説明

駐車場管理システム

【課題】駐車場管理システムにおいて、需要に応じた駐車場の能力を確保しながら、共用部設備の省エネルギ化の向上を図ることである。
【解決手段】駐車場管理システム10は、駐車場本体12と制御装置70とを含んで構成される。駐車場本体12には、車両計数部30,32、誘導表示部40,42、共用部設備である照明設備50、空調設備52、換気設備54、エスカレータ設備56、エレベータ設備58が備えられ、制御装置70は、車両計数部30,32の計数に基づいて各駐車ゾーン20,22,24の使用効率を算出するゾーン別使用効率算出処理部72と、ゾーン別使用効率に応じて来場した車両に対し駐車すべき駐車ゾーンを誘導指示するゾーン別誘導指示処理部74と、誘導指示ゾーンの設定に連動して共用部設備の作動モードを変更する共用部設備運転処理部76とを含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場管理システムに係り、特に、複数の駐車ゾーンを有する駐車場についての駐車場管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ショッピングセンタ、ショッピングモール、郊外型大型店舗等の大型商業施設には、広い駐車場や立体駐車場等が併設されている。これらの駐車場に車両を効率よく駐車させるために、入退場する車両の計数装置や、案内表示装置または誘導装置等が設けられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、大型駐車場自動管理システムとして、駐車場の入口において車両のナンバープレートの認識を行い、制御部は、その情報と、時間情報と、駐車場内の空き情報とに基づいて効率のよい駐車配置を判断し、その結果を車両誘導に必要な情報として表示装置に表示することが開示されている。また、各駐車位置に接車センサを設けて車両駐車を検知して、表示装置の表示を消させるとともに、制御部に駐車完了を知らせること、また、駐車場退場の車両のナンバープレートの認識を行い、入場時のデータをもとに料金集計等を行うことが述べられている。
【0004】
特許文献2には、駐車場案内方法として、駐車場内に滞留する車の台数と、その駐車場から単位時間あたりに出庫する車の台数と、その駐車場の受け入れ可能台数との関係を示す特性関数を用いて、時々刻々の受け入れ可能台数を推定することが開示されている。そして、受け入れ可能台数から入庫待ち台数を減算して受け入れ余力台数を求め、これに基いて各駐車場ごとに、おすすめ度を表示することが述べられている。なお、特許文献3には、駐車場管理装置として、駐車料金精算機またはラグタイムリーダを用いて、駐車時間が短いときに割引サービスを付与することが開示されている。
【0005】
特許文献4には、普通車エリアと大型車エリアとを有する駐車場の混雑度判定システムとして、出入口にナンバープレート読取装置を設け、これに基づいて普通車エリアと大型車エリアの混雑度を計算し、その結果をエリアごとに「満空」表示して後続車に知らせることが開示されている。
【0006】
特許文献5には、駐車場の管理方法として、駐車場を受付に近い方から順番に平行な数ブロックに仕切り、さらに各ブロックを複数台の自動車が縦列駐車できる複数の小ブロックに区分けし、到着車両を最後尾の自動車の後に縦列駐車させて待機させ、受付の呼び出し表示を受付に最も近いブロックの各小ブロックごとに配置する構成が開示されている。ここでは、平行に仕切られた前のブロックの小ブロックが呼び出されると、その小ブロックの自動車が全部一斉に受付を済ませるので、その空いた小ブロックに、平行に仕切られた後のブロックの同じ小ブロックの自動車が全部前に詰めさせるようにする。また、入場台数カウンタと退場台数カウンタを備え、駐車場入口で到着車を検出すると、どのブロックのどの小ブロックに行くか、駐車位置を示す駐車位置指示器が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−266286号
【特許文献2】特開平9−91593号公報
【特許文献3】特開2005−222190号公報
【特許文献4】特開2001−291194号公報
【特許文献5】特開平6−309597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術によれば、駐車場における車両の入退場状態を把握し、それに基づいて車両の案内表示等によって誘導を行うことができる。ところで、大型商業施設に併設される駐車場は、大型商業施設の混雑度合いに対応して、その使用効率に大きな変動がある。例えば、日曜祭日やイベント日には満車状態が継続する一方で、平日昼間には駐車能力の数分の1の駐車に過ぎないことも多い。このように使用効率に大きな変動がある場合、照明等の駐車場の共用部の設備を常時稼動させることは、電力を無駄に消費し、温室効果ガスの排出等の面からも好ましくない。一方で、平日休日等の区分に応じて一律に共用部の設備の稼動を停止することはユーザにとって不便なこともある。したがって、需要に応じた駐車場の能力を確保しながら、共用部設備の省エネルギ化の向上を図ることが望まれる。
【0009】
