説明

高い光線透過を有する可塑化された中間層フィルムを含有する光起電モジュール

本発明は、35%より高いUV透過率を有する、可塑剤含有の、ポリビニルアセタールに基づくフィルムを光起電モジュールの製造のために用いる使用に関する。好ましくは、該フィルムは、85%rF/23℃の周囲雰囲気中で1E11オーム・cmより大きな電気体積抵抗率を有する。該光起電モジュールは、ファサード構成材、屋根の面、サンルームカバー、防音壁、バルコニーまたは手すりの部材として、または窓面の構成要素として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、UV範囲において高い光線透過率を有する、ポリビニルアセタールに基づく可塑剤含有フィルムの使用下での光起電モジュールの製造に関する。
【0002】
技術水準
光起電モジュールは、外部の影響に対して保護するために透明なカバーが備えられた光電性半導体層からなる。光電性半導体層として、単結晶太陽電池、または支持体上の多結晶の薄い半導体層を使用することができる。薄膜太陽モジュールは、基板、例えば透明板、または柔軟性のある支持体フィルム上に、例えば蒸着、気相堆積、スパッタリングまたは湿式堆積によって適用された光電性半導体層からなる。
【0003】
両方の系は、しばしば、ガラス板と、例えばガラスまたはプラスチック製の硬質の裏面のカバープレートとの間で、透明な接着剤を用いて積層される。
【0004】
その透明な接着剤は、光電性半導体層およびその電気配線を完全に取り囲み、UV安定、並びに湿度に対して鈍感であり、且つ、積層工程後、完全に無気泡でなければならない。
【0005】
光起電モジュールのための透明接着剤系として、ポリビニルアセタール、例えば合わせガラス製造から公知のポリビニルブチラール(PVB)に基づく可塑剤含有フィルムがますます使用されている。その太陽電池ユニットは、1つまたはそれより多くのPVBフィルムで覆われ、且つ、これが高められた圧力および高められた温度下で、所望のカバー材料と接合されて積層物になる。
【0006】
原則的に、ポリマー材料、例えばプラスチックおよびラッカー中で、いわゆる遮光剤が、有害なUV光線に対する保護のために広く使用されている。これは、種々の保護機構により、大まかに2つの分類に分けることができる: UV光線を吸収し、そして最終的に熱エネルギーへの変換によって無害にするUV吸収剤、およびUV光線によってポリマー材料中で引き起こされるラジカルの有害な反応を遮断する光安定剤。
【0007】
商業的に最も重要なUV吸収剤は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、およびシアノアクリレート誘導体であり、その際、一般に、ベンゾトリアゾールが最良の長期安定性を有している。本質的に、いわゆるHALS(立体障害アミン)または立体障害アミノエーテル(NOR−HALS)が、光安定剤の群に含まれる。
【0008】
ポリビニルブチラールは、飽和単位から合成されるコポリマーであり、即ち、それはオレフィンまたは芳香族結合を、せいぜい欠陥としてしか含まず、且つ、この理由から、280〜380の波長範囲(UV−A+UV−B)において、特筆すべき吸収も有さない。さらに、PVBの可塑化のために、UV吸収に関して同様のことが当てはまる、主として非芳香族可塑剤が考慮される。それゆえ、比較的高い固有のUV安定性は、フィルムの製造のためのPVBおよび可塑剤からなる混合物から生じる。フィルムが、その上にある鉱物ガラスによってUV光線の特に有害なUV−B成分に対して部分的に保護されている場合、安定性はさらに高められる。
【0009】
それにもかかわらず、自動車用ガラスおよび建築用ガラスに使用するための、市場で慣例的なPVBフィルムは、通常、UV吸収剤、殊にベンゾトリアゾールの誘導体が添加物として施されている。それには2つの理由がある: 1つは、有害なUV−AおよびUV−B光線を、合わせ安全ガラス(VSG)の中央にあるPVBフィルムによって、追加的にフィルター除去することが、VSGの安全特性を上回る機能的な特徴として望ましく、なぜなら、それによって、ガラスの裏にある材料が容易に、強い光に晒されることから、もしくは損傷から保護されるからである。これについての例は、VSG製のショーウインドウガラスの後ろの陳列物、もしくは、自動車内でフロントガラスの下にある計器盤支持体である。もう1つは、PVBが、出発材料のポリビニルアルコールもしくはブチルアルデヒドの品質、および合成および後処理の際のプロセス制御に依存して、UV安定性を損ねる欠陥もしくは不純物を含有することがあるからである。さらに、フィルム配合物に添加された、例えば染料またはフェノール系酸化防止剤は、UV敏感であることがあり、従って、その保護のためにUV吸収剤の使用が有意義である。
