説明

骨折部固定器具

【課題】複数の骨片を全て固定でき、骨片を骨本体の所定位置に固定することができ、そして低侵襲手術に適した骨折部固定器具を提供する。
【解決手段】本発明の骨折部固定器具1は、体内に設置され、複数の骨片90を互いに固定するプレート部材20と、前記プレート部材20を前記骨片90に固定するスクリュー部36を備えた一端31と、体外に伸びる他端32と、を含む1本以上の第1の骨ピン30と、前記骨本体91に固定される一端41と、体外に伸びる他端42と、を含む1本以上の第2の骨ピン40と、前記第1の骨ピン30と前記第2の骨ピン40とに体外で固定され、前記第2の骨ピン40に対する前記第1の骨ピン20の位置を保持する創外固定部材50と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折した骨の固定に使用する骨折部固定器具に関し、特に、固定力の強い骨折部固定器具に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折した骨を固定する方法として、骨プレートを用いた固定方法(内固定)と、創外固定器を用いた固定方法(外固定)とが知られている。
【0003】
内固定用の骨プレートは、骨折部を横切るように配置したプレートを、骨スクリューで骨に固定して使用される(例えば、特許文献1)。骨プレートは、観血的に手術を行って体内に設置される。
【0004】
外固定用の創外固定器は、骨折で分離した2つ以上の骨の各々に、複数の創外ピンを刺入し、創外に突出した創外ピンの相対位置を保持することにより、分離した骨を一定位置に固定する器具である(例えば、特許文献2)。創外固定器を設置するには、皮膚及び体組織を切開して創外ピンの刺入穴を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−313514号公報
【特許文献2】特開2002−306502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば上腕骨近位部のように肩から延びる複数の筋肉が付着した骨を骨折した場合、その筋肉によって、骨片が所定の位置からずれることがある。
例えば、骨本体(骨幹)と肩甲骨との間に位置する骨片の場合、骨本体に付着した筋肉が骨本体を上方向に引っ張ると、骨片は肩甲骨と骨本体との間に挟まれて圧縮される。圧縮力を受けた骨片は、骨本体と肩との間から横方向にずれたり、又は本来の向きから回転したりする。
また、骨片自体に筋肉が付着している場合、骨片は筋肉によって引っ張られる。そのため、骨片は、本来の位置から上方向にずれる。
よって、骨片を骨本体の所定の位置に固定する骨折部の固定器具には、骨本体や骨片にかかる筋肉の牽引力に抗して骨片を骨本体に固定できる、強い固定力が求められる。
さらに、近年では骨折部の整復手術後すぐにリハビリを開始することが望ましいとされている。その要求に応えるためには、骨折部の固定器具に、さらに強い固定力が求められる。
【0007】
また、複数の骨片に分離した粉砕骨折では、骨片を骨本体の所定位置まで引き寄せて骨折部を整復した後に、全ての骨片を骨本体に固定できる固定器具が望まれる。
【0008】
さらに、近年の外科手術では、患者の肉体的負担の軽減と、術後の回復期間の短縮のために、切開創の小さい手術、いわゆる低侵襲手術が望まれている。
【0009】
従来の骨プレートは、複数(例えば5本〜10本)のスクリューを用いて骨片を固定するため、複数の骨片を固定するのに適している。しかしながら、骨プレートは、骨本体や骨片にかかる筋肉の牽引力に抗して骨片を骨本体に固定できる、強い固定力を得にくい。骨プレートに強い固定力を付与するには、骨プレートの寸法を大きくする必要がある。大きい寸法の骨プレートを用いた場合、手術時の切開創が大きくなる。
【0010】
一方、創外固定器は、固定力が強いという利点と、また、小さな切開創で骨折部に設置できるという利点を有する。しかしながら、創外固定器は、骨片に刺入される骨ピンは数本(例えば2〜3本)なので、複数の骨片を確実に固定するのは難しい。
【0011】
そこで、本発明は、複数の骨片を全て固定でき、骨片を骨本体に固定する固定力が強く、そして低侵襲手術に適した骨折部固定器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の骨折部固定器具は、体内に設置され、複数の骨片を互いに固定するプレート部材と、前記プレート部材を前記骨片に固定するスクリュー部を備えた一端と体外に伸びる他端とを含む1本以上の第1の骨ピンと、前記骨本体に固定される一端と体外に伸びる他端とを含む1本以上の第2の骨ピンと、前記第1の骨ピンと前記第2の骨ピンとに体外で固定され、前記第2の骨ピンに対する前記第1の骨ピンの位置を保持する創外固定部材と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の骨折部固定器具は、プレート部材を含んでいるので、複数の骨片を固定するのに適している。
【0014】
本発明の骨折部固定器具では、第1の骨ピンは、一端にあるスクリュー部によって骨片に固定され、さらに、創外固定部材及び第2の骨ピンを介して骨本体に固定されている。また、全ての骨片は、プレート部材によって互いに固定されている。すなわち、全ての骨片は、プレート部材、第1の骨ピン、創外固定部材、及び第2の骨ピンを介して、骨本体に固定される。創外固定部材を使用した骨片と骨本体の固定は、従来の骨プレートによる骨片と骨本体との固定に比べて、固定力が高い。よって、創外固定器を備えた本発明の骨折部固定器具は、全ての骨片を骨本体に強力に固定することができる。
【0015】
本発明の骨折部固定器具は、創外固定部材を含むことにより、プレート部材が、骨片を骨本体に固定する機能を有していなくてもよい。そのため、プレート部材の寸法を小さくできる。また、第1の骨ピン及び第2の骨ピンを骨本体に固定する手術は、小さな切開創で行える。したがって、本発明の骨折部固定器具は、低侵襲手術に好適である。
【0016】
このように、本発明の骨折部固定器具は、複数の骨片を全て固定でき、骨片を骨本体の所定位置に引き留めることができ、そして低侵襲手術に適している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施の形態1に係る骨折部固定器具の使用状態を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、実施の形態1に係る骨折部固定器具の側面図である。
【図3】図3は、実施の形態1に係る骨折部固定器具に含まれるプレート部材の正面図である。
【図4】図4は、実施の形態1に係る骨折部固定器具に含まれる第1の骨ピンの部分切欠き正面図である。
