説明

髄膜炎菌性多価未変性外膜小胞ワクチン、その作製方法およびその使用

髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は、世界的な髄膜炎および敗血症の主な原因である。本発明のテクノロジーは、髄膜炎菌性疾患、より好ましくはB亜型髄膜炎菌性疾患に対して防御免疫を提供するNeisseriaの少なくとも1つの遺伝子改変菌株由来の未変性の外膜小胞(NOMV)を含むワクチン組成物を提供する。本発明のテクノロジーは、さらに、本発明のワクチン組成物を投与する工程を含む、髄膜炎菌性疾患に対して動物またはヒトを免疫する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願との相互参照)
本願は、「Meningococcal Multivalent Native Outer Membrane Vesicle Vaccine」と題された、米国仮特許出願第61/057,462号(2008年5月30日出願)に対する優先権を主張する。この仮特許出願の全開示および全内容は、参照により、それらの全体が本明細書に援用される。
【0002】
(連邦政府により支援された研究または開発)
合衆国政府は、本発明の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は、世界的な髄膜炎および敗血症の主な原因である。髄膜炎菌性髄膜炎は、髄膜(脳および脊髄を裏打ちする膜)の炎症である。髄膜炎菌性敗血症および髄膜炎菌性髄膜炎の両方において、損傷は、局在化または全身性の宿主炎症反応の無制御に起因する。B群髄膜炎菌性疾患は、現在、多数の国(北米、南米、および欧州が含まれる)での全髄膜炎菌性疾患の少なくとも半分を占める。B群髄膜炎菌の新規の病毒力の強いクローン(ET5として公知、70年代後半にノルウェーで発見)の出現により、その後に長期にわたってノルウェー、キューバ、ブラジル、およびチリで流行病となっている。これらの流行病は、深刻な公衆衛生上の問題を生じ、いくつかの発生国(affected country)では有効なB群ワクチンを開発するための集中的な取り組みがなされている。18ヶ月未満の小児におけるA型およびC型莢膜ポリサッカリドドワクチンの能力が不十分であることに加えて、米国で承認されているB群ワクチンが存在しないことが、髄膜炎菌性疾患に対する日常的な小児期ワクチン接種を深く考慮するための障壁となっている。
【0004】
髄膜炎菌は、13の血清群に分類され、そのうちの9群が侵襲性疾患を引き起こす(A、B、C(C1、C1−)、X、Y、W−135、Z、およびL)。この血清型のうちの5つが流行病を引き起こす能力を有するためにワクチン開発の標的にされている(多くのワクチン研究の標的である血清型A、B、C、Y、およびW135が含まれる)
ほぼ全ての侵襲性髄膜炎菌性疾患を引き起こす髄膜炎菌の血清群A、C、Y、およびW135に対するワクチンは、利用可能であり、日常的使用によって優れた結果がもたらされる。髄膜炎菌のB群菌株に対する適切なワクチンは、種々の理由によって開発がより困難になっている。例えば、血清群を定義する莢膜ポリサッカリドは、一定のヒト細胞、具体的には血液細胞上で見出されるポリシアル酸と同一の構造を有するので、ワクチンでの使用は無効且つ潜在的に危険である。
【0005】
適切なワクチンの欠如に、表面に露出した莢膜下抗原(外膜タンパク質およびリポオリゴサッカリド(内毒素)など)が抗原性が変動し、そして/またはB群菌株間での発現が一貫していないという事実がさらに加わる。有効なワクチンに不可欠な全ての特徴を単独で有する単一の抗原は同定されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
1つの態様では、本発明のテクノロジーは、広範囲にわたって防御するために遺伝子改変された少なくとも2つの髄膜炎菌株から得た未変性の外膜小胞(NOMV)を含むワクチンを提供する。未変性の外膜小胞はPorA、LOS、および保存外膜タンパク質に基づいた3つの異なる抗原組を含み、遺伝子改変菌株はlpxL1遺伝子、synX遺伝子、およびlgtA遺伝子の不活化に基づいて安全性が強化されるように改変されている。2つの髄膜炎菌株は、ともに異なるLOSコア構造を有するLOSを発現し、グルコースおよびガラクトースからなるα鎖を有することができる。各菌株は、B群分離菌のうちで最も一般的なPorA亜型に基づいて選択される少なくとも2つの異なるPorA亜型タンパク質または亜型エピトープを発現することができる。さらに、ワクチンは、殺菌抗体を誘導する能力が証明された異なる保存表面タンパク質(各菌株で過剰発現する)をさらに含むことができ、このタンパク質は、FHBP(GNA1870)バリアント1、FHBPバリアント2、およびFHBPバリアント3、NadA、App、NspA、TbpAおよびTbpBからなる群から選択される。
【0007】
さらなる態様では、本発明のテクノロジーは、3つの遺伝子改変された抗原性が多様な髄膜炎菌の菌株由来のNOMVの組み合わせを提供する。少なくとも1つの菌株は、(1)以下の遺伝子改変または特徴を有するH44/76 HOPS−DL:synX遺伝子、lpxL1遺伝子、およびlgtA遺伝子の不活化、opaDの代わりの第2のporA遺伝子(亜型P1.7−1,1)の挿入、NadA発現の増加、およびOpcおよびPorAの安定化された高発現、(2)以下の遺伝子改変または特徴を有する8570 HOPS−GL:synX遺伝子、lpxLl遺伝子、およびlgtA遺伝子の不活化、opaDの代わりの第2のporA遺伝子の挿入、H因子結合タンパク質バリアント1発現の増加、およびPorAおよびOpcの安定化された高発現、および/または(3)以下の遺伝子改変または特徴を有するB16B6 HPS−GA:synX遺伝子、lpxL1遺伝子、およびlgtA遺伝子の不活化、opaDの代わりの第2のporA遺伝子の挿入、H因子結合タンパク質バリアント2発現の増加、およびPorAおよびOpcの安定化された高発現から選択される。NOMVを、界面活性剤または変性溶媒へ曝露することなく充填細胞または消費した培養培地から調製する。ワクチンを、1つまたは複数のアジュバントと組み合わせ、筋肉内および/または鼻腔内に投与することができる。
【0008】
別の態様では、本発明のテクノロジーは、髄膜炎菌の1つまたは複数の遺伝子改変菌株由来の未変性の外膜小胞(NOMV)を含む、髄膜炎菌性疾患、より好ましくはB群髄膜炎菌性疾患(meiningococcal disease)に対するワクチン組成物を提供する。1つまたは複数の遺伝子改変菌株は、synX遺伝子の不活化、lpxL1遺伝子の不活化、ラクト−N−ネオテトラオーステトラサッカリドを欠く短縮されたかまたは切り詰められたリポオリゴサッカリド(LOS)が発現される各菌株中でのlgtA遺伝子の不活化、および/またはopa遺伝子の代わりの少なくとも1つの第2の抗原性が異なるporA遺伝子の挿入によって改変されている。別の態様では、遺伝子改変菌株は、少なくとも1つの微量保存外膜タンパク質の増加または安定した発現および/または少なくとも1つの外膜タンパク質の安定化させた発現をさらに含む。少なくとも1つの第2の抗原性が異なるporA遺伝子は、B群髄膜炎菌分離菌の最も一般的なPorA亜型から選択される少なくとも1つのPorA亜型タンパク質または亜型エピトープを発現することができる。
【0009】
さらに別の態様では、本発明のテクノロジーは、髄膜炎菌亜型B菌株の遺伝子改変されたワクチン菌株を提供する。遺伝子改変されたワクチン菌株には、菌株H44/76 HOPS−D(B1)、菌株8570 HOS−G1(B2),および/または菌株B16B6 HPS−GA(B3)が含まれ得る。
【0010】
さらに別の態様では、本発明のテクノロジーは、i)synX遺伝子の不活化、ii)lpxL1遺伝子の不活化、iii)lgtA遺伝子の不活化、iv)opaD遺伝子の代わりの第2のporA遺伝子の挿入、v)未変性菌株と比較して増加したNadA発現、およびvi)Opcタンパク質およびPorAタンパク質発現の安定化された増加の遺伝子改変を含む菌株H44/76由来の髄膜炎菌亜型Bの遺伝子改変されたワクチン菌株を提供する。いくつかの態様では、遺伝子改変菌株は、ET−5野生型菌株H44/76(B:15:P1.7,16:L,3,7:P5.5,C)に由来していた。
【0011】
別の態様では、本発明のテクノロジーは、i)synX遺伝子の不活化、ii)lpxL1遺伝子の不活化、iii)lgtA遺伝子の不活化、iv)opaDの代わりの第2のporA遺伝子の挿入、v)H因子結合タンパク質バリアント1発現の増加、およびvi)PorAタンパク質およびOpcタンパク質発現の安定化された増加の遺伝子改変を含む8570由来の髄膜炎菌亜型B菌株の遺伝子改変されたワクチン菌株を提供する。いくつかの態様では、遺伝子改変菌株は、ET−5野生型菌株85 70(B:4:P 1.19,15:L3,7v:P5.5,11,C)に由来していた。
【0012】
さらに別の態様では、本発明のテクノロジーは、i)synX遺伝子の不活化、ii)lpxL1遺伝子の不活化、iii)lgtA遺伝子の不活化、iv)opaDの代わりの第2のporA遺伝子(亜型P1.22−1,4)の挿入、v)H因子結合タンパク質バリアント2発現の増加、およびvi)PorAタンパク質およびOpcタンパク質発現の安定化された増加の遺伝子改変を含むB16B6由来の髄膜炎菌亜型Bの遺伝子改変されたワクチン菌株を提供する。いくつかの態様では、遺伝子改変菌株は、ET−37野生型菌株B16B6(B:2a:P 1.5,2:L2:P5.1,2,5)に由来している。
【0013】
いくつかの態様では、本発明のテクノロジーは、鉄欠損培地で成長した遺伝子改変菌株を提供する。
【0014】
他の態様では、本発明のテクノロジーは、synX遺伝子、lpxL1遺伝子、またはlgtA遺伝子の不活化が不活化遺伝子配列内の薬物耐性遺伝子の挿入による、遺伝子改変菌株を提供する。
【0015】
さらに別の態様では、本発明のテクノロジーの遺伝子改変菌株に由来するNOMVを含むワクチンを提供する。NOMVを、界面活性剤または変性溶媒へ曝露することなく充填細胞または消費した培養培地から調製する。ワクチンは1つまたは複数のアジュバントをさらに含むことができる。さらなる態様では、遺伝子改変した菌株を、鉄取り込みタンパク質を発現するように変化させる。
【0016】
