説明

駐車設備における電気自動車識別方法及び装置

【課題】駐車設備に入庫される車両が電気自動車であるか或いはエンジン搭載自動車であるかを人の判断に頼ることなく確実に見分けることができ、電気自動車への充電を効率良く行い得る駐車設備における電気自動車識別方法及び装置を提供する。
【解決手段】充電装置が配備された格納箇所を有する駐車設備Pの入口部に車両進入検知エリアAを形成し、車両進入検知エリアAに車両Cが進入した際、感熱手段12により車両C後部の熱分布を計測して数値化し、該車両C後部の熱分布において設定値以上の高熱部が部分的に検出されているか否かを判定し、該高熱部が部分的に検出されている場合には前記車両Cが排気口のあるエンジン搭載自動車であると識別する一方、前記高熱部が部分的に検出されていない場合には前記車両Cが排気口のない電気自動車であると識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車設備における電気自動車識別方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、限られた敷地に効率良く車両を駐車させる設備として、垂直循環式のタワーパーキングやエレベータパーキング等の駐車設備が用いられている。
【0003】
前記駐車設備としての垂直循環式のタワーパーキングは、図5に示される如く、建屋(図示せず)の上部に設置された上フレーム1に一対の上スプロケット2をその回転軸方向へ所要間隔をあけて回転自在に配設すると共に、前記建屋の下部に設置された下フレーム1´に一対の下スプロケット3をその回転軸方向へ所要間隔をあけて回転自在に配設し、前記上スプロケット2と下スプロケット3間に主務チェーン4を無端状に掛け回し、該二条の主務チェーン4によって多数のケージ5を支持してなる構成を有している。
【0004】
前記上スプロケット2には、回転駆動系統6としてブレーキ7を備えたモータ8が減速機9を介して接続されており、該モータ8による上スプロケット2の回転駆動によって主務チェーン4を周回させ、前記ケージ5を循環させるようになっている。尚、図5には上下端に位置する二基のケージ5のみ示してあり、他のケージ5は省略してある。
【0005】
前記ケージ5は、水平方向へ延びるケージ吊軸5aの両端部に、リング状のハンガー5bを吊り下げるように設け、該ハンガー5bの下辺間に車載用のパレット5cを掛け渡すように取り付けてなる構成を有し、前記ケージ吊軸5aの両端部を、主務チェーン4に取り付けられたアタッチメント10間に掛け渡すように連結してある。
【0006】
ところで、近年の地球温暖化の大きな原因の一つと考えられている二酸化炭素削減の観点から、有害排出物が無く(ゼロエミッション)且つ音も静かな環境にやさしい乗り物である電気自動車の需要が高まっているが、前述の如き従来の駐車設備は、そのほとんどが現行のエンジンを搭載した自動車を対象としたものであり、電気自動車を想定したものではないため、当然のことながら、充電装置等は装備されていないのが現状であった。
【0007】
そこで、前記駐車設備に充電装置を装備し、該駐車設備に電気自動車を格納した状態で、該電気自動車を充電装置に接続して充電を行うようにすることが提案されている。
【0008】
尚、前記電気自動車に対する充電装置を備えた駐車設備の一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−4620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、現時点では電気自動車の普及率はまだ低く、駐車設備の格納箇所全部に充電装置を配備することはコスト面からも無駄が多いことから、全体の何割かの特定の格納箇所のみに充電装置を配備せざるを得ないのが現状であるが、該充電装置が配備された格納箇所にエンジン搭載自動車を格納してしまうと、電気自動車への充電が行えなくなってしまうこととなる。
【0011】
このため、前記駐車設備に入庫される車両が電気自動車であるか或いはエンジン搭載自動車であるかを見分ける必要があり、この判断は、駐車設備の操作員が行うか車両の所有者の自己申告に基づいて行うといったように、人の判断に頼るのが一般的であるが、車の知識があまりない人では間違ってしまう可能性も高かった。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑み、駐車設備に入庫される車両が電気自動車であるか或いはエンジン搭載自動車であるかを人の判断に頼ることなく確実に見分けることができ、電気自動車への充電を効率良く行い得る駐車設備における電気自動車識別方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、充電装置が配備された格納箇所を有する駐車設備における電気自動車識別方法であって、
前記駐車設備の入口部に形成された車両進入検知エリアに車両が進入した際、感熱手段により車両後部の熱分布を計測して数値化し、該車両後部の熱分布において設定値以上の高熱部が部分的に検出されているか否かを判定し、該高熱部が部分的に検出されている場合には前記車両が排気口のあるエンジン搭載自動車であると識別する一方、前記高熱部が部分的に検出されていない場合には前記車両が排気口のない電気自動車であると識別することを特徴とする駐車設備における電気自動車識別方法にかかるものである。
