。これら制御部65の各部の機能の詳細は後述する。
【0057】
(処理)
次に、このように構成された駐車管理制御装置60によって実行される処理について説明する。この処理は、入庫制御部65aによって実行される入庫制御処理、二次駐車制御部65bによって実行される二次駐車制御処理、及び出庫制御部65cによって実行される出庫制御処理に大別される。以下、各処理について順次説明する。ただし、特記なき場合には、処理は制御部65によって実行されるものとする。
【0058】
(処理−入庫制御処理)
最初に、入庫制御処理について説明する。図7、8は、入庫制御処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この入庫制御処理は、駐車管理制御装置60の電源投入以降、繰り返し起動される。
【0059】
まず、図7に示すように、入庫制御部65aは、進入路6で一次入庫スペース31への進入を待っている自動車があるか否かを判定する(SA1)。この判定は、例えば、発券機7に設けた図示しないセンサによって自動車の存在を検出することで行うことができる。そして、進入を待っている自動車がある場合(SA1、Yes)、入庫制御部65aは、二次駐車スペース50が満車であるか否かを判定する(SA2)。この判定は、記憶部64に記憶されている駐車可能数と現在駐車数とに基づいて行うことができる。
【0060】
そして、二次駐車スペース50が満車である場合には(SA2、Yes)、入庫制御部65aは、満車でなくなるまで待機し、二次駐車スペース50が満車でなくなった時点で(SA2、No)、進入路6で進入待ちをしている自動車に対して最新の充電単価(充電1kWh当りの価格)及び放電単価(放電1kWh当りの価格)を、発券機7に設けた図示しないモニタを介して表示する(SA3)。これら充電単価及び放電単価としては、駐車管理制御装置60の管理者が設定した所定の単価を表示してもよいが、二次駐車スペース50で充電や放電を行っている自動車の数や比率等に応じて任意の方法でリアルタイムに決定して表示してもよい。また、入庫制御部65aは、これら充電単価及び放電単価を、建物1の外部に適宜出力する。例えば、入庫制御部65aは、充電単価及び放電単価を含んだ信号を、所定の制御コマンドと共に、掲示板13とFM送信装置14に対してネットワークIF63を介して送信する。このことにより、掲示板13には、充電単価及び放電単価とが表示され、FM送信装置14からはFMアンテナ15を介して、充電単価及び放電単価とが放送されるので、運転者(本実施の形態1では、建物1の周囲を走行している自動車の運転者や、FM放送をカーラジオで受信して視聴している自動車の運転者)は、これらの情報を参考に、建物1を利用するか否かを判断することができる。なお、FM放送としては、例えば、建物1を含むエリアに向けて放送されるミニFM放送として行うことができる。また、このように建物1の外部に出力する情報としては、駐車状況情報等の他の情報を含めてもよい。
【0061】
次いで、入庫制御部65aは、運転者情報、自動車情報、及び利用情報の入力を促すメッセージを、発券機7に設けた図示しないモニタを介して表示する(SA4)。すなわち、入庫に際して、運転者は、運転者情報としては自己の運転者ID、自動車情報としては自己が現在運転している自動車の自動車ID、利用情報としては自己の自動車に対して二次駐車スペース50で行いたいサービス(充電、放電、あるいはカーケア)の項目及び内容(充電の場合には充電量、放電の場合には放電量、カーケアの場合にはカーケアの種類や交換希望部品の詳細等)を入力することが求められるものとし、これら各情報を、発券機7に設けた図示しない入力部を介して入力するようにメッセージが出力される。ただし、カーナビゲーション装置やETC車載器と発券機7が通信することで、これら各情報を自動的に取得できる場合には、当該表示は省略してもよい。
【0062】
そして、入庫制御部65aは、運転者情報、自動車情報、及び利用情報が入力されるまで待機し(SA5)、これらの情報の入力があった場合には(SA5、Yes)、これらの情報に基づいて、仮の実施予定サービスと仮の出庫予定日時を特定する(SA6)。ここで、仮の実施予定サービスとは、利用者の自動車に対して二次駐車スペース50で実施するものとして仮に特定されたサービスの項目及び内容であり、SA4で利用者自身が入力したサービスの項目及び内容と、入庫制御部65aが自動的に付加したサービスの項目及び内容から構成される。例えば、入庫制御部65aは、SA4で入力された自動車IDに基づいて、自動車情報DB64bの充放電情報から当該自動車IDに対応する蓄電池の耐用年数を取得すると共に、利用履歴情報DB64cのカーケア履歴から当該自動車IDに対応する過去の蓄電池の交換が行われた際の日時(入庫日時や出庫日時)を取得する。そして、入庫制御部65aは、これらの情報に基づいて、自動車の蓄電池が交換されてから耐用年数を越えているか否かを判定し、超えている場合には、蓄電池交換を実施予定サービスの項目及び内容として追加する。また、仮の出庫予定日時とは、利用者の自動車が一次出庫スペース32から出庫される日時として仮に特定された日時である。例えば、入庫制御部65aは、SA6で特定された仮の実施予定サービスを全て終えるのに必要な時間と、自動車を一次入庫スペース31から二次駐車スペース50を介して一次出庫スペース32に移動させるために必要な時間とを、それぞれ公知の方法で算定し、当該算定した時間の分だけ、公知の方法で取得した現在日時を進めることで、仮の出庫予定日時を特定する。