【図5】図5は、実施の形態1に係る骨折部固定器具に含まれる第2の骨ピンの部分切欠き正面図である。
【図6】図6は、実施の形態1に係る骨折部固定器具に含まれる創外固定部材の正面図である。
【図7】図7は、図6の創外固定部材に含まれる第1の固定部の固定具の概略斜視図である。
【図8】図8は、図6の創外固定部材に含まれる第1の固定部の上面図である。
【図9】図9は、第1の骨ピンを配置する規定面を説明するための概略斜視図である。
【図10】図10は、上腕骨近位部の骨折部の整復の様子を示す斜視図である。
【図11】図11は、第1の骨ピンを設置するためのガイド器具の断面図である。
【図12】図12は、図11のガイド器具に含まれるガイド本体の上面図である。
【図13】図13は、図11のガイド器具に含まれるガイド本体の側面の展開図である。
【図14】図14は、図11のガイド器具に含まれるフレーム部材の正面図である。
【図15】図15は、図11のガイド器具と共に使用される筒状ガイドの部分切欠き側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及び、それらの用語を含む別の用語)を用いる。それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
【0019】
<実施の形態1>
本実施の形態では、上腕骨近位部の骨折に使用される骨折部固定器具について説明する。
図1及び図2は、本実施の形態に係る骨折部固定器具1を右腕の上腕骨近位部(右肩)に固定した状態を図示している。骨折部分は、骨本体91(骨幹)と、2つの骨片90に分離している。
骨折部固定器具1は、プレート部材20と、1本以上(図では3本)の第1の骨ピン30と、1本以上(図では2本)の第2の骨ピン40と、創外固定部材50と、を含んでいる。
【0020】
プレート部材20は体内に設置されている。プレート部材20の頭板部201(図3参照)は骨片90の表面に配置され、頭板部201の貫通孔22に挿通された複数の骨スクリュー60によって骨片90に固定される。このとき、個々の骨片90は、各骨スクリュー60によって互いに固定される。プレート部材20と複数の骨スクリュー60とにより、全ての骨片90が一体に保持される。
また、プレート部材20の幹板部202(図3参照)は骨本体91の表面に配置され、幹板部202の貫通孔28に挿通された複数の骨スクリュー60によって骨本体91に固定される。
【0021】
第1の骨ピン30は、皮膚92を貫通して配置される。第1の骨ピン30の一端31は骨片90に固定され、他端32は体外に伸びている(図1参照)。一端31にはスクリュー部36が備えられており、プレート部材20に形成された貫通孔を通って骨片90に螺入されている。第1の骨ピン30によって、プレート部材20が固定されている。
【0022】
第2の骨ピン40も、皮膚92を貫通して配置される。第2の骨ピン40の一端41は骨本体91に固定され、他端42は体外に伸びている(図1参照)。一端41にはスクリュー部46が備えられており、骨本体91に螺入されている。
【0023】
創外固定部材50は、体外において、第1の骨ピン30と第2の骨ピン40とを固定している。具体的には、創外固定部材50は、第1の骨ピン30を固定する第1の固定部51と、第2の骨ピン40を固定する第2の固定部52とを備えている。創外固定部材50は、第2の骨ピン40に対する第1の骨ピン30の位置を保持することができる。
【0024】
骨折部固定器具1は、プレート部材20を含むことにより、複数の骨片90を固定することができる。よって、複数の骨片90が生じている骨折の固定に好適である。
【0025】
また、本実施の形態の骨折部固定器具1では、第1の骨ピン30は、一端31に形成されたスクリュー部36によって骨片90に固定され、さらに、創外固定部材50を介して、第2の骨ピン40によって骨本体91に固定される。また、全ての骨片90は、プレート部材20によって互いに固定されている。すなわち、全ての骨片90は、プレート部材20、第1の骨ピン30、創外固定部材50、及び第2の骨ピン40を介して、骨本体91に固定される。創外固定部材50を使用すると、骨片90と骨本体91とを強力に固定できる。よって、創外固定器50を備えた本発明の骨折部固定器具1は、全ての骨片90を骨本体91に強力に固定することができる。
【0026】
このように、本実施の形態の骨折部固定器具1は、例えば上腕骨近位部のように張力の強い筋肉が付着した部位が、複数の骨片90に骨折した場合であっても、複数の骨片90を全て固定し、そして骨片90が本来の位置で骨本体91に骨融合するまで、それらの骨片90を所望の位置に保持することができる。
【0027】
本発明の骨折部固定器具1では、創外固定部材50が骨片90を固定する機能を有する。よって、本発明で使用されるプレート部材20は、複数の骨片90を互いにに固定する機能を備えていれば十分である。そのため、プレート部材20自身を骨本体91に固定するためにプレート部材20の寸法を大きくする必要はない。よって、本実施の形態の骨折部固定器具1は、プレート部材20を小さくして、低侵襲手術に適用することができる。
【0028】
以下に、骨折部固定器具1を構成する各部材について詳述する。
【0029】
(プレート部材20)
図3のように、プレート部材20は、複数の骨片90を互いに固定するための頭板部201を含んでいる。頭板部201には、骨スクリュー60用の複数の貫通孔22(図3では、2列×3行で6穴)が形成されている。それらの貫通孔22の各々に骨スクリュー60を刺入することにより、整復した複数の骨片90の全てを互いに固定する(図1、図2参照)。貫通孔22は、プレート部材20の表面26側に、骨スクリュー60の頭部61を受容するための座ぐりを備えている。
【0030】
頭板部201は、さらに、第1の骨ピン30用の複数の貫通孔21(図3では、3穴)が形成されている。図1のように、各第1の骨ピン30の左右方向の刺入角度を変更できるように、貫通孔21は、左右方向に長い楕円穴になっている。また、図2のように、第1の骨ピン30を斜め上方向に刺入できるように、貫通孔21は表面26から裏面27(骨片90と接する面、図1参照)に向かって、斜め上向きに形成されている。貫通孔21は、プレート部材20の表面26側に、第1の骨ピン30のねじ頭35を受容するための座ぐりがを備えている。
【0031】
図3のように、プレート部材20は、頭板部201から伸びる幹板部202を含むことができる。幹板部202は、骨本体91の表面に配置され、骨スクリュー60により骨本体91に直接固定される(図1参照)。幹板部202には、骨スクリュー60用の複数の貫通孔28(図3では、2穴)が形成されている。それらの貫通孔28の各々に骨スクリュー60を刺入することにより、プレート部材20を骨本体91に固定する(図1、図2参照)。貫通孔28は、プレート部材20の表面26側に、骨スクリュー60の頭部61を受容するための座ぐりを備えている。
