説明

骨セメント注入用穿刺針、ハンドルホルダ及び骨セメント注入針セット

【課題】ハンドルホルダを任意の角度に接続可能な骨セメント注入用穿刺針、骨セメント注入用穿刺針の外針基に対して任意の角度で接続可能なハンドルホルダ、及び、そのような骨セメント注入用穿刺針とハンドルホルダとの組合せからなる骨セメント注入針セットを提供する。
【解決手段】骨セメント注入針セット10Aは、骨セメント注入用穿刺針12とハンドルホルダ14とを着脱可能に嵌合するとともに、外針基18に対するハンドルホルダ36の角度を変更自在にする関節構造35を備える。外針基18に設けられたカップ部32と、ハンドルホルダ14の一端部に設けられた球状部40により、関節構造35が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨セメントを骨の内部に注入するための骨セメント注入用穿刺針、当該骨セメント注入用穿刺針の外針基に接続するハンドルホルダ、及びそのような骨セメント注入用穿刺針とハンドルホルダとの組み合わせからなる骨セメント注入針セットに関する。
【背景技術】
【0002】
経皮的椎体形成術は、椎体圧迫骨折による痛みを除去するために、骨セメントを椎体の損傷部位に注入して椎体を補強する治療法である。経皮的椎体形成術は、1987年フランスで初めて行われた比較的新しい治療法であるが、近年わが国においても多くの施設で行われている。
【0003】
経皮的椎体形成術は、椎体の背側左右に位置する椎弓根から中空構造の穿刺針を穿刺して、穿刺針内の注入通路を介して椎体内に骨セメントを注入する椎弓根アプローチ(trans pedicular approach)が基本である。骨セメントを注入するための穿刺針としては、骨生検針が一般的に用いられている。下記特許文献1には、骨セメント注入用穿刺針が開示されている。
【0004】
骨セメント注入用穿刺針の一従来例として、図10に示す構成の穿刺針120が知られている。この穿刺針120は長尺管状の外針122と、外針122の基端部に固定された外針基124と、外針122の中空部に挿通される内針126と、内針126の基端部に固定された内針基128とを備える。内針基128は、外針基124に対して着脱可能に構成されている。
【0005】
経皮的椎体形成術において、上記のように構成された穿刺針120を目的の骨に穿刺するには、X線透視下において穿刺位置及び穿刺目標を決定した後、内針126を装着した状態の穿刺針120をハンマーで打撃して、骨内の穿刺目標まで穿刺する。この穿刺作業に際し、X線の被爆を防止するため、先端部にC字状の接続部130を有する長尺棒形状のハンドルホルダ132を用いる場合がある。術者は、ハンドルホルダ132の接続部130を外針基124の下部に設けられた小径部分134に接続し、ハンドルホルダ132を把持することで、穿刺針120を所望の位置に保持したまま、自己の手をX線の照射領域の外に退避させておくことができる。
【0006】
また、下記特許文献2には、外針に着脱可能に接続するニードルコントロールデバイスが開示されている。このデバイスは、外針に接続した状態で、外針に対して周方向に変位可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2010/044462号
【特許文献2】米国特許公開2003/0106607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したハンドルホルダ132や、特許文献2に開示されたニードルコントロールデバイスは、外針基又は外針に対して垂直に接続されるものであり、外針基又は外針に対して周方向に回転できるものの、上下方向の角度を変更することができないため、穿刺針に対するハンドルホルダ132又はニードルコントロールデバイスの固定方向が限定され、操作性が低いという問題がある。
【0009】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、ハンドルホルダを任意の角度に接続可能な骨セメント注入用穿刺針、骨セメント注入用穿刺針の外針基に対して任意の角度で接続可能なハンドルホルダ、及び、そのような骨セメント注入用穿刺針とハンドルホルダとの組合せからなる骨セメント注入針セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、軸線方向に貫通する骨セメント通路を有する外針と、前記外針の基端部に固定された外針基と、先端に針先を有し、かつ前記外針の中空部に摺動可能に挿通される内針と、前記内針の基端部に固定された内針基と、を備えた骨セメント注入用穿刺針であって、前記外針基には、長尺な棒形状に形成されたハンドルホルダの一端部に着脱可能に嵌合するとともに、前記外針基に対する前記ハンドルホルダの角度を変更自在にする接続部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記の本発明の構成によれば、ハンドルホルダを外針基に着脱可能に嵌合できるとともに、ハンドルホルダの角度を自在に変更できるため、任意の方向に接続したハンドルホルダを把持して手技を実施することができ、よって、良好な操作性が得られる。
【0012】
この場合、前記接続部は、球面状凹部を有する弾性変形可能なカップ部、又は球状部であり、前記ハンドルホルダの一端部に設けられた球状部又は球面状凹部を有する弾性変形可能なカップ部に嵌合可能であってもよい。
【0013】
このような構成によれば、外針基におけるハンドルホルダとの接続部が、ハンドルホルダの接続角度を変更自在とする関節部を兼ねるので、構造が簡単であり、骨セメント注入用穿刺針の構成を簡素化することができる。
【0014】
また、上記の骨セメント注入用穿刺針において、前記接続部は、前記外針基に設けられ球面状凹部又は球状部を有する接続基部と、前記接続基部に角度自在に嵌合する球状部又は球面状凹部を有する接続ヘッドとを備え、前記接続ヘッドは、前記ハンドルホルダに角度不変に嵌合可能であってもよい。
【0015】
このように、関節構造を有する接続部を外針基に設け、この接続部に対してハンドルホルダを角度不変に嵌合させる構成を採用したので、骨セメント注入用穿刺針に対してハンドルホルダを角度自在に接続することができるとともに、ハンドルホルダと骨セメント注入用穿刺針とを強固に接続することが可能であり、より安定した操作性を得ることができる。
【0016】
上記の骨セメント注入用穿刺針において、前記外針基には、前記外針を囲み且つ外針基本体から前記外針の先端側に向かって突出した突出部が設けられ、前記突出部には、前記ハンドルホルダの一端部に設けられた球面状の内周面を有する断面C字状の弾性変形可能な保持部に嵌合可能な球状膨出部が設けられ、前記球状膨出部が前記接続部を構成してもよい。
【0017】