【0063】
次いで、入庫制御部65aは、SA6で特定した仮の実施予定サービス及び仮の出庫予定日時と、これら仮の実施予定サービス及び仮の出庫予定日時の承認を求めるメッセージとを、発券機7に設けた図示しないモニタを介して表示する(SA7)。ここで、利用者が発券機7を所定の方法で操作することで仮の実施予定サービス及び仮の出庫予定日時の修正要求を行なった場合(SA7、No)、入庫制御部65aは、SA6で特定した仮の実施予定サービス及び仮の出庫予定日時を修正する(SA8)。仮の実施予定サービスの修正は、例えば、SA6で特定された仮の実施予定サービスから、SA6で入庫制御部65aが自動的に付加したサービスを除外することにより行われる。あるいは、利用者が発券機7を所定の方法で操作することで仮の実施予定サービスを修正してもよい。仮の出庫予定日時の修正は、SA8で修正された仮の実施予定サービスに基づいて、SA6と同様に仮の出庫予定日時を特定することで行われる。あるいは、利用者は、発券機7を所定の方法で操作することで、任意の時刻を仮の出庫予定日時として指定することができる。
【0064】
このように仮の実施予定サービス及び仮の出庫予定日時の表示と修正を必要に応じて繰り返した後、これら仮の実施予定サービス及び仮の出庫予定日時が利用者によって承認された場合(SA7、Yes)、図8に示すように、入庫制御部65aは、承認された仮の実施予定サービスを最終の実施予定サービスとすると共に、承認された仮の出庫予定日時を最終の出庫予定日時とし、これら最終の実施予定サービス及び最終の出庫予定日時を利用情報に反映させて記憶部64に記憶する(SA10)。具体的には、SA5で入力された運転者ID及び自動車IDを含んだ新規のレコードを利用履歴情報DB64cに生成し、このレコードにおいて、最終の実施予定サービスに対応する欄に、項目「充電履歴」、項目「放電履歴」、又は項目「カーケア履歴」に対応する情報として、サービスの項目及び内容に加えて、「予定」との文字を格納する。
【0065】
次いで、入庫制御部65aは、公知の方法でその時点の現在日時を取得し、当該取得した現在日時と、SA5で入力された運転者ID及び自動車IDとを記録した駐車券を、券売機から発券し、進入ゲート8を開放する(SA11)。また、この際、入庫制御部65aは、SA20で利用履歴情報DB64cに生成したレコードに、項目「入庫日時」に対応する情報として、当該取得した現在日時を格納する。そして、自動車が進入ゲート8を通過したか否かを、発券機7に設けた図示しないセンサを介して監視し(SA12)、進入ゲート8を通過した場合には(SA12、Yes)、進入ゲート8を閉鎖し、記憶部64の現在駐車数を1つ増分することにより更新する(AS13)。
【0066】
その後、入庫制御部65aは、一次駐車スペース30の一次入庫スペース31への自動車の駐車が完了したか否かを監視する(SA14)。この監視は、一次入庫スペース31に設けた図示しないセンサからの出力に基づいて行うことができる。そして、一次入庫スペース31への駐車が完了した場合(SA14、Yes)、入庫制御部65aは、一次入庫スペース31へ駐車された自動車の利用者に対して、一次入庫スペース31からの退出を促すメッセージを、一次入庫スペース31に設けた図示しないモニタ及びスピーカから出力する(SA15)。
【0067】
そして、入庫制御部65aは、一次入庫スペース31からの利用者の退出が完了したか否かを監視する(SA16)。この監視は、一次入庫スペース31に設けた図示しないセンサからの出力に基づいて行うことができる。そして、一次入庫スペース31からの退出が完了した場合(SA16、Yes)、入庫制御部65aは、一次入庫スペース31において自動車を載せているパレット12を上昇させて、自動車を二次駐車スペース50の二次入庫スペース51に移動させる(SA17)。これにて入庫制御処理が終了する。
【0068】
(処理−二次駐車制御処理)
次に、二次駐車制御処理について説明する。図9は、二次駐車制御処理のフローチャートである。この二次駐車制御処理は、駐車管理制御装置60の電源投入以降、繰り返し起動される。なお、この二次駐車制御処理の各処理においては、図7のSA4で入力された自動車の自動車IDが、入庫制御処理以降に自動車を搬送するパレット12を一意に監視することで常に特定され、当該特定された自動車IDに基づいて各判定や情報取得等が行われる。あるいは、駐車券に記録された自動車IDを充放電装置等にて読み取ってもよい。
