骨折固定のための装置
ネジ(10)を有する骨折固定のための装置及び方法であり、ネジは、一端部を備えるシャンクを含み、その外表面には、ネジ山(12)が構成され、ネジは、貫通ボアを含む。貫通ボアは、直径の異なる2つのボア部分(16,17)を含む。これらのボア部分の間の直径における段部(18)は、ネジ山を有するネジの端部に隣接して配置される。この直径における段部は、インサート(30,50)を支持し、次いで、インサートは、ポリマピンがネジ内で加圧されるときに、ポリマピン(20,40)を支持する。適用される超音波振動と共に、圧力はポリマピンを流動化し、ネジの壁に構成される孔を通じて材料を押し込む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、音波溶解技術に関し、より具体的には、骨折物体内の増強のためのネジを備える、骨折の固定のための装置及び方法に関し、前記物体は、例えば、骨又は家具のような木製若しくはプラスチック製の物体であり得る。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,653,489号から既知であるものは、固定セメントがネジを通じて骨粗鬆症を患う骨の部分内に導入されるシステムである。大腿骨頸部骨折並びに遠位大腿骨骨折はこの装置を用いて固定され得る。
【0003】
従来技術に従ったシステムは、流れキャビティ、即ち、軸方向貫通ボアを有するネジを含み、骨セメントは軸方向貫通ボアを通じてネジの先端部にある部分内に導入され得る。骨セメントは、ネジの後続端部に解放可能に取り付けられる装置によって前進される。この装置は、実質的に円筒形のバレル及びプランジャを含む点で、商業的に入手可能な注射器に類似している。バレルはキャビティを形成し、プランジャはキャビティ内で前後に移動可能である。
【0004】
この従来技術装置の使用中、固定セメントがバレル内に充填され、然る後、プランジャがセメントに対して推進される。手動圧縮力を適用することによって、固定セメントがネジの軸方向貫通ボア内に噴射される。固定セメントがネジの近位端部を通じて骨内に通り、その結果、ネジが骨内で増強されるよう、圧力の故に、固定セメントは十分に流動化される。
【0005】
このシステムは、固定セメントに適用される手動圧力が、基本的に適用毎にのみならず、適用自体の間でさえ異なるので、ネジの先端部での骨の部分内の固定セメントの分配が確実でなく、均一でもない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、物体内の設置場所でのネジの確実且つ均一な増強(augmentation)を今や保証し得る装置及び方法を定めることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これは各独立項の主題によって達成される。さらなる好適実施態様は従属項から読み取られる。
【0008】
一般的には、骨折の固定のための装置であって、シャンクを含むネジを有し、シャンクは、第一ネジ山付き端部を有し、その長手中心線に沿って軸方向貫通ボアを有し、貫通ボアは、第一直径を備える第一ボア部分と、第二直径を備える第二ボア部分とを有し、第一直径は、第二直径よりも大きく、第二ボア部分は、第一シャンク端部に隣接し、第一ボア部分と第二ボア部分との間にはボア内の段部がある。
【0009】
さらに、骨折を固定するための方法は、以下のステップを含む。貫通ボアをネジの外表面と接続する横断通路を備える、軸方向ボアを有するネジを、骨折場所に亘って物体内に挿入するステップと、ポリマピンをインサートと組み合わせるステップと、ポリマピンをインサートと共にネジ内の軸方向貫通ボア内に挿入するステップと、ポリマピンを加圧し且つ振動するステップとを含み、ポリマピンは、インサートによって支持され、次いで、インサートは、貫通ボア内の直径における段部によって支持され、その結果、ポリマピンは、その先端部で流動化され、流動化されるポリマ材料は、ネジから押し出される。
【0010】
この目的は、それぞれの従属項に列挙されるような機能を有するネジによって本発明に従って達成される。さらなる好適実施態様は、従属項から読み取られる。
【0011】
付属の図面を参照して好適実施態様によって本発明を今や詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従ったネジを示す断面図である。
【図2】図1に示されるネジの先端部を示す詳細図である。
【図3】本発明の第一実施態様に従ったポリマピンを示す断面図である。
【図4a】本発明の第一実施態様に従ったインサートを示す側面図である。
【図4b】本発明の第一実施態様に従ったインサートを示す平面図である。
【図5】本発明の第二実施態様に従ったポリマピンを示す断面図である。
【図6】本発明の第二実施態様に従ったポリマピンの先端部を示す詳細図である。