【0032】
一般的に、プレート部材20によって骨片90を骨本体91に固定するためには、長い幹板部202を備えたプレート部材20が必須とされている。しかしながら、本発明では、骨片90は、創外固定器50によって骨本体91に固定されるので、本発明の骨折部固定器1には、幹板部202を設けないプレート部材20、又は幹板部202の短いプレート部材20を使用することができる。幹板部202を設けない、又は幹板部202を短くすることにより、一般的な骨プレートに比べて小さいプレート部材20にすることができる。そのような小さいプレート部材20は、低侵襲手術に適している。
【0033】
特に、プレート部材20に短い幹板部202を設けるのが好ましく、骨片90と骨本体91とを創外固定器50で固定するまでの間、骨片90を骨本体91に(固定力は弱いものの)固定することができる。また、短い幹板部202は、骨本体91に対するプレート部材20の姿勢を確認する場合にも有効である。骨本体91に対するプレート部材20の姿勢を確認することができるので好ましい。
【0034】
プレート部材20は、複数の骨スクリュー60をプレート部材20の貫通孔22、28にロック可能(いわゆるロッキングプレート)にすることができる。典型的なロッキングプレートは、貫通孔22、28の内壁に雌ねじが形成されており、骨スクリュー60の頭部61の外周に、貫通孔22、28の雌ねじと螺合する雄ねじが形成された骨スクリュー60と共に使用される。骨スクリュー60を骨片90又は骨本体91に完全に刺入したときに、骨スクリュー60の頭部61の雄ねじが、貫通孔22、28の雌ねじに螺合する。これにより、骨スクリュー60はプレート部材20にロックされる。
【0035】
ロック可能な骨スクリュー60では、各々の骨スクリュー60の刺入方向は、プレート部材20の貫通孔22、28の内壁に形成された雌ねじによって一方向に決定される。プレート部材20を作製する際には、様々な状態の骨折に対応できるように骨スクリュー60の刺入方向を予め考慮し、それに合わせて貫通孔22、28に雌ねじを形成する。もし、1種類のプレート部材20では対応できない骨折の態様が想定される場合には、複数種類のプレート部材20を準備して、骨折の態様(骨片の形状、骨折線の方向等)に合わせて適宜選択してもよい。
【0036】
さらに、近年では、骨スクリュー60を自由な方向に刺入でき、且つ骨スクリュー60の頭部61をプレート部材20の貫通孔22、28にロック可能なロッキングプレートも知られている。骨スクリュー60の刺入方向は、骨折部の状態に合わせて任意に変更できる。そのようなロッキングプレートは、本発明のプレート部材20として使用可能である。ただし、骨本体91の中で、他の骨スクリュー60や、第1の骨ピン30と接触しないように、骨スクリュー60の刺入方向に注意すべきである。
【0037】
(第1の骨ピン30)
図4のように、第1の骨ピン30は、一端31にスクリュー部36を含んでいる。スクリュー部36は、プレート部材20の貫通孔21を通って骨本体91に螺入される。このとき、スクリュー部36が骨スクリュー60(特に、頭板部201の貫通孔22に挿通される骨スクリュー60)と接触しないように、第1の骨ピン30の刺入方向を決定する必要がある。第1の骨ピン30の他端32には、ドライバーと嵌合可能な穴321が形成されており、第1の骨ピン30を骨片90に螺入するときに使用される。
【0038】
第1の骨ピン30は、スクリュー部36の他端側に、ねじ頭35を備えているのが好ましい。ねじ頭35は、スクリュー部36を骨片90に固定したときに、プレート部材20に当接する位置に形成される(図1及び図2参照)。ねじ頭35により、プレート部材20を骨片90に押しつけることができる。すなわち、第1の骨ピン30がねじ頭35を備えることにより、第1の骨ピン30は、プレート部材20が上下方向にずれるのを抑制するだけでなく、プレート部材20が骨片90から離れるのを抑制することもできる。
【0039】
第1の骨ピン30は、ねじ頭35の他端側の位置(図4のX−X線)で、スクリュー部36と、第1の骨ピン30の本体(シャフト部37)とが分離可能にされているのが好ましい。
例えば、ある程度骨融合が進むと、骨片90を骨本体91所定の位置に保持するのに必要な力が小さくなる。そして、プレート部材20と複数の骨スクリュー60だけで、骨片90を骨本体91の所定の位置に保持できる程度に骨融合が進んだら、体外に突出している部材(創外固定部材50、第1の骨ピン30、及び第2の骨ピン40)を取り外してもよい。その際に、第1の骨ピン30が、スクリュー部36とシャフト部37とに分離可能であれば、第1の骨ピン30を全て取り外す代わりに、シャフト部37のみを取り外すことができる。体内に残ったスクリュー部36は、骨スクリュー60と同様に機能し、プレート部材20を骨片90に固定するのに有効である。
【0040】
分離可能な第1の骨ピン30は、スクリュー部36とシャフト部37との間に連結部38を備えている。連結部38は、スクリュー部36の他端32側と、シャフト部37の一端31側とを加工して、互いに着脱可能に係合して構成することができる。
また、連結部38は、別体の部品を使用して構成されてもよい。具体的には、まず、スクリュー部36(ねじ頭35付き)とシャフト部37とを別体で準備し、ねじ頭35の他端側とシャフト部37の一端側とにそれぞれ穴を形成する。それらの穴に連結用部品を挿入してスクリュー部36とシャフト部37とを一体化する。
いずれの連結部38も、シャフト37に所定方向の外力を加えることにより、シャフト37とスクリュー部36とが分離するように設計されている。これにより、体外に突出した他端32からシャフト37を操作して、スクリュー部36とシャフト部37とを分離することができる。
【0041】
骨折部固定器具1には、第1の骨ピン30が1本以上、より好ましくは2本以上(図1では3本)含まれている。第1の骨ピン30を2本以上含んでいると、プレート部材20を骨片90に固定する固定力が高まるので好ましい。特に、図1のように、第1の骨ピン30の一方を他方に対して斜交いに刺入すると、その固定力がさらに高まる。
【0042】
(第2の骨ピン40)
本実施の形態では、第2の骨ピン40は、骨折している部位(上腕骨の骨端)ではなく、骨本体91の骨幹に固定される(図1及び図2参照)。また、図5のように、第2の骨ピン40は、一端41にスクリュー部46を含んでいる。スクリュー部46は、骨本体91の骨幹に螺入される。第2の骨ピン40の他端42には、ドライバーと嵌合可能な穴321が形成されており、第2の骨ピン40を骨本体91に螺入するときに使用される。
【0043】
