説明

骨固定具の受け部にロッド状要素をロックするためのロック装置およびこのロック装置を備えた骨固定具

【課題】骨固定具の受け部に設けられ、ロッド状要素を固定するためのロック装置を提供する。
【解決手段】ロック装置は、第1の端部61と、少なくともその一部に外ねじ63を備える第2の端部62と、同軸ボアとを有する第1のロック部材6を備える。同軸ボアは、第1のロック部材を貫通し、ボア軸と、上記ボアの少なくとも一部に設けられる内ねじとを有する。ロック装置はさらに、第1の端部71と、第2の端部72と、第1のロック部材の上記ボアに設けられた内ねじと協働する外ねじを少なくともその一部に有する外面とを有する第2のロック部材7を備える。第2のロック部材7は、回転させることによってボア軸に沿って移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨固定具の受け部にロッド状要素を固定するためのロック装置、および、このようなロック装置を備えた骨固定具に関する。ロック装置は、第1のロック要素および第2のロック要素からなる。第2のロック要素は、第1のロック要素に収容されており、抜けたり紛失したりするのが防止されている。本発明は、特に多軸骨ねじに適用可能であり、ねじ要素の頭部およびロッドは独立して固定可能である。
【背景技術】
【0002】
ねじ要素の頭部およびロッドを独立して固定することのできる多軸骨ねじは、たとえば、US7,223,268B2から公知である。この明細書中に記載されるロック装置は、受け部の内壁に設けられたねじ山と協働する第1のロック要素と、止めねじの形状であって第1のロック要素に収容される第2のロック要素とを有する。
【0003】
脊柱固定ロッドを骨ねじに固定するための入れ子状留め具と止めねじとの組合せが、US7,204,838B2に開示される。留め具基部は、ねじ切りされた止めねじを受けるための中央ねじ穴を有する。留め具基部は、径方向内側に延在する当接肩部を備え、これが止めねじに係合し当接して、留め具の上部から止めねじが出てくるのを防ぎ、かつ、止めねじおよび留め具を同時に取外すことを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US7,223,268B2
【特許文献2】US7,204,838B2
【特許文献3】US2007/0118123A1
【特許文献4】WO/2007/075454A1
【特許文献5】US2004/0158247A1
【特許文献6】EP1935358A1
【特許文献7】US2005/0171537A1
【特許文献8】EP2135574A1
【特許文献9】EP1323391A2
【特許文献10】DE202007012643U1
【特許文献11】EP2160988A1
【特許文献12】US2010/0262195A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、外科手術時の操作中の安全性が強化された改善されたロック装置とこのようなロック装置を備える骨固定具とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載のロック装置、および請求項18に記載の骨固定具によって果たされる。さらなる展開例が従属請求項に記載される。
【0007】
第2のロック要素は、使用中にこの第2のロック要素が第1のロック要素から分離し得ないように、第1のロック要素に収容される。したがって、ロック装置を挿入するための器具に関する操作ミスが起こった場合、または、ロッドの位置をさらに調整している間に第2のロック要素が緩んだ場合でも、第2のロック要素は第1のロック要素から抜出ることができないため、この第2のロック要素が失われることはない。
【0008】
ロック装置は予め組立てられた態様で搬送することができる。第2のロック要素は、抜けや紛失が防止された状態で第1のロック要素に収容されているので、手術中の取扱いが容易になって、安全性が高められる。
【0009】
ロック装置は、頭部およびロッドを別個に固定することを可能にするよう構成された多軸骨固定具に特に適用可能であるが、単軸の骨固定具と用いることもでき、または、可変角度で配置される骨ねじを備えた骨プレートと用いることもできる。
