説明

高い比表面積を有する炭酸カルシウムの被覆粒子

本発明は、少なくとも1種のコーティング剤で少なくとも部分的にコーティングされ、且つコーティング前に50m2g-1よりも大きい比表面積を有する、アルカリ土類金属炭酸塩の粒子に関する。好ましくは、該アルカリ土類金属がカルシウムであり、且つ該コーティング剤が、有機スルホン酸、アルキル硫酸、脂肪酸及びそれらの塩からなる群から選択される化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のコーティング剤で少なくとも部分的にコーティングされており、且つコーティングの前に50m2g-1よりも大きい比表面積を有するアルカリ土類金属炭酸塩の被覆粒子、好ましくはCaCO3の被覆粒子に関する。本発明は、該粒子の製造及びそれらの使用にも関する。
【0002】
炭酸カルシウムは、塗料、ゴム、紙、薬剤、プラスチックなどの充填材料として用いられる。該炭酸カルシウムは天然沈殿物から得られ、その後微細に粉砕されるか、又は化学沈殿及び該沈殿物の乾燥によって得られる。ポリマーマトリックスにおける充填剤の分散性は、該充填剤の粒子サイズに依存して広く変化し、粒子サイズを減少させることで特徴的に減少することも知られている;従って、ポリマーマトリックスにおいて非常に微細な粒子を用いるためには、ミキサーの混合時間又は剪断効果を拡大する必要がある。これは、熱感受性ポリマーを用いるときには、充填剤含有量による機械的特性の任意の向上がポリマーの付随する熱分解によって消失するために逆効果となる。
【0003】
本質的に親油性の材料、例えば典型的な天然及び合成ポリマーに対する炭酸カルシウムの親和力の不足を克服するための、種々の解決法が提案されている。充填剤粒子をポリマーの溶媒溶液で処理し、続いて該処理された粒子を乾燥させることによって、それらの表面を改良することが知られている;他の公知の方法は、該粒子状充填剤の前処理とそれに続くそれらの重合を伴い、第三のタイプの方法は、親油性化合物、例えば脂肪酸の充填剤粒子の表面上における凝固を特徴とする。最後に、さらに別のカテゴリーの方法は、石灰質充填剤の処理を特徴とし、炭化水素及びブラスチック材料を用いて、それらをアルキルアリールスルホン酸又はその塩(そのカルシウム塩は本質的に水に不溶性)と、該粒子又は粒状物の全表面を覆う単分子層又はコーティングを形成するのに少なくとも必要な量で接触させることにより、その湿潤性を改善させる(仏国特許出願公開第2138300号明細書に記載)。この出版物は、特に0.5〜3m2/g(BET方法)のオーダーの低い比表面積を有する炭酸カルシウム粉末に関する。仏国特許出願公開第2480771号明細書は、脂肪酸化合物と共に、有機スルホン酸又はその塩による炭酸カルシウム粉末の処理を開示している。最初の炭酸カルシウムは、BET方法で測定すると50m2/g〜0.2m2/gの比表面積を有する。
【0004】
炭酸カルシウムは、プラスチゾルにおける充填材料としても用いることができる。プラスチゾルはポリマーの分散系であり、しばしば高沸点を有する有機溶媒にポリ塩化ビニル(PVC)を含み、通常は軟化剤及び安定化剤を含有する。プラスチゾルは、例えば金属及び他の基体をコーティングするため、例えば自動車の底部密閉剤、人工皮革を調製するためなどに有用である。ポリ塩化ビニルプラスチゾルは、密閉剤組成物としての使用にいくつかの利点:強度、伸び及び硬度の良好なバランス、最小量からゼロの揮発性有機成分、及び低コストを提供する。
【0005】