さらなる態様では、本発明のテクノロジーは、少なくともいくつかのNOMVがリポオリゴサッカリド(LOS)の発現またはシアル酸化を本質的に含まず、ペンタ−アシル(penta−acyle)構造を有する脂質Aを含むLOSを含み、発現レベルの増加した少なくとも1つの微量保存外膜タンパク質を含み、微量保存外膜タンパク質が殺菌抗体を誘導するタンパク質から選択される、種々の未変性の外膜小胞(NOMV)を含む髄膜炎菌性疾患に対するワクチンを提供する。微量保存外膜タンパク質を、NadA、H因子結合タンパク質(FHBP)バリアント1、およびFHBPバリアント2からなる群から選択することができる。他の態様では、少なくともいくつかのNOMVはラクト−N−ネオテトラオース(LNnT)テトラサッカリドを本質的に含まない短縮されたか、または切り詰められたLOSを含み、そして/または少なくともいくつかのNOMVは2つ以上の異なるPorAタンパク質を含む。
【0017】
別の態様では、本発明のテクノロジーは、髄膜炎菌性疾患に対する免疫のためにN.Meningiitdisの少なくとも1つの遺伝子改変した菌株由来のNOMVを含む組成物を動物またはヒトに投与する工程を含む、動物またはヒトにおいて髄膜炎菌性疾患に対する免疫応答を誘発する方法を提供する。ワクチンを、B群髄膜炎菌性疾患に対する免疫のために使用する。
【0018】
さらなる態様では、本発明のテクノロジーは、a)遺伝子改変することができる髄膜炎菌B型菌株を選択する工程、b)synX遺伝子の不活化によって菌株を遺伝子改変する工程、c)lpxL1遺伝子の不活化によって菌株を遺伝子改変する工程、d)lgtA遺伝子の不活化によって菌株を遺伝子改変する工程、およびe)1つまたは複数の微量保存外膜タンパク質の発現の増加によって菌株を遺伝子改変する工程を含む、髄膜炎菌性疾患に対するワクチンで用いる髄膜炎菌(N.meningitidis)の遺伝子改変菌株を調製する方法を提供する。さらなる態様では、本方法は、opa遺伝子の読み取り枠への少なくとも1つの第2の抗原性が異なるporA遺伝子の挿入によって菌株を遺伝子改変する工程をさらに含む。他の態様では、本方法は、少なくとも1つの外膜タンパク質のプロモーターまたは読み取り枠内のポリ−C配列をGおよびCヌクレオチドを含む配列で置換することによって菌株を遺伝子改変して少なくとも1つの外膜タンパク質を安定的に発現させるか、または過剰発現させる工程をさらに含む。
【0019】
さらに別の態様では、本発明のテクノロジーは、a)synX遺伝子の不活化、lpxL1遺伝子の不活化、IgtA遺伝子の不活化、opa遺伝子の代わりの少なくとも1つの第2の抗原性が異なるporA遺伝子の挿入、少なくとも1つの微量保存外膜タンパク質の増加または安定した発現、および/または少なくとも1つの外膜タンパク質の安定化させた発現からなる群から選択される1つまたは複数の改変を含む髄膜炎菌の遺伝子改変菌株を培養する工程、b)a)の培養菌株を使用して発酵槽内の培地に植菌して発酵することによって前記培養物を拡大する工程、c)発酵培養物を不活化する工程、d)連続フロー型遠心分離および細胞ペーストの回収によって髄膜炎菌培養細胞を採取する工程、e)細胞ペーストからNOMVを単離する工程、およびf)ワクチン投与に適切な緩衝液またはキャリアにNOMVを再懸濁する工程を含む、髄膜炎菌性疾患に対するワクチンを調製する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、ワクチン産生のためのNeisseriaの遺伝子改変菌株についての細胞のマスター・セル・バンク調製を示す流れ図である。
【図2】図2は、ワクチン産生のためのNeisseriaの遺伝子改変菌株の作製のために使用したセル・バンク調製物の産生を示す流れ図である。
【図3】図3は、ワクチン産生のためのNeisseriaの遺伝子改変菌株の作製のために使用したNeisseriaの発酵を示す流れ図である。
【図4】図4は、ワクチン産生のためのNeisseriaの遺伝子改変菌株からのNOMVの精製を示す流れ図である。
【図5】図5は、図4の流れ図の続きである。
【図6】図6は、標準マーカー(レーン1)、コントロール8570 HOPS−G NOMV調製物(レーン2)、濾過バルクワクチン(レーン3)、および最終生成物のワクチン(レーン4)のタンパク質含有量を示すクマシー・ブルー染色ゲルの写真である。
【図7】図7は、ワクチンのリポオリゴサッカリド含有量を示す銀染色ゲルである。レーン1はコントロールML5 LPSであり、レーン2は濾過バルクワクチンであり、レーン3は最終ワクチン生成物である。15μlの100μg/mlのワクチンの1:2希釈物をゲル上で泳動した(20μlの100μl/mlのコントロールの1:2希釈物)。
【図8】図8は、8570 HOPS−G NOMVワクチン中に見出されたタンパク質の同一性および組成を示す抗体染色ウェスタンブロットの写真である。
【図9】図9は、異なる濃度のワクチンとのインキュベーション後にヒト血液から放出されたTNF−αを示すグラフである。
【図10】図10は、異なる濃度の遺伝子改変NOMVワクチンとのインキュベーション後のヒト血液からのIL−6放出を示すグラフである。
【図11】図11は、菌株44/76由来のDOC抽出OMVと比較した異なる濃度の遺伝子改変ワクチンとのインキュベーション後にヒト血液から放出されたTNF−αを示すグラフである。
【図12】図12は、アジュバントを含むか、または含まない異なる濃度の8570 HOPS−Gワクチンを接種したマウスの殺菌力価を示す棒グラフである。
【図13】図13は、異なる試験菌株に対して8570 HOPS−Gワクチンを接種したマウスの殺菌力価を示す棒グラフである。
【図14】図14は、LOS抗原、GNA1870抗原、NOMV抗原、およびOpc抗原についての殺菌抗体枯渇アッセイの結果を示すグラフである。
【図15】図15は、アジュバントを含むか、または含まない8570 HOPS−G NOMVワクチンを接種したウサギの抗体応答を示す。
【図16】図16は、8570 HOPS−G1 NOMVワクチンに対する試験菌株についての殺菌枯渇アッセイの結果を示すグラフである。
【図17】図17は、8570 HOPS−G1 PorAノックアウト菌株についてのLOS抗原およびFHBP抗原の殺菌枯渇アッセイの結果を示すグラフである。
【図18】図18は、本発明のテクノロジーのNeisseriaの3つの遺伝子改変菌株(A=B1、B=B2、およびC=B3)の表現型を表わす。
【図19】図19は、Neisseriaの遺伝子改変菌株を構築するために使用したプラスミドを表わす:a)lgtAをノックアウトするために構築されたプラスミド、b)第2のPorAを発現させるためのプラスミド、c)オルソロガス(E.coliの場合Ptac)プロモーターによって駆動されるfHbpを過剰発現させるためのプラスミド、およびd)相同プロモーター(髄膜炎菌のPorAプロモーター)によって駆動されるNadAを過剰発現させるためのプラスミド、およびe)NspA遺伝子を置換する相同組換えによるfHbp(バリアント1および2)およびNadA過剰発現プラスミドでのN.meningitisの代表的な形質転換スキーム。
【図20】図20aは、3つの遺伝子改変菌株のlgtA遺伝子のノックアウトによるNOMVワクチン菌株の切り詰めたLOS免疫型の安定化の描写である。図20bは、L3、7、9(左)およびL8(右)に対するモノクローナル抗体を使用した、遺伝子改変菌株B2および親菌株(B16B6)によるLOSα鎖の発現の免疫ブロットの写真である。
【図21】図21は、遺伝子改変菌株B3におけるfHbpバリアント2の発現を示す画像を表わす。図21a)は、免疫ブロッティングによる過剰発現fHbpを含むゲンタマイシン耐性組換えを含む菌株の選択を示す。図21b)は、fHBpに対するJAR4モノクローナル抗体を使用したウェスタンブロットであり、fHBp発現増加を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のテクノロジーは、髄膜炎菌性疾患、より好ましくは髄膜炎菌亜群B型に対する免疫で用いるための広範な防御ワクチン組成物を提供する。本発明のテクノロジーの1つの実施形態は、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つの髄膜炎菌の遺伝子改変菌株由来の未変性の外膜小胞(NOMV)を含むワクチン組成物を提供する。ブレブとしても公知の未変性の外膜小胞は、増殖中に天然に生じるグラム陰性菌外膜のフラグメントから形成されるかそれに由来する小胞であり、界面活性剤または変性溶媒を使用しない穏やかな方法によって培養培地または細胞から得ることができる。これらのNOMVは、典型的には、外膜タンパク質(OMP)、脂質、リン脂質、周辺質物質、およびリポ多糖(LPS)(リポオリゴサッカリドが含まれる)を含む。グラム陰性細菌、特に髄膜炎菌のような病原体は、しばしば、ブレブ形成として公知の過程において病毒力の強い感染の間にNOMVを剥落させる。本発明のテクノロジーでは、NOMVは化学的変性過程を使用せずに細菌外膜から産生される小胞であり、抗原性が多様であり、且つそれぞれ安全性、抗原安定性、および防御免疫応答範囲を改善するために遺伝子改変されている遺伝子改変菌株から産生される。
【0022】
本発明の1つの実施形態は、髄膜炎菌の少なくとも2つ以上の遺伝子改変菌株、好ましくは少なくとも3つの異なる遺伝子改変菌株に由来する未変性の外膜小胞(NOMV)を含むワクチン組成物を提供する。
【0023】
本発明のテクノロジーのいくつかの実施形態は、抗原性が多様な髄膜炎菌の菌株、好ましくは、細菌ゲノム内に少なくとも3つの遺伝子改変、より好ましくは少なくとも5つの遺伝子改変、より適切には少なくとも6つの遺伝子改変を含む亜型Bを提供する。遺伝子改変は、1つまたは複数の以下を含むことができる:1)シアル酸生合成に不可欠であり、莢膜発現またはリポオリゴサッカリド(LOS)のシアル酸化が起こらないsynX遺伝子の不活化;2)ペンタ−アシル構造を有する脂質Aを有する有意に毒性の低いLOSが得られるlpxL1遺伝子の不活化;3)opa遺伝子(OpaCまたはOpaD)の1つの代わりの第2の抗原性が異なるporA遺伝子の挿入;4)少なくとも1つの微量保存外膜タンパク質(微量保存外膜タンパク質は殺菌抗体(例えば、NadA、H因子結合タンパク質(FHBP)バリアント1、およびFHBPバリアント2であるが、これらに限定されない)を誘導する能力が証明されている)の発現の増加;5)ラクト−N−ネオテトラオース(LNnT)テトラサッカリドを欠く短縮されたか、または切り詰められたLOSを発現する各菌株中のlgtA遺伝子の不活化;および/または6)野生型菌株の相変異に感受性を示す一定の外膜タンパク質(OpcおよびPorAなど)の安定化させた発現。
【0024】
