説明

骨締結ケーブル用締結補助具

【課題】 骨締結ケーブルによる骨の締結における嵩張りと捩れの問題を改善し,締結時の増し締めが行え,且つ増し締め後に緩みが生じることがない締結方法を可能にする手段を提供すること。
【解決手段】貫通穴を有するプレート状部を含む骨締結ケーブル用締結補助具であって,該貫通穴が,該補助具と共に用いられる骨締結ケーブルの2本の腕の通過を許容するが骨締結ケーブルの2本の腕を1回以上結び合わせることにより形成される結び目の通過は許容しない大きさのものであり,該骨締結ケーブルを該結び目において及び/又は該結び目から延びる2本の腕の部分において保持するための骨締結ケーブル保持手段を更に含むものである,骨締結ケーブル用締結補助具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,骨折治療や骨整復固定術等の骨手術において,患部の骨同士が癒合一体化できるよう,ケーブルでそれらの骨同士を締結し緊縛した状態で保持しておくために用いられる骨締結ケーブル用締結補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折,例えば脊椎骨折の治療における整復骨の固定(癒合一体化させることをいう。)や,骨移植術等の骨手術における骨同士の固定のためには,固定が完了するまでの間,骨同士がずれないように相互に強く保持しておく必要がある。このためには,超高分子量ポリエチレン繊維のような高強度の合成繊維を編組みして作られたケーブル(本発明において,「骨締結ケーブル」という。)が広く使用されるようになりつつある(ネスプロン(登録商標)ケーブルシステム,アルフレッサファーマ(株))。
【0003】
骨締結ケーブルを用いた骨固定のための骨手術においては,従来,図1に模式的に示すダブルループスライディングノット(DLSK)法が代表的な締結方法として用いられている。DLSK法は,骨締結ケーブルを二重ループの形で用いて骨を締結するものである。すなわち,図1(a) に示すように骨締結ケーブル1を二つ折にし,一体として保持しようとする骨B1,B2(丸棒で模式的に示す)に巻き掛け(図1(a)),折り返し部分を反転させて(図1(b)〜(c))小さいループ2を作り(図1(d)),これに骨締結ケーブルの2本の腕を同方向から通して(図1(e)),大きいループ3を形成する(図1(f))。次いで,図1(g)に示すよう結びを一つ加え,その結び目4から延びる2本の腕を手で左右に引きループを縮めて骨同士を束ね,続いてループの張力を必要な大きさまで高めるため,器具(特許文献1参照)を用いて骨締結ケーブルのそれら2本の腕を強く引き絞る(これを,「増し締め」という。)。このとき,非常に滑りやすい繊維である超高分子量ポリエチレン繊維よりなる骨締結ケーブルは結び目4内でスライドするため,骨に巻き掛けられたループ3が引かれてその張力が高まる。ループの張力が必要な強さに達した後,骨締結ケーブルを器具から外し,両腕を解放する。このときループの張力はループを緩めようとする方向に作用しているが,結び目は逆にきつく締まって骨締結ケーブルのスライドは阻止される。このため,ケーブルの両腕が解放されているにも拘わらず,ループに生じている高い張力は維持される。従って,術者は,結び目4から延びる骨締結ケーブルの両腕を適宜操作し,更に1回結び合わせて結び目を補強するか,或いは結び目に接着剤を適用する等,結び目を最終的に固定するための処置を容易に施すことができる。このように,DLSK法による骨の締結は,器具による増し締めが可能でありながら,その後器具を外してもループが緩まないという優れた特徴を有する。
【0004】
