説明

高い水蒸気透過性を有する被覆のための結合剤

本発明は、ポリマー分散液およびテレフタル酸ビスアミドをベースとし、高い水蒸気透過性を有する結合剤、ならびに調製物、特に木材の被覆のための調製物中でのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー分散液とテレフタル酸ビスアミドとをベースとし、高い水蒸気透過性を有する結合剤、ならびに調製物、特に木材の被覆のための調製物中でのその使用に関する。
【0002】
被覆系の重要な要求は、一方では良好な耐水性であり、かつ他方では、十分な水蒸気透過性である。耐水性とは、水の吸収に対する被覆の抵抗性を高めることである。というのも、水は被覆を軟化させ、かつ支持体に対する付着性の損失につながり、ひいては支持体は水の侵入にさらされる。しかし良好な耐水性はこれを防止しなくてはならない。それにもかかわらず湿分が下地へと侵入する場合には、被覆の水蒸気透過性が十分であることによって支持体の迅速な再乾燥が保証されなくてはならない。水の吸収と水蒸気透過性(WDD)とは、バランスのとれた関係になくてはならない(H.Kuenzel、Beurteilung des Regenschutzes von Aussenbeschichtungen、Institut fuer Bauphysik der Fraunhofer−Gesellschaft、Mitteilung 18、1978を参照のこと)。被覆が水性結合剤、たとえばポリマー分散液をベースとしている場合、分散液膜のWDDは、その耐水性との相互作用において重要な意味を有する。
【0003】
被覆の良好な耐水性、ひいては良好な耐候性を達成するためには、一般に、水性結合剤は、有利には疎水性のモノマーをベースとし、かつ低い割合の親水性成分を含有するように開発される。しかし、直接的な比較では、親水性の系は、疎水性の系よりも高いWDDを有することがしばしばある。ただし親水性の系の吸水率は高い。従って木材を被覆するためには、有利にはむしろ疎水性の系が使用される。といのも、特にこの材料は、その化学組成に基づいて、その種類に応じて、水に対する高い感受性を有しており、かつ微生物による損傷に対して、特に木材の含水率が20%を上回る場合には、受けやすい傾向があるからである。
【0004】
従って極めて良好な耐水性を有すると同時に、高いWDDを有しており、それにより被覆後の支持体の迅速な再乾燥が保証され、かつ被覆下に湿分がたまることが防止される結合剤が望ましい(J.Heinz、Holzschutz、ROTO Fachbibliothek、第2巻、1998年、Wegra VerlagおよびJ.Sell等、Werkstoff Holz、Spektrum der Wissenschaft、No.4(1997年)、第86〜89頁)。
【0005】
木材の透明塗料におけるWDDは、まず結合剤の選択および乾燥膜厚によって調整することができる。膜厚が高いほど、WDDは低い。薄膜透明塗料と厚膜透明塗料とが区別される。薄膜透明塗料に関しては、低い粘度および低い固体含有率(30%未満)が特徴的である。このような材料によって乾燥膜厚を、3回の塗布の場合に25μmまで調整する。厚膜透明塗料は、高い結合剤割合と、高い粘度とを有する透明塗料である。120μmまでの乾燥膜厚が望まれる。いずれの透明塗料タイプにも共通していることは、結合剤割合が高いことである。従って結合剤の選択は、WDDに対して決定的な影響を与える。結合剤の極性が高いほど、WDDは高い。
【0006】
乳化剤、顔料、および添加剤がWDDに与える影響は、結合剤と比較してわずかである。ここでもまた、極性が高いほど、WDDは高くなる。
【0007】
本発明の根底には、水性ポリマー分散液をベースとし、極めて高い耐水性を、改善された水蒸気透過性と同時に有している結合剤を提供することであった。
【0008】
意外にも、一般式Iのテレフタル酸ビスアミドを添加剤として含有しているポリマー分散液は、従来技術による結合剤に対して、分散着色剤として調製する際に比較可能なコロイド安定性において、より高い水蒸気透過性によって優れていることが判明した。
【0009】
アミド単位および/または尿素単位を有する芳香族および脂肪族の化合物が、溶剤中で分子間の非共役相互作用によって異方性の超分子凝集体、たとえばリボン状構造、棒状構造または繊維状構造に凝集することができることは以前から知られていた(Weiss、R.G.、Terech、P.Molecular Gels:Materials with self−assembled fibrillar networks;Springer:Dordrecht、Neth.、;2006年)。文献に記載されている系の大部分は、この特性を、有機の、かつ大部分は無極性の溶剤に関して示すのみである(a)Terech、P.;Weiss、R.G.Low molecular mass gelators of organic liquids and the properties of their gels.Chem.Rev.1997年、97、3133、b)Sangeetha、N.M.;Maitra、U.Supramolecular gels:functions and uses.Chem.Soc.Rev.2005、34、821、c)Hanabusa、K.Developement of organogelators based on supramolecular chemistry.Springer Series in Materials Science(Macromolecular Nanostructured Materials)2004、78、第118〜137、d)van Esch、J.H.,;Feringa、B.L.New functional materials based on self−assembling organogels:from serendipity towards design.Angew.Chem.Int.Ed.2000、39、2263)。しかし近年では、水性の溶剤にとって適切な、構造的に類似の物質クラスを開発するために集中的な努力がなされてきた。これにより発見されたヒドロゲル化剤は、一般には同様に、1もしくは複数のアミド単位および/または尿素単位を有している(a)Estroff、L.A.;Hamilton、A.D.Water Gelation by Small Organic Molecules.Chem.Rev.2004、104、1201;b)de Loos、M.;Feringa B.L.;van Esch、J.H.Design and Application of Self−Assembled Low Molecular Weight Hydrogels.Eur.J.Org.Chem.2005、3615)。
