説明

高エネルギー密度レドックスフロー装置

正極または負極活物質のうちの少なくとも1つが、半固体であるか、または濃縮イオン貯蔵電気活性物質であり、電極活物質のうちの少なくとも1つが、電気化学反応が生じ、電気エネルギーを産生するアセンブリへ輸送され、およびアセンブリから輸送されるレドックスフローデバイスを説明する。半固体の電子伝導率は、懸濁への伝導性粒子の追加によって、および/または半固体の中の固体の表面改質を介して(例えば、デバイスの出力を増加させるように、より電子伝導性の被覆材料で固体を被覆することによって)増加させられる。高エネルギー密度および高出力レドックスフローデバイスを開示する。本明細書で説明されるレドックスフローデバイスはまた、1つ以上の発明の設計特徴を含むこともできる。加えて、レドックスフローデバイスで使用するための発明の化学的性質も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮特許出願第61/287,180号(名称「High Energy Density Redox Flow Device」、2009年12月16日出願)の米国特許法第119条第(e)項の優先権を主張する。これらの出願の各々は、全ての目的のためにその全体が参照することによって本明細書に援用される。
【0002】
(参照による援用)
本願に引用される全ての特許、特許出願、および書類は、全ての目的のために本明細書に参照することによりその全体が組み込まれる。
【0003】
(連邦支援の研究開発に関する記述)
本発明は、エネルギー省によって与えられる補助金番号DE−FC26−05NT42403の下で政府支援によってなされた。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
バッテリは、異なるイオンの電気化学的電位において、イオン源およびイオン受信側を分離することによって、電気化学的エネルギーを貯蔵する。電気化学的電位の差は、正極および負極間に電圧差を生じさせ、この電圧差は、電極が導体素子によって接続される場合に、電流を生じさせる。バッテリの中で、負極および正極は、2つの導体素子によって並列に接続される。外部素子は電子のみを伝導し、内部素子(電解質)はイオンのみを伝導する。電荷不均衡を負極と正極との間で持続させることはできないため、これら2つのフローの流れによって、イオンおよび電子は同じ分率で供給される。動作中、電子電流は、外部装置を駆動するように使用することができる。充電式バッテリは、サービス中の放電するバッテリの用途として、逆方向に電子電流およびイオン電流を駆動する反対の電圧差の印加によって再充電することができる。それゆえ、充電式バッテリの活物質は、イオンを受容し提供することができる必要がある。増加した電気化学的電位は、より大きな電圧差をカソードとアノードとに生じさせ、増加した電圧差によって、装置の単位質量当たりの電気化学的に貯蔵されるエネルギーを増加させる。高出力装置に対しては、イオン源および受信側は大きなイオン伝導性を伴う素子によって分離器に、および高電子伝導性素子を伴う電流コレクタに接続される。
【0005】
充電式バッテリは、静的な負極/電解質および正極/電解質媒体を使用して構築することができる。この場合、装置の非エネルギー貯蔵素子は、装置の固定容積または質量分率を含み、それによって、装置のエネルギーおよび電力密度を減少させる。電流を抽出することができる分率はまた、陽イオンを伝導することができる距離によって制限される。それゆえ、静的セルの電力要件は、装置の長さの尺度を制限することによって、総容量を制約する。
【0006】
フローセルまたはレドックスバッテリ、あるいは可逆燃料セルとしても知られるレドックスフローバッテリは、その中の正および負極反応物がセルの動作中に酸化または減少する溶液中の可溶性金属イオンである、エネルギー貯蔵装置である。2つの可逆レドックス対を使用すると、液状のレドックス反応が正および負極で行われる。レドックスフローセルは、通常、正極および負極の反応物(それぞれカソード液およびアノード液とも呼ばれる)を分離するイオン輸送膜と、電子を外部回路へ輸送することを促進するが、レドックス反応には関与しない(すなわち、電流コレクタ物質自体はファラデー活性を経ない)正および負電流コレクタ(電極とも呼ばれる)とを少なくとも備える、電力生成アセンブリを有する。レドックスフローバッテリについては、非特許文献1、非特許文献2および非特許文献3によって議論されている。
【0007】
フローバッテリの構成要素および従来の1次または2次バッテリの構成要素に対する用語の違いが、本願で述べられる。フローバッテリの中の電極活性溶液は、電解質がもっぱらイオン輸送媒体であってファラデー活性を経ないリチウムイオンバッテリの中での実践とは対照的に、通常電解質を、具体的にはカソード液およびアノード液を指す。フローバッテリでは、レドックス反応が起こり、電子が外部回路からまたは外部回路へ輸送される非電気化学的活性構成要素が、電極として知られるのに対して、従来の1次または2次バッテリではそれらは電流コレクタとして知られる。
【0008】
レドックスフローバッテリは、カソード液およびアノード液リザーバのサイズを増加することによって、総電荷容量のほとんど任意の値にまで組み立てることができるという事実を含む、多くの魅力的な特徴を有するものの、それらの制限のうちの1つは、液体溶媒の中の金属イオンのレドックス対の溶解性によって主に決定されている、それらのエネルギー密度が比較的低いことである。イオンの溶解性を増加することによって、エネルギー密度を増加させる方法が知られており、通常、電極溶液の酸性度の増加を伴う。しかしながら、このようにして、セル構成要素、貯蔵容器、および関連配管の腐食を増加すること等によって、どれがセル動作の他の側面にとって有害になる場合があるのかを測定する。さらに、金属イオン溶解性が増加されてもよい程度は限定される。
【0009】
水溶性電解質バッテリ、特に、電気活性物質として亜鉛を利用するバッテリの分野では、金属粒子の懸濁液を含み、その懸濁液が膜および電流コレクタを通過して流される電解質が説明されてきた。例えば、特許文献1および特許文献2、ならびに特許文献3を参照されたい。表明されているそのような電極の目的は、有害なZn金属樹状突起形成を防止すること、電極の有害な不動態化を防止すること、またはセルが放電するにつれ、正極の中に溶解できる亜鉛酸塩の量を増加させることである。しかしながら、そのような流動化
バッテリのエネルギー密度は、粒子の懸濁液を伴う電解質が使用される時でさえ、比較的低いままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4126733号明細書
【特許文献2】米国特許第5368952号明細書
【特許文献3】欧州特許第0330290号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】C.Ponce de Leon,A.Frias−Ferrer,J.Gonzalez−Garcia,D.A.Szantos and F.C.Walsh,“Redox Flow Batteries for Energy Conversion,”J.Power Sources,160,716(2006)
【非特許文献2】M.Bartolozzi,“Development of Redox Flow Batteries:A Historical Bibliography,”J.Power Sources,27,219(1989)
【非特許文献3】M.Skyllas−Kazacos and F.Grossmith,“Efficient Vanadium Redox Flow Cell,”Journal of the Electrochemical Society,134,2950(1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それゆえ、高エネルギー密度および高電力密度のエネルギー貯蔵装置への必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
正極または負極活物質のうちの少なくとも1つが、半固体あるいは濃縮イオン貯蔵液体反応物を含んでもよく、電極活物質のうちの少なくとも1つが、電気化学反応が生じるアセンブリから輸送され、かつアセンブリへ輸送され、電気エネルギーを生じさせ得る、レドックスフローエネルギー貯蔵装置について記載される。“半固体”は、物質が、例えば、スラリー、粒子懸濁液、コロイド懸濁液、乳濁液、ゲル、またはミセルといった、液相および固相の混合物であることを意味する。“濃縮イオン貯蔵液体”または“濃縮液体”は、液体が水溶性フローセルカソード液またはアノード液の場合のように単なる溶媒ではなく、むしろ液体それ自体がレドックス活性であることを意味する。もちろん、そのような液体の形態はまた、低融解液相、乳濁液、またはイオン貯蔵液体を含むミセルを形成するような、そのような希釈液との混合を含む、希釈液あるいは溶媒である、別の非レドックス活性液体によって希釈されるか、あるいは混合されてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスが提供される。レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、第1の外側電極電流コレクタ、少なくとも部分的に第1の電極電流コレクタ内に配置される第2の内側電極電流コレクタ、および該第1と第2の電極電流コレクタとを少なくとも部分的に分離するイオン透過媒体と、少なくとも部分的に該第1の電極電流コレクタと該イオン透過媒体との間に配置される第1の電極活物質と、少なくとも部分的に該第2の電極電流コレクタと該イオン透過媒体との間に配置される第2の電極活物質とを備えることができ、該第1および第2の電極活物質のうちの少なくとも1つは、流体を含み、該第1の電極電流コレクタおよび該第2の電極電流コレクタのうちの少なくとも1つは、他方の電極電流コレクタに対してその長手軸の周りで回転させられることが可能である。
【0015】
一式の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス用の流動性イオン貯蔵レドックス組成物が説明される。いくつかの実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、正極活物質、負極活物質、該正極活物質と負極活物質とを分離するイオン透過媒体とを備え、該正および負極活物質のうちの少なくとも1つは、デバイスの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である、流動性イオン貯蔵レドックス組成物を含み、該流動性イオン貯蔵レドックス組成物は、ケトン、ジケトン、トリエーテル、1つの窒素および1つの酸素原子を含有する化合物、1つの窒素および2つの酸素原子を含有する化合物、2つの窒素原子および1つの酸素原子を含有する化合物、リン含有化合物、および/またはこれらのフッ素化、ニトリル、および/またはペルフルオロ化誘導体から選択される、少なくとも1つの化合物を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス用の音響エネルギー源が提供される。いくつかの実施形態では、正極活物質と、負極活物質と、該正と負極活物質とを分離するイオン透過媒体とを備え、該正および負極活物質のうちの少なくとも1つは、該デバイスの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である、流動性イオン貯蔵レドックス組成物を含み、流動性イオン貯蔵レドックス組成物は、固体を含み、該音響エネルギー源は、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス内の固体の蓄積を阻止するように、および/またはレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス内の流動性イオン貯蔵レドックス組成物の粘度を低減するように構築および配設される。
【0017】
一式の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス用のインラインセンサが説明される。いくつかの実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、正極活物質、負極活物質、および該正極活物質と負極活物質とを分離するイオン透過媒体であって、該正および負極活物質のうちの少なくとも1つは、デバイスの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である流動性イオン貯蔵レドックス組成物を含む、イオン透過媒体と、流動性イオン貯蔵レドックス組成物の特性を決定するように構築および配設されるインラインセンサとを備える。
【0018】
いくつかの実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス用の流動性イオン貯蔵レドックス組成物が説明される。レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、正極活物質、負極活物質、および該正と負極活物質とを分離するイオン透過媒体とを備え、該正および負極活物質のうちの少なくとも1つは、セルの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である流動性イオン貯蔵レドックス組成物を含み、流動性イオン貯蔵レドックス組成物は、水性液体担体を含み、イオンは、LiまたはNaを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、正極活物質、負極活物質、および該正極活物質と負極活物質とを分離するイオン透過媒体であって、該正および負極活物質のうちの少なくとも1つは、デバイスの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である、流動性イオン貯蔵レドックス組成物を含む、正極活物質、負極活物質、およびイオン透過媒体と、流動性イオン貯蔵レドックス組成物が配置される容積と流体的に連絡しているか、または容積内に位置する混合流体源であって、混合流体は、流動性イオン貯蔵レドックス組成物と非混和性である、混合流体源とを備える。
【0020】
一式の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、第1の極性の第1の電極活物質、第2の反対極性の第2の電極活物質、第1の電極活物質と第2の電極活物質とを分離するイオン透過媒体であって、第1および第2の電極活物質のうちの少なくとも1つは、セルの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である、流動性イオン貯蔵レドックス組成物を含む、イオン透過媒体と、流動性イオン貯蔵レドックス組成物と接触している可動表面であって、可動表面は、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスを通して流動性イオン貯蔵レドックス組成物の流動を少なくとも部分的に方向付けるように構築および配設される、可動表面とを備える。
【0021】
いくつかの実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス用の流動性イオン貯蔵レドックス組成物が説明され、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、正極活物質、負極活物質、該正極活物質と負極活物質とを分離するイオン透過媒体とを備え、該正および負極活物質のうちの少なくとも1つは、デバイスの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物を含み、該流動性イオン貯蔵レドックス組成物は、エーテル、ケトン、ジエーテル、ジケトン、エステル、トリエーテル、炭酸塩、アミド、イオン含有化合物、リン含有化合物、イオン液体、およびこれらのフッ素化、ニトリル、および/またはペルフルオロ化誘導体のうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
一側面では、レドックスフローエネルギー貯蔵装置が説明される。レドックスフローエネルギー貯蔵装置は、
正極電流コレクタ、負極電流コレクタ、および正電流コレクタと負電流コレクタとを分離するイオン透過膜と、
正極電流コレクタとイオン透過膜との間に配置される正極であって、正極電流コレクタおよびイオン透過膜は、正極を収容する正電気活性帯を画定する、正極と、
負極電流コレクタとイオン透過膜との間に配置される負極であって、負極電流コレクタおよびイオン透過膜は、負極を収容する負電気活性帯を画定する、負極と
を含む、
正極および負極のうちの少なくとも1つは、セルの動作中にイオンを吸収または放出することができる、流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物を含む。
【0023】
一部の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵装置の正極および負極の両方は、流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物を含む。
【0024】
一部の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵装置の正極および負極のうちの1つは、流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物を含み、残りの電極は、従来の静止電極である。
【0025】
一部の実施形態では、流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物は、ゲルを含む。
【0026】
一部の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスの流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物の定常状態せん断粘度は、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスの動作温度において約1cPと約1,500,000cPとの間、または約1cPと1,000,000cPとの間である。
【0027】
一部の実施形態では、イオンは、Li、Na、またはHから成る群より選択される。
【0028】
一部の実施形態では、イオンは、LiおよびNa、Mg、Al3+およびCa2+から成る群より選択される。
【0029】
一部の実施形態では、流動性の半固体イオン貯蔵レドックス組成物は、イオン貯蔵化合物を含む固体を含む。
【0030】
一部の実施形態では、イオンは、プロトンまたはヒドロキシルイオンであり、イオン貯蔵化合物は、ニッケルカドミウムまたはニッケル金属水素化物バッテリで使用される化合物を含む。
【0031】
一部の実施形態では、イオン貯蔵化合物は、置換または変換反応を受けることによってイオンを貯蔵する。
【0032】
一部の実施形態では、イオンは、リチウムであり、イオン貯蔵化合物は、CuF、FeF、FeF、BiF、CoF、およびNiF等の金属フッ化物から成る群から選択される。
【0033】
一部の実施形態では、イオンは、リチウムであり、イオン貯蔵化合物は、CoO、Co、NiO、CuO、およびMnO等の金属酸化物から成る群から選択される。
【0034】