しかしながら,そのような利点がある反面,DLSK法では,骨締結ケーブルが骨に二重に巻き掛けられているためループ重なるところでは厚みが2倍になる等,嵩張るという難点がある。また,骨に巻き掛けたループ部分で骨締結ケーブルに捩れのないことが重要であるが,DLSK法では二重のループを用いることから,制御が難しく,骨に巻き掛ける際にループのどちらかに捩れが生じ易く,捩れが生じた場合に直すのにも手間がかかる。従って,そうならないよう骨締結ケーブルを十分に注意深く操作することが望ましいが,骨手術では,脊髄に近い部位の締結を行う場合や,多数個所で骨を締結する場合が多く,これを迅速,的確に手術を行う上で,骨締結ケーブルの捩れを防ぐのに注意を払わなければならないのは煩雑である。従って,そのような厚み及び捩じれの難点を改善できると共に,骨締結ケーブルの増し締めが行え,増し締め用の器具から骨締結ケーブルを取り外してもループが緩むことのない,新たな締結方法が開発されることが望ましい。
【0005】
また,超高分子量ポリエチレンはX線を透過させるため,当該繊維で作られた骨締結ケーブルは,骨手術を受けた患者のX線撮影において全く写らない。このため,手術当時の資料がない限り,後になって調べる必要が生じても,骨締結ケーブルが締結されている部位は勿論,骨締結ケーブルが存在するか否かも確認することができないが,これは不都合な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3721189号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の背景において,本発明の目的は,DLSK法の上記難点を有さず,しかも骨締結ケーブルの増し締めが行え,且つ増し締め後に骨締結ケーブルの末端を放してもループが緩まず,このため結び目の最終固定処置を手で自由に行うことができるという特徴を有する締結方法を可能にするための手段を提供することである。
本発明の追加の一目的は,骨手術後にX線撮影において骨締結ケーブルによる締結部位の確認ができる締結方法を可能にするための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,上記目的のために検討の結果,所定の構造を有する補助具によって,上記目的に適う締結方法が可能になることを見出し,更に検討を重ねて本発明を完成させた。すなわち,本発明は以下を提供するものである。
1.貫通穴を有するプレート状部を含む骨締結ケーブル用締結補助具であって,該貫通穴が,該補助具と共に用いられる骨締結ケーブルの2本の腕の通過を許容するが骨締結ケーブルの2本の腕を1回以上結び合わせることにより形成される結び目の通過は許容しない大きさのものであり,該骨締結ケーブルを該結び目において及び/又は該結び目から延びる2本の腕において保持するための骨締結ケーブル保持手段を更に含むものである,骨締結ケーブル用締結補助具。
2.該貫通孔が丸穴である,上記1の骨締結ケーブル用締結補助具。
3.一部又は全部がX線不透過性材料よりなるものである,上記1又は2の骨締結ケーブル用締結補助具。
4.該X線不透過性材料が,金属若しくはセラミックであるか,又はX線不透過性物質を含有する合成樹脂である,上記3の骨締結ケーブル用締結補助具。
5.合成樹脂が含有する該X線不透過性物質が,金属,セラミック,X線不透過性の金属塩である,上記4の骨締結ケーブル用締結補助具。
【発明の効果】
【0009】
上記構成になる本発明によれば,超高分子量ポリエチレン繊維よりなる骨締結ケーブルを二つ折りにすることなく,1本に延ばしたままで一重のループにより骨の締結を行うことができ,しかも増し締めが可能で,増し締め後にケーブルの両腕を増し締め用器具から解放してもループの張力が保たれる。すなわち,図2に本発明の骨締結ケーブル用締結補助具の貫通穴10の周囲以外の部分を省略して模式的に示すように,1本に延びた骨締結ケーブル1を骨B1及びB2に巻き掛け(図2(a)),その両腕を貫通穴10に通し(図2(b)),貫通穴10から出る2本の腕を1回だけ結び(図2(c)),これを手で左右に引いてに骨B1,B2を束ね,次いで2本の腕を更に強く左右に引き絞ることにより増し締めすることができる(図2(d))。しかも増し締め後は,骨締結ケーブルの2本の腕を解放してもループが緩むことはない。従って,骨締結ケーブルの2本の腕に手で更なる結びを加える等により結び目を確実に固定することがことができ,その操作の間も骨B1,B2はループにより確りと締結された状態に維持される。本発明の補助具を用いた締結方法によれば,骨締結ケーブルを1本に延びた状態で使用できることから,DLSK法に比して,骨締結ケーブルの捩じれの回避がはるかに容易であり,骨の締結に際した煩雑さが大きく改善される。また骨が一重のループで締結できるため,ダブルループの場合に比して厚さの難点が解消される。