本発明のテクノロジーは、髄膜炎菌性疾患に対する防御抗体応答の使用時の安全性およびその応答の範囲の両方を増加させる遺伝子改変菌株を提供する。1つの実施形態では、遺伝子改変菌株は、細菌ゲノム内の以下の変異の少なくとも1つの組み込みによって安全性が増加する:キャプシドのシアル酸合成を遮断し、そして莢膜陰性表現型NOMVを形成させるsynX遺伝子の欠失、ペンタ−アシル脂質A構造が得られることによって内毒素活性が軽減するlpxL1遺伝子の欠失、および/またはリポオリゴサッカリド(LOS)上のラクト−N−ネオテトラオース生合成を遮断し、切り詰められたLOS構造を安定化させたlgtA遺伝子の欠失。より好ましくは、遺伝子改変菌株はこれらの変異のうちの2つを備え、最も好ましくは遺伝子改変菌株はこれらの3つの変異全てを備える。本発明のテクノロジーの別の実施形態では、遺伝子改変菌株は、NOMV内に含まれる3つの可能な防御抗原組のうちの少なくとも1つを標的とすることによって防御抗体応答範囲が増大される。標的とされる3つの可能な抗原には、以下のうちの少なくとも1つが含まれる:PorAタンパク質、少なくとも1つの保存微量タンパク質、および/またはLOSコア構造、およびその任意の組み合わせが含まれる。より好ましい実施形態では、遺伝子改変菌株は、少なくとも2つの可能な防御抗原を標的とし、最も好ましくは3つ全ての可能な防御抗原を標的とする。
【0025】
本発明のテクノロジーのいくかの実施形態では、synX変異(synX遺伝子の不活化)を、米国特許第6,558,677号(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載の方法によって遺伝子改変菌株に挿入した。簡潔にまとめると、200bp配列をカナマイシン耐性遺伝子で置換したsynX遺伝子を含むpUC19ベースのプラスミドを使用して遺伝子改変菌株を形質転換する。Kan耐性形質転換体を選択し、破壊されたsynX遺伝子の存在および莢膜陰性表現型についてPCRによって試験した。このsynX変異体を、synX遺伝子へのトランスポゾンの挿入によって莢膜陰性表現型が得られることを示しているSwartleyおよびStephens(SwartleyおよびStephens(1994)J.Bacteriol.176:1530−1534)によって報告された結果および配列情報に基づいて構築した。同一または等価な変異を、任意の形質転換可能な髄膜炎菌の菌株に導入することができる。髄膜炎菌の形質転換での使用に適切なプラスミドを、以下の手順を使用して構築した。3つのDNA配列を、オーバーラップ・イクステンション(SOE)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Hortonら(1989)Gene 77:61−65)によるスプライシングを使用して合わせた。3つのDNA配列には、5'末端からはじまる順序で、synXB塩基67〜681、pUC4K由来のカナマイシン耐性遺伝子(Pharmacia LKB Biotech Co.)671〜1623、およびsynxB塩基886〜1589を含んでいた。さらに、5'末端で、推定取り込み配列ACCGTCTGAAを、synXBの67〜691塩基配列の増幅のために使用されるPCRプライマーの末端に含めることによって付加した。完全な構築物をPCRによって増幅し、精製し、pUC19に平滑ライゲーションした。pUC19を使用してEscherichia coli DH5αを形質転換し、50μgカナマイシンを含むLB寒天上で選択した。カナマイシン耐性コロニーを選択し、DNAを抽出し、精製し、XbaIで切断した。推定取り込み配列の別のコピーをこの多重クローニング領域の部位にライゲーションし、得られたプラスミドを再度使用してE.coli DH5αを形質転換し、カナマイシン耐性コロニーをさらなる取り込み配列の存在についてPCRによってスクリーニングした。プラスミドDNAを選択されたコロニーから単離し、プライマーを使用したPCRのテンプレートとして使用し、髄膜炎菌に導入されるべきではないアンピシリン耐性遺伝子を除外したプラスミドの挿入部分のみを増幅させた。次いで、増幅されたDNAを精製し、これを使用して遺伝子改変髄膜炎菌の菌株を形質転換した。N.meningitidesのsynX(-)変異体をカナマイシン耐性によって選択し、改変領域のPCR増幅によって確認した。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、遺伝子改変菌株中のlpxL1遺伝子を不活化して、ワクチン組成物中のNOMV上で発現する内毒素LOSを軽減して産生させた。髄膜炎菌のLOSの脂質Aは、通常、ヘキサアシル構造であり、LOSの内毒性を担う。脂質A中に存在する2つのアシル−オキシ−アシル連結二次脂肪酸は、内毒素活性に重要である。遺伝子改変菌株には、van der Leyおよび共同研究者による記載のlpxL1変異体が含まれる(van der Ley,P.、Steeghs,L.、Hamstra,H.J.、van Hove,J.、Zomer,B.、およびvan Alphen,L. Modification of lipid A biosynthesis in Neisseria meningitidis lpxL mutants:influence on lipopolysaccharide structure,toxicity,and adjuvant activity.Infection and Immunity 69(10)、5981−5990、2001)。lpxL1遺伝子の欠失により、ウサギ発熱物質試験および全血由来のヒト単球を使用したサイトカイン放出アッセイの両方によって試験したところ内毒素性が非常に減少した通常レベルのペンタ−アシルLOSが発現された。lpxL1遺伝子の他の破壊方法は、遺伝子改変菌株の開発で用いる本発明のテクノロジーのさらなる実施形態で意図される。
【0027】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変菌株は、opa遺伝子(OpaCまたはOpaD)の1つの代わりに第2の抗原性が異なるporA遺伝子の挿入を含む。髄膜炎菌の主な外膜タンパク質ポーリンAまたはPorAは、porAの遺伝子産物である。PorAは広範な抗原変異(antigenic variaion)を有し、免疫選択圧を回避するための相変異に供される。したがって、porAは他の亜型と常に交差防御するわけではない。異なるPorA亜型に対するワクチン組成物の反応性を増加させるために、少なくとも1つのさらなるporA遺伝子を、遺伝子改変した菌株のopaCまたはopaD遺伝子に挿入する。挿入のために選択したPorA血清型を、B亜型髄膜炎菌性疾患の場合に見出されたPorAの最も一般的な形態に基づいて選択する。適切なPorA血清型には、以下が含まれるが、これらに限定されない:P1.7−1(菌株M1080由来)、P1.22,14(菌株M4410由来)、P1.22,1,4、または当業者に理解されているかまたは最新論文(例えば、Sacchiら、Diversity and prevalence of PorA types in Neisseria meningitidis serogroup B in the United States、1992−1998、J Infect Dis.2000 Oct;182(4):1169−76に記載のように)に記載の他の適切なPorA血清型。第2のPorA遺伝子は、PorAタンパク質発現が得られる任意の適切な強力プロモーター(例えば、適切な菌株(例えば、菌株H44/76)由来のPorAプロモーターの調節下にあり得る。遺伝子改変した菌株へのporA遺伝子の適切なクローニング方法は、当業者に公知であろう。このクローニング方法には、相同組換えが含まれ得るがこれに限定されない。例えば、porA遺伝子を、細菌染色体DNAからPCR増幅し、クローニングベクターにクローン化し、オーバーラップ・イクステンションPCR技術の改変による遺伝子スプライシングを使用して、適切に構築されたプラスミド(例えば、pUC19)に再クローン化することができる。この構築プラスミドを、相同組換えによって細菌ゲノムに導入してopa遺伝子などと置換することができる。形質転換体を、ポーリンに対するモノクローナル抗体を使用したコロニーブロッティングによって選択することができる。これらの方法は、当業者に公知である。
【0028】
本発明のテクノロジーのさらなる実施形態では、改変菌株は、少なくとも1つの微量外膜タンパク質の発現が安定および/または増加する。適切な微量外膜タンパク質は、殺菌抗体(例えば、NadA、H因子結合タンパク質(FHBP)バリアント1、およびFHBPバリアント2であるが、これらに限定されない)を誘導する能力を実証する。いかなる理論にも拘束されないが、ゲノム分析によって防御抗体を誘導する潜在力を有すると同定された高度に保存された表面が露出した微量外膜タンパク質の発現の安定化および/または増加させることにより、交差防御免疫応答が増加し得る。適切な保存微量タンパク質には、NadA、FHBPバリアント1および2、ならびにOpcが含まれるが、これらに限定されない。微量外膜タンパク質(OMP)の安定化および/または過剰発現の方法には、発現プラスミドおよび相同組換えの使用または当業者に公知の他の適切な方法が含まれる。微量OMPは、強力プロモーター(例えば、髄膜炎菌 PorAプロモーターまたはIPTG誘導性E.Coli ptacプロモーターであるが、これらに限定されない)下にあり得る。
【0029】
以下の実施例に記載のように、構築プラスミドを使用して遺伝子改変菌株中のfHbp1およびfHbp2発現の増加を確立した。ここで、過剰発現したタンパク質は、適切にプロセシングされ、脂質付加され(lipidated)、外膜表面への移行を生じた。例えば、菌株8570 HOPS−G(B2)におけるIPTG誘導性E.coli Ptacプロモーターの調節下でのバリアント1の発現は親菌株8570の約4倍高く、菌株B16B2 HPS−GA(B3)におけるバリアント2の発現は親菌株B16B6の32〜64倍高かった(図20を参照のこと)。あるいは、PorAプロモーターを使用した発現系を使用して、微量の保存タンパク質を安定化/過剰発現することができた。
【0030】
本発明のテクノロジーのさらなる実施形態では、遺伝子改変菌株は、ラクト−N−ネオテトラオース(LNnT)テトラサッカリドを欠く短縮されたか、または切り詰められたLOSを発現するlgtA遺伝子の不活化を含む。
【0031】