このような構成によれば、外針基に設けられた球状膨出部と、ハンドルホルダの一端部に設けられた保持部とを接続することにより、ハンドルホルダを任意の角度で確実に接続することができる。また、骨セメント注入用穿刺針の中心部をハンドルホルダにより保持できるため、骨セメント注入用穿刺針をより安定した状態で保持することができる。
【0018】
また、本発明は、軸線方向に貫通する骨セメント通路を有する外針と、前記外針の基端部に固定された外針基と、先端に針先を有し、かつ前記外針の中空部に摺動可能に挿通される内針と、前記内針の基端部に固定された内針基と、を備えた骨セメント注入用穿刺針に着脱可能なハンドルホルダであって、長尺な棒形状に形成されたホルダ本体と、前記ホルダ本体の一端部に設けられ、前記外針基に着脱可能に嵌合するとともに、前記骨セメント注入用穿刺針に対する前記ホルダ本体の角度を変更自在にする接続部とを備えることを特徴とする。
【0019】
上記の本発明の構成によれば、ハンドルホルダを外針基に着脱可能に嵌合できるとともに、ハンドルホルダの角度を自在に変更できるため、任意の方向に接続したハンドルホルダを把持して手技を実施することができ、よって、良好な操作性が得られる。
【0020】
上記のハンドルホルダにおいて、前記接続部は、球状部又は球面状凹部を有する弾性変形可能なカップ部であり、前記外針基に設けられた球面状凹部又は球状部に嵌合可能であってもよい。
【0021】
上記の構成によれば、ハンドルホルダにおける外針基との接続部がハンドルホルダの接続角度を変更自在とする関節部を兼ねるので、構造が簡単であり、ハンドルホルダの構成を簡素化することができる。
【0022】
上記のハンドルホルダにおいて、前記接続部は、前記ホルダ本体の一端部に設けられ球面状凹部又は球状部を有する接続基部と、前記接続基部に角度自在に嵌合する球状部又は球面状凹部を有する接続ヘッドとを備え、前記接続ヘッドは、前記外針基に設けられた嵌合部に角度不変に嵌合可能であってもよい。
【0023】
このように、関節構造を有する接続部をハンドルホルダに設け、骨セメント注入用穿刺針の外針基に対して接続部を角度不変に嵌合させる構成を採用したので、骨セメント注入用穿刺針に対してハンドルホルダを角度自在に接続することができるとともに、ハンドルホルダと骨セメント注入用穿刺針とを強固に接続することが可能であり、より安定した操作性を得ることができる。
【0024】
上記のハンドルホルダにおいて、前記接続部は、前記外針基に設けられた、前記外針の内腔に連通する注入ポートに接続可能であり、前記ハンドルホルダには、前記接続部が前記注入ポートに接続された際に前記注入ポートに連通する内腔が設けられ、前記内腔は、前記ホルダ本体の他端部にて開口してもよい。
【0025】
このようにハンドルホルダを構成することにより、ハンドルホルダに、外針基のポートと骨セメントを吐出するインジェクタとを接続するための延長チューブとしての機能を持たせることができる。
【0026】
上記のハンドルホルダにおいて、前記接続部は、球面状の内周面を有する断面C字状の弾性変形可能な保持部であり、前記保持部は、外針基本体から前記外針の先端側に向かって突出した突出部に設けられた球状膨出部に嵌合可能に構成されていてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、外針基に設けられた球状膨出部と、ハンドルホルダの一端部に設けられた保持部とを接続することにより、ハンドルホルダを任意の角度で確実に接続することができる。また、骨セメント注入用穿刺針の中心部をハンドルホルダにより保持できるため、骨セメント注入用穿刺針をより安定した状態で保持することができる。
【0028】
また、本発明は、骨セメントを骨の内部に注入するための骨セメント注入用穿刺針と、前記骨セメント注入用穿刺針に着脱可能に嵌合する長尺な棒形状のハンドルホルダと、を備えた骨セメント注入針セットであって、前記骨セメント注入用穿刺針は、軸線方向に貫通する骨セメント通路を有する外針と、前記外針の基端部に固定され、側部に嵌合部が設けられた外針基と、先端に針先を有し、かつ前記外針の中空部に摺動可能に挿通される内針と、前記内針の基端部に固定された内針基と、を有し、前記骨セメント注入針セットは、前記骨セメント注入用穿刺針と前記ハンドルホルダとを着脱可能に嵌合するとともに、前記外針基に対する前記ハンドルホルダの角度を変更自在にする関節構造を備えることを特徴とする。
【0029】
上記の骨セメント注入針セットにおいて、前記関節構造は、前記外針基に設けられ、球面状凹部を有するカップ部、又は球状部と、前記ハンドルホルダの一端に設けられ、前記外針基に設けられた前記カップ部に嵌合可能な球状部、又は前記外針基に設けられた前記球状部に嵌合可能な球面状凹部を有するカップ部とを備えてもよい。
【0030】
上記の骨セメント注入針セットにおいて、前記関節構造は、前記ハンドルホルダの一端部に設けられた接続基部と、前記接続基部に角度自在に嵌合する接続ヘッドと備え、前記接続基部は、球面状凹部を有するカップ部、又は球状部を有し、前記接続ヘッドは、前記接続基部の前記球面状凹部に嵌合する球状部、又は前記接続基部の前記球状部に嵌合する球面状凹部を有し、前記接続ヘッドと前記ハンドルホルダとは、角度不変に嵌合可能であってもよい。
【0031】
上記の骨セメント注入針セットにおいて、前記関節構造は、前記ホルダ本体の一端部に設けられた接続基部と、前記接続基部に角度自在に嵌合する接続ヘッドと備え、前記接続基部は、球面状凹部を有するカップ部、又は球状部を有し、前記接続ヘッドは、前記接続基部の前記球面状凹部に嵌合する球状部、又は前記接続基部の前記球状部に嵌合する球面状凹部を有し、前記接続ヘッドと前記外針基とは、角度不変に嵌合可能であってもよい。この場合、前記接続ヘッドは、前記外針基に設けられた、前記外針の内腔に連通する注入ポートに接続可能であり、前記ハンドルホルダには、前記接続ヘッドが前記注入ポートに接続された際に前記注入ポートに連通する内腔が設けられ、前記内腔は、前記ホルダ本体の他端部にて開口してもよい。
【0032】
上記の骨セメント注入針セットにおいて、前記外針基には、外針基本体から前記外針の先端側に向かって突出した突出部が設けられ、前記突出部には球状膨出部が設けられ、前記ハンドルホルダの一端部には、前記球状膨出部に嵌合可能であり且つ球面状の内周面を有する断面C字状の保持部が設けられ、前記球状膨出部と前記保持部とにより前記関節構造が構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ハンドルホルダを外針基に着脱可能に嵌合できるとともに、ハンドルホルダの角度を自在に変更できるため、任意の方向に接続したハンドルホルダを把持して手技を実施することができ、よって、良好な操作性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係る骨セメント注入針セットの一部省略斜視図である。