【図7】本発明の第二実施態様に従ったインサートを示す側面図である。
【図8】本発明の第二実施態様に従ったインサートと共にポリマピンを示す断面図である。
【図9】本発明の第二実施態様に従ったインサートと共にポリマピンの先端部を示す詳細図である。
【図10】本発明に従った骨折の固定のための装置を示す断面図であり、図1に示されるネジを備え、図5に示されるポリマピン及び図7に示されるインサートがネジ内に挿入されている。
【図11】図10に示される装置の先端部を示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を今や参照すると、本発明に従ったネジ10が例証されている。ネジは、シャンクと、シャンクの端部に機械加工されたネジ山12とを含み、ネジ山はネジシャンク全長を覆ってもよい。加えて、ネジ10はカニューレ挿入される。ネジの長手中心線に沿って設けられるのは、2つのボア部分16,17から成る貫通ボアである。ボア部分16は第一直径を含み、ボア部分17は第二直径を含み、第一直径は第二直径よりも大きい。加えて、ボア部分16は、貫通ボアの主要部分を形成する。ネジ山12が機械加工される、ネジのシャンクの端部に隣接する小さい部分だけが、ボア部分17によって形成される。ボア部分16からボア部分17への移行は、直径における段部18によって形成される。直径における段部18は、ネジ内の貫通ボアの壁に実質的に直角縁部を有する環状隆起部を形成する。直径における段部18の各縁部は、平坦に、丸く、或いは、円錐形に機械加工され得る。さらに、直径における段部の位置は、壁内の孔と共に、長手中心線に沿って選択的に位置付けられ得る。よって、増強の場所選定は、具体的な用途及び所望の効果に従って決定され得る。
【0014】
加えて、ネジ10は、ネジの壁を通じて径方向に構成される孔14を特徴として持っている。孔14は、ネジの長手中心線に対して垂直な異なる方向に構成され、且つ、ネジ山12を備える端部に配置され得る。好ましくは、孔14は、ボア部分16も特徴として持つ端部の領域に配置される。図1に示される実施態様では、各2つの孔14が、ボア部分16に軸方向に並置されて且つネジ山12を通じて構成されている。さらに、4つのそのような対の孔は、ネジの円周について均等に、換言すれば、90°だけ円周方向に離間して分配されている。しかしながら、3つ、4つ、5つ、又は、それよりも多くの孔が円周方向に設けられ得ることも可能であり、円周方向に分配される孔が全て同じレベルにある必要はない。即ち、孔はネジ山の回転に沿っても円周方向に分配され得る。これとは別に、横断方向又は長手方向の長円形の孔、スロット、又は、類似物も設けられ得る。
【0015】
図2を今や参照すると、図1に示されるネジの先端部が拡大縮尺で例証されており、ボア部分16とボア部分17との間の直径における段部18は今や特に明らかである。これとは別に、ボア部分16においてネジ山12を通過して構成される幾つかの孔14が示されている。
【0016】
図3を今や参照すると、本発明の第一実施態様に従った、細長い形状であり且つ円錐形に先細い端部22で僅かに先細ったポリマピン20が例証されている。ポリマピン20の円錐形に先細い端部22内に設けられているのは、端面内のキャビティ24である。キャビティ24は、実質的に円筒形であり、一定の直径及び平滑な端部を有する。ポリマピン20は、例えば、ネジを増強するのに適した熱可塑性材料のような他の材料からも作成され得る。吸収性材料及び非吸収性材料の双方が有用である。
【0017】
図4a及び4bを今や参照すると、インサートが側面図及び平面図で示されている。インサートは、実質的にディスク形状の端部32と、実質的にピン形状の端部34とを特徴として持つ。ディスク形状端部32は、ネジ10のボア部分16の直径よりも幾分小さく且つネジ10のボア部分17の直径よりも幾分大きい外径を有する。ピン形状端部34は、ポリマピン20のキャビティ24内に挿入され得るよう構成される。
【0018】
他の実施態様において、インサートは、ピン形状端部の代わりに、スナップ取付けに適した突出端部を含み、ポリマピンは、この場合には、突出端部に対応するスナップ取付け端部を有する。インサートがポリマピンとスナップ取付けされると、両方の素子はネジ内に一緒に挿入され、それはスナップ取付けが接続時に僅かな隙間を含むときに有利である。この隙間は、ポリマピンが加圧されるとき、それがインサートとの接合部でより良好に流動化され得る、よって、ネジから物体内により容易に噴射されるという利点を有し、前記物体は、骨、又は、木材製、プラスチック製、若しくは、他の多孔性材料製の家具若しくは他の物体であり得る。
【0019】
以下に、インサートとポリマピンとの間のスナップ嵌め接続の例示的な実施態様を記載する。
【0020】