【0010】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を用いた実施例の説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ロック装置の第1の実施例を備えた多軸骨ねじの実施例を示す分解斜視図である。
【図2】図1のロック装置が組立てられた状態である多軸骨ねじを示す斜視図である。
【図3】第1の実施例に従ったロック装置の第1のロック要素を、中心ボア軸を含む面に沿って示す断面図である。
【図4】図3に従った第1のロック要素を上方から示す斜視図である。
【図5】図3の第1のロック要素を底から示す斜視図である。
【図6】第1の実施例に従ったロック装置の第2のロック要素を、中心ボア軸を含む面に沿って示す断面図である。
【図7】図6の第2のロック要素を上方から示す斜視図である。
【図8】図6の第2のロック要素を底から示す斜視図である。
【図9】中心ボア軸を含む面に沿った断面図における第1の実施例に従ったロック装置を組立てるステップを示す図である。
【図10】中心ボア軸を含む面に沿った断面図における第1の実施例に従ったロック装置を組立てるステップを示す図である。
【図11】中心ボア軸を含む面に沿った断面図における第1の実施例に従ったロック装置を組立てるステップを示す図である。
【図12a】工具の一部が第1の位置にある第1の実施例のロック装置を、ロック装置の中心ボア軸を含む面に沿って示す断面図である。
【図12b】図12aの拡大部分を示す図である。
【図13a】工具の一部が第2の位置にあるロック装置の第1の実施例を、ロック装置の中心ボア軸を含む面に沿って示す断面図である。
【図13b】図13aの拡大部分を示す図である。
【図14】第1の実施例に従ったロック装置および工具の一部が組立てられた状態にある図1の多軸骨ねじを、ロック装置の中心ボア軸およびらせん軸を含む面に沿って示す断面図である。
【図15】第1の実施例に従ったロック装置を備えた多軸骨ねじを、工具のない状態で示す断面図である。
【図16】第2の実施例に従ったロック装置を示す分解斜視図である。
【図17】第2の実施例に従ったロック装置を組立てるステップを上方から示す斜視図である。
【図18】第2の実施例に従ったロック装置を組立てるステップを上方から示す斜視図である。
【図19】第2の実施例に従ったロック装置を組立てるステップを上方から示す斜視図である。
【図20】第2の実施例に従ったロック装置の第1のロック要素を上方から示す斜視図である。
【図21】図20に従った第1のロック要素を、中心ボア軸を含む面に沿って示す断面図である。
【図22】図21に示される第1のロック要素を線A−Aに沿って示す断面図である。
【図23】第2の実施例に従ったロック装置の第2のロック要素を、中心ボア軸を含む面に沿って示す断面図である。
【図24】図23に示される第2のロック要素を示す上面図である。
【図25】図23に従った第2のロック要素を示す斜視図である。
【図26】第2のロック要素が第1の位置にある第2の実施例に従ったロック装置を、中心ボア軸を含む面に沿って示す断面図である。
【図27】図26に示される第2のロック装置を図26の線B−Bに沿って示す断面図である。
【図28】第2のロック要素が第2の位置にある第2の実施例に従ったロック装置を、中心ボア軸を含む面に沿って示す断面図である。
【図29】図28のロック装置を図28の線D−Dに沿って示す断面図である。
【図30】変形例に従った第2のロック要素を示す断面図である。
【図31】変形例に従った第2のロック要素を上方から示す斜視図である。
【図32】変形例に従った第2のロック要素を示す上面図である。
【図33】変形例に従った第2のロック要素を底から示す斜視図である。
【図34a】変形例に従ったロック装置を示す断面図である。
【図34b】図34aの拡大部分を示す図である。
【図35a】変形例に従ったロック装置を示す断面図である。
【図35b】図35aの拡大部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