【0010】
ビスアミドを、顔料分散剤として(JP9272811−A)、油中水型エマルション中の脱乳化剤として(US5,117,058)、および重合反応中での鎖長調節剤として(DE−A4040468、DE−A4040469)使用することができることが知られている。
【0011】
しかし、従来公知の化合物を水性ポリマー分散液で使用することにより、不安定性および凝集物の形成が生じる。これはこれらの両親媒性化合物と、ポリマー分散液の安定化系との非相容性に起因する。
【0012】
ところが意外にも、冒頭に記載したビスアミドは、水性ポリマー分散液と相容性であるのみではなく、前記のWDDの改善にもつながることが判明した。
【0013】
本発明の第一の対象は、 一般式I
【化1】

[式中、R1〜R6は、H、C1〜Cn−アルキルを表し、その際、R1〜R6は、同じであっても、異なっていてもよく、R1は、
【化2】

であり、X、Yは、Cl、Br、Iを表し、かつn、mは、1〜8である]の添加剤を0.1〜10質量%、有利には1〜5質量%含有する水性ポリマー分散液Pであって、該水性ポリマー分散液は、
a)モノマーであって、そのホモポリマーが20℃未満のガラス転移温度Tgを有する少なくとも1のモノマー 45〜70質量部、
b)モノマーであって、そのホモポリマーが50℃を上回るガラス転移温度Tgを有する少なくとも1のモノマー 30〜55質量部、
c)その他のモノマー 0〜30質量部
を含有するモノマー混合物のラジカル水性乳化重合により得られたものである水性ポリマー分散液Pである。
【0014】
本発明による水性ポリマー分散液は、高い水蒸気透過性を有する分散着色剤を調製するための結合剤組成物として適切である。
【0015】
従って、本発明のもう1つの対象は、結合剤組成物として、塗料中での、特に木材を被覆するための塗料中での前記の水性ポリマー分散液の使用、ならびに本発明による結合剤組成物を含有する塗料である。
【0016】
ガラス転移温度Tgとは、G.Kanig(Kolloid−Zeitschrift & Zeitschrift fuer Polymere、第190巻、第1頁、式1)によれば、分子量の増加と共に増加するガラス転移温度の限界値を意味している。これはDSC法によって確認される(Differential Scanning Calorimetry、20K/分、中点)。大部分のモノマーのホモポリマーに関するTg値は公知であり、かつたとえばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、VCH Weinheim、1992、第5巻、第A21号、第169頁に記載されている。ホモポリマーのガラス転移温度に関するその他の情報源は、たとえばJ.Brandrup、E.H.、Immergut、Polymer Handbook、第1版、J.Wiley編、New York 1966、第2版、J.Wiley編、New York 1975、および第3版、J.Wiley編、New York 1989である)。
【0017】
結合剤中に含有されているポリマーは、45〜70質量部まで、有利には50〜65質量部までが、モノマーa)から構成されている。適切なモノマーa)は、たとえば分枝鎖状および非分枝鎖状のエチレン性不飽和C3〜C10−オレフィン、C1〜C10−アルキルアクリレート、C5〜C10−アルキルメタクリレート、C5〜C10−シクロアルキル(メタ)アクリレート、C1〜C10−ジアルキルマレエート、および/またはC1〜C10−ジアルキルフマレートである。有利には、そのホモポリマーが0℃を下回るガラス転移温度を有するモノマーa)を使用する。特に有利にはモノマーa)として、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、または2−プロピルヘプチルアクリレートを使用する。これらは単独で、または混合物として使用される。
【0018】
モノマーb)のホモポリマーは、>50℃、および有利には>80℃のガラス転移温度を有しており、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ならびにメタクリル酸の(C1〜C4)−アルキルエステルまたは(C1〜C4)−シクロアルキルエステル、たとえばメチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよびt−ブチルメタクリレートである。これらは単独で、または混合物として、30〜55質量部、および有利には35〜50質量部の量で使用される。
【0019】
本発明による結合剤ポリマーは、さらにモノマーc)として、アニオン基を形成することができるエチレン性不飽和モノマーを含有していてよい。これらの基は、有利にはカルボキシレート基、ホスホネート基またはスルホネート基である。有利なモノマーc)は、モノエチレン性不飽和アルキルスルホン酸もしくはアリールスルホン酸、たとえばビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリルアミドエタンスルホン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、ならびにα,β−不飽和C3〜C6−カルボン酸、α,β−不飽和C4〜C8−ジカルボン酸、またはこれらの無水物、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、および無水イタコン酸、ならびに前記のモノマーのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、特にこれらのナトリウム塩である。
【0020】
さらに、モノマーc)として、α,β−不飽和C3〜C6−カルボン酸のアミドおよびヒドロキシアルキルエステル、特に有利にはアクリルアミド、メタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、または1,4−ブタンジオールモノアクリレートを使用することができる。