いくつかの実施形態では、イオン貯蔵化合物は、層間化合物を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、イオンは、リチウムであり、イオン貯蔵化合物は、層間化合物を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、イオンは、ナトリウムであり、イオン貯蔵化合物は、層間化合物を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、イオンは、リチウムであり、イオン貯蔵化合物は、式Li1−x−z1−zPOを伴う化合物から選択される層間化合物を含み、Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、およびNiから成る群より選択される、少なくとも1つの第1遷移金属を含み、xは、0から1であり、zは、正または負となり得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、イオンは、リチウムであり、イオン貯蔵化合物は、式(Li1−x)MPOを伴う化合物から選択される層間化合物を含み、Mは、V、Cr、Mn、Fe、Co、およびNiのうちの1つ以上であり、Zは、Ti、Zr、Nb、Al、またはMgのうちの1つ以上の等の非アルカリ金属ドーパントであり、xは、0.005から0.05に及ぶ。
【0039】
いくつかの実施形態では、イオンは、リチウムであり、イオン貯蔵化合物は、式LiMPOを伴う化合物から選択される層間化合物を含み、Mは、V、Cr、Mn、Fe、Co、およびNiのうちの1つ以上であり、化合物は、随意で、Li、M、またはO部位においてドープされる。
【0040】
一部の実施形態では、イオンは、リチウムであり、イオン貯蔵化合物は、A(M’1−aM”(XD、A(M’1−aM”(DXD、およびA(M’1−aM”(Xから成る群から選択される層間化合物を含み、式中、xと、y(1−a)を掛けたM’の単数または複数の形式原子価と、yaを掛けたM”の単数または複数の形式原子価との和は、zを掛けたXD、X、またはDXD基の形式原子価に等しく、Aは、アルカリ金属および水素のうちの少なくとも1つであり、M’は、第一遷移金属であり、Xは、リン、硫黄、ヒ素、モリブデン、およびタングステンのうちの少なくとも1つであり、M”は、IIA、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、およびVIB族金属のうちのいずれかであり、Dは、酸素、窒素、炭素、またはハロゲンのうちの少なくとも1つである。
【0041】
一部の実施形態では、イオンは、リチウムであり、イオン貯蔵化合物は、(A1−aM”M’(XD、(A1−aM”M’(DXD)z、およびA1−aM”M’(Xから成る群から選択される層間化合物を含み、式中、(1−a)xと、axを掛けたM”の単数または複数の形式原子価の数と、yを掛けたM’の単数または複数の形式原子価との和は、zを掛けた前記XD、X、またはDXD基の形式原子価に等しく、Aは、アルカリ金属および水素のうちの少なくとも1つであり、M’は、第一遷移金属であり、Xは、リン、硫黄、ヒ素、モリブデン、およびタングステンのうちの少なくとも1つであり、M”は、IIA、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、およびVIB族金属のうちのいずれかであり、Dは、酸素、窒素、炭素、またはハロゲンのうちの少なくとも1つである。
【0042】
一部の実施形態では、イオンは、リチウムであり、イオン貯蔵化合物は、α−NaFeOおよび斜方晶系LiMnO構造型を有する化合物を含む、規則岩塩型化合物LiMO、もしくは異なる結晶対称、原子配列、あるいは金属または酸素の部分置換のそれらの誘導体から成る群より選択される、層間化合物を含み、式中、Mは、少なくとも1つの第一遷移金属を含むが、Al、Ca、Mg、またはZrを含むがそれらに限定されない非遷移金属を含んでもよい。
【0043】
一部の実施形態では、流動性の半固体イオン貯蔵レドックス組成物は、非晶質炭素、不規則炭素、黒鉛炭素、または金属被覆もしくは金属装飾された炭素を含む、固体を含む。
【0044】
一部の実施形態では、流動性の半固体イオン貯蔵レドックス組成物は、金属または金属合金、半金属もしくは半金属合金、またはシリコンを含む、固体を含む。
【0045】
一部の実施形態では、流動性の半固体イオン貯蔵レドックス組成物は、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノトリポッド(nanotripod)およびナノテトラポッドを含むナノ構造を含む、固体を含む。
【0046】
一部の実施形態では、流動性の半固体イオン貯蔵レドックス組成物は、有機レドックス化合物を含む、固体を含む。
【0047】
一部の実施形態では、正極は、α−NaFeOおよび斜方晶系LiMnO構造型を有する化合物を含む、規則岩塩型化合物LiMO、もしくは異なる結晶対称、原子配列、あるいは前記金属または酸素の部分置換のそれらの誘導体から成る群より選択される、固体を含む、流動性の半固体イオン貯蔵レドックス組成物を含み、式中、Mは、少なくとも1つの第一遷移金属を含むが、Al、Ca、Mg、またはZrを含むがそれらに限定されない非遷移金属を含んでもよく、負極は、非晶質炭素、不規則炭素、黒鉛炭素、あるいは金属被覆または金属装飾された炭素から成る群より選択される、固体を含む、流動性の半固体イオン貯蔵レドックス組成物を含む。
【0048】
一部の実施形態では、正極は、A(M’1−aM”(XD、A(M’1−aM”(DXD、およびA(M’1−aM”(Xから成る群より選択される固体を含む、流動性の半固体イオン貯蔵レドックス組成物を含み、式中、xと、y(1−a)を掛けたM’の単数または複数の形式原子価と、yaを掛けたM”の単数または複数の形式原子価との和は、zを掛けたXD、X、またはDXD基の形式原子価に等しく、Aは、アルカリ金属および水素のうちの少なくとも1つであり、M’は、第一遷移金属であり、Xは、リン、硫黄、ヒ素、モリブデン、およびタングステンのうちの少なくとも1つであり、M”は、IIA、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、およびVIB族金属のうちのいずれかであり、Dは、酸素、窒素、炭素、またはハロゲンのうちの少なくとも1つであり、負極は、非晶質炭素、不規則炭素、黒鉛炭素、あるいは金属被覆または金属装飾された炭素から成る群より選択される固体を含む、流動性の半固体イオン貯蔵レドックス組成物を含む。
【0049】
一部の実施形態では、正極は、スピネル型構造を伴う化合物を含む、流動性の半固体イオン貯蔵レドックス組成物を含む。
【0050】
一部の実施形態では、正極は、LiMnおよびその誘導体、構造が規則岩塩およびスピネル配列を有するナノスケール領域を含む層状スピネルナノ複合材料、LiNi0.5Mn1.5を含むがこれに限定されない、4.3Vを超える電圧(対Li/Li)を有するいわゆる“高電圧スピネル”、MがMn、Fe、Co、またはNiのうちの1つ以上を含むオリビンLiMPOおよびそれらの誘導体、LiVPOF等の部分的にフッ素化された化合物、以下に記載されるような他の“ポリアニオン”化合物、ならびにVおよびV11を含む酸化バナジウムVから成る群より選択される化合物を含む、流動性の半固体イオン貯蔵レドックス組成物を含む。
【0051】
一部の実施形態では、負極は、黒鉛、黒鉛ホウ素・炭素合金、硬質または不規則炭素、チタン酸リチウムスピネル、あるいは、金属Sn、Bi、Zn、Ag、およびAl、ならびに半金属SiおよびGeを含む金属間化合物を形成するようにリチウムと反応する、固体金属または金属合金、もしくは半金属または半金属合金を含む、流動性の半固体イオン貯蔵レドックス組成物を含む。
【0052】
一部の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵装置は、流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物を貯蔵するための貯蔵タンクをさらに含み、貯蔵タンクは、レドックスフローエネルギー貯蔵装置と流体的に連絡する。
【0053】
一部の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵装置は、流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物を正/負電気活性帯に導入するための入口と、流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物が正/負電気活性帯から退出するための出口とを含む。一部の特定の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵装置はさらに、流体的に連絡を可能にするように流体輸送装置を含む。ある特定の実施形態では、流体輸送装置は、ポンプである。ある特定の実施形態では、ポンプは、蠕動ポンプである。
【0054】
一部の実施形態では、流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物はさらに、1つ以上の添加物を含む。ある特定の実施形態では、添加物は、導電性添加物を含む。ある他の実施形態では、添加物は、増粘剤を含む。また他の特定の実施形態では、添加物は、ゲッターの作用で水を除去する化合物を含む。
【0055】
一部の実施形態では、流動性の半固体イオン貯蔵レドックス組成物は、導電性塗料で被覆されるイオン貯蔵固体を含む。ある特定の実施形態では、導電性塗料は、固体より高い電子伝導性を有する。ある特定の実施形態では、固体は、黒鉛であり、導電性塗料は、金属、金属炭化物、金属窒化物、または炭素である。ある特定の実施形態では、金属は、銅である。
【0056】
一部の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵装置はさらに、1つ以上の参照電極を含む。
【0057】
一部の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵装置の流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物は、約50kWhより少ない総エネルギーで、約150Wh/kgより大きい比エネルギーを提供する。
【0058】
一部の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵装置の半固体または濃縮液体イオン貯蔵物質は、約100kWhより少ない総エネルギーで約200Wh/kgより大きい比エネルギーを、または約300kWhより少ない総エネルギーで約250Wh/kgより大きい比エネルギーを提供する。
【0059】
一部の実施形態では、濃縮液体イオン貯蔵物質は、液体金属合金を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、流動性のレドックス組成物は、導電性である。いくつかの実施形態では、流動性のレドックス組成物は、エネルギー貯蔵デバイスが動作される温度で、少なくとも約10−6S/cm、少なくとも約10−5S/cm、少なくとも約10−4S/cm、または少なくとも約10−3S/cmの電気伝導率を有する。いくつかの実施形態では、半固体イオン貯蔵レドックス組成物は、その流動および/または非流動状態で導電性である。いくつかの実施形態では、該組成物は、エネルギー貯蔵デバイスが動作される温度で、少なくとも約10−6S/cm、少なくとも約10−5S/cm、少なくとも約10−4S/cm、または少なくとも約10−3S/cmの電気伝導率を有する。
【0061】
一部の実施形態では、イオン透過膜は、ポリエチレンオキシド(PEO)高分子シートまたはNafionTM膜を含む。
【0062】
一部の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵装置を動作する方法が記載される。方法は、
レドックスフローエネルギー貯蔵装置を提供するステップであって、
正極電流コレクタ、負極電流コレクタ、および正電流コレクタと負電流コレクタとを分離するイオン透過膜と、
正極電流コレクタとイオン透過膜との間に配置される正極であって、正極電流コレクタおよびイオン透過膜は、正極を収容する正電気活性帯を画定する、正極と、
負極電流コレクタとイオン透過膜との間に配置される負極であって、負極電流コレクタおよびイオン透過膜は、負極を収容する負電気活性帯を画定する、負極と
を含み、
正極および負極のうちの少なくとも1つは、セルの動作中にイオンを吸収または放出することができる、流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物を含む、ステップと、
装置の動作中に、流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物を、電気活性帯へ輸送するステップと
を含む。
【0063】
一部の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵装置を動作する方法において、電気活性帯の中の流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物の少なくとも一部分は、動作中に新しい半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物を電気活性帯に導入することによって補充される。
【0064】
一部の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵装置を動作する方法は、
再利用または再充電のために、放電した半固体または濃縮液体イオン貯蔵物質を、放電組成物貯蔵レセプタクルに輸送するステップをさらに含む。
【0065】
一部の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵を動作する方法は、
流動性のレドックスエネルギー貯蔵装置に、反対の電圧差を印加するステップと、
充電中に、充電半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物を電気活性帯から充電組成物貯蔵レセプタクルへ輸送するステップとをさらに含む。
【0066】
一部の実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵装置を動作する方法はさらに、
流動性のレドックスエネルギー貯蔵装置に、反対の電圧差を印加するステップと、
充電されるように、放電半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物を電気活性帯の中に輸送するステップとを含む。
【0067】
本願で使用されるように、正極およびカソードは互換的に使用される。本願で使用されるように、負極およびアノードは互換的に使用される。
【0068】
本願に記載されるエネルギー貯蔵システムは、走行距離を延長することを可能にするために十分に高い比エネルギーを電気自動車に提供するか、あるいは例えば、風力および太陽熱等の断続的に再生可能なエネルギー源のグリッドサービスまたは貯蔵における用途を含む、固定エネルギー貯蔵用の従来のレドックスバッテリを超える比エネルギーまたはエネルギー密度の十分な向上を提供することができる。
【0069】
本主題は、図面を参照の上に記載され、図面は実際に説明することを意図し、本発明を限定することを意図せず、本主題の完全なる範囲は、続く請求項に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1A】図1Aは、1つ以上の実施形態による、レドックスフローバッテリの断面図である。
【図1B】図1Bは、一式の実施形態による、レドックスフローバッテリの断面図を含む。
【図1C】図1Cは、一式の実施形態による、レドックスフローバッテリの断面図を含む。
【図1D】図1Dは、一式の実施形態による、複数の支柱を備えるエネルギー貯蔵デバイスの概略図を含む。
【図1E】図1Eは、いくつかの実施形態ではエネルギー貯蔵デバイス内で使用することができる、流路の概略図を含む。
【図1F】図1F−1Gは、複数のオージェを備えるエネルギー貯蔵デバイスの例示的な概略図を含む。
【図1G】図1F−1Gは、複数のオージェを備えるエネルギー貯蔵デバイスの例示的な概略図を含む。
【図1H】図1Hは、エネルギー貯蔵デバイスの例示的な概略図を含む。
【図1J】図1Jは、一式の実施形態による、その中へ混合流体が輸送される、エネルギー貯蔵デバイスの概略図を含む。
【図1K】図1Kは、気体等の混合流体が生成される、エネルギー貯蔵デバイスの例示的概略図を含む。
【図1L】図1Lは、一式の実施形態による、複数のトラックドライブを備えるエネルギー貯蔵デバイスの概略図を含む。
【図1M】図1Mは、複数の回転軸を備えるエネルギー貯蔵デバイスの例示的概略図を含む。
【図2】図2は、リチウムバッテリシステム用の例示的レドックスフローセルの概略図である。
【図3】図3は、ニッケルバッテリシステム用の例示的レドックスフローセルの概略図である。
【図4】図4は、セルの性能を監視し最適化するように、参照電極を使用する、例示的レドックスフローバッテリの概略図である。
【図5】図5は、異なる銅めっきの添加を伴う陽極スラリーの循環性能を示す。
【図6】図6は、陰極スラリー半電池用の充電容量の関数としての電圧の代表的なプロットを示す。
【図7】図7は、陽極スラリー半電池用の充電容量の関数としての電圧の代表的なプロットを示す。
【図8】図8は、陰極および陽極スラリーを伴う電気化学セルに対する、時間(パネル下)と、それに対応する充電容量または放電容量(パネル上)との関数としての電圧の代表的なプロットを示す。
【図9】図9は、陰極放電容量対サイクル数の代表的なプロットを示す。
【図10】図10は、比較的高いC/1.4レートでの懸濁液に対する定電流リチウム挿入および抽出曲線を示す。
【図11】図11は、一式の実施形態による、インラインセンサの概略図を含む。
【図12】図12は、一式の実施形態による、時間の関数としての電圧のプロットを含む。
【図13A】図13A−13Bは、一式の実施形態による、(A)炭酸アルキル電解質中のナノ粒子炭素(Ketjen black)およびLiCoO(LCO)の懸濁液に対する粘度対せん断速度の例示的なプロットと、(B)炭酸アルキル電解質単独、および電解質中の粒子の懸濁液のACインピーダンスを示す、例示的なナイキストプロットとを含む。
【図13B】図13A−13Bは、一式の実施形態による、(A)炭酸アルキル電解質中のナノ粒子炭素(Ketjen black)およびLiCoO(LCO)の懸濁液に対する粘度対せん断速度の例示的なプロットと、(B)炭酸アルキル電解質単独、および電解質中の粒子の懸濁液のACインピーダンスを示す、例示的なナイキストプロットとを含む。
【図14】図14は、いくつかの実施形態による、エネルギー貯蔵のためのフローセル構成を含む。
【図15】図15は、一式の実施形態による、微孔性セパレータフィルムによって静止Li金属負極から分離された、20.3mL/分で連続的に流れるLiCoO懸濁液の多段階定電流充電/放電を伴う、半固体ハーフフローセル試験に対する時間の関数としての充電状態、電流、および電圧の例示的なプロットを含む。
【図16】図16は、いくつかの実施形態による、リチウム金属対電極と対比した、10mL/分での連続流中に測定された半固体陽極懸濁液に対する時間の関数としての電圧、電荷貯蔵容量、および電流の例示的なプロットを含む。
【図17】図17は、一式の実施形態による、半固体ナノスケールオリビン陰極および半固体チタン酸リチウムスピネル陽極を使用した、二重電解質リチウムイオンセルに対する容量の関数としての電圧の例示的なプロットを含む。
【図18】図18は、一式の実施形態による、リチウム金属対電極と対比した、ジオキソランベースの電解質中で試験されたMCMB黒鉛陽極半固体懸濁液を備えるシステムに対する電圧対容量の例示的なプロットを含む。
【図19】図19は、一式の実施形態による、C/11レートでの[Li(G4)]TFSIイオン液体電解質中のリチウム金属対電極に対して試験された、LiCoO陰極半固体懸濁液に対する特異的容量の関数としての電圧の例示的なプロットを含む。
【発明を実施するための形態】
【0071】
