説明

骨セメントの混合および送達システム、ならびにその使用方法

骨セメントを混合および送達する装置および方法を開示する。装置は、骨セメントパウダーを含有する第一のチューブ/バレル(例えばシリンジバレル)、および液体で充填できるかまたは液体を含有する第二のチューブ/バレルを有し、第一および第二のチューブ/バレルは、チューブ/バレル間に流体連絡が存在するように端と端を接して流体的に接続できる。同装置を使用のため準備する方法、同装置を使って骨セメントを形成する方法、ならびに同装置の貯蔵寿命を伸ばすための方法および装置設計も開示する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、骨セメントの混合装置、関連するシステム、およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
骨セメントは整形外科手技において骨の空隙の充填および欠損の修復に使われる。骨セメントは、液体と混合されるセメントパウダーを典型的に含み、そして用手的に欠損部位に適用される。混合されたセメントはまた、送達装置の中に移されそして当該部位に注入されることもある。現在の混合および送達システムは、ボウルおよびスパチュラなど開放式の手動混合に依存しているが、これは汚れを生じやすい可能性があり、且つ均一性を得にくい。開放式混合および移し替えの段階には汚染リスクもある。さらに、移し替えの段階は汚れを生じやすく且つ時間がかかる。したがって、より優れた骨セメント混合および送達システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、封入式の骨セメント混合および送達システムを特徴とする。本混合および送達システムはシリンジ対シリンジ混合に基づくもので、これにより開放式混合および移し替えの段階がなくなるとともに、汚染リスクおよび準備時間が少なくなる。同システムはまた、セメントの注入容易性を向上させるとともに、パウダー充填を容易にし且つ貯蔵寿命を伸ばすようなパッケージング設計を有する。
【0004】
したがって本発明は、可動ピストンを含有する第一および第二の剛性チューブを有し、同チューブはチューブ間の流体の移動を許容するチューブ間の連絡が存在するように端と端を接して接合され、且つ、同チューブのうち少なくとも1つは骨セメントパウダーを有する、混合および送達システムを特徴とする。ピストンに交互に力を加えることにより、混合の段階の間、大きな剪断力が生じる。1つの態様において、チューブおよびピストンは使い捨てシリンジとして提供される。さらに別の態様において、シリンジはルアー先端を持つ。ピストンは互いに独立に動くことができる。
【0005】
2つのチューブのうち1つに骨セメントパウダーが充填される。1つの態様において、パウダーはリン酸カルシウム配合物である。好ましい態様において、リン酸カルシウム配合物は、非晶質リン酸カルシウム、低結晶性リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト(カルシウム欠損ヒドロキシアパタイト)、リン酸モノカルシウム、メタリン酸カルシウム、リン酸ヘプタカルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸四カルシウム、リン酸オクタカルシウム、ピロリン酸カルシウム、もしくはリン酸三カルシウム、またはこれらの混合物を有する。あるいは、リン酸カルシウム配合物は、非晶質リン酸カルシウムと、例えば低結晶性リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト(カルシウム欠損ヒドロキシアパタイト)、リン酸モノカルシウム、メタリン酸カルシウム、リン酸ヘプタカルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸四カルシウム、リン酸オクタカルシウム、ピロリン酸カルシウム、もしくはリン酸三カルシウム、またはこれらの混合物など第二のリン酸カルシウム源とを有する。他の態様において、リン酸カルシウム配合物は、例えば米国特許第5,650,176号、米国特許第5,783,217号、米国特許第6,214,368号、米国特許第6,027,742号、米国特許第6,214,368号、米国特許第6,287,341号、米国特許第6,331,312号、米国特許第6,541,037号、米国特許出願公開公報第2003/0120351号、米国特許出願公開公報第20040097612号、米国特許出願公開公報第2005/0084542号、米国特許出願公開公報第2007/0128245号、および国際公開公報第2005/117919号などに説明されているパウダーかまたはこれらに開示されている方法に基づいて調製されるパウダーである。これら文献はすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0006】