骨折部固定器具1には、第2の骨ピン40が1本以上、より好ましくは2本以上(図1では2本)含まれている。第2の骨ピン40を2本以上含んでいると、創外固定部材50を介して第1の骨ピン30を骨本体91に固定する固定力が高まるので好ましい。2本以上の第2の骨ピン40を骨本体91に固定するとき、第2の骨ピン40は、互いに斜交いになるように方向付けられてもよいし、又は図1のように、全ての第2の骨ピン40が平行になるように方向付けられてもよい。
【0044】
(創外固定部材50)
創外固定部材50は、第2の骨ピン40に対する第1の骨ピン30の位置を保持するための部材である。図1、図2及び図6のように、創外固定部材50は、第1の骨ピン30に固定される第1の固定部51と、第2の骨ピン40に固定される第2の固定部52とを備えている。
【0045】
(第1の固定部51)
本実施の形態では、第1の固定部51は、固定具511と、固定板512と、スペーサー513と、ねじ514とを含んでいる(図6参照)。
固定具511は、扁平な直方体から成り、第1の骨ピン30を挿入するための貫通孔511aが形成されている(図7参照)。貫通孔511aは、その長手軸Yが上面511d及び下面511cと平行になるように形成されている。また、貫通孔511aの直径は、第1の骨ピン30の直径より僅かに大きい。固定具511は、さらに、貫通孔511aから側面511eまで延びる隙間511bと、上面511dから隙間511bを通って下面511cまで貫通した穴511fとが形成されている。第1の固定部51を組み立てる時に、穴511fにねじ514を挿通する。
【0046】
図6のように、スペーサー513は、隣接する固定板512の間や、固定板512の上又は下に配置される。スペーサー513は、直方体、円柱等の立体から成り、固定具511の高さとほぼ等しい高さを有している。また、スペーサー513には、上下方向に貫通した穴513fが形成されており、第1の固定部51を組み立てる時にねじ514を挿通する。
【0047】
図1、図6及び図8のように、固定板512は、円弧状の板状体から成る。また、固定板512には、円弧方向に沿って、ねじ514用のスリット512fが形成されている。図1及び図6のように2枚以上の固定板512を使用する場合には、固定板512の間に固定具511及びスペーサー513を挟むことにより、固定板512を、所定の間隔をあけて且つ互いに平行に配置することができる。
固定板512の枚数は、使用される固定具511の個数によって適宜変更することができる。例えば、固定具511を3個使用する場合には、固定板512は2枚(図6)又は3枚(図1)使用する。
【0048】
なお、図6のように、固定板512の表面又は裏面に、固定具511の下面511c又は上面511dが面接触している。また、固定具511の貫通孔511aの長手軸Y(図7参照)は、固定具511の下面511c及び上面511dと平行である。よって、貫通孔511aの長手軸Yは固定板512の表面及び裏面と平行になる。
【0049】
ねじ514は、固定具511、固定板512及びスペーサー513を組み立てるのに使用される。具体的には図6のように、ねじ514を、固定具511の穴511f、固定板512のスリット512f、及び/又はスペーサー513の切込み513fに挿通し、そしてねじ514の端部をナット514g又は固定具511のねじ穴511g(内壁に雌ねじが形成されている)に螺合する。ねじ514を締め付ける前は、固定具511及びスペーサー513を、固定板512のスリット512fに沿って移動させることができる。ねじ514を締め付けると、固定具511及びスペーサー513を、固定板512に固定することができる。
【0050】
第1の固定部51を第1の骨ピン30に固定するには、まず、ねじ514を緩めた状態で、固定具511の貫通孔511aに第1の骨ピン30の他端32を挿通する。その後、固定具511の穴511fに挿通されたねじ514を締め付けると、固定具511の隙間511bが狭まり、貫通孔511aも縮径する。その結果、第1の骨ピン30が、貫通孔511a内に固定される。
【0051】
2本以上の第1の骨ピン30を任意方向に刺入すると、骨本体91の中で、互いのスクリュー部36が接触する可能性がある。しかしながら、本実施の形態の第1の固定部51に固定された複数の第1の骨ピン30は互いに平行な複数の面内にそれぞれ配置されるので、第1の骨ピン30の刺入方向は交差しない。そのため、スクリュー部36が接触するのを抑えることができる。以下に詳しく説明する。
【0052】
図1及び図8のように、固定具511の貫通孔511aの長手軸Yは、第1の骨ピン30の長手方向と一致する。また、上述の如く、貫通孔511aの長手軸Yは固定板512の表面と平行である。
固定具511は、固定板512の表面上をスライドしながらスリット512fに沿って矢印R方向に移動することができる。それに伴い、貫通孔511aの長手軸Yも固定板512に対して移動するが、このとき、貫通孔511aの長手軸Yと固定板512の表面との平行性は保たれたままである。すなわち、固定具511の移動による貫通孔511aの長手軸Yの軌跡(これを「規定面」と称する)は、固定板512と平行になる。
【0053】
図9に、3つの固定具511の貫通孔511aの長手軸Y(上からY〜Y)によって規定される3つの規定面S〜Sを示す。規定面S〜Sは、隣接する固定板512の表面及び裏面と平行であり、そして全ての固定板512は互いに平行であるので、規定面S〜Sは互いに平行であるといえる。
【0054】
第1の骨ピン30の長手方向は、固定具511の貫通孔511aの長手軸Yと一致するため、第1の骨ピン30の長手方向は常に規定面S〜Sの面内に位置する。規定面S〜Sは互いに交差することはないので、第1の骨ピン30の長手方向も互いに交差することはない。
このように、本実施の形態の第1の固定部51に固定された複数の第1の骨ピン30は、スクリュー部36が骨本体91の中で互いに接触するのを回避しやすい。
【0055】
特に、隣接する規定面S〜Sの面間隔が、第1の骨ピン30(301〜303)のスクリュー部36の直径の1倍以上にする。これにより、平行に刺入したスクリュー部36が、骨本体91の中で互いに接触するのを確実に回避できる。
【0056】
本実施の形態では、プレート部材20の頭板部201に、骨スクリュー60用の貫通孔22と、第1の骨ピン30用の貫通孔21とが隣接して形成されている。そのため、骨スクリュー60と第1の骨ピン30のスクリュー部36とが、骨片90の中で接触しやすい。そこで、規定面S〜Sに平行な面(例えば、規定面SとSとの間にある平行面S12、規定面SとSとの間にある平行面S23)の面内に、骨スクリュー60の長手を配置するのが好ましい。規定面S〜Sと、平行面S12、S23とは交差することはないので、規定面S〜S上にある第1の骨ピン30のスクリュー部36と、平行面S12、S23上にある骨スクリュー60とが交差することはない。