【0014】
又、本発明は、充電装置が配備された格納箇所を有する駐車設備における電気自動車識別装置であって、
前記駐車設備の入口部に形成された車両進入検知エリアに車両が進入したことを検知する車両検知器と、
前記車両進入検知エリアに進入した車両後部の熱分布を計測する感熱手段と、
前記車両検知器により車両進入検知エリアに車両が進入したことが検知された際、前記感熱手段により計測された車両後部の熱分布を数値化し、該車両後部の熱分布において設定値以上の高熱部が部分的に検出されているか否かを判定し、該高熱部が部分的に検出されている場合には前記車両が排気口のあるエンジン搭載自動車であると識別する一方、前記高熱部が部分的に検出されていない場合には前記車両が排気口のない電気自動車であると識別する制御装置と
を備えたことを特徴とする駐車設備における電気自動車識別装置にかかるものである。
【0015】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0016】
車両が駐車設備の入口部に形成された車両進入検知エリアに進入すると、該車両は車両検知器により検知され、続いて、前記車両進入検知エリアに進入した車両後部の熱分布が感熱手段により計測され、制御装置において、前記感熱手段により計測された車両後部の熱分布が数値化され、該車両後部の熱分布において設定値以上の高熱部が部分的に検出されているか否かが判定され、該高熱部が部分的に検出されている場合には前記車両が排気口のあるエンジン搭載自動車であると識別される一方、前記高熱部が部分的に検出されていない場合には前記車両が排気口のない電気自動車であると識別される。
【0017】
この結果、前記駐車設備に入庫される車両が電気自動車であるか或いはエンジン搭載自動車であるかを見分けるための判断を、駐車設備の操作員が行ったり車両の所有者の自己申告に基づいて行ったりしなくて済み、電気自動車を充電装置が配備されていない格納箇所に誘導したり、逆に、エンジン搭載自動車を充電装置が配備された格納箇所に誘導することが避けられ、電気自動車への充電を効率良く行うことが可能となる。
【0018】
前記駐車設備における電気自動車識別装置においては、前記感熱手段を、車両から放射される赤外線を検出するサーモグラフィと、該サーモグラフィで検出された赤外線に基づき車両後部の熱分布を可視化する画像処理装置とから構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の駐車設備における電気自動車識別方法及び装置によれば、駐車設備に入庫される車両が電気自動車であるか或いはエンジン搭載自動車であるかを人の判断に頼ることなく確実に見分けることができ、電気自動車への充電を効率良く行い得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例を示す全体概要構成図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明の実施例における制御系を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例における識別の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例における画像処理装置の表示画面を示す概要図である。
【図5】従来における駐車設備としての垂直循環式タワーパーキングの一例を示す概要斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1〜図4は本発明の実施例であって、充電装置(図示せず)が配備された格納箇所を有する駐車設備Pの入口部に車両進入検知エリアAを形成し、該車両進入検知エリアAに車両Cが進入したことを検知する車両検知器11を設けると共に、前記車両進入検知エリアAに進入した車両C後部の熱分布を計測する感熱手段12を設け、更に、前記車両検知器11により車両進入検知エリアAに車両Cが進入したことが検知された際、前記感熱手段12により計測された車両C後部の熱分布を数値化し、該車両C後部の熱分布において設定値以上の高熱部Hが部分的に検出されているか否かを判定し、該高熱部Hが部分的に検出されている場合には前記車両Cが排気口C1a(マフラー)のあるエンジン搭載自動車C1であると識別する一方、前記高熱部Hが部分的に検出されていない場合には前記車両Cが排気口C1aのない電気自動車C2であると識別する制御装置13を設けたものである。
【0023】
本実施例の場合、前記感熱手段12は、車両Cから放射される赤外線を検出するサーモグラフィ12aと、該サーモグラフィ12aで検出された赤外線に基づき車両C後部の熱分布を可視化する画像処理装置12bとから構成してある。
【0024】
又、前記車両検知器11は、車両進入検知エリアAにループコイル11aを埋設し、インダクタンスの変化から車両Cの存在を検出するよう構成してある。
【0025】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0026】