他の態様において、リン酸カルシウム配合物は、平均結晶ドメインサイズが100 nm未満(例えば約1 nm〜約99 nmの範囲;好ましくは50 nm以下;より好ましくは 10 nm以下)である。別の態様において、リン酸カルシウム配合物はタップ密度が約0.5 g/cm3〜約1.5 g/cm3であり、好ましくは、リン酸カルシウム配合物はタップ密度が約0.7 g/cm3より大きい(例えば約1.0 g/cm3)。
【0007】
別の態様において、リン酸カルシウム配合物は、例えば生体適合性粘着剤または生物活性薬剤などである補足材料を有する(例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開公報第2007/0128245号に説明および定義されている生体適合性粘着剤および生物活性薬剤を参照されたい)。さらに別の好ましい態様において、生体適合性粘着剤は、約0.5 wt%〜約20 wt%の範囲(例えば約20 wt%未満、好ましくは約10 wt%未満、より好ましくは 約5 wt%未満、そして最も好ましくは約1 wt%未満)の量でリン酸カルシウム配合物中に存在する。
【0008】
別の態様において、パウダーは、湿潤性を高め、混合力を最適化し、且つ混合物中の空気の量を最小にするため、所望の密度まで圧縮される。好ましい態様において、パウダーの密度は約0.1〜約1.2 g/ccの範囲であり、好ましくは0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、または1.2 g/cc、そして最も好ましくは 1.0 g/ccである。別の態様において、パウダーを伴うチューブは、パウダー充填と排気による圧縮とを助けるための固着された多孔質キャップを持ち、この多孔質キャップはチューブから空気が逃げることを許容するがパウダーが逃げることは防ぐ。好ましい態様において、多孔質キャップの持つ孔は直径が1.0 mm以下であり、好ましくは直径が750、500、300、250、150、および100μm以下であり、より好ましくは直径が75、50、25、15、10、および5μm以下であり、最も好ましくは直径が1、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、および0.05μm以下である。キャップはまた、放出された水分が装置から出ることを許容し、このことは、パウダー成分の劣化を防ぐことによって、保管中のパウダーの貯蔵寿命および長期安定性を伸ばす。別の態様において、キャップは多孔質のポリマー、セラミック、または金属材料で作られる。
【0009】
第二のチューブには液体が充填される。1つの態様において、液体は、水、生理食塩水、およびリン酸緩衝液を非限定的に含む、生理学的に許容される流体である。他の態様において、流体は、例えば生物に関連する処理済みまたは未処理の任意の流体(懸濁液を含む)などである生物学的な流体、特に血液であってもよく、これには、全血、温血もしくは冷血、および保存血もしくは新鮮血;生理食塩水、栄養素、および/もしくは抗凝固薬溶液を非限定的に含む少なくとも1つの生理学的溶液で希釈された血液などの処理済み血液;濃厚血小板(PC)、アフェレーシス済みの血小板、多血小板血漿(PRP)、乏血小板血漿(PPP)、無血小板血漿、血漿、血清、新鮮凍結血漿(FFP)、血漿から取得された成分、濃縮赤血球(PRC)、軟膜(BC)などの血液成分;血液、血液成分、もしくは骨髄に由来する血液製剤;血漿から分離され生理学的な流体に再懸濁された赤血球;ならびに、血漿から分離され生理学的な流体に再懸濁された血小板が含まれる。好ましい態様において、リン酸カルシウム配合物は、水和されるとペーストを形成する。1つまたは複数の所望の特性を持つペーストを生成するため、さまざまな量の液体をパウダーに添加してもよい。例えば、少なくともいくつかの態様において、パウダー1グラムあたり0.3〜2.0 ccの液体を使って、成形可能、すなわちモールディングしてその形状を維持できるペーストが調製される。少なくともいくつかの態様において、ペーストは注入可能、すなわち16〜18ゲージの針を通過できる。ペーストはまた、カテーテル(例えば、7〜15ゲージの針、より好ましくは7、8、9、10、11、12、13、14、または15ゲージの針を持つカテーテルなど)を通って送達されるよう調製されてもよい。
【0010】
パウダー含有チューブおよび液体含有チューブは、チューブ間の流体の移動を許容するチューブ間の連絡が存在するように端と端を接して接合されてもよい。1つの態様において、チューブは、漏れおよび汚染を防ぐための密封を提供するルアーコネクタを使って接合される。
【0011】
パウダーと液体との混合は、接続部を通して液体をパウダー含有チューブ内のパウダーまで通過させる、液体含有チューブのピストンの押下によって開始される。液体はパウダーに浸透することを許容される。好ましくは、液体は、1、2、3、4、5、10秒間、好ましくは30秒間または1、2、3、4、もしくは5分間、またはより好ましくは10、15、20、または30分間にわたってパウダーに浸透することを許容される。浸漬時間の後、材料中に気体が捕捉されていてもよい。好ましい態様において、この気体は、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、酸素、およびアルゴンから選択される。気体は、2つのチューブの接続を外し、そして固体成分および液体成分をチューブ内に保ったまま、すべての気体が排出されるまでピストンを再位置決めすることによって、除去してもよい。この排気の段階によって材料の混合特性および機械特性が向上する。気体の排出後、2つのチューブは再接続される。