【0010】
光起電モジュール内での光電層の封止のために通常、PVBまたはEVAに基づく材料が使用される。製造方法の上記の理由から、これらの封止用フィルムに、同様にUV吸収剤が添加される。これによって、UV光線が全部または部分的に吸収される。これは、たしかに光起電モジュールの光電層系を光線の損傷から保護するのだが、しかし、光電層のために利用できる光線割合が減少される。
【0011】
従って、商業的に封止材として使用されるPVBフィルムは、ベンゾトリアゾール型のUV吸収剤(例えばTinuvin 328)を含有し、且つ、2×2mmの白色ガラスの間の結合物として、280〜380nmの波長範囲内で、EN410に従って測定された0.5%未満のUV透過率を有する。同様に、EVAに基づく封止用フィルムは、その保護のためにUV吸収剤を含有し、従って、UV光線について同様に低い透過値を有する。そのため、波長380nm未満の光線は、通常のPVBフィルムもしくはEVAが使用される際、光電流の発生のために利用できない。
【0012】
課題
本発明の課題は、光起電モジュールのための封止用フィルムについてのUV透過率を高め、光起電モジュールの光電流収率を、構成を実質的に変えずに改善することであった。
【0013】
驚くべきことに、高いUV透過率と、良好な光化学的安定性とを同時に可能にするように、可塑剤含有のポリビニルアセタールフィルムが、光安定性を得ることができることが見いだされた。これによって、光起電モジュールの光電流収率を顕著に高めることができる。
【0014】
発明の説明
従って、本発明の主題は、
a) 透明な前面カバー
b) 1つまたはそれより多くの光電性半導体層
c) 少なくとも1つの、可塑剤含有の、ポリビニルアセタールに基づくフィルム、および
d) 背面カバー
による積層物を含み、その際、可塑剤含有の、ポリビニルアセタールに基づくフィルムは、厚さ2mmの2枚の白色ガラスの間の結合物として、EN410に従って測定される35%より高いUV透過率を有する、
光起電モジュールである。
【0015】
EN410によって、波長範囲280〜380でのUV透過率が測定される。
【0016】
好ましくは、この波長範囲で光線を吸収し、且つ、電気エネルギーに変換できる、光電性半導体層が使用される。とりわけ、これは、いわゆるタンデムセルにおいて、ガリウムヒ素/ゲルマニウム−、ガリウム−インジウム−ヒ素−またはガリウム−インジウム−リン化物−ベースの層によって達成される。
【0017】
特にUV光線に反応し、さらにスペクトルの可視範囲内で透明である、太陽電池もしくはそれを含むモジュールのために本発明によるフィルムを使用することが特に有利である。かかる系は、現在、開発中であり、且つ、今後、スペクトルの有害なUV成分をフィルター除去し、且つ、同時に光電流の発生に利用する、透明ガラスとしての使用が見出されるはずである。
【0018】
本発明によって利用されるフィルムは、厚さ2mmの2枚の白色ガラスの間の結合物として、EN410に従って測定して、好ましくは50%より高い、特に好ましくは70%より高いUV透過率を有する。
【0019】
これは、フィルムc)が、本質的にUV吸収剤を含まない、即ち、その濃度が、その都度、フィルム混合物に対して0.01質量%未満、好ましくは0.001質量%未満、特に好ましくは0質量%である場合に達成され得る。
【0020】
本発明によって使用されるフィルムの充分なUV安定性は、ポリビニルアセタールの製造のために考慮されるポリビニルアルコール(PVA)の選択によって達成され得る。PVAの段階で既に不飽和単位がポリマー鎖中に欠陥として存在するので、これは必然的にそこから生じるポリビニルアセタール中でもまた見られ、且つ、その光安定性もしくはUV透過率を悪化させる。PVAの段階で、不飽和単位は、単離した、または互いに共役、またはカルボニル結合への共役で固定された二重結合の形態で存在することがある。PVA中のこの不飽和単位は、UV分光法によって検出される。
【0021】
非常に高い割合の欠陥は、H2O中の4質量%溶液としてのPVA中の測定の際に、280nmで1近くの吸光度をみちびく。従って、本発明によって使用されるポリビニルアセタールの製造のために、280nmの際、4質量%の水溶液中で0.5より低い、0.3より低い、殊に0.2、および好ましくは0.1の吸光値を有するポリビニルアルコールが使用される。
【0022】