髄膜炎菌性LOSの重要な特徴は、相変異である。相変異は、lgtAおよび他のナイセリア遺伝子中のヌクレオチド残基のホモポリマートラクトの非常に頻繁な変異に起因して起こる。これらの変異は、LOSα鎖のアセンブリを媒介するLgtAトランスフェラーゼの発現のオン−オフを切り換える(ヘプトース上の置換基の立体配置を2相に変化させる)。このlgtA遺伝子の相変異性活性化により、LOSα鎖が望ましくない伸長をもたらし、それにより、ヒト血液細胞抗原と類似の構造を有するラクトN−ネオテトラオースが生じ得る。本発明のテクノロジーの遺伝子改変菌株は、抗生物質マーカーまたは他の適切なマーカー(遺伝子変化のスクリーニングに使用するため)(例えば、ゼオマイシン耐性遺伝子であるが、これに限定されない)での未変性遺伝子の破壊によってノックアウトされたlgtA遺伝子を有する。lgtA遺伝子のノックアウト方法は当業者に公知であり、構築プラスミドおよび相同組換えまたは形質転換が含まれるが、これらに限定されない。変異したΔlgtA遺伝子は、少なくとも22継代の観察中に全ての改変菌株で不活性であった。これは、LOSコア構造の安定化された切り詰めた形態であった。lgtA遺伝子の欠失によって切り詰めたαコアLOS構造が安定化され、例えば、図19に示す切り詰めたコア構造が得られる。図19に、3つの例示的な改変菌株(例えば、菌株B3がL3コア構造を有するL8α鎖を含む)を示す。本発明のテクノロジーの遺伝子改変菌株は、免疫応答を開始することができる安定化されたコア構造が得られる免疫型L3、L5、およびL2に対応する特異的LOSコア構造を含み、以下の例では、全長LOSを発現する野生型菌株を死滅させることができる切り詰めたL8様LOS(L8−3、L8−5、およびL8−2)を実証する。ΔlgtA菌株は、ヒト血液細胞上に見出されるラクト−N−ネオテトラオースオリゴサッカリドと交差反応することなくLOS構造の切り詰めた形態および全長形態の両方を認識する抗体を誘発することができる。
【0032】
本発明のテクノロジーのさらなる実施形態では、髄膜炎菌の遺伝子改変菌株は、通常は野生型菌株の相変異に感受性を示す外膜タンパク質(例えば、OpcおよびPorAであるが、これらに限定されない)の発現が安定化されている。これらのタンパク質の発現を、当該分野で公知の方法によって安定化することができ、安定化された遺伝子のプロモーター中または読み取り枠内のいずれかのポリマー反復配列を最大の発現に適切な長さの非反復配列で置換する方法を含む。例えば、これらの遺伝子のプロモーター中のポリC配列またはポリG配列の一部を、CヌクレオチドおよびGヌクレオチドの両方を含む同一の長さの配列で置換することができる(例えば、opcA(配列番号1を参照のこと)のプロモーターの12bpポリG配列をCヌクレオチドおよびGヌクレオチドの両方およびNotI部位を含む同一の長さの新規の配列で置換した(配列番号2を参照のこと、NotI部位に下線を付けている))。他の適切な実施形態では、PorAプロモーター中のポリG配列(例えば、配列番号3を参照のこと)を、CヌクレオチドおよびGヌクレオチドの両方を含む新規の配列で置換することができる。
【0033】
本発明のテクノロジーのさらなる実施形態は、鉄取り込みに関与するタンパク質(例えば、トランスフェリン(transferring)結合タンパク質AおよびB)のタンパク質発現を誘導するために低レベルの鉄を含む液体培地中でのワクチン菌株の増殖を提供する。いくつかの実施形態では、使用培地は、デスフェラール(desferol)などの鉄キレート剤を特には添加しなかった。1つの適切な培地は、いくつかの(sever)個別のアミノ酸を1%カザミノ酸(認定、Difco Laboratories)で置き換えることにより、BW Catlinによって公表された培地(Catlin BW.(1973)J.Infec.Dis.128:178−194)から改変されている。培地は1リットルあたり以下を含んでいた:0.4g NHCl、0.168g KCl、5.85g NaCl、1.065g NaHPO、0.17g KHPO、0.647gクエン酸ナトリウム、6.25g乳酸ナトリウム(60%シロップ)、0.037g CaCl・2HO、0.0013g MnSO・HO、5gグリセロール、0.02gシステイン、10gカザミノ酸、0.616g MgSO、および1リットルになるまでの蒸留水。同一の鉄欠損培地を、スターターフラスコおよび最終培養フラスコまたは発酵槽のために使用した。
【0034】
亜群Bの少なくとも3つの異なる遺伝子改変菌株由来のNOMVを含む本発明のテクノロジーのワクチン組成物は、3つの潜在的な防御レベルまたはそれぞれ防御抗体応答を潜在的に誘導する3つの抗原型を提供することができる。3つの抗原は、PorAタンパク質(6つの異なるPorA亜型がワクチン中に存在する(3つのワクチン菌株の各々につき2つ);リポオリゴサッカリド(3つの異なるLOSコア構造がワクチン中に存在する(各菌株から1つ));およびワクチン菌株中で過剰発現した保存された微量タンパク質NadA、FHBPバリアント1および2、ならびにOpcである。PorAが比較的高レベルの抗原変異(数百個の異なる配列変異が同定されている)を有するにもかかわらず、他よりも一定のPorA血清亜型によりいっそう頻繁に遭遇し、中程度の数の異なる血清亜型がB群疾患の半分より多くを潜在的に防御することができる。抗原の表面密度が低い場合、抗原に対する抗体が補体媒介溶解事象を開始することができないことが示されているので、ワクチン中で殺菌抗体を誘導することができる1つを超える抗原を有することが重要である。しかし、2つ以上のかかる抗原に対する抗体が存在する場合、抗体は共に補体媒介溶解を開始することができる。本発明の遺伝子改変菌株には、図18に示す3つの菌株(B1(44/76 HOPS−D)、B2(8570 HOPS−G1)、および菌株B3(B16B6 HPS−G2)が含まれる)が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明のテクノロジーは、髄膜炎菌性疾患、特に髄膜炎菌亜型Bに原因する髄膜炎菌性疾患を広範に防御するワクチンを提供する。本発明のワクチン組成物を、既存の四価のA、C、Y、およびW−135ワクチンと組み合わせて、髄膜炎菌の大部分の病原性血清群に対して防御することができる。いかなる特定の理論にも拘束されないが、ベースとなる莢膜下抗原が髄膜炎菌の全血清群にわたって共有されているので、本発明のテクノロジーのワクチンは他の病原性血清群および髄膜炎菌の少数の血清群に対するバックアップ防御を提供することもできる。
【0036】
本発明のテクノロジーの好ましい実施形態では、目的の遺伝子または目的のDNAを、相同組換えおよび/または部位特異的組換えによって細菌染色体に送達させ、組み込む。かかる遺伝子および/またはオペロンを送達させるために使用した組み込みベクターは、当業者に公知の制限加水分解またはPCR増幅によって得た条件付で複製プラスミドまたは自殺プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、または線状DNAフラグメントであり得る。いくつかの実施形態では、組み込みは、in vitroでの増殖に必ずしも必要でない染色体領域を標的にする。他の実施形態では、目的の遺伝子または目的のDNAを、エピソームベクター(環状/線状複製プラスミド、コスミド、プラスミド、溶原性バクテリオファージ、または細菌人工染色体など)によって細菌に送達させることができる。組換え事象の選択をを、選択遺伝子マーカー(抗生物質(例えば、カナマイシン、ゼオマイシン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシンなど)に耐性を付与する遺伝子、重金属および/または有毒化合物に耐性を付与する遺伝子、または栄養要求性変異を補完する遺伝子など)によって選択することができる。あるいは、組換えを、PCR増幅、配列決定、制限消化、または当業者に公知の他の方法によってスクリーニングすることができる。
【0037】
「ワクチン」は、本明細書中で言及する場合、生物、好ましくは病原性生物による感染に対して動物を免疫するために動物に接種するために使用される薬学的組成物または治療組成物と定義する。ワクチンは、典型的には、動物への投与によって能動免疫が刺激され、これらまたは関連する病原性生物の感染から動物を防御する、1つまたは複数の生物に由来する1つまたは複数の抗原を含む。
【0038】
精製されたNOMVを、当該分野で公知の方法(溶液の濾過滅菌、溶液の希釈、アジュバントの添加、および溶液の安定化を含み得る)によって哺乳動物、適切にはヒト、マウス、ラット、またはウサギへの投与のために調製する。
【0039】
本発明のワクチンを、多数の経路(例えば、非経口(例えば、筋肉内、経皮)、鼻腔内、経口、局所、または当業者に公知の他の経路が含まれるが、これらに限定されない)によってヒトまたは動物に投与することができる。用語非経口には、本明細書の以下で使用する場合、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、動脈内への注射または注入技術が含まれる。ワクチンは、集団予防接種プログラムのために使用することができる単回投与調製物または複数回投与フラスコの形態であり得る。適切なワクチンの調製および使用方法を、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton,Pa.,Osol(編)(1980)およびNew Trends in Developments in Vaccines、Vollerら(編)、University Park Press、Baltimore、Md.(1978)(参考として援用される)中に見出すことができる。
【0040】
本発明のテクノロジーのワクチン組成物を、典型的には、標準的な周知の非毒性の生理学的に許容可能なキャリア、アジュバント、および/またはビヒクルを含む投薬単位処方物で非経口投与する。
【0041】
本発明のテクノロジーのワクチン組成物は、1つまたは複数のアジュバントをさらに含むことができる。「アジュバント」は、特異的ワクチン抗原と組み合わせて使用した場合に抗原の抗原特異的免疫応答を増強するか、促進するか、延長する働きをするが、単独使用の場合に免疫応答を刺激しない物質である。適切なアジュバントには、無機または有機アジュバントが含まれる。適切な無機アジュバントには、例えば、アルミニウム塩(水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)またはリン酸アルミニウム(好ましくは、水酸化アルミニウム)など)が含まれるが、これらに限定されないが、カルシウム(特に、炭酸カルシウム)、鉄、または亜鉛の塩であり得るか、アシル化チロシン、またはアシル化糖、カチオン性またはアニオン性に誘導されたポリサッカリドまたはポリホスファゼンの不溶性懸濁液であり得る。他の適切なアジュバントは、当業者に公知である。適切なTh1アジュバント系も使用することができ、例えば、モノホスホリル(Monophosphphorly)脂質A、LPSの他の非毒性誘導体、およびモノホスホリル脂質A(3−デ−O−アシル化モノホスホリル(acrylated monophosphorly)脂質A(#D−MPL)など)とアルミニウム塩との組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