プラスチゾルがスプレーガンを用いる塗布を意図されるとき、その基体に固着してその上に滑らかなフィルムを形成するべきである。重力による該フィルムの流れ及び任意の運動は、該プラスチゾルが液状又はペースト状である限り、すなわち硬化される前に抑制されるべきである。この種の固着は、該プラスチゾルの流体力学的特性を改良することによって達成され得る。
しかし、先行技術から知られているプラスチゾルは、全ての点を満たさない。
スプレーガンを用いて基体に塗布されるとき、良好なプラスチゾルは、剪断力が低いときは高い粘度、剪断力が高いときは低い粘度を示すべきである。さらに、高い降伏応力及び良好なチキソトロープ性を特徴とするべきである。
【0006】
従って、本発明の目的は、先行技術の充填剤材料と比べて利点を有する充填剤材料を提供することである。特に、該充填剤材料は、スプレーガンによって塗布され得るプラスチゾルに好適であるべきであり、すなわち前記充填剤材料を含有するプラスチゾルは、高い降伏応力を有するべきであり、剪断力が低いときは高い粘度、剪断力が高いときは低い粘度を示すべきである。さらに、これらの特性は、一定時間の間に一定であるべきである。
【0007】
驚くべきことに、従来の炭酸カルシウム粒子を含有するプラスチゾルと比較して、プラスチゾルの降伏応力は、コーティング前に50m2g-1よりも多い比表面積を有し且つ少なくとも1種のコーティング剤で少なくとも部分的にコーティングされているアルカリ土類金属炭酸塩の粒子を含有するときに、5〜10の係数(又はそれ以上)で増加し得ることが見出された。
本発明の粒子を含有するプラスチゾルは、優れた流体力学的特性、特に高い降伏応力値、良好な粘度及びチキソトロピーを示す。
【0008】
本発明の粒子は、コーティング前に50m2g-1よりも多い比表面積を有し、好ましくはコーティング前に55m2/g以上、さらに好ましくは60m2/g以上、及び最も好ましくは65m2/g以上の比表面積を有する。コーティング前に70m2/g以上、特に75m2/g以上、及びさらに詳細には80m2/g以上の粒子の比表面積の値が、特に都合がよい。該粒子は、通常はコーティング前に300m2g-1以下、さらに好ましくは180m2g-1以下、及び最も好ましくは105m2g-1以下の比表面積を有する。
【0009】
沈降炭酸カルシウムのそのような粒子は先行技術で知られており、クエン酸、ポリアクリル酸、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム及びポリアルパラギン酸などの試薬の存在下で、Ca(OH)2の懸濁液から炭酸カルシウム粒子を沈殿させることによって調製され得る。これに関して、例えばWO 03/004414を参照することができ、その開示をここに組み込む。
【0010】
本明細書では、コーティング前の沈降炭酸カルシウム粒子の比表面積を、BET方法(Brunnauer-Emmett-Teller(BET)による窒素の吸着等温線)によって決定される表面積として定義する。BET方法では、粉末の表面はN2-等温線から計算することができ、液体窒素の沸点で観察される。詳細には、ISO 9277 norm(1995-05-15)が参照され得る。
本発明の好ましい実施態様では、アルカリ土類金属炭酸塩の粒子が、炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウムであり、炭酸カルシウムが特に好ましい。
本発明の粒子は、コーティング剤でコーティングされている。いくつかのコーティング剤がこの目的に好適である。
【0011】
好ましくは、該コーティング剤は、少なくとも有機スルホン酸;アルキル硫酸;脂肪酸、それがヒドロキシル基で置換されていてもよい(すなわち、ヒドロキシ脂肪酸);及びそれらの塩からなる群から選択される化合物を含む。
