説明

骨盤状態検出装置

【課題】被爆の恐れがなく、且つ、腰椎の形状を手軽な装置で知ることにより、腰椎の形状に基づく各種疾患の予防に役立つ装置を提供する。
【解決手段】本発明の骨盤状態検出装置は、人体の腰部に装着する装着手段と、人体の姿勢変動を3次元の基準軸に対する回転角で検知する検知手段と、前記検知手段で検出した検出値をデータ処理するデータ処理手段とを備え、人体の腰椎部を骨盤状態の位置変動で検知して、腰椎部及び身体に及ぼす悪影響が改善できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の骨盤を3次元で検知して、被計測部位の状態に関する情報から人体の健康を管理する姿勢状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
姿勢を検知する技術としては、外部に固定された磁場発生源から磁場を検知し、演算装置で頭の動きを検出する方法で、頭部などの部位の姿勢角を計測するものが知られている。このような姿勢角を計測する装置は、映像装置と連結されて、頭部の位置を変動させた場合に、その位置から見える映像で、現実感が体感できる映像装置となる。また、磁場の発生源を必要としないGPSと組み合わせた検知手段もあり、この場合、移動体をGPSで検知して、その移動体の姿勢を制御する装置となる。姿勢角度検出装置としては、特開2002−296030号公報に、運動角、静止角、姿勢角を検知して演算する手段を有し、且つ、検出方向変換手段を有した姿勢角度検出装置が示されている。この装置は、角速度を検出するジャイロスコープを備え、該ジャイロスコープの角速度に応じた出力に基づいて移動角度を演算する運動角演算手段と、軸方向の加速度を検出する加速度センサーと、軸方向の地磁気を検出する地磁気センサーと、加速度センサ及び地磁気センサの出力に基づいて、ロール角、ピッチ角、及び、ヨー角を演算する静止角演算装置と、運動角演算手段、及び、静止角演算手段の演算結果から姿勢角を演算する姿勢角演算手段と、を備えている。
また、腰痛など脊椎の変位で惹き起こされる疾患を治療もしくは予防するものとして、特開平7−88142号公報には、仰臥の姿勢を取ったままで強制的に腰部を中心とした屈伸運動をさせる腰部屈伸運動強制装置が開示されている。この装置は、台枠上に、腰部刺激用振動当て座を中心とし、その前後に略対称形の円弧状下半身受け座と円弧状上半身受け座とを組み合わせて全体側面形が略下弦の月状として構成され、円弧状下半身受け座が、台枠に固定すると共に足首固定部を形成した身長調整板を組み合わせ、円弧状上半身受け座が、腰部刺激用振動当て座に隣接する端部側を枢着部とした強制上下動のなし得るリクライニング構造に形成されている。
【特許文献1】特開2002−296030号公報
【特許文献2】特開平7−88142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
背景技術で述べた腰部屈伸運動強制装置においては、腰部屈伸運動を必要とする人々にとって有効な装置であるが、運動をすることで腰痛等の予防ができるかどうかは疑問である。また、脊椎(特に、腰椎部)の形状が腰痛などの疾患に大きく影響することが知られているとしても、レントゲンで脊椎の状態をモニターした場合には、被爆の恐れがある等の問題点を有していた。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、被爆の恐れがなく、且つ、腰椎の形状を手軽な装置で知ることにより、腰椎の形状に基づく腰痛等の各種疾患の予防に役立つ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の骨盤状態検出装置は、人体の腰椎部を骨盤状態の位置変動で検知して、腰椎部及び身体に及ぼす影響を評価する骨盤状態検出装置であって、人体の腰部に装着する装着手段と、人体の姿勢変動を3次元の基準軸に対する回転角で検知する検知手段と、前記検知手段で検出した検出値をデータ処理するデータ処理手段と、を備えていることを特徴とする。
前記検知手段は、人体の正面に向けて、第1の基準軸を設定した際に、前記第1の基準軸周りの傾きを人体の左右姿勢変位に基づいて生じるロール値として検出し、前記第1の基準軸と直交する水平方向の第2の基準軸周りの傾きを人体の前後屈姿勢変位に基づいて生じるピッチ値として検出し、前記第1の基準軸と直交する垂直方向の第3の基準軸周りの傾きを人体の捻転姿勢変位に基づいて生じるヨー値として検出することを特徴とする。
また、前記骨盤状態検出装置は、人体の座位における変化を経時的もしくはリアルタイムに表示する表示手段を、更に、備えていることを特徴とする。
前記データ処理手段は、前記検出値を解析し、健康への悪影響を判断する解析手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されているような効果を奏する。
骨盤状態検出装置は、人体の腰椎部を骨盤状態の3次元の基準軸に対する回転角で検知して、腰椎部及び身体に及ぼす影響が評価できるので、腰椎の形状に基づく腰痛等の各種疾患の予防に役立つ装置とすることができる。