例示的レドックスフローエネルギー貯蔵装置100が、図1Aに示されている。レドックスフローエネルギー貯蔵装置100は、イオン透過分離器130によって分離される、正極電流コレクタ110および負極電流コレクタ120を含んでもよい。電流コレクタ110、120は、薄いシートの形態であってもよく、分離器130から間隔を空けている。正極電流コレクタ110およびイオン透過分離器130は、流動性の正極活物質140を収容する、本願で以下“正電気活性帯”と呼ばれる領域、115を画定する。負極電流コレクタ120およびイオン透過分離器130は、流動性の負極活物質150を収容する、本願で以下“負電気活性帯”と呼ばれる領域、125を画定する。電極活物質は、流動性のレドックス組成物であり得、電気化学反応が生じる電気活性帯へ輸送され、かつ電気活性帯から輸送されることができる。流動性のレドックス組成物は、半固体または濃縮液体イオン貯蔵電気活性物質、すなわち、選択的に、固体または濃縮イオン貯蔵液体電解質を補助するか、または懸濁させる流体を含むことができる。本願で使用されるように、半固体は、スラリー、粒子懸濁液、コロイド懸濁液、乳濁液、またはミセル等の液相および固相の混合物を指す。一部の実施形態では、半個体のエマルジョンまたはミセルは、液体含有層の少なくとも1つの中に固体を含む。本願で使用されるように、濃縮液体または濃縮イオン貯蔵液体は、水溶性フローセルカソード液またはアノード液の場合のような単なる溶媒ではなく、むしろ液体それ自体がレドックス活性である液体を指す。液体の形態はまた、低融解液相、乳濁液、またはイオン貯蔵液体を含むミセルを形成するような、そのような希釈液との混合を含む、希釈液あるいは溶媒である、別の非レドックス活性液体によって希釈するか、あるいは混合することができる。
【0072】
正極の流動性の物質140は、矢印160によって示される方向に正電気活性帯115に進入することができる。正極物質140は、電気活性帯を通って流れることができ、矢印165によって示される方向の電気活性帯の上方の場所から退出する。同様に、負極の流動性の物質150は、矢印170によって示される方向の負電気活性帯125に進入することができる。負極物質150は、電気活性帯を通って流れることができ、矢印175によって示される方向に電気活性帯の上方の場所から退出する。流れの方向は、例えば、充電および放電の動作を交替するときに逆転させることができる。流れの方向の図は、図の中では任意であることに留意されたい。流れは、連続的または断続的であり得る。一部の実施形態では、正および負のレドックスフロー物質は、使用前に貯蔵帯またはタンク(図示せず)に貯蔵される。一部の実施形態では、流動性のレドックス電極物質は、貯蔵帯から連続的に再生され置き換えられ、それゆえ、非常に高いエネルギー容量を伴うエネルギー貯蔵システムを生成することができる。一部の実施形態では、輸送装置が、正および負のイオン貯蔵電気活性物質を、正および負電気活性帯の中にそれぞれ導入するように使用される。一部の実施形態では、輸送装置は、放電した正および負のイオン貯蔵電気活性物質を、正および負電気活性帯それぞれから、再充電のための放電した電気活性物質用の貯蔵タンクの中へ輸送するように使用される。一部の実施形態では、輸送装置は、ポンプ、または流体輸送のための任意の他の従来の装置であり得る。一部の特定の実施形態では、輸送装置は蠕動ポンプである。
【0073】
動作中、正および負の電気活性物質は、還元および酸化を受けることができる。イオン190は、イオン透過膜130を横断することができ、電子は、外部回路180を通って流れ、電流を生成することができる。一般的なフローバッテリでは、レドックス活性イオンまたはイオン錯体は、通常それ自体はレドックス活性を経ない電流コレクタに極めて接近または接触している時に、酸化または還元を受ける。そのような電流コレクタは、例えば、炭素または非反応性金属から成り得る。それゆえ、レドックス活性種の反応率は、電流コレクタと電気連通する時のレドックス反応率だけでなく、種が電気連通するために電流コレクタの十分近くに引き寄せられる時の率によって決定することができる。一部の例では、イオン伝導膜を横断するイオンの輸送が、セルの反応を律速する場合がある。それゆえ、フローバッテリ、またはエネルギー比に対する電力の変化あるいは放電の速度は、比較的低くてもよい。バッテリセルの数、あるいは分離器または電気活性帯の総面積、ならびに流動性のレドックス組成物の組成および流速は、任意の所与の用途に対して、十分な電力を提供するように変化することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、第1の極性の第1の電極電流コレクタが、第2の反対極性の第2の電極電流コレクタによって少なくとも部分的に包囲されるように構築および配設されてもよい。そのような配設においては、第1の極性の第1の電気活性帯は、第2の反対極性の第2の電気活性帯によって少なくとも部分的に包囲されてもよい。本明細書において使用されるように、第1の電気活性帯は、第2の電気活性帯のみを通して第1の電気活性帯の周囲に閉ループを描くことができる場合、第2の電気活性帯によって「少なくとも部分的に包囲され」、第1の電気活性帯が必ず完全に第2の電気活性帯によって封入されることを暗示しない。
【0075】
図1Bおよび1Cは、1つのそのようなレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス500の断面概略図を含む。図1Bおよび1Cでは、デバイス500は、負極電流コレクタ520内に配置される正極電流コレクタ510を含む。図1Bおよび1Cに図示されるように、負極電流コレクタは、正極電流コレクタが配置される空洞を含み、実質的に円筒形である。いくつかの実施形態では、図1Bおよび1Cに図示されるように、第1の電極電流コレクタは、第2の電極電流コレクタ内に実質的に同心円状に配置されることができ、それにより、それらの長手軸(図1Cの鎖線505によって示される)が一致する。場合によっては、第1および第2の電極電流コレクタの長手軸が一致しなくてもよいことを理解されたい。正および負極電流コレクタは、イオン透過媒体530によって分離されることができ、それにより、正の電気活性帯515、および正の電気活性帯を少なくとも部分的に包囲する負の電気活性帯525を画定する。図1Bおよび1Cに図示される一式の実施形態は、負極電流コレクタおよび負の電気活性帯によって少なくとも部分的に包囲される正極電流コレクタおよび正の電気活性帯を含むが、いくつかの実施形態では、電極電流コレクタおよび電気活性帯の極性は逆転されることができ、それにより、負極電流コレクタおよび負の電気活性帯が、正極電流コレクタおよび正の電気活性帯によって少なくとも部分的に包囲されることを理解されたい。
【0076】
流動性のレドックス物質(例えば、イオン溶液、半固体、または濃縮イオン貯蔵電気活性物質)は、場合によっては、正の電気活性帯および/または負の電気活性帯を通って流れることができる。正極の流動性物質は、図1Cの矢印560によって示される方向へ正の電気活性帯515に進入することができる。正極の流動性物質は、電気活性帯を通って流れることができ、矢印565によって示される方向へ電気活性帯の上方位置において退出することができる。同様に、負極の流動性物質は、矢印570によって示される方向へ負の電気活性帯525に進入することができる。負極物質は、負の電気活性帯を通って流れ、矢印575によって示される方向へ電気活性帯の上方位置において退出することができる。図1Aに関して記述されるように、流動の方向の図示は、図1Cでは任意である。動作中、正および負の電気活性物質は、還元および酸化を受けることができる。イオン590は、イオン透過媒体530(例えば、膜)を横断して移動することができ、電子は、外部回路580を通って流れることができることにより、電流を生成する。
【0077】
いくつかの実施形態では、正および/または負極電流コレクタは、複数の表面特徴(例えば、突起)を含んでもよい。場合によっては、表面特徴は、電極電流コレクタの表面から電気活性領域の中へ延在する突起(例えば、支柱、フィン、バッフル等)を含むことができる。例えば、図1Dは、電流コレクタの表面620から突出する複数の支柱651を備える電極電流コレクタ600の概略図を含む。いくつかの実施形態では、突起は、導電性であり得る。いくつかの実施形態では、突起は、図1Eに図示され、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれるHong et al.,Lab on a chip,4(2):109-13,2004で説明されるような修正テスラ構造を備えることができる。そのような構造は、半電池伝導率を増加させる電流コレクタとして、混合を増進させること、および/またはセパレータ用の機械的支持を提供することにおいて有用であってもよい。導電性突起の存在は、突起がない場合に存在する導電性表面積の量に対して、電流コレクタの導電性表面積の量を向上させることができる。
【0078】
突起は、場合によっては、流動性のレドックス組成物の循環を向上させるように構築および配設することができる。いくつかの実施形態では、突起は、電気活性領域内で流動性のレドックス組成物の流動を少なくとも部分的に方向付けるように構築および配設されてもよい。場合によっては、表面特徴は、場合によっては、電気活性領域内で流体の流動を少なくとも部分的に方向付けてもよい、電極電流コレクタの束(例えばチャネル)に形成された特徴を含むことができる。
【0079】
電極電流コレクタは、場合によっては、(例えば、回転させられたとき等の電極電流コレクタが移動させられるときに)レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスの長手軸に沿って流体を押し進める表面特徴を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、電極電流コレクタのうちの少なくとも1つは、電極電流コレクタの少なくとも一部分の上にネジ切りを形成する、螺旋の形状に形成された複数の起伏を備えることができる。1つのそのような実施例が、図1F−1Gに図示されている。そのようなネジ切りは、ネジまたはネジ山付きボルトの外部に沿って、あるいはネジ山付きナットの内部に沿って観察されるものと同様となり得る。電流コレクタにおける螺旋起伏は、電流コレクタがその長手軸の周りで回転させられるとき、電流コレクタの長手軸に沿って流動性イオン貯蔵レドックス組成物を輸送してもよい。場合によっては、正および負極電流コレクタの両方は、電気活性領域のすぐ近くにそれらの表面の少なくとも一部分を覆うネジ切りを含むことができる。正および負極電流コレクタ上のネジ切りは、同じかまたは異なる「巻き方」であってもよい。当業者であれば、ネジおよび他のネジ山付き材料に適用されるような巻き方の概念と同様であるものとして、この文脈での巻き方の意味を理解するであろう。
【0080】
上記で概説される表面特徴は、1つ以上の利点をエネルギー貯蔵デバイスに提供することができる。例えば、いくつかの実施形態では(例えば、突起が電流コネクタ上にネジ山付き表面を生じさせるときに)、流動性イオン貯蔵レドックス組成物が進む経路は、表面特徴がない場合に移動する経路と比較して、比較的長くなり得る。加えて、電流コレクタ上の表面特徴の存在は、流動性イオン貯蔵レドックス組成物に暴露される電流コレクタの表面積を増大させ、したがって、デバイス性能を向上させることができる。表面特徴の存在はまた、電流コレクタが比較的に密接して離間していることを可能にしてもよい。2つの電流コレクタの間(したがって、各電流コレクタと分離媒体との間)の特に近い間隔は、例えば、第1および第2の電流コレクタがそれぞれ、相互に対向するように配設されるネジ山付き表面を含むときに、達成されることができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、正または負の流動性のレドックス組成物のうちの少なくとも1つは、半固体または濃縮イオン貯蔵液体電気活性物質を含む。
【0082】
放電動作中に、レドックスフローデバイスの正極と負極との電気化学ポテンシャルの差異は、正極と負極との間の電圧差を生させることができ、この電圧差は、電極が伝導性回路の中に接続された場合に電流を生じる。いくつかの実施形態では、放電中に、充電された流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵組成物の新しい容量は、荷電組成物貯蔵タンクから電気活性帯の中へ輸送される。いくつかの実施形態では、放電中に、放電または消耗された流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵組成物は、電気活性帯から外へ輸送し、放電の終了まで放電組成物貯蔵容器の中で貯蔵することができる。
【0083】
放電動作中に、流動性のレドックス組成物を含有する電極は、電気化学的および機械的のいずれか一方で、逆に作動させることができる。いくつかの実施形態では、消耗された流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵組成物は、電気活性帯から外へ消耗されたレドックス組成物を輸送し、完全に充電された流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵組成物を電気活性帯に導入することによって補充することができる。これは、ポンプ等の流体輸送デバイスを使用することによって達成することができる。いくつかの他の実施形態では、放電と反対の方向へ電子電流およびイオン電流を駆動して、放電の電気化学反応を逆転させ、したがって、正および負極の流動性のレドックス組成物を荷電させるように、反対の電圧差を流動性のレドックスエネルギー貯蔵デバイスに印加することができる。いくつかの具体的実施形態では、放電中に、放電または消耗された流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵組成物は、電極に印加される反対の電圧差の下で荷電される電気活性帯の中へ機械的に輸送される。いくつかの具体的実施形態では、充電された流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵組成物は、電気活性帯から外へ輸送され、充電の終了まで荷電組成物貯蔵容器の中で貯蔵される。輸送は、ポンプ等の流体輸送デバイスを使用することによって達成することができる。
【0084】
従来のフローバッテリ陽極液および陰極液と、本明細書において例示されるイオン貯蔵固相または液相との間の1つの相違は、貯蔵化合物の中のレドックス種のモルの濃度またはモル濃度である。例えば、水溶液中に溶解させられたレドックス種を有する従来の陽極液または陰極液は、モル濃度が一般的には2M〜8M濃度に限定されてもよい。高酸性溶液は、この濃度範囲の上限に達する必要があってもよい。対照的に、本明細書で説明されるような任意の流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物は、1リットル当たりのモル数またはモル濃度で解釈されると、少なくとも10M濃度のレドックス種、好ましくは少なくとも12M、なおも好ましくは少なくとも15M、なおも好ましくは少なくとも20Mを有してもよい。電気化学的活性物質は、エネルギーを貯蔵するためにファラデー反応を受けることが可能であるイオン貯蔵物質または任意の他の化合物またはイオン錯体となり得る。電気活性物質はまた、固液懸濁液を含む、非レドックス活性相と混合された上記のレドックス活性固相または液相、あるいは、支持液相と密接に混合された液体イオン貯蔵物質を有するミセルまたはエマルジョンを含む液−液多相混合物を含む多相物質となり得る。流動性イオン貯蔵レドックス組成物用の半固体および濃縮液体貯蔵化合物の両方の場合、HまたはOHが作業イオンである水性システム、Li、Na、または他のアルカリイオンが作業イオンである非水性システム、Ca2+およびMg2+、またはAl3+等のアルカリ土類作業イオンさえも含む種々の作業イオンを利用するシステムが検討される。これらの場合のそれぞれにおいて、負極貯蔵物質および正極貯蔵物質が必要とされてもよく、負極は、正極よりも低い絶対電位で関心の作業イオンを貯蔵する。セル電圧は、2つのイオン貯蔵電極物質のイオン貯蔵能力の差異によって、ほぼ決定されることができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、流動性のレドックス組成物は、導電性である。流動性のレドックス組成物は、その流動および/または非流動状態である間に導電性となり得る。いくつかの実施形態では、流動性のレドックス組成物(例えば、半固体または濃縮液体イオン貯蔵電気活性物質となり得る)は、流れている間、およびエネルギー貯蔵デバイスが動作される温度(例えば、約−50℃と約+50℃との間の少なくとも1つの温度)にある間、少なくとも約10−6S/cm、少なくとも約10−5S/cm、少なくとも約10−4S/cm、または少なくとも約10−3S/cmの電気伝導率を有する。いくつかの実施形態では、該組成物は、エネルギー貯蔵デバイスが動作される温度(例えば、約−50℃と約+50℃との間の少なくとも1つの温度)で、少なくとも約10−6S/cm、少なくとも約10−5S/cm、少なくとも約10−4S/cm、または少なくとも約10−3S/cmの非流動状態での電子伝導率を有する。具体的実施例として、流動性のレドックス組成物は、(流れている間、および/または静止している間)本明細書で説明される電気伝導率のうちのいずれかを有する濃縮液体イオン貯蔵電気活性物質を含むことができる。いくつかの実施形態では、流動性のレドックス組成物は、半固体を含み、液相と固相の混合物は一緒に混合されると、(流れている間、および/または静止している間)本明細書で説明される電気伝導率のうちのいずれかを有する。
【0086】
正および負両方のイオン貯蔵物質を採用するシステムは、セルの中に追加的な電気化学的副生成物が全くないため、特に利点がある。正および負極物質の両方は、流動電解質の中では不溶性であり、電解質は除去および再生成されなくてはならない電気化学的組成産物では汚染されない。加えて、正および負のリチウムイオン貯蔵物質の両方を採用するシステムは、非水溶性電気化学組成物を使用するときに、特に利点がある。
【0087】
一部の実施形態では、流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物は、従来の固体リチウムイオンバッテリで作動することが証明されている物質を含む。一部の実施形態では、正の流動性の電気活性物質は、リチウムの正の電気活性物質を包含し、リチウム陽イオンは負極と正極との間を往復し、液体電解質の中に懸濁するホスト粒子である固体の間に介入する。
【0088】
一部の実施形態では、エネルギー貯蔵電極のうちの少なくとも1つは、有機または無機であってもよい、レドックス活性化合物の濃縮イオン貯蔵液体を含み、リチウム金属、ナトリウム金属、リチウム金属合金、溶存リチウムを伴うまたは溶存リチウムを伴わないガリウムおよびインジウム合金、溶融遷移金属塩化物、塩化チオニル等、あるいはバッテリの動作条件下では液体であるレドックス高分子および有機物を含むが、それらに限定されない。そのような液体の形態はまた、低融解液相を形成するような、そのような希釈液との混合を含む、希釈液あるいは溶媒である、別の非レドックス活性液体によって希釈するか、あるいは混合されてもよい。しかしながら、従来のフローセルカソード液またはアノード液とは異なり、レドックス活性構成要素は、流動性の電解質の総質量の少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも25質量%を含むであろう。
【0089】
一部の実施形態では、レドックス活性電極物質は、上に定義するような半固体または濃縮液体の体裁として使用されても、バッテリの正または負極のいずれかに有用な電位にある、対象となる作動イオンを貯蔵する有機レドックス化合物を含む。そのような有機レドックス活性貯蔵物質は、ポリアニリンまたはポリアセチレンベースの物質、ポリニトロキシドまたは有機ラジカル電極(H.Nishide et al.,Electrochim.Acta,50,827−831,(2004)、およびK.Nakahara et al.,Chem.Phys.Lett.,359,351−354(2002)に記載される電極等)、カルボニルベースの有機物、ならびにLi、Li、およびLi(例えば、M.Armand et al.,Nature Materials,DOI:10.1038/nmat2372参照)等の化合物を含むオキソカーボンおよびカルボン酸塩等の“p”ドープ導電性高分子を含む。