【図2】図1に示した骨セメント注入用穿刺針の一部省略断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿った断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る骨セメント注入用穿刺針の一部省略断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る骨セメント注入用穿刺針の一部省略断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る骨セメント注入用穿刺針の一部省略断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る骨セメント注入用穿刺針の一部省略断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態に係る骨セメント注入用穿刺針の一部省略斜視図である。
【図9】図9Aは、図8におけるIXA−IXA線に沿った断面図であり、図9Bは、図9AにおけるIXB−IXB線に沿った断面図である。
【図10】従来例に係る骨セメント注入用穿刺針の一部省略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る骨セメント注入用穿刺針について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において「骨セメント」には、骨セメント(プラスチック製剤など)だけでなく骨ペースト(リン酸カルシウム製剤など)も含まれるものとする。
【0036】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る骨セメント注入針セット10A(以下、「注入針セット10A」ともいう)の全体斜視図である。図1に示すように、注入針セット10Aは、骨セメントを骨の内部に注入するための骨セメント注入用穿刺針12(以下、「穿刺針12」ともいう)と、穿刺針12に着脱可能なハンドルホルダ14とを備える。この注入針セット10Aは、穿刺針12を目的の骨に穿刺する際に、ハンドルホルダ14と穿刺針12とを接続した状態で使用する。
【0037】
図2は、図1に示した注入針セット10Aの一部省略縦断面図である。穿刺針12は、中空構造の外針16と、外針16の基端部に固定された外針基18と、外針16の中空部に摺動可能に挿通される内針20と、内針20の基端部に固定された内針基22とを有する。図1及び図2では、内針20を外針16の中空部に挿入した状態を示している。
【0038】
外針16は、両端が開口した中空構造の部材であり、外針16の先端には鋭利な刃先16aが形成されている。外針16の構成材料としては、骨への穿刺及び骨からの抜去に際して破損したり変形したりしない程度の適度の強度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅系合金等が挙げられる。
【0039】
図2に示すように、外針16は、両端が開口し、骨セメント通路(中空部)24を内部に有する。骨セメント通路24は、内針20と外針16とを組み合わせる際には内針20を挿通するための孔として機能し、骨セメントを注入する際には骨セメントを流す流路として機能する。
【0040】
外針基18は、外針16の基端部に結合された部材であり、穿刺針12の使用者が握るためのグリップとしての機能を有する。外針基18の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)等が挙げられる。
【0041】
外針基18は、外針16の軸線に対して垂直な方向の両側に張り出す(延在する)ように形成されたグリップハンドル(外針基本体)26と、グリップハンドル26の上部に形成された凹部27の底部から上方に突出した注入ポート28と、グリップハンドル26の長手方向の一端部に設けられた接続部30とを有する。
【0042】
グリップハンドル26は、術者(使用者)が握って保持する部分であり、握りやすいように、適度の大きさ(長さ、厚み、高さ)を有する。注入ポート28の内腔は、外針16の骨セメント通路24に連通している。注入ポート28の外周部には、ロック付き骨セメント注入具(例えば、シリンジ)が着脱可能に係合するための雄ネジ部28aが形成されている。注入ポート28は、骨セメントを穿刺針12に供給するためのシリンジを、穿刺針12に接続するための差込口としても機能する。
【0043】
図1及び図2に示すように、接続部30は、ハンドルホルダ14と着脱可能に接続する部分であり、本実施形態では、球面状凹部33を有する弾性変形可能なカップ部32である。カップ部32は、球面状凹部33の内径(直径)よりも小さい直径の開口部32aを有する。
【0044】
図3は、図2におけるIII−III線に沿った断面図である。図1〜図3に示すように、カップ部32には、カップ部32の内外を貫通し且つ開口部32a側に開放した複数(図示例では、2つ)の切欠き状のスリット32b、32bを有する。このようなスリット32b、32bを有することにより、カップ部32とハンドルホルダ14の一端部(先端部)とを嵌合させる際、カップ部32が弾性変形することで開口部32aが拡径して、後述する球状部40の出入りを許容する。
【0045】
図3に示すように、カップ部32には、カップ部32の内外を貫通するネジ孔32cが設けられ、雄ネジ34aが設けられた固定部材(止めネジ)34がこのネジ孔32cに螺合している。カップ部32と球状部40とが嵌合した状態で、固定部材34をねじ込むと、固定部材34の先端部が球状部40の外周部に接触し、カップ部32内での球状部40の回転が阻止される。
【0046】
図2に示すように、内針20は、外針16の骨セメント通路24に挿入され、先端に鋭利な刃先20aを有する棒状の部材である。内針20の構成材料としては、骨への刺入に際して破損したり変形したりしない程度の適度の強度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅系合金等が挙げられる。
【0047】
内針20の外径は、外針16の内径と略同一に設定されるのがよく、具体的には、内針20を外針16の骨セメント通路24にスムーズに挿入でき、且つ内針20の外周と外針16の内周との間にほとんど隙間が生じない程度に設定されるのがよい。内針20の長さは、内針基22を外針基18に接続した状態で、内針20の先端が外針16の先端より僅かに突出するように設定される。内針基22を外針基18に接続した状態で、内針20の刃先20aの刃面は、外針16の刃先16aの刃面と面一となる。
【0048】