【0021】
その他の適切なモノマーc)は、N−ビニルピロリドン、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−エチレン尿素、N−(2−アクリロイルオキシエチル)−エチレン尿素、2−アセトアセトキシエチルアクリレート、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミドである。
【0022】
モノマーc)は、単独で、またはたとえば酸およびアミドと組み合わせて使用することもできる。
【0023】
前記のモノマーa)、b)およびc)以外に、本発明による結合剤ポリマーは、そのつどの被覆材料により高い強度を付与するために、その他のモノマーを含有していてもよい。これらのモノマーは通常、少なくとも1のエポキシ基か、または少なくとも2の、非共役エチレン性不飽和二重結合を有する。このための例は、2のビニル基を有するモノマー、2のビニリデン基を有するモノマー、ならびに2のアルケニル基を有するモノマーである。特に有利であるのはこの場合、二価のアルコールとα,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、中でもアクリル酸およびメタクリル酸とのジエステルである。このような、2の、非共役エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの例は、アルキレングリコールジアクリレートおよびアルキレングリコールジメタクリレート、たとえばエチレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサングリコールジアクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレート、1,2−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジグリコールジメタクリレート、ならびにジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、シクロペンタジエニルアクリレート、トリアリルシアヌレート、またはトリアリルイソシアヌレートである。このようなモノマーのためのその他の例は、シロキサン基を有するモノマー、たとえばビニルトリアルコキシシラン、たとえばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アルキルビニルジアルコキシシラン、または(メタ)アクリロオキシアルキルトリアルコキシシラン、たとえば(メタ)アクリルオキシエチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。前記のモノマーは、モノマーa)+b)100質量部に対して、0.05〜1質量部、有利には0.05〜0.5質量部の量で使用することができる。
【0024】
添加剤として使用されるテレフタル酸ビスアミドの製造は、1:2のモル比でのテレフタル酸二ハロゲン化物と(N,N−ジアルキルアミノ−)アルキルアミンとの、有利にはテトラヒドロフラン(THF)中、またはTHFと他の有機溶剤、たとえばジクロロメタンとの混合物中で、室温での反応により行われる。しかしまた反応は、塊状で、またはその他の溶剤もしくはTHFを含有していない溶剤混合物中で、たとえばトルエン、アセトン、ジクロロメタン、またはクロロホルム中で実施することもできる。有利には添加剤は、0.1〜10質量%、特に有利には1〜5質量%の量で使用される。
【0025】
本発明による結合剤として使用される水性ポリマー分散液は、前記のモノマーa)〜c)を、モノマーa)およびb)の量に対してそのつど0.1〜0.5質量%、有利には0.1〜0.4質量%、および特に0.1〜0.3質量%の少なくとも1のラジカル重合開始剤の存在下に実施される。
【0026】
ラジカル重合開始剤として、ラジカル水性乳化重合を開始することができる全ての開始剤が考えられる。この場合、これは過酸化物、ヒドロペルオキシド、たとえばアルカリ金属ペルオキソ二硫酸塩であっても、アゾ化合物であってもよい。少なくとも1の有機還元剤と、少なくとも1の過酸化物および/またはヒドロペルオキシドとからなる組合せ系、たとえばt−ブチルヒドロペルオキシドとヒドロキシメタンスルホン酸のナトリウム塩、過酸化水素とアスコルビン酸またはペルオキソ二硫酸ナトリウムと二亜硫酸ナトリウムもまた使用される。有利な組合せ系はさらに、少量の、重合媒体中に可溶の金属化合物であって、その金属成分が複数の価数を有しうる化合物、たとえばアスコルビン酸/硫酸鉄(II)/過酸化水素を含有しており、この場合、アスコルビン酸の代わりにしばしばヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、または二亜硫酸ナトリウム、および過酸化水素の代わりにt−ブチルヒドロペルオキシドまたはアルカリ金属ペルオキソ二硫酸塩、および/またはペルオキソ二硫酸アンモニウムが使用される。水溶性の鉄(II)塩の代わりに、しばしば水溶性の鉄塩とバナジウム塩との組合せが使用される。有利な開始剤は、ペルオキソ硫酸またはペルオキソ二硫酸のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩、特にペルオキソ二硫酸ナトリウムまたはペルオキソ二硫酸カリウムである。
【0027】
本発明による結合剤ポリマーを製造するために、場合により、乳化重合のための慣用の表面活性物質以外に、少なくとも1の非イオン性乳化剤を、そのつど全モノマー量に対して、有利には0.5〜10質量%、特に1〜8質量%、およびとりわけ有利には2〜4質量%の量で使用する。使用可能な非イオン性乳化剤は、芳香族もしくは脂肪族の非イオン性乳化剤、たとえばエトキシル化モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノールおよびトリアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C9)、長鎖アルコールのエトキシレート(EO度:3〜50、アルキル基:C8〜C36)、ならびにポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド・ブロックコポリマーである。有利には長鎖アルカノールのエトキシレート(アルキル基C10〜C22、平均エトキシル化度は10〜50)および中でも特に有利には、線状C12〜C18−アルキル基と、平均エトキシル化度10〜50を有するものを単独の非イオン性乳化剤として使用する。