多軸骨ねじの実施例を図1および図2に示す。多軸骨ねじは、ねじ付きシャンク2と頭部3とを備えたねじ要素1を含む。頭部3は、球形セグメントの形状を有しており、その自由端においてねじ回しと係合させるための凹部3aを含む。ねじ要素3は、受け部4に回動可能に保持される。受け部4は実質的に円筒形であって、以下に記載するように、第1の端部41、第2の端部42、および第2の端部42付近に頭部3のための座部を備える。同軸ボア44は、第1の端部41から第2の端部42の方向に延在する。さらに、第1の端部41にU字型の凹部44が設けられ、これにより、2本の自由な脚部45および46が形成される。内ねじ47が上記脚部45および46の内壁に設けられる。U字型の凹部44および脚部45、46は、ロッド100を受けるためのチャネルを形成する。圧力要素5が設けられる。この圧力要素5は、受け部4に対してねじ要素1の特定の角度方向で頭部3をロックするために頭部に圧力を加えるよう構成される。圧力要素5は実質的に円筒形であって、第1の端部51、反対側の第2の端部52、同軸ボア53、および、第1の端部51から第2の端部52の方向に延在するU字型の凹部54を備える。U字型の凹部54により、ロッド100を受けるためのチャネルを形成する自由な2つの脚部55、56が形成される。図示される実施例における脚部55、56の高さは、ロッド100の直径よりも大きく、このため、ロッドが挿入されると脚部55、56はロッド100の上方に延在する。
【0013】
骨固定具はさらに、第1のロック要素6と第2のロック要素7とを備えるロック装置を含む。組立てられた状態では、第2のロック要素7は第1のロック要素6内に入れ子にされ、第1の位置と第2の位置との間で中心軸Cに沿って軸方向に移動可能である。
【0014】
第1の実施例に従ったロック装置を、ここで、図3〜図11を参照しつつより詳細に説明する。図3〜図5は、第2のロック要素7と組立てられる前の第1のロック要素6を示す。第1のロック要素6は実質的に円筒形であり、第1の端部61および第2の端部62を有する。第1のロック要素6の外面のうち少なくとも一部は外ねじ63を含む。この外ねじ63は、受け部4の脚部に設けられた内ねじ47と協働するよう構成される。第1のロック要素6には同軸ボア64が設けられており、同軸ボア64は、ボア軸Cと、内ねじを含む部分65とを備える。部分65は、第2の端部に隣接するかまたはその近くにあり、第1の端部61から或る程度距離を空けた位置まで延在する。外ねじ63のねじ山形状は、好ましくは、受け部の脚部45および46が広がるのを防ぐねじ山形状であって、たとえば、(図示されるような)角ねじ(flat thread)、または耐荷重面が負の角度である負の角のねじ(negative angle thread)などの形状である。内ねじは、たとえば図9〜図11に示されるメートルねじのような如何なるねじ山形状であってもよいが、角ねじであってもよい。
【0015】
第1のロック要素6はさらに、第2の端部62において、ねじ無しで凹状に丸みを帯びた中空の円筒形部分62aを含む。この円筒形部分62aは、第2のロック要素の挿入後、以下に記載するとおり、内側に曲げられている。同軸ボアは、第1の端部61に近接する部分に内径dを有する。内径dは、内ねじ部分65のねじ山の頂部同士の間で測定された内径dと同じであるかまたはそれよりも小さいが、内ねじ部分65のねじ山の谷同士の間の直径dよりも小さい。これにより、第2のロック要素7を第1のロック要素6の第1の端部61の方向に進ませるための、当接部66の形状をした止め部が設けられる。工具と係合させるための係合構造67が第1の端部61に隣接して設けられる。係合構造67は複数の同軸の半球状の溝であってもよい。
【0016】
第2のロック要素7は実質的に円筒形であり、第1の端部71と、反対側に第2の端部72とを有する。第1の端部71に隣接して設けられる外ねじ付き部分73は、第1のロック要素6の内ねじ部分65と協働するよう構成される。ねじ無し部分74が第2の端部72に隣接して設けられる。部分74の外面は実質的に滑らかである。ねじ無し部分74の外径は、ねじ部分73の外径よりも小さい。第2のロック要素7はさらに同軸ボアを含む、すなわち、凹部75と、第1の端部71に隣接し凹部75の内径よりも大きい内径を有する同軸の凹部76とを含む。さらに、挿入および駆動工具と係合するよう機能する複数の同軸の長手方向溝77の形状を有する係合構造が、第1の端部71に隣接して設けられる。同軸の長手方向溝77は、第2の端部72の面に開口し、そこに円形の穴78を形成する。穴78は、工具と係合して、第2のロック要素を第2の端部62から第1のロック要素に装着するよう機能し得る。
【0017】