アジュバントの他の適切な例には、MF59、MPLA、Mycobacterium tuberculosis、Bordetella pertussis、細菌のリポ多糖、アミノアルキルグルコサミンホスファート化合物(AGP)、またはその誘導体もしくはアナログ(Corixa(Hamilton、Mont.)から利用可能であり、米国特許第6,113,918号に記載)(例えば、2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル、2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシ(tetradecanoyoxy)テトラデカノイル]−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシ(tetradecanoyoxy)テトラデカノイルアミノ]−b−D−グルコピラノシド(MPL(商標))(米国特許第4,912,094号に記載の3−O−脱アシル化モノホスホリル 脂質A)(Corixaから利用可能)、合成ポリヌクレオチド(CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド(米国特許第6,207,646号)など)、COG−ODN(CpGオリゴデオキシヌクレオチド)、ポリペプチド、サポニン(米国特許第5,057,540号に記載のQuil AまたはSTIMULON(商標)QS−21(Antigenics、Framingham、Mass.)など)、百日咳毒素(PT)、またはE.coli熱不安定性毒素(LT)(特に、LT−K63、LT−R72、CT−S109、PT−K9/G129))(例えば、国際特許公開番号WO93/13302号およびWO92/19265号を参照のこと)、コレラ毒素(野生型または変異体形態のいずれか)が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、種々のオイル処方物(ステアリルチロシン(ST、米国特許第4,258,029号を参照のこと)、MDPとして公知のジペプチド、サポニン、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、E.coli由来の熱不安定性エンテロトキシン(LT)(遺伝的にトキソイド化された変異体LTが開発されている)、およびEmulsomes(Pharmos,LTD.、Rehovot、Israel)など)。種々のサイトカインおよびリンホカインは、アジュバントとしての使用に適切である。1つのかかるアジュバントは、米国特許第5,078,996号に記載のヌクレオチド配列を有する顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)である。サイトカインのインターロイキン−12(IL−12)は、米国特許第5,723,127号に記載の別のアジュバントである。他のサイトカインまたはリンホカインは、免疫調節活性を有することが示されており(インターロイキン1−α、1−β、2、4、5、6、7、8、10、13、14、15、16、17、および18、インターフェロン−α、β、およびγ、顆粒球コロニー刺激因子、ならびに腫瘍壊死因子αおよびβが含まれるが、これらに限定されない)、アジュバントとしての使用に適切である。
【0043】
ワクチン組成物を凍結乾燥して、輸送および保存を容易にするための乾燥形態の髄膜炎菌に対するワクチンを生産することができる。さらに、添加した抗原がワクチンの有効性を妨害せず、副作用および有害反応が相加的または相乗的に増加しない限り、上記の遺伝子改変した菌株由来のタンパク質を含むNOMVおよび少なくとも1つの他の抗原を含む混合ワクチンの形態でワクチンを調製することができる。ワクチンを、ワクチンの溶解性、吸収、生物学的半減期などを改善することができる化学的部分と結合することができる。あるいは、この部分は、ワクチンの毒性を軽減するか、ワクチンの任意の望ましくない副作用を排除または希釈することができる。かかる効果を媒介することができる部分は、Remington's Pharmaceutical Sciences(1980)に開示されている。かかる部分の分子へのカップリング手順は当該分野で周知である。
【0044】
ワクチンを、密封したバイアル中またはアンプル中などに保存することができる。本発明のワクチンを、一般に、鼻腔内投与のための噴霧、点鼻薬、吸入剤、扁桃腺上のスワブ、または経口投与のためのカプセル、液体、懸濁液、もしくはエリキシルの形態で投与することができる。ワクチンが乾燥形態である場合、ワクチンを、投与前に滅菌蒸留水に溶解または懸濁する。任意の不活性キャリア(食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、またはNOMVワクチンが適切な溶解性を有する任意のかかるキャリアなど)を使用することが好ましい。
【0045】
本発明のテクノロジーのワクチン組成物は、キャリアを含むことができる。溶液または液体エアゾール懸濁液の場合、適切なキャリアには、塩溶液、スクロース溶液、または他の薬学的に許容可能な緩衝液が含まれ得るが、これらに限定されない。エアゾール溶液は、界面活性剤をさらに含むことができる。
【0046】
使用することができる許容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液(リン酸塩、乳酸塩、およびTrisなどで緩衝化した食塩水が含まれる)が含まれる。さらに、滅菌固定油を、溶媒または懸濁化媒質として慣習的に使用し、例えば、合成モノグリセリドまたはジグリセリドが含まれるが、これらに限定されない。さらに、脂肪酸(オレイン酸など)は、注射剤の調製で使用される。
【0047】
注射用調製物(例えば、滅菌された注射用の水性または油性懸濁液)を、公知の技術にしたがって適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して処方する。滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口に許容可能な希釈剤または溶媒を含む滅菌注射溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール溶液として)である。
【0048】
本明細書に記載のテクノロジーおよびその利点は、以下の実施例を参照してより深く理解されるであろう。これらの実施例を、本発明のテクノロジーの特定の実施形態を説明するために提供する。これらの特定の実施例の提供により、本出願人らは、本発明のテクノロジーの範囲および精神を制限しない。本明細書に記載のテクノロジーの全範囲は本明細書に添付した特許請求の範囲に定義される主題、特許請求の範囲の任意の変更形態、修正形態、または等価物を含むと当業者に理解される。
【実施例】
【0049】
実施例1:髄膜炎菌の遺伝子改変されたワクチン菌株の誘導および遺伝子改変されたワクチン菌株の外膜タンパク質を含むNOMVの産生
遺伝子改変菌株8570 HOPS−G1を、菌株を得た研究所によって多座酵素電気泳動により分析し、ET−5クローン複合体に属することが決定された親菌株8570由来の5つの遺伝子改変によって改変した(Caugantら)。PorA変異領域を配列決定し、分類し、遺伝子改変を行う前にLOS免疫型を検証した。菌株8570は、ET−5クローン4:P1.19、15:L7v、ProB3(ST4)Tbp2 II型であった。一連の5つの連続的な遺伝子改変を、下記のように菌株に対して行った。
【0050】
1)第2の異なるporA遺伝子をopaD遺伝子座に挿入してopaD遺伝子をノックアウトした。pUC19ベースのプラスミドpA18.4は、インサート中に抗生物質耐性マーカーを持たず、これを使用して第2のporA遺伝子を染色体のopaD遺伝子座に挿入し、遺伝子の中央の100bp配列をインサートで置換することによってopaDを無力にした。インサートは、菌株M4410(B:15:PI.22,14)から得た新規のporA遺伝子を含んでおり、菌株H44/76から得たporAプロモーターの後ろに配置した。得られたporA型は、2つのポーリンA遺伝子を含むP1.19,15:P1.22,14であった。
【0051】
2)第2のPorAが発現する1から得られた菌株から開始して、opcAのプロモーター中の12bpポリC配列をCヌクレオチドおよびGヌクレオチドの両方を含む同一の長さの新規の配列で置換することによって外膜タンパク質OpcAの発現を安定化させた。元のプロモーター配列(配列番号1)(太字のイタリックで示したポリG配列)
【0052】
【化1】

を、NotI部位(下線)を有するGヌクレオチドおよびCヌクレオチドの両方を含む改変プロモーター配列(配列番号2)
【0053】
【化2】

で置換した。置換配列の存在を検証することができるようにNotIの制限部位を含むように置換配列を選択した。形質転換のために使用したプラスミドはpOpc79(配列番号4)であった。プラスミドインサートは、抗生物質マーカーを含まない。形質転換体の選択は、OpcAに対するモノクローナル抗体を使用したコロニーブロッティングに基づいた。形質転換すべき菌株をOpcA陰性相バリアントであるように選択し、強いOpcA陽性クローンをコロニーブロッティングによって同定した。真の形質転換体を、PCRおよび制限酵素(NotI)分析によってOpcA陽性相バリアントと区別した。
【0054】
3)2から得た菌株から開始して、2つのアシル−オキシ−アシル結合脂肪酸の1つのLOSの脂質Aへの結合を担うアシルトランスフェラーゼである遺伝子lpxLlを、lpxLl遺伝子の中央の260bp配列をtetM抗生物質耐性遺伝子を含むインサートで置換することによって無力にした。tetM遺伝子を、トランスポゾンTn916由来のプラスミドpJS1934から得た(Swartleyら、1993.Mol.Microbiol.10:299−310)。lpxL1遺伝子を無力にするために使用したプラスミドはpMn5(配列番号5)であった。lpxLl遺伝子中のインサートの存在を、IpxLl遺伝子の最初および最後にプライマーを使用して3.3kbpアンプリコンを産生したPCRによって検証した。