内針基22は、内針20の基端部に結合された部材である。内針基22の外径は、内針20の外径よりも大きく設定されており、具体的には、使用者(医師等の医療従事者)が指でつまんで押し引きや回転をさせやすいような大きさに設定される。内針基22の構成材料としては、特に限定されないが、外針基18の構成材料と同様の構成材料、例えば、ポリカーボネート等の硬質樹脂を用いることができる。
【0049】
図1及び図2に示すように、穿刺針12は、ロック機構42を有する。このロック機構42は、内針基22の外周から突出する複数の突起体43a、43bと、外針基18に設けられ、内針基22を外針基18に接続したときに突起体43a、43bと係合する複数の係合溝44a、44bとを有する。突起体43a、43bは、内針基22の外周に、互いに対称位置(反対位置)に配置されている。係合溝44a、44bは、外針基18の凹部27を形成する側壁に互いに対角位置に設けられ、外針基18の厚さ方向に延在している。一方の係合溝44aは、外針基18の一方の側面を貫通し、他方の係合溝44bは、外針基18の他方の側面を貫通している。
【0050】
ロック機構42は、上記のように構成されているので、内針基22を外針基18に接続するために内針基22を外針基18に係合させるときに、内針基22と外針基18との相対回転により、突起体43a、43bがそれぞれ係合溝44a、44bに係合する。このとき、内針20の刃先20aの刃面と外針16の刃先16aの刃面とは面一となり、且つこの状態が保持される。
【0051】
次に、ハンドルホルダ14の構成について説明する。ハンドルホルダ14は、長尺な棒形状に形成されたホルダ本体36と、外針基18に設けられたカップ部32に着脱可能に嵌合する接続部38とを有する。ハンドルホルダ14の全長は、X線透視下において穿刺針12を目的の骨に穿刺する際に、使用者が穿刺針12に接続したハンドルホルダ14を握ることで、X線照射領域から退避できるように、200〜400mm程度に設定され、好ましくは250〜350mm程度に設定される。
【0052】
ホルダ本体36の基端側には、先端側よりも拡径したグリップ部37が設けられている。使用者は、このグリップ部37を把持して、ハンドルホルダ14を保持及び操作する。本実施形態における接続部38は、ホルダ本体36の一端部(先端部)に設けられた球状部40であり、外針基18に設けられたカップ部32に着脱可能に嵌合するように構成されている。
【0053】
図3に示すように、球状部40とカップ部32とが嵌合した状態で固定部材34を締め付けることにより、球状部40とカップ部32とを相互に安定して固定することができる。一方、穿刺針12に対するハンドルホルダ14の角度を調整する際には、固定部材34を緩めておくことで、球状部40とカップ部32との相互固定を解除してハンドルホルダ14の角度調整を容易に実施することができる。
【0054】
球状部40とカップ部32とが互いに嵌合した状態で穿刺針12に対するハンドルホルダ14の角度を調整することができ且つ穿刺針12をハンドルホルダ14により安定して保持できるように、球状部40の外周面とカップ部32の内周面との間の摩擦抵抗を適切に設定すべく、自然状態(弾性変形がない状態)での球状部40の外径とカップ部32(球面状凹部33)の内径は略同一に設定されるか、球状部40の外径がカップ部32の内径よりも僅かに大きく設定される。
【0055】
固定部材34は、必要に応じて省略してもよい。この場合、球状部40とカップ部32とを嵌合させた状態でカップ部32により球状部40が外側から弾性的に締め付けられるように、球状部40の外径はカップ部32の内径よりも僅かに大きく設定されるのがよい。
【0056】
ハンドルホルダ14の構成材料としては、穿刺針12をハンマー等で打撃した際にも安定した剛性を有する樹脂製の材料が好ましく、例えば、外針基18の構成材料として例示したものから選択することができる。
【0057】
本実施形態に係る注入針セット10Aでは、外針基18に設けられたカップ部32と、ハンドルホルダ14に設けられた球状部40により、穿刺針12に対するハンドルホルダ14の接続角度を変更自在とする関節構造35が構成されている。
【0058】
上記のように構成された注入針セット10Aを用いて骨セメントを骨内に注入するには、まず、図1及び図2に示すように、穿刺針12の外針基18にハンドルホルダ14を接続する(嵌合させる)。本実施形態の場合、外針基18に設けられたカップ部32の球面状凹部33と、ハンドルホルダ14の一端部に設けられた球状部40とが球面を介して嵌合するので、どの方向にも自在に角度調整して固定することが可能であり、ハンドルホルダ14を任意の角度で確実に接続することができる。また、カップ部32を弾性変形させてハンドルホルダ14を着脱するので、着脱が簡単である。
【0059】
次に、画像誘導下(X線透視下またはCT透視下)において穿刺位置及び穿刺目標を決定した後、ハンドルホルダ14を接続した穿刺針12をハンマーで打撃して、骨(例えば、椎骨)内の穿刺目標まで穿刺する。このとき、術者は、外針基18ではなく、ハンドルホルダ14のホルダ本体36を把持することで、自己の手をX線の照射領域から退避させることができる。またこの場合、術者(使用者)は、任意の方向に接続したハンドルホルダ14を把持して手技を実施することができるため、良好な操作性が得られる。
【0060】
なお、穿刺針12を患者に穿刺する前に、注入ポート28に、洗浄液供給用のチューブを接続し、注入ポート28を介して洗浄液を内針20の骨セメント通路24に供給し、骨セメント通路24を洗浄してもよい。
【0061】
穿刺目標まで穿刺針12を穿刺した後、内針20を外針16から抜去する。次に、骨セメントを入れたシリンジを外針基18の注入ポート28に装着して、シリンジ内の骨セメントを、骨セメント通路24を介して骨内に注入する。シリンジ内の骨セメントを必要量注入した後、シリンジを取り外す。次いで、内針20を外針基18の通路及び外針16の骨セメント通路24に挿入して、通路及び骨セメント通路24内に残存している骨セメントを骨内に押し出す。
【0062】
経皮的椎体形成術では、複数の穿刺針12を用いる場合に、互いの外針基18が平行となる向きに、複数の穿刺針12を患者の体に穿刺することがある。本実施形態に係る穿刺針12のように外針基18の長手方向端部に接続部30(カップ部32)が設けられると、隣接する穿刺針12同士で接続部30が邪魔にならず、手技を円滑に行うことが可能となる。
【0063】
また、本実施形態において、ハンドルホルダ14は、外針基18の長手方向側に接続されるので、複数の穿刺針12を互いの外針基18が平行となる向きで患者の体に穿刺する場合に、穿刺針12に接続されたハンドルホルダ14が、他の穿刺針12との関係で邪魔にならず、手技を円滑に行うことが可能となる。またこの場合、複数の穿刺針12の各々に接続されたハンドルホルダ14は、自在に角度調整が可能であるため、各々のハンドルホルダ14の方向を異ならせることで、複数のハンドルホルダ14の相互間隔を広げることができ、手技を円滑に行うことが可能となる。