【0028】
その他の慣用の乳化剤は、有利にはアニオン性である。これにはアルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C12)のアルカリ塩およびアンモニウム塩、エトキシル化アルカノール(EO度:2〜50、アルキル基:C12〜C18)およびエトキシル化アルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C9)の硫酸半エステルのアルカリ塩およびアンモニウム塩、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)およびアルキルアリールスルホン酸(アルキル基C9〜C18)のアルカリ塩およびアンモニウム塩である。その他の適切な乳化剤は、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie、第XIV/1巻、Makromolekulare Stoffe、Georg−Thieme Verlag、Stuttgart、1961、第192〜208頁)に記載されている。
【0029】
有利なアニオン性界面活性物質は、以下の一般式
【化3】

[式中、R1およびR2は、水素を表すか、またはC4〜C24−アルキルを表し、かつ同時に水素であることはなく、かつXおよびYは、アルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンであってよい]の化合物でもある。式I中で、R1およびR2は、有利には6〜18個、特に6個、12個および16個の炭素原子を有する線状もしくは分枝鎖状のアルキル基であるか、または水素であり、その際、R1およびR2は両方が同時に水素であることはない。XおよびYは有利にはナトリウム、カリウム、またはアンモニウムであり、その際、ナトリウムが特に有利である。特に有利であるのは、式中でXおよびYがナトリウムであり、R1が12個の炭素原子を有する分枝鎖状のアルキル基であり、かつR2は、水素であるか、またはR1と同じものを表す化合物である。しばしば、モノアルキル化された生成物を50〜90質量%の割合で含有する工業的な混合物、たとえばDowfax(登録商標)2A1(Dow Chemical Companyの登録商標)が使用される。この化合物は一般に、たとえばUS−A4,269,749から公知であり、市販されている。
【0030】
その他の適切な乳化剤はたとえばHouben−Weyl、Methoden der organischen Chemie、第14/1巻、Makromolekulare Stoffe、Georg Thieme Verlag Stuttgart、1961、第192〜208頁に記載されている。
【0031】
適切な乳化剤は、たとえば商品名Dowfax(登録商標)2A1、Emulan(登録商標)NP50、Dextrol(登録商標)OC50、Emulgator825、Emulgator825S、Emulan(登録商標)OG、Texapon(登録商標)NSO、Nekanil(登録商標)904S、Lumiten(登録商標)I−RA、Lumiten(登録商標)I−SC、Lumiten(登録商標)E3065、Disponil(登録商標)FES77、Lutensol(登録商標)AT18、Steinapol(登録商標)VSL、Emulphor(登録商標)NPS25で市販されている。
【0032】
さらに、適切な保護コロイド、たとえばポリビニルアルコール、セルロース誘導体またはビニルピロリドンを含有するコポリマーを使用することができる。その他の適切な保護コロイドの詳細な記載は、Houben−Weyl、Methoden der Organischen Chemie、第14/1巻、Makromolekulare Stoffe、Georg−Thieme−Verlag、Stuttgart、1961年、第411〜420頁に記載されている。界面活性物質の全量は通常、重合すべきモノマーに対して、30質量%まで、有利には0.5〜10質量%、および特に有利には2〜6質量%である。
【0033】
ポリマーの分子量は、少量の、通常は重合すべきモノマーに対して、2質量%までの1もしくは複数の分子量調節物質、たとえば有機チオ化合物またはアリルアルコールによって調節することができる。しかし有利であるのは、このような化合物の不存在下に製造されたポリマーである。
【0034】
エマルションポリマーは、連続的に製造することも、バッチ法、有利には半連続式の方法により製造することもできる。この場合、重合すべきモノマーは連続的に、連続的に、段階的な方法または勾配法を含めて、重合バッチに供給することができる。有利には短い供給時間を用いる供給法、つまりモノマーが有利には水性エマルションとして反応バッチへ1〜4時間以内に、有利には1.5〜3時間以内に計量供給される方法である。
【0035】
シードを用いない製造法以外に、ポリマーの粒径を調整するために、乳化重合をシードラテックス法により、または現場で製造されるシードラテックスの存在下に行うことができる。このための方法は公知であり、かつ従来技術から読みとることができる(EP−B40419ならびにEncyclopedia of Polymer Science and Technology、第5巻、John Wiley & Sons Inc.New York、1966、第847頁)。
【0036】
たとえば従来技術によれば、供給法の場合、定義された微粒子状のシードポリマー分散液を重合容器中に装入し、次いでモノマーをシードの存在下に重合することが推奨される。この場合、シードポリマー粒子は、重合核として作用し、かつポリマーシード粒子の形成およびポリマーシード粒子の成長を分離する。乳化重合の間にさらに分散液を添加することができる。これにより、特に高い固体含有率を有するポリマー分散液の際にしばしば所望されるポリマーシード粒子の幅広いサイズ分布が達成される(DE−A4213965を参照のこと)。定義されたシードラテックスの添加の代わりに、これは現場で発生させることもできる。このためにたとえば、モノマーおよび開始剤の一部を乳化剤と一緒に装入し、かつ反応温度に加熱し、その際、比較的微粒子状のラテックスが生じる。引き続き同じ重合容器中で本来の重合が、供給法により実施される(DE−A4213965も参照のこと)。