【0012】
チューブのピストンに交互に圧力を印加して、水和済みおよび未水和の材料をコネクタを通して1つのチューブから他のチューブに移すことによって、混合が再開される。好ましい態様において、材料が実質的に完全に水和されるまで混合が続けられる。材料が全部移らない場合は、材料が全部流れそして均一に水和および混合されるまで、チューブ間で材料が前後に交互に押される。好ましい態様において、2つのチューブの接合部で形成されるオリフィスは、凝集塊を壊してセメントの注入容易性を高めるようにサイズが決定される。いくつかの態様においてオリフィスの直径は5.0、4.0、3.0、2.0、または1.0 mmであり、好ましくはオリフィスの直径は0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1 mmである。
【0013】
混合が完了したら(例えば約3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または30回以上の押下後)、好ましくはペーストの形態である水和済み材料が、送達のため2つのチューブのうち1つに実質的に完全に分配される。このとき、第二のチューブが第一のチューブとの接続から外される。好ましい態様において、混合に使われる2つのチューブのうち1つは、パウダー材料が実質的に混合されたあとに水和済みの同材料を(例えば骨セメントを必要とするヒトの患者の部位などに)送達するために使われる送達用シリンジである。材料を送達するため、送達用シリンジの端に針などの送達用先端が(例えばルアーコネクタを使うなどして)取り付けられてもよい。好ましい態様において、実質的に完全に混合および水和された材料は無菌である。
【0014】
1つの態様において、水和および硬化後のリン酸カルシウム材料は多孔度が約5%であり、より好ましくは多孔度が約10、20、または30%であり、最も好ましくは多孔度が約40、50、または60%である。好ましい態様において、リン酸カルシウム材料は多孔度が少なくとも約20%である。他の態様において、水和済み材料はCa/P比が1.67より小さい。特に好ましい態様において、水和済み材料は、硬化して、全体的なCa/Pモル比が1.0〜1.67の範囲、好ましくは1.3〜1.65、より好ましくは1.4〜1.6、そして最も好ましくは天然の骨に近いもの、すなわち1.45〜1.67の範囲であるリン酸カルシウムになるペーストである。好ましい態様において、硬化後のリン酸カルシウム配合物はCa/Pモル比が約1.5以下である。
【0015】
さらに別の態様において、硬化後のリン酸カルシウム配合物は約1または2 MPa以上の圧縮強度を呈する。他の態様において、圧縮強度は約1 MPa〜約150 MPaの範囲(例えば20、30、40、50、60、70、80、90、または100 MPa)である。さらに別の態様において、圧縮強度は120 MPa以上(例えば120〜150 MPa)である。別の態様において、圧縮強度は約20〜30 MPaの範囲である。
【0016】
本発明の第二の局面は、本発明の第一の局面の混合システムを使って調製した水和済み材料を投与する段階を含む、骨修復の方法を特徴とする。1つの態様において、水和済み材料は、インビボの埋植部位に適用されたときにモールディング可能で且つ粘着性を示し、且つ硬化してリン酸カルシウム配合物になる、成形可能で自硬性のペーストである。少なくともいくつかの態様において、ペーストは硬化して、かなりの圧縮強度を持つリン酸カルシウム配合物(例えば低結晶性アパタイト型(PCA)リン酸カルシウム)になる。水和済み材料は、ペーストの形態で、または硬化後のリン酸カルシウムとして、インビボで埋植してもよい。配合物は、例えば損傷した骨などの骨の修復に使用してもよく、または生物活性薬剤の送達用ビヒクルとして使用してもよい。本発明の第一の局面のすべての態様は、本発明の第二の局面の方法で利用される配合物にあてはまる。
【0017】
本明細書において、「約(about)」という用語は、挙げられている値の±10%を意味する。
【0018】
本明細書において、「実質的な(substantial)」または「実質的に(substantially)」という用語は、本明細書に説明する目標、用途、機能、および目的のうち1つまたは複数を実現するのに十分であることを意味する。例えば、「実質的に混合される(substantially mixed)」とは、本発明の混合装置との関連において使われる1つまたは複数のパウダー成分が、混合物の配合が比較的またはほぼ均一になるようなほぼ均質性になるまで、他の1つまたは複数の成分(そのうち1つまたは複数は水性の流体であってもよい)と混合されることを意味する。1つの態様において、混合物は、スラリー、ペースト、またはセメントを形成し、且つ注入可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付の図面を参照しながら本発明を説明する。これら図面は例示の目的でのみ示されるものであり、本発明を限定する意図はない。