また,本発明の骨締結ケーブル用締結補助具を金属,X線不透過性材料を用いて作製すれば,骨手術後,X線撮影で骨締結部位を確認することができるという追加の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は,DLSK法による骨締結の手順を示す概念図である。
【図2】図2は,本発明の骨締結ケーブル用締結補助具を用いた場合における,骨締結の手順を示す概念図である。
【図3】図3は,実施例1の骨締結ケーブル用締結補助具の一実施例を示す斜視図である。
【図4】図4は,実施例2の骨締結ケーブル用締結補助具の一実施例を示す斜視図である。
【図5】図5は,実施例3の骨締結ケーブル用締結補助具の一実施例を示す斜視図である。
【図6】図6は,実施例4の骨締結ケーブル用締結補助具の一実施例を示す斜視図である。
【図7】図7は,実施例5の骨締結ケーブル用締結補助具の一実施例を示す斜視図である。
【図8】図8は,実施例6の骨締結ケーブル用締結補助具の一実施例を示す斜視図である。
【図9】図9は,実施例7の骨締結ケーブル用締結補助具の一実施例を示す斜視図である。
【図10】図10は,実施例8の骨締結ケーブル用締結補助具の一実施例を示す斜視図である。
【図11】図11は,実施例9の骨締結ケーブル用締結補助具の一実施例を示す斜視図である。
【図12】図12は,実施例10の骨締結ケーブル用締結補助具の一実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の骨締結ケーブル用締結補助具において,「プレート状部」とは,貫通穴を有する概略平面状の部分又は部材をいい,形状は特に限定されない。
【0012】
プレート状部に設けられる「貫通穴」のサイズは,用いようとする骨締結ケーブルの太さに応じて決定すればよい。現在,骨手術において骨締結ケーブルとして超高分子量ポリエチレン繊維を編組みして製した3mm幅又は5mm幅の扁平なケーブル(ネスプロン(登録商標)ケーブルシステム,アルフレッサファーマ(株))が用いられている。3mm幅のものを用いる場合には,「貫通穴」は内径2mm程度でよく,5mm幅のものを用いるには,「貫通穴」の内径は3mm程度でよい。勿論,同繊維を適宜編組みして異なった種々の太さ及び厚みの骨締結ケーブルを用いることもできるが,何れの場合も,「貫通穴」のサイズは,それら用いようとする骨締結ケーブルの太さを基準にし,その2本分(すなわち,両腕の部分)を通すことができるサイズであって,貫通穴から出るそれらの両腕を1回結んで作った結び目が通らないサイズとすればよい。そのような適したサイズは,用いようとする骨締結ケーブルを特定しさえすれば,適宜な厚みの部材に設けた種々のサイズのパンチ穴を用いる等により,簡単な試行で極めて容易に見出すことができる。なお,貫通穴は,簡便であるという理由からとする丸い形状とするのが好ましいが,上記の目的に適う限りその形状に特に限定はない。
【0013】
本発明において「骨締結ケーブル保持手段」は,骨を締結した骨締結ケーブルをその結び目又は該結び目から延びる2本の腕の部分において保持するためのものであり,プレート状部と共に本発明の骨締結ケーブル用締結補助具を構成しており,その目的に適う限り具体的形態は特に限定されない。
【0014】
骨締結ケーブル保持手段は,例えば,プレート状部と一体にその両側にそれぞれ設けられた金属製筒状部であってよい。その場合,結び目から延びる骨締結ケーブルの2本の腕の各々を通し,その状態でそれらの筒状部をペンチ等で平らに押し潰すことで,中の骨締結ケーブルを強く挟みつけて保持することができる。必須ではないが,筒状部の内面には摩擦を高めるために凹凸を形成しておいてもよい。骨締結ケーブル保持手段から延びる骨締結ケーブル末端側の余分な部分は,切断し除去すればよい。