【0069】
まず、二次駐車制御部65bは、入庫制御処理によって二次入庫スペース51に移動された自動車を、二次駐車スペース50の待機スペース52に移動させる(SB1)。次いで、二次駐車制御部65bは、図7のSA7で承認された実施予定サービスが充電又は放電を含んでいるか否かを判定する(SB2)。この判定は、当該自動車の自動車IDに基づいて利用履歴情報DB64cを参照し、当該自動車IDに対応するレコードにおいて、項目「充電履歴」又は項目「放電履歴」に「実施予定」の文字が格納されているか否かを判定することにより行なわれる。そして、少なくともいずれか一方を含んでいる場合には、自動車を二次駐車スペース50の充放電スペース53に移動させて、SA7で承認された実施予定サービスに基づいて、自動車に対する充電又は放電を実行する(SB3)。例えば、パレット12の上面に設けた充放電電極を上昇させて自動車の底部に近接させ、この充放電電極を介して充放電装置による非接触方式での充電又は放電を行い、その後に充放電電極を下降させて初期位置に戻すことで、充電又は放電を自動的に実行する。ただし、この充電又は放電に係員が介在してもよい。この際の充電量又は放電量は、SA7で承認された量とする。そして、二次駐車制御部65bは、SB3で実行された充電又は放電の履歴を利用履歴情報に反映させる(SB4)。具体的には、当該自動車の自動車IDに基づいて利用履歴情報DB64cを参照し、自動車IDに対応するレコードにおいて、項目「充電履歴」又は項目「放電履歴」に対応する情報として格納した「予定」の文字を削除し、充電量又は放電量を記録する。
【0070】
次いで、二次駐車制御部65bは、図7のSA7で承認された実施予定サービスがカーケアを含んでいるか否かを判定する(SB5)。この判定は、当該自動車の自動車IDに基づいて利用履歴情報DB64cを参照し、当該自動車IDに対応するレコードにおいて、項目「カーケア履歴」に「予定」の文字が格納されているか否かを判定することにより行なわれる。そして、カーケアを含んでいる場合には、自動車を二次駐車スペース50のカーケアスペース54に移動させ、SA7で承認された実施予定サービスに基づいて、自動車に対するカーケアを実行する(SB6)。例えば、自動車をパレット12に載せたまま自動洗車機の中を通過させることで、洗車を自動的に実行する。ただし、このカーケアに係員が介在してもよい。そして、二次駐車制御部65bは、SB6で実行されたカーケアの履歴を利用履歴情報に反映させる(SB7)。具体的には、当該自動車の自動車IDに基づいて利用履歴情報DB64cを参照し、自動車IDに対応するレコードにおいて、項目「カーケア履歴」に対応する情報として格納した「予定」の文字を削除する。その後、二次駐車制御部65bは、自動車を二次駐車スペース50の待機スペース52に移動させて自動車を待機させる(SB8)。ただし、SB2及びSB5において実施予定サービスに充放電とカーケアのいずれもが含まれていないと判定された場合には、SB1において移動させた待機スペース52に、自動車をそのまま待機させればよい。あるいは、自動車が二次駐車スペース50に駐車されてからの時間が経過する程、若しくは、利用履歴情報に格納された出庫予定日時に近くなる程、自動車を二次出庫スペース55に近い位置に順次移動させてもよい。
【0071】
次いで、二次駐車制御部65bは、利用履歴情報DB64cの利用履歴に記録された各自動車の出庫予定日時の到来を監視し(SB9)、出庫予定日時が到来した場合には(SB9、Yes)、運転者の携帯電話に対して、出庫予定日時が到来した旨のメールを生成して送信する(SB20)。この際のメールアドレスは、図7のSA5で運転者情報として入力された運転者IDに基づいて運転者情報DB64aから取得することができる。なお、このメールの送信は、出庫予定日時が到来した時点ではなく、出庫予定日時よりも所定の余裕時間(例えば20分前)だけ前に行ってもよい。その後、二次駐車制御部65bは、自動車を二次出庫スペース55に移動させ、パレット12を下降させて一次駐車スペース30の一次出庫スペース32に移動させる(SB11)。これにて二次駐車制御処理が終了する。
【0072】
(処理−出庫制御処理)
最後に、出庫制御処理について説明する。図10は、出庫制御処理のフローチャートである。この出庫制御処理は、駐車管理制御装置60の電源投入以降、繰り返し起動される。
【0073】
図9のSB11で一次出庫スペース32に移動された自動車に乗った利用者は、自動車を退出路9を介して退出ゲート11の手前まで移動させる。一方、出庫制御部65cは、退出路9で退出ゲート11からの退出を待っている自動車があるか否かを、精算機10に設けた図示しないセンサに判定し、退出を待っている自動車がある場合には、精算機10に対して駐車券の挿入を促すメッセージを、当該精算機10に設けた図示しないスピーカやモニタを介して出力する(SC1)。
【0074】
