説明

高アカシアガム濃度の安定な果物調製品

本発明は、(i) (a)果物調製品の全重量に対して10〜22重量%のアカシアガムと(b)果物調製品の全重量に対して0.5〜3重量%の非水溶性セルロース繊維とを含む安定な果物調製品、または(ii) (a) 果物を含んだ生の乳製品の全重量に対して2〜6重量%、有利には4〜6重量%のアカシアガム、および(b) 果物を含んだ生の乳製品の全重量に対して0.1〜1重量%の非水溶性セルロース繊維、有利には小麦繊維を含有する、果物を含んだ生の乳製品のような食品に関する。独立請求項はその製造方法および用途にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多量のアカシアガム(acacia gum、アラビアガムに同じ)を含有する食品、有利には乳製品に関する。
西洋諸国では食物繊維摂取量が不足している。1日あたりの平均摂取量は10〜15gであるのに対し、栄養学的推奨量は20〜30gである。新鮮(生の)乳製品のような日常の食品への繊維の混入は繊維摂取量を増やす手段である。しかし、発酵食品への繊維の混入は次の問題に直面している。
【0002】
・非常にテクスチャー付与性の強い繊維の混入またはある種の水溶性繊維(多糖類)の乳タンパク質(カゼイン、漿性(seric)タンパク質<乳清タンパク質>)または植物性タンパク質(例、大豆)との不適合性 (相性の悪さ) に伴う技術的な困難性:製品の構造形成における混乱(発酵乳製品の場合は「乳性ゲル」と呼ばれる)を誘発し、またタンパク質を含有する相とガムを含有する相との分離を生じて、販売に不適当な製品が得られてしまう;または
・小麦フスマのような不溶性繊維または過度にテクスチャー付与性が高い水溶性繊維の官能的知覚(舌触り)の悪さに伴う官能性の面での困難性。
【0003】
また、FOS(フラクトオリゴ糖)またはイヌリンのような製品に対する消化許容量の問題を引き起こすこともある。
アカシアガムは、工学的観点(テクスチャー付与性が低いガム)および栄養学的観点(消化許容性がよい)から最も有益な形態の水溶性繊維の1つである。アカシアガムは天然の水溶性食物繊維である。それは、高分子量(100,000Daより大)で分岐型のコンパクトな(低い流体力学的容積の)多糖からなる。アラビアガムとも呼ばれるアカシアガムは、アカシア属の木の滲出物を当業者には周知の物理的方法によってのみ精製したものである。その精製は、粉砕、水への溶解、濾過、遠心分離、精密濾過、並びに噴霧乾燥もしくは造粒による乾燥からなる。acacia seyalガムおよびacacia senegal (アラビアゴムノキ) ガムの2種類のアカシアガムがある。それらは構造がやや異なる。しかし、それらは非常に異なる旋光能およびそれらの単糖組成 (アラビノース含有量が、acacia seyalガムでは46%、acacia senealガムでは24%) によって識別しうる。
【0004】
アカシアガムは、繊維供給源としてのその使用に加えて、食品加工産業においては安定剤またはテクスチャー付与剤 (texturing agent) として慣用されている。従って、それは特に一部の菓子類および一部の飲料に含まれている。
【0005】
アカシアガムは比較的コンパクトな分岐構造を有し、従って、ペクチンまたはグアーのような直鎖型の繊維に比べて粘度の発達がより低いということに留意することは重要である。
【0006】
米国特許第4,971,810号は、繊維供給源としてアラビアガム (最終製品226.8g当たり繊維2〜6g) を含有するヨーグルトの製造方法に関する。乳製品組成物中への繊維混入方法は、特にデンプンおよびゼラチンを混入するのに工業的に使用されている標準的な方法であり、発酵工程の前にガムとミルクを混合する。この方法は、繊維含有量が制限されているため乳製品中への繊維の混入が技術的または官能面での困難になんら遭遇しないことから、繊維が乳タンパク質と不適合性であることに付随する工業的な問題を解決するものではない。
【0007】
欧州出願公開EP 1 532 864は、アラビアガムを含有する軽いバターまたは軽いマーガリンの低脂肪乳製品に関する。目的とする製品は、エマルジョンに特有の巨視的構造を有する低脂肪製品である。この構造は、コロイド溶液のそれである発酵乳製品の巨視的構造とは非常に異なる。