【0064】
本実施形態では、外針基18の長手方向の一端部にカップ部32を設けたが、外針基18の側面にカップ部32を設けてもよい。この場合、カップ部32は、外針16の軸線方向に直交し、且つ外針基18の長手方向に直交する方向に突出する。
【0065】
[第2実施形態]
次に、図4を参照し、第2実施形態に係る骨セメント注入針セット10B(以下、「注入針セット10B」という)について説明する。なお、第2実施形態に係る注入針セット10Bにおいて、第1実施形態に係る注入針セット10Aと同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0066】
この注入針セット10Bは、骨セメントを骨の内部に注入するための骨セメント注入用穿刺針46(以下、「穿刺針46」ともいう)と、穿刺針46に着脱可能なハンドルホルダ48とを備える。
【0067】
穿刺針46は、外針基18aの長手方向の一端部に球状部50(接続部50a)が設けられている点で、外針基18の長手方向の一端部にカップ部32が設けられている穿刺針12(図1等参照)と異なる。球状部50は、図1等に示した球状部40と同様に構成されている。ハンドルホルダ48は、一端部にカップ部52(接続部52a)が設けられている点で、一端部に球状部40が設けられたハンドルホルダ14(図1等参照)と異なる。カップ部52は、図1等に示したカップ部32と同様に構成されている。
【0068】
本実施形態に係る注入針セット10Bでは、外針基18aに設けられた球状部50と、ハンドルホルダ48に設けられたカップ部52により、穿刺針46に対するハンドルホルダ48の接続角度を変更自在とする関節構造53が構成されている。
【0069】
このように、第2実施形態に係る注入針セット10Bは、穿刺針46の外針基18aに球状部50を設け、ハンドルホルダ48にカップ部52を設けた構成であり、このような構成によっても、第1実施形態に係る注入針セット10Aと同様の効果が得られる。
【0070】
本実施形態では、外針基18aの長手方向の一端部に球状部50を設けたが、外針基18aの側面に球状部を設けてもよい。この場合、球状部50は、外針の軸線方向に直交し、且つ外針基の長手方向に直交する方向に突出する。
【0071】
[第3実施形態]
次に、図5を参照し、第3実施形態に係る骨セメント注入針セット10C(以下、「注入針セット10C」という)について説明する。なお、第3実施形態に係る注入針セット10Cにおいて、第1実施形態に係る注入針セット10Aと同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0072】
この注入針セット10Cは、骨セメントを骨の内部に注入するための骨セメント注入用穿刺針54(以下、「穿刺針54」ともいう)と、穿刺針54に着脱可能なハンドルホルダ56とを備える。
【0073】
穿刺針54は、外針基18bの一端部に接続部57が設けられている点で、外針基18の一端部にカップ部32が設けられた穿刺針12と異なる。接続部57は、穿刺針54とハンドルホルダ56とを着脱可能に嵌合するとともに、外針基18bに対するハンドルホルダ56の角度を変更自在にする関節構造を構成するものであり、外針基18bに設けられ接続基部59と、この接続基部59に角度自在に嵌合する接続ヘッド58とを備える。
【0074】
接続基部59は、球面状凹部60が設けられたカップ部61を有する。このカップ部61は、球面状凹部60の内径よりも小さい直径の開口部59aを有する。接続ヘッド58は、カップ部61に着脱可能に嵌合する球状部62を有する。接続ヘッド58の球状部62が設けられた側とは反対側の端部には、ハンドルホルダ56とネジ嵌合するための雌ネジ部58aが設けられている。カップ部61及び球状部62は、図1等に示したカップ部32及び球状部40と同様に構成してもよいが、図1等に示したカップ部32及び球状部40と異なり、接続基部59と接続ヘッド58とは着脱可能である必要はなく、また、摩擦により、所定位置で固定することができる。
【0075】
ハンドルホルダ56は、一端部(先端部)に雄ネジ部63が設けられている点で、一端部に球状部40が設けられたハンドルホルダ14と異なる。雄ネジ部63は、接続ヘッド58の雌ネジ部58aに螺合可能に構成されている。雄ネジ部63と雌ネジ部58aとが螺合することにより、ハンドルホルダ56を接続ヘッド58に強固に固定することができる。
【0076】
本実施形態に係る注入針セット10Cによれば、関節構造を構成する接続部57を外針基18bに設け、この接続部57に対してハンドルホルダ56を角度不変に嵌合(ネジ嵌合)させる構成を採用したので、穿刺針54に対してハンドルホルダ56を角度自在に接続することができるとともに、ハンドルホルダ56と穿刺針54とをネジ嵌合によって強固に接続することが可能であり、より安定した操作性を得ることができる。
【0077】
なお、接続基部59と接続ヘッド58との嵌合構造のオスメスの関係を逆にしてもよい。すなわち、接続基部59の球面状凹部60を球状部に変更するとともに、接続ヘッド58の球状部62を球面状凹部に変更してもよい。また、接続ヘッド58とハンドルホルダ56とのネジ嵌合構造のオスメスの関係を逆にしてもよい。すなわち、接続ヘッド58の雌ネジ部58aを雄ネジ部に変更するとともに、ハンドルホルダ56の雄ネジ部63を雌ネジ部に変更してもよい。
【0078】
第3実施形態において、第1実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0079】
本実施形態では、外針基18bの長手方向の一端部に接続部57を設けたが、外針基18bの側面に接続部57を設けてもよい。この場合、接続部57は、外針の軸線方向に直交し、且つ外針基18bの長手方向に直交する方向に突出する。
【0080】
[第4実施形態]
次に、図6を参照し、第4実施形態に係る骨セメント注入針セット10D(以下、「注入針セット10D」という)について説明する。なお、第4実施形態に係る注入針セット10Dにおいて、第1実施形態に係る注入針セット10Aと同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0081】
この注入針セット10Dは、骨セメントを骨の内部に注入するための骨セメント注入用穿刺針66(以下、「穿刺針66」ともいう)と、穿刺針66に着脱可能なハンドルホルダ68とを備える。
【0082】
穿刺針66は、外針基18cの一端部に雌ネジ部67aを有する嵌合部(嵌合穴)67が設けられている点で、外針基18の一端部にカップ部32が設けられた穿刺針12(図1等参照)と異なる。穿刺針66のその他の部分の構成は、図1等に示した穿刺針12と同様である。