本発明の目的は、需要に応じた駐車場の能力を確保しながら、共用部設備の省エネルギ化の向上を図ることができる駐車場管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る駐車場管理システムは、複数の駐車ゾーンを有する駐車場について入退場する車両または駐車中の車両を計数する車両計数部と、駐車場に来場する車両に対し、複数の駐車ゾーンのいずれか1を誘導指示ゾーンとして誘導する誘導表示部と、複数の駐車ゾーンのそれぞれに設けられる共用部設備と、車両計数部の計数に基づいて算出される各駐車ゾーンの使用効率に基づき、使用効率が予め定めたゾーン拡張閾値以上のときは誘導指示ゾーンの数を拡張し、使用効率が予め定めたゾーン縮小閾値以下のときは誘導指示ゾーンの数を縮小し、その拡張または縮小に連動して各駐車ゾーンの共用部設備の作動モードを変更する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る駐車場管理システムにおいて、制御部は、ゾーン縮小閾値を超える使用効率を有する誘導指示ゾーンについて、共用部設備を完全稼動させるモードAと、ゾーン縮小閾値以下の使用効率を有する誘導指示ゾーンについて、共用部設備のうち、空調設備と換気設備の少なくとも一方を停止させ、照明設備と乗客運搬設備の少なくとも一方を省電的に稼動させるモードBと、使用効率がゼロの駐車ゾーンについて、共用部設備を完全停止させるモードCと、の間で共用部設備の作動モードを変更することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る駐車場管理システムにおいて、制御部は、誘導指示ゾーン以外で車両がいる駐車ゾーンについて、モードBを用いることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る駐車場管理システムにおいて、制御部は、モードBとして、乗客用運搬設備の運搬速度を低速化させるモードを用いることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る駐車場管理システムにおいて、制御部は、車両計数部の計数に基づいて、複数の駐車ゾーンのそれぞれについて使用比率であるゾーン別使用比率を算出する使用比率算出手段と、駐車場に車両が来場する際に、まだ誘導指示ゾーンの設定が行われていないときは第1ゾーンを誘導指示ゾーンとして設定し、第1ゾーンの共用部設備の作動モードをモードAとして、誘導表示部に第1ゾーンを表示させる初期設定手段と、駐車場に車両が来場する際に、既に誘導指示ゾーンの設定が行われているときは、使用比率が予め定めたゾーン拡張閾値未満である誘導指示設定済みゾーンの有無を判断する拡張閾値判断手段と、判断の結果、ゾーン拡張閾値未満の誘導指示設定済みゾーンがある場合は、そのゾーンを誘導指示ゾーンに指定して誘導表示部にそのゾーンを表示させ、ゾーン拡張閾値未満の設定済みゾーンがない場合は、複数の駐車ゾーンの数の限度範囲内で新しく誘導指示ゾーンを拡張し、拡張されたゾーンの共用部設備の作動モードをモードAとして、誘導表示部にその拡張されたゾーンを表示させるゾーン別誘導指示部と、を含むことが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る駐車場管理システムにおいて、制御部は、車両計数部の計数に基づいて、複数の駐車ゾーンのそれぞれについて使用比率であるゾーン別使用比率を算出する使用比率算出手段と、使用効率がゼロを超えゾーン縮小閾値以下である誘導指示設定済みのゾーンの有無を判断する縮小閾値判断手段と、判断の結果、使用効率がゼロを超えゾーン縮小閾値以下の設定済みゾーンがある場合は、そのゾーンについて誘導指示設定を取り消し、そのゾーンの共用部設備の作動モードをモードBとして、誘導表示部にそのゾーンへの誘導指示表示を禁止するゾーン縮小指示手段と、を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記構成により、駐車場管理システムは、各駐車ゾーンの使用効率に基づき、使用効率が予め定めたゾーン拡張閾値以上のときは誘導指示ゾーンの数を拡張し、使用効率が予め定めたゾーン縮小閾値以下のときは誘導指示ゾーンの数を縮小し、その拡張または縮小に連動して各駐車ゾーンの共用部設備の作動モードを変更する。これにより、需要に応じた駐車場の能力を確保しながら、共用部設備の省エネルギ化の向上を図ることができる。
【0017】
また、駐車場管理システムにおいて、共用部設備の作動モードを、共用部設備を完全稼動させるモードAと、共用部設備のうち、空調設備と換気設備の少なくとも一方を停止させ、照明設備と乗客運搬設備の少なくとも一方を省電的に稼動させるモードBと、共用部設備を完全停止させるモードCの間で変更する。これにより、需要に応じた駐車場の能力を確保しながら、きめ細かく省エネルギ化の向上を図ることができる。
【0018】
また、駐車場管理システムにおいて、誘導指示ゾーン以外で車両がいる駐車ゾーンについてモードBを用いることとするので、誘導指示ゾーン以外を利用したいお客、誤って誘導指示ゾーン以外に駐車したお客等にとってフレンドリな対応を図ることができる。
【0019】
また、駐車場管理システムにおいて、モードBとして、乗客用運搬設備の運搬速度を低速化させるモードを用いる。例えば、エスカレータ設備等では、お客の運搬に支障がない程度に運搬速度を落とすことで、電力消費量を大幅に抑制することが可能である。上記構成によれば、お客に違和感等を与えることなく、省エネルギ化の向上を図ることができる。
【0020】
また、駐車場管理システムにおいて、駐車場に車両が来場する際に、まだ誘導指示ゾーンの設定が行われていないときは第1ゾーンを誘導指示ゾーンとして設定し、第1ゾーンの共用部設備の作動モードをモードAとして、誘導表示部に第1ゾーンを表示させる。また、既に誘導指示ゾーンの設定が行われているときは、使用比率がゾーン拡張閾値未満である誘導指示設定済みゾーンの有無を判断し、ゾーン拡張閾値未満の誘導指示設定済みゾーンがある場合は、そのゾーンを誘導指示ゾーンに指定して誘導表示部にそのゾーンを表示させる。また、ゾーン拡張閾値未満の設定済みゾーンがない場合は、複数の駐車ゾーンの数の限度範囲内で新しく誘導指示ゾーンを拡張し、拡張されたゾーンの共用部設備の作動モードをモードAとして、誘導表示部にその拡張されたゾーンを表示させる。このようにして、駐車場の使用比率に応じて順次駐車ゾーンを拡張しながら誘導指示を行い、これに連動させて自動的に共用部設備の作動モードを切り替えるので、需要に応じた駐車場の能力を確保しながら、きめ細かく省エネルギ化の向上を図ることができる。