図5を参照すると、本発明の第二実施態様に従った、細長い形状であり且つ円錐形に先細い端部42で僅かに先細ったポリマピン40が例証されている。図6に示されるように、ポリマピン40の円錐形に先細い端部42の端面内にキャビティが設けられる。キャビティは、実質的に一定の直径を有する円筒形部分44と、ボール形状部分46とを含む。
【0021】
中空の円筒形部分44は、実質的にポリマピン40の中心軸の方向に向けられ、ポリマピン40の端部表面をポリマピン40内部で中空ボール形状部分46と接続する。
【0022】
ピン40は、ポリマ以外の他の材料、例えば、ネジを増強するのに適した熱可塑性材料からも作成され得る。吸収性材料及び非吸収性材料の双方が有用である。
【0023】
図7を参照すると、第二実施態様に従ったインサートが側面図で示されている。インサートは、実質的にディスク形状の端部52と、実質的にピン形状の部分54とを含む。第一実施態様に関して、ディスク形状端部52は、ネジ10のボア部分16の直径よりも幾分小さく且つネジ10のボア部分17の直径よりも幾分大きい外径を有する。しかしながら、第二実施態様に従ったインサートは、さらに、ディスク形状端部52の反対側で、ピン形状部分54の端部に配置されるボール頭部56を含む。
【0024】
図8及び9は、本発明の第二実施態様に従ったインサートとポリマピンとの組み合わせを示している。ボール頭部56は、ピン形状部分54の少なくとも一部と共に、ポリマピン40のキャビティ内に挿入され得るよう構成され、キャビティは、対応する寸法とされたボール形状部分46とピン形状部分44とを有する。
【0025】
インサートは、ポリマピンがインサートとピンとの間の接触地域で溶解し、適切な増強が達成され得るよう、ポリマピンの材料よりも高い融解温度を備えるより硬い材料から作成されるべきであることが付記される。好ましくは、インサートは金属製である。インサートは、代替的に、合金製又はセラミック材料製であってもよい。インサートのプラスチック材料がより硬く、流動化されるべきピンの選択的な材料よりも高い融解温度を備える限り、プラスチック材料も可能である。
【0026】
さらに、インサートは、ピン形状端部又はスナップ取付け端部を含む代わりに、ポリマピンの対応する端部が係合し得る貫通ボアを有することも可能である。この実施態様では、ポリマ材料は、孔14を通じてのみならず、インサートの孔を通じても、ネジから軸方向に噴射される。孔及びボアから現れるポリマ材料の比率は、そのサイズによって異なり得る。
【0027】
関連する特徴に依存して、スナップ取付けは、軸方向孔及び/又は径方向孔との組み合わせでも提供され得る。しかしながら、インサートをネジと一体的に構成することも可能である。この構成において、ボアの2つの部分の間の直径における段部は、直径におけるより大きな差によって構成される。まさに、ネジ内の軸方向貫通ボアの代わりに、軸方向盲ボアさえも構成され得る。
【0028】
以下はネジを骨内に挿入することを詳述する。先ず、Kワイヤ(K-wire)がネジを配置すべき骨内の場所に作動される。次に、Kワイヤを介して、ネジは前進され、究極的には、それが所望に位置付けられるまで、所定位置に螺入される。骨内へのネジの挿入後、Kワイヤは取り除かれる。この処理はネジがボアを通じる十分な長さを特徴として持つことを必要とする。これは民間に普及した手術技術である。何故ならば、執刀医はネジの位置を最良に確認し得るからである。Kワイヤは所要ネジ長を測定するためにも使用される。
【0029】
Kワイヤの除去後、ネジの長手中心線に沿う通路又は貫通ボアは、インサートと共にポリマピンを自由に受け入れ、インサートのピン形状端部の先端部はポリマピンのキャビティ内に挿入される。
【0030】
図10及び11を参照すると、ポリマピンがインサートと共に挿入され、先端部の方向に面するときに、インサートがどのようにネジ10内のボアの直径における段部18によって形成される段部上に載るかが例証されている。このようにして、直径における段部18が、ネジ内で、インサートのための対向保持部(counterhold)を形成し、次いで、インサートは、ポリマピンが超音波ハンドピースによって加圧されるときに、ポリマピンを支持し、超音波ハンドピースは、この目的のために、ネジの自由端部に取り付けられる。超音波ハンドピースによって生成され且つポリマピンに適用される振動及び圧力は、ポリマピンの材料が径方向に配置される孔14から骨内に現れるよう、ポリマピンを流動化する。このようにして、ポリマピンは骨内でネジを増強するための材料を供給する。
【0031】
インサイドアウト(inside-out)技術は上記に列挙される適応(indications)にだけ限定されない。換言すれば、カニューレ挿入されるネジによって供給され得る全てのネジ用途が、インサイドアウト技術によって、よって、本発明に従った装置を用いて潜在的に供給され得る。
【0032】