即ち、骨盤状態検出装置から送信された検出値に基いて、被験者の姿勢をリアルタイムで表示することができることから、姿勢矯正や姿勢の癖を発見する装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
人体の腰部に装着する装着手段と、人体の姿勢変動を3次元の基準軸に対する回転角で検知する検知手段と、前記検知手段で検出した検出値をデータ処理するデータ処理手段とを備えて骨盤状態検出装置を構成した。
【実施例1】
【0007】
本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は、骨盤状態検出装置1の基本構成を示したシステムブロック図である。この骨盤状態検出装置1は、腰部に巻回したベルトに装着する為の係止部材(装着手段)を有し、略立方体形状の容器内に、加速度計11と、ジャイロ12とからなるセンサ部(検知手段)10を備え、3次元の基準軸に対する回転角で被験者の動きを捉えることができるものである。センサ部10からの信号は、ケーブルで接続された制御部20でデータ処理され、身体の前後方向(ピッチ角)、及び、左右方向の回転(ロール角)が、それぞれ±60度の範囲で計測される。さらに、センサ部10から得られたデータは、制御部20のマイクロコンピュータで処理・記録され、方位角検出システム21による方位角データと共に、上位システム30に送信され、経時的もしくはリアルタイムで表示できるようになっている。
【0008】
図2は、被験者3の動きを捉える3次元の基準軸、及び、回転角を説明する説明図である。この図に示すように、被験者3は、座席(シート)に座った状態で、正面に向けて、第1の基準軸5が設定され、第1の基準軸5周りの傾きを人体の左右姿勢変位に基づいて生じるロール値として検出される。また、第1の基準軸5と直交する水平方向の第2の基準軸6周りの傾きを人体の前後屈姿勢変位に基づいて生じるピッチ値として検出し、第1の基準軸5と直交する垂直方向の第3の基準軸7周りの傾きを人体の捻転姿勢変位に基づいて生じるヨー値として検出する。
【0009】
図3は、被験者3の座位変動を計測するためにセットされた検証図であり、セパレート式シートバック2を有する検証用モデルシートの各ポジションを示したものである。骨盤状態検出装置1は、ベルトで被験者3の骨盤が体表面にあらわれている腸骨突起部に取付けられている。その際、直立姿勢をとった時のセンサ出力を基準値として、身体の前後左右の動きを記録する為に、その取り付け位置を直立状態で身体の真横にして被験者3の動きを検出した。尚、検証用モデルシート2は、これまでの検証結果(座面クッション厚の違いによる影響は無視できる等)から、動きやすさを考慮して製作された基本型であり、後述するデータに他の因子が入り込まないようにモデル化されている。因みに、(a)はアップライトポジションで、離着陸、及び、食事時の状態であり、(b)はリクライニングポジションで、睡眠、及び、映像・音楽鑑賞時の状態であり、(c)はストレッチングポジションで、ストレッチ(背伸び)を示した状態である。
【0010】
図4は、60分間の骨盤傾斜角(ピッチ角)を、時系列グラフで見たものである。このグラフにおいて、A線(コントロール線)、及び、B線(ストレッチ線)は、座面クッション厚等の条件を同一にして、被験者3が、ストレッチ(背伸び)をしたことによる違いを、骨盤傾斜角(ピッチ角)で比較したものである。この対比から、B線(ストレッチ線)のピッチ角変動が、特に、ストレッチ(背伸び)をした後に、少なくなっており、安定していることがわかる。
【0011】
ピッチ角の変動が少なくなり、安定したことの理由として、ストレッチ運動による心拍数の増加が生体に影響を及ぼしたことは明白である。これにより、ストレッチ運動による心拍数の増加は次の諸点を示唆していると考えられる。(1)心拍数の増加は,心拍出量と酸素摂取量の増加と対応する。(2)心拍数の増加により、筋内の血管拡張が起こり、筋収縮により静脈血管還流量が増大した可能性がある。即ち、骨盤状態検出装置1をベルトに取付けてモニターし、ピッチ角の変動をモニターすることにより、その解析結果から、適正ストレッチタイムを推測したりすることができる。
【0012】
図5は、骨盤状態検出装置1から送信されたデータ(検出値)に基いて、上位システム30が、被験者3の姿勢をリアルタイムで表示するようにしたものである。即ち、アップライトポジションにおける被験者3の姿勢表示31を基準にして、右に傾いた姿勢表示35、左に傾いた姿勢表示34、リクライニング姿勢表示32、前かがみ表示33が、円内の斜線部でアナログ表示されるようになっている。このような姿勢表示は、それを利用する者にとって、姿勢矯正や姿勢の癖を発見する手段となる。また、骨盤状態検出装置1から送信されたデータ(検出値)を経時的に蓄積し、解析することにより、健康への悪影響が判断できる装置とすることもできる。即ち、骨盤状態検出装置1は、健康的に問題が発生しそうな兆候を骨盤傾斜角から読み取ることができるので、事前に健康被害を防止する装置となる。
【0013】