【0015】
骨締結ケーブル保持手段の別の一例は,中央の貫通穴から両側に延びる形状のプレート状部においてそれぞれプレート状部の長手方向の縁部に設けられた,向かい合う一対のフラップよりなる。プレート状部のそれぞれの側において,一対のフラップの一方は,プレート状部上に延びる骨締結ケーブルの腕の1本を挟みつけるようにプレート状部の上に塑性的に折りたたむことができる構造のものであり,また他方は,このフラップを更に上から抑えつけるようにその上に塑性的に折りたたむことができる構造のものである。プレート状部とフラップとは金属で一体に構成すればよい。必須ではないが,骨締結ケーブルを直接に押さえつけるフラップ表面又はこれと対向するプレート状部の表面には,摩擦を高めるため適宜の形状の凹凸を形成しておくことができる。
【0016】
骨締結ケーブル保持手段の更に別の一例は,中央の貫通穴から両側に延びる形状のプレート状部においてそれぞれプレート状部の長手方向縁に設けられた,プレート状部の上に塑性的に折りたたむことができる1つのフラップと,これを折りたたんだ状態に固定するための部材又は構造を含み,当該部材又は構造が,フラップとプレート状部の相互に重なり合う個所に設けられたリベット用貫通穴,又は貫通穴とこれを貫通するように設けられたピン,若しくは貫通穴とこれに貫通するねじ山つきボルト及びこれに螺着されるナットとの組み合わせ,又はネジ穴とこれに螺着されるねじ山つきボルトとの組み合わせよりなるものである。この構成によれば,骨締結ケーブルの結び目から延びる2本の腕の各々を,プレート状部とフラップとの間に挟んで保持することができる。必須ではないが,骨締結ケーブルと接するフラップの表面又はこれに対向するプレート状部の表面には,摩擦を高める適宜の形状の凹凸を形成しておいてもよい。
【0017】
骨締結ケーブル保持手段の更に別の一例は,貫通穴の両側において貫通穴を間に挟んでプレート状部に形成された少なくとも一対の開口と,それらの開口に脱落不能に嵌め込むことのできる少なくとも一対の脚部を両端部に備えたブリッジ状部材とから構成されるものである。この場合脚部の長さは,プレート状部の開口に嵌めこんだときブリッジ状部材の下側の表面が骨締結ケーブルの結び目を貫通穴の周囲においてプレート状部の表面との間に挟んで押さえつけることができるように,設定される。ブリッジ状部材は,結び目を効果的に抑え付け易いよう,中央の高いドーム状の弯曲を有していてよい。プレート状部の開口からの脚部の脱落を不能にするには,脚部の先端に逆止爪等の適宜の戻り止めを設けておけばよい。必須ではないが,ブリッジ状部材の下側の表面には,摩擦を高める適宜の形状の凹凸を形成しておいてもよい。
【0018】
骨締結ケーブル保持手段の更に別の一例は,プレート状部と上記ブリッジ状部材の脚部によって骨締結ケーブルの2本の腕を保持するものである。これは例えば,上記ブリッジ状部材の脚部を嵌め込むためにプレート状部に設けられた開口のスリット幅を部分的に幾分幅広にしておき,脚部を開口に嵌め込む際に,骨締結ケーブルの腕がスリットの幅広部と脚部との間に生じる隙間を通して開口に骨締結ケーブルの腕がU字状に押し込まれ,当該隙間に挟みつけられて保持されるようにすればよい。所望により,同時に結び目をもブリッジ状部材下面とプレート状部の貫通穴の周囲との間で保持できるような形状及び寸法としてもよい。
【0019】
骨締結ケーブル保持手段の更に別の一例は,プレート状部と上記ブリッジ状部材によって骨締結ケーブルの2本の腕を保持するものである。これは,例えば,骨締結ケーブルが上記ブリッジ状部材の脚部に干渉されずに開口上を横断して延びることができるよう,開口上の,骨締結ケーブルを横断させる個所を対応する部分はブリッジ状部材の脚部が存在しない形態(当該部分を除去しておくか又は,脚部を棒状とし,骨締結ケーブルを回避できる位置に設けておく等)としておくことにより,構成することができる。この場合,骨締結ケーブルの2本の腕は,ブリッジ状部材の縁付近の下面と開口の付近のプレート状部材の表面との間に挟まれて保持される。所望により,同時に結び目をもブリッジ状部材下面とプレート状部の貫通穴の周囲との間で保持できるような形状及び寸法としてもよい。