本発明はここにおいて具体的な実施態様を参照して記載されたが、これらの実施態様は本発明の原理及び用途の例証に過ぎないことが理解されるべきである。従って、数多くの変更が例証的な実施態様に行われ得ること、並びに、他の構成が付属の請求項によって定められる本発明の精神及び範囲から逸脱せずに考案され得ることが理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、音波溶解技術に関し、より具体的には、骨折物体内の増強のためのネジを備える、骨折の固定のための装置及び方法に関し、前記物体は、例えば、骨又は家具のような木製若しくはプラスチック製の物体であり得る。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,653,489号から既知であるものは、固定セメントがネジを通じて骨粗鬆症を患う骨の部分内に導入されるシステムである。大腿骨頸部骨折並びに遠位大腿骨骨折はこの装置を用いて固定され得る。
【0003】
従来技術に従ったシステムは、流れキャビティ、即ち、軸方向貫通ボアを有するネジを含み、骨セメントは軸方向貫通ボアを通じてネジの先端部にある部分内に導入され得る。骨セメントは、ネジの後続端部に解放可能に取り付けられる装置によって前進される。この装置は、実質的に円筒形のバレル及びプランジャを含む点で、商業的に入手可能な注射器に類似している。バレルはキャビティを形成し、プランジャはキャビティ内で前後に移動可能である。
【0004】
この従来技術装置の使用中、固定セメントがバレル内に充填され、然る後、プランジャがセメントに対して推進される。手動圧縮力を適用することによって、固定セメントがネジの軸方向貫通ボア内に噴射される。固定セメントがネジの近位端部を通じて骨内に通り、その結果、ネジが骨内で増強されるよう、圧力の故に、固定セメントは十分に流動化される。
【0005】
このシステムは、固定セメントに適用される手動圧力が、基本的に適用毎にのみならず、適用自体の間でさえ異なるので、ネジの先端部での骨の部分内の固定セメントの分配が確実でなく、均一でもない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、物体内の設置場所でのネジの確実且つ均一な増強(augmentation)を今や保証し得る装置及び方法を定めることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これは各独立項の主題によって達成される。さらなる好適実施態様は従属項から読み取られる。
【0008】
一般的には、骨折の固定のための装置であって、シャンクを含むネジを有し、シャンクは、第一ネジ山付き端部を有し、その長手中心線に沿って軸方向貫通ボアを有し、貫通ボアは、第一直径を備える第一ボア部分と、第二直径を備える第二ボア部分とを有し、第一直径は、第二直径よりも大きく、第二ボア部分は、第一シャンク端部に隣接し、第一ボア部分と第二ボア部分との間にはボア内の段部がある。
【0009】
さらに、骨折を固定するための方法は、以下のステップを含む。貫通ボアをネジの外表面と接続する横断通路を備える、軸方向ボアを有するネジを、骨折場所に亘って物体内に挿入するステップと、ポリマピンをインサートと組み合わせるステップと、ポリマピンをインサートと共にネジ内の軸方向貫通ボア内に挿入するステップと、ポリマピンを加圧し且つ振動するステップとを含み、ポリマピンは、インサートによって支持され、次いで、インサートは、貫通ボア内の直径における段部によって支持され、その結果、ポリマピンは、その先端部で流動化され、流動化されるポリマ材料は、ネジから押し出される。
【0010】
この目的は、それぞれの従属項に列挙されるような機能を有するネジによって本発明に従って達成される。さらなる好適実施態様は、従属項から読み取られる。
【0011】
付属の図面を参照して好適実施態様によって本発明を今や詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従ったネジを示す断面図である。
【図2】図1に示されるネジの先端部を示す詳細図である。
【図3】本発明の第一実施態様に従ったポリマピンを示す断面図である。
【図4a】本発明の第一実施態様に従ったインサートを示す側面図である。
【図4b】本発明の第一実施態様に従ったインサートを示す平面図である。
【図5】本発明の第二実施態様に従ったポリマピンを示す断面図である。
【図6】本発明の第二実施態様に従ったポリマピンの先端部を示す詳細図である。
【図7】本発明の第二実施態様に従ったインサートを示す側面図である。
【図8】本発明の第二実施態様に従ったインサートと共にポリマピンを示す断面図である。
【図9】本発明の第二実施態様に従ったインサートと共にポリマピンの先端部を示す詳細図である。
【図10】本発明に従った骨折の固定のための装置を示す断面図であり、図1に示されるネジを備え、図5に示されるポリマピン及び図7に示されるインサートがネジ内に挿入されている。