【0008】
仏国特許出願公開FR 06/11132には、天然の攪拌型ヨーグルト (stirred yogurt) および濃縮アカシアガム懸濁液の混合過程を経た、撹拌型ヨーグルト中への多量のacacia senegalガムの混入の可能性について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,971,810号
【特許文献2】欧州出願公開EP 1 532 864
【特許文献3】仏国特許出願公開FR 06/11132
【発明の概要】
【0010】
しかし、産業レベルではなお好ましいプロセスである果物 (フルーツ) 調製品を経たアカシアガムの混入はいまだに問題があることがわかっている。
実際、アカシアガムは果物調製品に慣用されている安定剤である化工デンプン、ペクチン、イナゴ豆ガムおよびキサンタンガムと非常に相性がよいとはいえない。従って、現時点では、8〜10重量%より多量のアカシアガムを含有する安定な果物調製品を製造することは不可能であると考えられている。実際、この割合を超えると、果物調製品の相分離、従って、果物調製品中における水相の存在が認められるようになる。このような相分離は、果物調製品の産業上の利用を妨げる。
【0011】
別の無視できない産業面での制約も本発明者らにより考慮された。即ち、本発明を現在の果物調製品の生産ラインに容易に適用することができるように、従来の果物調製品の製造方法を保持することが求められた。
【0012】
予想外にも、本発明者らは、非水溶性のセルロース繊維、有利には小麦繊維をアカシアガムと共乾燥したものからなる系を安定剤として使用すると、多量 (10〜20%) のアカシアガムを含有する安定な果物調製品を得ることができることを発見した。
【0013】
従って、本発明は、下記成分を含有する安定な果物調製品に関する:
A) 果物調製品の全重量に対して10〜22重量%、有利には15〜22重量%のアカシアガム、並びに
B) 果物調製品の全重量に対して0.5〜3重量%、有利には0.75〜2重量%の非水溶性セルロース繊維。
【0014】
本発明によると、「果物調製品」なる用語は、果肉片 (フルーツ片) またはフルーツピューレを含有する任意の水性懸濁液を意味する。本発明によると、「フルーツピューレ」とは、丸ごと又は皮を剥いた果物の可食部分から、果汁を除去せずに裏漉し又は類似の手段により得られた、発酵可能であるが未発酵の製品に関する。ピューレは濃縮されていてもよく、その場合には、フルーツピューレから含まれている水分の所定割合を物理的に除去することにより得られる。
【0015】
有利には、果物は、例えば、リンゴ、オレンジ、レッドベリー類、イチゴ、桃、アンズ、プラム、ラズベリー、ブラックベリー、レッドカラント、レモン、グレープフルーツ、バナナ、パイナップル、キウイ、梨、サクランボ、ココナツ、パッションフルーツ、マンゴー、イチジク、ルバーブ、メロン、トロピカルフルーツ、ライチ (レイシ)、ブドウ類、ブルーベリー、並びにそれらの混合物といった当業者には公知の果物から選ばれる。
【0016】
本発明によると、「安定な果物調製品」なる用語は、10℃で8週間後の分離した液相の割合が、果物調製品の全重量に対して5重量%未満、有利には果物調製品の全重量に対して3重量%未満、さらに有利には果物調製品の全重量に対して1重量%未満である、上に定義した果物調製品を意味する。ここで「分離した液相」なる用語は、果物調製品の底部に現れる透明な水性相を意味する。分離した液相の割合が5重量%より少ない製品は、実際上は相分離がないので安定な製品であると考えられる。
【0017】
従って、本発明によりその後のその使用まで、例えば、フレッシュ(生の)乳製品のような食品へのその混入まで、少なくとも8週間の間はその果物調製品を保存することが可能になる。そのため、本発明にかかる果物調製品は直ちに使用する必要がない。
【0018】
有利には、非水溶性セルロース繊維は、小麦、綿および木材繊維並びにそれらの混合物から選ばれ、より有利には、該繊維は小麦繊維からなる。
有利には、セルロース繊維およびアカシアガムの一部は共乾燥混合物の形態とする。この混合物は、混合物の全重量に対して5〜30重量%、有利には20重量%の非水溶性セルロース繊維と、混合物の全重量に対して70〜95重量%、有利には80重量%のアカシアガムとを含有する。非水溶性セルロース繊維が30重量%を超えると、混合物は果物調製品製造中の再分散に関して問題を生ずることがある。非水溶性セルロース繊維が5重量%未満では、この混合物は有用性を失う。
【0019】
非水溶性セルロース繊維は、本発明の果物調製品において安定剤として作用する。しかし、それは一旦分散した後にはじめてその機能を発揮し、この分散は共乾燥した混合物中のアカシアガムによって起こる。そのため、共乾燥した混合物が果物調製品における安定剤として作用すると考えることができる。
【0020】
有利には、非水溶性セルロース繊維は小麦繊維である。有利には、使用する共乾燥混合物は、CNI社より「Equacia」(登録商標)なる名称で市販されている小麦繊維/アカシアガム系である。
【0021】
有利には、アカシアガムはacacia senegalガム、acacia seyalガムまたはそれらの混合物である。「acacia senegalガム」とはアラビアゴムノキ(Acacia senegal)属の樹木の天然分泌物から製造された、即ち、幹又は枝のタッピング(傷口からの樹液の採取)により製造されたガムを意味する。有利には、アカシアガムはCNI社から市販されているファイバーガムB(Fibregum B)(登録商標)である。この成分は95%(w/w)以上の繊維含有量を有する。
【0022】
本発明に従って使用されたアカシアガムおよび非水溶性セルロース繊維の含有量は、製品の製造中に実際に添加されたアカシアガムおよび非水溶性セルロース繊維に関係する量であることに留意することは重要である。この濃度は、果物調製品中の果物中に含まれことのある天然繊維の存在を計算に入れていない。
【0023】
有利には、本発明に係る果物調製品は、CENCOテクスチュロメータ(texturometer)(または、Bostwick装置、可能な参照文献: Fisher Scientific No. 15-347-50)を用いて20℃で測定して、5〜15、好ましくは5〜12のテクスチャー (この値はcm/minuteの単位で表される) を示す。
【0024】
この種のテクスチャー測定は当業者には一般に使用されている。果物調製品が均質混合物ではないため、この測定に慣用の粘度もしくはテクスチャー測定装置を使用することはできない。
【0025】
CENCO測定値が高いほど調製品の流動性が高い。
有利な1態様では、本発明に係る果物調製品は、糖類または甘味料と、場合によりアカシアガム以外の非セルロース系繊維 (フラクトオリゴ糖もしくはFOS、イヌリン、ポリデキストロース)、着色料、香料、並びに/または酸味料とを含有する。
【0026】
糖類は特に単糖類および二糖類である。単糖類としては、フラクトース、ガラクトース、グルコースが挙げられる。二糖類としては、特にスクロース(しょ糖)が挙げられる。
本発明はまた、下記工程を含むことを特徴とする、上述した果物調製品の製造方法にも関する:
a) 果物を50〜70℃の範囲内の温度に加熱し、
b) 下記成分を添加し:
・必要に応じて、糖類もしくは甘味料、有利には粉末またはシロップ形態のもの、
・混合物の全重量に対して5〜30重量%、有利には20重量%の非水溶性セルロース繊維と、混合物の全重量に対して70〜95重量%、有利には80重量%のアカシアガムとを含有する共乾燥混合物、場合により一部は粉末の形態でよく、および/または有利には水中分散液の形態であって、40〜70℃、有利には50〜60℃、より有利には50℃の温度に加熱されており、
・必要に応じて、水
・有利には粉末または濃厚溶液の形態の、アカシアガムの残部と、必要に応じて他の非セルロース系繊維、
c) 工程(b)で得られた生成物を70〜95℃、有利には80〜90℃、より有利には85℃の温度に3〜30分間、有利には5分間加熱し、
d) 工程(c)で得られた混合物を冷却し、そして
e) 必要に応じて、着色料、香料および/または酸味料を添加する。
【0027】
前記の共乾燥混合物は上述した通りであり、当業者には公知の方法で行われる共乾燥によって得られる。有利には、共乾燥は次のようにして行われる:
・アカシアガム溶液を調製し、
・非水溶性セルロース繊維の水中分散液を調製し、
・アカシアガム溶液と非水溶性セルロース繊維分散液とを混合し、この混合物を噴霧乾燥する。
【0028】
有利には、この共乾燥混合物を果物調製品の全重量に対して2.5〜15重量%、有利には5〜10重量%の量で本発明の果物調製品に添加する。
本発明はまた本発明に係る方法によって得ることができる果物調製品にも関する。
【0029】
また、本発明は、アカシアガムおよび非水溶性セルロース繊維を含有する食品の製造に対する本発明に係る果物調製品の使用、並びに本発明に係る果物調製品を含有する食品にも関する。
【0030】
有利には、前記食品は、果物を含有する生の(新鮮)乳製品、果物を含有する発酵野菜食品、またはそれらの混合物であり、有利には果物を含有する生の乳製品である。
「発酵野菜食品」なる用語は、大豆、オート麦 (カラス麦,燕麦)、米、小麦または大麦汁を主成分とする製品であって、微生物により生ずる1種または2種以上の発酵を受けた食品を意味する。
【0031】
有利には、前記食品は発酵乳製品からなる。
「発酵乳製品」なる用語は、より具体的には、そのままヒトが消費(摂取)できる発酵乳製品、即ち、発酵酪農食品を意味する。本出願は特に発酵乳およびヨーグルトに関する。それ以外に、この発酵乳製品は、クリームチーズまたはプチスイスチーズ (petit-suisse cheeses) でもよい。
【0032】
「発酵乳」および「ヨーグルト」なる用語は、乳製品産業の分野におけるそれらの普通の意味で使用される、即ち、乳基質の酸性化乳酸発酵から得られる、ヒトの食用を意図した製品を意味する。これらの製品は、果物、野菜などの追加成分を含有しうる。例えば、1988年12月31日付のフランス共和国官報で公布された1988年12月30日付の発酵乳およびヨーグルトに関する仏国行政命令No. 88-1203号を参照することができる。また、「コーデックス委員会(Codex Alimentarius)も参照できる (FAO<国連食糧農業機関>とWHO<世界保健機関>の指導下にコーデックス委員会作業部会(Codex Alimentarius Commission)により作製され、FAO情報部により発表され、http://www.codexalimentarius.netでオンライン利用可能;より具体的には"Codex Alimentarius"の第12巻、「乳および乳製品のコーデックス規格」および規格"CODEX STAN A-1 1(a)-1975"を参照)。
【0033】
従って、「発酵乳」なる用語は、本出願においては、各製品に特有の菌種に属する微生物が接種された、少なくともパスチャライズと同等の処理を受けた、乳汁(ミルク)を基質として調製された乳製品のことである。「発酵乳」は、使用した乳基質の構成成分を抽出することができる処理を何ら受けておらず、特に凝塊を排除する処理を受けてはいない。「発酵乳」の凝集・凝固は、使用した微生物の活性または作用から生ずるもの以外の手段によって得てはならない。従って、「発酵乳」とは、一般にヨーグルト以外の発酵乳を意味する用語として使用され、国により異なるが、例えば、「ケフィア」、「クミス (馬乳酒)」、「ラッシー」、「ダヒ」、「レーベン」、「フィルムヨーク」、「ヴィリ」、「アシドフィルスミルク」などと呼ばれることがある。「乳(汁)」又は「ミルク」なる用語は、牛、山羊、羊、水牛、馬、ラクダ、ロバの乳(汁)を意味する。好ましくは「乳(汁)」は牛乳である。
【0034】
「ヨーグルト」とは、ブルガリア菌(Lactobacillus bulgaricus)およびサーモフィラス菌(Streptococcus thermophilus)と呼ばれる特定の好熱性(高温性)乳酸菌の増殖により、局部的かつ恒常的な実施に依存して得られる発酵乳のことである。使用した乳酸菌は、乳部分に関して1グラム当たり少なくとも1千万個の割合で最終製品中に生きた状態で存在しなければならない。国によっては、規則によってヨーグルトの製造に他の乳酸菌の添加、特にビフィズス菌(Bifidobacterium)及び/又はアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)及び/又はカゼイ菌(Lactobacillus casei)の菌株の追加使用が認められる。これらの追加の乳酸菌株は、腸内細菌叢のバランスを良くしたり、あるいは免疫系の調節といった各種の特性を仕上がり製品に付与するために使用される。
【0035】
発酵乳基質中に含まれる遊離乳酸の量は、消費者への販売時点で100g当たり0.6g未満であってはならず、乳部分により供給されるタンパク質含有量は普通の乳汁中のそれより少なくなってはいけない。
【0036】
「クリームチーズ」および「プチスイスチーズ」なる用語は、本出願では、乳酸菌だけによる発酵を受けた(乳酸発酵以外の発酵を受けていない)未熟成で加塩されていないチーズのことである。クリームチーズの乾燥分含有量は、完全な乾燥後に、その脂肪分が25%より大であるか否かに応じて、クリームチーズ100g当たり15gまたは10gまで低下させてもよく、またはクリームチーズ100g当たり20g以上もしくは20g以下とすることができる。クリームチーズの乾燥分含有量は13〜20%である。プチスイスチーズの乾燥分含有量はプチスイスチーズ100g当たり23g以上である。その乾燥分含有量は一般に25〜30%である。クリームチーズおよびプチスイスチーズは一般に、本発明の技術分野において慣用されている「フロマージュ・フレ(fromage frais)」なる用語の中に共に区分けされるものである。
【0037】
1特定態様において、本発明は下記を含有する果物を含んだ生の(フレッシュな)乳製品に関する:
a) 果物を含んだ生の乳製品の全重量に対して2〜6重量%、有利には4〜6重量%のアカシアガム、および
b) 果物を含んだ生の乳製品の全重量に対して0.1〜1重量%の非水溶性セルロース繊維、有利には小麦繊維。
【0038】
有利には、本発明に係る果物を含んだ生の乳製品は、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、フロマージュ・フレ、および発酵乳から選ばれ、有利にはそれは攪拌型ヨーグルト(stirred yogurt)からなる。
【0039】
有利には、果物は、リンゴ、オレンジ、レッドベリー類、イチゴ、桃、アンズ、プラム、ラズベリー、ブラックベリー、レッドカラント、レモン、グレープフルーツ、バナナ、パイナップル、キウイ、梨、サクランボ、ココナツ、パッションフルーツ、マンゴー、イチジク、ルバーブ、メロン、トロピカルフルーツ、ライチ、ブドウ類、ブルーベリー、並びにそれらの混合物よりなる群から選ばれる。
【0040】
有利な1態様において、本発明に係る果物を含んだ生の乳製品は、10℃の温度および64 s-1の剪断で測定して、2000 mPa.s以下、有利には1500 mPa.s以下、より有利には600 mPa.s以下の粘度を示す。この粘度は、例えば、Rheometric Scientific Rheomat 180粘度計を用いて測定される。
【0041】
有利には、その脂肪分 (脂肪含有量) は、果物を含んだ生の乳製品の全重量に対して0〜8重量%の範囲内であり、より有利には果物を含んだ生の乳製品の全重量に対して3〜5重量%の範囲内である。
【0042】
「脂肪」なる用語は、その食品中に含まれる脂肪質物質 (油脂類) を意味する。脂肪分は最終製品の重量に対して測定される。
本発明によると、「剪断」なる用語は、有利にはs-1で表される剪断速度を意味する。
【0043】
有利には、本発明に係る果物を含んだ生の乳製品が示す分離した液相の含有量は、その果物を含んだ生の乳製品の全重量に対して5重量%以下、有利には3重量%以下、より有利には1重量%以下である。
【0044】
「分離した液相」なる用語は、製品を20〜28日貯蔵した後の賞味期限に近づいた時に、容器の底部に見られる透明な相を意味する。
「分離した液相の含有量」とは、賞味期限の最後に容器の底部に存在する液体の量に対応する。
【0045】
分離した液相の含有量が5%より少ない製品は、実際上は相分離がないので安定な製品であると考えられる。
こうして、有利には、本発明に係る果物を含んだ生の乳製品は、10℃で少なくとも28日間は安定である。
【0046】
本発明はまた本発明に係る果物を含んだ生の乳製品の製造方法にも関する。この製造方法は、生の乳製品中に本発明に係る果物調製品を混入する工程を含み、有利には、この果物調製品を、果物を含んだ生の乳製品の全重量に対して25重量%の量で混入する。
【0047】
本発明はまた本発明に係る方法により得ることができる、果物を含んだ生の乳製品にも関する。
本発明は最後に、混合物の全重量に対して5〜30重量%の非水溶性セルロース繊維、有利には小麦繊維と、混合物の全重量に対して70〜95重量%のアカシアガムとを含有する共乾燥混合物、有利には80重量%の非水溶性セルロース繊維と20重量%のアカシアガムとからなる共乾燥混合物の、アカシアガム含有果物調製品の安定剤としての使用にも関する。
【0048】
有利には、この共乾燥混合物の15重量%水性分散液の粘度は20℃の温度および10 s-1の剪断で3000 mPa.sより大である。
この粘度は、例えばRheometric Scientific Rheomat 180粘度計を用いて測定される。
【0049】
本発明は以下の実施例を参照するとより明確に理解されよう。
【実施例】
【0050】
実施例1:イチゴ調製品
下記処方を使用した。この果物調製品は約12%のアカシアガムと約12%のポリデキストロースとを含有する。
【0051】
IQF* イチゴ (断片状) 40.0%
スクロース (しょ糖) 11.6%
イソグルコースシロップ 2.7%
ポリデキストロース 13.35%
アカシアガム 6.8%
アカシア/小麦繊維系 (Equacia 80/20**) 6.5%
酸味料、着色料、香料、水を加えて 100%
*IQFは個別急速冷凍(Individually Quickly Frozen)を意味する;
**Equacia(登録商標) 80/20は、アカシアガム80%とセルロース繊維20%とからなる、Equacia(登録商標)の範囲内の成分に対応する。
【0052】
使用したアカシアガムは、CNI社のFibregum Bである。
ポリデキストロースはTate & Lyle社のStalite 370である。
果物調製品を得る方法:
この方法は下記工程を含む:
・イチゴを85℃で加熱する、
・糖類、ポリデキストロース、アカシアガムおよびアカシアガム/小麦繊維系の一部 (約40%) からなる混合物を添加する、
・アカシアガム/小麦繊維系の残り (約60%) を50℃の水中に分散させ、この分散液を果実中に混入し、全体を85℃に加熱する、
・冷却中に着色料、香料および酸味料を加える。
【0053】
この果物調製品は満足すべきテクスチャー (CENCO=8、D+1において)と、実験室規模で10℃に8週間保存中に満足すべき安定性とを有する。
実施例2:フルーツヨーグルトの製造
ヨーグルト75%/実施例1に従った果物調製品25%の割合で天然撹拌型ヨーグルトと混合することにより、アカシアガム3%を含めて繊維6%を含有する撹拌型果物ヨーグルトを得ることができる。
【0054】
この実施態様に対して使用した撹拌型ヨーグルト製造方法は、当業者により普通に使用されている方法 (特に、Bacteries Lactiques et Probiotiques; F. M. Luquet et al.; 2004を参照) である。
【0055】
このヨーグルトのテクスチャーは、普通の撹拌型ヨーグルトのテクスチャーによく一致している。
このヨーグルトの官能特性は訓練を受けていない1群のテスターにより満足できるものと評価された。
【0056】
10℃で28日間の保存中のこのヨーグルトの安定性は良好である。
実施例3:他のイチゴ調製品の処方
下記処方を使用した。この果物調製品は20重量%超のアカシアガムを含有している:
IQF* イチゴ (断片状) 40.0%
スクロース (しょ糖) 11.6%
イソグルコースシロップ 2.7%
アカシアガム (CNI Fibregum B) 12.5%
アカシア/小麦繊維系 (Equacia 90/10**) 10.0%
酸味料、着色料、香料、水を加えて 100%
*IQFは個別急速冷凍を意味する;
**Equacia(登録商標) 90/10は、アカシアガム90%とセルロース繊維10%とからなる、Equacia(登録商標)の範囲内の成分に対応する。
【0057】
従って、この果物調製品は、果物調製品の全重量に対して21.5重量%のアカシアガムと1重量%の非水溶性セルロース繊維とを含有する。
この果物調製品を得る方法は下記工程を含む:
・イチゴを85℃で加熱する、
・糖類およびアカシアガムの一部 (約60%)からなる混合物を添加する、
・アカシアガム/小麦繊維系とアカシアガムの残りを50℃の水中に分散させ、この分散液を果実中に混入し、全体を85℃に加熱する、
・冷却中に着色料、香料および酸味料を加える。
【0058】
この果物調製品は満足すべきテクスチャー (CENCO=9、D+1において)と、実験室規模で10℃に8週間保存中に満足すべき安定性とを有する。この条件下で、分離した液相の含有量は3%未満である。
【0059】
実施例4:イチゴヨーグルト
ヨーグルト75%/実施例3に従った果物調製品25%の割合で天然撹拌型ヨーグルトと混合することにより、アカシアガムを5%より多く含有する (本例の特定の態様ではアカシアガムの割合は5.37%) 撹拌型フルーツヨーグルトを得ることができる。この実施態様に対して使用した撹拌型ヨーグルト製造方法は、当業者により普通に使用されている方法 (特に、Bacteries Lactiques et Probiotiques; F. M. Luquet et al.; 2004を参照) である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分を含有する安定な果物調製品:
A) 果物調製品の全重量に対して10〜22重量%のアカシアガム、並びに
B) 果物調製品の全重量に対して0.5〜3重量%の非水溶性セルロース繊維。
【請求項2】
非水溶性セルロース繊維が、小麦、綿および木材繊維並びにそれらの混合物から選ばれ、有利には小麦繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の果物調製品。
【請求項3】
10℃で8週間後の分離した液相の含有量が5%未満であることを特徴とする、請求項1および2のいずれかに記載の果物調製品。
【請求項4】
CENCOテクスチュロメータを用いて20℃で測定されたテクスチャーが5〜15、好ましくは5〜12の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の果物調製品。
【請求項5】
さらに、糖類または甘味料と、場合によりアカシアガム以外の非セルロース系繊維、着色料、香料、並びに/または酸味料を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の果物調製品。
【請求項6】
下記工程を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の果物調製品の製造方法:
a) 果物を50〜70℃の範囲内の温度に加熱し、
b) 下記成分を添加し:
・必要に応じて、糖類もしくは甘味料、有利には粉末またはシロップ形態のもの、
・混合物の全重量に対して5〜30重量%、有利には20重量%の非水溶性セルロース繊維と、混合物の全重量に対して70〜95重量%、有利には80重量%のアカシアガムとを含有する共乾燥混合物、場合により一部は粉末の形態でよく、および/または有利には40〜70℃、より有利には50〜60℃、さらに有利には50℃の温度に加熱された水中分散液の形態であり、
・必要に応じて、水
・有利には粉末または濃厚溶液の形態の、アカシアガムの残部と、必要に応じて他の非セルロース系繊維、
c) 工程(b)で得られた生成物を70〜95℃、有利には80〜90℃、より有利には85℃の温度に3〜30分間、有利には5分間加熱し、
d) 工程(c)で得られた混合物を冷却し、そして
e) 必要に応じて、着色料、香料および/または酸味料を添加する。
【請求項7】
請求項6に記載の方法により得ることができる果物調製品。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかまたは請求項7に記載の果物調製品の、アカシアガムおよび非水溶性セルロース繊維を含有する食品の製造に対する使用。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかまたは請求項7に記載の果物調製品を含有する食品。
【請求項10】
果物を含有する生の乳製品、果物を含有する発酵野菜食品、またはそれらの混合物であり、有利には果物を含有する生の乳製品であることを特徴とする請求項9に記載の食品。
【請求項11】
下記を含有する果物を含んだ生の乳製品:
a) 果物を含んだ生の乳製品の全重量に対して2〜6重量%、有利には4〜6重量%のアカシアガム、および
b) 果物を含んだ生の乳製品の全重量に対して0.1〜1重量%の非水溶性セルロース繊維、有利には小麦繊維。
【請求項12】
ヨーグルト、ヨーグルト飲料、フロマージュ・フレ、および発酵乳から選ばれ、有利には攪拌型ヨーグルトからなることを特徴とする、請求項11に記載の果物を含んだ生の乳製品。
【請求項13】
果物がリンゴ、オレンジ、レッドベリー類、イチゴ、桃、アンズ、プラム、ラズベリー、ブラックベリー、レッドカラント、レモン、グレープフルーツ、バナナ、パイナップル、キウイ、梨、サクランボ、ココナツ、パッションフルーツ、マンゴー、イチジク、ルバーブ、メロン、トロピカルフルーツ、ライチ、ブドウ類、ブルーベリー、並びにそれらの混合物よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項11または12に記載の果物を含んだ生の乳製品。
【請求項14】
10℃の温度および64s-1の剪断で測定して、2000mPa.s以下、有利には1500mPa.s以下、より有利には600mPa.s以下の粘度を示すことを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載の果物を含んだ生の乳製品。
【請求項15】
脂肪分が、果物を含んだ生の乳製品の全重量に対して0〜8重量%の範囲内であり、有利には果物を含んだ生の乳製品の全重量に対して3〜5重量%の範囲内であることを特徴とする、請求項11〜14のいずれかに記載の果物を含んだ生の乳製品。
【請求項16】
分離した液相の含有量が、その果物を含んだ生の乳製品の全重量に対して5重量%以下、有利には3重量%以下、より有利には1重量%以下であることを特徴とする、請求項11〜15のいずれかに記載の果物を含んだ生の乳製品。
【請求項17】
10℃で少なくとも28日間は安定であることを特徴とする、請求項9〜10のいずれかに記載の果物を含んだ生の乳製品。
【請求項18】
生の乳製品中に、請求項1〜5のいずれかまたは請求項7に記載の果物調製品を混入する工程を含み、有利には、この果物調製品を、果物を含んだ生の乳製品の全重量に対して25重量%の量で混入することを特徴とする、請求項11〜17のいずれかに記載の果物を含んだ生の乳製品の製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法により得ることができる乳製品。
【請求項20】
混合物の全重量に対して5〜30重量%の非水溶性セルロース繊維、有利には小麦繊維と、混合物の全重量に対して70〜95重量%のアカシアガムとを含有する共乾燥混合物のアカシアガム含有果物調製品の安定剤としての使用。
【請求項21】
前記共乾燥混合物の15重量%水性分散液の粘度が20℃の温度および10 s-1の剪断で3000mPa.sより大であることを特徴とする、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記共乾燥混合物が、該混合物の全重量に対して20重量%の非水溶性セルロース繊維と該混合物の全重量に対して80重量%のアカシアガムとからなることを特徴とする、請求項20または21に記載の使用。

【公表番号】特表2010−531651(P2010−531651A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513930(P2010−513930)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058248
【国際公開番号】WO2009/003932
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(506375923)
【氏名又は名称原語表記】COMPAGNIE GERVAIS DANONE
【Fターム(参考)】