【0090】
一部の実施形態では、レドックス活性電極物質は、一般的に“ゾル−ゲル処理”として知られる他の方法において、例えば、金属アルコキシドの加水分解によって産生される金属酸化物ゾルまたはゲルを含む、ゾルまたはゲルを含む。組成物Vの酸化バナジウムゲルは、そのようなレドックス活性ゾル−ゲル物質のうちの1つである。
【0091】
他の適する正の活性物質は、NiMH(ニッケル金属水素)ニッケルカドミウム(NiCd)バッテリで使用される化合物として当業者に知られている、固体化合物を含む。Li貯蔵用のさらなる他の正極化合物は、一般的にCFと呼ばれる一フッ化炭素バッテリ、またはおおよそ化学量論MFまたはMFを有する金属フッ化物化合物に使用される化合物を含み、式中、MはFe、Bi、Ni、Co、Ti、Vを含む。例には、H.Li,P.Balaya,and J.Maier,Li−Storage via Heterogeneous Reaction in Selected Binary Metal Flourides and Oxides,Journal of The Electrochemical Society,151[11]A1878−A1885(2004)、M.Bervas,A.N.Mansour,W.−S.Woon,J.F.Al−Sharab,F.Badway,F.Cosandey,L.C.Klein,and G.G.Amatucci,“Investigation of Lithiation and Delithiation Conversion Mechanisms in a Bismuth Fluoride Nanocomposites”,J.Electrochem.Soc., 153,A799(2006)、およびI.Plitz,F.Badway,J.Al−Sharab,A.DuPasquier,F.Cosandey,and G.G. Amatucci,“Structure and Electrochemistry of Carbon−Metal Flouride Nanocomposites Fabricated by a Solid State Redox Conversion Reaction”,J.Electrochem.Soc.,152,A307(2005)に記載の化合物を含む。
【0092】
別の例として、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、あるいは金属または半金属ナノワイヤを含むフラーレンカーボンは、イオン貯蔵物質として使用されてもよい。一例は、C.K.Chan,H.Peng,G.Liu,K.Mcllwrath,X.F.Zhang,R.A.Huggins,and Y.Cui,High−performance lithium battery anodes using silicon nanowires,Nature Nanotechnology,オンライン出版2007年12月16日、;doi:10.1038/nnano.2007.411の報告にある、高エネルギー密度貯蔵物質として使用されるシリコンナノワイヤである。
【0093】
リチウムシステムの中の正極用の例示的電気活性物質は、α−NaFeO(いわゆる“層状化合物”)および斜方晶系LiMnO構造型を有する化合物を含む規則岩塩型化合物LiMO、もしくは異なる結晶対称、原子配列、あるいは金属または酸素の部分置換のそれらの誘導体の一般的な仲間を含む。Mは、少なくとも1つの第一遷移金属を含むが、Al、Ca、Mg、またはZrを含むがそれらに限定されない非遷移金属を含んでもよい。そのような化合物の例は、LiCoO、MgでドープされるLiCoO、LiNiO、Li(Ni、Co、Al)O(“NCA”として知られる)、およびLi(Ni、Mn、Co)O(“NMC”として知られる)を含む。例示的電気活性物質の他の仲間は、 LiMnおよびその誘導体、LiNi0.5Mn1.5を含むがこれに限定されない、4.3Vを超える電圧(vs.Li/Li)を有するいわゆる“高電圧スピネル”、構造が規則岩塩およびスピネル配列を有するナノスケール領域を含む、層状スピネルナノ複合材料、MがMn、Fe、Co、またはNiのうちの1つ以上を含む、オリビンLiMPOおよびそれらの誘導体、LiVPOF等の部分的にフッ素化された化合物、以下に記載されるような他の“ポリアニオン”化合物、ならびにVおよびV11を含む酸化バナジウムVから成る群より選択される、化合物を含む、流動性の半固体イオン貯蔵レドックス組成物等、スピネル型構造の物質を含む。
【0094】
1つ以上の実施形態では、活物質は、例えば米国特許第7,338,734号に記載されるような、遷移金属ポリアニオン化合物を含む。1つ以上の実施形態では、活物質は、アルカリ金属遷移金属酸化物またはリン酸塩を含み、例えば、化合物は、組成物A(M’1−aM”(XD、A(M’1−aM”(DXD、またはA(M’1−aM”(Xを有し、xと、y(1−a)を掛けたM’の単数または複数の形式原子価と、yaを掛けたM”の単数または複数の形式原子価との和が、zを掛けたXD、X、またはDXD基の形式原子価に等しくなるような値を有するか、あるいは化合物は、組成物(A1−aM”M’(XD、(A1−aM”M’(DXD)z(A1−aM”M’(Xを含み、(1−a)xと、axを掛けたM”の単数または複数の形式原子価の数と、yを掛けたM’の単数または複数の形式原子価との和は、zを掛けた前記XD、X、またはDXD基の形式原子価に等しいような値を有する。化合物において、Aは、アルカリ金属および水素のうちの少なくとも1つであり、M′は、第一遷移金属であり、Xは、リン、硫黄、ヒ素、モリブデン、およびタングステンのうちの少なくとも1つであり、M”は、IIA、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、およびVIB族金属のうちのいずれかであり、Dは、酸素、窒素、炭素、またはハロゲンのうちの少なくとも1つである。正の電気活性物質は、オリビン構造化合物LiMPOであり得、式中、Mは、化合物が選択的にLi、M、またはO部位においてドープされる、V、Cr、Mn、Fe、Co、およびNiのうちの1つ以上である。Li部位の欠損は、金属または半金属の追加によって補われ、O部位の欠損は、ハロゲンの追加によって補われる。一部の実施形態では、正活物質は、オリビン構造を有し、式(Li1−x)MPOを有する、熱的に安定した遷移金属をドープしたリチウム遷移金属リン酸塩を含み、式中、Mは、V、Cr、Mn、Fe、Co、およびNiのうちの1つ以上であり、Zは、Ti、Zr、Nb、Al、またはMgのうちの1つ以上等の非アルカリ金属ドーパントであり、xは、0.005から0.05に及ぶ。
【0095】
他の実施形態では、リチウム遷移金属リン酸塩物質は、Li1−x−z1+zPOの全体組成物を有し、式中、Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、およびNiから成る群より選択される、少なくとも1つの第一遷移金属を含み、xは、0から1であり、zは、正または負であり得る。MはFeを含み、zは約0.15から−0.15の間である。物質は、0<x<0.15の組成物範囲に渡る固体溶液を呈し得るか、または物質は、0から少なくとも約0.05の間のxという組成物範囲に渡る安定した固体溶液を呈し得るか、あるいは物質は、室温(22−25℃)で、0から少なくとも約0.07の間のxという組成物範囲に渡る安定した固体溶液を呈してもよい。物質はまた、例えば、x≧0.8、またはx≧0.9、あるいはx≧0.95の場合、リチウム不足の体制において固体溶液を呈してもよい。
【0096】
一部の実施形態において、レドックス活性電極物質は、置換または変換反応を受けることによって、アルカリイオンを貯蔵する金属塩を含む。そのような化合物の例は、通常リチウムバッテリにおいて負極として使用されるCoO、Co、NiO、CuO、MnO等の金属酸化物を含み、金属酸化物は、Liと反応すると、LiOとより還元された酸化物の形態の金属成分または金属形態との混合物を形成するように、置換または変換反応を受ける。他の例は、LiFおよび還元された金属成分を形成するように、置換または変換反応を受ける、CuF、FeF、FeF、BiF、CoF、およびNiF等の金属フッ化物を含む。そのようなフッ化物は、リチウムバッテリでは正極として使用され得る。他の実施形態では、レドックス活性電極物質は、一フッ化炭素またはその誘導体を含む。一部の実施形態において、置換または変換反応を受ける物質は、平均で100ナノメートル以下の寸法を有する微粒子の形態にある。一部の実施形態において、置換または変換反応を受ける物質は、炭素、または金属、あるいは金属硫化物等の、伝導性があり比較的延性のある化合物を含むがそれらに限定されない、不活性ホストと混合される活物質のナノ複合材料を含む。
【0097】
一部の実施形態において、半固体フローバッテリはリチウムバッテリであり、負極活性化合物は、黒鉛、黒鉛ホウ素・炭素合金、硬質または不規則炭素、チタン酸リチウムスピネル、あるいは、金属Sn、Bi、Zn、Ag、およびAl、ならびに半金属SiおよびGeを含む金属間化合物を形成するようにリチウムと反応する、固体金属または金属合金または半金属または半金属合金を含む。一部の実施形態では、LiNTi12は、電極活材料(例えば、負極活材料)として含まれることができる。
【0098】
リチウム作動イオンの場合における負極用の例示的電気活性物質は、黒鉛または非黒鉛炭素、非晶質炭素、あるいはメソカーボンマイクロビーズ、すなわち、Ag、Al、Au、B、Ga、Ge、In、Sb、Sn、Si、またはZnのうちの1つ以上を含む金属等の、非リチウム化(unlithiated)金属または金属合金、あるいはLiAl、LiAl、LiAl、LiZn、LiAg、Li10Ag、Li、Li、Li12Si、Li21Si、Li13Si、Li21Si、LiSn、Li13Sn、LiSn、Li22Sn、LiSb、LiSb、LiBi、またはLiBiのような化合物を含む、リチウム化金属または金属合金、もしくはリチウム化または非リチウム化組成物の非晶質金属合金を含む。
【0099】
電流コレクタは、電子的に伝導性があることができ、セルの動作条件下では電気化学的に不活性であるべきである。リチウムセル用の一般的な電流コレクタは、シートまたはメッシュの形態で、負の電流コレクタ用に銅、アルミニウム、またはチタン、および正の電流コレクタ用にアルミニウム、あるいは電流コレクタが電解質の中に分布し、流動の流れを可能にするための任意の構成を含む。電流コレクタ物質の選択は、当業者にはよく知られている。一部の実施形態では、アルミニウムが正極用の電流コレクタとして使用される。一部の実施形態では、銅が負極用の電流コレクタとして使用される。他の実施形態では、アルミニウムが負極用の電流コレクタとして使用される。
【0100】
一部の実施形態では、負極が従来の静止電極であり得る一方、正極は流動性のレドックス組成物を含む。他の実施形態では、正極が従来の静止電極であり得る一方、負極は流動性のレドックス組成物を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、本発明の半固体フローセルは、作業イオンとしてLiまたはNaを使用し、水性電解質を含む。水性電解質の使用は、場合によっては、いくつかの非水性システム(例えば、炭酸アルキル電解質溶媒を使用する従来のリチウムイオンシステム)において使用することができるよりも低い電位の使用を必要とし得る(水の電解分解を回避するため)が、半固体水性フローバッテリのエネルギー密度は、半固体陰極液または陽極液の固相において可能である、イオン貯蔵のさらに大きい密度により、従来の水溶液フローセル(例えば、バナジウムレドックスまたは亜鉛臭素化学反応)のエネルギー密度よりもさらに大きくなり得る。水性電解質は、一般的には、非水性電解質ほど高価ではなく、フローバッテリの費用を低減することができる一方で、一般的には、より高いイオン伝導率も有する。加えて、水性電解質システムは、フローバッテリのインピーダンスを増加させ得る、陰極液または陽極液、あるいは電流コレクタで使用される伝導性固相上に絶縁SEIをより形成しにくくなり得る。
【0102】
広範囲の陰極活物質、陽極物質、電流コレクタ物質、電解質、およびそれらの構成要素の組み合わせを示す以下の水性システムの非限定的実施例は、この一式の実施形態の半固体水性フローバッテリで使用されてもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、一般式Aの酸化物は、水性半固体フローセルの中のイオン貯蔵化合物として使用されてもよく、Aは、Na、Li、K、Mg、Ca、およびAlのうちの1つ以上であってもよい作業イオンを含み、Mは、作業イオンが化合物に挿入または脱離されるとその形式的原子価状態を変化させる遷移金属を含み、Oは、酸素に対応し、xは、0から10までの値を有することができ、yは、1から3までの値を有することができ、zは、2から7までの値を有することができる。
【0104】
水性または非水性半固体フローセルはまた、半固体イオン貯蔵電極として、あらゆる目的でその全体において参照することにより本明細書に組み込まれる、Chiangらに対する米国特許第7,338,734号で説明されている化合物を含むが、それらに限定されない1つ以上のリチウム金属「ポリアニオン」化合物を含んでもよい。そのような化合物は、組成物(A)(M’1−aM”(XD、A(M’1−aM”(DXD、またはA(M’1−aM”(Xを含み、Aは、アルカリ金属または水素のうちの少なくとも1つを含み、M’は、第1遷移金属であり、Xは、リン、硫黄、ヒ素、ホウ素、アルミニウム、シリコン、バナジウム、モリブデン、およびタングステンのうちの少なくとも1つであり、M”は、IIA、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、およびVIB族金属のうちのいずれかであり、Dは、酸素、窒素、炭素、またはハロゲンのうちの少なくとも1つであり、0≦a≦0.1であり、xは、0以上であり、yおよびzは、0よりも大きく、x+y(1−a)×M’の1つまたは複数の形式的原子価+ya×M”の1つまたは複数の形式的原子価が、z×XD、X、またはDXD族の形式的原子価に等しくなるような値を有する。いくつかの実施形態では、化合物は、オリビン(AMXO)、NASICON(A(M’,M”)(XO)、VOPO、LiFe(P)、またはFe(P構造型の規則構造または部分的不規則構造で結晶化し、プロトタイプ化合物の理想化学量論比y/zを少なくとも0.0001だけ超える、元素Xの濃度に対する金属(M’+M”)のモル濃度を有する。
【0105】
他のそのような化合物は、組成物(A1−aM”M’(XD、(A1−aM”M’(DXD、または(A1−aM”M’(Xを含み、Aは、アルカリ金属または水素のうちの少なくとも1つであり、M’は、第1遷移金属であり、Xは、リン、硫黄、ヒ素、ホウ素、アルミニウム、シリコン、バナジウム、モリブデン、およびタングステンのうちの少なくとも1つであり、M”は、IIA、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、およびVIB族金属のうちのいずれかであり、Dは、酸素、窒素、炭素、またはハロゲンのうちの少なくとも1つであり、0≦a≦0.1であり、x、y、およびzは、ゼロよりも大きく、(1−a)x+数量ax×M”の1つまたは複数の形式的原子価+y×M’の1つまたは複数の形式的原子価が、z×XD、X、またはDXD族の形式的原子価に等しくなるような値を有する。これらの実施形態のうちのいくつかでは、化合物は、オリビン(AMXO)、NASICON(A(M’,M”)(XO)、VOPO、LiFe(P)、またはFe(P構造型の規則構造または部分的不規則構造で結晶化し、プロトタイプ化合物の理想化学量論比y/zを少なくとも0.0001だけ超える元素Xの濃度に対する金属(M’+M”)のモル濃度を有する。
【0106】
なおも他のそのような化合物は、組成物(Ab−aM”M’(XD、(Ab−aM”M’(DXD、または(Ab−aM”M’(Xを含み、Aは、アルカリ金属または水素のうちの少なくとも1つであり、M’は、第1遷移金属であり、Xは、リン、硫黄、ヒ素、ホウ素、アルミニウム、シリコン、バナジウム、モリブデン、およびタングステンのうちの少なくとも1つであり、M”は、IIA、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、およびVIB族金属のうちのいずれかであり、Dは、酸素、窒素、炭素、またはハロゲンのうちの少なくとも1つであり、0≦a≦0.1であり、a≦b≦1であり、x、y、およびzは、ゼロよりも大きく、(b−a)x+数量ax×M”の1つまたは複数の形式的原子価+y×M’の1つまたは複数の形式的原子価が、z×XD、X、またはDXD族の形式的原子価に等しくなるような値を有する。これらの実施形態のうちのいくつかでは、化合物は、オリビン(AMXO)、NASICON(A(M’,M”)(XO)、VOPO、LiFe(P)、またはFe(P構造型の規則構造または部分的不規則構造で結晶化し、プロトタイプ化合物の理想化学量論比y/zを少なくとも0.0001だけ超える、元素Xの濃度に対する金属(M’+M”)のモル濃度を有する。
【0107】
水性電解質を使用する再充電可能リチウムバッテリは、W.Li,J.R.DahnおよびD.S.Wainwrightによって説明されている(Science,vol.264,p.1115,20 May 1994)。彼らは、陰極および陽極の両方が、それぞれ、LiMnおよびVO(B)である、リチウム層間化合物であり、電解質が、水中の5M LiNOおよび0.001M LiOHの溶液であり、約1.5Vのセル電圧を伴う再充電可能システムを実証した。他の水性再充電可能リチウムバッテリは、Li(Ni1−xCo)O/LiV、LiCoO/LiV、LiMn/TiP、LiMn/LiTi(PO、Li(Ni0.33Mn0.33Co0.33)O/Li、V/Li、LiMn/Li、LiMn/NaTi(PO、LiMn/LiFe(PO、LiMn/LiFeP、LiMn/LiFe(P、LiCoO/C、Li0.5Mn/LiCoO、g−MnO/Zn、およびTiO(アナターゼ)/Znといった、陰極/陽極の組み合わせを含む。本明細書で説明される半固体フローバッテリは、陽極活物質のうちのいずれか1つ以上とともに、これらの陰極活物質のうちのいずれか1つ以上の使用を含むことができる。(本明細書で説明されるような)そのような非フローシステムで使用することができる、電極伝導性添加剤および結合剤、電流コレクタ物質、電流コレクタ被覆、および電解質も、本明細書で説明される半固体フローバッテリで使用することができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、フローセルは、一般式LiFeの物質(例えば、xは、約0.5と約1.5との間となり得て、yは、約0.5と約1.5との間となり得て、aは、約0.5と約1.5との間となり得て、zは、約3と約5との間となり得る)を含む、水性正極活物質と、一般式Lix’Tiy’の物質(例えば、x’は、約3と約5との間となり得て、y’は、約4と約6との間となり得て、z’は、約9と約15との間、または約11と約13との間となり得る)を含む、負極活物質とを含むことができる。具体的実施例として、いくつかの実施形態では、負極活物質は、LiFePOを含むことができ、正極活物質は、LiTi12を含むことができる。いくつかの実施形態では、正および/または負極活物質は、これらの化合物のカチオンまたはアニオンをドープした誘導体を含むことができる。
【0109】