【0055】
4)工程3から得た菌株から開始して、保存外膜タンパク質GNA1870(バリアント1)(FHBP v.1)の発現を、nspA遺伝子座中のGNA l870 バリアント1遺伝子の第2のコピーの挿入(NspA発現をノックアウトする)によって増加させた。新規に挿入した遺伝子は、ゲンタマイシン抗生物質耐性遺伝子、IPTG誘導性Ptacプロモーターを有するE.coli lacオペロン、GNA1870バリアント1遺伝子、およびrrnBターミネーターを含むインサートの一部であった。使用プラスミドを図19cおよび配列番号6に示す。PUC19ベースのプラスミドpBE/GNA1870/101を形質転換および相同組換えで使用して、GNA1870バリアント1遺伝子を改変菌株に挿入した。pBE/GNA1870/101プラスミド(7687b.p.)を、表1に記載の特徴(配列は配列番号6に見出すことができる)を使用して構築した。
【0056】
【表1】

5)工程4に由来する菌株を、200bp配列がカナマイシン耐性遺伝子に置換されたsynX遺伝子を含むpUC19ベースのプラスミドで形質転換した。Kan耐性形質転換体を選択し、破壊されたsynX遺伝子の存在および莢膜陰性表現型についてPCRによって試験した。結果により、synX遺伝子のノックアウトが立証された。
【0057】
6)工程4に由来する菌株を、lgtA遺伝子がノックアウトされたゼオマイシン遺伝子を含むプラスミドpBE−501(配列番号9)で形質転換した。プラスミドpBE−501は、表2に見出される特徴を含んでいた。lgtA遺伝子のノックアウトにより、ラクト−N−ネオテトラオース(LNnT)テトラサッカリドを欠く短縮されたか、または切り詰められたLOSが発現された(図20を参照のこと)。
【0058】
【表2】

この遺伝子改変菌株は、不確実な5つ全ての変異の保持および全ての予想される抗原の発現について試験した。
【0059】
実施例2:遺伝子改変菌株からのワクチン量の生産
次いで、遺伝子改変菌株を用いて、図1〜5の流れ図に詳述するようなワクチン製造に用いるためのマスター・セル・バンクおよびプロダクション・セル・バンクを生産し、NOMVの組成物を生産した。NOMV培養物を、外膜タンパク質およびLOSの発現について試験する。
【0060】
実施例3:ワクチンの特徴付け
実施例2から得た最終生成物を、マウスおよびウサギにおける品質管理試験ならびに前臨床安全性および免疫原性試験に供した。
【0061】
最終生成物のワクチンの組成は以下であった:
タンパク質 2001ag/ml
リポオリゴサッカリド 36tg/ml
核酸 2.5μg/ml
塩化ナトリウム 0.9%
トリス-HCI緩衝液 0.01MpH7.6
ワクチン組成物を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウェスタンブロッティングによってさらに分析した。図6は、コントロール(レーン2)および濾過バルクロット(レーン3)と比較したワクチン(レーン4)中のタンパク質含量を示すクマシー・ブルー染色ゲルを示す。図7は、コントロール(ML5 LPS、レーン(land)1)および濾過バルクワクチンロット(レーン2)と比較した、ワクチン(レーン3)のリポサッカリド成分を示す銀染色ゲルを示す。図8は、表3に列挙の抗体によるNOMVワクチンの主成分についてのワクチンの同一性試験の結果を示す。
【0062】
【表3】

結果を図6、7、および8に示す。図は、遺伝子改変菌株8570HOPS−G NOMV由来のワクチンのNOMV中に見出されたタンパク質が記載のようなタンパク質およびLOSを含むことを示す。
【0063】
実施例4:ワクチンの一般安全性試験
ワクチンを、21 CFR 610.11に規定の一般安全性試験で試験した。ワクチンの結果を表4に示す。
【0064】
【表4】

実施例5:ウサギ発熱性試験*
遺伝子改変ワクチン8570HOPS−G NOMVのみおよび水酸化アルミニウムアジュバントに吸着させたワクチンの内毒素活性についてのウサギ発熱物質試験の結果を、表3に示す。示した値は、ウサギにおいて発熱(0.5℃超の体温上昇)を誘導しなかった最も高い試験量であり、その結果を表5に示す。
【0065】
【表5】

まとめると、ワクチンのみでは0.4pg/kgで合格し、水酸化アルミニウムアジュバントは15pg/kg(臨床研究で使用されるkgあたりの最大量)で合格し、水酸化アルミニウムに吸着したワクチンは0.5lag/kgで合格したが、1.0pg/kgで不合格であった。pg/kgに基づいたこれらの結果の外挿により、吸着ワクチンがヒトにおいて25〜50μgの範囲の用量まで非発熱性であることが示唆される。
【0066】
実施例6:ヒト全血からのサイトカイン放出
ワクチンを、新鮮なヒト全血由来から炎症性サイトカインTNF−αおよびIL−6を誘導する能力の測定によって内毒素含量について試験した。結果を図9および10に示す。データは、3試験(E.Coli LPS標準およびlpxL2 LOSを有するNOMVワクチンロット1119)または5試験(野生型LOSを有するロット0832 NOMVおよびlpxLl LOSを有するロット1289 NOMVワクチン)の平均値である。エラーバーは、平均値の標準誤差である。NOMV濃度はタンパク質に基づくが、E.Coli標準LPSはLPS重量に基づく。いかなる特定の理論にも拘束されないが、これらの結果により、現在のワクチンがlpxL2 LOS含有ワクチン(髄膜炎菌性44/76 MOS 5D NOMVワクチン、ロット番号1119、BB−IND 12687)に類似のヒトボランティアにおける安全性プロフィールを有し得ることが示唆される。
【0067】
8570HOPS−G NOMVワクチンロット番号1289の活性を、デオキシコラート抽出した外膜小胞(OMV)の活性と比較した。手順を通して超遠心分離ペレットの再懸濁に1.2%デオキシコラート(DOC)を使用するよりもむしろ0.5%DOCを使用したことを除いて、Fredriksen JHら、NIPH Annals、14:67−80,1991に記載の基本的方法を使用して小胞を調製した。この比較の結果を図11に示す。
【0068】
実施例7:マウスにおける免疫原性および殺菌抗体応答
水酸化アルミニウムアジュバント(Rehydragel LV)に吸着させたか、または吸着させなかった遺伝子改変ワクチン菌株8570 HOPS−Gを、マウスに4週間間隔で3回投与した。10匹のマウスからなる群に、0.1、0.3、1.0、または3.0μgのNOMVを、0、4、および8週間目に腹腔内にワクチン接種した。ワクチン群を表6に列挙する。0、7、および10週目に血清を採取した。補体供給源として正常なヒト血清を使用して、4つの異なる菌株に対する殺菌抗体、ワクチン菌株の親、およびいくつかの関連菌株について血清を試験した。ワクチン接種前の血清は、細菌活性を一様に欠いていた。
【0069】
【表6】

10週目の血清(ワクチンの3回用量)を使用して得た結果を図12に示す。図は、遺伝子改変菌株に対する異なるワクチン群の細菌力価を示す。試験菌株のうちの2つは、ワクチン菌株の親と同質遺伝子であった。これらは、異なる血清亜型特異性を有する代替porAとのporA遺伝子の置換によって親菌株に由来した。これらの試験菌株中で発現したPorAタンパク質のうちの2つはワクチン中に存在するが(P1.19,15およびP1.22,14)、第3のPorAタンパク質(P1.22−1,4)は存在しない。第4の菌株である44/76は、ワクチン菌株と比較して異なるPorA、異なるPorB、および異なるLOSコア構造を有する。驚いたことに、デオキシコラート抽出小胞ワクチンが典型的にはドミナント抗原としてPorA抗原を示す公開された研究と異なり、本発明のテクノロジーのワクチンの結果は、大部分の殺菌活性が標的菌株の血清亜型に依存せず、したがって、PorAに対してではなかったことを実証する。
【0070】
マウスにおいて8570 HOPS−G NOMVワクチンによって誘導された殺菌抗体は、血清亜型特異性を示さないが、血清亜型および血清型とほとんど無関係なようである(図13)。菌株44/76を死滅させる抗体は、主にLOSに指向することが見出された。バーは、平均値の標準誤差である。ワクチンを、Rehydragel LV 水酸化アルミニウムアジュバントに吸着させるか、または吸着させないで投与した。
【0071】
異種菌株44/76に対する殺菌抗体応答の特異性の分析を、異なる単離抗原を用いた殺菌活性の枯渇によって行った。ワクチン接種後マウス血清を殺菌エンドポイント(−50%死滅)まで希釈し、異なる濃度のいくつかの抗原でコーティングした96ウェルマイクロプレートのウェル中でインキュベートした。4時間のインキュベーション後、血清を殺菌活性について試験し、殺菌抗体の除去率を決定した。標的菌株(免疫型L3,7)から調製した精製LOSは、ほぼ全ての抗体を除去することができた。ワクチン菌株から調製した精製LOS(免疫型L8v)は、約70%の抗体を除去することができた。保存タンパク質GNA1870(精製された組換えタンパク質)は約20%の殺菌活性を除去するようであった。これは、いかなる特定の理論にも拘束されないが、図14に示すように、抗LOS抗体および抗GNA1870抗体の両方に関与するいくつかの協力的死滅を示し得る。
【0072】
実施例8:ウサギの免疫原性
ワクチンを、ウサギにおける免疫原性についても試験した。4つのウサギ群に、水酸化アルミニウムアジュバントをに吸着させたか、または吸着させていない異なる用量のワクチンを筋肉内に接種した。6週間間隔で3回投与し、最後の注射の2週間後採血した。4つの試験菌株に対するウサギの殺菌抗体応答を決定した。試験菌株は、異なるPorAタンパク質およびL3,7v LOSを発現する8570の3つの同質遺伝子バリアントならびに異なるコア構造を有する異種PorAおよびLOSを有する菌株44/76を含んでいた。PorAタンパク質P1.19,15およびP1.22,14はワクチン中に存在していたが、P1.22−1,4は存在しなかった。殺菌試験の結果を図15に示す。菌株44/76に対する交差反応性殺菌活性を、マウス血清と同一の様式で分析し、結果は本質的に同一であった。ほとんどの交差反応性殺菌抗体を、試験菌株に相同な精製LOSによって除去することができた。
【0073】
実施例9:完全多価NOMVワクチンの実験室ロットの調製および動物試験