従って、本発明のさらなる主題は、ポリビニルアセタールが、ポリビニルアルコールの酸触媒によるアセタール化によって製造され、且つ、このポリビニルアルコールは4質量%の水溶液中で0.5より低い吸光値を有する、ポリビニルアセタールに基づく可塑剤含有フィルムである。
【0023】
実際には、封止用フィルムのための基礎原料としてのポリビニルアセタールは、たしかに既に最適な条件下で生産され得るが、しかしながら、ポリマー鎖沿い、または端部での、若干の欠陥の存在を完全には防ぐことができていない。それ故、UV吸収剤を使用しないで、ポリビニルアセタールもしくはフィルム混合物に、選択された光安定剤を付加することが有意義であることがある。
【0024】
UV吸収剤をほとんど使用しないこと、および/または特に欠陥の少ないPVBを利用することの代わりに、またはそれに加えて、本発明によって使用されるフィルムは、1つまたはそれより多くの非芳香族光安定剤、殊にHALS型の立体障害(非芳香族)アミンおよび/または立体障害(非芳香族)アミノエーテル(NOR−HALS)が施されていてよい。非芳香族生成物に限定することによって、280〜380nmのUV範囲におけるフィルムの透過が不必要に悪化しないことが確実になる。
【0025】
本発明によって使用されるフィルムは、好ましくは0.005〜1質量%、特に好ましくは0.01〜0.5質量%、殊に0.05〜0.3質量%および最も好ましくは0.10〜0.25質量%の非芳香族光安定剤、例えばHALS型の立体障害アミンまたはNOR−HALS型を含有する。
【0026】
従って、本発明のさらなる主題は、本質的に芳香族UV吸収剤を含有せず、且つ、0.005ないし1質量%の立体障害アミン(HALS)および/または立体障害アミノエーテル(NOR−HALS)を含有する、ポリビニルアセタールに基づく可塑剤含有フィルムである。
【0027】
特に適したアミンは、一般式I、IIおよびまたはIIIの立体障害アミン
【化1】

[式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11=非芳香族置換基、例えばH、C1〜C20−アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルオキシアルキル、それぞれ非置換であるか、またはアルデヒド基、ケト基またはエポキシド基によって置換されている、
R12=直鎖状化合物(glatte Verbindung)、C1〜C20−アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルオキシアルキル、それぞれ非置換であるか、またはアルデヒド基、ケト基、またはエポキシド基によって置換されている
n=2〜4
m=1〜10]
である。
【0028】
この種の化合物は、例えばCiba Specialities社の製品Tinuvin 123 (NOR−HALS)、Tinuvin 144、Tinuvin 622、Tinuvin 770により市販である。特によく適しているのは、例えば旭電化社のADK Stab LA−57、LA−52またはLA−62、またはBASF AGのUVINUL 4050Hである。Sanduvor PR−31またはChimasorb 119は、不飽和分子成分がUV範囲において高い吸収をみちびくので、あまり適していない(Sanduvor PR−31:アニソール残基; Chimasorb 119:トリアジン環)。
【0029】
ポリビニルアセタールの製造のために、ポリビニルアルコールを水に溶解させ、且つアルデヒド、例えばブチルアルデヒド、ホルムアルデヒドまたはプロピオンアルデヒドを用いて、酸触媒を添加しながらアセタール化する。生じたポリビニルアセタールを分離し、随意にアルカリ性に調節された水性媒体中で懸濁させて中性に洗浄し、その後で新たに中性に洗浄し、そして乾燥させる。
【0030】
アセタール化のために使用される酸を、反応が行われた後に再び中和しなければならない。アルカリ金属イオンのわずかな含有率は、とりわけ、ポリビニルアセタールの合成の際に、通常では触媒の中和のために利用される水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムもしくは炭酸塩を使用しないことによって、またはアセタール化の際に得られたポリビニルアセタールの入念な洗浄によって、達成できる。塩基のNaOHまたはKOHの代わりに、アセタール化工程からの触媒酸を、例えば二酸化炭素またはエチレンオキシドの吹き込みによって中和できる。
【0031】
ポリビニルアセタールのポリビニルアルコール含有率は、アセタール化の際に使用されるアルデヒドの量によって調節できる。