水性フローセルで使用することができる電極活物質の他の具体的な組み合わせ(本明細書では陽極/陰極ペアとして記載される)は、LiV/LiCoO、LiV/LiNiO、LiV8/LiMn、およびC/Na0.44MnOを含むが、それらに限定されない。
【0110】
ナトリウムは、好適な電位でナトリウムに挿入するか、または、電気化学キャパシタで見られるような表面吸着および電気二重層の形成によって、あるいは電荷移動を伴う表面吸着によってナトリウムを貯蔵する、水性電解質および陰極活性または陽極活性化合物と併せて、作業イオンとして使用することができる。そのようなシステムのための物質は、従来の(非フロー型)二次バッテリで使用するために、J.Whitacreによる米国特許出願第US2009/0253025号で説明されている。本明細書で説明される半固体フローバッテリは、そのような非フローシステムで考慮される、陰極活物質、陽極活物質、電極伝導性添加剤および結合剤、電流コレクタ物質、電流コレクタ被覆、および電解質のうちの1つ以上を使用することができる。本明細書で説明される1つ以上の実施形態は、半固体フローバッテリにこれらの物質を組み込むことができる。
【0111】
ナトリウムを貯蔵し、水性電解質システムで使用することができる陰極活物質は、層状/斜方晶NaMO(バーネス鉱)、立方スピネルλ−MnOベースの化合物、Na、NaMPO、NaM(PO、NaMPOF、およびトンネル構造のNa0.44MOを含むが、それらに限定されず、Mは、第1遷移金属である。具体的実施例は、NaMnO、Naが交換または貯蔵されるLiMnスピネル、LiNaMn、NaMn、NaMn、NaFePO、NaFePOF、およびNa0.44MnOを含む。陽極物質は、表面吸着および脱着を通して可逆的にナトリウムを貯蔵する物質を含み、活性炭、黒鉛、メソ多孔性炭素、カーボンナノチューブ、および同等物等の高表面積炭素を含む。それらはまた、酸化チタン、酸化バナジウム、および陰極物質として上記で識別されるが、負極の動作電位でナトリウムに挿入しない化合物等の、高表面積またはメソ多孔性またはナノスケール形態の酸化物を含んでもよい。
【0112】
電流コレクタ物質は、フローバッテリの正および負極の動作電位で安定するように選択することができる。非水性リチウムシステムでは、正電流コレクタは、アルミニウム、またはLi/Liに対する2.5−5Vの動作電位で電気化学的溶解しない伝導性物質で被覆されたアルミニウムを含んでもよい。そのような物質は、Pt、Au、Ni、酸化バナジウム等の伝導性金属酸化物、および炭素を含む。負電流コレクタは、銅、またはリチウム、炭素、および別の導体上にそのような物質を含む被覆とともに合金または金属間化合物を形成しない、他の金属を含んでもよい。
【0113】
水性NaおよびLiフローバッテリにおいて、正電流コレクタは、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケルクロム合金、アルミニウム、チタン、銅、鉛および鉛合金、高融点金属、および貴金属を含んでもよい。負電流コレクタは、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケルクロム合金、チタン、酸化鉛、および貴金属を含んでもよい。いくつかの実施形態では、電流コレクタは、金属の腐食に対して不動態化しながら電子伝導率を提供する被覆を備える。そのような被覆の実施形態は、TiN、CrN、C、CN、NiZr、NiCr、Mo、Ti、Ta、Pt、Pd、Zr、W、FeN、およびCoNを含むが、それらに限定されない。水性半固体フローセルで使用される電解質は、0.1Mから10Mまでの濃度まで水中で溶解させられたアルカリ性またはアルカリ土類塩を含んでもよい。使用される塩は、挿入電極に貯蔵されるイオン種以外のアルカリ性またはアルカリ土類塩を含んでもよい。したがって、リチウムおよびナトリウム貯蔵電極について、電解質は、ASO、ANO、AClO、APO、ACO、ACl、ANO、およびAOHを含有してもよく、Aは、Li、Na、LiおよびNaの両方、またはKを含む。アルカリ土類塩は、CaSO、Ca(NO、Ca(ClO、CaCO、Ca(OH)、MgSO、Mg(NO、Mg(ClO、MgCO、およびMg(OH)含むが、それらに限定されない。水性電解質のpHは、電解質の電圧安定性窓を調整するため、またはある活性物質のプロトン交換による分解を低減するために、例えば、pHを上昇させる塩またはpHを低下させる酸を含有するOHを添加することによって、当業者に公知の方法を使用して調整されてもよい。
【0114】
一部の実施形態において、レドックス活性化合物は、ナノスケール、ナノ粒子、またはナノ構造形態として存在する。これにより、貯蔵化合物の安定した液体懸濁液の形成を促進し、そのような粒子が電流コレクタの近くにある時に、反応の速度を向上させる。ナノ微粒子は、ナノチューブ、ナノロッド、ナノワイヤ、およびナノプレートレットを含み、等軸形状を有するか、または約3より大きいアスペクト比を有してもよい。ナノトリポッドおよびナノテトラポッド等の分岐ナノ構造もまた一部の実施形態において使用され得る。ナノ構造イオン貯蔵化合物は、機械研削、化学沈殿、気相反応、レーザーによる反応、およびバイオアセンブリを含む、様々な方法によって調製されてもよい。バイオアセンブリの方法は、例えば、K.T.Nam,D.W.Kim,P.J.Yoo,C.−Y.Chiang,N.Meethong,P.T.Hammond,Y.−M.Chiang,A.M.Belcher,“Virus enabled synthesis and assembly of nanowires for lithium ion battery electrodes,”Science,312[5775],885−888(2006)に記載されるような、対象となるイオン貯蔵無機化合物を鋳型にするようにプログラムされたDNAを有するウイルスを使用するステップを含む。
【0115】
半固体の流動性のレドックス組成物を伴うレドックスセルでは、微細すぎる固相は、電流コレクタを“塞ぐ”ことによって、システムの電力およびエネルギーを阻害し得る。1つ以上の実施形態では、半固体流動性の組成物は、高速なレドックス速度のために、非常に微細な初期粒子サイズを包含するが、より大きな集塊物へと凝集される。したがって、一部の実施形態では、正または負の流動性のレドックス組成物における、固体レドックス活性化合物の粒子は、平均直径1マイクロメートルから500マイクロメートルまでの多孔質凝集物の中に存在する。
【0116】
レドックスエネルギー貯蔵デバイスは、いくつかの実施形態では、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素重合体等の潤滑剤を含むことができる、小粒子を含むことができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、システム内の固体レドックス活性化合物または任意の他の固体の粒子の蓄積を阻止するように、音響エネルギーがシステムに印加される。「音響エネルギー」は、当技術分野でその通常の意味が与えられ、概して、媒体を通して伝達される圧力の振動を指すために使用される。一実施形態では、音響エネルギーは、例えば、本発明のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイスで正および/または負の流動性のレドックス組成物として使用される半固体懸濁液に印加される。音響エネルギーの印加は、他にも理由があるが、例えば、流動性のレドックス組成物(例えば、懸濁液)において望ましくない粒子蓄積状態を回避すること、粒子成層および沈降を回避すること、固体・電解質界面(SEI)層の形成を抑制または阻止すること、原位置での懸濁液のレオロジーを改変することを可能にしてもよい。
【0118】
音響エネルギーは、任意の好適なエネルギー源から発生することができる。いくつかの実施形態では、音響エネルギー源は、分離したデバイスであってもよく(例えば、エネルギー貯蔵デバイスに取外し可能に取り付けられ、エネルギー貯蔵デバイスに近接して位置している)、またはエネルギー貯蔵デバイスとモノリシックに統合されてもよい。例えば、音響エネルギーは、いくつかの実施形態では、共振器から発生することができる。一式の実施形態では、音響エネルギーは、例えば、AC電界によって駆動される、圧電または電歪アクチュエータによって提供することができる。
【0119】
音響エネルギーは、貯蔵タンクの中、管類またはチャネルのセグメントで、またはレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス内を含む、フローセルシステム内の任意の場所で印加することができる。例えば、1つ以上の圧電アクチュエータは、超音波洗浄槽が容器の壁に取り付けられた圧電要素を伴って構築されるのとほぼ同様に、粒子沈降を制御するように貯蔵タンクの壁に取り付けられてもよい。1つ以上の音響エネルギー源は、液体中で粒子懸濁を分散させるように、超音波「ホーン」の使用に類似して、タンク自体に挿入されてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの音響エネルギー源は、貯蔵タンクとフローセルとの間で半固体懸濁液を運搬するパイプまたは管類、あるいはパイプまたは管類の間の接合部に取り付けられる。場合によっては、少なくとも1つの音響エネルギー源は、本明細書で論議される種類のインラインセンサに組み込まれる。少なくとも1つの音響エネルギー源は、いくつかの実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスの外面に取り付けられるか、またはレドックスフローエネルギー貯蔵デバイスのスタックの層内に埋め込まれてもよく、そこで、粒子分散、沈降、または懸濁レオロジーを制御するために使用されてもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、音響エネルギーは、エネルギー貯蔵デバイスの中での(例えば、エネルギー貯蔵デバイス内の流動性のレドックス組成物内での)固体の蓄積を阻止するように選択されるエネルギーの周波数および/またはレベルで、エネルギー貯蔵デバイスに印加することができる。いくつかの実施形態では、音響エネルギー源の周波数および/または出力は、例えば、懸濁液へのエネルギー結合を向上させる、および/またはデバイスによる低電力消費を維持するように、当業者に公知の方法を使用して同調されてもよい。これは、例えば、音響エネルギーの選択された周波数および/または振幅の印加を可能にするコントローラを含む音響エネルギー源を採用することによって達成することができる。いくつかの実施形態では、音響エネルギー源は、超音波音響エネルギーをエネルギー貯蔵デバイスまたはその一部分に印加するために使用されてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、音響エネルギーは、エネルギー貯蔵デバイス内の流動性のレドックス組成物の粘度を低減するように選択されるエネルギーの周波数および/またはレベルで、エネルギー貯蔵デバイスに印加することができる。いくつかの実施形態では、音響エネルギーは、流動性のレドックス組成物の粘度を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%低減するように選択されるエネルギーの周波数および/またはレベルでエネルギー貯蔵デバイスに印加することができる。
【0122】
流動性のレドックス組成物の粘度を低下させる能力は、小さいチャネル、くびれ、およびレドックス組成物を輸送することが困難となり得る他の領域で特に有用となり得る。いくつかの実施形態では、音響エネルギーは、それを通って流動性のレドックス組成物が流れるチャネルの一部分に印加することができ、チャネルの一部分は、約1cm未満、約5mm未満、約1mm未満、約100マイクロメートル未満、約10マイクロメートルと約1cmとの間、約10マイクロメートルと約5mmとの間、または約10マイクロメートルと約1mmとの間の最小断面寸法を有する。いくつかの実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、流動性のレドックス組成物が実質的に流体的に連続したチャネルを通って流れるように構築および配設され、音響エネルギーは、チャネルの最大断面寸法の約0.5倍未満、約0.25倍未満、約0.1倍未満、約0.05倍未満、または約0.02倍未満である最小断面寸法を有する、チャネルの一部分に印加される。本明細書で使用されるようなチャネルの「最大断面寸法」は、チャネルの長さと垂直に(すなわち、流体流動の方向と垂直に)測定されるような、チャネルの境界間の最大断面距離を指す。同様に、本明細書で使用されるようなチャネルの「最小断面寸法」は、チャネルの長さと垂直に(すなわち、流体流動の方向と垂直に)測定されるような、チャネルの境界間の最小断面距離を指す。
【0123】
それを通してイオンがレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス内で輸送されるイオン透過媒体は、イオンがそれを通過させられることを可能にする任意の好適な媒体を含むことができる。いくつかの実施形態では、イオン透過媒体は、膜を備えることができる。膜は、イオン輸送が可能であるいずれの従来の膜であり得る。1つ以上の実施形態では、膜は、そこを通ってイオンを輸送することを可能にする液体不透過膜、すなわち、固体またはゲルイオン導体である。他の実施形態では、膜は、電子の輸送を防止する一方で、陽極と陰極電気活性物質との間を往復することを可能にする、液体電解質を注入される多孔質高分子膜である。一部の実施形態では、膜は、正および負極の流動性を有する組成物を形成する粒子が膜を横断することを防止する微多孔膜である。例示的膜物質は、リチウム塩がリチウム伝導性を提供するような複合型であるポリエチレンオキシド(PEO)高分子、またはプロトン導体であるNafion(登録商標)を含む。例えば、PEOベースの電解質は、補助層のようなガラス繊維分離器等の他の膜と任意に安定化される、ピンホールのない固体イオン導体である膜として使用することができる。PEOはまた、正または負の流動性を有するレドックス組成物の中で、スラリー安定剤、分散剤等として使用することができる。PEOは、一般的なアルキル炭酸塩ベースの電解質と接触して安定している。これは、Li金属に対して約3.6Vより少ない正極のセル電位を有するリン酸塩ベースセルの化学的性質において、特に有用であり得る。レドックスセルの稼動温度は、膜のイオン伝導性を向上させるように必要に応じて上昇させられ得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、流動性のレドックス組成物の固相または濃縮液体を懸濁し、輸送するために担体液体が使用される。担体液体は、流動性を有するレドックス組成物の固相または濃縮イオン貯蔵液体を、懸濁させ輸送することができる任意の液体であり得る。例として、担体液体は、水、アルコール等の極性溶媒、または非プロトン性有機溶媒であり得る。数々の有機溶媒が、Liイオンバッテリ電解質の構成要素、とりわけ、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、およびそれらの塩素化またはフッ素化誘導体等の環状炭酸エステルの仲間、ならびに炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ブチルメチル、炭酸ブチルエチル、および炭酸ブチルプロピル等の非環状炭酸ジアルキルエステルの仲間として提案されてきた。Liイオンバッテリ電解質溶液の構成要素として提案される他の溶媒は、γ−ブチロラクトン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオノニトリル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル、テトラグリム、および同等物を含む。これらの非水溶媒は、通常、イオン伝導性を提供するように、その中に塩が溶解される多構成要素の混合物として使用される。リチウム伝導率を提供する例示的な塩は、LiClO、LiPF、LiBF、リチウムビス(ペトラフルオロスルホニル)イミド(LiBETIとも呼ばれる)、リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiTFSIとも呼ばれる)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOBとも呼ばれる)、および同等物を含む。具体的実施例として、担体液体は、リチウムビス(ペトラフルオロスルホニル)イミドと混合された1,3−ジオキソラン、例えば、質量で約70:30の混合物、LiPFと混合された炭酸アルキル、(例えば、約1Mのモル濃度で)炭酸ジメチルDMC中のLiPF、(例えば、約2Mのモル濃度で)1,3−ジオキソラン中のLiClO、および/または(例えば、約1:1のモル比で)テトラグリムおよびチウムビス(ペトラフルオロスルホニル)イミドの混合物を含むことができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、(例えば、流動性のレドックス組成物内の固相を懸濁し、輸送するために)流動性のレドックス組成物内で使用される担体液体、および/または流動性のレドックス組成物の中(例えば、半固体フローセルで陰極液または陽極液として使用される半固体懸濁液の中)に含まれる塩は、固体・電解質界面(SEI)の形成を阻止する能力のために選択される。SEIの形成は、当業者に公知の現象であり、通常は、例えば、一次および二次リチウムバッテリに存在する。電極上の薄く安定したSEIの形成が継続することが許可された場合、セルの中の作業リチウムを消費する、電極のインピーダンスを増加させる、安全性の問題を導入する、または電解質を分解することができる、(正極における)酸化反応または(負極における)還元反応に対して電極の制御された不動態化を提供することができるので、従来のリチウムイオンバッテリにおいては望ましくなり得る。しかしながら、本明細書で説明されるいくつかの実施形態では、SEIの形成は、望ましくないようになり得る。例えば、半固体懸濁液中の伝導性粒子上または電流コレクタの表面上のSEIの形成は、そのようなフィルムが概して電子的に絶縁性であるので、セル性能を減少させることができ、このフローセルの内部抵抗を増加させることができる。したがって、正および/または負の流動性のレドックス組成物(例えば、陰極液および/または陽極液)の作業電位でのSEI形成を最小化する担体液体および/または塩を選択することが有利となり得る。いくつかの実施形態では、同じ組成物(例えば、担体流体、塩、および/または電気活性固体物質)は、正の流動性のレドックス組成物および負の流動性のレドックス組成物の両方で使用され、フローセルの電極または電流コレクタの両方における電位を含む電気化学安定性窓を有するように選択される。他の実施形態では、正および負の流動性のレドックス組成物の構成要素(例えば、担体流体、塩、および/または電気活性固体物質)は、正および/または負の流動性のレドックス組成物(およびそれぞれの電流コレクタ)の性能を向上させるように別々に選択され、使用される。そのような場合、半固体陰極および陽極の電解質相は、正と負の流動性のレドックス組成物との間で作業イオンの容易な輸送を可能にしながら、担体液体に対して部分的または完全に不透過性である分離媒体(例えば、セパレータ膜)を使用することによって、フローセルの中で分離されてもよい。このようにして、第1の担体液体を正電気活性帯で(例えば、正の流動性のレドックス組成物で)使用することができ、第2の異なる担体液体を負電気活性帯で(例えば、負の流動性のレドックス組成物で)使用することができる。
【0126】