そして、精算機10に対して駐車券が挿入された場合(SC2、Yes)、出庫制御部65cは、駐車料金及びサービス料金を算定する(SC3)。例えば、出庫制御部65cは、駐車券に記録されている現在日時を読み取り、当該読み取った現在日時と公知の方法で取得したその時点の現在日時とから駐車時間を算定し、当該算定した駐車時間に基づいて、記憶部64に予め記憶された駐車料金単価を参照することで、駐車料金を算定する。あるいは、出庫制御部65cは、駐車券に記録されている現在日時及び自動車IDを読み取り、当該読み取った自動車IDに対応する充電履歴、放電履歴、及びカーケア履歴を利用履歴情報DB64cから取得する。そして、当該取得した充電履歴、放電履歴、及びカーケア履歴に基づいて、当該読み取った現在日時と公知の方法で取得したその時点の現在日時と間で行われた充電、放電、及びカーケアの項目や内容を特定し、これら項目や量に基づいて、図7のSA3で表示された充電単価や放電単価と、記憶部64に予め記憶されたサービス料金単価とを参照することで、サービス料金(充電料金、放電料金、及びカーケア料金)を算定する。
【0075】
そして、出庫制御部65cは、当該算定した駐車料金とサービス料金とに基づいて、二次駐車スペース50から退出する自動車のドライバが最終的に精算すべき精算料金を算定する(SC4)。具体的には、SC3で算定した駐車料金に対して、SC3で算定した充電料金とカーケア料金を加算し、SC3で算定した放電料金を減算することで、精算料金を算定する。そして、出庫制御部65cは、このように算定した精算料金の支払いを促すメッセージを、当該精算機10に設けた図示しないスピーカやモニタを介して出力する(同じくSC4)。
【0076】
その後、出庫制御部65cは、精算の完了を監視する(SC5)。具体的には、発券機7を介して精算料金が支払われた場合には、精算が完了したものと判定する。ただし、SC4で算定された精算料金がマイナスである場合には、当該精算料金を精算機10から運転者に対して払い出し、払い出しが完了した時点で、精算が完了したものと判定する。
【0077】
そして、精算が完了した場合(SC5、Yes)、出庫制御部65cは、退出ゲート11を開放し(SC6)、自動車が退出ゲート11を通過したか否かを、精算機10に設けた図示しないセンサを介して監視し(SC7)、退出ゲート11を通過した場合には(SC7、Yes)、退出ゲート11を閉鎖し、記憶部64の現在駐車数を1つ減算することにより更新する(SC8)。これにて出庫制御処理が終了する。
【0078】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、利用スペース20の近傍に一次駐車スペース30を設けたので、建物1に自動車で来た利用者が、自動車を一次駐車スペース30に駐車してその近傍の利用スペース20に移動できるので、建物1から遠く離れた駐車場に自動車を駐車する従来の建物に比べて、利用者の動線を適正化することが可能になる。また、二次駐車スペース50を設けると共に、一次駐車スペース30と二次駐車スペース50との相互間において自動車を移動可能としたので、利用者によって一次駐車スペース30に駐車された自動車を二次駐車スペース50に移動させて駐車しておくことができ、利用者が必要とする場合には二次駐車スペース50に駐車された自動車を一次駐車スペース30に移動させることができるので、建物1から遠く離れた駐車場に自動車を駐車する従来の建物に比べて、自動車の動線を最適化することが可能になる。このように、従来は相互に分離されていた駐車スペースと利用スペース20を一体的に融合させた新しい建物1を構築することで、建物1を利用する高齢者、幼少層を扱う者、あるいは身体に障害を持つ等の利用者の利便性を向上させることができると共に、建物1の運営者にとっては建物の集客力を向上させることができる。
【0079】
また、下層部に利用スペース20及び一次駐車スペース30を設けると共に、上層部に二次駐車スペース50を設けたので、建物1を利用する利用者にとっては、外部からアクセスし易い下層部において、自動車を駐車して利用スペース20に移動したり、自動車に乗って退出できるので、利用者の動線を一層適正化することが可能になる。また、建物1の運営者にとっては、利用者が外部からアクセスし難いために相対的に付加価値が低い上層部に自動車を駐車させることができるので、建物1のスペースを付加価値に応じた形態で使用することができる。
【0080】
また、二次駐車スペース50にサービススペースを設けたので、二次駐車スペース50に駐車された自動車に対してサービスを容易に提供することが可能になり、利用者にとっては自己の自動車に対するサービスを受けることができて利便性が向上し、建物1の運営者にとっては利用者の自動車にサービスを提供することで建物1の集客力や収益性の向上に導く新事業の創出へ発展させることができる。