【0032】
アセタール化を、2〜10個の炭素原子を有する他のまたは複数のアルデヒド(例えばバレルアルデヒド)を用いて実施することも可能である。
【0033】
可塑剤含有のポリビニルアセタールに基づくフィルムは、好ましくは架橋されていないポリビニルブチラール(PVB)を含有し、これはブチルアルデヒドを用いたポリビニルアルコールのアセタール化によって得られる。
【0034】
架橋ポリビニルアセタール、殊に架橋ポリビニルブチラール(PVB)の使用も同様に可能である。適した架橋ポリビニルアセタールは、例えばEP1527107号B1およびWO2004/063231号A1(カルボキシル基含有のポリビニルアセタールの熱による自己架橋)、EP1606325号A1(ポリアルデヒドで架橋されたポリビニルアセタール)、およびWO03/020776号A1(グリオキシル酸で架橋されたポリビニルアセタール)に記載されている。これらの特許出願の開示内容について、参照をもってその全文が本願に開示されるものとする。
【0035】
ポリビニルアルコールとして、本発明の枠内では、加水分解ビニルアセタート/エチレン−コポリマーによるターポリマーも使用できる。これらの化合物は、一般に98%より多くまでが加水分解され、且つエチレンベースの単位を1ないし10質量%含有する(例えばKuraray Europe GmbHの「Exceval」型)。
【0036】
ポリビニルアルコールとして、本発明の枠内では、さらに、酢酸ビニルと少なくとも1つのさらなるエチレン性不飽和モノマーとの加水分解されたコポリマーも使用できる。
【0037】
該ポリビニルアルコールを、本発明の枠内では、純粋なポリビニルアルコール、または種々の重合度または加水分解度を有するポリビニルアルコールの混合物として使用できる。
【0038】
ポリビニルアセタールは、アセタール単位の他に、酢酸ビニルおよびビニルアルコールから生じる単位をなお含有する。本発明によって使用されるポリビニルアセタールは、好ましくは22質量%、20質量%または18質量%より低く、16質量%または15質量%より低く、殊に14質量%より低いポリビニルアルコールの割合を有する。12質量%のポリビニルアルコールの割合を下回るべきではない。
【0039】
本発明によって使用されるポリビニルアセタールのポリビニルアセタート含有率は、好ましくは5質量%未満、3質量%未満、または1質量%未満、特に好ましくは0.75質量%未満、さらに特に好ましくは0.5質量%未満、殊に0.25質量%未満である。
【0040】
ポリビニルアルコールの割合および残留アセタート含有率から、アセタール化度を計算によって算出できる。
【0041】
好ましくは、フィルムは、最大で40質量%、35質量%、32質量%、30質量%、28質量%、26質量%、24質量%、22質量%、20質量%、18質量%、16質量%の可塑剤含有率を有し、その際、フィルムの加工性の理由から、15質量%の可塑剤含有率を下回るべきではない(それぞれフィルム配合物全体に対して)。本発明によるフィルムもしくは光起電モジュールは、1つまたはそれより多くの可塑剤を含有できる。
【0042】
本発明によって使用されるフィルムのために原則的に適した可塑剤は、以下の群から選択される1つまたはそれより多くの化合物である:
多価の脂肪族または芳香族の酸のエステル、例えばジアルキルアジペート、例えばジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ヘプチルアジペートとノニルアジペートとの混合物、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート並びにアジピン酸と脂環式またはエーテル結合を含有するエステルアルコールとのエステル、ジアルキルセバケート、例えばジブチルセバケート並びにセバシン酸と脂環式またはエーテル結合を含有するエステルアルコールとのエステル、フタル酸のエステル、例えばブチルベンジルフタレートまたはビス−2−ブトキシエチルフタレート。
【0043】
多価の脂肪族または芳香族のアルコールのエステルまたはエーテル、または1つまたはそれより多くの非分枝または分枝鎖の脂肪族または芳香族置換基を有するオリゴエーテルグリコール、例えばジ−、トリ−またはテトラグリコールと直鎖または分枝鎖の脂肪族または脂環式カルボン酸とのエステル;後者の群についての例としては、以下を挙げることができる:
ジエチレングリコール−ビス−(2−エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール−ビス−(2−エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール−ビス−(2−エチルブタノエート)、テトラエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート、トリエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート、トリエチレングリコール−ビス−n−ヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジメチルエーテルおよび/またはジプロピレングリコールベンゾエート。
【0044】
脂肪族または芳香族エステルアルコールとのホスフェート、例えばトリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOF)、トリエチルホスフェート、ジフェニル−2−エチルヘキシルホスフェート、および/またはトリクレシルホスフェート。
【0045】
クエン酸、コハク酸および/またはフマル酸のエステル。
【0046】
本発明によって使用されるフィルムのための可塑剤としてよく適しているのは、以下の群から選択される1つまたはそれより多くの化合物である: ジ−2−エチルヘキシルセバケート(DOS)、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジヘキシルアジペート(DHA)、ジブチルセバケート(DBS)、トリエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート(3G7)、テトラエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート(4G7)、トリエチレングリコール−ビス−2−エチルヘキサノエート(3GOもしくは3G8)、テトラエチレングリコール−ビス−n−2−エチルヘキサノエート(4GOまたは4G8)、ジ−2−ブトキシエチル−アジペート(DBEA)、ジ−2−ブトキシエトキシエチルアジペート(DBEEA)、ジ−2−ブトキシエチルセバケート(DBES)、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ−イソノニルフタレート(DINP) トリエチレングリコール−ビス−イソノナノエート、トリエチレングリコール−ビス−2−プロピルヘキサノエート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOF)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)およびジプロピレングリコールベンゾエート。
【0047】
本発明により使用されるフィルムのための可塑剤としてさらに特に適しているのは、式100×O/(C+H)によって表される極性が9.4以下である可塑剤であり、その際、O、CおよびHは、それぞれの分子中の酸素原子、炭素原子および水素原子の数を表す。以下の表1は、本発明によって使用できる可塑剤および式100×O/(C+H)によるその極性値を示す。
【0048】
【表1】

【0049】
好ましくは、本発明によって使用されるフィルムc)は、10ppmより多く、好ましくは20ppmより多く、好ましくは30ppmより多く、好ましくは50ppmより多く、好ましくは75ppmより多く、好ましくは100ppmより多く、好ましくは125ppmより多く、特に好ましくは150ppmより多くの、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、亜鉛およびアルミニウムの群から選択されるイオンを含有する。しかし、望ましくない曇りを回避するために、他方では、上記の多価の金属は1000ppm以下で含有されるべきである。
【0050】
同時に、可塑剤含有の、ポリビニルアセタールに基づくフィルム中でのアルカリ金属イオン(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)の含有率は、可能な限り低く調節されるべきである。好ましくは、該フィルムは、150ppmより低い、好ましくは100ppmより低い、好ましくは75ppmより低い、好ましくは50ppmより低い、好ましくは25ppmより低い、好ましくは10ppmより低い、特に好ましくは5ppmより低いアルカリ金属イオンを含有する。
【0051】