【0021】
また、駐車場管理システムにおいて、使用効率がゼロを超えゾーン縮小閾値以下である誘導指示設定済みのゾーンの有無を判断し、判断の結果、使用効率がゼロを超えゾーン縮小閾値以下の設定済みゾーンがある場合は、そのゾーンについて誘導指示設定を取り消し、そのゾーンの共用部設備の作動モードをモードBとして、誘導表示部にそのゾーンへの誘導指示表示を禁止する。このように、使用効率が下がってきたゾーンへは誘導指示を行わずそれに連動して共用部設備の作動モードも変更するので、駐車をできるだけ少ないゾーンに集中化でき、また省エネルギ化の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る実施の形態の駐車場管理システムの構成を説明する図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の駐車場管理システムにおいて、駐車ゾーンの例を説明する図である。
【図3】本発明に係る実施の形態の駐車場管理システムにおいて、共用部設備の作動モードの内容を説明する図である。
【図4】本発明に係る実施の形態の駐車場管理システムにおいて、駐車場管理手順を説明するフローチャートである。
【図5】図4におけるゾーン別使用比率算出手順についてさらに詳細な手順を示すフローチャートである。
【図6】図4におけるゾーン別誘導指示手順についてさらに詳細な手順を示すフローチャートである。
【図7】図4における共用部設備運転指示手順のさらに詳細な手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、駐車場管理システムの対象として、店舗の上層部に設けられた複数階の屋内駐車場を説明するが、複数の駐車ゾーンを有し共用部設備の運転を行うことが必要な駐車場であれば、これ以外の構造の駐車場であってもよい。例えば、店舗とは独立の建物である駐車場であってもよく、あるいは屋内駐車場でなく開放敷地に設けられた屋外駐車場であってもよい。
【0024】
以下では、駐車場の使用効率の算定の基礎となる車両状況を把握する手段として、駐車場全体および各駐車ゾーンについて入退場する車両を計数する車両計数装置を説明するが、これ以外の車両状況把握手段を用いてもよい。例えば、各駐車ゾーンに撮像装置を設けて駐車中の車両数を計数するものとしてもよく、あるいは、個別の駐車領域に接車センサを設けて、各駐車領域に駐車中の車両数を計数するものとしてもよい。
【0025】
また、駐車場の共用部設備として、照明設備、空調設備、換気設備、エスカレータ設備、エレベータ設備を説明するが、これらは説明のための例示であって、これらの1以上を省略してもよく、これらにさらに追加を行ってもよい。追加の共用部設備としては、動く歩道設備、バックグランドミュージック設備、スピーカ設備、店舗イベント表示設備等であってもよい。
【0026】
以下における駐車ゾーン数、共用部設備の作動モードの種類数、ゾーン拡張閾値の数値、ゾーン縮小閾値の数値等は説明のための例示であって、駐車場管理の仕様に合わせ適宜変更することができる。
【0027】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0028】
図1は、駐車場管理システム10の構成を示す図である。この駐車場管理システム10は、2階建ての大型の店舗8の3階から5階に併設された駐車場の管理を行うシステムで、車両6を駐車させる駐車場本体12と制御装置70とを含んで構成される。
【0029】
駐車場本体12は、3フロアに渡って設けられる複数の駐車ゾーン20,22,24と、地表道路と駐車ゾーン20,22,24とを結ぶ車両用スロープ14と、駐車場に入退場する車両を計数する車両計数部30,32と、車両6に対し駐車すべき駐車ゾーンである誘導指示ゾーンを指定する誘導表示部40,42と、共用部設備である照明設備50、空調設備52、換気設備54、エスカレータ設備56、エレベータ設備58を含んで構成される。車両計数部30,32、誘導表示部40,42、共用部設備は、適当な信号線で制御装置70と接続され、その制御の下で作動する。
【0030】
図1では、駐車場は各階ごとに区分された駐車ゾーン20,22,24を有する。つまり、図1の例の駐車場本体12は、3つの駐車ゾーン20,22,24を有し、各駐車ゾーン20,22,24ごとに、共用部設備の作動が管理される。このようにフロアごとに1つの駐車ゾーンとすることができる。もっとも、1フロアが広くて駐車能力が大きい場合には、1フロアを複数の駐車ゾーンに区分することもできる。
【0031】
図2は、駐車ゾーンの例として、1つのフロアに2つの駐車ゾーン25,26を有する場合を示す図である。各駐車ゾーン25,26には、その駐車能力に対応する駐車スペース28が配置される。ここでは、車両用スロープ14に接続されるそのフロア入口部分Eに、駐車ゾーン25のための誘導表示部45と、駐車ゾーン25に入場する車両を計数する入場車計数部35と退場する車両を計数する退場車計数部37と、駐車ゾーン26のための誘導表示部46と、駐車ゾーン26に入場する車両を計数する入場車計数部36と退場する車両を計数する退場車計数部38とが設けられる。
【0032】
また、共用部設備として、エスカレータ設備56、エレベータ設備58と、図示されていない照明装置、空調装置、換気装置が各駐車ゾーン25,26ごとに設けられる。これらの共用部設備の作動は、そのフロアで一括管理されるのではなく、各駐車ゾーン25,26ごとに管理される。
【0033】
このように、図2の例では、1つの駐車場フロアを複数に区切って、それぞれが独立の駐車ゾーン25,26として扱われる。なお、以下では、図1の構成の駐車場本体12について説明を続けるが、図2の例についてもその説明を同様に適用することができる。
【0034】
