説明

駐車場フロア構造およびそれを用いた駐車場

【課題】駐車フロア構造およびそれを用いた駐車場において、フロア内の排水を良好に行うことができるとともに、安定した駐車を行うことができるようにする。
【解決手段】平面視中央部に設けられた駐車領域7Aと、駐車領域7Aを囲むように設けられた走行車路5と、走行車路5を挟んで駐車領域7Aに対向して設けられた駐車領域7B、7C、7D、7Eとを備える駐車フロア10の構造であって、駐車領域7Aの駐車面が略水平面であり、走行車路5の路面および駐車領域7B、7C、7D、7Eの駐車面が、駐車領域7Aの外周部から駐車場外縁部に向けて下降する水勾配を形成する緩斜面であり、駐車領域7B、7C、7D、7Eに車両を駐車場外縁部側で係止する車止めブロック7bが設けられた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場フロア構造およびそれを用いた駐車場に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車フロアを複数積層した層状駐車部と、それらの間を斜面で連結した昇降部とを備える自走式駐車場が知られている。
このような自走式駐車場では、駐車フロア内に各駐車区画に向かう走行車路を備え、その走行車路が、上階および下階に通じる昇降部の斜面に接続され、例えば、下階の昇降部から上った車両が駐車フロアの走行車路を周回し、上階に向かう昇降部を昇ることで、螺旋状に移動することができるようになっている。この場合、駐車区画は、走行車路の内側および外側の駐車領域にそれぞれ複数配列されるのが一般的である。
例えば、特許文献1には、このような自走式駐車場の一例である自走式立体駐車場が記載されている。
一方、駐車場フロアの降水を排水するため、駐車場フロアに水勾配を設けることが知られている。このような水勾配としては、駐車場フロアを一定方向に傾斜させるか、山形に傾斜させることが一般的である。
例えば、特許文献2には、断面山形の駐車場の山形の頂部に沿って通路部を設け、山形の両側の傾斜面に駐車部を配列した無蓋舗装駐車場が記載されている。
【特許文献1】特開2005−105513号公報(図1)
【特許文献2】特開2003−34972号公報(図1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の駐車場フロア構造およびそれを用いた駐車場には以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、特に水勾配が設けられていないため駐車場フロアにおける降水の排水が良好に行えないという問題がある。
特許文献2に記載の技術のように、山形の水勾配を設けることも考えられるが、自走式駐車場では、駐車フロアを有効に活用するため、走行車路に囲まれた内側にも駐車領域を配置する必要があり、このような走行車路の内側の駐車領域では、走行車路に向かって下降する傾斜面に駐車することになってしまう。そのため、例えばサイドブレーキを忘れた場合など、傾斜面に沿って車両が滑り出して事故を起こすような可能性があるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、フロア内の排水を良好に行うことができるとともに、安定した駐車を行うことができる駐車フロア構造およびそれを用いた駐車場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、平面視中央部に設けられた第1の駐車領域と、該第1の駐車領域を囲むように設けられた走行車路と、該走行車路を挟んで前記第1の駐車領域に対向して設けられた第2の駐車領域とを備える駐車場フロア構造であって、前記第1の駐車領域の駐車面が略水平面であり、前記走行車路の路面および前記第2の駐車領域の駐車面が、前記第1の駐車領域の外周部から駐車場外縁部に向けて下降する水勾配を形成する緩斜面であり、前記第2の駐車領域に車両を前記駐車場外縁部側で係止する車止めが設けられた構成とする。
この発明によれば、第1の駐車領域の駐車面は略水平面であるため安定した駐車が可能となる。また、第2の駐車領域の駐車面は駐車場外縁部側に傾斜し、かつ駐車場外縁部側に車止めが設けられるので、安定した駐車が可能となる。
また、第1の駐車領域を囲む走行車路と第2の駐車領域とは、第1の駐車領域の外周部から駐車場外縁部に向けて下降する水勾配を有する緩斜面とされるので、駐車場フロア内の降水などを駐車場外縁部に確実に排水することができる。