さらに好ましくは、該コーティング剤は、少なくとも有機スルホン酸;アルキル硫酸;ヒドロキシ脂肪酸及びそれらの塩及び脂肪酸からなる群から選択される化合物を含む。
さらに好ましくは、該コーティング剤は、少なくとも有機スルホン酸、アルキル硫酸、ヒドロキシ脂肪酸及びそれらの塩からなる群から選択される化合物を含む。
最も好ましくは、該コーティング剤は、少なくとも有機スルホン酸;アルキル硫酸及びそれらの塩からなる群から選択される化合物を含む。
【0012】
本明細書では、“有機スルホン酸”という用語は、少なくとも1つの基-SO3H又はその塩、及び少なくとも1つの炭素原子を有する任意の化合物を含む。従って、有機スルホン酸はさらなる官能基、例えばエステルを含み得る。特に、有機スルホン酸は、ジオクチルスルホサクシネートなどのアルキルスルホサクシネート及びそのナトリウム塩を含む。
本明細書では、“アルキル”という用語は、特に明記しない限り、好ましくは1〜30個、さらに好ましくは1〜18個、最も好ましくは1〜12個、及び特に1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル鎖、例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-ヘプチル、i-ヘプチル、n-オクチル、i-オクチル、n-ノニル、i-ノニル、n-デシル、i-デシル、n-ウンデシル、i-ウンデシル、n-ドデシル、i-ドデシルなどを意味する。
【0013】
本発明の好ましい実施態様では、該コーティング剤は、少なくとも任意にヒドロキシル基で置換されている脂肪酸を含む。好適な脂肪酸は、好ましくは8〜22個、さらに好ましくは12〜18個、及び特に16〜18個の炭素原子を有する直鎖又は分枝の脂肪族カルボン酸、及びそれらの塩である。該脂肪酸の脂肪族鎖は、飽和していても不飽和でもよい。飽和脂肪族脂肪酸が好ましい。好ましくは、該コーティング剤はステアリン酸又はその塩を含む。ステアリン酸がさらに好ましい。該コーティング剤がヒドロキシ脂肪酸又はその塩を含むときは、ヒドロキシステアリン酸が好ましい。最も好ましくは、該ステアリン酸が12位にヒドロキシル基を有する(CH3-(CH2)4-CH2-CHOH-CH2-(CH2)8-CH2-COOH)。
【0014】
有利には、コーティング前に50m2g-1よりも多い比表面積を有する沈降炭酸カルシウム粒子が、脂肪酸又はヒドロキシ脂肪酸自体か、又はそれらのアルカリ金属又はアンモニウムの塩のいずれかで直接処理される。通常は、取り扱いを容易にし且つ最終生成物の均一性を保証するために、脂肪酸又はヒドロキシ脂肪酸の塩の水溶液又は懸濁液が、本発明の表面処理を行うための方法として用いられる。
本発明の別の好ましい実施態様では、該コーティング剤が少なくとも硫黄有機化合物を含む。好ましくは、該コーティング剤が、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルスルホサクシネート、アルキル硫酸及びそれらの塩からなる群から選択される化合物を含む。
【0015】
本明細書では、“アリール”という用語は、任意にハロゲンで置換されている6〜10個の炭素原子を含む芳香族単環式又は二環式炭化水素、例えばフェニル及びナフチルを意味する。
本明細書では、“アルキルアリール”という用語は、上記の“アリール”残基に共有結合した上記の“アルキル”残基、例えば-CH2C6H5、-CH2CH2C6H5、-CH2CH2CH2C6H5などを意味する。
【0016】
好ましい実施態様では、コーティング剤が、一般式(I-A)又は(I-B)で表される化合物を含み、
【化1】