【0083】
ハンドルホルダ68は、一端部に接続部70が設けられている点で、一端部に球状部40が設けられたハンドルホルダ14(図1等参照)と異なる。接続部70は、穿刺針66とハンドルホルダ68とを着脱可能に嵌合するとともに、外針基18cに対するハンドルホルダ68の角度を変更自在にする関節構造を構成するものであり、ホルダ本体36の一端部(先端部)に設けられ接続基部72と、この接続基部72に角度自在に嵌合する接続ヘッド74とを備える。
【0084】
接続基部72は、球状部73を構成する。接続ヘッド74は、球面状凹部75が設けられたカップ部76を有する。カップ部76は、球面状凹部75の内径よりも小さい直径の開口部76aを有する。カップ部76及び球状部73は、図1等に示したカップ部32及び球状部40と同様に構成してもよいが、図1等に示したカップ部32及び球状部40と異なり、接続基部72と接続ヘッド74とは着脱可能である必要はなく、また、摩擦により、所定位置で固定することができる。
【0085】
接続ヘッド74のカップ部76が設けられた側とは反対側の端部には、外針基18cに設けられた雌ネジ部67aに螺合可能な雄ネジ部74bが設けられている。雌ネジ部67aと雄ネジ部74bとを螺合させることにより、接続ヘッド74と外針基18cとを強固に固定することができる。
【0086】
本実施形態に係る注入針セット10Dによれば、関節構造を構成する接続部70をハンドルホルダ68に設け、外針基18cに対して接続部70を角度不変に嵌合(ネジ嵌合)させる構成を採用したので、穿刺針66に対してハンドルホルダ68を角度自在に接続することができるとともに、ハンドルホルダ68と穿刺針66とをネジ嵌合によって強固に接続することが可能であり、第3実施形態の場合と同様に、より安定した操作性を得ることができる。また本実施形態の場合、外針基18cには雌ネジ部67aを有する嵌合部67を設けるだけでよく、ハンドルホルダ68と嵌合するための突起物を設ける必要がないので、第1〜3実施形態と比較して、外針基18cをコンパクトに構成することが可能である。
【0087】
なお、接続基部72と接続ヘッド74との嵌合構造のオスメスの関係を逆にしてもよい。すなわち、接続基部72の球状部73をカップ部に変更するとともに、接続ヘッド74のカップ部76を球状部に変更してもよい。また、接続ヘッド74と外針基18cとのネジ嵌合構造のオスメスの関係を逆にしてもよい。すなわち、接続ヘッド74の雄ネジ部74bを雌ネジ部に変更するとともに、外針基18cの雌ネジ部67aを雄ネジ部に変更してもよい。
【0088】
第4実施形態において、第1実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0089】
[第5実施形態]
次に、図7を参照し、第5実施形態に係る骨セメント注入針セット10E(以下、「注入針セット10E」という)について説明する。なお、第5実施形態に係る注入針セット10Eにおいて、第1実施形態に係る注入針セット10Aと同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0090】
この注入針セット10Eは、骨セメントを骨の内部に注入するための骨セメント注入用穿刺針80(以下、「穿刺針80」ともいう)と、穿刺針80に着脱可能なハンドルホルダ82とを備える。
【0091】
穿刺針80は、外針基18dの長手方向の一端部に嵌合部84が設けられている点で、外針基18の長手方向の一端部にカップ部32が設けられた穿刺針(図1等参照)と異なる。この嵌合部84は、中空円筒形に形成され、その外周部には雄ネジ部84aが設けられている。穿刺針80のその他の部分の構成は、図1等に示した穿刺針12と同様である。
【0092】
ハンドルホルダ82は、長尺な棒形状に形成された中空状のホルダ本体86と、外針基18dに着脱可能な接続部88とを有する。ホルダ本体86には軸線方向に沿って延在する第1内腔87aが貫通形成されている。ホルダ本体86の基端部には、ロック付き骨セメント注入具(例えば、シリンジ)が着脱可能に係合するポート89が設けられている。
【0093】
接続部88は、穿刺針80とハンドルホルダ82とを着脱可能に嵌合するとともに、外針基18dに対するハンドルホルダ82の角度を変更自在にする関節構造を構成するものであり、ホルダ本体86の一端部(先端部)に一体的に設けられ球状部91を有する接続基部90と、この接続基部90に角度自在に嵌合する球面状凹部93bが設けられたカップ部93を有する接続ヘッド92とを備える。接続ヘッド92は、球面状凹部93bの内径よりも小さい直径の開口部93aを有する。カップ部93及び球状部91は、図1等に示したカップ部32及び球状部40と同様に構成してもよいが、図1等に示したカップ部32及び球状部40と異なり、接続基部90と接続ヘッド92とは着脱可能である必要はなく、また、摩擦により、所定位置で固定することができる。
【0094】
接続ヘッド92には軸線方向に沿った第2内腔87bが貫通形成されており、接続ヘッド92のカップ部93が設けられた側とは反対側の端部には、先端管部94とロック部96とが同心状に設けられている。第2内腔87bの一端は先端管部94の先端で開口し、第2内腔87bの他端は球面状凹部93bにて開口している。ホルダ本体86に設けられた第1内腔87aは、球状部91の先端で末広がり状に開口している。このため、ホルダ本体86の接続ヘッド92に対する角度に関わらず、第1内腔87aと第2内腔87bとが連通する。
【0095】
先端管部94は嵌合部84に挿入可能であり、先端管部94の先端は、ロック部96よりも軸線方向に僅かに突出している。ロック部96は、環状溝を介して先端管部94を囲繞する円筒状に形成され、その内周部には、嵌合部84の外周部に形成された雄ネジ部84aに螺合可能な雌ネジ部96aが設けられている。雌ネジ部96aと雄ネジ部94aとを螺合させることにより、接続ヘッド92と外針基18dとを強固に固定することができる
【0096】
上記のように構成された接続ヘッド92は、外針基18dの側部に設けられた嵌合部84にネジ嵌合可能であるとともに、外針基18dの上部に設けられた注入ポート28にも接続可能(ネジ嵌合可能)に構成されている。すなわち、先端管部94は注入ポート28に挿入可能であり、ロック部96は注入ポート28の外周部に設けられた雄ネジ部28aに螺合可能である。
【0097】
先端管部94が注入ポート28に挿入された状態で、先端管部94と注入ポート28とが隙間なく嵌合するように先端管部94と注入ポート28とは、テーパ嵌合するように構成されていてもよい。この場合、先端管部94の外周部は雄ルアーテーパーに構成され、注入ポート28の内周部は雌ルアーテーパーに構成される。
【0098】