【図1】パウダーおよび多孔質キャップとともにパッケージングされた装置の設計図である。
【図2】混合および送達システムの分解図である。
【図3】混合装置アセンブリの断面図である。
【図4】本発明の混合装置を使って6.0グラムのリン酸カルシウムを3.0 ccの生理食塩水で表示の密度まで水和するために用いた通過/ストロークの平均回数を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
構造
図1を参照すると、パウダー101がバレル100に充填され、そしてバレル100およびストッパ103の中で所望の密度(例えば0.1 g/cc〜1.1 g/cc)になるまで圧縮される。ルアーコネクタ105が先端104に取り付けられ、多孔質キャップ112がルアーコネクタ105に取り付けられる。この装置は、保存料としての乾燥剤とともに、防湿性の構成の中にパッケージングされていてもよい(図には示していない)。乾燥剤は、湿気に対する親和性が保護対象の製品より高い任意の材料と定義され、非限定的な例としてはクレイ、シリカゲル、または分子ふるいなどがある。
【0021】
図2および図3を参照すると、バレル100はパウダー101および可動プランジャ102を含有する。分解時、可動プランジャ107を引くことによって第二のバレル106に液体110を充填することができる。ゴム製のストッパ103および108がバレルの内容物の漏れを防ぐ。バレル100および106は、ルアーコネクタ105を使って接続されるルアーフィッティング104を持ち、これにより密封を提供する。好ましい態様において、バレル100および106は容量が異なり、そして種々の体積のパウダーおよび液体を収容できる。例えば、骨セメントパウダーおよび液体がその中に添加される、混合装置のバレルの1つまたは両方は、体積が1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10 ccであってもよく、好ましくは15、20、25、30、35、40、45、または50 cc、より好ましくは60、70、80、90、または100 cc、そして最も好ましくは150、200、250、300、350、400、450、500 cc、またはそれ以上である。装置の各バレルが同じ体積または異なる体積を保持するよう装置を製造してもよく、そして各バレルに同じ体積または異なる体積の成分(例えば骨セメントパウダーまたは液体)を充填してもよい。好ましい態様において、液体(cc):パウダー(g)の比は0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、および1.5:1であり、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10:1であり、より好ましくは15、20、25、30、35、40、45、もしくは50:1、またはそれ以上である。
【0022】
操作
図1を参照すると、混合装置は、リン酸カルシウムパウダー101で充填されるバレル100、およびバレル100に挿入されるピストン/プランジャ102を含む。ピストン/プランジャ102を押下するとリン酸カルシウムパウダーが所望の密度まで圧縮されて空気含有量が減り、これにより湿潤が促され、そして容易な混合が可能になる。バレル100はまた、容易な充填および圧縮を可能にするためバレル100の遠位端に取り付けられる多孔質キャップ112も含む。多孔質キャップ112は、ピストン/プランジャ102を押下したときに、リン酸カルシウムパウダー101をバレル100内に保持したまま、バレル100内に存在する気体を排出することを可能にする。装置内のリン酸カルシウムパウダーの圧縮が0.8 g/cc以下であると、水和後、混合が不十分且つ非効果的であるペーストが生じる。同じパウダーを1.0 g/ccの密度まで圧縮し水和すると、効果的且つ均一な湿潤および混合が得られる。
【0023】
図2および図3を参照すると、混合装置は、例えば16ゲージ針などの針を受容するよう適合したバレル106も含む。針はバレル106の遠位端に取り付けられる。ピストン/プランジャ107を引くことによる吸込圧力によって、例えばUSP生理食塩水などの液体110が針を通ってバレル106に引き入れられる。バレル106の遠位端から針が取り外され、そしてルアーフィッティング104を使ってルアーコネクタ105を形成することによってバレル106がバレル100に連結される。ピストン/プランジャ107を押下することによって生理食塩水がバレル100に注入され、これにより生理食塩水がリン酸カルシウムパウダー101に注入される。液体がパウダーを湿らせるよう短い遅延がおかれた後、バレル100をバレル106との接続から外しそしてプランジャをゆっくり押下することにより空気が排出される。