図6は、直立姿勢から座位姿勢に変化させた人体の姿勢変化を骨盤状態検出装置1で測定したものであり、骨盤傾斜角(ピッチ角)を経時変化で現したものである。また、図7は、それぞれの姿勢状態を人体の骨格(腰椎41と骨盤42)で示したものである。図6中“C”の領域は、直立姿勢の状態であり、図7の(a)に相当する。同様に、破線で示した図6の“D”の領域は、図7の(b)に相当する座位姿勢であり、破線で示した図6の“E”の領域は、図7の(c)に相当する座位姿勢である。この図6に示すように、直立姿勢から座位姿勢に変化したことで、骨盤傾斜角(ピッチ角)は、20度程度後屈側に変化したことが理解される。しかし、図7の(b)に相当する座位姿勢は、腰椎41に負担のかかる後屈状態である。このことは、図6において、5度程度の角度の相違として示され、これにより、座位姿勢の違いが、骨盤傾斜角(ピッチ角)の相違として検出されたことになる。
【0014】
このように、正常の座位姿勢(図7の(c)参照)に対し腰椎41に負担のかかる後屈姿勢を骨盤傾斜角(ピッチ角)の相違として検出し、これを好適なモニターに接続することで、事前に健康被害を防止する装置とすることができる。また、レントゲンを放射して図7に示されるような人体の骨格を表さなくても、骨盤状態検出装置1を利用し、骨盤傾斜角(ピッチ角)の相違として脊椎(特に、腰椎部)状態が検出できるので、姿勢矯正や姿勢の癖を発見する簡易な装置となる。本実施例においては、前屈後屈の相違を骨盤傾斜角(ピッチ角)の相違として検出した事例を示したが、ヨー値やロール値と組合わせて、左右のアンバランスを検出する装置とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】骨盤状態検出装置の基本構成を示したシステムブロック図である。
【図2】被験者の骨盤状態の動きを捉える3次元の基準軸、及び、回転角を説明する説明図である。
【図3】セパレート式シートバックを有する検証用モデルシートの各ポジションを示したものであり、(a)はアップライトポジション、(b)はリクライニングポジション、(c)はストレッチングポジションである。
【図4】60分間の骨盤傾斜角(ピッチ角)の時系列グラフである。
【図5】検知手段の検出値に基いて、表示手段が被験者の姿勢をリアルタイムで表示したものである。
【図6】骨盤傾斜角(ピッチ角)推移を示したグラフである。
【図7】図6の特定範囲における人体の骨格説明図であり、(a)は直立姿勢を示し、(b)は前屈の座位姿勢を示し、(c)は正常な座位姿勢を示す。
【符号の説明】
【0016】
1 骨盤状態検出装置
2 セパレート式シートバック
3 被験者
4 クッション
5 第1の基準軸
6 第2の基準軸
7 第3の基準軸
10 センサ部
11 加速度計
12 ジャイロ
20 制御部
21 方位角検出システム
30 上位システム
31 アップライトポジションにおける表示
32 リクライニングポジションにおける表示
33 前かがみ状態における表示
34 左に傾いた状態における表示
35 右に傾いた状態における表示
41 腰椎
A 一般的なピッチ角の経時変化
B ストレッチをしたことによるピッチ角の経時変化
C 直立姿勢の領域
D 前傾座位姿勢の領域
E 座位姿勢の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の腰椎部を骨盤状態の位置変動で検知して、腰椎部及び身体に及ぼす影響を評価する骨盤状態検出装置であって、
前記骨盤状態検出装置は、人体の腰部に装着する装着手段と、人体の姿勢変動を3次元の基準軸に対する回転角で検知する検知手段と、前記検知手段で検出した検出値をデータ処理するデータ処理手段と、を備えていることを特徴とする骨盤状態検出装置。
【請求項2】
前記検知手段は、人体の正面に向けて、第1の基準軸を設定した際に、前記第1の基準軸周りの傾きを人体の左右姿勢変位に基づいて生じるロール値として検出し、前記第1の基準軸と直交する水平方向の第2の基準軸周りの傾きを人体の前後屈姿勢変位に基づいて生じるピッチ値として検出し、前記第1の基準軸と直交する垂直方向の第3の基準軸周りの傾きを人体の捻転姿勢変位に基づいて生じるヨー値として検出することを特徴とする請求項1に記載の骨盤状態検出装置。
【請求項3】
前記骨盤状態検出装置は、人体の座位における変化を経時的もしくはリアルタイムに表示する表示手段を、更に、備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の骨盤状態検出装置。
【請求項4】
前記データ処理手段は、前記検出値を解析し、健康への悪影響を判断する解析手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の骨盤状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−20879(P2006−20879A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202428(P2004−202428)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(501099839)エルゴシーティング株式会社 (7)
【Fターム(参考)】