再び図1に戻り、制御装置70は、駐車場本体12の車両計数部30,32の計数に基づいて、来場した車両6に駐車すべき駐車ゾーンを指定して誘導し、共用部設備の運転指示を行う機能を有する。かかる制御装置70は適当なコンピュータを用いることができる。
【0035】
制御装置70は、車両計数部30,32の計数に基づいて各駐車ゾーン20,22,24の使用効率を算出するゾーン別使用効率算出処理部72と、ゾーン別使用効率に応じて来場した車両に対し駐車すべき駐車ゾーンを指定して誘導指示するゾーン別誘導指示処理部74と、誘導指示ゾーンの設定に連動して共用部設備の作動モードを変更する共用部設備運転処理部76とを含んで構成される。
【0036】
これらの機能はソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には対応する駐車場管理プログラムを実行することで実現できる。これらの機能の一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。
【0037】
図3は、ゾーン別誘導指示処理部74の誘導指示に連動して共用部設備運転処理部76において用いられる共用部設備の作動モードの種類を説明する図である。ここでは、作動モードを、共用部設備について完全稼動させるモードA、共用部設備について省エネルギ稼動を行うモードB、共用部設備の稼動を停止するモードCの3つとし、それぞれについて各共用部設備の運転状態が規定される。
【0038】
モードAは、ゾーン別誘導指示処理部74において誘導指示ゾーンに指定された駐車ゾーンに適用される作動モードである。ここでは、共用部設備のすべてについて予め定めたフル稼働の状態を維持できる運転状態とされる。
【0039】
モードBは、誘導指示ゾーンではない駐車ゾーンに車両が駐車している場合に、その駐車ゾーンに適用される作動モードである。誘導指示ゾーンではない駐車ゾーンに車両が駐車している場合としては、誘導指示ゾーンを指定したにもかかわらず、お客が誤って、あるいは好みの駐車ゾーンを選んで駐車してしまった場合のように、お客の都合によるものがある。その場合に、共用部設備を全部停止した状態では、照明等もないなど不都合となるので、モードBが適用される。
【0040】
その他に、モードBが適用される場合として、駐車場管理の上で、一旦誘導指示ゾーンに指定したが、その後、その駐車ゾーンから退場する車両があって、その駐車ゾーンの使用効率が下がってきて、使用効率が予め定めたゾーン縮小閾値以下となるとその駐車ゾーンの指定を禁止することに起因する場合がある。このようにすることで、使用効率の下がってきた駐車ゾーンばかりとせずに、少数の駐車ゾーンに駐車を集めて、共用部設備の稼動も集中させることができる。
【0041】
ここで、使用効率は、その駐車ゾーンの駐車能力に対するその駐車ゾーンに駐車している車両数の割合で規定することができる。例えば、100台の駐車能力のある駐車ゾーンに35台の駐車があるときは、使用効率S=(駐車台数)/(駐車能力)=35/100=0.35である。
【0042】
駐車ゾーンの誘導指示は、各駐車ゾーンの使用効率Sをみて指定される。店舗8が開店早々のときは、全ての駐車ゾーンの使用効率Sはゼロである。そこで、まず第1の駐車ゾーンが誘導指示ゾーンに指定される。第1の駐車ゾーンとしては、図1の例では3階の駐車ゾーン20とすることができる。その誘導指示の指定に連動して、駐車ゾーン20がモードAとされる。
【0043】
店舗8の開店時間を過ぎると次第に来場する車両が増加し、駐車ゾーン20の使用効率Sが高くなってくる。そこで、予め定めたゾーン拡張閾値S0を用い、S≧S0となると、第2の駐車ゾーンに対して誘導指示の指定が開始される。ゾーン拡張閾値S0としては、例えば0.9とすることができる。
【0044】
上記のゾーン縮小閾値は、一旦誘導指示ゾーンに指定した後で、その駐車ゾーンへの誘導指示を禁止するための閾値である。ゾーン縮小閾値をS1として、0≦S≦S1のときに、その駐車ゾーンがモードBとされる。ゾーン縮小閾値S1としては、S1=0.2とすることができる。なお、S=0のときはモードCとされる。
【0045】
図3に示されるように、モードBにおいては、共用部設備の種類によってその運転状態の指示が異なる。すなわち、空調設備52と換気設備54は停止とされるが、照明設備50とエスカレータ設備56は省電稼動とされ、エレベータ設備58は一部昇降制限とされる。
【0046】
照明設備50の省電稼動は、駐車ゾーンの安全のために、例えば安全管理法制上で規定される明るさを維持する程度に、間引き照明等によって照明を暗くする。また、エスカレータ設備56の省電稼動は、例えば、エスカレータ設備56に近づくとこれを検出して運転を開始するようにできる。
【0047】
また、エスカレータ設備56の省電稼動としては、運搬速度である移動速度を低下させるものとできる。例えば、通常の移動速度を30m/sとして、これを20m/sとすることができる。この例の場合では、消費電力をおよそ20%低減でき、温室効果ガスであるCO2の発生も同様に削減できる。
【0048】
エレベータ設備58は、1つのメインロープの作動によって乗りかごが運行するので、運行範囲を縮小してもほとんど省エネルギに寄与しない。したがって、無人階で呼びがあることは保安上問題があるものと考え、モードBとなる駐車ゾーンのある階には呼びがあっても停止しないこととして、昇降を制限する。この場合には、お客に対し、代替の移動手段であるエスカレータ設備56または階段への誘導表示を行うことが好ましい。
【0049】
このようにして、Bモードが適用されると、その駐車ゾーンの共用部設備は、それを構成する各設備の特性に応じ、きめ細かな省エネルギ対策が施される。
【0050】