【図11】図10に示される装置の先端部を示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を今や参照すると、本発明に従ったネジ10が例証されている。ネジは、シャンクと、シャンクの端部に機械加工されたネジ山12とを含み、ネジ山はネジシャンク全長を覆ってもよい。加えて、ネジ10はカニューレ挿入される。ネジの長手中心線に沿って設けられるのは、2つのボア部分16,17から成る貫通ボアである。ボア部分16は第一直径を含み、ボア部分17は第二直径を含み、第一直径は第二直径よりも大きい。加えて、ボア部分16は、貫通ボアの主要部分を形成する。ネジ山12が機械加工される、ネジのシャンクの端部に隣接する小さい部分だけが、ボア部分17によって形成される。ボア部分16からボア部分17への移行は、直径における段部18によって形成される。直径における段部18は、ネジ内の貫通ボアの壁に実質的に直角縁部を有する環状隆起部を形成する。直径における段部18の各縁部は、平坦に、丸く、或いは、円錐形に機械加工され得る。さらに、直径における段部の位置は、壁内の孔と共に、長手中心線に沿って選択的に位置付けられ得る。よって、増強の場所選定は、具体的な用途及び所望の効果に従って決定され得る。
【0014】
加えて、ネジ10は、ネジの壁を通じて径方向に構成される孔14を特徴として持っている。孔14は、ネジの長手中心線に対して垂直な異なる方向に構成され、且つ、ネジ山12を備える端部に配置され得る。好ましくは、孔14は、ボア部分16も特徴として持つ端部の領域に配置される。図1に示される実施態様では、各2つの孔14が、ボア部分16に軸方向に並置されて且つネジ山12を通じて構成されている。さらに、4つのそのような対の孔は、ネジの円周について均等に、換言すれば、90°だけ円周方向に離間して分配されている。しかしながら、3つ、4つ、5つ、又は、それよりも多くの孔が円周方向に設けられ得ることも可能であり、円周方向に分配される孔が全て同じレベルにある必要はない。即ち、孔はネジ山の回転に沿っても円周方向に分配され得る。これとは別に、横断方向又は長手方向の長円形の孔、スロット、又は、類似物も設けられ得る。
【0015】
図2を今や参照すると、図1に示されるネジの先端部が拡大縮尺で例証されており、ボア部分16とボア部分17との間の直径における段部18は今や特に明らかである。これとは別に、ボア部分16においてネジ山12を通過して構成される幾つかの孔14が示されている。
【0016】
図3を今や参照すると、本発明の第一実施態様に従った、細長い形状であり且つ円錐形に先細い端部22で僅かに先細ったポリマピン20が例証されている。ポリマピン20の円錐形に先細い端部22内に設けられているのは、端面内のキャビティ24である。キャビティ24は、実質的に円筒形であり、一定の直径及び平滑な端部を有する。ポリマピン20は、例えば、ネジを増強するのに適した熱可塑性材料のような他の材料からも作成され得る。吸収性材料及び非吸収性材料の双方が有用である。
【0017】
図4a及び4bを今や参照すると、インサートが側面図及び平面図で示されている。インサートは、実質的にディスク形状の端部32と、実質的にピン形状の端部34とを特徴として持つ。ディスク形状端部32は、ネジ10のボア部分16の直径よりも幾分小さく且つネジ10のボア部分17の直径よりも幾分大きい外径を有する。ピン形状端部34は、ポリマピン20のキャビティ24内に挿入され得るよう構成される。
【0018】
他の実施態様において、インサートは、ピン形状端部の代わりに、スナップ取付けに適した突出端部を含み、ポリマピンは、この場合には、突出端部に対応するスナップ取付け端部を有する。インサートがポリマピンとスナップ取付けされると、両方の素子はネジ内に一緒に挿入され、それはスナップ取付けが接続時に僅かな隙間を含むときに有利である。この隙間は、ポリマピンが加圧されるとき、それがインサートとの接合部でより良好に流動化され得る、よって、ネジから物体内により容易に噴射されるという利点を有し、前記物体は、骨、又は、木材製、プラスチック製、若しくは、他の多孔性材料製の家具若しくは他の物体であり得る。
【0019】
以下に、インサートとポリマピンとの間のスナップ嵌め接続の例示的な実施態様を記載する。
【0020】
図5を参照すると、本発明の第二実施態様に従った、細長い形状であり且つ円錐形に先細い端部42で僅かに先細ったポリマピン40が例証されている。図6に示されるように、ポリマピン40の円錐形に先細い端部42の端面内にキャビティが設けられる。キャビティは、実質的に一定の直径を有する円筒形部分44と、ボール形状部分46とを含む。
【0021】
中空の円筒形部分44は、実質的にポリマピン40の中心軸の方向に向けられ、ポリマピン40の端部表面をポリマピン40内部で中空ボール形状部分46と接続する。