排気の段階中の視認を容易にするため、バレル100およびバレル106は透明なポリカーボネートで作られていてもよい。バレル100がバレル107に再接続され、そして、均一な混合物(例えばペースト)ができるまでピストン/プランジャ102および107を交互に且つすばやく複数回(約3〜20回)押下することによって混合が行われる。全部の材料がバレル100とバレル106との間を通過しない場合は、すべての材料が移りそして均一な混合が得られるまでプランジャ107および102の一連の交互通過を行ってもよい。バレル100をバレル106に接続する狭いオリフィスが剪断力を増大させ、凝集塊を減少させ、そして混合物の均質性および注入容易性を向上させる。約1分間の混合後、完全に混合されたペーストがバレル106に移される。バレル106はバレル100との接続から外される。送達用の針またはカニューレ(図には示していない)がルアー先端104でバレル106に取り付けられ、そしてセメントはこの針を通って完全に押し出されることができる。
【0024】
少なくともいくつかの態様において、混合済み材料は注入可能、すなわち7〜18ゲージの針を通過することができる。ペーストはまた、カテーテル(例えば、7〜15ゲージの針、より好ましくは7、8、9、10、11、12、13、14、または15ゲージの針を持つカテーテルなど)を通って送達されるよう調製されてもよい。
【0025】
製造
バレル100およびピストン/プランジャ102はともにパウダー用シリンジを形成し、一方、バレル106およびピストン/プランジャ107はともに送達用シリンジを形成する。これらの両方とも工業分野の種々の供給業者から入手できる。バレル100およびバレル106はガラスまたはプラスチック(例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレンなど)から独立に製造してもよい。ピストン/プランジャ102および107は、それぞれストッパ102および108に取り付けられるプラスチックまたはガラス製のアームを含む。リン酸カルシウムパウダー110(例えば、本明細書に説明する任意のリン酸カルシウムパウダー)がバレル100に充填される。多孔質ポリマー製の挿入物とルアーコネクタとを含む多孔質キャップ112はB.Braunから入手できる(例えばSAFSITE(登録商標)Capped Valve System; ULTRASITE(登録商標)Capless Valve System)。
【0026】
混合装置はまた、工業分野の種々の供給業者から入手できる標準的な皮下針も含んでいてよい。
【0027】
1つの態様において、パウダー用シリンジは、シリカゲル乾燥剤キャニスターとともに防湿トレイの中に置かれる(例えば、フォイルパウチ内の熱成形トレイを使ってもよく、または、「PETG」として公知であるテレフタル酸、エチレングリコール、およびシクロヘキサンジメタノールのポリ(エステル)コポリマーで形成された防湿トレイを使ってもよい;例えば参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,284,671号を参照されたい)。この防湿性の構成は、湿気が乾燥剤に吸収されるよう多孔質キャップを通って伝わることを許容することによって、製品(すなわちリン酸カルシウムパウダー)を保護する。この装置設計は、セメントの劣化に通常つながる高温状態において特に有効である。混合装置内のセメント配合物は、乾燥剤がない場合は50℃で2週間以内に劣化したが、乾燥剤がある場合は4ヵ月後も損なわれていなかった。
【0028】
以下の実施例によって本発明を説明する。これら実施例が本発明を限定する意図はない。
【0029】
実施例
実施例1
リン酸カルシウムパウダーの最適な圧縮を決定するため、多孔質キャップを伴う20 mLの混合装置(シリンジ)15個の各々にリン酸カルシウム6.0グラムを充填した。プランジャをバレルに挿入し、与えられたパウダー密度に達するまで一軸の試験機を使って圧縮した。0.75、0.86、1.0、1.1、1.2 g/ccの各密度まで3つのシリンジを圧縮した。次に、10 mLシリンジを使って生理食塩水3.0 ccで水和し、スムーズなペーストが得られるまでパウダーおよび生理食塩水をシリンジ間で前後に通過させて混合することによって、シリンジを試験した。完全な混合が得られるまでに要した通過またはストロークの回数を記録し、各密度について平均を取った。その結果を図4に示す。このリン酸カルシウムについては1.0 g/ccのパウダー密度が最適であることが見出された。
【0030】
実施例2
本装置およびその使用方法が従来のリン酸カルシウムセメント(CPC)の調製を簡素化し且つ注入容易性を高めることができることを示すため、以下の研究を行った。
【0031】