【0037】
乳化重合の開始剤を計量供給する方法は重要ではない。開始剤は全量を重合容器に装入するか、またはその消費に応じて、乳化重合の過程で連続的に、または段階的に添加することができる。このやり方は開始剤の化学的性質ならびに重合温度にも依存し、かつ当業者が必要に応じて選択することができるものである。有利には連続的に、または段階的に反応バッチへ計量供給する。
【0038】
重合圧力および重合温度は同様にあまり重要ではない。一般に、室温〜120℃の間の温度で、有利には50〜95℃、および特に有利には70〜90℃の温度で作業する。
【0039】
本来の重合反応に引き続き、通常は、本発明による水性ポリマー分散液がほぼにおいのキャリア、たとえば残留モノマーおよびその他の有機揮発性成分を含有してないように構成することが必要である。これは自体公知の方法により物理的に蒸留による除去によって(特に水蒸気蒸留によって)、または不活性ガスを用いた除去により行うことができる。
【0040】
残留モノマーの低減はさらに、化学的にラジカル後重合によって、特にレドックス開始剤系の作用下に、たとえばDE−A4435423、DE−A4419518ならびにDE−A4435422に記載されているとおりに行うことができる。酸化還元により開始される後重合のための酸化剤として、特に過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドまたはアルカリ金属ペルオキシドスルフェートが適切である。適切な還元剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、ナトリウムヒドロキシメタンスルフィネート、ホルムアミジンスルフィン酸、アセトンビスルフィット(=亜硫酸水素ナトリウムのアセトンへの付加生成物)、アスコルビン酸もしくは還元作用のある糖化合物、または水溶性のメルカプタン、たとえばメルカプトエタノールである。レドックス開始剤系を用いた後重合は、10〜100℃、有利には20〜90℃の温度範囲で実施する。レドックスパートナーは、相互に無関係に全量か、少量ずつでか、もしくは連続的に10分〜4時間の時間にわたって分散液に添加することができる。レドックス開始剤系の後重合作用を改善するために、分散液は価数が変わる金属の可溶性の塩、たとえば鉄塩、銅塩またはバナジウム塩を添加することができる。しばしば、金属塩を反応条件下で溶解して保持する錯形成剤が添加される。
【0041】
ポリマー分散液は最終的に塩基、たとえばアルカリ金属水酸化物、またはアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、または揮発性もしくは非揮発性のアミンによって中和される。非揮発性のアミンには特にエトキシル化されたジアミンまたはポリアミンが挙げられるが、たとえばこれらはJeffamine(登録商標)(Texaco Chemicals Co.)の名称で市販されている。
【0042】
一般式Iの本発明による添加剤は、重合前、重合の間、または重合後に、純粋な物質として、または水溶液として添加することができる。有利にはこれらは本来の重合後に添加することができる。
【0043】
本発明による結合剤ポリマーは、通常、10℃を下回る、有利には5℃を下回る、および特に有利には<3℃の最低皮膜形成温度を有する。光散乱により確認される、結合剤分散液中に含有されているポリマー粒子の平均粒径は、有利には50〜300nmの範囲、特に有利には50〜200nmの範囲である。
【0044】
分散液の光透過性(以下を参照のこと)は通常、40〜95%の範囲、有利には50〜95%の範囲である。これは幅広い範囲で、分散粒子のサイズと相関している、つまりLD値(0.01質量%の試料の光透過性)が大きいほど、分散している粒子の直径は小さい。
【0045】
塗料中で使用される本発明による結合剤組成物は、そのガラス転移温度Tgが一般に0℃〜50℃の範囲、有利には5℃〜45℃の範囲、および特に5℃〜40℃の範囲であるポリマー(P)を含有している。
【0046】
塗料調製物は、結合剤組成物以外に、その他の添加剤、たとえば水性ポリマー分散液をベースとする塗料中で慣用の添加剤を含有していてよい。これには顔料、充填剤、他の助剤、および場合により付加的な塗膜形成ポリマーが挙げられる。
【0047】
適切な顔料はたとえば無機白色顔料、たとえば二酸化チタン、有利にはルチル型のもの、硫酸バリウム、酸化亜鉛、亜硫酸亜鉛、塩基性炭酸鉛、三酸化アンチモン、リトポン(亜硫酸亜鉛+硫酸バリウム)、または着色顔料、たとえば酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、亜鉛イエロー、亜鉛グリーン、ウルトラマリン、マンガンブラック、アンチモンブラック、マンガンバイオレット、パリブルーまたはシュバインフルトグリーンである。無機顔料以外に、本発明による分散着色剤は、有機着色顔料、たとえばセピア、グミ、カッセルブラウン、トルイジンレッド、パラレッド、ハンザイエロー、インジゴ、アゾ染料、アントラキノインドおよびインジゴイド着色剤、ならびにジオキサジン、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料および金属錯体顔料を含有していてよい。光散乱を高めるために空気を内包している合成白色顔料、たとえばRhopaque(登録商標)分散液も適切である。
【0048】
適切な充填剤は、たとえばアルミノケイ酸塩、たとえば長石、ケイ酸塩、たとえばカオリン、タルク、雲母、マグネサイト、アルカリ土類金属炭酸塩、たとえば炭酸カルシウム、たとえばカルサイトまたは白亜の形のもの、炭酸マグネシウム、ドロマイト、アルカリ土類金属硫酸塩、たとえば硫酸カルシウム、二酸化ケイ素等である。塗料中で当然のことながら、微粒子状の充填剤が有利である。充填剤は単独成分として使用することができる。しかし実地では、充填剤混合物、たとえば炭酸カルシウム/カオリン、炭酸カルシウム/タルクが特に有利であることが判明している。光沢塗料は通常、極めて微粒子状の充填剤を少量含有してうるのみであるか、または充填剤を含有していない。