【0081】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2は、一次駐車スペースと二次駐車スペースとの相互間における自動車の移動を、係員による移動により行う形態であり、特に、建物の外周に走行路を設けた形態である。ただし、実施の形態1の構成及び方法と同様の構成及び方法については、実施の形態1で使用したものと同一の名称又は符号を付して説明を省略し、あるいは単に説明を省略する。
【0082】
(構成)
最初に、実施の形態2に係る建物の構成について説明する。図11は、実施の形態2に係る建物の構成を概念的に示す側面図、図12は、図11の建物の二次駐車スペースを含む平面図である。この建物100は、複数階層(本実施の形態2では5階層)の円筒形状のビルとして構成されており、下層部(本実施の形態2では1階から4階)には利用スペース120、一次駐車スペース130、及び移動スペース140が設けられ、上層部(本実施の形態2では5階)には二次駐車スペース150が設けられている。
【0083】
(構成−一次駐車スペース)
一次駐車スペース130は、一次入庫スペース131と一次出庫スペース132を有する。一次入庫スペース131は建物100の1階部分における図示左側端部に形成されている。利用者は、この一次入庫スペース131に自動車を駐車させてから利用スペース120に入る。係員は、一次入庫スペース131に駐車された自動車を、後述する走行路141を通って二次駐車スペース150に移動させる。図示では、建物100の一箇所のみに入庫口2や一次入庫スペース131を設けているが、複数箇所に設けてもよく、例えば、建物100の各側面に設けてもよい。また、図示では、一次入庫スペース131を1台分のスペースとして設けているが、実際には、複数台分のスペースとして設けると共に、複数の入庫口2を設けることで、複数台を同時に駐車可能としてもよい。
【0084】
一次出庫スペース132は建物100の1階部分における図示右側端部に形成されている。係員は、二次駐車スペース150から後述する走行路142を通って自動車を一次出庫スペース132に移動させて駐車させる。利用者は、利用スペース120の出口4から出て一次出庫スペース132に入り、自動車に乗って出庫口5を介して一次出庫スペース132から出て、退出ゲート11に向う。図示では、建物100の一箇所のみに出庫口5や一次出庫スペース132を設けているが、複数箇所に設けてもよく、例えば、建物100の各側面に設けてもよい。また、図示では、一次出庫スペース132を1台分のスペースとして設けているが、実際には、複数台分のスペースとして設けると共に、複数の出庫口5を設けることで、複数台を同時に駐車可能としてもよい。
【0085】
(構成−移動スペース)
移動スペース140は、本実施の形態2では、建物100の図示左端位置及び右端位置において、一次入庫スペース131から二次入庫スペース151に至るスペースと、二次出庫スペース155から一次出庫スペース132に至るスペースとして形成されている。この移動スペース140には、走行路141、142が形成されている。走行路141は、下層部の一次駐車スペース130における一次入庫スペース131から上層部の二次駐車スペース150に至る上り用の走行路である。走行路142は、上層部の二次駐車スペース150から下層部の一次駐車スペース130における一次出庫スペース132に至る下り用の走行路である。これら各走行路141、142は、円筒状の利用スペース120の周囲に配置されたものであって、少なくとも自動車が1台は通過できる幅の螺旋状のスロープとして形成されている。各走行路141、142の傾斜角度は、所定の建築関連法規を満たすように決定されており、例えば、17度以下となるように決定されている。また、各走行路141、142の途中に水平スペースを設けてもよい。また、各走行路141、142を自動車が2台以上通過可能となる幅(2車線以上の幅)で形成し、一部の1台分の幅の領域については、救急車や車両故障修理車の如き緊急自動車専用のスロープ等としてもよい。
【0086】
これら各走行路141、142は、建物100の外周に設けられている。すなわち、各走行路141、142の外側には、自動車の落下を防止するための防護壁101が設けられているが、建物100の実質的な外壁は利用スペース120の側壁121によって構成されており、各走行路141、142はこの側壁121の外側に設けられているため、各走行路141、142は実質的には建物100の外周に設けられている。このように、各走行路141、142を建物100の外周に設けているので、自動車にガソリン自動車が含まれる場合であっても、当該ガソリン自動車の排気ガスが防護壁101の相互間の開口102を介して建物100の外部に排気される。ただし、この点を除いて、各走行路141、142を建物100の外周に設けるか内部に設けるかは、後述する実施の形態3との区別のための概念であり、このような区別の必要がない場合には、防護壁101を建物100の外壁とし、各走行路141、142が建物100の内周に設けられているとしてもよい。なお、防護壁101の外面を緑化することで、建物100の環境性能や美観を向上させてもよい。
【0087】