第1のロック要素と第2のロック要素とを組立てるステップを、図9〜図11を参照して説明する。第1のステップにおいては、第2のロック要素7が、第1のロック要素6の第2の端部62から第1のロック要素6に差込まれる。次いで、図10に図示のとおり、第2のロック要素7は、第1の端部61の方向に捩込まれることによって、その第1の端部71が第1のロック要素6の同軸ボアに設けられた当接部66に当接するまで、前進させられる。第2のロック要素7の軸方向の長さは、第2のロック要素7の第1の端部71が当接部66に当接している第1の位置にこの第2のロック要素7が位置している場合に、第2の端部72が、凹状に丸みのある中空の円筒形部分62a内に位置するような長さである。その後、図11に図示のとおり、凹状に丸みのある中空の円筒形部分62aは、それが第2のロック要素7のねじ無し部分74に接触しかけるまで、内側に曲げられる。この動作により、環状の当接部62bの形状を有する第2の止め部が形成される。環状の当接部62bの内径dは、第1のロック要素6のねじ部分65の谷同士の間の内径dよりも小さいが、第2のロック要素7のねじ無し部分74の外径よりも大きい。
【0018】
多軸骨ねじおよびロック装置の部品はすべて、生体適合性材料から作られている。このような生体適合性材料は、チタン、ステンレス鋼、チタン・ニッケル合金(たとえば、ニチノール)などの生体適合性合金であってもよく、または、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの生体適合性のあるプラスチック材料であってもよい。構成要素は、すべて同じ材料から作ることもでき、または異なる材料から作ることもできる。
【0019】
ロック装置の機能を図12a〜図13bに示す。図12aには、内側の駆動部分102および外側の駆動部分103を含む工具101が図示される。内側の駆動部分は、第2のロック要素の凹部76および係合構造77に係合する。外側の駆動部分103は、第1のロック要素6における係合構造67に係合する。内側の駆動部分102および外側の駆動部分103は、独自に回転させることができる。内側の駆動部分102によって第2のロック要素7を回転させることにより、第2のロック要素7は、図12aおよび図12bに図示のとおり、第2のロック要素の第1の端部71に隣接する第1のねじ山旋回部73aが、同軸ボア64の内壁によって形成される当接部66に当接するまで、第1のロック装置6の第1の端部61に向かって進められる。同軸ボア64の内壁の内径dが第1のロック要素の内ねじ65の谷の内径dよりも小さいので、第2のロック要素7は、第1の端部に向かってさらに進むことができずに、第1の終端位置にある。第2のロック要素7が第1の終端位置にある場合、第1のロック要素の第1の端部61と外側の駆動部分103との間に隙間104が存在する。
【0020】
第1の駆動部分102を回転させて、第2の駆動部分103が第1のロック要素6の第1の端部61に当接するように第2の駆動部分103を下方に移動させることにより、第2のロック要素7が、第1のロック要素6の第2の端部62の方向に進む。第1のねじ山旋回部73aとは反対側にある最後のねじ山旋回部73bが、環状の当接部62bの形状をした第2の止め部に当接すると、上述の第2のロック要素7の進行が止まる。環状の当接部62bの内径dが第1のロック要素6のねじ部分63の谷同士の間の内径dよりも小さいので、第2のロック要素7は、第2の端部62の方にさらにねじ込むことができず、このため、外れる可能性はない。第2のロック要素7が第2の終端位置にある場合、ねじ無し部分74が第1のロック要素の第2の端部62から突出る。
【0021】
第1の実施例に従ったロック装置の使用を図14および図15に示す。図14は、図1および図2に従った多軸骨ねじを組立てられた状態で示す。回動させてから固定できるようにするために、受け部4は、ねじ頭部3が保持される座部48を有する。座部は球状に形成することができる。ねじ頭部およびねじ付きシャンク2は、受け部4の第2の端部42に設けられた開口部49を通って延在する。圧力要素5は頭部3の上に配置され、球状の凹部57で頭部3を部分的に囲んでいる。圧力要素5および受け部4は、U字型の凹部44および54を整列させてロッド100の挿入を可能にするように位置合わせされる。ロッド100が受け部5のU字型の凹部54に載ると、脚部55および56はロッド100の上方に延在する。