車両Cが駐車設備Pの入口部に形成された車両進入検知エリアAに進入すると(図3のステップS1参照)、該車両Cは、車両進入検知エリアAに埋設されたループコイル11aからなる車両検知器11により検知される(図3のステップS2参照)。
【0027】
続いて、感熱手段12のサーモグラフィ12aにより車両Cから放射される赤外線が検出され、該サーモグラフィ12aで検出された赤外線に基づき車両C後部の熱分布が画像処理装置12bで可視化される形で計測される(図3のステップS3参照)。
【0028】
ここで、前記画像処理装置12bの表示画面には、図4に示す如く、その画面右隅に低温から高温にかけての温度変化が段階的に色分けされたカラースケールCS(図面において色は付けられないので付けていない)が表示され、該カラースケールCSに対応して、前記車両C後部の熱分布が表示されるようになっており、これにより、例えば、前記車両Cがエンジン搭載自動車C1である場合には、排気口C1aから高温の排ガスが排出されているため、該排気口C1aの部分が高熱部Hとして表示されるのに対し、前記車両Cが電気自動車C2である場合には、排気口C1aがなく、高温の排ガスが排出されていないため、特に高熱部Hは表示されない。
【0029】
そして、制御装置13において、前記感熱手段12のサーモグラフィ12a及び画像処理装置12bにより計測された車両C後部の熱分布が数値化され(図3のステップS4参照)、該車両C後部の熱分布において設定値以上の高熱部Hが部分的に検出されているか否かが判定され(図3のステップS5参照)、該高熱部Hが部分的に検出されている場合には前記車両Cが排気口C1aのあるエンジン搭載自動車C1であると識別され(図3のステップS6参照)、該エンジン搭載自動車C1としての入庫処理が開始される(図3のステップS7参照)。
【0030】
一方、前記高熱部Hが部分的に検出されていない場合には前記車両Cが排気口C1aのない電気自動車C2であると識別され(図3のステップS8参照)、該電気自動車C2としての入庫処理が開始される(図3のステップS9参照)。
【0031】
この結果、前記駐車設備Pに入庫される車両Cが電気自動車C2であるか或いはエンジン搭載自動車C1であるかを見分けるための判断を、駐車設備Pの操作員が行ったり車両Cの所有者の自己申告に基づいて行ったりしなくて済み、電気自動車C2を充電装置が配備されていない格納箇所に誘導したり、逆に、エンジン搭載自動車C1を充電装置が配備された格納箇所に誘導することが避けられ、電気自動車C2への充電を効率良く行うことが可能となる。
【0032】
こうして、駐車設備Pに入庫される車両Cが電気自動車C2であるか或いはエンジン搭載自動車C1であるかを人の判断に頼ることなく確実に見分けることができ、電気自動車C2への充電を効率良く行い得る。
【0033】
尚、本発明の駐車設備における電気自動車識別方法及び装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
11 車両検知器
11a ループコイル
12 感熱手段
12a サーモグラフィ
12b 画像処理装置
13 制御装置
A 車両進入検知エリア
C 車両
C1 エンジン搭載自動車
C1a 排気口
C2 電気自動車
CS カラースケール
H 高熱部
P 駐車設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電装置が配備された格納箇所を有する駐車設備における電気自動車識別方法であって、
前記駐車設備の入口部に形成された車両進入検知エリアに車両が進入した際、感熱手段により車両後部の熱分布を計測して数値化し、該車両後部の熱分布において設定値以上の高熱部が部分的に検出されているか否かを判定し、該高熱部が部分的に検出されている場合には前記車両が排気口のあるエンジン搭載自動車であると識別する一方、前記高熱部が部分的に検出されていない場合には前記車両が排気口のない電気自動車であると識別することを特徴とする駐車設備における電気自動車識別方法。
【請求項2】
充電装置が配備された格納箇所を有する駐車設備における電気自動車識別装置であって、
前記駐車設備の入口部に形成された車両進入検知エリアに車両が進入したことを検知する車両検知器と、
前記車両進入検知エリアに進入した車両後部の熱分布を計測する感熱手段と、
前記車両検知器により車両進入検知エリアに車両が進入したことが検知された際、前記感熱手段により計測された車両後部の熱分布を数値化し、該車両後部の熱分布において設定値以上の高熱部が部分的に検出されているか否かを判定し、該高熱部が部分的に検出されている場合には前記車両が排気口のあるエンジン搭載自動車であると識別する一方、前記高熱部が部分的に検出されていない場合には前記車両が排気口のない電気自動車であると識別する制御装置と
を備えたことを特徴とする駐車設備における電気自動車識別装置。
【請求項3】
前記感熱手段を、車両から放射される赤外線を検出するサーモグラフィと、該サーモグラフィで検出された赤外線に基づき車両後部の熱分布を可視化する画像処理装置とから構成した請求項2記載の駐車設備における電気自動車識別装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate