説明

高い熱安定性を有する耐衝撃性ポリ(メタ)アクリレート−成形材料

本発明は、請求項1に記載の(メタ)アクリレート(コ)ポリマー成分a)、b)、c)及び/又はd)をベースとするポリマー混合物に関し、この際、このポリマー混合物から製造される試験体は、同時に次の特性:少なくとも2500MPaの引張弾性率(ISO 527)、低くても110℃のビカー軟化点VET(ISO 306−B50)、少なくとも30KJ/mの耐衝撃性(ISO 179−2D、フラットワイズ)及び少なくとも1.0cm/10minのメルトインデックスMVR(ISO 1133、230℃/3.8kg)を有する。更に本発明は、射出成形された成形体又は射出成形部材を製造するためのこのポリマー混合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱安定性を有する耐衝撃性ポリ(メタ)アクリレート−成形材料(PMMA-Formmasse)並びに射出成形部材を得るためのその使用に関する。
【0002】
背景技術
燃料消費量を少なくする要求から出発して、自動車工業では、常に自動車の自重を更に減少させる努力がなされている。過去に自動車−外装分野では広く鋼部材が使用されていたが、経済的理由から、これらの要素を、低い比重を有する加工材料から、同時に低い製造コストで製造することが所望されている。
【0003】
この成形部材の特性プロフィルは、低い自重と同時に高い耐候性、高い強靱性、良好な耐衝撃性、殊に長時間の熱処理範囲内での加熱の際でも良好な寸法安定性、例えば清浄剤に対する良好な耐化学薬品性、良好な耐引掻性及び高い光沢によって決定される。
【0004】
この加工材料の使用の際に、鋼板の自重の欠点と並んで、成形部材は、その製造に引き続き、「Aクラス−表面」を得るために塗装を行わければならない欠点を有する。従って、重量低下のために、鋼部材がプラスチック部材で置換されることが増えており、この際、同時に構築部材形状に関する高い造形的自由度を求める自動車−デザイナーの願望も考慮に入れられる。
【0005】
この分野では、従来は種々の熱硬化性プラスチックス、例えばポリカーボネート(PC)、ASA、ASA/PC、PMMA及びガラス繊維充填ポリマー、例えばGF−ポリアミドが使用されていた。
【0006】
通常、成形部材は射出成形を用いて製造されるので、構築部材形状(低い層厚での長い流路)を考慮して、熱可塑性プラスチックの使用時には、更に不合格部材を避けるためにプラスチック融液の良好な流動性への要求が存在する。自動車製造業者が充分に自由な色選択が可能であるためには、このプラスチックは更に、高い光透過率において、殆ど固有色を有すべきではない。
【0007】
ガラス繊維強化プラスチックの使用は、良好な機械特性を有する成形部材をもたらすが、ここでも鋼材と同様に、一様な光沢のA−クラス表面品質を得るために、後続の塗装が必要である。
【0008】
ポリカーボネートは高い熱安定性と共に非常に良好な強靱性も有している。しかしながら、黄色化をもたらす耐候性の不足及び低い表面硬度は、ここでも表面塗装を必要としている。更にこの加工材料の不充分な剛性は、前記の用途のためには問題である。
【0009】
熱可塑性材料、例えばASA、PMMA及びASAとPCとのブレンドは、ポリカーボネートと比べて良好な耐候性を有している。しかしながら、ASA及びASA/PCの場合には、加工材料の剛性及び耐引掻性不足を生じる表面硬度が、前記の構築部材の要件を満足するためには充分ではない。PMMAは、高い剛性、高い表面硬度、良好な熱安定性及び良好な融液流動性にもかかわらず、優れた耐候性及び光学的品質を有している加工材料である。しかしながら前記の用途のためには、PMMAの強靱性は低すぎる。この欠点を補償するために、PMMAは、技術水準から公知である耐衝撃性向上剤との混合によって最適化することができる。しかしながらこの変性によって、熱安定性及び表面硬度は、耐衝撃性改良されたPMMAでもその要件を満足しない程度に低下される。
【0010】
良好な材料特性を有するポリメチル(メタ)アクリレートベースの多くの市販成形材料は公知である。
【0011】
発明の開示
課題及び解決
多くの市販のポリメチル(メタ)アクリレート−ベースの成形材料は、それ自体非常に満足しうる材料特性を有しているが、品質的に高価な射出成形部材の製造のために、例えば自動車外部部材に要求される特性プロフィルを、全ての個々の要求を同程度に達成することができないという欠点を有している。このことが従来、このような部材の使用の可能性を非常に制限している。成形体は屡々非常に暗色に着色されているので、これらは太陽光線によって強く加熱される。 従って、PMMA−成形材料の付加的な要件は、成形体の相応する耐候試験に合格する高い熱安定性である。この場合に、この成形体は軟化してはならない。更にこの成形体は耐衝撃性であるべきである。これらの要件を満足することは、自動車の成形体の構築のためにも、自動車−寿命の間の機械的長時間負荷(石衝撃、気候影響)の理由からも必要である。更に、例えば加工性及びメカニックのような公知の良好な特性を持続すべきである。
【0012】
従って本発明の課題は、前記の欠点を有せず、釣合いのとれた特性プロフィルを有する熱可塑性プラスチック加工材料を提供することであった。
【0013】
この課題は、次の成分を含有するポリマー混合物によって解決される:
a) クロロホルム中、25℃での溶液粘度(ISO 1628−パート6) 55ml/g以下であることを特徴とする、低分子量(メタ)アクリレート(コ)ポリマー、
b) 架橋性ポリ(メタ)アクリレートをベースとする耐衝撃性向上剤、
c) クロロホルム中、25℃での溶液粘度(ISO 1628−パート6) 65ml/g以下であることを特徴とする、高分子量(メタ)アクリレート(コ)ポリマー 及び/又は
d) クロロホルム中、25℃での溶液粘度(ISO 1628−6) 50〜55ml/gであることを特徴とする、a)とは異なる(メタ)アクリレート(コ)ポリマー
この際、成分a)、b)、c)及び/又はd)は、それぞれ独自に個々のポリマーとして解することも、ポリマーの混合物として理解することもでき、
この際、a)、b)、c)及び/又はd)は合計すると100質量%になる、
この際、ポリマー混合物は、なお、慣用の添加剤、助剤及び/又は充填剤を含有していてよく、かつ
この際、このポリマー混合物から製造される試験体は、同時に次の特性を有する:
≫ 少なくとも2500MPaの引張弾性率(ISO 527)、
≫ 低くても110℃のビカー軟化点VET(ISO 306−B50)、
≫ 少なくとも30KJ/m耐衝撃性SZ(ISO 179、エッジワイズ)及び
≫ 少なくとも1.0cm/10minのメルトインデックスMVR(ISO 113
3、23℃/3.8kg)。
【0014】
発明の詳細な説明
ポリマー混合物
本発明は、成分a)、b)並びにc)及び/又はd)を含有するポリマー混合物に関する。従ってこのポリマー混合物は、成分a)、b)及びc)から又は成分a)、b)及びd)から又は4種の全ての成分から成っていてよい。成分a)、b)及びc)及び/又はd)は、それぞれ個々のポリマーとしても、相応する定義の複数のポリマーの混合物としても存在することができる。
【0015】
ポリマー混合物の特性
成分a)、b)並びにc)及び/又はd)は、その量割合及びそれらの組成について、このポリマー混合物から製造される試験体が同時に次の特性を有するように選択されている:
≫ 少なくとも2500、好ましくは2600、特に好ましくは少なくとも2700又は2800MPaの引張弾性率(ISO 527)、
≫ 低くても110℃、好ましくは低くても111、殊に低くても112、例えば110〜125℃のビカー軟化点VET(ISO 306−B50)、
≫ 少なくとも30、好ましくは少なくとも32、34、37又は40KJ/m耐衝撃性SZ(ISO 179、エッジワイズ)、
≫ 少なくとも1.0、好ましくは少なくとも1.2、1.5又は2.0cm/10minのメルトインデックスMVR(ISO 1133、23℃/3.8kg)。
【0016】
慣用の添加剤、助剤及び/又は充填剤は、前記の特性プロフィルができるだけ影響されないか又は最大でも僅かに影響されるように選択されるべきである。
【0017】
更なる特性
成分a)、b)並びにc)及び/又はd)は、更にその量割合及びそれらの組成について、このポリマー混合物から製造された試験体が、次の特性の少なくともいくつかを有するように選択することができる:
溶媒作用下での応力亀裂の試験
半径rを有する円形彎曲ジグの上に、厚さdの試験体片を張る。これによって、引張り負荷されたこの試験体の表面に、一定の外繊維ひずみeps=d/(2r+d)が生じる。装置はISO 4599中の構造に一致している。試験体の引張り負荷のかけられている表面を溶媒で湿らせる。裸眼(即ち、顕微鏡等を用いない)での目視観察により、亀裂の発生までの時間を測定する。異なる半径rを有する種々のジグを用いて、種々異なる外繊維ひずみの場合の亀裂形成までの時間を測定することができる。これは、一般に高い外繊維ひずみの場合に低下する。
【0018】
一定の外繊維ひずみの場合にイソプロパノールで表面を湿らせる場合の破断時間
・ 0.39%:>1800s
・ 0.50%:>700s
一定の外繊維ひずみの場合にエタノール/水−混合物(70:30比)で表面を湿らせる場合の破断時間
・ 0.39%:>1800s
・ 0.50%:>200s 。
【0019】
表面硬度
次の適用力の場合のテーバー引掻き硬度
・ 0.7N:表面損傷は検知できない、
・ 1.5N:<2.0μm、好ましくは<1.6μm、
・ 3.0N:<6μm、好ましくは<5μm。
【0020】
表面光沢
R(60°):>48%、好ましくは>50% 。
【0021】
成分の量割合
成分は、次の量割合で存在し、合計100質量%になる。
【0022】
成分a):25質量%〜75質量%、好ましくは40質量%〜60質量%、殊に45質量%〜57質量%。
【0023】
成分b):7質量%〜60質量%、好ましくは7質量%〜20質量%。
【0024】
成分c)及び/又はd):10質量%〜50質量%、好ましくは12質量%〜44質量% 。
【0025】
c)を30質量%〜45質量%、好ましくは35質量%〜40質量%で含有し、d)をむしろ含有しない場合に、116〜120℃の範囲の非常に高いVET−値を有する試験体を得ることができる。
【0026】
c)及びd)を、好ましくはc)10質量%〜15質量%とd)15質量%〜25質量%との量割合で含有している場合に、114〜118℃の範囲の高いVET−値を有する試験体を得ることができる。
【0027】
d)を30質量%〜40質量%、好ましくは33質量%〜38質量%で含有し、c)をむしろ含有しない場合に、109℃〜113℃の範囲のVET−値及び同時に低い固有色を有する試験体を得ることができる。
【0028】
ポリマー混合物はなお慣用の添加剤、助剤及び/又は充填剤を含有することができる。
【0029】
ポリマー混合物の製造
粉末、粒子又は好ましくは顆粒として存在することができるこれら成分の乾燥混合によって、ポリマー混合物を製造することができる。
【0030】
このポリマー混合物は、溶融及び融液状態の個々の成分の混合により又は個々の成分の乾燥前混合物の溶融によって、使用準備のできた成形材料に加工することもできる。これは、例えば、一軸−又は二軸スクリュウ押出機中で行うことができる。得られる押出成形物は引き続き顆粒にすることができる。慣用の添加剤、助剤及び/又は充填剤は、直接混入するか又は後に最終使用者によって必要に応じて添加することができる。
【0031】
成分a)
成分a)は、クロロホルム中、25℃での溶液粘度(ISO 1628−パート6)55以下、好ましくは50以下、殊に45〜55ml/gであることを特徴とする、低分子量(メタ)アクリレート(コ)ポリマーである。
【0032】
これは、95000g/モルの分子量M(重量平均)(検定標準としてのポリメチルメタクリレートに対するゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィを用いるMの測定)に相当しうる。分子量Mの測定は、例えばゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィ又は光散乱法によって行うことができる(例えばH.F.Markt 等のEncyclopedia of Polymer Science and Engineering,2nd.Edition, Vol.10, 1頁以降, J.Wiley, 1989参照)。
【0033】
成分a)は、メチルメタクリレート、スチレン及び無水マレイン酸からのコポリマーであるのが有利である。
【0034】
好適な量割合は、例えば次の通りであってよい:
メチルメタクリレート50質量%〜90質量%、好ましくは70質量%〜80質量%、
スチレン10質量%〜20質量%、好ましくは12質量%〜18質量%及び
無水マレイン酸5質量%〜15質量%、好ましくは8質量%〜12質量% 。
【0035】
相応するコポリマーは、自体公知の方法で、ラジカル重合によって得ることができる。EP−A264590は、例えばメチルメタクリレート、ビニル芳香族化合物、無水マレイン酸並びに場合による低級アリルアクリレートからのモノマー混合物から成形材料を製造する方法を記載しており、ここでは、50%の変換率に達するまでの重合が、重合不可能な有機溶剤の存在又は不存在下に実施され、かつ、この重合は、有機溶剤の存在下に75〜150℃の温度範囲で少なくとも50%の変換率から少なくとも80%の変換率に達するまで継続され、引き続き低分子量の揮発性成分は蒸発される。
【0036】
JP−A 60−147417中には、高い熱安定性ポリメタクリレート−成形材料の製造法が記載されており、ここでは、メチルメタクリレート、無水マレイン酸及び少なくとも1種のビニル芳香族化合物からのモノマー混合物が、溶液−又は塊状重合に好適である重合反応容器中に、100〜180℃の温度で供給され、かつ重合されている。DE−OS4440219は、もう一つの製造法を記載している。
【0037】
成分a)は、例えば、メチルメタクリレート6355g、スチレン1271g及び無水マレイン酸847gからのモノマー混合物に、t−ブチルペルネオデカノエート1.9g及び重合開始剤としてのt−ブチルペルオキシド−3,5,5−トリメチルヘキサノエート0.85g及び分子量調節剤としての2−メルカプトエタノール19.6g並びにパルミチン酸4.3gを加える方法で製造することができる。生じた混合物を重合容器中に充填し、例えば10分間ガス抜きすることができる。その後、水浴中で、例えば60℃で6時間、引き続き水浴温度55℃で30時間重合させることができる。約30時間後に、この重合混合物は約126℃でその最大温度に達する。水浴からの重合容器の取り出しの後に、この重合容器中の成分a)に相応するポリマーをなお、例えば空気キャビネット中、117℃で約7時間熱処理する。
【0038】
成分b)
成分b)は、架橋ポリ(メタ)アクリレートをベースとする耐衝撃性向上剤である。この成分b)は、コア/シェル/シェル構造を有しているのが有利である。
【0039】
ポリメタクリレート−プラスチック用の耐衝撃性向上剤は、充分公知である。耐衝撃性改良されたポリメタクリレート−成形材料の製造及び構成は、例えばEP−A0113924、EP−A0522351、EP−A0465049、EP−A0683028及びUS3793402中に記載されている。
【0040】
好ましい耐衝撃性向上剤はコア−シェル−シェル−構造を有し、乳化重合によって得ることのできるポリマー粒子である(例えばEP−A0113924、EP−A0522351、EP−A0465049及びEP−A0683028参照)。このエマルジヨンポリマーの典型的な粒径(直径)は、100〜600nm、好ましくは200〜500nmの範囲内にある。
【0041】
1つのコア及び2つのシェルを有する3層又は3相構造は、次のようにして調達することができる。最内部の(硬い)シェルは、例えば主にメチルメタクリレート、少割合のコモノマー、例えばエチルアクリレート及び架橋剤分、例えばアリルメタクリレートから成っていることができる。中間の(軟かい)シェルは、例えばブチルアクリレート及びスチレンから構成されていてよく、他方、最外部の(硬い)シェルは、主に大部分はマトリックスポリマーに相当し、これはマトリックスに対する相容性及び良好な結合性を与える。
【0042】
この場合に、本発明の範囲内で「(メタ)アクリレート」なる記載は、アクリレート、メタクリレート並びに双方の混合物を表している。従ってこれには、次式:
【化1】

[式中、Rは水素又はメチル基を表す]の基少なくとも1個を有する化合物が包含される。殊にアルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートがこれに属する。
【0043】
有利にコアは、それぞれ全質量に対して、
A) アルキル基中の炭素原子数1〜20、有利には1〜12、特に好ましくは1〜8、殊に1〜4を有するアルキルメタクリレート−繰り返し単位50.0質量%〜99.9質量%、適切には60.0質量%〜99.9質量%、有利には75.0質量%〜99.9質量%、特に好ましくは80.0質量%〜99.0質量%、殊に85.0質量%〜99.0質量%、
B) アルキル基中の炭素原子数1〜20、有利には1〜12、殊に1〜8を有するアルキルアクリレート−繰り返し単位0.0質量%〜40.0質量%、有利には0.00質量%〜24.9質量%、適切には1.0質量%〜29.9質量%、殊に1.0質量%〜14.9質量%、
C) 架橋性繰り返し単位0.1質量%〜2.0質量%及び
D) 一般式(I):
【化2】

のスチレン系繰り返し単位0.0質量%〜8.0質量%
(この際、記載の質量%は、合計100.0%になる)を包含している。
【0044】
この場合に、化合物A)、B)、C)及びD)は、勿論相互に異なっており、殊に化合物A)及びB)には、架橋性モノマーC)は包含されない。
【0045】
基R〜Rは相互に無関係に、水素、ハロゲン、殊に弗素、塩素又は臭素又は炭素原子数1〜6を有するアルキル基、有利には水素を表す。基Rは、水素又は炭素原子数1〜6を有するアルキル基、有利には水素を特徴とする。特に好適な炭素原子数1〜6を有するアルキル基は、メチル−、エチル−、n−プロピル−、イソ−プロピル−、n−ブチル−、s−ブチル−、t−ブチル−、n−ペンチル−、n−ヘキシル基並びにシクロペンチル−及びシクロヘキシル基である。
【0046】
従って、一般式(I)のスチレン系繰り返し単位には、一般式(Ia)のモノマーの重合によって得られる繰り返し構造単位が包含される。
【0047】
【化3】

【0048】
一般式(Ia)の好適なモノマーには、殊にスチレン、側鎖中にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα−メチルスチレン及びα−エチルスチレン、環に1個のアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエン及びp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン及びテトラブロモスチレンが包含される。
【0049】
前記のアルキルメタクリレート−繰り返し単位(A)とは、メタクリル酸のエステルの重合により得られる、繰り返し構造単位であると理解される。メタクリル酸の好適なエステルには、殊に次のものが包含される:メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、s−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−オクチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、2−メチル−オクチルメタクリレート、2−t−ブチルヘプチルメタクリレート、3−イソ−プロピルヘプチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、5−メチルウンデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2−メチルドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、5−メチルトリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、2−メチルヘキサデシルメタクリレート、ヘプタデシルメタクリレート、5−イソ−プロピルヘプタデシルメタクリレート、5−エチルオクタデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ノナデシルメタクリレート、エイコシルメタクリレート、シクロアルキルメタクリレート、例えばシクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、3−ビニル−2−ブチル−シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート、ボルニルメタクリレート及びイソボルニルメタクリレート。
【0050】
本発明の特に好ましい1実施形によれば、コアは、メチルメタクリレート−繰り返し単位を、全質量に対して少なくとも50質量%、適切には少なくとも60質量%、有利には少なくとも75質量%、殊に少なくとも85質量%の量で含有する。
【0051】
前記のアルキルアクリレート−繰り返し単位(B)とは、アクリル酸のエステルの重合によって得られる繰り返し構造単位であると理解される。このアクリル酸の好適なエステルには、次のものが包含される:殊にメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−オクチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、2−メチル−オクチルアクリレート、2−t−ブチルヘプチルアクリレート、3−イソ−プロピルヘプチルアクリレート、デシルアクリレート、ウンデシルアクリレート、5−メチルウンデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、2−メチルドデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、5−メチルトリデシルアクリレート、テトラデシルアクリレート、ペンタデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、2−メチルヘキサデシルアクリレート、ヘプタデシルアクリレート、5−イソ−プロピルヘプタデシルアクリレート、5−エチルオクタデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、ノナデシルアクリレート、エイコシルアクリレート、シクロアルキルアクリレート、例えばシクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、3−ビニル−2−ブチル−シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、ボルニルアクリレート及びイソボルニルアクリレート。前記の架橋性繰り返し単位(C)とは、架橋性モノマーの重合によって得られる繰り返し構造単位であると理解される。好適な架橋性モノマーには、殊に本発明による重合条件下に架橋に関与することのできる全ての化合物が包含される。これには殊に次のものが属する:
(a)2官能性の(メタ)アクリレート、有利には
一般式:
【化4】

[式中、Rは水素又はメチルであり、nは2以上、有利には3〜20の正の整数を表す]の化合物、殊にプロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール及びエイコサンジオールのジ(メタ)アクリレート;
一般式:
【化5】

[式中、Rは水素又はメチルであり、nは1〜14の正の整数を表す]の化合物、殊にエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ドデカエチレングリコール、テトラデカエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びテトラデカプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート;
グリセリンジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス[p−(γ−メタクリルオキシ−β−ヒドロキシプロポキシ)−フェニルプロパン]又はビス−GMA、ビスフェノール−A−ジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1分子当たり2〜10個のエトキシ基を有する2,2’−ジ(4−メタクリルオキシポリエトキシフェニル)プロパン及び1,2−ビス(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン;
(b)3−又は多官能性の(メタ)アクリレート、殊にトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;
(c)少なくとも2個の異なる反応性C−C−二重結合を有するグラフト架橋剤、殊にアリルメタクリレート及びアリルアクリレート;
(d)芳香性架橋剤、殊に1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼン及び1,4−ジビニルベンゼン。
【0052】
コアの成分A)〜D)の質量割合の選択は、このコアが低くても10℃、有利には低くても30℃のガラス転移温度Tgを有するように行うのが有利である。この場合に、このポリマーのガラス転移温度Tgは、公知方法で差動走査熱量法(DSC)を用いて測定することができる。更にこのガラス転移温度Tgは、フォックス−方程式(Fox-Gleichung)を用いてこれから近似的に算出することもできる。Fox T.G.,Bull.Am.Physics Soc.1,3,123頁(1956)によれば、
【数1】

[式中、Xnはモノマーnの質量割合(質量%/100)を表し、Tgnはモノマーnのホモポリマーのガラス転移温度(ケルビン)を表す]が当てはまる。当業者は、Polymer Handbook 2nd Edition、J.Wiley & Sons,New York(1975)から、更なる補助的ヒントを得ることができ、ここには、流通しているホモポリマーのTg−値が記載されている。
【0053】
本発明によるコア−シェル−シェル−粒子の第1シェルは、30℃より低い、有利には10℃より低い、殊に0〜−75℃の範囲のガラス転移温度を有する。この場合に、ポリマーのガラス転移温度Tgは、前記のように差動走査熱量法(DSC)を用いて測定でき、かつ/又はフォックス−方程式を用いて近似的にこれから算出することができる。
【0054】
第1シェルは、その全質量に対して次の成分を包含している:
E)(メタ)アクリレート−繰り返し単位 92.0質量%〜98.0質量%及び
F)一般式(I)のスチレン系繰り返し単位 2.0質量%〜8.0質量%
(この際、質量%は合計100質量%になる)。
【0055】
本発明の全く特別に好ましい実施形の範囲で、第1シェルは、
E−1) アルキル基中の炭素原子数3〜8を有するアルキルアクリレート−繰り返し単位及び/又はアルキル基中の炭素原子数7〜14を有するアルキルメタクリレート−繰り返し単位、殊にブチルアクリレート−及び/又はドデシルメタクリレート−繰り返し単位
90.0質量%〜97.9質量% 及び
E−2) 架橋性繰り返し単位 0.1質量%〜2.5質量%、
F) 一般式(I)のスチレン系繰り返し単位 2.0質量%〜8.0質量%
(この際、質量部は有利に、合計100.0質量部になる)
を包含する。
【0056】
この場合に、化合物E−1)、E−2)及びF)は、勿論相互に異なっており、殊に化合物E−1)には、架橋性モノマーE−2)は包含されない。
【0057】
第2シェルは、全質量に対して少なくとも75質量%の(メタ)アクリレート−繰り返し単位を包含する。これは、有利に
G) アルキル基中の炭素原子数1〜20、有利には1〜12、殊に1〜8を有するアルキルメタクリレート−繰り返し単位 50.0質量%〜100.0質量%、適切には60.0質量%〜100.0質量%、特に好ましくは75.0質量%〜100.0質量%、殊に85.0質量%〜99.5質量%、
H) アルキル基中の炭素原子数1〜20、有利には1〜12、殊に1〜8を有するアルキルアクリレート−繰り返し単位 0.0質量%〜40.0質量%、有利には0.0質量%〜25.0質量%、殊に0.1質量%〜15.0質量%、
I)一般式(I)のスチレン系繰り返し単位 0.0質量%〜10.0質量%、有利には0.0質量%〜8.0質量%
(この際、記載の質量%は、有利に合計100.0質量%になる)
を含有する。
【0058】
本発明の特別に好ましい1実施形によれば、第2シェルは、その全質量に対して少なくとも50質量%の、適切には少なくとも60質量%、有利には少なくとも75質量%、殊に少なくとも85質量%のメチルメタクリレート−繰り返し単位を含有する。
【0059】
更に、第2シェルの成分の選択は、この第2シェルが低くても10℃、有利には低くても30℃のガラス転移温度Tgを有するように行うのが望ましい。この場合に、ポリマーのガラス転移温度Tgは、前記のように差動走査熱量法(DSC)を用いて測定され、かつ/又はフォックス−方程式を用いて近似的にこれから算出することができる。
【0060】
場合により存在する第2シェルを含むコア−シェル−粒子の合計半径(Gesamtradius)は、160より大きく260nmまでの範囲、有利には170〜255nmの範囲、殊に175〜250nmの範囲内にある。この場合にこの合計半径は、クールター法(Coulter-Verfahren)により測定される。文献に中に公知のこの粒径測定法は、粒子が狭い測定オリフィスを通過する際に特徴的に変化する電気抵抗の測定に基づく。更なる詳細は、例えばNachr. Chem. Tech. Lab. 43, 553-566 (1995) から知ることができる。
【0061】
更に、本発明の目的のためには、その全質量に対して、それぞれ
i)コア 5.0質量%〜50.0質量%、有利には15.0質量%〜50.0質量%、適切には25.0質量%〜45.0質量%、殊に30.0質量%〜40.0質量%、
ii)第1シェル 20.0質量%〜75.0質量%、有利には30.0質量%〜60.0質量%、適切には35.0質量%〜55.0質量%、殊に40.0質量%〜50.0質量% 及び
iii)第2シェル 0.0質量%〜50.0質量%、有利には5.0質量%〜40.0質量%、適切には10.0質量%〜30.0質量%、殊に15.0質量%〜25.0質量%
から成る(この際、質量%は有利に、合計100.0質量%になる)
ことが特別好適であると立証された。
【0062】
本発明によるコア−シェル−粒子の製造は、自体公知の方法で、例えば多段乳化重合を用いて行うことができる。適切にはこれは、水及び乳化剤を予め装入する方法によって行なわれる。この場合に、初装入物は有利に、水90.00〜99.99質量部及び乳化剤0.01〜10.00質量部を含有し、この際、記載の質量部は合計100.00質量部になるのが最適である。
【0063】
次いで、この初装入物に、段階的に次の順序で
b)コア用のモノマーを所望の割合で添加し、かつそれぞれその全質量に対して少なくとも85.0質量%、有利には少なくとも90.0質量%、適切には少なくとも95.0質量%、殊に少なくとも99質量%の変換率に達するまで重合させ、
c)第1シェル用のモノマーを所望の割合で添加し、かつそれぞれその全質量に対して少なくとも85.0質量%、有利には少なくとも90.0質量%、適切には少なくとも95.0質量%、殊に少なくとも99質量%の変換率に達するまで重合させ、
d)場合により、第2シェル用のモノマーを所望の割合で添加し、かつそれぞれその全質量に対して少なくとも85.0質量%、有利には少なくとも90.0質量%、適切には少なくとも95.0質量%、殊に少なくとも99質量%の変換率に達するまで重合させる。
【0064】
この場合に本発明の意味でのポリマーは、それぞれの出発化合物A)〜I)、いわゆるモノマーと比べて、少なくとも10倍の分子量を有する化合物である。
【0065】
各々の工程における重合の反応工程の追跡は、公知方法で、例えば重量測定により又はガスクロマトグラフィを用いて行うことができる。
【0066】
本発明によれば、工程b)〜d)での重合は、有利に0〜120℃の範囲、有利には30〜100℃の範囲の温度で実施される。
【0067】
この場合に60〜90℃の範囲、適切には70〜85℃の範囲、有利には75〜85℃の範囲の重合温度が全く特別に好適であることが証明された。
【0068】
重合の開始は、乳化重合のために慣用の開始剤を用いて行われる。好適な有機の開始剤は、例えば、t−ブチル−ヒドロペルオキシド又はクモールヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシドである。好適な無機の開始剤は、過酸化水素並びにペルオキソ二硫酸のアルカリ金属−及びアンモニウム塩、殊にナトリウム−及びカリウムペルオキソジスルフェートである。
【0069】
好適なレドックス−開始剤系は、例えば3級アミンとペルオキシド又は二亜硫酸ナトリウム及びペルオキソ二硫酸のアルカリ金属−及びアンモニウム塩、殊にナトリウム−及びカリウムペルオキソジスルフェート又は特に好ましくはペルオキシドとの組み合わせ物である。更なる詳細については、専門文献、殊にH. Rauch-Puntigam, Th.Voelker, "Acryl- und Metacrylverbindungen" Springer, Heidelberg, 1967又は Kirl-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology , Vol. 1, 386頁以降, J.Wiley, New York , 1987 から知ることができる。本発明の範囲では、有機及び/又は無機の開始剤の使用が特別好ましい。
【0070】
記載の開始剤は、単独でも、混合しても使用できる。これらは、有利には、それぞれの工程のモノマーの全質量に対して0.05〜3.0質量%の量で使用される。重合の経過で並びに種々異なる重合温度で、フリーラジカルの供給を一定に保持するために、重合を、異なる半価時間の種々の重合開始剤の混合物を用いて実施することも有利でありうる。
【0071】
バッチの安定化は、有利に乳化剤及び/又は保護コロイドを用いて行なわれる。低い分散液粘度を得るためには乳化剤による安定化が好ましい。乳化剤の全量は、モノマーA)〜I)の合計質量に対して有利に0.1〜5質量%、殊に0.5〜3質量%である。特別好適な乳化剤は、アニオン−又は非イオン乳化剤又はこれらの混合物、殊に次のものである:
≫ アルキルスルフェート、有利にはアルキル基中の炭素原子数8〜18を有するもの、アルキル基中の炭素原子数8〜18及びエチレンオキシド単位1〜50個を有するアルキル−、アルキルアリールエーテルスルフェート;
≫ スルホネート、有利にはアルキル基中の炭素原子数8〜18を有するアルキルスルホネート、アルキル基中の炭素原子数8〜18を有するアルキルアリールスルホネート、スルホコハク酸とアルキル基中の炭素原子数4〜15を有する1価のアルコール又はアルキルフェノールとのエステル又は半エステル;場合によってはこれらアルコール又はアルキルフェノールは、エチレンオキシド単位1〜40個でエトキシル化されていてもよい;
≫ 燐酸部分エステル及びそのアルカリ−及びアンモニウム塩、有利にはアルキル−又はアルキルアリール基中の炭素原子数8〜20を有するアルキル−及びアルキルアリールホスフェート;
≫ 有利にアルキル基中の炭素原子数8〜20及びエチレンオキシド単位8〜40個を有するアルキルポリグリコールエーテル;
≫ 有利にアルキル−又はアルキルアリール基中の炭素原子数8〜20及びエチレンオキシド単位8〜40個を有するアルキルアリールポリグリコールエーテル;
≫ エチレンオキシド/プロピレンオキシド−コポリマー、有利には、好適にエチレンオキシド−又はプロピレンオキシド単位8〜40個を有するブロックコポリマー。
【0072】
本発明によれば、アニオン乳化剤及び非イオン乳化剤からの混合物を使用するのが有利である。この場合に、アニオン乳化剤としてのスルホコハク酸とアルキル基中の炭素原子数4〜15を有する1価のアルコール又はアルキルフェノールとのエステル又は半エステル及び非イオン乳化剤としての好ましくアルキル基中の炭素原子数8〜20及びエチレンオキシド単位8〜40個を有するアルキルポリグリコールエーテルからの8:1〜1:8の質量比での混合物が全く特別に効を奏した。
【0073】
場合によっては、乳化剤は保護コロイドと混合して使用することもできる。好適な保護コロイドには、特に部分鹸化されたポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチル−、メチル−、ヒドロキシメチル−、ヒドロキシプロピル−セルロース、澱粉、蛋白質、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルスルホン酸、メラミンホルムアルデヒドスルホネート、ナフタリンホルムアルデヒドスルホネート、スチレン−マレイン酸−及びビニルエーテルマレイン酸−コポリマーが包含される。保護コロイドが使用される場合には、これは、有利にモノマーA)〜I)の合計量に対して0.01〜1.0質量%の量で行われる。保護コロイドを、重合の開始前に予め装入するか又は配量添加することができる。
【0074】
開始剤は、予め装入するか又は配量添加することができる。更に、開始剤の一部分を予め装入し、かつ残分を配量添加することも可能である。
【0075】
バッチを重合温度まで加熱しかつ開始剤を配量添加することによる重合は、有利に水溶液中で開始させるのが有利である。乳化剤及びモノマーの配量は、別々に実施するか又は混合物として実施することができる。乳化剤及びモノマーからの混合物の配量添加の際には、乳化剤及びモノマーが重合反応器に前接続されているミキサー中で予め混合されるように処置する。予め装入されなかった乳化剤残分及びモノマー残分を、重合の開始後に相互に別々に配量添加するのが有利である。重合の開始の15〜30分後に配量を開始するのが有利である。
【0076】
更に本発明の目的にとって、初装入物がいわゆる「種ラテックス」(これは有利にアルキル(メタ)アクリレートの重合により得られており、更に好適には3.0〜20.0nmの範囲の粒子半径を有している)を含有していることが特別有利である。これらの小さい半径は、種ラテックス上への規定の重合(この際に、シェルが種ラテックスの周りに形成され、かつこのように製造された粒子の半径はクールター法で測定された)の後に計算することができる。文献中に公知のこの粒径測定法は、粒子が狭い測定オリフィスを通過する際に特徴的に変化する電気抵抗の測定に基づく。更なる詳細は、例えばNachr.Chem.Tech.Lab.43,553−566(1995)から知ることができる。
【0077】
この種ラテックスに、特有のコアのモノマー成分、即ち第1組成物が、有利に新たな粒子の形成が避けられるような条件下で添加される。これによって、第1方法工程で生じるポリマーがシェル状に種ラテックスの周りに沈殿される。同様に、第1シェル材料のモノマー成分(第2組成物)が、新たな粒子の形成が避けられるような条件下でこのエマルジヨンポリマーに添加される。これによって、第2工程で生じるポリマーは、生じるコアの周りにシェル状に沈殿される。この処置法は各々の他のシェルについて相応して繰り返すことができる。
【0078】
本発明のもう一つの好ましい実施形によれば、本発明によるコア−シェル−粒子が、種ラテックスの代わりに有利に炭素原子数12〜20を有する長鎖脂肪族アルコールを乳化して装入する乳化重合法によって得られる。この方法の好ましい1実施形では、長鎖脂肪族アルコールとしてステアリルアルコールが使用される。このコア−シェル−構造は、前記の処理法と同様に、新しい粒子の形成を避けながら、相応するモノマーの段階的添加及び重合によって得られる。この重合法に関する更なる詳細は、当業者は、特許明細書DE3343766、DE3210891、DE2850105、DE2742178及びDE3701579から知ることができる。
【0079】
しかしながら、本発明の範囲では、具体的な処置法とは無関係に、第2及び第3のモノマー混合物を消耗の程度に応じて配量添加することが全く特別に好適であることが証明された。
【0080】
殊に第2シェルの(コ)ポリマーの連鎖長の調節は、分子量調節剤、殊にそのために公知のメルカプタン、例えばn−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール又は2−エチルヘキシルチオグリコレート、ペンタエリスリットテトラチオグリコレートの存在下で、モノマー又はモノマー混合物を重合することにより行うことができ;この際、分子量調節剤は一般に、モノマー混合物に対して0.05〜5質量%の量で、好ましくはモノマー混合物に対して0.1〜2質量%の量、特に好ましくは0.2〜1質量%の量で使用される(例えば、H.Rauch-Puntigam,Th.Voelker, "Acryl-und Methacrylverbindungen", Springer,Heidelberg, 1967;Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie,Bd. XIV/1. 66頁,Georg Thieme,Heidelberg, 1961又はKirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, Vol.1, 296頁以降,J.Wiley, New York,1978参照)。分子量調節剤として、n−ドデシルメルカプタンを使用するのが好ましい。
【0081】
重合の終結後に、残留モノマー除去のために、公知の方法を使用して、例えば開始剤使用後重合を用いて後重合させることができる。
【0082】
本発明の方法は、殊に水性分散液の全質量に対して50質量%より大きい高固体含分を有する水性分散液の製造のために好適であるので、全ての物質の相対的割合を、水性分散液の全質量に対するモノマーの全質量が50.0質量%より大きく、適切には51.0質量%より大きく、有利には52.0質量%より大きくなるように選択するのが好適である。この関連で考慮すべき物質には、モノマーと並んで他の使用される全ての物質、例えば水、乳化剤、開始剤、場合による調節剤及び保護コロイド等もこれに属する。
【0083】
本発明の方法により得られる水性分散液は、低い凝集物含分で優れており、これは、水性分散液の全質量に対して有利に5.0質量%を下回り、適切には3.0質量%を下回り、殊に1.5質量%を下回っている。本発明の全く特別好ましい1実施形によれば、この水性分散液は、その全質量に対して1.0質量%を下回る、有利には0.5質量%を下回る、適切には0.25質量%を下回る、殊に0.10質量%又はそれ下回る量の凝集物を有する。
【0084】
ここで、この関連における概念「凝集物(Koagulat)」とは、この分散液を、フィルター布No.0.90 DIN4188が張られているフィルタースリーブ(Filter-manschette)を通す適切な濾過によって濾去することのできる水に不溶な成分を意味している。
【0085】
本発明におけるコア−シェル−粒子は、この分散液から、例えばスプレー乾燥、凍結凝集、電解質添加による又はDE2750682A1又はUS4110843におけるようなガス抜き押出機を用いて実施可能であるような機械的又は熱的負荷による沈殿によって、得ることができる。他の記載の方法がこの場合に水溶性の重合助剤が少なくとも部分的にポリマーから分離されるという利点を有するとしても、スプレー乾燥の方法が最も慣用されている。
【0086】
成分c)
成分c)は、単独で又は成分d)と一緒に存在することのできる任意成分である。
【0087】
成分c)は、モノマー組成物中の成分a)と一致していてもよい。その製造は、重合パラメータを高分子量のポリマーが得られるように選択する差違を有して、極めて類似の方法で行うことができる。これは例えば、使用分子量調節剤量の減少によって行うことができる。
【0088】
成分c)は、クロロホルム中、25℃での溶液粘度(ISO 1628−パート6) 65以上、好ましくは68〜75ml/gであることを特徴とする、高分子量(メタ)アクリレート(コ)ポリマーである。例えば、Roehm GmbH & Co.KGにより製造された成形材料プレキシグラス(Plexiglas)(R)hw55を使用することができる。
【0089】
これは、160000g/モルの分子量M(重量平均)(検量標準としてのポリメチルメタクリレートに対するゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィを用いるMの測定)に相当することができる。分子量Mの測定は、例えばゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィ又は光散乱法により行うことができる(例えば、H.F.Mark et al.,Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,2nd.Edition,Vol.10, 1頁以降、J.Wiley,1989参照)。
【0090】
成分c)は、モノマー組成物中で成分a)と一致していてもよい。この成分c)は、好ましくはメチルメタクリレート、スチレン及び無水マレイン酸からのコポリマーである。
【0091】
好適な量割合は、例えば次の通りであってよい:
メチルメタクリレート50質量%〜90質量%、好ましくは70質量%〜80質量%、
スチレン10質量%〜20質量%、好ましくは12質量%〜18質量% 及び
無水マレイン酸5質量%〜15質量%、好ましくは8質量%〜12質量% 。
【0092】
成分d)
成分d)は、単独で又は成分c)と一緒に使用される/使用できる任意成分である。
【0093】
成分d)は、a)とは異なる他の(メタ)アクリレート(コ)ポリマーであり、クロロホルム中、25℃での溶液粘度(ISO 1628−パート6)50〜55、好ましくは52〜54ml/gの特徴を有している。例えば、Roehm GmbH & Co.KG製の成形材料プレキシグラス (R)8n又は成形材料を使用することができる。
【0094】
これは、80000〜200000(g/モル)、好ましくは100000〜150000の範囲の分子量M(重量平均)に相当することができる。この分子量Mの測定はゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィ又は光散乱法によって行うことができる(例えばB. H.F.Mark et al.,Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,2nd.Edition, Vol.10,1頁以降., J.Wiley,1989 参照)。
【0095】
成分d)は、メチルメタクリレート少なくとも80質量%及び場合によるメチルメタクリレートと共重合可能である他のモノマー20質量%までからのホモポリマー又はコポリマーである。
【0096】
成分d)は80質量%〜100質量%、有利には90質量%〜99.5質量%がラジカル重合されたメチルメタクリレート単位から成っており、かつ、場合により0質量%〜20質量%、好ましくは0.5質量%〜10質量%が他のラジカル重合可能なコモノマー、例えばC〜C−アルキル(メタ)アクリレート、殊にメチルアクリレート、エチルアクリレート又はブチルアクリレートから成っている。マトリックスの平均分子量Mは、90000g/モル〜200000g/モル、殊に100000g/モル〜150000g/モルの範囲内にあるのが有利である。
【0097】
成分d)は、好ましくはメチルメタクリレート95質量%〜99.5質量%及びメチルアクリレート0.5質量%〜5質量%、好ましくは1質量%〜4質量%からのコポリマーである。
【0098】
この成分d)は、低くても107℃、好ましくは108℃〜114℃のビカー軟化点VET(ISO 306−B50)を有することができる。メルトインデックスMVR(ISO 1133、230℃/3.8kg)は、例えば2.5cm/10min以上の範囲にあることができる。
【0099】
慣用の添加剤、助剤及び/又は充填剤
ポリマー混合物は公知のように、なお慣用の添加剤、助剤及び/又は充填剤、例えば熱安定剤、UV−安定剤、UV−吸収剤、酸化防止剤を含有することができる。
【0100】
射出成形法のためには、殊に射出成形型へのポリマー混合物の可能な付着を避ける又は完全に阻止することのできる滑剤又は離型剤が重要である。
【0101】
従って、助剤としては、C20より少ない、好ましくはC16〜C18の炭素原子数を有する飽和脂肪酸又はC20より少ない、好ましくはC16〜C18の炭素原子数を有する飽和脂肪アルコールの群から選択される滑剤を含有することができる。ポリマー混合物に対して最大で0.25例えば0.05〜0.2質量%の低い量割合で含有するのが好ましい。
【0102】
例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸とパルミチン酸とからの工業用混合物が好適である。更に、例えばn−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、並びにn−ヘキサデカノールとn−オクタデカノールとからの工業用混合物が好適である。
【0103】
特に好ましい滑剤又は離型剤はステアリルアルコールである。
【0104】
射出成形された成形体
本発明によるポリマー混合物から、自体公知の方法で、射出成形法で相応する射出成形された成形体を製造することができる。
【0105】
使用
ポリマー混合物は、次の特性を有する、射出成形された成形体の製造のために使用することができる:
≫ 少なくとも2500、好ましくは少なくとも2600、特に好ましくは少なくとも2700MPaの引張弾性率(ISO 527)、
≫ 低くとも110、好ましくは低くとも111、殊に低くとも110〜125℃のビカー軟化温度 VET(ISO 306−B50)、
≫ 少なくとも30、好ましくは少なくとも40KJ/m耐衝撃性 SZ(ISO 179、エッジワイズ)及び
≫ 少なくとも1.0、好ましくは少なくとも1.5cm/10minのメルトインデックス MVR(ISO 1133、230℃/3.8kg)。
【0106】
射出成形された成形体は、家庭用器具、情報機器、ホビー又はスポーツ用品、車体部材又は自動車−、船舶−又は飛行機構造のボディー部の部材として使用することができる。車体部材又は自動車のボディー部の部材の典型的な例は、例えばスポイラー、パネル、ルーフモジュール又は外ミラーハウジングである。
【0107】
本発明の有利な作用効果
本発明によるポリマー混合物又は成形材料から、殊に自動車外部材のために設定されるような高い材料要件を満足する成形体、例えば射出成形部材を製造することができる。この場合に、特に重要な4つの要件、引張弾性率ビカー軟化点耐衝撃性及びメルトインデックスを同時に、加工及び使用のために好適である大きさに確保することができる。殊に、良好な流動性は、難しい部品形状の場合でも射出成形で必要な加工性をもたらす。この場合に、同時に、高い強靱性、高い耐候性及び熱安定性の射出成形部材を得ることができることは、意想外のことである。更に、なお一連の他の望ましい特性、例えば耐化学薬品性、黄色値及び固有色が平均して満足しうるように達成される。成分a)〜d)の混合割合を介して、この特性プロフィルは、特有の場合の要件に対応して個々に調節することができる。
【0108】
実施例
成分a)の製造:
メチルメタクリレート6355g、スチレン1271g及び無水マレイン酸847gからのモノマー混合物に、t−ブチルペルネオデカノエート1.9g及び重合開始剤としてのt−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート0.85g及び分子量調節剤としての2−メルカプトエタノール19.6g並びにパルミチン酸4.3gを加える。
【0109】
生じる混合物を重合容器中に充填し、10分間ガス抜きする。その後、水浴中、60℃で6時間重合させ、引き続き55℃水浴温度で30時間重合させる。約30時間の後に、この重合混合物は、126℃でその最大温度に達する。重合容器を水浴から取り出した後に、この重合容器中のポリマーを、空気キャビネット中、117℃で、なお7時間熱処理する。
【0110】
生じたコポリマーは澄明であり、かつ殆ど無色であり、48.7ml/gのV.N.(ISO 1628−6、25℃、クロロホルムによる溶液粘度数)を有する。このコポリマーの流動性を、ISO 1133により、230℃及び3.8kg、MVR=3.27cm3/10minで測定した。
【0111】
成分a)は、メチルメタクリレート75質量%、スチレン15質量%及び無水マレイン酸10質量%からの前記コポリマーである。
【0112】
成分b)は、次のようにして製造された:
次の一般的製造処方による乳化重合を用いて、次に記載のコア−シェル−シェル−粒子を製造した。この場合に、第1表に記載のエマルジョンI〜IIIを使用した。
【0113】
83℃(タンク−内部温度)で、撹拌下に水19.416kgを重合タンク中に予め装入した。炭酸ナトリウム16.2g及び種ラテックス73gを添加した。引き続き、エマルジョンIを1時間かかって配量添加した。エマルジョンIの供給の10分後にエマルジョンIIを約2時間かかって配量添加した。引き続きエマルジョンIIの供給の約90分後に、エマルジョンIIIを約1時間かかって配量添加した。エマルジョンIIIの供給の30分後に、30℃まで冷却させた。
【0114】
コア−シェル−粒子の分離のために、分散液を−20℃で2日かかって凍結させ、その後再び融解させ、かつ凝集された分散液を濾過布を通して分離した。固体の乾燥を、乾燥箱中、50℃で行った(時間:約3日)。
【0115】
コア−シェル−粒子の粒径は234nmであり、クールターN4装置を用いて測定され、この際、粒子は分散液中で測定された。
【0116】
【表1】

【0117】
成分c)として、ISO 1628−6、25℃、クロロホルムの溶液粘度数68ml/gを有する、メチルメタクリレート75質量%、スチレン15質量%及び無水マレイン酸10質量%からの市販のコポリマーを使用した。
【0118】
成分d)として、クロロホルム中、25℃(ISO 1628−6)での溶液粘度約52〜54ml/gを有する、メチルメタクリレート99質量%及びメチルアクリレート1質量%からの市販のコポリマーを使用した。
【0119】
本発明による実施例1〜3
例1
成分a): 50質量%
成分b): 15.6質量%
成分c): −
成分d): 34.4質量%
滑剤 : ステアリルアルコール0.1質量%(成分a)〜d)の合計に対して)
からのポリマー混合物。
【0120】
例2
成分a): 50質量%
成分b): 13質量%
成分c): 37質量%
成分d): −
滑剤 : ステアリルアルコール0.2質量%(成分a)〜d)の合計に対して)
からのポリマー混合物。
【0121】
例3
成分a): 52質量%
成分b): 9質量%
成分c): 39質量%
成分d): −
滑剤 : ステアリルアルコール0.2質量%(成分a)〜d)の合計に対して)
からのポリマー混合物。
【0122】
比較例(比較例4〜5)
比較例4
成分a): 48質量%
メタブレンIR441: 19質量%(ミツビシの耐衝撃性向上剤)
成分d): 33質量%
滑剤: ステアリルアルコール0.1質量%(成分a)〜d)の合計に対して)
からのポリマー混合物。
【0123】
比較例5
成分a): 50質量%
メタブレンIR441: 13質量%
成分c): 37質量%
成分d): −
滑剤: ステアリルアルコール0.2質量%(成分a)〜d)の合計に対して)
からのポリマー混合物。
【0124】
【表2】

【0125】
これらの結果は、本発明による耐衝撃性向上剤の低い耐衝撃性向上剤濃度で、耐衝撃性(SZ)は大きくなり、かつビカー軟化点(VET)は上昇することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分:
a.クロロホルム中、25℃での溶液粘度(ISO 1628−パート6)55ml/g以下であることを特徴とする、メチルメタクリレート、スチレン及び無水マレイン酸から成る低分子量(メタ)アクリレート(コ)ポリマー 25〜75質量%、
b.架橋ポリ(メタ)アクリレートをベースとする耐衝撃性向上剤 7〜60質量%、
c.クロロホルム中、25℃での溶液粘度(ISO 1628−パート6)65ml/g以上であることを特徴とする、高分子量(メタ)アクリレート(コ)ポリマー 10〜50質量%
及び/又は
d.クロロホルム中、25℃での溶液粘度(ISO 1628−パート6)50〜55ml/gであることを特徴とする、a)とは異なるもう1種の(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの高分子量(メタ)アクリレートコポリマー 10〜50質量%
を含有するポリマー混合物であって、
この際、成分a)、b)、c)及び/又はd)は、それぞれ独自に個々のポリマーとして解することも、ポリマーの混合物として理解することもでき、
この際、a)、b)、c)及び/又はd)は合計100質量%になり、かつ
この際、このポリマー混合物は、なお慣用の添加剤、助剤及び/又は充填剤を含有することができ、かつ
この際、このポリマー混合物から製造される試験体は、同時に次の特性:
≫ 少なくとも2500MPaの引張弾性率(ISO 527)、
≫ 低くても110℃のビカー軟化点VET(ISO 306−B50)、
≫ 少なくとも30KJ/m耐衝撃性SZ(ISO 179、エッジワイズ)及び
≫ 少なくとも1.0cm/10minのメルトインデックスMVR(ISO 1133、230℃/3.8kg)
を有することを特徴とする、ポリマー混合物。
【請求項2】
成分a)は、
メチルメタクリレート 50質量%〜90質量%、
スチレン 10質量%〜20質量% 及び
無水マレイン酸 5質量%〜15質量%
からのコポリマーであることを特徴とする、請求項3に記載のポリマー混合物。
【請求項3】
成分b)は、コア/シェル/シェル構造を有していることを特徴とする、請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載のポリマー混合物。
【請求項4】
コア、第1シェル及び第2シェルを有するコア−シェル−粒子であって、この際、
コアは、全質量に対して少なくとも75.0質量%の(メタ)アクリレート−繰り返し単位を包含し;
第1シェルは、30℃より低いガラス転移温度を有し;
第2シェルは、全質量に対して少なくとも75.0質量%の(メタ)アクリレート−繰り返し単位を包含しているものにおいて、
第1シェルは、その全質量に対して、次の成分:
(メタ)アクリレート−繰り返し単位 92.0〜98.0質量% 及び
一般式(I):
【化1】

[式中、基R〜Rはそれぞれ相互に無関係に、水素、ハロゲン、C〜C−アルキル基又はC〜C−アルケニル基を表し、基Rは、水素又は炭素原子数1〜6を有するアルキル基である]のスチレン系繰り返し単位 2.0〜8.0質量%
を包含し、
この際、E)とF)の質量%は合計100.0質量%になり、
かつ、第2シェルを含むコア−シェル−粒子の半径は、クールター法で測定して160.0〜250.0nmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載のコア−シェル−粒子。
【請求項5】
それぞれ、全質量に対して
コア 5.0〜50.0質量%、
第1シェル 20.0〜75.0質量%及び
第2シェル 0.0〜50.0質量%
から成っており、この際、質量%は合計100.0質量%になることを特徴とする、請求項1に記載のコア−シェル−粒子。
【請求項6】
成分c)は、メチルメタクリレート、スチレン及び無水マレイン酸からのコポリマーであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー混合物。
【請求項7】
成分c)は、
メチルメタクリレート 50質量%〜90質量%、
スチレン 10質量%〜20質量% 及び
無水マレイン酸 5質量%〜15質量%
からのコポリマーであることを特徴とする、請求項6に記載のポリマー混合物。
【請求項8】
成分d)は、メチルメタクリレート少なくとも80質量%及び場合による、メチルメタクリレートと共重合可能である他のモノマー20質量%までからのホモポリマー又はコポリマーであることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリマー混合物。
【請求項9】
成分d)は、メチルメタクリレート95質量%〜99.5質量%及びメチルアクリレート0.5質量%〜5質量%からのコポリマーであることを特徴とする、請求項8に記載のポリマー混合物。
【請求項10】
助剤として滑剤を含有していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載のポリマー混合物。
【請求項11】
離型剤としてステアリルアルコールを含有していることを特徴とする、請求項10に記載のポリマー混合物。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載のポリマー混合物から成る、射出成形された成形体。
【請求項13】
次の特性:
I. 少なくとも2500MPaの引張弾性率(ISO 527)、
II. 低くても110℃のビカー軟化点VET(ISO 306−B50)、
III.少なくとも30KJ/m耐衝撃性(ISO 179−2D、フラットワイズ)及び
IV. 少なくとも1.0cm/10minのメルトインデックスMVR(ISO
1133、230℃/3.8kg)
を有する射出成形された成形体を製造するための、請求項1から11までのいずれか1項に記載のポリマー混合物の使用。
【請求項14】
家庭用器具、情報機器、ホビー又はスポーツ用品の部材、車体部材又は自動車−、船舶−又は飛行機構造中のボディー部の部材としての、請求項12又は13に記載の射出成形された成形体の使用。

【公表番号】特表2008−528712(P2008−528712A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551556(P2007−551556)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013514
【国際公開番号】WO2006/079394
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】