本実施形態に係る注入針セット10Eによれば、関節構造を構成する接続部88をハンドルホルダ82に設け、外針基18dに対して接続部88を角度不変に嵌合させる構成を採用したので、穿刺針80に対してハンドルホルダ82を角度自在に接続することができるとともに、ハンドルホルダ82と穿刺針80とをネジ嵌合によって強固に接続することが可能であり、第3及び第4実施形態の場合と同様に、安定した操作性を得ることができる。
【0099】
また、本実施形態に係る注入針セット10Eでは、ハンドルホルダ82を中空状に構成するとともに接続部88を外針基18dの注入ポート28に接続可能に構成したので、骨セメントを穿刺針80に供給するに際に、外針基18dの注入ポート28にハンドルホルダ82の接続部88を接続するとともに、ハンドルホルダ82の基端部に設けられたポート89に、骨セメントを吐出するインジェクタを接続し、ハンドルホルダ82の第1内腔87a及び第2内腔87bを介して穿刺針80に骨セメントを供給することができる。すなわち、ハンドルホルダ82に、外針基18dの注入ポート28と骨セメントを吐出するインジェクタとを接続するための延長チューブとしての機能を持たせることができる。
【0100】
なお、接続基部90と接続ヘッド92との嵌合構造のオスメスの関係を逆にしてもよい。すなわち、接続基部90の球状部91をカップ部に変更するとともに、接続ヘッド92のカップ部93を球状部に変更してもよい。
【0101】
本実施形態では、外針基18dの長手方向の一端部に嵌合部84を設けたが、外針基18dの側面に嵌合部84を設けてもよい。この場合、嵌合部84は、外針16の軸線方向に直交し、且つ外針基18dの長手方向に直交する方向に突出する。
【0102】
第5実施形態において、第1実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0103】
[第6実施形態]
次に、図8及び図9を参照し、第6実施形態に係る骨セメント注入針セット10F(以下、「注入針セット10F」という)について説明する。なお、第6実施形態に係る注入針セット10Fにおいて、第1実施形態に係る注入針セット10Aと同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0104】
図8は、注入針セット10Fの一部省略斜視図であり、図9Aは、図8におけるIXA−IXA線に沿った断面図であり、図9Bは、図9AにおけるIXB−IXB線に沿った断面図である。この注入針セット10Fは、骨セメントを骨の内部に注入するための骨セメント注入用穿刺針100(以下、「穿刺針100」ともいう)と、穿刺針100に着脱可能なハンドルホルダ102とを備える。
【0105】
穿刺針100における外針基18eには、ハンドルグリップ(外針基18e本体)から外針の先端側に向かって突出した突出部104が設けられている。またこの突出部104には、ハンドルホルダ102と着脱可能に嵌合する接続部105として、球状膨出部106が設けられている。図9A及び図9Bに示すように、この球状膨出部106の曲率中心は、外針16の軸線上に設定されている。穿刺針100のその他の部分の構成は、図1等に示した穿刺針12と同様である。
【0106】
ハンドルホルダ102は、長尺な棒形状に形成されたホルダ本体36と、外針基18eに着脱可能な接続部108とを有する。ホルダ本体36は、図1等に示したホルダ本体36と同様に構成されている。本実施形態における接続部108は、ホルダ本体36の一端部(先端部)に設けられ、球面状の内周面113を有する断面C字状の保持部110である。
【0107】
保持部110は、互いに反対方向に球面状に湾曲した第1アーム部112aと第2アーム部112bとを有する。第1アーム部112aと第2アーム部112bは、弾性変形可能であり、第1アーム部112aと第2アーム部112bが拡開することにより、球状膨出部106が第1アーム部112aと第2アーム部112bとの間を通過可能となる。これにより、保持部110と球状膨出部106とが着脱可能に嵌合するようになっている。
【0108】
球状膨出部106と保持部110とが互いに嵌合した状態で穿刺針100に対するハンドルホルダ102の角度を調整することができ且つ穿刺針100をハンドルホルダ102により安定して保持できるように、球状膨出部106の外周面と保持部110の内周面との間の摩擦抵抗を設定すべく、自然状態(弾性変形がない状態)での球状膨出部106の外径と保持部110の内径とは略同一に設定されるか、球状膨出部106の外径が保持部110の内径よりも僅かに大きく設定される。
【0109】
本実施形態に係る注入針セット10Fでは、外針基18eに設けられた球状膨出部106と、ハンドルホルダ102に設けられた保持部110により、穿刺針100に対するハンドルホルダ102の接続角度を変更自在とする関節構造116が構成されている。この関節構造116によって、ハンドルホルダ102を所定位置(所定角度)で固定することができる。
【0110】
本実施形態に係る注入針セット10Fによれば、外針基18eから突出する突出部104に設けられた球状膨出部106と、ハンドルホルダ102の一端部に設けられた球面状の内周面113を有する断面C字状の保持部110とが球面を介して嵌合するので、どの方向にも自在に角度調整して固定することが可能であり、ハンドルホルダ102を任意の角度で確実に接続することができる。また、穿刺針100の中心部をハンドルホルダ102により保持できるため、穿刺針100をより安定した状態で保持することができる。
【0111】
第6実施形態において、第1実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0112】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0113】
10A〜10F…骨セメント注入針セット
12、46、54、66、80、100…骨セメント注入用穿刺針
14、48、56、68、82、102…ハンドルホルダ
18、18a〜18e…外針基
30、38、50a、52a、57、70、88、105、116…接続部(関節構造)
32、52、61、76、93…カップ部
40、50、62、73、91…球状部
36、86…ホルダ本体
33、55、60、75、93b…球面状凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に貫通する骨セメント通路を有する外針と、
前記外針の基端部に固定された外針基と、
先端に針先を有し、かつ前記外針の中空部に摺動可能に挿通される内針と、
前記内針の基端部に固定された内針基と、
を備えた骨セメント注入用穿刺針であって、
前記外針基には、長尺な棒形状に形成されたハンドルホルダの一端部に着脱可能に嵌合するとともに、前記外針基に対する前記ハンドルホルダの角度を変更自在にする接続部が設けられている、