よって、第1の骨ピン30のスクリュー部36と骨スクリュー60とが骨本体91の中で互いに接触するのを回避しやすい。
なお、スクリュー部36と骨スクリュー60との接触回避の観点からすると、平行面S12は規定面SとSの中央に、また平行面S23は規定面SとSの中央に、それぞれ設定するのが好ましい。これにより、骨スクリュー60は、上下に位置するスクリュー部36の中央に位置できるので、いずれのスクリュー部36とも接触しにくくなる。ただし、平行面の位置はこれに限定されるものではない。例えば、規定面S〜Sの間隔が十分に広い場合には、平行面がいずれかの規定面に近い位置に設定されても、スクリュー部36と骨スクリュー60との接触は回避できる。
【0057】
刺入する骨スクリュー60の本数によって、規定面Sより上側、又は規定面Sより下側に、さらなる平行面を設定できる。また、規定面S〜Sとは異なり、1つの平行面S12、S23内に複数(例えば2本)の骨スクリュー60を配置してもよい。ただし、同一面内に配置された骨スクリュー60は、互いに接触しないように、刺入方向を設定しなくてはならない。
具体例として、図3のプレート部材20を用いた場合の平行面を説明する。平行面は、プレート部材20の頭板部201に形成された貫通孔22のうち、横方向に並んだ2つの貫通孔22の両方を通るように設定される。貫通孔22に挿通される骨スクリュー60は、その貫通孔22を通る平行面の面内に刺入される。図3のプレート部材20は、横方向に並んだ貫通孔22の組みが3組(3列)あるので、3つの平行面が設定される。一番上の平行面は、規定面S(図3の一番上の貫通孔21を通る)より上側に設定される。残りの平行面は、規定面S〜Sの間に設定される(図9の平行面S12、S23と、)。
【0058】
特に、隣接する規定面S〜Sの面間隔が、第1の骨ピン30(301〜303)のスクリュー部36の直径D1と、骨スクリュー60の直径D2(図2参照)との和「D1+D2」以上であるのが望ましい。つまり、隣接する第1の骨ピン30(301〜303)の間に、骨スクリュー60直径D2以上の間隔をあけることができる。これにより、スクリュー部36と骨スクリュー60とが、骨本体91の中で互いに接触するのを確実に回避できる。具体例としては、第1の骨ピンのスクリュー部36の直径D1=4.5mm、骨スクリュー60の直径D2=3.5mmのとき、規定面S〜Sの面間隔を8.0mm以上にするのとよい。
【0059】
また、プレート部材20に対する第1の骨ピン301〜303の長手方向が、規定面S〜Sの面内で可変であるのが好ましい。具体的には、図8のように、固定具511を、固定板512のスリット512fに沿って矢印R方向に移動できるのが好ましい。また別の例としては、スリット512fの代わりに、円弧状に配置された複数の穴を設けて、任意の穴の位置に固定具511を固定することもできる。骨ピン301〜303の長手方向を可変にするときには、図8の点Oを中心として回転可能にするとよい。なお、図8の点Oには、実際には3つの点O〜Oが重なっている。点Oは規定面S、点Oは規定面S及び点Oは規定面Sの面内に存在している。また、点O〜Oは、プレート部材20に形成された第1の骨ピン用の3つの貫通孔21(図3参照)の中心と、それぞれ一致する。
第1の骨ピン301〜303の長手方向が可変であると、図9のように、3本の第1の骨ピン301〜303を互いに斜交いに刺入できるので、第1の骨ピン301〜303によるプレート部材20の固定力を高めることができる。
【0060】
(第2の固定部52)
本実施の形態では、第2の固定部52は、本体521と、挟持具522と、ねじ523とを含んでいる(図6参照)。本体521は、挟持具522と対向する面上に、半円状の溝が2つ形成されている。また、挟持具522は、本体521と対向する面上の、本体521と溝と対応する位置に、半円状の溝が2つ形成されている。ねじ532によって、挟持具522を本体521に固定すると、本体521の溝と挟持具522の溝とから、穴524が構成される。この穴524に第2の骨ピン40を挿通し、ねじ532を締め付けることにより、第2の固定部52に第2の骨ピン40が固定される。
【0061】
(可動部53)
創外固定部材50は、第1の骨ピン30と第2の骨ピン40との間に、固定可能な可動部53を備えているのが好ましい。可動部53を備えることにより、第2の固定部52に対する第1の固定部51の相対位置を調節することができる。例えば、創外固定部材50を第1の骨ピン30及び第2の骨ピン40に固定するときには、第1の固定部51と第2の固定部52との間を可動状態にして、第1の固定部51を第1の骨ピン30に、第2の固定部52を第2の骨ピン40に、それぞれ固定する。各固定部の固定が完了したら、可動部53を固定して、第2の固定部52に対する第1の固定部51の相対位置を固定する。これにより、第2の骨ピン40に対する第1の骨ピン30の相対位置を保持することができる。
【0062】
本実施の形態では、可動部53は、スライド部531とユニバーサルジョイント532を含んでいる。
【0063】
(スライド部531)
スライド部531は、帯状部材531aと、スライドシャフト531bと、ねじ531cとを含んでいる(図2及び図6参照)。帯状部材531aは、一端が第1の固定部51に固定され、他端の近傍に、楕円状の貫通孔531dが形成されている。スライドシャフト531bは、一端にねじ穴が形成されている。ねじ531cは、帯状部材531aの貫通孔531dを通って、スライドシャフト531bのねじ穴に螺入されている。
【0064】
スライド部531のねじ531cを緩めると、ねじ531cの軸は、楕円状の貫通孔531dを上下方向にスライドする。このとき、第1の固定部51は、第2の固定部52に対して、上下方向に相対的に移動できる。また、ねじ531cを締め付けると、貫通孔531dの任意の位置にねじ531cを固定することができる。その結果、第1の固定部51は、第2の固定部52に対して、相対的に固定される。
【0065】
(ユニバーサルジョイント532)
ユニバーサルジョイント532は、ケース532aと、ボール532bと、ボール支持部532cと、ねじ532dとを含んでいる(図2及び図6参照)。
ケース532aは、上下方向に貫通する円柱状の貫通孔532eを備えている。貫通孔532eの直径は、ボール532bの直径よりわずかに大きいが、ケース532aの上面近傍で、ボール532bの直径より小さくなるように縮径している。
【0066】
ボール532bには、スライド部531のスライドシャフト531bが固定されている。ボール532bは、ケース532aの貫通孔532eに下側から挿入されるが、このとき、スライドシャフト531bが上を向くように挿入する。そして、ボール532bが貫通孔532eの縮径部分に係止されるときに、スライドシャフト531bをケース532aの上面から突出させる。貫通孔532e内でボール532bを回転させることにより、スライドシャフト531bの向きを任意に変更することができる。