【0020】
骨締結ケーブル保持手段の別の一例は,中央の貫通穴から両側に延びる形のプレート状部に設けられたステープル装着用の一対の穴である。この場合,骨締結ケーブルの結び目から延びる2本の腕の一方をこれら一対の穴の上に重ね,それらの穴に合わせてステープルを適用して骨締結ケーブルを留めればよい。
【0021】
骨締結ケーブル保持手段の別の一例は,中央の貫通穴から両側に延びる形のプレート状部において,ステープルによる貫通を可能にする厚みに形成した合成樹脂(例えば,超高分子量ポリエチレン,ポリエステル,ポリウレタン,ポリプロピレン,シリコーンゴムその他の生体適合性の合成樹脂)よりなる領域を少なくとも部分的に設けたものである。この場合,好ましくは,骨締結ケーブル用締結補助具全体が,そのような合成樹脂で形成される。
【0022】
骨締結ケーブル保持手段の別の一例は,中央の貫通穴から両側に延びる形のプレート状部に設けられた雄ねじ付きボルトとこれに螺着されるナットよりなるものである。この場合,結び目から延びる骨締結ケーブルの2本の腕は,その各々をボルトに巻きつけ,ナットを回してプレート状部の表面に抑え付けることにより固定することができる。
【0023】
骨締結ケーブル保持手段の別の一例は,中央の貫通穴から両側に延びる形のプレート状部において,長手方向の縁部に設けた複数のスリットよりなるものである。この場合,複数のスリットは,それぞれの領域の長手方向の両縁部に分散して設けておくことが好ましい。またスリットは,用いようとする骨締結ケーブルの厚みに応じ,これがきつく挟まって固定されるよう適度に狭い幅及び十分な深さのものとすればよい。
【0024】
本発明の骨締結ケーブル用締結補助具は,骨手術に際して骨締結ケーブルと共に身体内に埋め込まれるものであるから,骨手術において取り扱い上不便でない限り小さいサイズのものであることが好ましい。例えば,前述の3mm幅の骨締結ケーブルと共に用いるものの場合,長さはおよそ2cm程度とすることができる。5mm幅の骨締結ケーブルと共に用いるものの場合には,操作の便宜上,これより幾分大きなものとすればよい。
【0025】
骨締結ケーブル用締結補助具は,生体に埋め込むことの許容される材料である限り,金属やセラミックのようなX線不透過性の材料で形成してもよく,合成樹脂で形成してもよい。また合成樹脂からなる部分とX線不透過性材料からなる部分とを組み合わせて形成してもよく,またX線不透過性材料(金属,セラミック,又は硫酸バリウム等のX線不透過性の無機塩)の微粒子を分散させた合成樹脂で形成してもよい。
【実施例】
【0026】
以下,典型的な実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
【0027】
〔実施例1〕
図3は,本発明の骨締結ケーブル用締結補助具の一実施例を,これを用いて骨を骨締結ケーブルの一重のループで締結し,且つ骨締結ケーブルの2本の腕1aを保持した状態として模式的に示す斜視図である。本実施例は,全体が金属製であり,図において,7はプレート状部であって,中央に貫通穴10を有する(内径2mm)。貫通穴10の上に載っている結び目12は,骨締結ケーブルを前述のように1本のループとして骨に巻き掛け,骨締結ケーブルの2本の腕を貫通穴10に通した後,1回だけ結び,これを左右に引くことにより骨を束ね,器具を用いて2本の腕を更に強く左右に引き絞ることにより増し締めし,骨締結ケーブルの2本の腕を器具から外し,1回結びを追加した形成したものであり,そこから骨締結ケーブルの2本の腕1aが延びている。プレート状部の下側には,貫通穴10を起点とする一重のループ3及び当該ループによって締結された骨があるが,図では省略されている。プレート状部の両側に位置する扁平な筒状部15は,元々概略円筒状であった筒状部を,内側に骨締結ケーブルの腕1aを通した後に上下をペンチ等で平らに押し潰したものであり,骨締結ケーブルの2本の腕1aを強く挟んで固定している。骨締結ケーブル用締結補助具からはみ出ている骨締結ケーブルの2本の腕1aの部分は,切断して除去される。