それぞれのアルカリ土類金属イオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンもしくはアルカリ金属イオンは、一価または多価の無機酸または一価または多価の有機酸の塩の形態でフィルム中に存在する。対イオンについての例は、例えば有機カルボン酸の塩、例えばギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、安息香酸塩、2−エチルヘキサノエート等であり、その際、好ましくは、10個より少ないC原子、好ましくは8個より少ない、好ましくは6個より少ない、好ましくは4個より少ない、特に好ましくは3個より少ないC原子を有するカルボン酸が使用される。無機の対イオンについての例は、塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンである。
【0052】
好ましくは、本発明によって使用されるフィルムは、23℃で85%rFの周囲湿度で、少なくとも1E+11オーム・cm、好ましくは少なくとも5E+11オーム・cm、好ましくは1E+12オーム・cm、好ましくは5E+12オーム・cm、好ましくは1E+13、好ましくは5E+13オーム・cm、好ましくは1E+14オーム・cmの比抵抗を有する。
【0053】
さらに、フィルムの含水率に依存する可能性のあるイオン移動度ひいては比抵抗は、ケイ酸、殊に熱分解法SiO2の添加によって影響されることがある。好ましくは、可塑剤含有の、ポリビニルアセタールに基づくフィルムは、0.001ないし15質量%、好ましくは0.01ないし10質量%、殊に2ないし5質量%のSiO2を含有する。
【0054】
さらに、本発明によるフィルムは、追加的に、通常の添加物、例えば酸化安定剤、染料、顔料並びに付着防止剤を、これらがUV透過率に悪影響しない限りは、含有してよい。
【0055】
ポリビニルアセタールに基づくフィルムの原理的な製造および組成は、例えばEP185863号B1、EP1118258号B1、WO02/102591号A1、EP1118258号B1またはEP387148号B1内に記載されている。
【0056】
光起電モジュールの製造を、透明な前面カバーa)と、光電性半導体層b)と、背面カバーd)との積層を、少なくとも1つの、可塑剤含有の、ポリビニルアセタールに基づくフィルムc)を用いて、該フィルムを溶融させながら行うことができ、従って、気泡および条痕のない、光電性半導体層の閉じ込めが得られる。
【0057】
本発明による光起電モジュールのこの変法において、光電性半導体層b)を2つのフィルムc)の間に埋め込み、且つ、透明な前面カバーa)並びに背面カバーd)を用いて貼り合わせることができる。
【0058】
殊に、薄膜太陽モジュールの場合、光電性半導体層は、支持体上に直接適用される(例えば蒸着、気相堆積、スパッタリングまたは湿式堆積によって)。この場合、封止は不可能である。従って、かかる本発明によるモジュールにおいて、1またはそれより多くの光電性半導体層b)を、透明な前面カバーa)または背面カバーd)に適用し、且つ、少なくとも1つの可塑剤含有の、ポリビニルアセタールに基づくフィルムc)によって互いに貼り合わせる。
【0059】
一般に、薄膜モジュールの場合、光電性半導体層を、支持体上に全面的に、即ち支持体の端部まで適用する。引き続き、端部で光電性半導体層の一部が再び除去されるので、絶縁のための、半導体のない端部範囲が残される(いわゆる、端部の層除去)。本発明によって使用されるフィルムの高い抵抗値によって、好ましくは3cm未満、さらに好ましくは2cm未満、殊に1cm未満を有する、この端部領域を、非常に狭くすることができる。
【0060】
本発明によって使用されるフィルムは、積層工程の間に、光電性半導体層もしくはその電気接続部に存在する間隙を塞ぐ。
【0061】
可塑剤含有のポリビニルアセタールに基づくフィルムの厚さは、通常、約0.38、0.51、0.76、1.14、1.52または2.28mmである。
【0062】
透明な前面カバーa)は、一般にガラスまたはPMMAからなる。本発明による光起電モジュールの背面カバーd)は、ガラス、プラスチックまたは金属またはそれらの結合物からなってよく、その際、その支持体の少なくとも1つは透明であってよい。1つまたは両方のカバーを、合わせガラスとして(即ち、少なくとも2つのガラス板と少なくとも1つのPVBフィルムとの積層物として)またはガススペースを有する絶縁ガラスとして構成することが、同様に可能である。もちろん、これらの手法の組合せも可能である。
【0063】
該モジュール内で使用される光電性半導体層は、特別な性質を有さなくてもよい。単結晶、多結晶またはアモルファスの系を使用できる。