【0067】
ボール支持部532cは、貫通孔532eの下部に配置されており、ボール532bを下から支えている。ボール支持部532cの上面には円錐状の凹部が形成されており、ボール532bを安定して支持できるようになっている。また、ボール支持部532cは、ねじ532dによって上下方向に移動させることができる。ねじ532dを締め付けると、ボール支持部532cが上昇して、貫通孔532eの縮径部分とボール支持部532cとの間でボール532bが固定される。ねじ532dを緩めると、ボール支持部532cが下降して、ボール532bが自由に回転できるようになる。
【0068】
ユニバーサルジョイント532は、図6のように、第2の固定部52に対して、第1の固定部51を左右方向に移動させることができる。また、ユニバーサルジョイント532は、図2のように、第2の固定部52に対して、第1の固定部51を斜め方向に傾けることができる。
【0069】
上述のように、本実施の形態の可動部53は、スライド部531とユニバーサルジョイント532とを含むことにより、第2の固定部52に対して、第1の固定部51を上下方向及び左右方向に移動させること、及び斜め方向に傾けることができる。
【0070】
以下に、本発明の骨折部固定器具1を用いて、骨折部を固定する方法を説明する。
【0071】
(1.切開創の形成)
皮膚及び組織を切開して、骨折部(本実施の形態では、上腕骨近位部)を露出させる。切開創の大きさは、整復等の手技及びプレート部材20の挿入が可能な大きさにする。
【0072】
(2.骨折部の整復)
骨片90を、骨本体91の所定位置に整復する。骨片90に筋肉が付着している場合、骨片90は近位方向にずれていることが多い。その場合、筋肉の牽引力に逆らって骨片90を引っ張って、整復する必要がある。例えば、図10のように、筋肉95の基部に縫合糸96をかけ、その縫合糸96を引っ張ることにより、骨片90の整復を容易にしてもよい。
【0073】
(3.プレート部材20の固定)
整復した骨折部の表面にプレート部材20を配置する。そして、例えばK―ワイヤを専用の貫通孔23(図3参照)に穿刺して、プレート部材20を骨片90及び骨本体91に仮固定する。その後、プレート部材20の貫通孔22に合わせて骨片90及び骨本体91に下穴をあける。そして、下穴に骨スクリュー60を螺入して、プレート部材20を骨片90及び骨本体91に本固定する。
【0074】
(4.位置決めバーの固定)
プレート部材20に位置決めバー81(図11参照)を固定する。この位置決めバー81は、下記の「5.切開創の縫合」で切開創を縫合した後に、プレート部材20の位置を確認する際に使用される。プレート部材20に設けられた位置決めバー81用の貫通孔24(図3参照)に、位置決めバー81を固定する。位置決めバー81は帯状部材から成り、図11のように、「くの字」状に屈曲している。一端811には、プレート部材20の貫通孔24に挿入固定できるピン813を備え、また、他端813は切開創を通って体外まで延びている。
【0075】
(5.切開創の縫合)
位置決めバー81の端部813を切開創から体外に突出させた状態で、切開創を縫合する。
【0076】
(6.ガイド器具70の固定)
位置決めバー81に、第1の骨ピン30及び第2の骨ピン40をガイドするためのガイド器具70を固定する(図11参照)。ガイド器具70は、第1の骨ピン30を正確にガイドするためのガイド本体71と、第2の骨ピン40をおおよそガイドするためのフレーム部材72とから構成される。
なお、図11のガイド本体71は、図13の切断面α−αに沿った断面を示しており、また、フレーム部材72は、図14の切断面β−βに沿った断面を示している。
【0077】
図12のように、ガイド本体71は、点Oを中心とした円弧状に湾曲している。また、図13のように、湾曲した外側面714には、複数のガイド穴が、3本の平行な線(第1の線711x、第2の線712x及び第3の線713x)に沿って、等間隔で形成されている。例えば第1の線711xに沿って、11個のガイド穴711a〜711kが形成されている。ガイド穴711a〜711kは、横方向に隣接するガイド穴711a〜711kと部分的に重なって、横方向に延びる第1の長穴711を形成している。第2の線712xに沿って形成されたガイド穴は、第2の長穴712を形成し、第3の線713xに沿って形成されたガイド穴は、第3の長穴713を形成している。
なお、ガイド穴711a〜711kは、それらが隣接するガイド穴711a〜711kと重ならないように(すなわち、各ガイド穴711a〜711kが個々に独立するように)形成されてもよい。
【0078】
図12のように、ガイド穴は、外側面714に対して垂直方向に形成されている。例えば、第1の長穴711に含まれるガイド穴711a〜711kは、ガイド穴の中心軸Z(図には、ガイド穴711aの中心軸Zと、ガイド穴711kの中心軸Zとを例示している)が点O(点O)を中心とした半径方向に一致するように形成されている。第2の長穴712に含まれるガイド穴は、その中心軸が点O(点O)を中心とした半径方向に一致するように形成されている。そして、第3の長穴712に含まれるガイド穴は、その中心軸が点O(点O)を中心とした半径方向に一致するように形成されている。
なお、図12では点O〜Oの位置は一致しているが、実際には、紙面垂直方向の位置が異なっている。
【0079】
図11、図12及び図13に示すように、ガイド本体71の上面の内側面715側に、位置決めバー81の他端812(図11参照)を受容するための凹部(バー受容部74)が形成されている。また、ガイド本体71の上面の外側面714側には、ねじ77(図11参照)の頭部を受容するための切欠き部76が形成されている。そして、バー受容部74と切欠き部76との間に、ねじ77を挿通するための穴75が形成されている。
【0080】
図11のように、ガイド本体71が位置決めバー81に固定されたとき、ガイド本体71のガイド穴の中心軸Zは、図9の規定面S〜Sの面内に位置する。具体的には、ガイド本体71の第1の長穴711に含まれるガイド穴711a〜711kの中心軸Z〜Zは、全て、規定面Sの面内に位置する。第2の長穴722に含まれるガイド穴の中心軸は、全て、規定面Sの面内に位置する。そして、第3の長穴723に含まれるガイド穴の中心軸は、全て、規定面Sの面内に位置する。
そして、中心軸の交点O〜Oは、図8の点O〜Oと同一であり、また、プレート部材20に形成された第1の骨ピン用の3つの貫通孔21(図3参照)の中心と、それぞれ一致する。
【0081】