【0028】
〔実施例2〕
図4は,本発明の別の一実施例を,これを用いて骨締結ケーブルの一重のループで骨を締結した直後の状態として模式的に示す斜視図である。本実施例の骨締結ケーブル用締結補助具は金属製であり,図において,中央の貫通穴10から両側に延びるプレート状部18には,その上に塑性的に折りたたみ可能なフラップ20及び21がそれぞれ長手方向の縁部の一方に設けられており,更に,それらの各々と向かい合っている更なるフラップ22及び23が長手方向の縁部の他方に設けられており,それらも塑性的に折りたたみ可能である。向かい合う一対のフラップ同士のうち,一方の側のフラップ20及び21は,結び目12から延びる骨締結ケーブルの腕1aをプレート状部18との間に挟みつけるようにペンチ等を用いて折りたたまれる。その後,向かい合う側のフラップ22及び23が,フラップ20及び21の上にそれぞれ折りたたまれてそれらを強く押し付けるため,フラップ20及び21はケーブルの腕1aを挟みつけた状態で強く固定される。必須ではないが,フラップ20及び21には,摩擦を高めるため凹凸25が形成されている。骨締結ケーブル用締結補助具からはみ出ている骨締結ケーブルの2本の腕1aの部分は,切断して除去される。
【0029】
〔実施例3〕
図5は,本発明の更なる別の一実施例を,これを用いて骨締結ケーブルの一重のループで骨を締結し,且つ骨締結ケーブルの2本の腕1aを保持して余分な部分を切断し除去した状態を示す斜視図である。本実施例の骨締結ケーブル用締結補助具は金属製である。図において,中央の貫通穴10から延びるプレート状部30の両側には,その上に塑性的に折りたたみ可能なフラップ32,33が長手方向の縁部の一方に設けられており,図では折りたたまれて,プレート状部30との間に骨締結ケーブルの2本の腕1aを挟みつけている。プレート状部30にはフラップ32及び33が設けられた縁部とは反対側の縁部にピン34及び35がそれぞれ備えられており,フラップにはこれらのピン34及び35が貫通する穴36及び37が形成されている。それらのピンをフラップの穴に通した後,頭をかしめることにより,フラップ32及び33は,骨締結ケーブルの2本の腕を挟みこんだ状態で開放不能に固定される。
【0030】
〔実施例4〕
図6は,本発明の更なる別の一実施例を,これを用いて骨を骨締結ケーブルの一重のループで締結した直後の状態として模式的に示す斜視図である。図において,プレート状部40には,貫通穴10の両側に一対の開口41,42が形成されており,本実施例ではその形態はスリット状である。参照番号45で示されているのは,骨締結ケーブルの2本の腕1aを保持するためのブリッジ状部材である。ブリッジ状部材45は開口41及び42内に嵌め込むことのできる脚部46及び47をそれぞれ含み,結び目12を効果的に被い易いように中央の高いドーム状の弯曲を有している。脚部の先には,逆止爪(図では誇張して描かれている)が設けられている。使用に際し,ブリッジ状部材45の脚部46及び47がそれぞれの開口41,42に嵌め込まれ,逆止爪によって脱落不能に係止される。その状態で結び目12は,貫通穴の周囲のプレート状部40の表面とブリッジ状部材45の下面との間に挟まれて保持される。また,必須ではないが,図に示すようにブリッジ状部材45の下側の面には,摩擦を高めるための凹凸が形成されている。
【0031】
〔実施例5〕