【0022】
ロック装置は、第2のロック要素7が第1のロック要素6に収まっている予め組立てられた態様で、受け部に挿入される。第1のロック要素6は、その第2の端部62が圧力要素の脚部55および56の上方の自由面に当接するまで、外側の駆動部分103によって、受け部4の内ねじ47に捩じ込まれる。第1のロック要素6をさらに前進させることにより、圧力要素5は、頭部3が最終的に中心軸Cに対してねじ付きシャンク2の所望の角度位置でロックされるまで、頭部3に対して圧力を加える。
【0023】
第2のロック装置は、内側の駆動部分102で回転させられることにより、ねじ無し部分74が第1のロック要素6から出てくるまで前進させられる。これにより、第2のロック要素の第2の端部72がロッド100の表面に係合し、ロッド100を圧力要素5のU字型の凹部54に押込む。図15には、ロック装置を備えた多軸骨ねじが工具なしの状態で示される。第1のロック要素6は、受け部に捩じ込まれ、圧力要素5の自由な脚部55および56を押圧して頭部3をロックする。第2のロック要素7はロッドを押圧して、チャネル内でロッドの位置を固定する。ロッドおよび頭部は、互いから独立して固定することができる。このため、ねじ要素の角度位置を維持しつつロッドの位置の調整することが可能となる。
【0024】
手術中にロック装置を挿入する前に、ロック装置は工具101によって取出される。工具に関する操作ミスによって、ロック装置がまだ受け部に挿入されていなくても、偶然、第2のロック要素を前進させてしまう可能性がある。第1および第2の止め部は、第1のロック要素からの第2のロック要素の抜けまたは紛失を防止する。また、ロック装置が既に受け部に挿入されていた場合、ロッドの固定を緩めるのに必要な以後の調整を安全に行うことができる。なぜなら、第2のロック要素が、第1の駆動部分102によってねじ戻されたときに第1の止め部に当接するからである。圧力要素5の脚部55および56がロッド100の上方に延在するので、ロッド100が挿入されたときに、第1のロック要素6が圧力要素5のみに作用し、このため、頭部3のみに作用する。第2のロック要素7はロッド100のみに作用する。
【0025】
ロック装置の第2の実施例を図16〜図29に示す。これは、上述した多軸骨ねじまたは他の如何なる骨固定具とも用いることができる。ロック装置は、第1のロック要素600および第2のロック要素700を含む。第1のロック要素600および第2のロック要素700は、ピン800を用いて接続される。ピンは、第1のロック部材600内で第2のロック部材700が前進するのを制限するために設けられた当接部材である。
【0026】
まず図20〜図22を参照すると、第1のロック部材600は実質的に円筒形であって、第1の端部601、第2の端部602、外ねじ部分603および同軸ボア604を備える。内ねじ部分605が第2の端部に隣接して設けられる。工具との係合のための係合構造607が、内ねじ部分605と第1の端部601との間の領域に設けられる。係合構造607は、第1の実施例と同様に、同軸に延在する凹部607を含み得る。
【0027】
内ねじ部分605とボア604のうち係合構造607を含む部分との間の移行部分には、円周方向に延在する溝606が設けられる。図22から最も良く分かるように、溝606は、半回転をわずかに超える分だけ、または半円をわずかに超える分だけ円周方向に延在する。溝の内径dは、内ねじ部分605の谷同士の間で測定される内ねじ部分605の内径dよりも大きい。溝606の軸方向の高さは、内ねじ部分605の少なくとも1回転分に相当する。溝のそばには、溝の円周方向における一方端部606cによって第1の止め部が設けられ、溝の円周方向における他方端部606dによって第2の止め部が設けられる。
【0028】
第2のロック要素700は、第1の端部701、反対側に第2の端部702、および第1の端部701に隣接する外ねじ部分703を有する。同軸ボア、すなわち凹部705は、第1の端部から第2の端部の方向に延在する。ねじ無し部分704が第2の端部702に隣接して設けられる。第1の端部701に隣接して、同軸凹部706が設けられている。この同軸凹部706は、工具との係合のために、たとえば同軸で長手方向の凹部の形状を有する係合構造を備える。同軸の係合凹部707が第2の端部702を通って延在することにより、穴708が設けられる。