図11及び図14のように、フレーム部材72は板状部材から形成されており、矩形の枠から成るフレーム721と、フレーム721をガイド本体71に固定するためのフレーム保持部722とを備えている。フレーム保持部722の上端は折り曲げられており(屈曲部722a)、また屈曲部722aにはねじ79用の穴が形成されている。屈曲部722aをガイド本体71の下面に対向させ、ねじ79を屈曲部722aの穴を通ってガイド本体71のねじ穴716(内面に雌ねじが形成されている)に螺合することで、フレーム部材72をガイド本体71に固定する。
【0082】
(7.第1の骨ピン30の刺入)
第1の骨ピン30は、プレート部材20が見えない状態で骨片90及び骨本体91に刺入される。第1の骨ピン30は、プレート部材20の貫通孔21を通り、さらに、プレート部材20を固定している骨スクリュー60を避けて、骨片90及び骨本体91に刺入されなくてはならない。そのため、第1の骨ピン30の刺入の際には、その刺入方向を厳密に制御する必要がある。本実施の形態では、ガイド器具70(特に、ガイド本体71)によって、第1の骨ピン30の刺入方向を厳密に制御することができる。
【0083】
第1の骨ピン30を刺入するには、先に、ドリルで骨片90及び骨本体91に下穴を開け、その下穴に第1の骨ピン30のスクリュー部36を螺入する。
具体的には、まず、X線によって、プレート部材20により整復した骨片90及び骨本体91の状態を確認し、3本の第1の骨ピン30を刺入する最適な方向を決定する。なお、このとき、第1の骨ピン30が図9の規定面S〜Sの面内に位置するように、且つ1つの規定面に1本の第1の骨ピン30が位置するように、3本の第1の骨ピン30のそれぞれの刺入方向を決定する。
【0084】
次に、ガイド本体71に形成されたガイド穴から、第1の骨ピン30の刺入方向に対応する3つの穴を選択する。このとき、第1の長穴711(第1の規定面Sに対応)から1つ、第2の長穴712(第2の規定面Sに対応)から1つ、そして第3の長穴713(第3の規定面Sに対応)から1つのガイド穴が選択されることになる。
【0085】
選択されたガイド穴(例えば、第1の長穴711のガイド穴711a)に沿ってドリル82を体内に侵入させ、骨片90及び骨本体91に下穴をあける。このとき、ドリル82を正確な方向にガイドするため、及びドリル82の刃先により筋組織が損傷するのを防止するために、ガイド筒78を使用する(図15参照)。
【0086】
図15の例では、ガイド筒78は、外筒781と内筒782とから構成されている。ドリル82を刺入するときは、外筒781と内筒782とを組み合わせて使用する。外筒781の外径は、外筒78がガイド本体71のガイド穴に挿入可能で且つ弛みがないように設定される。そのため、ガイド穴にガイド筒78を挿入したときに、ガイド筒78は所定方向に正しく方向付けされる。また、内筒782の内径は、ドリル82が挿入可能で、下穴をあけるときにドリル82が回転可能で、且つドリル82の回転時にがたつかないように設定されている。そのため、ガイド筒78にドリル82を挿入して、骨片90及び骨本体91に下穴をあけるときに、下穴を所定方向に正しく穿孔することができる。
図15のように、外筒781の近位端及び内筒782の近位端にハンドル781a、782aを設けると、ドリル82で下穴をあけている間にガイド筒78を保持しやすいので好ましい。
なお、ガイド筒78を外筒781と内筒782の2部材から構成する代わりに、1つの円筒状部材から構成してもよい。
【0087】
以下に、骨片90に下穴を形成し、第1の骨ピン30を刺入する手順を詳しく説明する。
選択したガイド穴の位置に合わせて、ガイド筒78を通すための小さな切開部を皮膚に形成する。そして、ガイド筒78の遠位端78aを、ガイド本体71の外側面714側から選択したガイド穴に挿入し、さらに切開部から体内に侵入させて、ガイド筒78の遠位端78aを、プレート部材20の貫通孔21(第1の骨ピン30用)に到達させる(図11及び図12参照)。ガイド器具70を用いると、規定面S〜Sの面内で、プレート部材20の貫通孔21に向かって、ガイド筒78を方向付けることができる。そして、ガイド筒78の近位端78bからドリル82を挿入し、プレート部材20の貫通孔21に合わせて、骨片90及び骨本体91に下穴をあける。
この操作を、選択した3つのガイド穴を使用して3回繰り返して、プレート部材20の3つの貫通孔21に合わせて、3つの下穴を形成する。
【0088】
次に、下穴に第1の骨ピン30を刺入する。このときも、第1の骨ピン30を正確な方向にガイドするため、及び第1の骨ピン3のスクリュー部36により筋組織が損傷するのを防止するために、ガイド筒78を使用する。第1の骨ピン30の外径は、ドリル82の外径より大きいので、ガイド筒78の内筒782を抜いて、外筒781のみ使用する。
なお、ドリル82用のガイド筒78を一体で形成した場合には、第1の骨ピン30用のガイド筒を別途準備する。
【0089】
外筒781の近位端からから第1の骨ピン30の一端31を挿入し、プレート部材20の貫通孔21まで侵入させる。そして、第1の骨ピン30のねじ頭35がプレート部材20に接触するまで、第1の骨ピン30のスクリュー部36を下穴に螺入する。こうして、第1の骨ピン30は骨片90及び骨本体91に固定され、それと同時に、第1の骨ピン30はプレート部材20を骨片90及び骨本体91に固定する。
この操作を、選択した3つのガイド穴を使用して3回繰り返して、プレート部材20の3つの貫通孔21に、3本の第1の骨ピン30を刺入する。
【0090】
(8.第2の骨ピン40の刺入)
第2の骨ピン40の刺入方向は、第1の骨ピン30ほど厳密に制御しなくてもよい。本実施の形態では、ガイド器具70のフレーム部材72を用いて、第2の骨ピン40の刺入方向をおおまかに制御している。
【0091】
まず、X線により骨本体91(図1の骨幹)を確認する。そして、フレーム部材72のフレーム721の開口を通り、且つ骨本体91のほぼ中心を通るように、第2の骨ピン40の刺入方向を決定する。
複数本(例えば2本)の第2の骨ピン40を刺入する場合には、図11のように、2本の第2の骨ピン40ともフレーム721の開口を通るように、それぞれの刺入方向を決定する。また、本実施の形態では、2本の第2の骨ピン40を第2の固定部532の2つの穴524(図6参照)で保持するので、2本の第2の骨ピン40が互いに平行で、且つ穴524の間隔と同じ間隔だけ離れるように、第2の骨ピン40の刺入方向を決定する。
【0092】
決定した刺入方向に合わせて、ガイド筒78(図15参照)を通すための小さな切開部を皮膚に形成する。そして、ガイド筒78の遠位端78aを、フレーム721の遠位側から開口に挿入し、切開部から体内に侵入させ、そして、決定した刺入方向に沿って前進させて、ガイド筒78の遠位端78aを骨本体91の表面に到達させる。そして、ガイド筒78の近位端78bからドリル82を挿入し、骨本体91に下穴をあける。
【0093】