ことを特徴とする骨セメント注入用穿刺針。
【請求項2】
請求項1記載の骨セメント注入用穿刺針において、
前記接続部は、球面状凹部を有する弾性変形可能なカップ部又は球状部であり、前記ハンドルホルダの一端部に設けられた球状部又は球面状凹部を有する弾性変形可能なカップ部に嵌合可能である、
ことを特徴とする骨セメント注入用穿刺針。
【請求項3】
請求項1記載の骨セメント注入用穿刺針において、
前記接続部は、前記外針基に設けられ球面状凹部又は球状部を有する接続基部と、前記接続基部に角度自在に嵌合する球状部又は球面状凹部を有する接続ヘッドとを備え、
前記接続ヘッドは、前記ハンドルホルダに角度不変に嵌合可能である、
ことを特徴とする骨セメント注入用穿刺針。
【請求項4】
請求項1記載の骨セメント注入用穿刺針において、
前記外針基には、前記外針を囲み且つ外針基本体から前記外針の先端側に向かって突出した突出部が設けられ、
前記突出部には、前記ハンドルホルダの一端部に設けられた球面状の内周面を有する断面C字状の弾性変形可能な保持部に嵌合可能な球状膨出部が設けられ、前記球状膨出部が前記接続部を構成する、
ことを特徴とする骨セメント注入用穿刺針。
【請求項5】
軸線方向に貫通する骨セメント通路を有する外針と、
前記外針の基端部に固定された外針基と、
先端に針先を有し、かつ前記外針の中空部に摺動可能に挿通される内針と、
前記内針の基端部に固定された内針基と、
を備えた骨セメント注入用穿刺針に着脱可能なハンドルホルダであって、
長尺な棒形状に形成されたホルダ本体と、
前記ホルダ本体の一端部に設けられ、前記外針基に着脱可能に嵌合するとともに、前記骨セメント注入用穿刺針に対する前記ホルダ本体の角度を変更自在にする接続部とを備える、
ことを特徴とするハンドルホルダ。
【請求項6】
請求項5記載のハンドルホルダにおいて、
前記接続部は、球状部又は球面状凹部を有する弾性変形可能なカップ部であり、前記外針基に設けられた球面状凹部又は球状部に嵌合可能である、
ことを特徴とするハンドルホルダ。
【請求項7】
請求項5記載のハンドルホルダにおいて、
前記接続部は、前記ホルダ本体の一端部に設けられ球面状凹部又は球状部を有する接続基部と、前記接続基部に角度自在に嵌合する球状部又は球面状凹部を有する接続ヘッドとを備え、
前記接続ヘッドは、前記外針基に設けられた嵌合部に角度不変に嵌合可能である、
ことを特徴とするハンドルホルダ。
【請求項8】
請求項7記載のハンドルホルダにおいて、
前記接続部は、前記外針基に設けられた、前記外針の内腔に連通する注入ポートに接続可能であり、
前記ハンドルホルダには、前記接続部が前記注入ポートに接続された際に前記注入ポートに連通する内腔が設けられ、
前記内腔は、前記ホルダ本体の他端部にて開口する、
ことを特徴とするハンドルホルダ。
【請求項9】
請求項5記載のハンドルホルダにおいて、
前記接続部は、球面状の内周面を有する断面C字状の弾性変形可能な保持部であり、
前記保持部は、外針基本体から前記外針の先端側に向かって突出した突出部に設けられた球状膨出部に嵌合可能に構成されている、
ことを特徴とするハンドルホルダ。
【請求項10】
骨セメントを骨の内部に注入するための骨セメント注入用穿刺針と、前記骨セメント注入用穿刺針に着脱可能に嵌合する長尺な棒形状のハンドルホルダと、を備えた骨セメント注入針セットであって、
前記骨セメント注入用穿刺針は、
軸線方向に貫通する骨セメント通路を有する外針と、
前記外針の基端部に固定され、側部に嵌合部が設けられた外針基と、
先端に針先を有し、かつ前記外針の中空部に摺動可能に挿通される内針と、
前記内針の基端部に固定された内針基と、を有し、
前記骨セメント注入針セットは、前記骨セメント注入用穿刺針と前記ハンドルホルダとを着脱可能に嵌合するとともに、前記外針基に対する前記ハンドルホルダの角度を変更自在にする関節構造を備える、
ことを特徴とする骨セメント注入針セット。
【請求項11】
請求項10記載の骨セメント注入針セットにおいて、
前記関節構造は、
前記外針基に設けられ、球面状凹部を有するカップ部、又は球状部と、
前記ハンドルホルダの一端に設けられ、前記外針基に設けられた前記カップ部に嵌合可能な球状部、又は前記外針基に設けられた前記球状部に嵌合可能な球面状凹部を有するカップ部とを備える、
ことを特徴とする骨セメント注入針セット。
【請求項12】
請求項10記載の骨セメント注入針セットにおいて、
前記関節構造は、前記ハンドルホルダの一端部に設けられた接続基部と、前記接続基部に角度自在に嵌合する接続ヘッドと備え、
前記接続基部は、球面状凹部を有するカップ部、又は球状部を有し、
前記接続ヘッドは、前記接続基部の前記球面状凹部に嵌合する球状部、又は前記接続基部の前記球状部に嵌合する球面状凹部を有し、
前記接続ヘッドと前記ハンドルホルダとは、角度不変に嵌合可能である、
ことを特徴とする骨セメント注入針セット。
【請求項13】
請求項10記載の骨セメント注入針セットにおいて、
前記関節構造は、前記ホルダ本体の一端部に設けられた接続基部と、前記接続基部に角度自在に嵌合する接続ヘッドと備え、
前記接続基部は、球面状凹部を有するカップ部、又は球状部を有し、
前記接続ヘッドは、前記接続基部の前記球面状凹部に嵌合する球状部、又は前記接続基部の前記球状部に嵌合する球面状凹部を有し、
前記接続ヘッドと前記外針基とは、角度不変に嵌合可能である、
ことを特徴とする骨セメント注入針セット。
【請求項14】
請求項13記載の骨セメント注入針セットにおいて、
前記接続ヘッドは、前記外針基に設けられた、前記外針の内腔に連通する注入ポートに接続可能であり、
前記ハンドルホルダには、前記接続ヘッドが前記注入ポートに接続された際に前記注入ポートに連通する内腔が設けられ、
前記内腔は、前記ホルダ本体の他端部にて開口する、
ことを特徴とする骨セメント注入針セット。
【請求項15】
請求項10記載の骨セメント注入針セットにおいて、
前記外針基には、外針基本体から前記外針の先端側に向かって突出した突出部が設けられ、前記突出部には球状膨出部が設けられ、
前記ハンドルホルダの一端部には、前記球状膨出部に嵌合可能であり且つ球面状の内周面を有する断面C字状の保持部が設けられ、
前記球状膨出部と前記保持部とにより前記関節構造が構成されている、
ことを特徴とする骨セメント注入針セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−232044(P2012−232044A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104059(P2011−104059)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】