【0029】
特に図23〜図25から分かるように、図16〜図19に示されるピン800を収容するための凹部709が設けられる。ピン800は円筒形であって、ピンの一部801が凹部709から突出るような程度まで凹部709に嵌まり込む。ピンは凹部に固定されてもよい。さらに、ピン800は、図26〜図29に図示されるように、溝606に延在するような大きさにされる。ピン800は当接部材を形成しており、この当接部材は、溝の一方端部606cによって形成される第1の止め部に当接し、溝の他方端部606dによって形成される第2の止め部に当接するよう構成される。
【0030】
図17〜図19に図示のとおり、第2の実施例に従ったロック装置の組立ては、第1のロック部材600の第1の端部から第2のロック部材700を差込むことによって実行される。第2のロック部材700がねじ山同士の係合によって第1のロック部材600に入れ子にされると、第2のロック部材は、凹部709が溝606の領域の或る位置にある係合構造の同軸凹部707のうちの1つに位置するまで、第2の端部に向かって前進させられる。次いで、図18に示されるように、ピン800が凹部709に挿入される。その後、溝606によって規定される境界内で第2のロック要素700を回転させることができる。
【0031】
ロック装置の第2の実施例の機能を図26〜図29を参照して説明する。図26においては、第2のロック要素700は第1の位置にある。
【0032】
ピン800のうち外側に突出る部分801は、溝606の一方端部606cに当接する。第2のロック要素700の第2の端部702は第1のロック要素600から突き出ない。ロック装置は、この予め組立てられた状態で、手術中に送達し使用することができる。
【0033】
図28においては、第2のロック要素700は、ピン800のうち外側に突出た部分801が溝600の他方端部600dに当接するまで、回転させられて下方に進められている。第2のロック要素700は、この位置では、それ以上、下方に進めさせることができないため、第1のロック要素600から抜出したり外れたりすることが防止される。ねじ無し部分704の軸方向の長さは、図28に示される第2の位置において、第1のロック要素から外側に突出る部分がロッドを押圧して固定するのに適した長さである。
【0034】
第1の実施例と同様に、第1のロック要素の外ねじ部分603は、如何なるねじ山形状を有していてもよいが、好ましくは、受け部の脚部が広がるのを防ぐねじ山形状、特に、図示されるような角ねじまたは負の角のねじ、を有する。内ねじ605と、第2のロック要素の協働する外ねじとは、メートルねじの形状を有していてもよく、または、角ねじの形状を有していてもよい。
【0035】
第2の実施例に従ったロック装置の部品および構成要素の材料は、第1の実施例の部品および構成要素と同じであるかまたは同様である。
【0036】
第2のロック要素は、第2の端部からも第1のロック要素に差込まれ得る。ロック装置の第2の止め部が軸方向において第1のロック要素のほぼ中間にあるので、第2の実施例に従ったロック装置はよりコンパクトに設計することができる。
【0037】
変形例においては、図30〜図35bから分かるように、第1のロック要素6′は内側角ねじ63′を含み、第2のロック要素7′は外側角ねじ73′を含む。第1の実施例に従った第1のロック要素6および第2のロック要素7を参照すると、ねじ山形状のみが異なっている。
【0038】
図34aおよび図34bは、第2のロック要素7′がその第1の端部71′で当接部66′と当接しているのを示す。
【0039】
図35aおよび図35bは、第2のロック要素7′がその第2の端部72′で環状の当接部62b′と当接しているのを示す。
【0040】
第2の実施例を参照すると、上述の角ねじ構成が実現可能である。
第1のロック要素6′の内ねじおよび第2のロック要素7′の外ねじに関する角ねじ構成の1つの利点は、適切な端部止め部が規定される点である。これは、角ねじがよりロバストであり、これらの端部止め部の一体構造を阻害するおそれのある鋭い端縁を有していないことによるものである。角ねじの設計がロバストであるので、寸法をより小さくすることができる。径方向の力が角ねじ内に取込まれないので、この効果が高められることとなる。
【0041】