上記構成の作用効果、特に制御装置70の各機能について、図4から図7を用いて詳細に説明する。図4は、駐車場管理手順の全体を説明するフローチャートである。図5は、図4におけるゾーン別使用比率算出手順についてさらに詳細な手順を示すフローチャートである。図6は、図4におけるゾーン別誘導指示手順についてさらに詳細な手順を示すフローチャートである。図7は、図4における共用部設備運転指示手順のさらに詳細な手順を示すフローチャートである。これらの各手順は、駐車場管理プログラムの各処理手順に対応する。
【0051】
図4において、駐車場管理プログラムが起動すると、システムの初期設定が行われ、ついで、入退場カウント取得がされる(S10)。入退場カウントは、車両用スロープ14の入口、各駐車ゾーンの入口と出口にそれぞれ設けられた車両計数部30,32によって検出される入場車両数と退場車両数のデータである。
【0052】
次に、取得された入退場カウントに基づいてゾーン別使用効率算出が行われる(S20)。この処理手順は、制御装置70のゾーン別使用効率算出処理部72の機能によって実行される。
【0053】
図5は、ゾーン別使用効率算出手順をさらに詳細に示すフローチャートである。ここでは、まず駐車ゾーン番号をiとして、i=1と指定する(S22)。つまり、第1の駐車ゾーン20を指定する。そして、指定された駐車ゾーン番号の駐車ゾーンについて、その使用効率Sを算出する(S24)。使用効率Sは、上記のように、使用効率S=(駐車台数)/(駐車能力)で算出される。駐車台数は、その駐車ゾーンについて、計数の開始時点である開店時から、その時点までの累積入場車両数から、同じ期間についての累積退場車両数を減算することで計算される。
【0054】
例えば、第1の駐車ゾーン20について、累積入場車両数が55台、累積退場車両数が20台であると、駐車台数=55−20=35台である。第1の駐車ゾーンの駐車能力が100台とすると、上記時点における第1の駐車ゾーン20の使用効率S=35/100=0.35と算出される。
【0055】
つぎに駐車ゾーン番号iを1つ進ませ(S26)、進ませた結果が駐車ゾーン番号の最大値iMAXか否かを判断し(S28)、iMAXでなければS24に戻り、その駐車ゾーンの使用効率Sを算出する。このようにして、全部の駐車ゾーンの使用効率Sを算出する。
【0056】
使用効率Sの算出のタイミングは、車両の入場したごと、退場したごとに同期させて行うものとできる。あるいは、これに代えて、使用効率Sの算出のタイミングを予め定めた算出タイミングごとに行うものとできる。
【0057】
例えば、2sごとに使用効率Sの算出をおこなうものとできる。この場合、入場車両も退場車両もその5sの間にない場合、次の算出タイミングを1つ飛ばして、10s後に算出を行うものとできる。その10s後の時点でやはり入場車両も退場車両もその5sの間にない場合、次の算出タイミングを15s後とできる。このように、車両の入退場の頻度に合わせ、使用効率の算出タイミングの間隔を順次長くすることができる。逆に、車両の入退場が頻繁になってきたときに、長くなっている算出タイミングを順次短くすることもできる。
【0058】
再び図4に戻り、S10で各駐車ゾーンの使用効率Sの算出が行われると、次に、駐車状態の変動について、車両6の入場が生じた場合か車両6の退場が生じた場合かが判断される(S30)。具体的には、車両計数部30,32のデータに基づいて、駐車状態の変動を検出し、その変動が車両6の入場によるものか退場によるものかが判断される。車両6の入場によるものであると判断されると、S40へ進み、その入場車両に対する誘導指示等が行われる。車両6の退場によるものであると判断されるとS70へ進み、駐車ゾーンの縮小を行うか否かが判断され、駐車ゾーンが縮小されるときにはその駐車ゾーンの共用部設備の作動モードの変更等が行われる。
【0059】
S30の判断が肯定されると、上記のように、ゾーン別誘導指示が行われる(S40)。この処理手順は、制御装置70のゾーン別誘導指示処理部74の機能によって実行される。
【0060】
図6は、ゾーン別誘導指示処理手順をさらに詳細に示すフローチャートである。ここでは、まず既に誘導指示設定済みの駐車ゾーンがあるか否かが判断される(S42)。ここで、誘導指示設定済みの駐車ゾーンがある場合には、その設定済み駐車ゾーンの駐車ゾーン番号をiSETと呼ぶことにする。例えば、店舗開店の直後では第1の駐車ゾーン20が誘導指示設定済みであるので、第1の駐車ゾーン20の駐車ゾーン番号i=1であるので、iSET=1で、第1の駐車ゾーン20が誘導指示の設定を受けたことを示す。第2の駐車ゾーン22が誘導指示の設定を受けたときは、iSET=2でその旨が示される。
【0061】
S42の判断が否定されるときは、まだどの駐車ゾーンも誘導指示の設定を受けていないときである。例えば、駐車場の車両用スロープ14の入口の車両計数部30が初めて車両6の入場を検出する前には、まだどの駐車ゾーンも誘導指示の設定を受けていない。S30で車両6の変動を検出してこれが最初の入場車両であるときには、S42の判断が否定され、次にiSET=1とされて(S44)、第1の駐車ゾーン20が誘導指示の設定を受ける。なお、これ以前には、どの駐車ゾーンにも車両がいない状態であるので、S20で算出される使用効率Sはすべて0である。したがって、図3に従って、全部の駐車ゾーンはモードCの状態にある。
【0062】
こうして、最初の車両6が入場するタイミングで、第1の駐車ゾーン20が誘導指示の設定を受けて、その車両6に対し、第1の駐車ゾーン20へ駐車を誘導するように、誘導表示部40,42にその旨の表示をするように指示が伝送される。具体的には、例えば、「3階の第1の駐車ゾーンに駐車して下さい」の表示と、車両用スロープ14から第1の駐車ゾーン20までの経路に設けられた誘導矢印マークの点滅が行われる。
【0063】
そして、後述するS70において、第1の駐車ゾーン20がモードCからモードAに変更される。これによって、第1の駐車ゾーン20の共用部設備がフル稼働の状態とされる。
【0064】