本実施の形態2では、各走行路141、142の途中位置から各利用スペース120に利用者が移動することは想定していないが、このような移動を可能としてもよい。具体的には、各走行路141、142と複数階層の各階層の利用スペース120との相互間における利用者の出入りを可能とするための入口3や出口4を形成すると共に、各走行路141、142の途中位置の近傍であって、各階の利用スペース120に対応する位置に、自動車を一次駐車させるための一次駐車スペース130(一次入庫スペース131)を形成してもよい。例えば、各走行路141、142の側方に、自動車が1台以上駐車できる水平状の一次駐車スペース130を連続又は断続的に形成してもよい。このように、各階層の一次駐車スペース130を順次経てから二次駐車スペース150に至るように、走行路141を形成し、あるいは、二次駐車スペース150から各階層の一次駐車スペース130を順次経るように走行路142を形成した場合、利用者自身が走行路141を自動車で移動し、自己が利用したい階層の利用スペース120に対応する一次駐車スペース130に自動車を駐車させ、係員が、当該自動車を二次駐車スペース150まで移動させる。そして、利用者が利用を終えた利用スペース120に対応する一次駐車スペース130に、係員が、走行路142を介して自動車を移動させる。この構成によれば、利用スペース120が複数階層に設けられている場合であっても、利用者は所望の利用スペース120の近傍まで自動車で移動できるので、利用者の利便性を一層高めることができる。また、走行路141、142の途中位置に一次駐車スペース130を設けることで、この一次駐車スペース130についても、実施の形態1における一次入庫スペース131や一次出庫スペース132と同様に、複数の利用者間のコミュニティスペースとして利用することができる。
【0088】
(構成−二次駐車スペース)
二次駐車スペース150は、実施の形態1と同様に、二次入庫スペース151、待機スペース152、充放電スペース153、カーケアスペース154、及び二次出庫スペース155を含んで構成されている。ただし、この二次駐車スペース150は、天井がない開放空間として構成されている点において、実施の形態1の二次駐車スペース50と異なる。二次入庫スペース151にはパレット(図示省略)が設けられており、係員は、一次駐車スペース130の一次入庫スペース131から走行路141を通って移動した自動車を当該パレットに載せる。また、二次出庫スペース155にはパレット(図示省略)が設けられており、係員は、当該パレットから自動車を降ろし、走行路142を通って一次駐車スペース130の一次出庫スペース132に移動させる。
【0089】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果に加えて、一次駐車スペース130から二次駐車スペース150に至る走行路141、142を設けたので、自動車を移動させるための特別な移動機構が不要になるため、建物100の建設コストを低減することができる。
【0090】
また、建物100の外周に走行路141、142を設けたので、電気自動車に加えてガソリン自動車を走行させる場合であっても、ガソリン自動車から排出される排気ガスを建物100の外部に容易に排出することができ、従来と同様にガソリン自動車も利用可能な建物100とすることができる。また、建物100の外周に走行路141、142を設けることで、建物100の内部スペースを利用スペース120として有効利用できる。
【0091】
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3は、一次駐車スペースと二次駐車スペースとの相互間における自動車の移動を、係員による移動により行う形態であり、特に、建物の内部に走行路を設けた形態である。ただし、実施の形態2の構成及び方法と同様の構成及び方法については、実施の形態2で使用したものと同一の符号を付して説明を省略し、あるいは単に説明を省略する。
【0092】
(構成)
最初に、実施の形態3に係る建物の構成について説明する。図13は、実施の形態3に係る建物の構成を概念的に示す側面図、図14は、図13の建物の二次駐車スペースを含む平面図である。この建物200は、複数階層(本実施の形態3では5階層)の円筒形状のビルとして構成されており、下層部(本実施の形態3では1階から4階)には利用スペース220、一次駐車スペース230、及び移動スペース240が設けられ、上層部(本実施の形態3では5階)には二次駐車スペース250が設けられている。
【0093】
(構成−利用スペース)
利用スペース220は、建物200の下層部(本実施の形態3では1階から4階)において、移動スペース240を囲むように、図示左右の中央位置と、図示左端位置及び図示右端位置とに設けられている。これら各位置の利用スペース220は、相互に分離してもよいが、相互に連結して利用者が移動可能とすることが好ましく、例えば、走行路241、242のスロープの間に各利用スペースを結ぶ連絡通路を設けてもよい。