次に、下穴に第2の骨ピン40を刺入する。まず、切開部から侵入させていたガイド筒78の内筒782を抜いて外筒781のみを留置する。そして外筒781の近位端からから第2の骨ピン40の一端41を挿入し、第2の骨ピン40のスクリュー部46を下穴に螺入する。こうして、第2の骨ピン40は骨本体91に固定される。
この操作を2回繰り返して、骨本体91に2本の第2の骨ピン40を刺入する(図11参照)。
【0094】
(9.創外固定器50の装着)
創外固定器50を、第1の骨ピン30及び第2の骨ピン40に固定する。
まず、創外固定器50の第1の固定部51を第1の骨ピン30に固定する。第1の固定部51の4つのねじ514(図6参照)を外して、第1の固定部51を分解する。そして、第1の骨ピン30の他端32を、固定具511の貫通孔511aに挿通する(図1参照)。そして、図6のように、固定具511の上面511d及び/又は下面511cに固定板512を配置する。固定具511の穴511f(図7参照)と固定板512のスリット512fの位置を合わせ、ねじ514を上側又は下側から挿入する。固定板512の平行性を保つため、隣接する固定板512の間に1つ以上のスペーサー513を配置する(図6参照)。また、ねじ514の長さに合わせて適宜スペーサー513を使用してもよい。最後に、ねじ514を締め付けて、第1の骨ピン30に第1の固定部51をしっかり固定する。
【0095】
次に、創外固定器50の第2の固定部52を第2の骨ピン40に固定する。第2の固定部52のねじ523を外して、本体521から挟持具522を取り外す。また、創外固定器50の可動部53を可動状態(すなわち、スライド部531のねじ531cと、ユニバーサルジョイント532のねじ532dとを緩めた状態)にして、第1の固定部51に対する第2の固定部52の位置を調節可能にする。そして、第2の骨ピン40に、第2の固定部52の本体521に形成された半円状の溝をあてがう。挟持具522に形成された半円状の溝が第2の骨ピン40に嵌るように位置合わせしながら、挟持具522を本体521にねじ523で固定する。ねじ523を締め付けることにより、本体521の溝と挟持具522の溝との間(つまり、穴524)に、第2の骨ピン40が固定される。
【0096】
最後に、スライド部531のねじ531cと、ユニバーサルジョイント532のねじ532dとを締め付けて、可動部53を固定する。
【0097】
上記1〜9のステップにより、本実施の形態の骨折部固定器具1を骨折部に固定することができる。
【0098】
本実施の形態では、骨折部固定器具1は、プレート部材20の幹板部202が骨本体91に固定できる例(すなわち、骨折線が幹板部202より骨端側にある例)を挙げて説明した。しかしながら、幹板部202が骨本体91に固定できない場合(すなわち、骨折線が幹板部202より骨幹側にある場合)にも、本発明の骨折部固定器具1に含まれる創外固定部材50により骨片90と骨本体91とを固定できるので、本発明の骨折部固定器具1が適用可能である。
【0099】
本発明の骨折部固定器具1は、上腕骨近位部の他にも、同様の部位の骨折に適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 骨折部固定器具
20 プレート部材
201 頭板部
202 幹板部
21 第1の骨ピン用貫通孔
22 骨スクリュー用貫通孔
30 第1の骨ピン
31 一端
32 他端
35 ねじ頭
36 スクリュー部
37 シャフト部
40 第2の骨ピン
41 一端
42 他端
46 スクリュー部
50 創外固定部材
51 第1の固定部
511 固定具
512 固定板
52 第2の固定部
53 可動部
531 スライド部
532 ユニバーサルジョイント
60 骨スクリュー
70 ガイド器具
81 位置決めバー
82 ドリル
90 骨片
91 骨本体
92 皮膚
95 筋肉
96 縫合糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に設置され、複数の骨片を互いに固定するプレート部材と、
前記プレート部材を前記骨片に固定するスクリュー部を備えた一端と、体外に伸びる他端と、を含む1本以上の第1の骨ピンと、
前記骨本体に固定される一端と、体外に伸びる他端と、を含む1本以上の第2の骨ピンと、
前記第1の骨ピンと前記第2の骨ピンとに体外で固定され、前記第2の骨ピンに対する前記第1の骨ピンの位置を保持する創外固定部材と、
を備えた骨折部固定器具。
【請求項2】
前記創外固定部材は、前記第1の骨ピンに固定される第1の固定部と、前記第2の骨ピンに固定される第2の固定部との間に、固定可能な可動部を含むことを特徴とする請求項1に記載の骨折部固定器具。
【請求項3】
前記骨折部固定器具が前記第1の骨ピンを2本以上含み、
前記創外固定部材は、前記第1の骨ピンに固定される第1の固定部に2つ以上の固定具を含み、
前記固定具の各々により規定される規定面の面内に、前記第1の骨ピンの各々が配置され、
前記規定面は互いに平行であることを特徴とする請求項1又は2に記載の骨折部固定器具。
【請求項4】
前記プレート部材に対する前記第1の骨ピンの長手方向が、前記規定面の面内で可変であることを特徴とする請求項3に記載の骨折部固定器具。
【請求項5】
前記プレート部材は、骨スクリューにより前記骨片に固定されており、
前記骨スクリューは、前記規定面と平行な面内に配置されており、
前記規定面の間隔が、前記第1の骨ピンの前記スクリュー部の直径と前記骨スクリューの直径との和以上であることを特徴とする請求項3又は4に記載の骨折部固定器具。
【請求項6】
前記第1の骨ピンは、前記スクリュー部の遠位側に、前記スクリュー部を前記骨本体に固定したときに前記プレート部材に当接するねじ頭を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の骨折部固定器具。
【請求項7】
前記第1の骨ピンの前記スクリュー部は、前記ねじ頭の他端側の位置で、前記第1の骨ピンの本体と分離可能であることを特徴とする請求項6に記載の骨折部固定器具。
【請求項8】
前記骨プレートが、前記骨本体に固定される幹板部を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の骨折部固定器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−193954(P2010−193954A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39384(P2009−39384)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(509052665)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】