図7は,本発明の更なる別の一実施例を,これを用いて骨を骨締結ケーブルの一重のループで締結した直後の状態として模式的に示す斜視図である。図において,プレート状部40’には,貫通穴10の両側に一対の開口が形成されており,それらの開口は,実施例4におけると同じブリッジ状部45の脚部46及び47を嵌め込むことのできるスリット状部41’,42’と幅広部48,49とからなる。幅広部41’,42’は,骨締結ケーブルの2本の腕1aを挟む隙間をそれぞれ脚部46,47の内側面及び外側面と共に形成するための部分である。図において,手前側の腕1aは,開口の形状がよく見えるよう開口付近において切除してあるが,実際は,開口上を横断して延びている。使用に際し,ブリッジ状部45の脚部46及び47は,両開口を横断して延びる骨締結ケーブルの2本の腕の上から,両開口に挿入され,逆止爪により脱落不能に係止される。このとき,骨締結ケーブルの2本の腕1aの一部は幅広部48,49の位置で開口内にU字状に押し込まれ,脚部46,47の各々の内側面及び外側面において幅広部48,49の縁との間に挟まれて保持される。また,この実施例では,同時に結び目12も,貫通穴10の周囲のプレート状部40’の表面とブリッジ状部材45の下面との間に挟まれて保持される。
【0032】
〔実施例6〕
図8は,本発明の更なる別の一実施例を,これを用いて骨を骨締結ケーブルの一重のループで締結した直後の状態として模式的に示す斜視図である。図において,プレート状部40”には,貫通穴10の両側に,一対のスリット状の開口41”,42”が形成されている。ブリッジ状部材45”は,それらの開口41”,42”の各々に脱落不能に嵌め込むことのできる逆止爪付きの脚部46”,47”をそれぞれ有しており,各脚部は,2つの部分に分割され,それらの部分同士は骨締結ケーブルの腕1aを通すことのできる間隔を挟んで位置している。使用に際し,各脚部46”,47”は,図に示した状態から,骨締結ケーブルの2本の腕1aの各々を跨ぐ形で開口41”,42”にそれぞれ嵌め込まれて脱落不能に係止される。このとき,骨締結ケーブルの各腕1aは,各脚部の2つの部分の間でブリッジ状部材45”の縁部付近の下面と開口41”,42”の付近のプレート状部40”の表面との間に挟まれて保持される。また,この実施例では,同時に結び目12も,ブリッジ上部の下側表面と貫通穴の周囲におけるプレート状部40”との間に挟まれて保持される。
【0033】
〔実施例7〕
図9は,本発明の更なる別の一実施例を示す。本実施例の骨締結ケーブル用締結補助具は,中央の貫通穴10から両側へ延びたプレート状部50よりなり,金属,セラミック又は合成樹脂で形成されている。プレート状部50には,貫通穴10を挟んで両側に別の穴52が2個ずつ形成されている。これらの穴52は,骨締結ケーブルの2本の腕を保持するための手段として,それらを貫いたステープルの先端を通過させることを目的としたものであり,それらの間隔は,用いられるステープルの2つの先端の間隔に合致するように設定されている。本実施例の骨締結ケーブル用締結補助具の場合,これを用いて骨締結ケーブルの一重のループで骨を締結した後,結び目12から延びる骨締結ケーブルの2本の腕を,穴52上にステープルで保持することができる。
【0034】
〔実施例8〕
図10は,本発明の更なる別の一実施例を,これを用いて骨を骨締結ケーブルの一重のループで締結し,且つ骨締結ケーブルの2本の腕1aをステープル55で保持した状態として模式的に示す斜視図である。本実施例の骨締結ケーブル用締結補助具は,中央の貫通穴10から両側へ延びた合成樹脂製のプレート状部60よりなる。プレート状部60にはステープル55の先端を通すための穴は予め形成されておらず,代わりに,少なくともステープル55を適用する領域において,プレート状部60にステープル先端の貫通を許容する厚みが与えられている。従って,骨を締結した後,結び目12から延びる骨締結ケーブルの腕1aを,図に示すようにステープル55を用いてプレート状部60上に保持することができる。
【0035】
〔実施例9〕