【0094】
(構成−一次駐車スペース)
一次駐車スペース230は、一次入庫スペース231と一次出庫スペース232を有する。一次入庫スペース231は建物200の1階部分における図示左側端部に形成されており、一次出庫スペース232は建物200の1階部分における図示右側端部に形成されている。
【0095】
(構成−移動スペース)
移動スペース240は、本実施の形態3では、建物200の図示左右中央位置に対してやや左側寄りの位置及びやや右側寄りの位置において、一次入庫スペース231から二次入庫スペース251に至るスペースとして形成されている。この移動スペース240には、実施の形態2と同様の上り用の走行路241と下り用の走行路242が形成されている。これら各走行路241、242は、建物200の内部に設けられている。すなわち、各走行路241、242は、利用スペース220に挟まれる位置に設けられており、建物200の外部から遮断されている。しかしながら、自動車が電気自動車である場合には、ガソリン自動車に特有の排気ガス、騒音、及び制御の困難性等の問題が生じないため、このように走行路241、242を建物200の内部に設けることが可能になる。
【0096】
各走行路241、242の途中位置から各利用スペース220に利用者が移動することは想定していないが、このような移動を可能としてもよい。具体的には、実施の形態2で説明した構成と同様に、走行路241、242の途中位置に一次駐車スペース230を設けることで、この一次駐車スペース230についても、実施の形態1における一次入庫スペース31や一次出庫スペース32と同様に、複数の利用者間のコミュニティスペースとして利用することができる。特に、建物200の内部に設けた走行路241、242の途中位置に一次駐車スペース230を設けることで、この一次駐車スペース230に関しても、全天候型の複数の利用者間のコミュニティスペースとして利用することができる。
【0097】
(構成−二次駐車スペース)
二次駐車スペース250は、実施の形態1と同様に、二次入庫スペース251、待機スペース252、充放電スペース253、カーケアスペース254、及び二次出庫スペース255を含んで構成されている。
【0098】
(実施の形態3の効果)
このように実施の形態3によれば、実施の形態2と同様の効果に加えて、建物200の内部に走行路241、242を設けたので、例えば、走行路241、242の途中位置に一次駐車スペース230を設けた場合には、この一次駐車スペース230を全天候型の複数の利用者間のコミュニティスペースとして利用することができる。
【0099】
〔各実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0100】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0101】
(建物の構成について)
建物の全体や各部の形状は、任意に変更することができ、例えば、三角錘形状のビルや、複数種類の多角錐形及び円筒形を組み合わせた複合形状としてもよい。また、建物の下層部に利用スペース及び一次駐車スペースを設けると共に、上層部に二次駐車スペースを設ける場合においても、これら下層部や上層部は必ずしも地上部に限定されるものではなく、複数の地下階層の建物において、その下層部に利用スペース及び一次駐車スペースを設けると共に、上層部に二次駐車スペースを設けてもよい。また、この場合においても、利用スペースや一次駐車スペースは下層部に限定されず、例えば、1階に利用スペースや一次駐車スペース、2階に二次駐車スペース、3階に利用スペースを設ける等、利用スペースや一次駐車スペースを下層部以外に設けてもよく、二次駐車スペースを上層部以外に設けてもよい。
【0102】
(一次出庫位置について)
一次出庫位置を複数設けた場合には、これら複数の一次出庫位置の中で、各自動車を実際に一次出庫する位置を、各自動車毎に決定する。この決定方法としては、例えば、入庫制御処理において、利用者が自己が利用する利用スペースに最も近い一次出庫位置を選択し、当該選択した一次出庫位置を、発券機7に設けた図示しない入力部を介して入力することで行ってもよい。あるいは、入庫制御処理において、仮の出庫予定日時に空いている一次出庫位置を入庫制御部65aが自動的に特定し、当該特定した一次出庫位置を、仮の出庫予定日時等と同様に利用者に承認してもらうことで決定してもよい。このように決定した一次出庫位置は、仮の出庫予定日時等と同様に利用履歴情報DB64cに記録しておく。このような処理を行うことで、一次出庫位置を複数設けた場合であっても、利用者や建物側にとって最も都合がよい一次出庫位置において、自動車を一次出庫することが可能になる。
【0103】
また、このように一次出庫位置を決定した場合には、二次駐車制御処理において、出庫予定日時の到来を利用者にメールで送信する際、一次出庫位置についても、利用履歴情報DB64cから取得してメールに含めることが好ましい。このような処理を行うことで、一次出庫位置を複数設けた場合であっても、利用者を適切な一次出庫位置に案内することができ、利用者の利便性を一層高めることができる。