S42において判断が肯定されるときは、既に誘導指示設定を受けている駐車ゾーンがある場合である。例えば、2台目の車両6が来場したときである。このときには既に第1の駐車ゾーン20が誘導指示の設定を受けている。この場合には、まず使用効率Sがゾーン拡張閾値S0未満である誘導指示設定済みの駐車ゾーンがあるか否かが判断される(S48)。ゾーン拡張閾値S0としては、上記のように0.9を用いることができる。
【0065】
上記のように誘導指示設定済みの駐車ゾーンを示すためにiSETを用いることにすると、第1の駐車ゾーン20のみが誘導指示設定を受けているときは、iSET=1である。第1の駐車ゾーン20の他に第2の駐車ゾーン22も誘導指示設定を受けているときは、iSET=1,2である。S48では、iSETに該当する全ての駐車ゾーンについてその使用効率Sが参照され、S0と比較される。
【0066】
S48で判断が肯定されるときは、既に誘導指示設定を受けている駐車ゾーンにおいて、少なくとも1つは、使用効率SがS0未満のものがあるときである。例えば、2台目の車両6が来場したときは、既に第1の駐車ゾーン20が誘導指示設定を受けているのでiSET=1であるが、そのときに第1の駐車ゾーン20には1台しか駐車していないので、上記の例で第1の駐車ゾーン20の能力が100台とするときは、S=1/100=0.01で、S0=0.9よりも小さく、S48の判断が肯定される。上記の例では、さらに進んで、仮に退場車両がないとして、89台まで車両6が来場しても、S48の判断は肯定される。
【0067】
S48の判断が肯定されると、次にS<S0を満たすiSETが1つだけか否かが判断される(S50)。上記の例で、駐車場本体12において退場車両がなく、最初から数えて89台目の車両6の来場まではS48は肯定されるが、その場合においてiSET=1であり、第1の駐車ゾーン20のみがS<S0を満たすので、S50も肯定される。
【0068】
S50が肯定されると、S<S0を満たすその1つの駐車ゾーンに誘導指示が行われる(S52)。このときには、その駐車ゾーンには既に誘導指示設定が行われているので、共用部設備の作動モードはBモードとされており、その変更は行われない。上記の例では、退場車両がなく、来場が89台目までの車両6については、全て第1の駐車ゾーン20に誘導指示が行われる。S50が肯定される場合、通常は、iSET=1であるが、駐車場管理の経過によっては、S<S0を満たす1つの駐車ゾーンがiSET=2またはiSET=3となることがあるが、その場合には、それぞれ該当する駐車ゾーン22または駐車ゾーン24に誘導指示がなされる。
【0069】
駐車場本体12に次々に車両6が来場して来ると、第1の駐車ゾーン20のみでは間に合わなくなり、他の駐車ゾーンにも駐車させるように誘導指示設定がなされることになる。その手順はS56以下で説明するが、複数の駐車ゾーンに誘導指示がなされていて、それらの2つ以上について同時にS<S0を満たすことが生じると、S50の判断が否定される。そのときには、S<S0を満たす駐車ゾーンの中で、iSETが最も小さい駐車ゾーンに誘導指示がなされる(S54)。
【0070】
例えば、第1の駐車ゾーン20と第2の駐車ゾーン22の2つが共に誘導指示設定を受けていて、さらに共にS<S0を満たすときは、iSET=1,2が共にS<S0を満たすので、iSET=1の駐車ゾーン20に誘導指示がなされる。iSET=1,2,3のいずれもがS<S0を満たすときも同様にiSET=1の駐車ゾーン20に誘導指示がなされる。iSET=2,3のいずれもがS<S0を満たすときには、iSET=2の駐車ゾーン22に誘導指示がなされる。
【0071】
S48に戻って、この判断が否定されるときは、既に誘導指示設定を受けている駐車ゾーンがあるにもかかわらず、S<S0を満たす駐車ゾーンがないときである。このことは、誘導指示設定を受けている駐車ゾーンの全てがS≧S0であることを意味する(S56)。例えば、上記の例で、誘導指示設定を受けている駐車ゾーンのすべてがS0=0.9以上である場合である。このときは、既に誘導指示設定を受けている各駐車ゾーンが満車状態に近くなり、新しく来場した車両6をこれらの駐車ゾーンに誘導指示しても、その車両は空き駐車スペースを探すのに時間を要することにもなりかねず、不便である。
【0072】
そこで、S56の状態になったときは、新しく誘導指示ゾーンを設定する。すなわち、今までに設定されているiSETの最大値に1を加えたiSETの設定を行う(S58)。例えば、既に第1の駐車ゾーン20のみが誘導指示設定を受けているときは、iSET=1であるので、iSET=2として、第2の駐車ゾーン22について誘導指示設定を行う。既に第1の駐車ゾーン20に加えて第2の駐車ゾーン22も誘導指示設定を受けているときはiSET=1,2であるので、これらの全てがS56の状態であるときはiSET=3として第3の駐車ゾーン24が誘導指示設定を受ける。
【0073】
ここで、新しく設定されたiSETが、駐車ゾーン番号の最大値iMAXを超えないか否かが判断される(S60)。上記の例では、iMAX=3であるので、新しいiSETが4であると、これは駐車場本体12が有する駐車ゾーンを超えるので、もはや駐車ゾーンの拡張ができないことになる。したがって、S60が肯定されると、満車表示をするように、誘導表示部40,42に指示が伝送される。
【0074】
S60の判断が否定されると、駐車ゾーンの拡張ができるので、新しく誘導指示設定を受けた駐車ゾーンに車両6を誘導するように誘導表示部40,42に指示が伝送される(S62)。そして、後述するS70において、これに連動して、新しく誘導指示設定を受けた駐車ゾーンの共用部設備の作動モードがモードAに変更される。
【0075】
このように、既に誘導指示設定を受けている駐車ゾーンの使用効率Sがゾーン拡張閾値S0以上となるときは、まだ誘導指示設定を受けていない駐車ゾーンについて順次誘導指示設定が行われる。
【0076】