上述の実施例のさらなる変形例が想到可能である。ロック装置は、単軸ねじまたは骨プレートとも用いることができる。たとえば、ロック装置は単軸ねじと、動的安定化のために用いられるエラストマー材料から作られるロッドと共に用いることができる。
【0042】
第2のロック要素は、ロッドに面するその第2の端部に、ロッドとの係合を強化するために突起などの係合構造を有してもよい。
【0043】
第1および第2のロック要素における係合構造は同軸の溝に限定されず、他の形状であってもよい。代替的には、第1および/または第2のロック要素の第1の端部の表面に係合構造が設けられてもよい。
【0044】
第1のロック要素内での第2のロック要素の移動を制限するための止め部について他の構造が想到可能である。たとえば、第1のロック要素は、第2のロック部材の溝において当接する当接部材を有していてもよい。
【0045】
他の手段によって、頭部およびロッドを別個に固定することができる。たとえば、圧力要素は、ロッドの上方に脚部が延在しないような異なる形状にすることもできる。この場合、第1のロック要素は、圧力要素を押圧する構造をその第2の端部に備えていてもよい。
【0046】
多軸骨固定具は、ロック装置と係合するよう構成される多くのさまざまな公知の態様で、たとえば、好ましい角度の底構成またはボトムローダー構成を備えた多軸骨固定具として、実現することができる。
【符号の説明】
【0047】
6 第1のロック部材、7 第2のロック部材、61 第1の端部、62 第2の端部、63 内ねじ、64 同軸ボア、65 内ねじ、71 第1の端部、72 第2の端部、73 外ねじ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨固定具の受け部にロッド状要素を固定するためのロック装置であって、
第1の端部(61,601)と、少なくとも一部に外ねじ(63,603)を備える第2の端部(62,602)と、同軸ボア(64,604)とを有する第1のロック部材(6,600,6′)を備え、同軸ボアは、第1のロック部材を貫通し、ボア軸(C)と、前記ボアの少なくとも一部に設けられた内ねじ(65,605)とを有し、前記ロック装置はさらに、
第2のロック部材(7,700,7′)を備え、第2のロック部材は、第1の端部(71,701)と、第2の端部(72,702)と、第1のロック部材の前記ボアに設けられた内ねじと協働する外ねじ(73,703)を少なくとも一部に備えた外面とを有し、
第2のロック部材(7,700,7′)は、回転させることによってボア軸(C)に沿って移動可能であり、第2のロック部材が進む経路は、第1の端部に向かう場合には第1の止め部(66,606c)によって制限され、第2の端部(62b,606d)に向かう場合には第2の止め部によって制限される、ロック装置。
【請求項2】
第1のロック部材(6,600)および第2のロック部材(7,700)は、組立てられた状態では分離することができない、請求項1に記載のロック装置。
【請求項3】
第2のロック部材(7,700,7′)が第1の止め部(66,606c)によって規定される第1の位置にある場合、第1のロック部材(6,600)のうち第1の端部(61,601)に面する第1の端部(71,701)はボア内にある、請求項1または2に記載のロック装置。
【請求項4】
第2のロック部材(7,700,7′)が第2の止め部によって規定される第2の位置にある場合、第2のロック部材(74,704)のうち少なくとも一部はボアの外側に突出る、請求項1から3のいずれかに記載のロック装置。
【請求項5】
第1のロック要素(6,600)は、第1の端部(61,601)に設けられた工具との係合のための係合構造(67,607)を有し、係合構造(67,607)はボア(64,604)に延在する、請求項1から4のいずれかに記載のロック装置。
【請求項6】
第1の止め部(66,606c)は、第1の端部(61,601)から距離を隔てて設けられる、請求項1から5のいずれかに記載のロック装置。
【請求項7】
第1の止め部(66,606c)は、第1のロック要素(6,600,6′)に設けられた当接部である、請求項1から6のいずれかに記載のロック装置。
【請求項8】
第1の止め部がボア(64)の内面部分(66)によって設けられ、その直径は、第1のロック要素に設けられた内ねじ(65)の谷同士の間の内径と同じであるかまたは前記内径よりも小さい、請求項1から7のいずれかに記載のロック装置。