【0022】
ピン40は、ポリマ以外の他の材料、例えば、ネジを増強するのに適した熱可塑性材料からも作成され得る。吸収性材料及び非吸収性材料の双方が有用である。
【0023】
図7を参照すると、第二実施態様に従ったインサートが側面図で示されている。インサートは、実質的にディスク形状の端部52と、実質的にピン形状の部分54とを含む。第一実施態様に関して、ディスク形状端部52は、ネジ10のボア部分16の直径よりも幾分小さく且つネジ10のボア部分17の直径よりも幾分大きい外径を有する。しかしながら、第二実施態様に従ったインサートは、さらに、ディスク形状端部52の反対側で、ピン形状部分54の端部に配置されるボール頭部56を含む。
【0024】
図8及び9は、本発明の第二実施態様に従ったインサートとポリマピンとの組み合わせを示している。ボール頭部56は、ピン形状部分54の少なくとも一部と共に、ポリマピン40のキャビティ内に挿入され得るよう構成され、キャビティは、対応する寸法とされたボール形状部分46とピン形状部分44とを有する。
【0025】
インサートは、ポリマピンがインサートとピンとの間の接触地域で溶解し、適切な増強が達成され得るよう、ポリマピンの材料よりも高い融解温度を備えるより硬い材料から作成されるべきであることが付記される。好ましくは、インサートは金属製である。インサートは、代替的に、合金製又はセラミック材料製であってもよい。インサートのプラスチック材料がより硬く、流動化されるべきピンの選択的な材料よりも高い融解温度を備える限り、プラスチック材料も可能である。
【0026】
さらに、インサートは、ピン形状端部又はスナップ取付け端部を含む代わりに、ポリマピンの対応する端部が係合し得る貫通ボアを有することも可能である。この実施態様では、ポリマ材料は、孔14を通じてのみならず、インサートの孔を通じても、ネジから軸方向に噴射される。孔及びボアから現れるポリマ材料の比率は、そのサイズによって異なり得る。
【0027】
関連する特徴に依存して、スナップ取付けは、軸方向孔及び/又は径方向孔との組み合わせでも提供され得る。しかしながら、インサートをネジと一体的に構成することも可能である。この構成において、ボアの2つの部分の間の直径における段部は、直径におけるより大きな差によって構成される。まさに、ネジ内の軸方向貫通ボアの代わりに、軸方向盲ボアさえも構成され得る。
【0028】
以下はネジを骨内に挿入することを詳述する。先ず、Kワイヤ(K-wire)がネジを配置すべき骨内の場所に作動される。次に、Kワイヤを介して、ネジは前進され、究極的には、それが所望に位置付けられるまで、所定位置に螺入される。骨内へのネジの挿入後、Kワイヤは取り除かれる。この処理はネジがボアを通じる十分な長さを特徴として持つことを必要とする。これは民間に普及した手術技術である。何故ならば、執刀医はネジの位置を最良に確認し得るからである。Kワイヤは所要ネジ長を測定するためにも使用される。
【0029】
Kワイヤの除去後、ネジの長手中心線に沿う通路又は貫通ボアは、インサートと共にポリマピンを自由に受け入れ、インサートのピン形状端部の先端部はポリマピンのキャビティ内に挿入される。
【0030】
図10及び11を参照すると、ポリマピンがインサートと共に挿入され、先端部の方向に面するときに、インサートがどのようにネジ10内のボアの直径における段部18によって形成される段部上に載るかが例証されている。このようにして、直径における段部18が、ネジ内で、インサートのための対向保持部(counterhold)を形成し、次いで、インサートは、ポリマピンが超音波ハンドピースによって加圧されるときに、ポリマピンを支持し、超音波ハンドピースは、この目的のために、ネジの自由端部に取り付けられる。超音波ハンドピースによって生成され且つポリマピンに適用される振動及び圧力は、ポリマピンの材料が径方向に配置される孔14から骨内に現れるよう、ポリマピンを流動化する。このようにして、ポリマピンは骨内でネジを増強するための材料を供給する。
【0031】
インサイドアウト(inside-out)技術は上記に列挙される適応(indications)にだけ限定されない。換言すれば、カニューレ挿入されるネジによって供給され得る全てのネジ用途が、インサイドアウト技術によって、よって、本発明に従った装置を用いて潜在的に供給され得る。
【0032】
本発明はここにおいて具体的な実施態様を参照して記載されたが、これらの実施態様は本発明の原理及び用途の例証に過ぎないことが理解されるべきである。従って、数多くの変更が例証的な実施態様に行われ得ること、並びに、他の構成が付属の請求項によって定められる本発明の精神及び範囲から逸脱せずに考案され得ることが理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジを有する骨折の固定のための装置であって、