すなわち、駐車場本体12に駐車する車両6が増加するに従い、最初は第1の駐車ゾーン20が誘導指示設定を受けて、そこに来場した車両6が順次誘導される。そして、第1の駐車ゾーン20の使用効率Sがゾーン拡張閾値S0以上となると、第2の駐車ゾーン22が誘導指示設定を受けて、来場した車両6がここにも誘導されるようになる。また、さらに第1の駐車ゾーン20も第2の駐車ゾーン22も使用効率SがS0以上となると、第3の駐車ゾーン24が誘導指示設定を受けて、来場した車両6がここにも誘導されるようになる。
【0077】
このようにして、各駐車ゾーンの使用効率Sの増大に応じて、順次誘導指示設定を受ける駐車ゾーンを拡張することができる。そして、S70で後述するように、この拡張のときまで、各駐車ゾーンの共用部設備の作動モードはモードBまたはモードCであって、電力を消費しない。したがって、需要に応じて駐車場の能力を確保しながら、省エネルギ化の向上を図ることができる。
【0078】
再び図4に戻り、車両6が来場した場合にS40でゾーン別誘導指示を行った後、あるいは車両6が退場した場合には、共用部設備運転指示が行われる(S70)。具体的には、共用部設備の作動モードの設定がここで実行される。この処理手順は、制御装置70の共用部設備運転処理部76の機能によって実行される。
【0079】
図7は、共用部設備運転指示ゾーン別誘導指示処理手順をさらに詳細に示すフローチャートである。ここでは、S30において判断が否定される場合、すなわち駐車状態の変動が退場車両による場合にS78以下の手順が実行される。また、S30で判断が肯定される場合、すなわち駐車状態の変動が入場車両による場合にS40の処理手順が実行され、
上記のように場合分けに従ってそれぞれ適切な駐車ゾーンに誘導指示設定が行われ、その後にS72以下の手順が実行される。
【0080】
最初にS72以下の手順の内容を説明する。ここでは、車両6が入場して、S40で説明した場合分けに従って、それぞれ誘導指示ゾーンが指定されている。その状態で、誘導指示設定された駐車ゾーンには、その駐車ゾーンの共用部設備の作動モードとしてモードAが適用される(S72)。具体的には、その駐車ゾーンの共用部設備を構成する各設備に対し、図3で説明したように、フル稼働の運転指示が伝送される。
【0081】
このS72の処理と平行して、誘導指示されていない駐車ゾーンに車両6がいるか否かが判断される(S74)。誘導指示されていない駐車ゾーンに車両6がいる場合とは、図3に関連して説明したように、誘導指示ゾーンを指定したにもかかわらず、お客が誤って、あるいは好きな駐車ゾーンを選んで駐車してしまった場合である。この場合に、モードCのままであると、照明設備等も停止していて、お客にとって不便であるので、その駐車ゾーンにモードBが適用される(S76)。具体的には、その駐車ゾーンの共用部設備を構成する各設備のそれぞれに対し、図3で説明した内容の運転指示が伝送される。
【0082】
次に、駐車状態の変動が車両6の退場による場合を説明する。S30の判断が否定されると、駐車状態の変動が車両6の退場によるものとされ、既に誘導指示設定が行われている全ての駐車ゾーンの使用効率Sが参照され、ゾーン縮小閾値S1と比較され、S1以下の使用効率Sの駐車ゾーンがあるか否かが判断される(S78)。S78の判断が否定されると、何も特別の処理が行われず、S10に戻る。
【0083】
S78の判断が肯定されると、その駐車ゾーンへの誘導指示が禁止される(S80)。そして、さらにSがゼロか否かが判断され(S82)、その判断が肯定されて、0<S≦S1であるとされると、その駐車ゾーンについてモードBが適用される(S76)。すなわち、一旦誘導指示ゾーンに設定された駐車ゾーンについて車両6があまり入場せず、あるいは車両6の退場等があって、その使用効率Sがゾーン縮小閾値S1以下である場合には、誘導指示設定を受けているにもかかわらず、誘導指示を禁止し、その駐車ゾーンの共用部設備の作動モードがモードAからモードBに変更される。
【0084】
また、S82の判断が肯定されるときは、その駐車ゾーンの使用効率Sがゼロであるので、その駐車ゾーンについてモードCが適用される(S84)。
【0085】
このように、一旦誘導指示設定を受けてモードAが適用される駐車ゾーンについて、使用効率SがS1以下となるときは、誘導指示を禁止して、その駐車ゾーン以外の駐車ゾーンへ誘導するようにする。これによって、少ない駐車ゾーンに駐車を集中させて、駐車場本体12の全体としての駐車効率の向上を図ることができる。そして、誘導指示禁止に連動して、その駐車ゾーンの共用部設備の作動モードをモードBまたはモードCに変更するので、省エネルギ化の向上を図ることができる。
【0086】
なお、既に説明したS62のゾーン拡張の条件と、S80のゾーン縮小の条件とは、場合によって同時に成立して衝突することがある。例えば、S62によって新しく誘導指示設定を受けた駐車ゾーンに次々に車両6が駐車してその使用効率SがS1を超えた場合には、その後に車両6の退場があって使用効率SがS1以下となるまではモードAのままである。そして、使用効率Sが下がってきてS1以下となったときにS80によってゾーン縮小が行われるので、S62の条件とS80の条件とが同時に成立しない。
【0087】
これに対し、S62によって新しく誘導指示設定を受けた駐車ゾーンに余り車両6が駐車しないときには、使用効率Sが低いままでS1以下の場合がある。このときには、S62でゾーン拡張する必要があるにもかかわらず、S80においてゾーン縮小の条件を満たしてしまうことになる。このように、S62のゾーン拡張条件とS80のゾーン縮小条件とが共に成立するときには、S62の前提として、他の誘導指示設定を受けた駐車ゾーンの使用効率SがS0以上であるので、そのままではその駐車ゾーンの駐車能力を超えてしまう恐れがあるので、S62のゾーン拡張条件を優先し、使用効率SがS1以下であっても誘導指示を継続する。