本明細書で説明されるフローセルの負および/または正極での有利な使用のために、種々の担体液体を選択することができる。いくつかの実施形態では、担体液体化合物は、1つの酸素原子を含む。例えば、担体液体は、いくつかの実施形態では、エーテル(例えば、非環状エーテル、環状エーテル)またはケトン(例えば、非環状ケトン、環状ケトン)を含んでもよい。場合によっては、担体液体は、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、およびジイソプロピルエーテル等の対称非環状エーテルを含む。場合によっては、担体液体は、例えば、エチルメチルエーテル、メチルn−プロピルエーテル、イソプロピルメチルエーテル、メチルn−ブチルエーテル、イソブチルメチルエーテル、メチルs−ブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルn−プロピルエーテル、エチルn−ブチルエーテル、エチルi−ブチルエーテル、エチルs−ブチルエーテル、およびエチルt−ブチルエーテル等の非対称非環状エーテルを含む。場合によっては、担体液体は、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン等の、5員環を含む環状エーテルを含む。担体液体は、いくつかの実施形態では、例えば、テトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロピラン、3−メチルテトラヒドロピラン、4−メチルテトラヒドロピラン等の、6員環を含む環状エーテルを含むことができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、担体液体化合物は、ケトンを含む。ケトンは、いくつかの実施形態では、電解質において比較的高いイオン伝導率を可能にしてもよい、それらの比較的大きい双極子モーメントにより、使用に有利であってもよい。いくつかの実施形態では、担体液体は、例えば、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、または3−メチル−2−ブタノン等の非環状ケトンを含む。担体液体は、場合によっては、5員環(例えば、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、および3−メチルシクロペンタノン)、または6員環(例えば、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン)を伴う環状ケトンを含む、環状ケトンを含むことができる。
【0128】
担体液体化合物は、いくつかの実施形態では、2つの酸素原子を含有することができる。例えば、担体液体は、ジエーテル、ジケトン、またはエーテルを含むことができる。いくつかの実施形態では、担体液体は、非環状ジエーテル(例えば、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン)、非環状ジケトン(例えば、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン)、または非環状エステル(例えば、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル)を含むことができる。担体液体は、いくつかの実施形態では、環状ジエーテルを含むことができる。例えば、担体液体は、5員環を含む環状ジエーテル(例えば、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン)、または6員環を含む環状ジエーテル(例えば、1,3−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2−メチル−1,4−ジオキサン)を含むことができる。担体液体は、場合によっては、環状ジケトンを含むことができる。例えば、担体液体は、5員環を含む環状ジケトン(例えば、1,2−シクロペンタンジオン、1,3−シクロペンタンジオン、および1H−インデン−1,3(2H)−ジオン)、または6員環を含む環状ジエーテル(例えば、1,2−シクロヘキサンジオン、1,3−シクロヘキサンジオン、および1,4−シクロヘキサンジオン)を含むことができる。いくつかの実施形態では、担体液体は、環状エステルを含むことができる。例えば、担体液体は、5員環を含む環状エステル(例えば、ガンマ−ブチロラクトン、ガンマ−バレロラクトン)、または6員環を含む環状エステル(例えば、デルタ−バレロラクトン、デルタ−ヘキサラクトン)を含むことができる。
【0129】
場合によっては、3つの酸素原子を含有する担体液体化合物が採用されてもよい。例えば、担体液体は、トリエーテルを含んでもよい。場合によっては、担体液体は、例えば、1−メトキシ−2−(2−メトキシエトキシ)エタン、および1−エトキシ−2−(2−エトキシエトキシ)エタン、またはトリメトキシメタン等の非環状トリエーテルを含んでもよい。場合によっては、担体液体は、環状トリエーテルを含むことができる。いくつかの実施形態では、担体液体は、5員環を伴う環状トリエーテル(例えば、2−メトキシ−1,3−ジオキソラン)または6員環を伴う環状トリエーテル(例えば、1,3,5−トリオキサン、2−メトキシ−1,3−ジオキサン、2−メトキシ−1,4−ジオキサン)を含むことができる。
【0130】
担体液体化合物は、いくつかの実施形態では、炭酸塩(例えば、不飽和炭酸塩)を含む。炭酸塩は、場合によっては、市販のリチウムバッテリで従来使用されている液体炭酸塩よりも低い電位でSEIを形成してもよい。場合によっては、非環状炭酸塩を使用することができる(例えば、炭酸メチルビニル、炭酸メチルエチニル、炭酸メチルフェニル、炭酸フェニルビニル、炭酸エチニルフェニル、炭酸ジビニル、炭酸ジエチニル、炭酸ジフェニル)。場合によっては、例えば、6員環を伴う環状炭酸塩(例えば、1,3−ジオキサン−2−オン)等の環状炭酸塩を使用することができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、担体液体は、1つ以上のエーテル、エステル、および/またはケトンの組み合わせを含む化合物を含む。そのような構造は、いくつかの実施形態では、電解質において高いイオン伝導率を可能にする比較的高い双極子モーメントにより、使用に有利となり得る。いくつかの実施形態では、担体液体は、エーテル−エステル(例えば、2−酢酸メトキシエチル)、エステル−ケトン(例えば、3−アセチルジヒドロ−2(3H)−フラノン、2−酢酸オキソプロピル)、ジエーテル−ケトン(例えば、2,5−ジメトキシ−シクロペンタノン、2,6−ジメトキシ−シクロヘキサノン)、または無水物(例えば、無水酢酸)を含む。
【0132】
場合によっては、担体液体化合物は、アミド等の1つの窒素および1つの酸素原子を含む。そのような化合物は、非環状(例えば、N,N−ジメチルホルモアミド)または環状(例えば、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−ピペリドン、1−ビニル−2−ピロリドン)となり得る。
【0133】
1つの窒素および2つの酸素原子を含有する化合物を、場合によっては、担体液体で使用することができる。例えば、3−メチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンを、場合によっては、担体液体で使用することができる。3−メチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンは、いくつかの実施形態では、電解質において高いイオン伝導率を可能にする、比較的高い双極子モーメントにより、使用に有利であってもよい。
【0134】
2つの窒素原子および1つの酸素原子を含有する化合物を、場合によっては、担体液体において使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、担体液体は、1,3−ジメチル2−イミダゾリジノン、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、または1,3−ジメチルテトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノンを含むことができる。これらの化合物も、いくつかの実施形態で利点を提供することができる、比較的高い双極子モーメントを含む。
【0135】
場合によっては、担体液体は、フッ素化またはニトリル化合物(例えば、本明細書で記述される担体液体の種類のうちのいずれかのフッ素化またはニトリル誘導体)を含む。そのような化合物は、流体の安定性を増大させ、電解質のより高いイオン伝導率を可能にしてもよい。そのようなフッ素化化合物の実施例は、2,2−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン、2,2,5,5−テトラフルオロシクロペンタノン、2,2−ジフルオロ−ガンマ−ブチロラクトン、および1−(トリフルオロメチル)ピロリジン−2−オンを含むが、それらに限定されない。そのようなニトリル化合物の実施例は、テトラヒドロフラン−2−カルボニトリル、1,3−ジオキソラン−2−カルボニトリル、および1,4−ジオキサン−2−カルボニトリルを含むが、それらに限定されない。
【0136】
場合によっては、担体液体は、硫黄含有化合物を含む。場合によっては、担体液体は、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロチオフェン1−オキシド、1−(メチルスルホニル)エチレン)、スルホン(例えば、ジメチルスルホン、ジビニルスルホン、テトラヒドロチオフェン1,1−ジオキシド)、亜硫酸塩(例えば、1,3,2−ジオキサチオラン2−オキシド、亜硫酸ジメチル、1,2−亜硫酸プロピレングリコール)、または硫酸塩(例えば、硫酸ジメチル、1,3,2−ジオキサチオラン2,2−オキシド)を含むことができる。いくつかの実施形態では、担体液体は、1つの硫黄および3つの酸素原子を伴う化合物(例えば、スルホン酸メチルメタン、1,2−オキサチオラン2,2−ジオキシド、1,2−オキサチアン2,2−ジオキシド、スルホン酸メチルトリフルオロメタン)を含むことができる。
【0137】
担体液体は、例えば、リン酸塩(例えば、リン酸トリメチル)および亜リン酸塩(例えば、亜リン酸トリメチル)等のリン含有化合物を含む。いくつかの実施形態では、担体液体は、1つのリンおよび3つの酸素原子(例えば、ホスホン酸ジメチルメチル、ホスホン酸ジメチルビニル)を含むことができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、担体液体は、イオン液体を含む。イオン液体の使用は、場合によっては、SEI形成を有意に低減または排除してもよい。イオン液体での使用に好適な例示的アニオンは、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロヒ酸塩、過塩素酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、およびチオサッカリンアニオンを含むが、それらに限定されない。好適なカチオンは、アンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、またはピロリジニウム誘導体を含むが、それらに限定されない。イオン溶液は、いくつかの実施形態では、上記のアニオンのうちのいずれか1つおよび上記のカチオンのいずれか1つの組み合わせを含む。
【0139】
担体液体は、場合によっては、本明細書で記述される担体液体化合物のうちのいずれかのペルフルオロ化誘導体を含む。ペルフルオロ化誘導体は、炭素原子に結合された少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に取って代わられる化合物を指すために使用される。場合によっては、炭素原子に結合された水素原子の少なくとも半分または実質的に全てがフッ素原子と置き換えられる。担体液体化合物の中の1つ以上のフッ素原子の存在は、いくつかの実施形態では、分子の粘度および/または双極子モーメントの増進した制御を可能にしてもよい。
【0140】
一部の実施形態では、流動を受けるレドックス組成物の粘度は、約−50℃から+50℃までの間であるバッテリの動作温度において、約1センチポアズ(cP)から約1.5X10cPまで、または約1センチポアズ(cP)から約10cPまでの非常に広い範囲内であり得る。一部の実施形態では、流動を受ける電極の粘度は、約10cPより少ない。他の実施形態では、粘度は、約100cPから10cPまでの間である。半固体が使用されるそれらの実施形態では、イオン貯蔵固相の体積の分率は、5%から70%までの間であり得、導電性添加物等の他の固相を含む総固体分率は、10%から75%までの間であり得る。一部の実施形態では、電気化学反応が生じるセル“スタック”は、粘度を減少または反応率を増加するように、より高い温度で動作する一方で、半固体用の貯蔵タンクは、より低い温度であってもよい。
【0141】
一部の実施形態では、蠕動ポンプは、固体を包含する電気活性物質を1つの電気活性帯、または並列の複数の電気活性帯の中に導入するように使用される。スラリーの全体体積(チューブ類、スラリーリザーバ、および活性セルによって占められる)は、スラリーの循環によって放電および再充電することができる。活性正極および負極のスラリーは、蠕動ポンプによって、セルを通って独立して循環することができる。ポンプは、正極スラリーおよび負極スラリーの流速の独立制御を提供することができる。独立制御によって、電力の均衡をスラリー伝導性および容量特性に適応させることを可能にする。
【0142】
一部の実施形態では、蠕動ポンプは、可撓性のチューブ類の長さに沿って、ローラーを動かすことによって作動する。このように、チューブ類内部の流体は、チューブ類外部の何とも接触することはない。ポンプにおいて、駆動によって、ポンプ頭部に連結されるシャフトを回す。ポンプ頭部は、チューブ類を適所に固定し、また、回転ヘッドをチューブ類に渡って動かし、チューブ内に流動を生み出すようにシャフトの回転を使用する。そのようなポンプは、伝達されている流体が隔離される必要がある状況(輸血および他の医療用途においてのような)においてしばしば使用される。この点で、蠕動ポンプはまた、粘性流体および粒子懸濁液を伝達するように使用することができる。一部の実施形態では、チューブ類の閉回路は、蠕動ポンプによって提供される力によって、スラリーを周期的に動かすために使用される。一部の実施形態では、閉鎖されたアノード液およびカソード液システムは、アノード液およびカソード液を収集または供給するために、取外し可能アタッチメントが図示されるリザーバに接続されてもよく、したがって、活物質を外部で再利用することが可能になる。ポンプは、セルから獲得されるこのシステムを含んでもよい動力源が必要となるであろう。一部の実施形態では、チューブ類は、充電極液およびカソード液用の取外し可能リザーバ、ならびに放電アノード液およびカソード液の取外し可能リザーバが必要となる場合には、閉循環でなくてもよく、したがって、活物質を外部で再利用することができる。一部の実施形態では、1つ以上のスラリーは、セルにおけるスラリーの滞留時間中、完全な充電または放電を可能にする速度で、レドックスセルを通って汲み出されるのに対して、他の実施形態では、1つ以上のスラリーは、高速でレドックスセルを通って繰り返し循環され、セルにおける滞留時間中、部分的に充電または放電される。一部の実施形態において、1つ以上のスラリーを汲み出す方向は、スラリーの混合を向上させるか、または流れシステムの通過の詰まりを減少するように、断続的に逆転する。
【0143】
臑動ポンプについて詳述されてきたが、他の種類のポンプがまた、本明細書に記載の流動性レドックス組成物(単数または複数)を輸送するために使用されることができることが理解されるはずである。例えば、一部の実施形態では、ピストンポンプはドックスフローエネルギー貯蔵装置を介して1つ以上の流動性レドックス組成物を輸送するために使用される。一部の実施形態では、オーガが、1つ以上の流動性レドックス組成物を輸送するために使用されることができる。
【0144】
流動性のレドックス組成物は、流動性のレドックスセルの性能を向上させるために、様々な添加物を含むことができる。そのような例における半固体スラリーの液相は、電解質塩と、安定性を向上させ、ガス形成を減少させ、負極粒子上でのSEI形成を向上させる等のために追加される結合剤、増粘剤、または他の添加物とが溶解する溶媒を含むであろう。そのような添加物の例は、炭酸ビニレン(VC)、炭酸ビニルエチレン(VEC)、炭酸フルオロエチレン(FEC)、あるいは桂皮酸アルキルを含み、アノードに安定した不動態化層を、または酸化物カソードに薄い不動態化層を、すなわち、抗ガス化剤(antigassing agent)としてプロパンスルホン酸(PS)、プロペンスルホン酸(PrS)、またはエチレンチオカーボナート、ガス化/安全/カソード重合剤としてビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン、または部分水素化テルフェニル、もしくはアノード不動態化剤として、リチウムビス(オキサトラト)ホウ酸塩を提供する。
【0145】
一部の実施形態では、非水溶性の正極および負極の流動性のレドックス組成物は、活物質懸濁液の中へ、あるいは貯蔵タンクまたはシステムの他の配管の中への水分を、ゲッターの作用で除去する化合物を組み込むことによって、不純物水分を吸収し、酸(LiPF塩の場合にはHF等)を生成することが妨げられる。選択的に、添加物は、酸を中和する基本的な酸化物である。そのような化合物は、シリカゲル、硫酸カルシウム(例えば、Drieriteとして知られる製品)、酸化アルミニウム、および水酸化アルミニウムを含むが、それらに限定されない。
【0146】
一部の実施形態では、半固体フロー電極のコロイド化学およびレオロジーは、半固体の流動性を向上させ、活物質粒子が沈むことを防ぐために必要な任意のかき混ぜまたは撹拌を最小限に抑えるために、固体粒子がゆっくりとのみ沈むか、または全く沈まない、安定した懸濁液を産生するように適応する。電気活性物質粒子懸濁液の安定性は、粒子の沈殿による固体−液体分離の根拠として静的スラリーを監視することによって、評価することができる。本願で使用されるように、電気活性物質粒子懸濁液は、懸濁液に観察可能な粒子の沈殿がないときに“安定”と見なされる。一部の実施形態では、電気活性物質粒子懸濁液は、少なくとも5日間安定的である。大抵、電気活性物質粒子懸濁液の安定性は、懸濁した粒子サイズの減少とともに増加する。一部の実施形態では、電気活性物質粒子懸濁液の粒子サイズは、10ミクロンより小さいくらいである。一部の実施形態では、電気活性物質粒子懸濁液の粒子サイズは、5ミクロンより小さいくらいである。一部の実施形態では、電気活性物質粒子懸濁液の粒子サイズは、約2.5ミクロンである。一部の実施形態では、懸濁液の伝導性を増加させるように、導電性添加物が電気活性物質粒子懸濁液に追加される。概して、Ketjen炭素粒子等の導電性添加物の高体積分率は、懸濁液の安定性および電子伝導性を増加させるが、過剰な量の導電性添加物はまた、懸濁液の粘度を増加させる場合がある。一部の実施形態では、流動性のレドックス電極組成物は、沈殿を減少させ、懸濁液の安定性を向上させるように、増粘剤または結合剤を含む。一部の実施形態では、ポンプによって生しさせられたせん断流は、懸濁液のさらなる安定化を提供する。一部の実施形態では、流速は、電極における樹状突起の形成を排除するように適合する。
【0147】
一部の実施形態では、半固体の中の活物質粒子は沈むことができ、別々に収集され貯蔵され、次いで、必要に応じてフロー電極を形成するように、液体と再混合される。
【0148】
一部の実施形態では、レドックスフローバッテリの充電または放電の割合は、電流コレクタと電気連通する1つまたは両方のフロー電極の瞬間的な量を増加することによって、増加する。
【0149】