ここで、略水平面とは、施工上避けられない凹凸や、水を走行車路側に排水可能かつ緩斜面よりもさらに緩い傾斜面であって、しかも駐車した車両がブレーキを外したときに自然に第1の駐車領域から外側に滑り出さない傾斜面などを含むものとする。例えば、車両が入出車される駐車方向と直交する方向に傾斜する傾斜面は、ブレーキを外したときも車両が自然には駐車領域に滑り出さない傾斜面になっている。
【0006】
請求項2に記載の発明では、駐車場において、請求項1に記載の駐車場フロア構造を複数積層した層状駐車部と、前記層状駐車部の各階を傾斜面で連結する昇降部とを備える構成とする。
この発明によれば、請求項1に記載の駐車場フロア構造を備えるので、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の駐車場フロア構造およびそれを用いた駐車場によれば、駐車場フロア内の排水を良好に行うことができるとともに、安定した駐車を行うことができることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下では、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
本発明の実施形態に係る駐車場フロア構造およびそれを用いた駐車場について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る駐車場の駐車場フロア構造を示す平面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、図1のB−B断面図である。図4は、図1のC−C線に沿う断面の概略の高さ変化を示す模式断面図である。図5は、図1のD−D線に沿う断面の概略の高さ変化を示す模式断面図である。
【0009】
本実施形態の駐車場1は、図1〜3に示すように、本発明の実施形態に係る駐車場フロア構造を有する駐車フロア10が、例えば、4階層に重ねられた自走式の立体駐車場である。
駐車場1の概略構成は、駐車フロア10が複数の柱8を介して積層された層状駐車部2と、層状駐車部2に隣接して設けられ層状駐車部2の各階を傾斜面3aで連結する昇降部3とからなる。本実施形態での各階の高さピッチは3000mmである。
【0010】
まず、駐車フロア10の平面視の配置構成について説明する。
駐車フロア10は、中央部に平面視矩形状の駐車領域7A(第1の駐車領域)が設けられ、その周囲に、車両を走行して移動したり、駐車領域7Aに車両を出し入れしたりするための、環状の走行車路5が設けられている。
走行車路5の駐車場外縁部側には、駐車領域7Aの各辺に面する方向に延ばされた駐車領域7B、7C、7D、7E(第2の駐車領域)が設けられている。
ここで、駐車領域7Bは、昇降部3に隣接する側に配置されている。駐車領域7Dは、駐車領域7Bと対向する位置に配置されており、駐車領域7C、7Eがそれらの対向方向と直交する方向において、互いに対向するように配置されている。そして、駐車領域7Cは、後述する層状駐車部2の登り口側に配置され、駐車領域7Eは、同じく降り口側に配置されている。
【0011】
駐車領域7A、7B、7C、7D、7Eは、それぞれ、車両を1台ずつ駐車するために矩形の短辺側が開口して入り口7cを形成した駐車区画ブロック7aが複数設けられている。これらの数は、各駐車領域の広さなどに応じて適宜数に設定することができるが、本実施形態では、隣接する柱8のスパン内に3つずつ設けた例を示している。
各駐車区画ブロック7aの入り口7cに対向する短辺側には、それぞれ車止めブロック7b(車止め)が設けられている。
車止めブロック7bは、フロア面を流れる降水を排水することができるように、水抜き用の隙間や貫通孔が設けられている。本実施形態では、車両の左右のタイヤを係止する位置に2つのブロックが設けられ、その間に、排水可能な隙間が設けられている。
【0012】
本実施形態では、駐車領域7Aには、複数の駐車区画ブロック7aが、走行車路5に面する2つの長辺側に入り口7cを向けて2列に設けられている。
また、駐車領域7B、7C、7D、7Dでは、複数の駐車区画ブロック7aが、走行車路5に面する側に入り口7cを向けて1列に設けられている。
【0013】
駐車領域7Bの長手方向の両端側には、駐車領域7C、7Aで挟まれた走行車路5と、駐車領域7E、7Aで挟まれた走行車路5とにそれぞれ接続する進入路4、6が設けられている。
【0014】
駐車フロア10の高さ方向の形状は、フロア面上の降水などを駐車フロア10の外縁部に設けられた不図示の排水口、排水路に導くことができるように略四角錐台状とされている。この断面形状について、図4、5を参照して説明する。なお、図1に記載された数字は、駐車フロア10の高さの基準面11(図4、5参照)からの高さ(単位mm)を示す(以下、誤解のおそれのない限り、基準面11からの高さを、単に、高さと称する)。