【0104】
(サービスについて)
上記各実施の形態では、サービスとして、充電、放電、及びカーケアを行うものとして説明したが、いずれか一部のみを行うようにしてもよく、あるいは、他のサービスを行うようにしてもよい。
【0105】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成できる。例えば、駐車管理制御装置60の機能の一部を他の機器に持たせることもでき、駐車管理制御装置60から発券機7、充放電端末、あるいは精算機10を介して行うものとして説明した処理の一部を、これら発券機7、充放電端末、あるいは精算機10が単独で行うようにしてもよい。この場合には、これら発券機7、充放電端末、あるいは精算機10の如き各種の機器と駐車管理制御装置60とにより構成される駐車管理制御システムを構築することができる。
【0106】
(放送手段について)
充電単価や放電単価等の各種の情報を放送する放送手段としては、上述の掲示やFM放送のための手段以外にも、例えば、デジタルTV網、インターネット(Wi−FiやWiMaxの如き無線通信網を含む)、携帯電話等の電話網、GPSを用いたカーナビ位置情報システム、電子カード(ETCカード、RFID、ICカード)を用いた情報通信システムを適用してもよい。
【符号の説明】
【0107】
1、100、200 建物
2 入庫口
3 入口
4 出口
5 出庫口
6 進入路
7 発券機
8 進入ゲート
9 退出路
10 精算機
11 退出ゲート
12 パレット
13 掲示板
14 FM送信装置
15 FMアンテナ
20、120、220 利用スペース
30、130、230 一次駐車スペース
31、131、231 一次入庫スペース
32、132、232 一次出庫スペース
40、140、240 移動スペース
50、150、250 二次駐車スペース
51、151、251 二次入庫スペース
52、152、252 待機スペース
53、153、253 充放電スペース
54、154、254 カーケアスペース
55、155、255 二次出庫スペース
60 駐車管理制御装置
61 入力部
62 出力部
63 ネットワークIF
64 記憶部
64a 運転者情報DB
64b 自動車情報DB
64c 利用履歴情報DB
65 制御部
65a 入庫制御部
65b 二次駐車制御部
65c 出庫制御部
101 防護壁
102 開口
121 側壁
141、142、241、242 走行路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の駐車スペースを備える建物であって、
当該建物に自動車で来た利用者が当該自動車を駐車した後に利用する利用スペースと、
前記利用スペースの近傍に配置され、当該利用スペースに対して人が出入り可能となるように設定されたスペースであって、自動車を一次的に駐車するための一次駐車スペースと、
前記一次駐車スペースに駐車された自動車を移動して駐車するためのスペースであって、当該自動車に対する所定のサービスを行うためのサービススペースを有する二次駐車スペースとを備え、
前記一次駐車スペースと前記二次駐車スペースとの相互間において自動車を移動可能とした、
駐車スペース付き建物。
【請求項2】
上層部と下層部とを備え、
少なくとも前記下層部に、前記利用スペース及び前記一次駐車スペースを設け、
少なくとも前記上層部に、前記二次駐車スペースを設けた、
請求項1に記載の駐車スペース付き建物。
【請求項3】
前記下層部の前記一次駐車スペースから前記上層部の前記二次駐車スペースに至る走行路を設けることにより、前記一次駐車スペースと前記二次駐車スペースとの相互間において自動車を移動可能とした、
請求項2に記載の駐車スペース付き建物。
【請求項4】
当該建物の外周に前記走行路を設けた、
請求項3に記載の駐車スペース付き建物。
【請求項5】
当該建物の内部に前記走行路を設けた、
請求項3又は4に記載の駐車スペース付き建物。
【請求項6】
前記下層部を複数階層により構成すると共に、これら複数階層における各階層に前記利用スペース及び前記一次駐車スペースを設け、
前記走行路を、前記下層部の前記複数階層の前記一次駐車スペースを順次経てから前記上層部の前記二次駐車スペースに至るように、あるいは、前記上層部の前記二次駐車スペースから前記下層部の前記複数階層の前記一次駐車スペースを順次経るように、形成した、
請求項4又は5に記載の駐車スペース付き建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−144915(P2012−144915A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4508(P2011−4508)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)