上記実施例に記載した菌株8570 HOPS−Glに加えて、2つの更なるワクチン菌株を選択し、遺伝子改変した。第1は菌株B16B6(B:2a:P1.5,2:L2)であった。この菌株は、遺伝子群ET−37に属し、クラス2 PorBタンパク質およびI型トランスフェリン結合タンパク質Bを有する。第2は菌株44/76(B:15:P1.7,16:L3,7)であった。これは、遺伝子群ET−5に属し、1970年代および1980年代のノルウェーにおいてB群髄膜炎菌性流行病を担った代表的な流行菌株である。これは、クラス3 PorBタンパク質およびII型トランスフェリン結合タンパク質Bを発現する。
【0074】
菌株B16B6を、菌株8570 HOPS−G1について記載の様式とほとんど同一の様式で遺伝子改変した。2つの遺伝子(synXおよびlpxL1)を無力にし、LOSの莢膜合成およびシアル酸化を防止し、LOSの毒性を軽減した。第2のporA遺伝子(亜型P1.22−4)をopaD遺伝子の代わりに挿入した。IPTG誘導性E.coli Ptacプロモーターを有するGNA 1870(FHBP)のバリアント2を、プラスミドpBE−201(配列番号7)を使用して第2のコピーとしてnspA遺伝子の代わりに挿入した。表7に記載の特徴を有するプラスミドpBE−201(fHBP(バリアント2)のさらなる発現のための7687b.p.)を構築した。
【0075】
【表7】

グルコースおよびガラクトースからなる切り詰めたα鎖を発現する得られた菌株の相変異。コロニーブロッティングによってL2 LOSを選択した。得られた遺伝子改変菌株を、B16B6 HPS−G2と命名した。図18を参照のこと。
【0076】
菌株44/76も菌株8570 HOPS−G1について記載のパターンと同一のパターンで遺伝子改変した。2つの遺伝子synXおよびlpxLlを挿入変異誘発によって無力にし、第2のporA遺伝子(亜型P1.7−1,1)をそのプロモーターと共にopaD遺伝子の代わりに挿入し、nadAの第2のコピーをnspA遺伝子の代わりにporAプロモーターの後ろに挿入した。プラスミドpBE−311を相同組換えのために使用してNadA遺伝子を挿入し、表8に記載の特徴を有するプラスミド3−11を構築した。配列を、配列番号8に見出すことができる。
【0077】
【表8】

さらに、OpcAの発現をその遺伝子に関連する相変異の矯正によって安定化させた。実施例1中のそのプロモーター中のポリGストリングの破壊によって菌株8570 HOPS−Glのために記載のようにこれを行った。lgtA遺伝子を実施例1に記載のように妨害されて、切り詰めたLOSを産生した。L8免疫型を発現する得られた菌株の相バリアントを、L8特異的モノクローナル抗体を使用したコロニーブロッティングによって選択した。図18に示すように、この遺伝子改変菌株を44/76 HOPS−Dと命名した。2つのさらなる菌株を特徴づけて全ての遺伝子改変が安定であることを確認し、各ストックを凍結した。
【0078】
実施例10:菌株B16B6 HPS−G2および菌株44/76 HOPS−D由来のNOMVワクチンの調製
3つの遺伝子改変菌株を使用して、NOMVワクチン組成物の実験室ロットを調製した。菌株を、回転式震盪機上のフェルンバッハフラスコ中の1リットルの培養物としてCatlin改変培地中で増殖させた。細胞を遠心分離によって回収し、秤量し、細胞ペーストを凍結した。細胞ペーストを解凍し、これを使用して、実施例2に記載のように菌株8570 HOPS−G1由来のワクチンの臨床ロットについて記載の手順と本質的に同一の手順にしたがってNOMVを調製した。この過程をスケールダウンし、2〜8℃にて225,000×gで60分間の超遠心分離を2回行って核酸および全ての可溶性の非小胞物質を除去した。
【0079】
実施例11:完全多価ワクチンを使用したマウスの免疫
10匹のCD−1マウスからなる群に、それぞれの遺伝子の改変されたワクチン菌株由来の2pgのNOMVワクチン(3菌株由来のNOMVとの混合ワクチンについて全部で6pg)を腹腔内に接種した。3回の投与を、0、4、および8週間目に投与した。ワクチン接種前および最後のワクチン接種から2週間後(10週目)に採血した。
【0080】
個別のマウス由来の血清を相同菌株に対する殺菌抗体について試験し、10匹のマウスからなる各群由来のプールした血清を14種の一連の異種B群菌株および広範な異なる莢膜下抗原を発現する1C群菌株に対して試験した。
【0081】
混合多価ワクチンは、3つのワクチン菌株各々に対して幾何平均で1:256の力価を誘導し、15種の異種菌株のうちの13種に対して4倍以上殺菌抗体の増加を誘導した。試験菌株のうちの2つは、ワクチン菌株の1つと抗原を共有するにも関わらず死滅しなかった。一連の菌株に対して認められた殺菌力価を、表9に示す。
【0082】
【表9】

これらの結果は、混合ワクチンが広範なB群菌株および潜在的に他の血清群の菌株に対しても同様に殺菌(防御)抗体を誘導する能力を証明している。
【0083】
殺菌枯渇試験を使用した殺菌抗体の分析により、3つ全ての抗原組に対する抗体が少なくともいくつかの試験菌株の死滅に関与することが証明された。いくつかの場合、1つを超える抗原に対する抗体が関与し、共に作用して所与の菌株に対する殺菌活性を生じるようであった。
【0084】
さらなるマウス群に、菌株8570 HOPS−G1の同質遺伝子変異体から調製したNOMVワクチンを接種した。変異菌株は、そのPorA発現が異なっていた。2つの変異体は単一のPorA(多価ワクチン菌株中の2つのPorAのうちの一方または他方)を発現し、3番目の変異体はPorAタンパク質を発現しないPorAノックアウト変異体であった。いくつかの異なる試験菌株に対する4つの各菌株によって誘導された殺菌力価を表10に示す。
【0085】
【表10】

表10中の最初の5つの試験菌株について、PorA発現はワクチンによって誘導された殺菌抗体の力価に影響を及ぼさなかった。共にP1.14を発現する最後の2つの菌株について、ワクチン中のP1.14エピトープの存在は、各血清の菌株を死滅させる能力と相関した。これは、PorAに対する抗体がいくつかの菌株について認められた死滅に関与することを実証する。相同菌株および菌株44/76などの他の菌株について、他の抗原がほとんどの殺菌活性を担う。これは、殺菌枯渇アッセイを使用した分析によって証明された。1つのかかるアッセイの結果を図16に示す。図17に示した結果は、LOSおよびFHBP(GNA1870)に対する抗体が8570 HOPS−G1のPorAノックアウト変異体に対する抗血清による菌株8570の死滅に関与していたことを証明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広範囲にわたって防御するために遺伝子改変された少なくとも2つの髄膜炎菌株から得た未変性の外膜小胞を含むワクチンであって、前記未変性の外膜小胞が、PorA、LOS、および保存外膜タンパク質に基づいた3つの異なる抗原組を含み、前記遺伝子改変菌株が、lpxL1遺伝子、synX遺伝子、およびlgtA遺伝子の不活化に基づいて安全性が強化されるように改変されている、ワクチン。
【請求項2】
各菌株によって発現された前記LOSが異なるLOSコア構造を有し、グルコースおよびガラクトースからなるα鎖を有する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
各菌株がB群分離菌のうちで最も一般的なPorA亜型に基づいて選択される少なくとも2つの異なるPorA亜型タンパク質または亜型エピトープを発現する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項4】
殺菌抗体を誘導する能力が証明された異なる保存表面タンパク質が各菌株で過剰発現され、FHBP(GNA1870)バリアント1、FHBPバリアント2、およびFHBPバリアント3、NadA、App、NspA、TbpAおよびTbpBからなる群から選択される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項5】
3つの遺伝子改変された抗原性が多様な髄膜炎菌株由来のNOMVの組み合わせであって、少なくとも1つの菌株が、以下:
(1)以下の遺伝子改変または特徴を有するH44/76 HOPS−DL:
synX遺伝子、lpxL1遺伝子、およびlgtA遺伝子の不活化、
opaDの代わりの第2のporA遺伝子(亜型P1.7−1,1)の挿入、
NadA発現の増加、および
OpcおよびPorAの安定化された高発現、
(2)以下の遺伝子改変または特徴を有する8570 HOPS−GL:
synX遺伝子、lpxL1遺伝子、およびlgtA遺伝子の不活化、
opaDの代わりの第2のporA遺伝子の挿入、
H因子結合タンパク質バリアント1発現の増加、および
PorAおよびOpcの安定化された高発現、および
(3)以下の遺伝子改変または特徴を有するB16B6 HPS−GA:
synX遺伝子、lpxL1遺伝子、およびlgtA遺伝子の不活化、
opaDの代わりの第2のporA遺伝子の挿入、
H因子結合タンパク質バリアント2発現の増加、および
PorAおよびOpcの安定化された高発現
から選択される、組み合わせ。
【請求項6】
菌株H44/76 HOPS−DLがET−5野生型菌株H44/76(B:15:P1.7,16:L,3,7:P5.5,C)に由来した、請求項5に記載のワクチン菌株の組み合わせ。
【請求項7】
菌株8570 HOPS−GLがET−5野生型菌株8570(B:4:P 1.19,15:L3,7v:P5.5,11,C)に由来した、請求項5に記載のワクチン菌株の組み合わせ。
【請求項8】
菌株B16B6 HPS−GLがET−37野生型菌株B16B6(B:2a:P 1.5,2:L2:P5.1,2,5)に由来する、請求項5に記載のワクチン菌株の組み合わせ。
【請求項9】
前記NOMVを界面活性剤または変性溶媒へ曝露することなく充填細胞または消費した培養培地から調製する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項10】
前記ワクチンを賦形剤としての5%グルコースに懸濁する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項11】
前記NOMVを、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、MF59、CPG−ODN、またはMPLAを含む1つまたは複数のアジュバントと組み合わせる、請求項1に記載のワクチン。
【請求項12】
髄膜炎菌性疾患に対する免疫のために筋肉内および/または鼻腔内に投与する請求項1に記載のワクチンの使用方法。