式中、
R1、R7、R9及びR10は、独立に単結合、-O-、-C1-C18-アルキレン-又は-C2-C18-アルケニレン-(式中、アルキレン-又はアルケニレン-鎖では、任意に1、2又は3つの-CH2-基が-O-に置き換えられ得る)であり;
R2、R3、R4、R5及びR6は、独立に-H、-C1-C18-アルキル(式中、アルキル-鎖では、任意に1、2又は3つの-CH2-基が-O-に置き換えられ得る)、-OH、-F、-Cl、CN、-CO2H、-CO-C1-C6-アルキル、-CO2-C1-C6-アルキル、-O-CO-C1-C6-アルキル、-NO2、NH2、NHC1C6-アルキル又は-N(C1-C6-アルキル)2であり;
R8は-H又は-C1-C6-アルキルであり;及び
R11及びR12は、独立に-H、-C1-C18-アルキル(式中、アルキル-鎖では、任意に1、2又は3つの-CH2-基が-O-に置き換えられ得る)、-NH2、NHC1-C6アルキル又は-N(C1-C6-アルキル)2である。
【0017】
本明細書では、“アルキレン”という用語は、二価の直鎖又は分枝アルキレン鎖、例えば-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、CH2CH2CH2CH2-、-CH(CH3)-、-CH2CH(CH3)-、-CH2CH2CH(CH3)-、CH2CH(CH3)CH2-などを意味する。
本明細書では、“アルケニレン”という用語は、二価の直鎖又は分枝アルケニレン鎖、例えば-CH=CH-、-CH2CH=CH-、CH2CH2CH=CH-、-CH=C(CH3)-、-CH2CH=C(CH3)-、-CH=C(CH3)CH2-などを意味する。
【0018】
好ましくは、一般式(I-A)又は(I-B)で表される化合物において、
R1、R7、R9及びR10が、独立に単結合又は-C1-C6-アルキレン-(式中、アルキレン-鎖では、任意に1又は2つの-CH2-基が-O-で置き換えられ得る)であり;
R2、R3、R4、R5及びR6が、独立に-H又は-C1-C18-アルキル(式中、アルキル-鎖では、任意に1、2又は3つの-CH2-基が-O-で置き換えられ得る)であり;
R8が-H又は-C1-C6-アルキルであり;及び
R11及びR12が、独立に-C1-C12-アルキル(式中、アルキル-鎖では、任意に1、2又は3つの-CH2-基が-O-で置き換えられ得る)である。
【0019】
さらに好ましくは、一般式(I-A)又は(I-B)で表される化合物において、
R1及びR7が単結合であり;
R2、R3、R5及びR6が-Hであり;
R4が-H又は-C1-C6-アルキルであり;
R8が-Hであり;
R9及びR10が独立に単結合又は-CH2-であり;及び
R11及びR12が独立に-C1-C12-アルコキシである。
【0020】
本明細書では、“アルコキシ”という用語は、酸素原子に共有結合している上記の“アルキル”残基、例えば-OCH3、OCH2CH3などを意味する。
最も好ましくは、該コーティング剤が、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ジオクチルスルホサクシネート及びそれらの塩からなる群から選択される1種以上の化合物を含む。
【0021】
本発明の発明者らは、該コーティング剤が、式(I-A)の化合物(式中、R1は単結合であり;R2、R3、R5及びR6は-Hであり;及びR4は-H又は-C1-C10-アルキル、好ましくは-H又はC1-C6-アルキルである)を含むときに、優れた特性を示すコーティングされた粒子が、コーティング前に50m2g-1以下の比表面積を有する沈降炭酸カルシウムでも得られ得ることも見出した。好ましくは、該コーティング剤が、ベンゼンスルホン酸又はトルエンスルホン酸を含む。この実施態様では、炭酸カルシウム粒子の比表面積が、好ましくはコーティング前に25〜50m2g-1、さらに好ましくは30〜50m2g-1、最も好ましくは35〜50m2g-1及び特に40〜50m2g-1の範囲内にある。それとは別に、比表面積は、コーティング前に50m2g-1よりも多く、さらに好ましくはコーティング前に55m2/g以上、さらに好ましくは60m2/g以上、及び最も好ましくは65m2/g以上でもあり得る。コーティング前に70m2/g以上、特に75m2/g以上、及びさらに詳細には80m2/g以上の粒子の比表面積の値が、上記のように特に都合がよい。
【0022】
好ましくは、本発明の粒子が、0.1〜30nmの範囲内の平均一次粒子サイズを有する。該一次粒子サイズは、コーティングされた粒子、及び実質的に凝集体を形成しない条件に関する。一次粒子サイズ(dP)は、NFX 11601 (1974) / 11602 NFX (1977)に記載の方法によって決定され得る。さらに詳細には、一次粒子の平均サイズは、Lea及びNurseの方法(Standard NFX 11-601, 1974)によって測定される。dP値は、全ての粒子が球状、非多孔性及び等しい直径であるという前提によってなされ、且つ粒子間の接触表面を無視することによるLea及びNurseの方法から生じるマス表面積(massic area)(SM)から得られる。dP及びSM間の関係は以下である:
dP = 6/(ρSM)
式中、ρは炭酸カルシウムの比質量である。
さらに好ましくは、平均一次粒子サイズは、1〜30nmの範囲内である。
【0023】
本発明はまた、上記のコーティングされた粒子及びポリマーを含む組成物に関する。好ましくは、該ポリマーはポリ塩化ビニルを含む。好ましい実施態様では、該ポリマーは、5,000〜500,000gmol-1、さらに好ましくは10,000〜400,000gmol-1、最も好ましくは25,000〜250,000gmol-1の範囲内の重量平均分子量Mwを有する。
【0024】
好ましくは、本発明の組成物は、
-本発明のコーティングされた粒子;
-少なくとも1種のポリマー、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、例えばVestolit、Vinolit;
-任意に少なくとも1種の可塑剤、例えばジオクチルフタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、アジペート、セバセート;
-任意に少なくとも1種の溶媒、例えば炭化水素の誘導体;
-任意に少なくとも1種の充填剤、例えばTiO2、SiO2、天然炭酸カルシウム;
-任意に少なくとも1種の促進剤、例えばポリアミン、ポリアミド;
-任意に少なくとも1種の乾燥剤、例えばCaO;及び
-任意にさらなる添加剤、
を含有する。
【0025】
本発明の組成物の好ましい実施態様を、以下に要約する:
表1:

【0026】
本発明は、50m2g-1よりも大きい比表面積を有するアルカリ土類金属炭酸塩の非コーティング粒子をコーティング剤と接触させる工程を含む上記のようなコーティングされた粒子の調製方法にも関する。
好ましくは、該コーティング剤は、上記の1種以上の好ましい化合物を含む。
【0027】
好ましい実施態様では、該方法は、
(a)炭酸カルシウム粒子を水酸化カルシウムの懸濁液から50m2g-1よりも大きい比表面積を与える条件下で沈殿させる工程;及び
(b)工程(a)から得られた炭酸カルシウムの粒子を該コーティング剤と接触させる工程、
を含む。
本発明はまた、ポリマー組成物中における充填剤としての上記コーティングされた粒子の使用に関する。
以下の実施例は本発明をさらに説明するが、その範囲を限定するものとは解釈されない。
【0028】
実施例1:
41〜104m2g-1(コーティング前)の範囲の比表面積を有する炭酸カルシウムの粒子を、WO 03/004414に記載の方法によって得た。
これらの沈降炭酸カルシウム粒子を、Marlon、AOT、ステアリン酸及びヒドロキシステアリンから選択されるコーティング剤でコーティングした。“Marlon”は、85質量%のベンゼンスルホン酸及び15質量%のトルエンスルホン酸のナトリウム塩を含む混合物であり、“AOT”は、ジオクチルスルホコハク酸のナトリウム塩を意味する。該コーティング剤を沈降炭酸ナトリウム粒子に塗布するために、該コーティング剤の溶液又はエマルジョンを加えた。コーティングが溶液形態で塗布されるときは、該コーティング剤を沈降炭酸カルシウムのスラリーに室温で加え、30分間撹拌した後に濾過してオーブンで乾燥した。コーティングがエマルジョン形態で塗布されるときは、該コーティング剤を沈降炭酸カルシウムのスラリーに75〜85℃で加え、30分間撹拌した後に濾過してオーブンで乾燥した。
【0029】
粒子(タイプ-0〜タイプ-12)の特性を以下の表2に要約し、コーティング剤としてのステアリン(飽和及び不飽和分枝脂肪族カルボン酸、例えばPriplus、Edenor、Pristerene、Undesa、Prifrac、Radiacid、Safacid、Cremerの混合物)でコーティングされ、且つコーティング前に20m2g-1の比表面積を有する超微細沈降炭酸カルシウムと比較した。
【0030】
表2:

【0031】
実施例2:
ポリ塩化ビニル及び実施例1のコーティングされた炭酸カルシウム粒子を含有する2種の異なる製剤を調製した。前記製剤の組成を、以下の表3に要約する。


【0032】
表3:

【0033】
実施例3:
実施例2から得られた種々の製剤の流体力学的特性を、ISO 3219 normに従って調査した。測定は、可動式DIN 125円錐状シリンダーを備えたレオメータータイプUDS 200で行った。このレオメーターは、所定の速度勾配の関数における剪断力及び粘度の動きを測定する。全ての測定は、25℃で以下の手順:
25℃で5分間熱平衡が達成されるまで調査を保ち、
2分間かけて0〜100s-1まで加速させて120データポイントを測定し、
100s-1で1分間保って20データポイントを測定し、
2分間かけて100〜0s-1まで減速させて120データポイントを測定すること、
に従って行った。
表2に示すように、該製剤におけるコーティングされた沈降炭酸カルシウムの含有量は変化した(100%、75%、65%及び50%)。
該製剤を、それらの調製1日後に試験した。流体力学的試験の実施例を、以下の表4〜14に要約する。
【0034】
表4:







【0035】
表5:



【0036】
表6:










【0037】
表7:

【0038】
表8:



【0039】
表9:



【0040】
表10:



【0041】
表11:

【0042】
表12:


【0043】
表13:

【0044】
表14:



【0045】
表15:



参照:超微細なコーティングされた沈降炭酸カルシウム
NM:高過ぎる粘度のためにシリンダーで測定不可能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のコーティング剤で少なくとも部分的にコーティングされ、且つコーティング前に50m2g-1よりも大きい比表面積を有する、アルカリ土類金属炭酸塩の粒子。
【請求項2】
コーティング前に65m2g-1よりも大きい比表面積を有する、請求項1記載の粒子。
【請求項3】
コーティング剤が、任意にヒドロキシル基で置換されている脂肪酸;有機スルホン酸;アルキル硫酸;及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1又は2記載の粒子。
【請求項4】
コーティング剤が、任意にヒドロキシル基で置換されているステアリン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ジオクチルスルホサクシネート及びそれらの塩からなる群から選択される1種以上の化合物を含む、請求項3記載の粒子。
【請求項5】
0.1〜30nmの範囲内の平均一次粒子サイズを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒子、及び少なくとも1種のポリマーを含む、組成物。
【請求項7】
ポリマーがポリ塩化ビニルを含む、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
50m2g-1よりも大きい比表面積を有するアルカリ土類金属炭酸塩のコーティングされていない粒子を、少なくとも1種のコーティング剤と接触させる工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティングされた粒子の調製方法。
【請求項9】
(a)炭酸カルシウム粒子を、水酸化カルシウムの懸濁液から50m2g-1よりも大きい比表面積を与える条件下で沈殿させる工程;及び
(b)工程(a)から得られる炭酸カルシウム粒子を、コーティング剤と接触させる工程、
を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ポリマー組成物における充填剤としての、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒子の使用。

【公表番号】特表2008−519751(P2008−519751A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540644(P2007−540644)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055870
【国際公開番号】WO2006/051087
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】