【0049】
微粒子状の充填剤は、隠蔽力を高めるために、および/または白色顔料を節約するために使用することもできる。色調の隠蔽力および色の深さを調整するために、有利には着色顔料と充填剤とからなる混合物を使用する。
【0050】
慣用の助剤には、重合の際に使用される乳化剤以外に、湿潤剤もしくは分散剤、たとえばポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウムまたはポリリン酸アンモニウム、無水アクリル酸もしくは無水マレイン酸のコポリマーのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、ポリリン酸塩、たとえば1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸ナトリウムならびにナフタリンスルホン酸塩、特にこれらのナトリウム塩が挙げられる。
【0051】
その他の適切な助剤は、レベリング剤、消泡剤、殺生物剤、および増粘剤である。適切な増粘剤はたとえば会合性増粘剤、たとえばポリウレタン増粘剤である。増粘剤の量は、有利には塗料の固体含有率に対して1質量%未満、特に有利には0.6質量%未満である。
【0052】
顔料の割合は、顔料体積濃度(PVK)により記載することができる。PVKは、乾燥した塗膜の結合剤(VB)、顔料および充填剤顔料の体積からなる全体積に対する顔料(VP)および充填剤(VF)の体積の比を記載するものである。つまりPVK=(VP+VF)×100/(VP+VF+VB)である(Ullmann’s Enzyklopaedie der technischen Chemie、第4版、第15巻、第667頁を参照のこと)。塗料はPVKによりたとえば以下のとおりに分類することができる:
高充填内装用塗料、耐洗浄性、白色/マット 約85以上、
内装用塗料、耐擦り傷性、白色/マット 約60〜85、
半光沢塗料、シルクマット 約30〜60、
半光沢塗料、絹光沢 約25〜35、
高光沢塗料 約15〜25、
屋外ファサード用塗料、白色 約45〜55、
クリアコート 0。
【0053】
本発明による塗料はたとえば顔料着色されていない系(クリアコート)の形で、または顔料着色された系の形で存在していてよい。
【0054】
本発明による塗料から製造した塗膜は、高い耐水性および同時に良好な付着力における良好なWDDによって優れている。前記の塗膜はさらに、一般に高い柔軟性を有しており、かつ破損傾向が小さいので、たとえば加工される下地に合わせて調整することが可能である。
【0055】
以下に記載の実施例は、本発明を限定することなく、説明するためのものである。
【0056】
実施例
分析
ポリマー粒子の粒径(数平均)は、23℃で0.01質量%の分散液において、Malvern Instruments社(英国)のAutosizer IIcを用いて動的光散乱法により測定した。測定された自己相関関数の累積評価(累積数平均)の平均直径を記載する。
【0057】
光透過性(LD値)を、0.01質量%の分散液において膜厚25mmで、市販の光度測定装置中、白色光を用いて測定した。LD値を100%に設定した水に対して測定する。
【0058】
最低塗膜形成温度(MFT)の決定は、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、Verlag Chemie、Weinheim(1980)、第17頁に準拠して行った。測定装置として、塗膜形成ベンチ(温度勾配が付与される金属板)を使用した。塗膜形成は、湿潤膜厚1mmで行った。最低塗膜形成温度として、塗膜が亀裂を形成できる温度を記載する。
【0059】
自立分散液塗膜の水蒸気透過性(WDD)を23℃および相対空気湿度85%で、MOCON PERMATRAN−W(登録商標)3/33測定装置により、ASTM F−1249によるキャリアガス法に基づいて測定した。測定される透過率を、引き続き98%の相対空気湿度により換算したが、この場合、この透過率は、空気湿度が上昇するにつれて線状に増加した。塗膜のWDDを、ASTM E96/E96M−05により調温調湿装置(商標Voetsch VC 7060)により23℃および相対空気湿度98%で測定した。試料あたりそのつど3つの試験体を測定した。乾燥剤として塩化カルシウム無水物を使用し、かつ封止剤としてパラフィンワックスを使用した。
【0060】
被覆調製物のWDDは、prEN 1062−2およびISO DIS 7783により試験した。この方法は、いわゆるCup法を記載するものであり、これによればWDDは、重量法により測定される。測定は相対空気湿度50%から93%の湿度勾配および23℃で行った。それぞれの被覆から、少なくとも3つの並行試料を試験し、かつ下地の盲検値を同様に3つの並行試料において試験した。支持体として、CIT Buero Schule社(Hamburg)から入手可能な白色の光沢厚紙HF(Bristol)、A21717タイプを使用した。
【0061】
一般式Iの化合物
【化4】

の一般的な製造方法。
【0062】
この化合物群の製造は、添加剤1のための方法と同様に行う。
【0063】
添加剤1
二塩化テレフタル酸(13.98g、1.0当量)を、ジクロロメタン/テトラヒドロフラン混合物(200ml/50ml)中に溶解した。引き続き氷浴で冷却しながら、徐々に3−N,N−ジメチルアミノプロピルアミン(14.07g、2.0当量)を滴加した。0℃で30分、および室温で2時間攪拌した。化合物をヘキサン(約400ml)で沈殿させ、引き続きガラスフィルターを介して濾別し、かつ回転式蒸発装置を用いて乾燥させた(50〜80ミリバール、65℃、30〜45分)。室温で高真空中、一夜にわたって後乾燥を行った。
【0064】
化合物は、1H−NMR(プロトン−核磁気共鳴分光分析)により、ジメチルスルホキシド−d6中、および熱分析技術(示差熱分析法および熱重量分析法)により特性決定した。収率:27.8gの微細な白色粉末(99%)、わずかに吸湿性。
【0065】
2.結合剤ポリマーの製造方法
例1
攪拌機および環流冷却装置を備えた重合容器に、
脱塩水 201.0gおよび
ドデシルベンジルスルホン酸ナトリウムの20質量%溶液 3.3g