【0015】
駐車フロア10の外縁部、すなわち、駐車領域7B、7C、7D、7Eの車止めブロック7bが設けられた側の端部、および進入路6の昇降部3側の端部は、いずれも基準面11上に配置されている。
駐車領域7Aは、高さ180mmの位置に水平面として設けられている。そして、その外周側の走行車路5と駐車領域7B、7C、7D、7Eに、水勾配を形成する略一様な緩斜面が形成されている。
本実施形態では、これら緩斜面の勾配の大きさは、駐車領域7C、7E側(図4参照)が、約1.4%、駐車領域7B、7D側(図5参照)が、約1.5%である。
【0016】
ただし、図1に示すように、進入路4は昇降部3に接続するため、駐車領域7Bに隣接する辺が、走行車路5から昇降部3に向かう方向に、高さが70mmから300mmに上がる勾配を備え、外縁部側が同じく、高さが70mmから0mmに下がる勾配を備えることで、ねじれた傾斜面を形成している。そして、駐車領域7Bに対しては段差が形成されている。そのため、全体として駐車領域7Bから駐車領域7Cに向かう方向の外縁部に向かって傾斜している。
【0017】
昇降部3の概略構成は、図1、2に示すように、1つの駐車フロア10の進入路4に接続された登り口傾斜面3bと、登り口傾斜面3bから上階側に延ばされた傾斜面3aと、上階側の進入路6に接続された降り口傾斜面3cとが、階層ごとに設けられてなる。
図1において、傾斜面3Aは、図示された駐車フロア10の上階に向かう傾斜面3aであり、傾斜面3Bは、図示された駐車フロア10の下階に向かう傾斜面3aである。
【0018】
各傾斜面3aは、高さ300mm〜2700mmの範囲に、勾配が断面略S字状に変化する斜面として設けられている。本実施形態の勾配は、上下端から2500mmの範囲が6%、その中間部の勾配が12%となる斜面を採用している。
【0019】
登り口傾斜面3bは、進入路4と傾斜面3Aとの間で車両がカーブするための車路を形成するもので、カーブを下から上に登る際に、カーブ外周側が低い状態から水平な状態まで順次変化する傾斜を有する。本実施形態では、図1に示すように、内側のコーナーが高さ300mmとされ、外側のコーナーが、進入路4から傾斜面3aに向けて、高さ0mm、100mm、300mmとされている。そのため、外周部での勾配が、1.7%、2.7%と変化して、進入路4の0mmの高さから、傾斜面3Aの下端の300mmの高さまでを接続する緩斜面が形成されている。
降り口傾斜面3cは、進入路6と傾斜面3Bとの間で車両がカーブするための車路を形成するものであり、登り口傾斜面3bと同様の緩斜面を形成している。すなわち、本実施形態では、図1に示すように、内側のコーナーが高さ0mmとされ、外側のコーナーが、進入路6から傾斜面3aに向けて、高さ0mm(下階の基準面11から3000mm)、−100mm(下階の基準面11から2900mm)、−300mm(下階の基準面11から2700mm)とされている。そのため、外周部での勾配が、1.7%、2.7%と変化して、進入路6の0mmの高さから、傾斜面3Bの上端の−300mmの高さまでを接続する緩斜面が形成されている。
【0020】
次に、駐車フロア10および駐車場1の作用について説明する。
駐車場1は、昇降部3を有するので、傾斜面3aを登り降りして、各階の駐車フロア10に、進入路4、6を通って入出車することができる。このとき、傾斜面3aの上下端にそれぞれ傾斜面3aの勾配より緩い勾配を有する登り口傾斜面3b、降り口傾斜面3cを備えるため、傾斜面3aに断面略S字状の勾配を設けていることと相俟って、登り降りの際に斜面と車体とのこすれを防止することができる。
【0021】
進入路4(6)を通って入り口から駐車フロア10に入った車両は、各駐車区画ブロック7aが、走行車路5に向けて入り口7cを備えるため、走行車路5から所望の駐車区画ブロック7aに入車して駐車することができる。
あるいは、走行車路5を通って進入路6(4)から昇降部3に入り、上階(下階)に移動することができる。
【0022】
各駐車フロア10では、駐車領域7Aから駐車フロア10の外縁部に向けて水勾配が設けられているので、フロア面に入り込んだ降水などが、図1の直線矢印に示すように、走行車路5、駐車領域7B(7C、7C、7D、7E)を通して、外縁部の各辺に導かれる。そして、外縁部に設けられた不図示の排水口、排水路を通して排水される。