図11は,本発明の更なる別の一実施例を,これを用いて骨を骨締結ケーブルの一重のループで締結した後,骨締結ケーブルの2本の腕1aを保持する直前の状態で示す。本実施例の骨締結ケーブル用締結補助具は,中央の貫通穴10から両側へ延びた形のプレート状部70と,プレート状部70の両側に設けられた雄ねじ付きボルト72及びこれに螺着されたナット74よりなる。本実施例においては,骨締結後に結び目12から延びる骨締結ケーブルの2本の腕1aは,ボルト72に巻きつけられ,次いでナット74の回転によりプレート状部70の表面に押し付けられることによって,保持される。
【0036】
〔実施例10〕
図12は,本発明の更なる別の一実施例を,これを用いて骨を骨締結ケーブルの一重のループで締結した後,骨締結ケーブルの2本の腕1aを保持した状態で示す。本実施例の骨締結ケーブル用締結補助具は,中央の貫通穴10から両側へ延びた形のプレート状部80と,プレート状部80の各側において長手方向の縁部に形成されたそれぞれ2個のスリット82及び84,並びに86及び88よりなる。これらのスリットは,用いられる骨締結ケーブルがきつく挟まって固定されるだけの幅と深さを有する。従って,骨締結ケーブルの2本の腕1aをこれらのスリットに挟み込んで保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の骨締結ケーブル用締結補助具は,骨外科において,骨締結ケーブルの一重のループによる骨締結を可能にすることから,従来のDLSK法における「厚み」と「捩れ」という難点を改善した骨締結を可能にするものとして有用性が高い。また,本発明の骨締結ケーブル用締結補助具は,X線不透過性材料を使用して構成でき,その場合,DLSK法ではできなかった,術後の締結部位の確認を可能にするものとして,更に高い有用性を有する。
【符号の説明】
【0038】
1=骨締結ケーブル
1a=腕
2=小さいループ
3=大きいループ
4=結び目
7=プレート状部
10=貫通穴
12=結び目
15=筒状部
18=プレート状部
20,21,22,23=フラップ
25=凹凸
30=プレート状部
32,33=フラップ
34,35=ピン
36,37=穴
40,40’,40”=プレート状部
41,42=開口
41’,42’=スリット状部
45,45”=ブリッジ状部材
46,46”,47,47”=脚部
48,49=幅広部
50=プレート状部
52=穴
55=ステープル
60=プレート状部
70=プレート状部
72=ボルト
74=ナット
80=プレート状部
82,84,86,88=スリット
1,B2=骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴を有するプレート状部を含む骨締結ケーブル用締結補助具であって,該貫通穴が,該補助具と共に用いられる骨締結ケーブルの2本の腕の通過を許容するが骨締結ケーブルの2本の腕を1回以上結び合わせることにより形成される結び目の通過は許容しない大きさのものであり,該骨締結ケーブルを該結び目において及び/又は該結び目から延びる2本の腕において保持するための骨締結ケーブル保持手段を更に含むものである,骨締結ケーブル用締結補助具。
【請求項2】
該貫通孔が丸穴である,請求項1の骨締結ケーブル用締結補助具。
【請求項3】
一部又は全部がX線不透過性材料よりなるものである,請求項1又は2の骨締結ケーブル用締結補助具。
【請求項4】
該X線不透過性材料が,金属若しくはセラミックであるか,又はX線不透過性物質を含有する合成樹脂である,請求項3の骨締結ケーブル用締結補助具。
【請求項5】
合成樹脂が含有する該X線不透過性物質が,金属,セラミック,X線不透過性の金属塩である,請求項4の骨締結ケーブル用締結補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−166938(P2010−166938A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9443(P2009−9443)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000231394)アルフレッサファーマ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】