を装入し、撹拌下に95℃に加熱した。次いで、供給流1を32.8g、および10分後に、供給流2を10.9g添加し、かつこの温度で5分間撹拌した。温度を維持しながら、供給流1の残分および供給流2の残分を同時に150分以内に重合バッチに連続的に計量供給し始めた。供給流1および2の終了後に、脱塩水7.2gで洗浄し、該バッチを15分間、後重合させた。その間、温度は90℃に維持した。その後、9.5質量%のアンモニア溶液6.8gを15分で計量供給した。次いで、1時間にわたって並行して4質量%のt−ブチルヒドロペルオキシド水溶液9.8gおよび4.6質量%の次亜硫酸アセトンの水溶液14.3gを計量供給した。引き続き、この反応バッチをさらに15分間撹拌し、脱塩水38gを添加して室温に冷却し、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液22.6gでpH値を8.5に調整し、かつ125μmのメッシュ幅を有するフィルターにより濾過した。
【0066】
pH値8.4、LD値81%、および166nmの粒径を有する51.2質量%の分散液1276.7gが得られた。MFTは1℃であった。
【0067】
供給流1
45質量%の水溶液の形のDowfax(登録商標)2A1 8.7g、
20質量%の水溶液の形のLutensol(登録商標)TO82 26.0g、
アクリル酸(モノマーc) 8.5g、
アクリルアミド(モノマーc)の50質量%水溶液 19.5g、
n−ブチルアクリレート(モノマーa) 357.5g、
メチルメタクリレート(モノマーb) 274.3g、
水 248g。
【0068】
供給流2
ペルオキソ二硫酸ナトリウム 0.8g、
水 30.4g。
【0069】
例2
攪拌機および環流冷却装置を備えた重合容器に、
脱塩水 241.6g、
Emulphor(登録商標)NPS 25の31質量%溶液 3.4g、
Emulgator(登録商標)825の20質量%溶液 30.0g
を装入し、かつ撹拌下に95℃に加熱した。次いで、供給流1および2を同時に開始した。供給流1を240分以内に、および供給流2を270分以内に連続的に重合バッチに計量供給した。供給流2の終了後に、該バッチをさらに30分間、後重合させた。その後、6.9質量%のアンモニア溶液19.4gを10分で計量供給した。次いで、1時間で、10質量%のt−ブチルヒドロペルオキシド水溶液4.6gおよび2.1質量%のアスコルビン酸水溶液17.0gを並行して計量供給した。引き続きさらに、3.4質量%の過酸化水素水溶液3.7gを添加し、かつ反応バッチをさらに30分間撹拌した。次いで、該バッチを室温に冷却し、かつ125μmのメッシュ幅を有するフィルターで濾過した。
【0070】
pH値8.1、LD値91%、および粒径100nmを有する51.3質量%の分散液1185.1gが得られた。MFTは5℃であった。
【0071】
供給流1
31質量%の水溶液の形のEmulphor(登録商標)NPS 8.6g、
15質量%の水溶液の形のラウリル硫酸ナトリウム 14.0g、
アクリル酸(モノマーc) 6.0g、
アクリルアミド(モノマーc)の50質量%水溶液 20.2g、
n−ブチルアクリレート(モノマーa) 319.9g、
メチルメタクリレート(モノマーb) 264.0g、
水 195.2g。
【0072】
供給流2
ペルオキソ二硫酸ナトリウム 1.9g、
水 35.6g。
【0073】
例3
攪拌機および環流冷却装置を備えた重合容器中に、
脱塩水 156.0g、および
粒径30nmを有する、33質量%のポリスチレンシード分散液 26.0g
を装入し、撹拌下に82℃に加熱した。次いで、供給流2を4.3g添加し、かつこの温度で5分間撹拌した。この温度を維持しながら、同時に供給流1および供給流2の残分を180分以内に連続的に重合バッチに計量供給した。供給流1および2の終了後に、該バッチを15分間、後重合させた。その後、4.9質量%のアンモニア溶液22.2gを添加した。次いで、1時間にわたって10質量%のt−ブチルヒドロペルオキシド水溶液6.0gおよび2.0質量%のアスコルビン酸水溶液18.4gを並行して計量供給した。引き続き、5質量%の過酸化水素溶液5.2gを添加し、17質量%のアンモニア溶液10.7gを用いて、80℃で最終pH値を7.8〜8.5に調整し、該バッチを室温に冷却し、かつ125μmのメッシュ幅を有するフィルターにより濾過した。pH値7.8、LD値77%、および粒径156nmを有する50.3質量%の分散液1242.6gが得られた。MFTは8℃であった。
【0074】
供給流1
20質量%の水溶液の形のEmulan(登録商標)OG 30.0g、
30質量%の水溶液の形のDisponil(登録商標)FES77 40.0g、
アクリル酸(モノマーc) 17.9g、
アクリルアミド(モノマーc)の50質量%水溶液 20.4g、
n−ブチルアクリレート(モノマーa) 333.1g、
スチレン(モノマーb) 238.8g、
水 300.8g。
【0075】
供給流2
ペルオキソ二硫酸ナトリウム 1.2g、
水 15.9g。
【0076】
例4
攪拌機および環流冷却装置を備えた重合容器に、
脱塩水 217.6g、および
33質量%の、粒径30nmを有するポリスチレンシード分散液 11.6g
を装入し、かつ撹拌下に85℃に加熱した。次いで供給流2を4.8g添加し、かつこの温度で5分間、撹拌した。この温度を維持しながら、供給流1および供給流2の残分を同時に180分以内に連続的に重合バッチに供給し始めた。供給流1および2の終了後に、該バッチを30分間、後重合させた。次いで1時間にわたり、10質量%のt−ブチルヒドロペルオキシド水溶液12.0gおよび8.1質量%の次亜硫酸アセトンの水溶液15.6gを計量供給した。その後、該バッチを60℃に冷却し、かつ10質量%の水酸化ナトリウム溶液12.0gを60分で計量供給した。室温に冷却した後に、引き続き12質量%のアジピン酸ジヒドラジド水溶液2gおよび5質量%の過酸化水素溶液2.4gを添加し、かつ該バッチを125μmのメッシュ幅を有するフィルターにより濾過した。
【0077】
pH値8.3、LD値56%、および粒径140nmを有する50.1質量%の分散液1265.9gが得られた。MFTは、3℃であった。
【0078】
供給流1
15質量%の水溶液の形のラウリル硫酸ナトリウム 31.6g、
45質量%水溶液の形のDowfax(登録商標)2A1 10.5g、
20質量%の水溶液の形のLutensol(登録商標)TO82 82.5g、