一部の実施形態では、これは、反応帯が増加してフロー電極の中に延在するように、半固体懸濁液をより電子的に伝導的にすることによって達成される。一部の実施形態では、半固体懸濁液の伝導性は、金属と、金属炭化物と、金属窒化物と、カーボンブラック、黒鉛炭素粉末、炭素繊維、炭素微細繊維、気相成長炭素繊維(VGCF)を含む炭素、および“バッキーボール”、カーボンナノチューブ(CNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、グラフェンシートまたはグラフェンシートの凝集物を含むフラーレン、ならびに大部分は閉殻または閉管のグラフェンシートではないフラーレン断片を含む物質の形態とを含むが、それらに限定されない導電物質の追加によって増加する。一部の実施形態では、ナノロッドまたはナノワイヤ、あるいは活物質または導電性添加物の高く期待される微粒子は、イオン貯蔵容量または電力、あるいは両方を向上するように、電極懸濁液の中に含まれることができる。例として、VGCF(気相成長炭素繊維)等のカーボンナノフィルタ、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、または単層カーボンナノチューブ(SWNT)が、電子伝導性を向上する、または選択的に作動イオンを貯蔵するように、懸濁液の中に使用されてもよい。
【0150】
一部の実施形態では、半固体イオン貯蔵物質の伝導性は、半固体イオン貯蔵物質の固体を、固体より高い電子伝導性を有する導電性塗料で被膜することによって増加させる。導電性被膜物質の非限定的な例は、炭素、金属、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、または導電性高分子を含む。一部の実施形態では、半固体イオン貯蔵物質の固体は、レドックスエネルギー貯蔵装置の動作条件において、レドックス不活性である金属で被覆される。一部の実施形態では、半個体の正味の伝導性を増加させ、および/またはエネルギー貯蔵粒子と伝導性添加物との間の電荷移動を促進するために、半固体イオン貯蔵物質の固体は、貯蔵物質粒子の伝導性を増加するように銅で被覆される。一部の実施形態では、貯蔵物質粒子は、約1.5重量%の金属銅で被覆される。一部の実施形態では、貯蔵物質粒子は、約3.0重量%の金属銅で被覆される。一部の実施形態では、貯蔵物質粒子は、約8.5重量%の金属銅で被覆される。一部の実施形態では、貯蔵物質粒子は、10.0重量%の金属銅で被覆される。一部の実施形態では、貯蔵物質粒子は、約15.0重量%の金属銅で被覆される。一部の実施形態では、貯蔵物質粒子は、約20.0重量%の金属銅で被覆される。概して、流動性のレドックス電極の循環性能は、導電性塗料の重量分率の増加に伴い増加する。概して、流動性のレドックス電極の容量もまた、導電性塗料の重量分率の増加に伴い増加する。
【0151】
一部の実施形態では、レドックスフローバッテリの充電または放電の速度は、粒子の接触およびイオン貯蔵物質粒子の浸透ネットワークの形成を増加させるために、粒子間相互作用または半固体のコロイド化学を適用させることによって増加する。一部の実施形態では、浸透ネットワークは、電流コレクタの近くに形成される。一部の実施形態では、半固体は、望ましい場合にはより容易に流れるように、粘度が低下する。一部の実施形態では、半固体は、例えば、電流コレクタの近くで遭遇されるような高いせん断速度で浸透ネットワークを形成するために、粘度が低下する。
【0152】
1つ以上の実施形態による、流動性の電極活物質を使用する非水溶性バッテリのエネルギー密度は、従来のレドックスアノード液およびカソード液バッテリに勝るとも劣らない。レドックスアノード液およびカソード液、例えば、溶液のバナジウムイオンに基づくそれらは、通常、1から8モルまでの間のバナジウムイオンの重量モル濃度を有し、高い酸濃度が使用されるときに、より高い濃度が生じる。既知のリチウムイオンバッテリの正極および負極化合物に基づく半固体スラリーのエネルギー密度を、これらの値と比較してもよい。そのような例における半固体スラリーの液相は、アルキル炭酸塩またはアルキル炭酸塩の混合物を含むがそれらに限定されない溶媒を含むこともあり、その中にはLiPF、および安定性を向上させ、ガス形成を減少させ、負極粒子上でのSEI形成を向上させるために追加される、結合剤、増粘剤、または他の添加物等を含むがそれらに限定されない、リチウム塩が溶解する。
【0153】
非水溶性半固体レドックスフローセルでは、1つの有用な正極流動性のレドックス組成物は、上に述べた液体の中のリチウム遷移金属オリビン粒子の懸濁液である。そのようなオリビンはLiMPOを含み、Mは、第一遷移金属または固体溶液、ドープまたは変形された組成物、あるいはそのようなオリビンの不定比性または不規則形態を含む。化合物LiFePOを説明のため例に取ると、オリビンLiFePOの密度は3.6g/cmであり、その式量は157.77g/moleである。リットル当たりの固体オリビンのFe濃度は、したがって、(3.6/157.77)×1000cm/リットル=22.82molarである。液体によって実質的に希釈された懸濁液の中に存在する場合でさえ、重量モル濃度は、一般的なレドックス電解質の重量モル濃度をはるかに超える。例えば、50%の固体スラリーは、さらに高度に濃縮されたバナジウムフローバッテリ電解質を超える11.41M濃度を有し、これは全くの酸の追加なしで達成される。
【0154】
一部の実施形態では、電気化学的に活性である固体化合物が粒子を形成する、正極の流動性のレドックス組成物は、LiCoOであり、密度は5.01g/cm、式量は97.874g/moleである。リットル当たりのCo濃度は、(5.01/97.874)×1000cm/リットル=51.19molarである。そのような半固体スラリーのエネルギー密度は、明らかに、従来の液体カソード液またはアノード液溶液において可能であるエネルギー密度より数倍高い。
【0155】
一部の実施形態では、負極の流動性のレドックス組成物として機能し得る、液体中の黒鉛の懸濁液が使用される。動作において、黒鉛(または他の硬質および軟質炭素)は、リチウム間に介入することができる。黒鉛において、最大濃度は約LiCである。黒鉛は約2.2g/cmの密度を有し、LiCの式量は、102.94g/moleであるため、LiCのリットル当たりのLi濃度は、(2.2/102.94)×1000=21.37molarである。これは再び、従来のレドックスフローバッテリアノード液より一層高い。
【0156】
さらに、非水溶性バッテリは、一部の水溶性バッテリの2倍より高いセル動作電圧を有することができ、電圧は、通常、より高い電圧での水の加水分解の制限のために、1.2−1.5Vに制限されることができる。対照的に、半固体レドックスフローセルにおける黒鉛を伴うLiFePOの使用は、3.3Vの平均電圧を提供し、黒鉛を伴うLiCoOは、3.7Vの平均電圧を提供する。任意のバッテリのエネルギーも電圧に比例するので、固体懸濁液または濃縮イオン補助液体レドックスフロー組成物を使用するバッテリは、従来の溶液ベースのレドックスフローセルを越えてエネルギーをさらに向上させる。
【0157】
したがって、非水溶性半固体レドックスフローセルは、より高いセル電圧と、可溶性金属に限定するのではなく、むしろ固体の懸濁液または液体電極活物質を含むレドックスフローバッテリよりさらに多くのエネルギー密度であるフローバッテリ電極とを提供することによって、レドックスフローバッテリおよび従来のリチウムイオンバッテリ両方の利点を提供することができるか、あるいは、液体金属または他の液体化合物等の高密度液体反応物の場合には、フローバッテリ電解質は、著しい分率またはさらに大部分の液体反応物それ自体をも含み得る。従来の一次または二次バッテリとは異なり、総容量または貯蔵されるエネルギーは、分離器、電流コレクタ箔、包装等の他の構成要素の量を増加させることなく、反応物を保持するリザーバのサイズを増大させることのみによって増加し得る。燃料セルとは異なり、そのような半固体レドックスフローバッテリは再充電可能である。
【0158】
多くの用途の中でも、半固体および濃縮イオン補助液体レドックスフローバッテリは、プラグインハイブリッド(PHEV)または全電気自動車(EV)に電力を供給するために使用することができる。現在、平均日走行距離が33マイルである米国等、日走行距離が長い市場に対して、一日一回の充電で40マイルの電気範囲(PHEV40)を供給するバッテリが実用的であるため、PHEVは魅力的な解決法である。約3000lbの重量の車に対して、PHEVは、扱いやすいサイズ、重量、および費用のバッテリである、およそ15kWhのエネルギーおよび約100kWの電力のバッテリを必要とする。
【0159】
しかしながら、同一走行距離パターンに対する同一サイズのEVは、概してエネルギーおよび安全性の妥当な備えをユーザに提供するために、再充電と再充電との間に200マイルの走行距離等、より長い距離または75kWhが必要となるであろう。より高い比エネルギーバッテリは、EVの広範な使用を可能にするであろう、サイズ、重量、およびコストの測定基準に合致するために必要である。半固体および濃縮イオン補助液体レドックスフローバッテリは、そのような用途に対して実用的な低コストのバッテリ溶液を可能にすることができる。LiCoO/炭素対の理論エネルギー密度は、380.4Wh/kgである。しかしながら、そのような化学的性質に基づく高電力および高エネルギーリチウムイオンバッテリは、不活物質の希釈効果のために、セルレベルでは約100−175Wh/kgしか提供しない。200マイル範囲を提供することは、75kWhのエネルギーを提供することに等しく、750−430kgの現行の先進的リチウムイオンセルが必要とされる。また、包装、冷却システム、バッテリ管理システム等のバッテリシステムの他の構成要素のために、さらなる質量も必要である。
【0160】
EVにおける従来のリチウムイオンバッテリの使用について、比エネルギーは電力より制限的であることが知られている。すなわち、所望の走行距離に対する十分なエネルギーを伴うバッテリは、通常、十分過ぎる電力を有しているであろう。それゆえ、バッテリシステムは、不必要な電力を提供する無駄な質量および体積を含む。半固体または濃縮イオン補助液体レドックスフローバッテリは、必要な電力を提供する大きさの、より小さい発電部分(またはスタック)を有することができる一方、総質量のより大きな残りの一部分を、高エネルギー密度の正極および負極レドックスフロー組成物、ならびにそれらの貯蔵システムに充当することができる。車を動作させるために必要とされるおおよそ100kWを提供するためには、スタックがいくら必要かを考慮することによって、発電スタックの質量が決定される。現在、約1000−4000W/kgの特定の電力を有するリチウムイオンバッテリが利用可能である。そのようなバッテリおよび流動性のレドックスセルのスタックの中の分離器の、単位面積当たりで生成される電力は類似している。したがって、100kWの電力を提供するためには、約25−100kgのスタックが必要とされる。
【0161】
バッテリ質量の残余部は、大部分、正極および負極の流動性のレドックス組成物によってもたらされ得る。LiCoO/炭素対の理論エネルギー密度は380.4Wh/kgであるので、75kWhのエネルギーを提供するために必要とされる活物質の総量は、197kgだけである。フローバッテリでは、活物質は、正極および負極の流動性のレドックス組成物の中でも群を抜いた最大質量部分であり、残余部は、イオン貯蔵化合物より低い密度を有する、添加物および液体電解質相からもたらされる。75kWhのエネルギーを供給するために必要とされる、正極および負極の流動性のレドックス組成物の質量は、約200kgでしかない。
【0162】
それゆえ、スタック質量(25−100kg)および正極および負極の流動性のレドックス組成物質量(200kg)の両方を含め、200マイル範囲を供給する半固体レドックスフローバッテリは、同一範囲を提供する先進的なリチウムイオンバッテリの質量(および体積)より一層少ない、質量225kgから300kgまでの重さとなる場合がある。そのようなシステムの比エネルギーは、75kWhをバッテリ質量で割るか、または333〜250Wh/kgであり、現在のリチウムセルの比エネルギーの約2倍である。システムの総エネルギーが増加するにつれて、スタック質量は全体の中での分率が減少するので、比エネルギーは理論値380.4Wh/kgに近づく。この点において、充電式リチウムフローバッテリは、従来のリチウムイオンセルとは異なるスケーリング挙動を有し、エネルギー密度は、機能的なバッテリを有するための不活物質の大きな分率が必要となるため、システムサイズにかかわらず、理論値の50%より小さくなる。
【0163】
したがって、実施形態の1組では、充電式リチウムイオンフローバッテリが提供される。一部の実施形態では、そのようなバッテリは、例えば、約50kWhより少ない総エネルギーにおいて約150Wh/kgより多いか、約100kWhより少ない総エネルギーにおいて約200Wh/kgより多いか、または約300kWhより少ない総エネルギーにおいて約250Wh/kgより多い比エネルギーというように、システムに対する比較的小さい総エネルギーにおいて比較的高い比エネルギーを有する。
【0164】
実施形態の別の組では、レドックスフロー装置は、正および負の電流コレクタの絶対電位を決定するために、動作中、1つ以上の参照電極を使用し、電位は、正極および負極の流動性のレドックス組成物の適切な送達速度を決定するために、フィードバックループにおいて使用される。例えば、カソード反応がアノード反応より速く完了する予定である場合、セルは“カソード欠乏”となり、より大きい分極が正極において生じるであろう。そのような例では、カソード電位の検出によって、そのような状況または差し迫った状況が示されるであろうし、正極の流動性のレドックス組成物の送達速度は、増加することができる。レドックスフローセルが高電力で使用されており、カソードおよびアノード反応の両方が完了し、その結果、瞬間流速で完全な放電または充電状態となる場合、これも電流コレクタの電位を使用して検出することができ、正極および負極の流動性のレドックス組成物の速度は、セルの所望の現在速度に“合致する”ように増加する。
【0165】
1つより多い参照電極が、フローバッテリ内での電気化学反応の利用および完了の位置変化を決定するために使用され得る。例えば、正極および負極の流動性のレドックス組成物が、分離器および電極に平行に流れ、一端からスタックに進入し、他端から退出する平面スタックを考えてみる。カソード活物質およびアノード活物質は、電気連通するとすぐに充電または放電し始めることができるため、反応の程度は、スタックへの入口および出口で異なり得る。スタック内およびセル内の1箇所より多い位置に参照電極を置くことによって、充電または放電および局所分極の状態に対するセルのほぼ瞬間的な状態を決定することができる。セルの動作効率、電力、および利用は、参照電極からの電圧入力を考慮に入れ、カソード液およびアノード液の全体または相対的流速等の動作パラメータを変更することによって、最適化することができる。
【0166】
参照電極は、また、フロー装置システム内の他の場所に置かれてもよい。例えば、正極および負極の流動性のレドックス組成物貯蔵タンクの中に参照電極を有するか、または貯蔵タンク内に別個の電気化学セルを有するならば、タンクの中の正極および負極の流動性のレドックス組成物の充電および放電の状態を監視することができる。これは、また、必要な電力およびエネルギーを提供するために、バッテリを動作させる時に、半固体懸濁液の流速を決定するための入力としても使用することができる。参照電極の位置が、アノード液、カソード液、または分離器のいずれかにおける局所電圧の決定を可能にする。複数の参照電極は、電圧の空間分布を決定することを可能にする。流速を含む場合があるセルの動作条件は、電圧の分布の変化を介して、電力密度を最適化するように適応することができる。
【0167】
一部の実施形態では、半固体レドックスフローセルは、非水溶性のリチウム充電式セルであり、参照電極として、リチウム濃度の範囲に渡って一定の電位(一定のリチウムの化学的電位)を生じさせるためにリチウム化される、リチウム貯蔵化合物を使用する。一部の実施形態において、参照電極の中のリチウム活物質は、チタン酸リチウムスピネルまたは酸化リチウムバナジウム、あるいは一般式LiPOのリチウム遷移金属オリビンを含むがそれらに限定されない、リチウム遷移金属リン酸塩であり、式中、Mは第一遷移金属を含む。一部の実施形態において、化合物は、LiFePOオリビンまたはLiMnPOオリビン、あるいは2つの混合物または固体溶液である。
【0168】
場合によっては、フローデバイスシステムとは別個となり得る(したがって、システムから除去可能となり得る)分離したインラインセンサが、システムの動作中に使用されてもよい。インラインセンサは、例えば、流動性のレドックス組成物の貯蔵タンク、またはシステム内で流動性のレドックス組成物を輸送する導管等のシステム内の場所での絶対電位を決定するために使用することができる参照電極を含有してもよい。レドックスフローエネルギー貯蔵システムから除去することができる1つ以上の分離したインラインセンサの使用は、センサを交換するために必要とされる時間量を削減し、したがって、システムダウンタイムを削減してもよい。加えて、分離したインラインセンサから取得されるデータは、1つ以上の統合参照電極の精度をチェックすることに有用であってもよい、統合参照電極から取得されるデータと比較されてもよい。
【0169】
いくつかの実施形態では、分離したインラインセンサは、フローセルの電気活性帯の外部に、および/または流動性のレドックス活性物質源の外部に(例えば、流動性のレドックス活性物質を含有する貯蔵タンクの外側に)位置している。分離したインラインセンサは、いくつかの実施形態では、以下でさらに詳細に説明されるように、流動性のレドックス活性物質源を電気活性帯に直接流体的に接続するために使用される導管の外部にある。
【0170】
一式の実施形態では、インラインセンサは、その充電状態、電子またはイオン伝導率、蓄積状態、粘度、および健康状態の時間依存性を測定することによって、そのような特性を含むが、それらに限定されない正および負の流動性のレドックス組成物(例えば、陰極液および/または陽極液)の状態を決定するために使用することができる。いくつかの実施形態では、インラインセンサは、流動を受けている流動性のレドックス組成物から測定値を得ることによって、正および/または負の流動性のレドックス組成物の特定の特性を決定することができる。インラインセンサは、場合によっては、該センサを通して主要流路から進路変更させられた流動性のレドックス組成物の少なくとも一部分をサンプリングすることによって、流動性のレドックス組成物の特性を決定してもよい。例えば、インラインセンサは、流動性のレドックス組成物の1つ以上の特性を決定するように、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスから独立の導管へ流動性のレドックス組成物の一部分を進路変更してもよい。センサによって行うことができる測定は、該センサ内に含有される参照電極に対するその電気化学ポテンシャル、流動性のレドックス組成物に接触する伝導性電極にわたって測定される、DC伝導率、その粘度、当業者に公知のインピーダンス分光法を使用して、そこから輸送および誘電特性が取得されてもよい、そのAC伝導率、および/またはその磁気特性といった、流動性のレドックス組成物の特性を含むが、それらに限定されない。これらの特性は、時間、温度、流速、および/または印加された電位あるいは電界の振幅および/または周波数として測定されてもよい。例えば、流動性のレドックス組成物の電気化学ポテンシャルは、フローセルの動作中のその充電状態を決定するため、または流動性のレドックス組成物(例えば、流動性のレドックス組成物内の構成要素)の分解についての情報を提供するために使用されてもよい。DCまたはAC伝導率は、半固体懸濁液の流動性のレドックス組成物における伝導性固相の浸透状態および/またはSEI蓄積の速度を決定するために使用されてもよい。流速によるこれらの数量の変動は、その下で増進したセル性能が観察される動作条件を決定するために、フィードバックとして使用されてもよい。例えば、フローセルが充電または放電されてもよいCレートは、正および/または負の流動性のレドックス組成物のある流速で最大化されてもよい。
【0171】