【0088】
このように、場合によっては、S≦S1であっても、誘導指示を継続することがあるが、その場合でも、その駐車ゾーンには使用効率Sに応じて、モードBまたはモードCが適用される。すなわち、その駐車ゾーンには使用効率SがS1以下の車両6しか駐車していないので、モードBまたはモードCとしてもお客にあまり不便を与えないからである。
【0089】
このように、各駐車ゾーン20,22,24の使用効率Sが大きくなるに連れて誘導指示を行う駐車ゾーンを順次拡張し、使用効率Sが低下してくるに応じて、誘導指示を行う駐車ゾーンを順次縮小する。そして、このような駐車ゾーンの拡張縮小に連動して、駐車ゾーンの共用部設備の作動モードをフル稼働であるモードAから省電駆動のモードB、稼動停止のモードCと切り替える。これによって、需要に応じた駐車能力を確保しながら、共用部設備の省エネルギ化の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る駐車場管理システムは、複数の駐車ゾーンを有する駐車場であって、共用部設備を備えている駐車場に利用できる。
【符号の説明】
【0091】
6 車両、8 店舗、10 駐車場管理システム、12 駐車場本体、14 車両用スロープ、20,22,24,25,26 駐車ゾーン、28 駐車スペース、30,32 車両計数部、35,36 入場車計数部、37,38 退場車計数部、40,42,45,46 誘導表示部、50 照明設備、52 空調設備、54 換気設備、56 エスカレータ設備、58 エレベータ設備、70 制御装置、72 ゾーン別使用効率算出処理部、74 ゾーン別誘導指示処理部、76 共用部設備運転処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駐車ゾーンを有する駐車場について入退場する車両または駐車中の車両を計数する車両計数部と、
駐車場に来場する車両に対し、複数の駐車ゾーンのいずれか1を誘導指示ゾーンとして誘導する誘導表示部と、
複数の駐車ゾーンのそれぞれに設けられる共用部設備と、
車両計数部の計数に基づいて算出される各駐車ゾーンの使用効率に基づき、使用効率が予め定めたゾーン拡張閾値以上のときは誘導指示ゾーンの数を拡張し、使用効率が予め定めたゾーン縮小閾値以下のときは誘導指示ゾーンの数を縮小し、その拡張または縮小に連動して各駐車ゾーンの共用部設備の作動モードを変更する制御部と、
を備えることを特徴とする駐車場管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の駐車場管理システムにおいて、
制御部は、
ゾーン縮小閾値を超える使用効率を有する誘導指示ゾーンについて、共用部設備を完全稼動させるモードAと、
ゾーン縮小閾値以下の使用効率を有する誘導指示ゾーンについて、共用部設備のうち、空調設備と換気設備の少なくとも一方を停止させ、照明設備と乗客運搬設備の少なくとも一方を省電的に稼動させるモードBと、
使用効率がゼロの駐車ゾーンについて、共用部設備を完全停止させるモードCと、
の間で共用部設備の作動モードを変更することを特徴とする駐車場管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の駐車場管理システムにおいて、
制御部は、
誘導指示ゾーン以外で車両がいる駐車ゾーンについて、モードBを用いることを特徴とする駐車場管理システム。
【請求項4】
請求項2に記載の駐車場管理システムにおいて、
制御部は、
モードBとして、乗客用運搬設備の運搬速度を低速化させるモードを用いることを特徴とする駐車場管理システム。
【請求項5】
請求項2に記載の駐車場管理システムにおいて、
制御部は、
車両計数部の計数に基づいて、複数の駐車ゾーンのそれぞれについて使用比率であるゾーン別使用比率を算出する使用比率算出手段と、
駐車場に車両が来場する際に、まだ誘導指示ゾーンの設定が行われていないときは第1ゾーンを誘導指示ゾーンとして設定し、第1ゾーンの共用部設備の作動モードをモードAとして、誘導表示部に第1ゾーンを表示させる初期設定手段と、
駐車場に車両が来場する際に、既に誘導指示ゾーンの設定が行われているときは、使用比率が予め定めたゾーン拡張閾値未満である誘導指示設定済みゾーンの有無を判断する拡張閾値判断手段と、
判断の結果、ゾーン拡張閾値未満の誘導指示設定済みゾーンがある場合は、そのゾーンを誘導指示ゾーンに指定して誘導表示部にそのゾーンを表示させ、ゾーン拡張閾値未満の設定済みゾーンがない場合は、複数の駐車ゾーンの数の限度範囲内で新しく誘導指示ゾーンを拡張し、拡張されたゾーンの共用部設備の作動モードをモードAとして、誘導表示部にその拡張されたゾーンを表示させるゾーン別誘導指示部と、
を含むことを特徴とする駐車場管理システム。
【請求項6】
請求項1に記載の駐車場管理システムにおいて、
制御部は、
車両計数部の計数に基づいて、複数の駐車ゾーンのそれぞれについて使用比率であるゾーン別使用比率を算出する使用比率算出手段と、
使用効率がゼロを超えゾーン縮小閾値以下である誘導指示設定済みのゾーンの有無を判断する縮小閾値判断手段と、
判断の結果、使用効率がゼロを超えゾーン縮小閾値以下の設定済みゾーンがある場合は、そのゾーンについて誘導指示設定を取り消し、そのゾーンの共用部設備の作動モードをモードBとして、誘導表示部にそのゾーンへの誘導指示表示を禁止するゾーン縮小指示手段と、
を含むことを特徴とする駐車場管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−95820(P2011−95820A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246483(P2009−246483)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】