【請求項13】
B群髄膜炎菌性疾患に対する免疫のために筋肉内および/または鼻腔内に投与する請求項1に記載のワクチンの使用方法。
【請求項14】
髄膜炎菌の1つまたは複数の遺伝子改変菌株由来の未変性の外膜小胞(NOMV)を含む髄膜炎菌性疾患に対するワクチン組成物であって、前記1つまたは複数の遺伝子改変菌株が、
i.synX遺伝子の不活化,
ii.lpxL1遺伝子の不活化、
iii.ラクト−N−ネオテトラオーステトラサッカリドを欠く短縮されたかまたは切り詰められたリポオリゴサッカリド(LOS)が発現される各菌株中でのlgtA遺伝子の不活化、および
iv.opa遺伝子の代わりの少なくとも1つの第2の抗原性が異なるporA遺伝子の挿入
によって改変された、ワクチン組成物。
【請求項15】
前記遺伝子改変菌株が少なくとも1つの微量保存外膜タンパク質の増加または安定した発現をさらに含む、請求項14に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
前記遺伝子改変菌株が少なくとも1つの外膜タンパク質の安定化された発現をさらに含み、前記外膜タンパク質がOpcおよびPorAを含む群から選択される、請求項14から15のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第2の抗原性が異なるporA遺伝子が髄膜炎B群分離菌の最も一般的なPorA亜型から選択される少なくとも1つのPorA亜型タンパク質または亜型エピトープを発現する、請求項14から16のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの微量保存外膜タンパク質が、FHBP(GNA1870)バリアント1、FHBPバリアント2、FHBPバリアント3、NadA、App、NspA、TbpA、およびBからなる群から選択される、請求項15から17に記載のワクチン組成物。
【請求項19】
菌株H44/76 HOPS−Dを含む髄膜炎菌亜型B菌株からの遺伝子改変されたワクチン菌株。
【請求項20】
以下:
i)synX遺伝子の不活化、
ii)lpxL1遺伝子の不活化、
iii)lgtA遺伝子の不活化、
iv)opaD遺伝子の代わりの第2のporA遺伝子の挿入、
v)未変性菌株H44/76と比較して増加したNadA発現、および
vi)Opcタンパク質およびPorAタンパク質発現の安定化された増加
の遺伝子改変を含む菌株H44/76由来の髄膜炎菌亜型Bからの遺伝子改変されたワクチン菌株。
【請求項21】
菌株H44/76 HOPS−DLがET−5野生型菌株H44/76(B:15:P1.7,16:L,3,7:P5.5,C)に由来した、請求項19または20に記載の遺伝子改変菌株。
【請求項22】
菌株8570 HOS−G1を含む髄膜炎菌亜型Bからの遺伝子改変されたワクチン菌株。
【請求項23】
以下:
i)synX遺伝子の不活化、
ii)lpxL1遺伝子の不活化、
iii)lgtA遺伝子の不活化、
iv)opaDの代わりの第2のporA遺伝子の挿入、
v)H因子結合タンパク質バリアント1発現の増加、および
vi)PorAタンパク質およびOpcタンパク質発現の安定化された増加
の遺伝子改変を含む8570由来の髄膜炎菌亜型B菌株からの遺伝子改変されたワクチン菌株。
【請求項24】
前記遺伝子改変菌株がET−5野生型菌株8570(B:4:P 1.19,15:L3,7v:P5.5,11,C)に由来した、請求項22または23に記載の遺伝子改変菌株。
【請求項25】
菌株B16B6 HPS−GAを含む髄膜炎菌亜型Bからの遺伝子改変されたワクチン菌株。
【請求項26】
以下:
i)synX遺伝子の不活化、
ii)lpxL1遺伝子の不活化、
iii)lgtA遺伝子の不活化、
iv)opaDの代わりの第2のporA遺伝子(亜型P1.22−1,4)の挿入、
v) H因子結合タンパク質バリアント2発現の増加、および
vi)PorAタンパク質およびOpcタンパク質発現の安定化された増加
の遺伝子改変を含むB16B6由来の髄膜炎菌亜型Bからの遺伝子改変されたワクチン菌株。
【請求項27】
前記遺伝子改変菌株がET−37野生型菌株B16B6(B:2a:P 1.5,2:L2:P5.1,2,5)に由来する、請求項25または26に記載の遺伝子改変菌株。
【請求項28】
前記菌株を鉄欠損培地で生育させる、請求項19から27のいずれか1項に記載の遺伝子改変菌株。
【請求項29】
synX遺伝子、lpxL1遺伝子、またはlgtA遺伝子の不活化が不活化遺伝子配列内の薬物耐性遺伝子の挿入による、請求項19から28のいずれか1項に記載の遺伝子改変菌株。
【請求項30】
請求項20から29のいずれか1項に記載の1つまたは複数の遺伝子改変菌株由来のNOMVを含むワクチン組成物。
【請求項31】
前記ワクチン組成物が2つ以上の遺伝子改変菌株由来のNOMVを含む、請求項30に記載のワクチン組成物。
【請求項33】
前記ワクチン組成物が3つ以上の遺伝子改変菌株由来のNOMVを含む、請求項30に記載のワクチン組成物。
【請求項34】
前記NOMVを界面活性剤または変性溶媒へ曝露することなく充填細胞または消費した培養培地から調製する、請求項1から18および30から33のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項35】
前記ワクチン組成物を賦形剤としての5%グルコースに懸濁する、請求項1から18および30から33のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項36】
前記NOMVを1つまたは複数のアジュバントと組み合わせる、請求項1から18および30から33のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項37】
前記遺伝子改変した菌株を鉄取り込みタンパク質を発現するように変化させる、請求項1から18および30から33のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項38】
種々の未変性の外膜小胞(NOMV)を含む髄膜炎菌性疾患に対するワクチンであって、少なくともいくつかのNOMVがリポオリゴサッカリド(LOS)の発現またはシアル酸化を本質的に含まず、ペンタ−アシル構造を有する脂質Aを含むLOSを含み、発現レベルの増加した少なくとも1つの微量保存外膜タンパク質を含み、前記微量保存外膜タンパク質が殺菌抗体を誘導するタンパク質から選択される、ワクチン。
【請求項39】
前記微量保存外膜タンパク質が、NadA、H因子結合タンパク質(FHBP)バリアント1、およびFHBPバリアント2からなる群から選択される、請求項38に記載のワクチン。
【請求項40】
少なくともいくつかのNOMVがラクト−N−ネオテトラオース(LNnT)テトラサッカリドを本質的に含まない短縮されたか、または切り詰められたLOSを含む、請求項38に記載のワクチン。
【請求項41】
少なくともいくつかのNOMVが2つ以上の異なるPorAタンパク質を含む、請求項38に記載のワクチン。
【請求項42】
前記少なくとも2つ以上の異なるPorAタンパク質が、髄膜炎菌(N.meningitides)亜群B菌株の最も一般的な菌株から選択される、請求項43に記載のワクチン。
【請求項43】
髄膜炎菌性疾患に対する免疫のために請求項1から18および30から33のいずれか1項に記載の組成物を動物またはヒトに投与する工程を含む該動物または該ヒトにおいて髄膜炎菌性疾患に対する免疫応答を誘発する方法。
【請求項44】
前記ワクチンをB群髄膜炎菌性疾患に対する免疫のために使用する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
髄膜炎菌性疾患に対するワクチンで用いる髄膜炎菌の遺伝子改変菌株を調製する方法であって、
a)遺伝子改変することができる髄膜炎菌B型菌株を選択する工程、
b)synX遺伝子の不活化によって前記菌株を遺伝子改変する工程,
c)lpxL1遺伝子の不活化によって前記菌株を遺伝子改変する工程、
d)lgtA遺伝子の不活化によって前記菌株を遺伝子改変する工程、および
e)1つまたは複数の微量保存外膜タンパク質の発現の増加によって前記菌株を遺伝子改変する工程
を含む、方法。
【請求項46】
opa遺伝子の読み取り枠への少なくとも1つの第2の抗原性が異なるporA遺伝子の挿入によって前記菌株を遺伝子改変する工程をさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
少なくとも1つの外膜タンパク質のプロモーターまたは読み取り枠内のポリ−C配列をGヌクレオチドおよびCヌクレオチドを含む配列で置換することによって前記菌株を遺伝子改変して少なくとも1つの外膜タンパク質を安定的に発現させるか、または過剰発現させる工程をさらに含む、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
髄膜炎菌性疾患に対するワクチンを調製する方法であって、
a)以下:
i.synX遺伝子の不活化,
ii.lpxL1遺伝子の不活化、
iii.IgtA遺伝子の不活化、
iv.opa遺伝子の代わりの少なくとも1つの第2の抗原性が異なるporA遺伝子の挿入、
v.少なくとも1つの微量保存外膜タンパク質の増加した発現または安定した発現、および
vi.少なくとも1つの外膜タンパク質の安定化させた発現
からなる群から選択される1つまたは複数の改変を含む髄膜炎菌の遺伝子改変菌株を培養する工程、
b)前記a)の培養菌株を使用して発酵槽内の培地に植菌して発酵することによって前記培養物を拡大する工程、
c)前記発酵培養物を不活化する工程、
d)連続フロー型遠心分離によって髄膜炎菌培養細胞を採取し、そして細胞ペーストを回収する工程、
e)前記細胞ペーストからNOMVを単離する工程、および
f)ワクチン投与に適切な緩衝液またはキャリアにNOMVを再懸濁する工程
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2011−521976(P2011−521976A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511892(P2011−511892)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/045818
【国際公開番号】WO2009/158142
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(510314873)
【Fターム(参考)】