アクリル酸(モノマーc) 1.7g、
アクリルアミド(モノマーc)の50質量%水溶液 17.6g、
n−ブチルアクリレート(モノマーa) 353.6g、
スチレン(モノマーa) 235.8g、
水 211.4g。
【0079】
供給流2
ペルオキソ二硫酸ナトリウム 1.2g、
水 46.8g。
【0080】
3.変性されたラテックスフィルムの製造
添加剤1を所望の量で、完全な溶液が得られるまで、希釈されていない分散液中に撹拌導入した。塗膜はBYK−Gardner(登録商標)塗膜用ブレードを用いてポリエチレンシート上に塗布し、実験室条件下に24時間乾燥させ、かつ引き続き60℃で2日間、貯蔵した。
【0081】
【表1】

【0082】
これらの結果は特に、若干疎水性のスチレン/アクリレート分散液(例3)に関してWDDが改善され、かつ添加剤1を2.5質量%使用した場合に顕著な効果が得られたことを示している。
【0083】
4.被覆のための調製物の製造
添加剤1を含有する調製物および含有しない調製物を製造した。このために、水性の純粋なアクリレートおよびスチレンアクリレート結合剤を使用した。前記の支持体上に、湿潤厚さ300μmで塗布して被覆を製造し、かつWDDを、標準条件下(23℃、相対空気湿度 50%)に28日間、乾燥および貯蔵した後に、上記のとおりに測定した。調製物中での3質量%の添加剤1の使用により、WDDはいずれの場合にも改善された。
【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
これらの結果は、変性されていないアクリレートベースの被覆が、若干疎水性のスチレン/アクリレートベースの被覆よりも高いWDDを有しており、かつこれは添加剤1の添加によって改善されることを示している。この効果は特に、例4をベースとする疎水性被覆に関してより高い。
【0087】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、H、C1〜Cn−アルキルを表し、その際、R1〜R6は、同じであっても、異なっていてもよく、X、Yは、Cl、Br、Iを表し、かつn、mは、1〜8である]の添加剤を0.1〜10質量%含有する水性ポリマー分散液Pであって、該水性ポリマー分散液は、
a)モノマーであって、そのホモポリマーが20℃未満のガラス転移温度Tgを有する少なくとも1のモノマー 45〜70質量部、
b)モノマーであって、そのホモポリマーが50℃を上回るガラス転移温度Tgを有する少なくとも1のモノマー 30〜55質量部、
c)その他のモノマー 0〜30質量部
を含有するモノマー混合物のラジカル水性乳化重合により得られたものである水性ポリマー分散液P。
【請求項2】
ガラス転移温度が0℃〜50℃であることを特徴とする、請求項1記載の水性ポリマー分散液。
【請求項3】
モノマーa)が、分枝鎖状および非分枝鎖状のエチレン性不飽和C3〜C10−オレフィン、C1〜C10−アルキルアクリレート、C5〜C10−アルキルメタクリレート、C5〜C10−シクロアルキル(メタ)アクリレート、C1〜C10−ジアルキルマレエート、および/またはC1〜C10−ジアルキルフマレート、またはこれらの混合物の群から選択されていることを特徴とする、請求項1または2記載の水性ポリマー分散液。
【請求項4】
モノマーb)が、スチレン、α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ならびにメタクリル酸の(C1〜C4)−アルキルエステルまたは(C1〜C4)−シクロアルキルエステル、たとえばメチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、およびt−ブチルメタクリレート、またはこれらの混合物の群から選択されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の水性ポリマー分散液。
【請求項5】
モノマーc)が、モノエチレン性不飽和アルキルスルホン酸またはアリールスルホン酸、たとえばビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリルアミドエタンスルホン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、ならびにα,β−不飽和C3〜C6−カルボン酸、α,β−不飽和C4〜C8−ジカルボン酸、またはこれらの無水物、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、および無水イタコン酸、ならびに前記のモノマーのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の群から選択されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の水性ポリマー分散液。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の水性ポリマー分散液の製造方法において、一般式Iの添加剤の少なくとも1種を、重合前、重合の間、または重合後に添加することを特徴とする製造方法。
【請求項7】
塗料のための結合剤としての請求項1から5までのいずれか1項記載の水性ポリマー分散液の使用。
【請求項8】
木材の被覆のための結合剤としての請求項1から5までのいずれか1項記載の水性ポリマー分散液の使用。
【請求項9】
本発明による結合剤が、10℃を下回る最低皮膜形成温度を有することを特徴とする、請求項7または8記載の使用。
【請求項10】
請求項1から5までのいずれか1項記載の水性ポリマー分散液を含有する塗料。
【請求項11】
請求項1から5までのいずれか1項記載の水性ポリマー分散液を結合剤として含有する木材用被覆剤。

【公表番号】特表2012−520362(P2012−520362A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553420(P2011−553420)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052961
【国際公開番号】WO2010/102993
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】