前記ネジは、シャンクを含み、該シャンクの一端部には、ネジ山が構成され、前記ネジは、その長手中心線に沿って貫通ボアを含み、該貫通ボアは、第一直径を備える第一ボア部分と、第二直径を備える第二ボア部分とを有し、前記第一直径は、前記第二直径よりも大きく、前記第二ボア部分は、前記ネジ山を備える前記シャンクの前記端部に配置され、直径における段部が、前記第一ボア部分と前記第二ボア部分との間に構成され、当該装置は、さらに、インサートと、前記ネジの前記第一ボア部分内への一体的な挿入のためのポリマピンとを含み、前記インサートは、ディスク形状部分を含み、該ディスク形状部分は、前記インサートが前記ネジ内に挿入されるときに前記段部上に載るような大きさとされる、
装置。
【請求項2】
前記インサートは、前記ポリマピンの材料よりも硬い材料から成る、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ネジは、さらに、前記第一ボア部分内で前記ネジの壁に構成され且つ前記直径における段部に隣接する孔を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記インサートは、ピン形状端部を含み、前記ポリマピンの前記一端部には、前記ピン形状端部に対応してキャビティが構成され、該キャビティ内には、前記ピン形状端部が挿入可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記インサートは、第一スナップ取付け端部を含み、前記ポリマピンの前記一端部には、前記第一スナップ取付け端部に対応して、第二スナップ取付け端部が構成され、前記第一スナップ取付け端部は、前記第二スナップ取付け端部と接続可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記インサートの前記第一スナップ取付け端部は、ピン形状部分と、ボール頭部とを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
骨折の固定のための方法であって、
ネジを骨折物体内に螺入するステップと、
ポリマピンをインサートと組み合わせるステップと、
前記ポリマピンを、前記インサートと共に、前記ネジの軸方向貫通ボア内に挿入するステップと、
前記ポリマピンを加圧するステップとを含み、
前記ポリマピンは、前記インサートによって支持され、前記インサートは、前記貫通ボア内の直径における段部によって支持され、前記ポリマピンは、その先端部で流動化され、流動化されるポリマ材料は、前記ネジから押し出され、前記物体内で前記ネジを増強する、
方法。
【請求項8】
物体内の骨折を固定するための方法であって、
貫通ボアと、骨折場所に亘り前記ボアと前記物体との間を連絡するためのポートとを有する締結具を挿入することと、
ポリマピンを前記締結具の前記ボア内に挿入することと、
前記ポリマピンを超音波溶解することと、
前記溶解ポリマを前記締結具内の前記ポートを通じて前記物体内に押し込むこととを含む、
方法。
【請求項9】
前記ポリマピンの前縁がインサートと接触する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ボアは、前記インサートと接触するためにその内部に形成される環状段部を有し、前記段部は、前記締結具内の前記ポートに隣接して形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記インサートを前記ポリマピンの前記前縁に取り付けることと、前記段部に接触するまで、前記組み合わせを前記ボアに沿って摺動することとをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶解ポリマに加えられる力は、前記溶解ポリマが前記ポートから出るときに一定である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記ボアは、前記ポートの1つとして作用する開放端部を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記締結具は、カニューレ挿入される骨ネジである、請求項12に記載の方法。
【請求項1】
ネジを有する骨折の固定のための装置であって、
前記ネジは、シャンクを含み、該シャンクの一端部には、ネジ山が構成され、前記ネジは、その長手中心線に沿って貫通ボアを含み、該貫通ボアは、第一直径を備える第一ボア部分と、第二直径を備える第二ボア部分とを有し、前記第一直径は、前記第二直径よりも大きく、前記第二ボア部分は、前記ネジ山を備える前記シャンクの前記端部に配置され、直径における段部が、前記第一ボア部分と前記第二ボア部分との間に構成され、当該装置は、さらに、インサートと、前記ネジの前記第一ボア部分内への一体的な挿入のためのポリマピンとを含み、前記インサートは、ディスク形状部分を含み、該ディスク形状部分は、前記インサートが前記ネジ内に挿入されるときに前記段部上に載るような大きさとされる、