また、進入路4に入り込んだ降水などは、その傾斜に沿って駐車領域7C側かつ登り口傾斜面3b側の外縁部に導かれて排水される。
また、進入路6に入り込んだ降水などは、傾斜面3a、登り口傾斜面3bを下降し、最終的に下階の進入路4の場合と同様な外縁部から排水される。また必要に応じて、傾斜面3aの側方や、降り口傾斜面3cの外周部に排水口、排水路を設けておき、一部または全部が、傾斜面3aを下降することなく、降り口傾斜面3cの外縁部で排水されるようにしてもよい。
【0023】
このため、駐車フロア10内に入り込んだ降水などが良好に排水され、降水などが走行車路5などにたまらないようにすることができる。昇降部3に入り込んだ降水なども、走行車路5まで到達することなく排水される。
そのため、走行車路5を走行中に、水をはね飛ばしたり、スリップしたりすることを防止でき、使い勝手がよく安全な駐車場とすることができる。
【0024】
これらの水勾配は、走行車路5、駐車領域7B、7C、7D、7Eに設けられているが、いずれも緩斜面のため、車両の走行には影響しないものである。また、駐車領域7B、7C、7D、7Eには、傾斜方向に車止めブロック7bが設けられているので、駐車した車両がサイドブレーキなどをかけ忘れた場合でも、斜面に沿って滑り出したりすることなく、安定して駐車することができる。
一方、駐車領域7Aは、水平面のため、安定して駐車することができる。
【0025】
このように、本実施形態の駐車フロア10、それを用いた駐車場1によれば、フロア内の排水を良好に行うことができるとともに、安定した駐車を行うことができる。
【0026】
なお、上記の説明では、駐車場フロアが階層構造を有し、昇降部とともに自走式の立体駐車場を構成する場合の例で説明したが、本発明に係る駐車場は、これに限定されるものではなく、駐車場フロア構造を単独に備えるものであってもよい。
例えば、地表に設けられた駐車場や、ビルの屋上に設けられた駐車場などに好適に適用することができる。
【0027】
また、上記の説明では、第1の駐車領域が水平面から構成された場合の例で説明したが、厳密な水平面とする必要はなく、例えば、施工上避けられない凹凸などを含む略水平面でもよい。
また、水を走行車路側に排水可能かつ緩斜面よりもさらに緩い傾斜面であってしかも駐車した車両がブレーキを外したときに自然に第1の駐車領域から外側に滑り出さない傾斜を有する微小な傾斜面を備えた略水平面でもよい。例えば、各車両の駐車方向に直交する方向に微小な傾斜を有する略水平面であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る駐車場の駐車場フロア構造を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1のC−C線に沿う断面の概略の高さ変化を示す模式断面図である。
【図5】図1のD−D線に沿う断面の概略の高さ変化を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 駐車場
2 層状駐車部
3 昇降部
3a、3A、3B 傾斜面
3b 登り口傾斜面
3c 降り口傾斜面
5 走行車路
7A 駐車領域(第1の駐車領域)
7B、7C、7D、7E 駐車領域(第2の駐車領域)
7a 駐車区画ブロック
7b 車止めブロック(車止め)
10 駐車フロア(駐車場フロア)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視中央部に設けられた第1の駐車領域と、該第1の駐車領域を囲むように設けられた走行車路と、該走行車路を挟んで前記第1の駐車領域に対向して設けられた第2の駐車領域とを備える駐車場フロア構造であって、
前記第1の駐車領域の駐車面が略水平面であり、
前記走行車路の路面および前記第2の駐車領域の駐車面が、前記第1の駐車領域の外周部から駐車場外縁部に向けて下降する水勾配を形成する緩斜面であり、
前記第2の駐車領域に車両を前記駐車場外縁部側で係止する車止めが設けられたことを特徴とする駐車場フロア構造。
【請求項2】
請求項1に記載の駐車場フロア構造を複数積層した層状駐車部と、
前記層状駐車部の各階を傾斜面で連結する昇降部とを備える駐車場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−144443(P2008−144443A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331840(P2006−331840)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)