【0064】
そのように得られた層状体の積層のために、予備結合物を予め製造して、およびそれをしないで、当業者に公知の方法を使用できる。
【0065】
いわゆるオートクレーブ工程は、約10ないし15barの高められた圧力および130ないし145℃の温度で、約2時間にわたって実施される。例えばEP1235683号B1による真空バッグ法または真空リング法は、約200mbar且つ130ないし145℃で作業される。
【0066】
有利には、本発明による光起電モジュールの製造のために、真空貼合わせ機が使用される。これは、加熱可能且つ真空引き可能な部屋からなり、そこで合わせガラスを30〜60分内で積層できる。0.01〜300mbarの減圧および100〜200℃、殊に130〜160℃の温度が、実際に実証されている。
【0067】
選択的に、上記のように統合された層状体を、少なくとも1つのロール対の間で60〜150℃の温度でプレスして、本発明によるモジュールにできる。この種の装置は、合わせガラスの製造のために公知であり、且つ、通常、2つのプレス機構を有する装置の際、第一のプレス機構の前もしくは後に少なくとも1つの加熱トンネルを有する。
【0068】
さらに、本発明の主題は、2mm厚の2枚の白色ガラスの間でEN410に従って測定して35%より高いUV透過率を有する、可塑剤含有の、ポリビニルアセタールに基づくフィルムの、光起電モジュールの製造のための使用である。
【0069】
本発明による光起電モジュールを、ファサード構成材、屋根の面、サンルームカバー、防音壁、バルコニーまたは手すり部材として、または窓面の構成要素として使用できる。
【0070】
測定方法:
該フィルムの比体積抵抗の測定を、DIN IEC 60093によって、定義された温度および周囲湿度(23℃且つ85%rLF)で、該フィルムをこの条件で少なくとも24時間、コンディショニングした後に行う。測定を実施するために、Fetronic GmbH社の型式302 132の平板電極、並びにAmprobe社のISO−Digi 5kVの抵抗測定装置を使用した。試験電圧は2.5kVであり、試験電圧の印加後から測定値の検出までの待機時間は60秒であった。測定電極の平板とフィルムとの間の十分な接触が保証されるように、その表面粗さRzは、DIN EN ISO 4287による測定の際に10mmより大きくなるべきではなく、即ち、随意に、PVBフィルムの元の表面を、抵抗測定前に、熱的改変によって平坦にしなければならない。
【0071】
ポリビニルアセタールのポリビニルアルコール含有率およびポリビニルアルコールアセタート含有率は、ASTM D 1396−92によって測定された。金属イオン含有率の分析は、原子吸光分光法(AAS)によって行われた。フィルムの含水率もしくは湿分含有率はカール・フィッシャー法を用いて測定される。
【0072】
アセタール化において使用されるポリビニルアルコールのUV吸収率の測定のために、これを、UV/VIS−分光計、例えばPerkin−Elmer Lambda 910内で、4%の水溶液として、1cmの層厚で、波長280nmで測定する。その際、測定値は、PVAの乾燥物質含有率に関係する。
【0073】
実施例
以下の表に示される組成物の混合物を有する厚さ0.76mmのフィルムを製造し、そして2mm厚の2枚の白色ガラス(Optiwhite)の間の積層物として、その光透過率(380〜780nm)およびUV透過率(280〜380nm)について、EN410によって調査した。電気体積抵抗率を、23℃/85%の相対湿度で、フィルム試料を充分にコンディショニングした後、別途上述の通り、測定した。UV損傷に基づく気泡もしくは層剥離の発生を、大きさ10×10cm(2×2mm Optiwhiteガラス)の積層物について、照射室内での20週間にわたる保管後、EN12543によって測定し、その際、室内では、EN12543に記載される条件とは相違し、約80℃の試験温度が支配的であった。5%を上回る気泡を有する平面部分を有するフィルムは、使用不可能である。
【0074】
本発明によるフィルムが、高いUV透過率を、照射試験における良好な安定性と同時に有することが示される。この種のフィルムは、光起電力応用のために適しており、なぜなら、それが280ないし380nmの範囲での光電流収率を、殊に青色敏感の太陽電池の使用の際、約1%高めるからである。
【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
表内の全てのデータは、フィルム混合物のPVB+可塑剤の合計に対する質量%である。意味は以下の通りである:
3G8=トリエチレングリコール−ビス−2−エチルヘキサノエート
DINCH 1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル
PVB 所定のPVA含有率を有するポリビニルブチラール
(1) 4質量%の水溶液の280nmでの吸光値
(2) ベンゾトリアゾール型(Ciba Specialities)のUV吸収剤
(3) 不飽和部分のないHALS (Ciba Specialities)
(4) 不飽和部分のないHALS (旭電化)
(5) 不飽和部分を有するHALS (Clariant)
(6) 2mm厚の2枚のOptiwhite (Pilkington)の間で積層された0.76mmのフィルムについて測定
(7) 積層物の端から1cmより大きい距離で、EN12543による(80℃)照射試験後に発生した気泡および/または層剥離の平面部分
(8) DIN IEC 60093によって、23℃/85%rLFで、試験電圧2500Vを用いて、[オーム・cm]で測定

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 透明な前面カバー
b) 1つまたはそれより多くの光電性半導体層
c) 少なくとも1つの、可塑剤含有の、ポリビニルアセタールに基づくフィルム、および
d) 背面カバー
による積層物を含む光起電モジュールにおいて、該可塑剤含有の、ポリビニルアセタールに基づくフィルムc)が、2mm厚の2枚の白色ガラスの間でEN410によって測定して35%より高いUV透過率を有することを特徴とする、光起電モジュール。
【請求項2】
ポリビニルアセタールが、4質量%の水溶液において、280nmで0.5より低い吸光度を有するポリビニルアルコールのアセタール化によって製造されることを特徴とする、請求項1に記載の光起電モジュール。
【請求項3】
ポリビニルアセタールに基づくフィルムc)が、本質的にUV吸収剤を含まないことを特徴とする、請求項1または2に記載の光起電モジュール。
【請求項4】
ポリビニルアセタールに基づくフィルムc)が、0.001ないし5質量%の非芳香族光安定剤を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の光起電モジュール。
【請求項5】
非芳香族光安定剤として、立体障害アミン(HALS)または立体障害アミノエーテル(NOR−HALS)を使用することを特徴とする、請求項4に記載の光起電モジュール。
【請求項6】
可塑剤含有の、ポリビニルアセタールに基づくフィルムが、アルカリ土類金属、亜鉛およびアルミニウムの群から選択される、10ppmより多くの金属イオン、および150ppmより少ないアルカリ金属イオンを有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の光起電モジュール。
【請求項7】
可塑剤含有の、ポリビニルアセタールに基づくフィルムc)が、85%rF/23℃の周囲雰囲気中で少なくとも1E11オーム・cmの電気体積抵抗率を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の光起電モジュール。
【請求項8】
本質的に芳香族UV吸収剤を含有せず、且つ0.005ないし1質量%の立体障害アミン(HALS)および/または立体障害アミノエーテル(NOR−HALS)を、非芳香族遮光剤として含有することを特徴とする、ポリビニルアセタールに基づく可塑剤含有フィルム。
【請求項9】
ポリビニルアセタールが、ポリビニルアルコールの酸触媒によるアセタール化によって製造され、その際、該ポリビニルアルコールが4質量%の水溶液において0.5より小さい吸光値を有することを特徴とする、ポリビニルアセタールに基づく可塑剤含有フィルム。

【公表番号】特表2012−521083(P2012−521083A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500201(P2012−500201)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053250
【国際公開番号】WO2010/106000
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(507052393)クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Brueningstrasse 50, D−65926 Frankfurt , Germany
【Fターム(参考)】