装置。
【請求項2】
前記インサートは、前記ポリマピンの材料よりも硬い材料から成る、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ネジは、さらに、前記第一ボア部分内で前記ネジの壁に構成され且つ前記直径における段部に隣接する孔を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記インサートは、ピン形状端部を含み、前記ポリマピンの前記一端部には、前記ピン形状端部に対応してキャビティが構成され、該キャビティ内には、前記ピン形状端部が挿入可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記インサートは、第一スナップ取付け端部を含み、前記ポリマピンの前記一端部には、前記第一スナップ取付け端部に対応して、第二スナップ取付け端部が構成され、前記第一スナップ取付け端部は、前記第二スナップ取付け端部と接続可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記インサートの前記第一スナップ取付け端部は、ピン形状部分と、ボール頭部とを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
骨折の固定のための方法であって、
ネジを骨折物体内に螺入するステップと、
ポリマピンをインサートと組み合わせるステップと、
前記ポリマピンを、前記インサートと共に、前記ネジの軸方向貫通ボア内に挿入するステップと、
前記ポリマピンを加圧するステップとを含み、
前記ポリマピンは、前記インサートによって支持され、前記インサートは、前記貫通ボア内の直径における段部によって支持され、前記ポリマピンは、その先端部で流動化され、流動化されるポリマ材料は、前記ネジから押し出され、前記物体内で前記ネジを増強する、
方法。
【請求項8】
物体内の骨折を固定するための方法であって、
貫通ボアと、骨折場所に亘り前記ボアと前記物体との間を連絡するためのポートとを有する締結具を挿入することと、
ポリマピンを前記締結具の前記ボア内に挿入することと、
前記ポリマピンを超音波溶解することと、
前記溶解ポリマを前記締結具内の前記ポートを通じて前記物体内に押し込むこととを含む、
方法。
【請求項9】
前記ポリマピンの前縁がインサートと接触する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ボアは、前記インサートと接触するためにその内部に形成される環状段部を有し、前記段部は、前記締結具内の前記ポートに隣接して形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記インサートを前記ポリマピンの前記前縁に取り付けることと、前記段部に接触するまで、前記組み合わせを前記ボアに沿って摺動することとをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶解ポリマに加えられる力は、前記溶解ポリマが前記ポートから出るときに一定である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記ボアは、前記ポートの1つとして作用する開放端部を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記締結具は、カニューレ挿入される骨ネジである、請求項12に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−532696(P2010−532696A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515426(P2010−515426)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005701
【国際公開番号】WO2009/010247
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(507015952)ストライカー トラウマ ゲーエムベーハー (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005701
【国際公開番号】WO2009/010247
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(507015952)ストライカー トラウマ ゲーエムベーハー (13)
【Fターム(参考)】
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