非晶質リン酸カルシウム(ACP)(Ca/P < 1.5)およびアパタイト添加(10〜25% w/w)したリン酸二カルシウム二水和物(DCPD)という2つのCPC前駆体を、低温複分解法を使って調製した。2つのパウダーを1:1の比で混合し、高エネルギーボールミルで3時間ミリングした。得られたパウダーをシリンジに充填し、生理食塩水を充填した第二のシリンジにルアーコネクタで接続した。0.5:1の液体:パウダー(L/P)比で生理食塩水をパウダーに注入し、均一なペーストが得られるまでこの混合物をシリンジ間で前後に通過させた(約5回)。ボウル内でスパチュラを用いて(同じL/Pで)混合しそしてシリンジに移した同じセメントを、対照として使用した。これらの材料を化学組成(FT-IR、XRD、およびCa:P原子比)ならびに性能特性(注入力および収率、作業時間、硬化速度、圧縮強度、ならびに洗い流し耐性)について試験した。
【0032】
シリンジ混合では、調製時間が2分から1分に短縮され、且つセメントは3 kgf未満の力で16ゲージ針を通して送達可能であった。ボウル混合した材料と比較して50%の注入力削減が観察された。シリンジ混合では送達されるCPCのパーセンテージも増加した。ボウル混合したセメントでは送達量が90%未満であったが、シリンジ混合したセメントでは100%であった。シリンジ混合したセメントは室温で最長6分間まで保存でき、且つ、注入容易性を完全に保ったまま再混合が可能であった。混合によってCPCの硬化速度、圧縮強度、または洗い流し耐性が影響を受けることはなく、化学組成も変化しなかった。この注入可能セメントは37℃で5分未満で硬化し、2時間で30 MPaの圧縮強度に達し、且つ、材料の損失を伴うことなく水槽に直接注入することができた。
【0033】
その他の態様
本明細書中で言及されているすべての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれ独立の刊行物または特許出願が参照により本明細書に組み入れられるものとして具体的且つ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0034】
以上、本発明の具体的な態様と関連させて本発明を説明したが、本発明はさらなる改変が可能であること;本出願は、本発明の原理に概して基づく任意のバリエーション、使用法、または適合を包含することを意図していること;本出願は、本発明が属する技術分野の公知のまたは慣例的な実施法の範囲内で生じ且つ本明細書記載の本質的な特徴に適用されうる、本開示内容からのそのような逸脱も含んでいること;および、本出願が特許出願の範囲に従うことが理解されるであろう。
【0035】
他の態様は特許請求の範囲内に入る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ピストンを含有する第一および第二の剛性チューブを含み、該チューブは該チューブ間の流体の移動を許容する該チューブ間の連絡が存在するように端と端を接して接合され、且つ、該チューブのうち少なくとも1つは骨セメントパウダーを含む、骨セメント混合用の装置。
【請求項2】
チューブおよびピストンが使い捨てシリンジを含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
骨セメントパウダーが第一のチューブに充填される、請求項1記載の装置。
【請求項4】
骨セメントパウダーがカルシウム塩を含む、請求項1記載の装置。
【請求項5】
第二のチューブが、生理学的に許容される流体を含む、請求項1記載の装置。
【請求項6】
液体であらかじめ充填されてパッケージングされている、請求項5記載の装置。
【請求項7】
第一および第二のチューブをルアーカプラーが接合する、請求項1記載の装置。
【請求項8】
パウダーが0.6〜1.2 g/ccの密度まで圧縮される、請求項3記載の装置。
【請求項9】
パウダーが1.0 g/ccの密度まで圧縮される、請求項8記載の装置。
【請求項10】
第一のチューブの先端部に取り付けられた多孔質キャップをさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項11】
骨セメントを調製するための混合装置を作製する方法であって、以下の段階を含む方法:第一のシリンジバレルの遠位端に多孔質キャップをつける段階;ある量の骨セメントパウダーを該第一のシリンジバレルに充填する段階;可動ピストンを該第一のシリンジバレルの近位端に挿入する段階;および、該骨セメントパウダーを圧縮するための十分な力または振動を印加することによって該ピストンを押下し、これによって該混合装置を形成する段階。
【請求項12】
多孔質キャップを取り外す段階;およびピストンを第一のシリンジバレルの遠位端から遠ざけるように引くことによって該遠位端に液体を導入する段階をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
多孔質キャップを第一のシリンジバレルの遠位端に再度つける段階をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
第二のシリンジバレルに液体を充填する段階;ならびに第一および第二のシリンジバレル間の流体の移動を許容する該第一および第二のシリンジバレル間の連絡が存在するように該第二のシリンジバレルの遠位端を該第一のシリンジバレルの遠位端に接合する段階をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