【請求項9】
第2の止め部(62b)は、当接部によって第1のロック要素の第2の端部に設けられる、請求項1から8のいずれかに記載のロック装置。
【請求項10】
第2の止め部は、内ねじ(65)の谷よりもさらにボア内に突出た突起(62b)である、請求項1から9のいずれかに記載のロック装置。
【請求項11】
突起(62b)は環状である、請求項10に記載のロック装置。
【請求項12】
第2の止め部は当接部(801,606)によって、第1の端部および第2の端部から距離を隔てて設けられる、請求項1から8のいずれかに記載のロック装置。
【請求項13】
第1の止め部は、第1のロック要素(600)の第1の端部(601)に面する、ボアの内壁における溝(606)の第1の端部(606c)によって形成される、請求項12に記載のロック装置。
【請求項14】
第2の止め部は、第2の端部(602)に面する、第1のロック要素(600)のボアの内壁における溝(606)の第2の端部(606d)によって形成される、請求項12または13に記載のロック装置。
【請求項15】
第2のロック要素(600)は、溝(606)に突出た当接部材(800,801)を有する、請求項12から14のいずれかに記載のロック装置。
【請求項16】
当接部材はピン(800)である、請求項12から15のいずれかに記載のロック装置。
【請求項17】
溝は、好ましくは約半回転以上、円周方向に延在する、請求項14から16のいずれかに記載のロック装置。
【請求項18】
骨固定具であって、
骨または堆骨に固定されるシャンク(2)を含む固定要素(1)と、
シャンク(1)に接続される受け部(4)とを備え、受け部は、
シャンクとは反対側にある第1の端部(41)およびシャンクに面する第2の端部(42)と、
2つの端部を貫通する長手方向軸(C)と、
第1の端部から受け部の少なくとも一部を通って延在する長手方向軸と同軸のボア(43)と、
ロッド状要素(100)を受けるための実質的にU字型の凹部(44)とを有し、凹部は、第1の端部(41)の方向に延在する2つの自由な脚部(45,46)を形成し、脚部は内ねじ(47)を備え、前記骨固定具はさらに、
請求項1から17のいずれかに記載のロック装置(67,600,700)を備え、第1のロック要素の外ねじ(63,603)は脚部に設けられた内ねじ(47)に係合するよう構成される、骨固定具。
【請求項19】
前記固定要素は頭部(3)を含み、前記受け部(4)は、前記第2の端部に隣接して前記頭部を回動可能に受けるための領域(41)を含む、請求項18に記載の骨固定具。
【請求項20】
頭部とロック装置との間において受け部(4)に配置され、前記頭部に圧力を加えて頭部を受け部にロックするための圧力要素(5)をさらに含む、請求項19に記載の骨固定具。
【請求項21】
前記第1のロック部材(6,600,6′)は、ロッド状要素(100)を固定することなく頭部(3)をロックするよう構成され、前記第2のロック部材(7,700,7′)はロッド状要素を固定するよう構成される、請求項19または20に記載の骨固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34a】
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【図34b】
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【図35a】
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【図35b】
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【公開番号】特開2013−34866(P2013−34866A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171026(P2012−171026)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(511211737)ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト (30)
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】