第二のシリンジバレルが、該第二のシリンジバレルの近位端に挿入された可動ピストンを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
第二のシリンジバレル内のピストンを押下することによって該第二のシリンジバレルから第一のシリンジバレル内のパウダー中に液体を導入する段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
実質的にすべての液体が第一のシリンジバレルへと通過するまでピストンを押下することによって導入段階が生じる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
第一および第二のシリンジバレルを接続する前に多孔質キャップを取り外す段階をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項19】
第一のシリンジバレルのプランジャを押下して気体を排出することによって、多孔質キャップを通して該第一のシリンジバレルから気体を抜く段階をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項20】
気体が空気である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
多孔質キャップを取り外す段階;ならびに第一および第二のシリンジバレル間の流体の移動を許容する該第一および第二のシリンジバレル間の連絡が存在するように該第二のシリンジバレルの遠位端を該第一のシリンジバレルの遠位端に接合する段階をさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
第一および第二のシリンジバレルの接続を外すことにより混合装置から気体を抜く段階;該第一および第二のシリンジバレルのピストンを押下して気体を排出する段階;ならびに、該第一および第二のシリンジバレルを再接続する段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項23】
気体が空気である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
請求項5記載の装置を提供する段階;ならびに、骨セメントを形成するため第一および第二のチューブのピストンを交互に1回または複数回押下することによってパウダーと液体とを実質的に混合する段階を含む、骨セメントを調製する方法。
【請求項25】
混合する段階の前に第一または第二のチューブ内に存在する気体を取り除く段階をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
気体を取り除く段階が、第一および第二のチューブの接続を外すこと、該第一および第二のチューブのピストンを押下して気体を排出すること、ならびに該第一および第二のチューブを再接続することを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
装置が、第一のチューブの遠位端に取り付けられた多孔質キャップをさらに含み、かつ気体を取り除く段階が、該第一のチューブと第二のチューブとの接続を外した後に該多孔質キャップを取り除くことによって行われる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
気体が空気である、請求項25記載の方法。
【請求項29】
液体が、水、生理食塩水、リン酸緩衝液、または生物学的な流体から選択される生理学的に許容される液体である、請求項24記載の方法。
【請求項30】
請求項1記載の装置を防湿性のパッケージングに封入する段階を含む、骨セメントパウダーを保護するための方法。
【請求項31】
防湿性のパッケージングが乾燥剤を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
装置と乾燥剤との間に透過性バリアを伴って、剛性または可撓性のコンテナ内に装置が保存される、請求項30記載の方法。
【請求項33】
装置が、第一のチューブの遠位端に取り付けられた多孔質キャップを含む、請求項30記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−537718(P2010−537718A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522956(P2010−522956)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/010214
【国際公開番号】WO2009/032173
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(504238046)エテックス コーポレーション (6)
【Fターム(参考)】