流動性のレドックス組成物は、種々の機構を介してレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス内で混合されることができる。流動性のレドックス組成物を混合することは、例えば、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス内の電流コレクタおよび/またはイオン透過媒体の付近で、レドックス種の濃度が増加させられることを可能にし、それにより、デバイスの性能を向上させることができる。一式の実施形態では、デバイスの一部分を別の部分に対して選択的に加熱するために、熱(例えば、フローセル内の電気化学反応によって生成される熱、抵抗ヒータ等の外部装置によって生成される熱)が、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスの一部分内に存在することができ、または熱をレドックスフローエネルギー貯蔵デバイスの一部分に印加することができる。これは、陽極および/または陰極流体の少なくとも一部分の温度を上昇させることができる。例えば、図1Hに図示される一式の実施形態では、エネルギー貯蔵デバイスの領域750は、領域752よりも高温であり、産生する。フローセルの活性領域内の減少した密度を介して、自然対流を誘導することができ、削減したエネルギー消費を有するフローセルを介して正および/または負の流動性のレドックス組成物の送出を支援する。図1Hに図示される一式の実施形態では、正および負の流動性のレドックス組成物のそれぞれは、電気絶縁性のイオン透過媒体614(例えば、膜)に隣接する。図1Hの差し込み図(左上隅に位置する)は、電気活性帯内に位置している正および負の流動性のレドックス組成物がないデバイスの概略図を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス内の流動性のレドックス組成物内の混合の量を増加させるために、混合流体を使用することができる。いくつかの実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、流動性のレドックス組成物が配置される容積(例えば、電気活性領域)と流体的に連絡しているか、および/または容積内に位置する混合流体源を含む。ほとんどの場合、混合流体は、流動性のレドックス組成物と非混和性である。本明細書で使用されるように、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスが動作される温度で、および条件下で、一方が重量で少なくとも10%のレベルまで他方の中に可溶性ではないとき、2つの流体は、相互と「非混和性」であり、または混和性ではない。
【0173】
混合流体は、液体および気体を含む、任意の好適な種類となり得る。いくつかの実施形態では、混合流体は、流動性のレドックス組成物内で実質的に化学反応しない。本明細書で使用されるように、2つの構成要素が相互と接触させられた時に、本発明のデバイスの使用の時間尺度にわたって化学反応が進まない場合、構成要素は別の構成要素と「実質的に化学反応しない」。
【0174】
いくつかの実施形態では、混合流体源は、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスの外側に容積を備えることができる。例えば、場合によっては、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスから独立したガス源に由来し、正および/または負の流動性のレドックス組成物の中へ輸送される(例えば、導管を介して注入される)ガス(例えば、不活性ガス)等の混合流体を含む。そのような一式の実施形態が図1Jに図示されている。この一式の実施形態では、流体気泡910が、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスの電気活性領域115および125と流体的に連絡しているチャネル912を介して、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスの電気活性領域の中へ注入される。混合を推進することに加えて、注入された流体は、フローセルを通した流体の送出を支援することができる。気泡は、浮力により上昇し、各流体において流体流動を誘導することができる。図1Jに図示される一式の実施形態では、各流動流体は、電気絶縁性のイオン透過媒体(例えば、膜)に隣接する。図1Jの差し込み図(左上隅に位置する)は、電気活性帯内に位置している正および負の流動性のレドックス組成物がないデバイスの概略図を含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、混合流体源は、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス内の反応物となり得る。例えば、混合流体(例えば、気泡)は、いくつかの実施形態では、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスにおける反応の副産物として産生されることができる。図1Kは、そのような一式の実施形態の概略図を含む。図1Kでは、流体気泡910は、化学反応の副産物として産生される。気体は、浮力により上昇し、それにより、陰極液および陽極液の送出を支援し、セル内で流体を輸送するために必要とされるエネルギーの量を低減することができる。混合流体気泡は、陰極液、陽極液、または正および負の流動性のレドックス組成物のそれぞれの中で生成することができる(図1Kに図示されるように)。一式の実施形態では、フローセル容器の幾何学形状および/または表面化学の一方または両方は、例えば、気泡の不均一核形成に対するエネルギー障壁が低減されるくぼみまたは空洞を提供することによって、気泡核形成の場所および速度を制御するように設計することができる。図1Kに図示される一式の実施形態では、各流動電極流体は、電気絶縁性のイオン透過媒体(例えば、膜)に隣接する。図1Kの差し込み図(左上隅に位置する)は、電気活性帯内に位置している正および負の流動性のレドックス組成物がないデバイスの概略図を含む。
【0176】
レドックスフローエネルギーでバイスは、いくつかの実施形態では、レドックスフローエネルギーデバイス内の流動性のレドックス組成物と接触している可動表面を含むことができる。概して、表面は、レドックスフローデバイス内の他の表面に対して移動させられることが可能であれば「可動表面」である。例えば、いくつかの実施形態では、可動表面は、レドックスフローデバイス内の少なくとも1つの電流コレクタに対して可動となり得る(例えば、可動表面は、デバイスの中の第2の電流コレクタに対して可動である第1の電流コレクタの一部となり得る)。場合によっては、可動表面は、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス内のイオン透過媒体(例えば、膜)に対して可動となり得る。いくつかの実施形態では、可動表面の少なくとも一部分は、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス内の電気活性帯内に配置することができ、および/またはそれと接触することができる。例えば、図1Cに図示される一式の実施形態では、負極電流コレクタ520の内面591の少なくとも一部分、および/または正極電流コレクタ510の内面592の少なくとも一部分は、可動となり得る。
【0177】
可動表面は、レドックスフローエネルギーデバイスを通して流動性のレドックス組成物の流動を少なくとも部分的に方向付けるように構築および配設することができる。これは、例えば、可動表面上に1つ以上の突起を含み、流動性のレドックス組成物がレドックスフローエネルギーデバイスを通して輸送されるように表面を移動させることによって、達成することができる。
【0178】
1つの特定の実施例として、いくつかの実施形態では、フローセルは、例えば、陽極および/または陰極液を輸送するために使用されてもよい、内部オージェおよび外部オージェの一方または両方を備えることができる。そのような配設は、図1B−1Cに図示される一式の実施形態に関して簡潔に説明した。図1F−1Gは、ネジ山付きの可動表面を備える、内部オージェ610および外部オージェ612が採用される、一式の実施形態の概略図を含む。内部および外部オージェの一方または両方は、例えば、矢印615の方向へ、オージェの間の固定イオン透過媒体614および/または相互に対して回転させることができる。このようにして、オージェは、フローセルを通して流体を輸送することができる。例えば、一式の実施形態では、正の流動性のレドックス組成物は、矢印616を介してフローセルの中へ、および矢印617を介してフローセルから外へ輸送することができる。加えて、負の流動性のレドックス組成物は、矢印618を介してフローセルの中へ、および矢印619を介してフローセルから外へ輸送することができる。オージェが採用される実施形態は、比較的高い粘度を伴う流体を輸送するか、または流体内で混合するのに有利であってもよい。図1F−1Gに図示される一式の実施形態では、陽極および陰極流体は、そのそれぞれが電気絶縁性のイオン透過媒体614(例えば、膜)に隣接することができる同心円状の円筒形シェルを通して輸送することができる。いくつかの実施形態では、オージェは、電子的に伝導性となり得て、それは、オージェが電流コレクタとしての役割を果たすか、および/またはフローセルの中の別個の電流コレクタと電子的に連通することを可能にすることができる。
【0179】
可動表面は、種々の他の形態となり得る。例えば、場合によっては、フローセルは、電気活性領域内で流体を輸送するために使用することができるトラックドライブの一部である可動表面を備えることができる。トラックドライブは、1つ以上の回転軸の周りに配設されるベルトを備えることができ、少なくとも部分的にレドックスフローセル内の電気活性帯内に配置されることができる。トラックは、(レドックスフローセル内の電気活性帯内に配置されることができる)レドックスフロー物質に暴露された表面の少なくとも一部分が、流体の流動を方向付ける突起を備えるように構築および配設することができる。例えば、図1Lは、2つのトラックドライブ710を備えるフローセルの概略図を含む。図1Lのトラックドライブは、陽極および陰極液を独立して輸送することができる。(可動714表面を含む)トラックドライブ上のベルト712は、ドライブに隣接する流体の移動および混合を向上させる突起716を含む。図1Lに図示されるトラックドライブは、直線突起を含み、任意の好適な突起の幾何学形状を採用することができる。流体は、いくつかの実施形態では、ほぼ長方形の断面を有する細い領域を通して輸送することができる。上記で説明されるオージェの実施形態と同様に、1つ以上のトラックドライブの使用が、比較的高い粘度を有する流体の輸送および/または混合に有利となり得る。図1Lに図示される一式の実施形態では、各流動流体は、電気絶縁性のイオン透過媒体614(例えば、膜)に隣接する。いくつかの実施形態では、トラックドライブの一方または両方は、電子的に伝導性となり得て、それは、トラックドライブが電流コレクタとしての役割を果たすことを可能にし、および/またはトラックドライブがフローセルの中の別個の電流コレクタと電子的に連通することを可能にすることができる。図1Lの差し込み図(左上隅に位置する)は、電気活性帯内に位置している正および負の流動性のレドックス組成物がないデバイスの概略図を含む。
【0180】
フローセルは、場合によっては、フローセルを通して陽極および/または陰極液を推進するか、および/または押し進める回転シャフトと関連付けられる可動表面を備えることができる。例えば、図1Mは、複数の回転シャフト810を備えるフローセルの概略図を含む。回転シャフトの外面は、それらの長手軸の周りでプロペラを回転させることによって移動させられることができる。回転シャフトの可動表面は、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスを通して流体を輸送することに役立つ複数の突起812を含む。この一式の実施形態では、回転シャフト810のそれぞれは、電気化学充電および放電が行われるフローセルの活性領域を通して、陽極および陰極液を独立して押し進める。流体は、ほぼ長方形の断面を有する細い領域を通して輸送することができる。図1Mに図示される一式の実施形態では、各流動流体は、電気絶縁性のイオン透過媒体614(例えば、膜)に隣接する。
【0181】
(実施例1:半固体リチウムレドックスフローバッテリ)
リチウムシステム用の例示的レドックスフローセル200を図2に示す。本実施例では、膜210は、カソード粒子220およびアノード粒子230が膜を横断することを防止する、高分子分離器フィルム(例えば、Celgard(登録商標)2400)等の微多孔膜であるか、またはリチウムイオン導体の固体無孔フィルムである。負極および正極電流コレクタ240、250は、それぞれ銅およびアルミニウムから成る。負極組成物は、黒鉛または硬質懸濁液を含む。正極組成物は、レドックス活性構成要素としてLiCoOまたはLiFePOを含む。炭素微粒子を、懸濁液の電子伝導性を向上するために、選択的に、カソードまたはアノード懸濁液に追加する。正および負活物質粒子が懸濁する溶媒は、アルキル炭酸塩の混合物であり、LiPF等の融解されたリチウム塩を含む。正極組成物を、正極貯蔵タンク260の中に貯蔵し、ポンプ265を使用して電気活性帯の中に汲み出す。負極組成物は、負極貯蔵タンク270の中に貯蔵され、ポンプ275を使用して、電気活性帯の中に汲み出す。炭素およびLiCoOに対してセルの中において生じる電気化学反応は、
充電:xLi+6xC → xLiC LiCoO → xLi+Li1−xCoO放電:xLiC → xLi+6xC xLi+Li1−xCoO → LiCoO
である。
【0182】
(実施例2:半固体ニッケル金属水素レドックスフローバッテリ)
ニッケルシステム用の例示的レドックスフローセルを図3に示す。本実施例では、膜310は、カソード粒子320およびアノード粒子330が膜を横断することを防止する、微孔性電解質透過膜であるか、またはNafion等のプロトンイオン導体の固体無孔フィルムである。負極および正極電流コレクタ340、350は両方とも炭素から成る。負極組成物は、水素吸収金属、Mの懸濁液を含む。正極組成物は、レドックス活性構成要素としてNiOOHを含む。炭素微粒子は、懸濁液の電子伝導性を向上させるために、選択的に、カソードまたはアノード懸濁液に追加される。正および負活物質粒子が懸濁する溶媒は、KOH等のヒドロキシル生成塩を包含する水溶液である。正極組成物は、正極貯蔵タンク360の中に貯蔵され、ポンプ365を使用して、電気活性帯の中に汲み出される。負極組成物は、負極貯蔵タンク370の中に貯蔵され、ポンプ375を使用して、電気活性帯の中に汲み出される。放電時にセルの中で生じる電気化学反応は、以下のように、放電:xM+yHO+ye → M+yOH
Ni(OH)+OH → NiOOH+HO+e
である(充電時の反応はこれらの逆である)。
【0183】
(実施例3:参照電極監視レドックスフローバッテリ)
セルの性能を最適化するために参照電極を使用する、例示的レドックスフローバッテリを図4に示す。セルは、2つの膜410、415を含む。参照電極420、425、430は、正極レドックスフロー組成物442および負極レドックスフロー組成物447がそれぞれ流れる電気活性帯440、445の面と正対する面上の、2つの膜410、415の間に位置する。セルはまた、負および正電流コレクタ450、460それぞれを含む。
【0184】
各参照電極420、425、および430の電位が決定され、φ、φ、およびφの値それぞれを付与され得る。作動電極(電流コレクタ)450、460の電位もまた決定され、WおよびWの値それぞれを付与され得る。セル構成要素の電位差は、以下のように測定することができる:
(W−W)=セル電圧
(W−φ)=カソードの電位
(W−φ)=アノードの電位
(φ−φ)または(φ−φ)=レドックス組成物がスタックに沿って流れる時の反応の程度。
【0185】
本実施例では、正極および負極レドックスフロー組成物の流速が、所望の電力を獲得するために適切な速度であるか否かを決定するために、発電スタック(電気活性帯)内で3つの参照電極を使用している。例えば、放電中に流速が遅すぎる場合、正極および負極のレドックスフロー組成物は、スタックに進入するときに完全に放電し、それらの滞留時間の大部分に渡って、リチウムに対して高い化学的電位差は存在しない。より高速の流速によって、より大きな電力を獲得することが可能になる。しかしながら、流速が高速すぎる場合、活物質は、スタックにおけるそれらの滞留時間中、完全に充電または放電することができない場合がある。この実施例では、スラリーの流速は、より大きい放電エネルギーを獲得するように遅くされ得、または1つ以上のスラリーが、より完全な放電を獲得するように再循環し得る。充電の例では、高速すぎる流速によって、物質が単一回の通過中に完全に充電することが妨げられ、貯蔵エネルギーがシステムで貯蔵可能であるより少なくなってしまうため、この場合、利用可能な活物質のより完全な充電を獲得するために、スラリーの流速を減少させるか、または再循環を使用してもよい。
【0186】
(実施例4:部分的脱リチウム化のジェットミル処理されたリチウムコバルト酸化物の調製)
リチウムコバルト酸化物粉末を15,000RPMでジェットミル処理して、2.5ミクロンの平均直径を伴う粒子を産生した。ジェットミル処理されたリチウムコバルト酸化物の試料20gを、24時間に渡って、アセトニトリルの中で2.5gのテトラフルオロホウ酸ニトロニウムと反応させることによって、化学的に脱リチウム化された。部分的な脱リチウム化のおかげで、より高い電子伝導性をも有する脱リチウム化されたLi1−xCoOは、カソードの半固体懸濁液の中で活物質として使用される。
【0187】
(実施例5:銅めっき処理された黒鉛粉末の調製)
商用グレードのメソカーボンマイクロビーズ(MCMB6−28)黒鉛アノード粉末を、無電解めっき反応を介して、3.1重量%を金属銅で部分的に被覆した。MCMB(87.5g)を、表1に一覧にされた4つの水溶液の中で、連続的に撹拌した。各段階の間、粉末をろ過によって収集し、試薬グレードの水で洗浄した。最後の溶液では、pH12を維持するために、水酸化ナトリウムの濃縮溶液を追加した。溶液4の種の濃度を増加すれば、より銅が豊富な粉末を得るであろう。重量分率で1.6%、3.1%、8.6%、9.7%、15%、および21.4%である銅の粉末は、実施例7に記載されるようにスラリーを調製し、実施例8に記載されるようにスラリーを試験することによって特徴付けられた。図5に示すように、銅めっき重量分率によって循環性能が増大し、容量も増加した。
【0188】
【表1−1】

【0189】
【表1−2】

(実施例6:カソードスラリーの調製)
体積分率25%の脱リチウム化のジェットミル処理されたリチウムコバルト酸化物、体積分率0.8%のKetjen Black、および体積分率74.2%の標準リチウムイオンバッテリ電解質を包含する懸濁液を合成した。8.9gの脱リチウム化のジェットミル処理されたリチウムコバルト酸化物を、0.116gのKetjen Black炭素充填剤と混合することによって、安定したカソード懸濁液を調製した。混合粉末を5mLの電解質の中に懸濁し、懸濁液を20分間超音波処理した。そのような懸濁液は、少なくとも5日間安定していた(すなわち、沈殿している観察可能な粒子はなかった)。懸濁液の伝導性を測定し、ACインピーダンス分光測定で0.022S/cmであった。そのようなスラリーを、後の実施例に記載されるように、静的セルおよび流動セルで試験した。相対的比率のスラリー成分による実験法は、懸濁液の貯蔵容量を増加させる、より高い体積分率のリチウムコバルト酸化物を作ることができることを示した。懸濁液の中の固体の体積分率を増加させることで、半固体懸濁液の粘度も増加した。Ketjen炭素粒子のより高い体積分率は、懸濁液の安定性および電子伝導性を増加させたが、スラリー粘度も増加させた。装置動作のために適切な粘度のスラリーを産生する、リチウムコバルト酸化物およびKetjen炭素の体積分率を決定するために、直接的な実験法を使用した。
【0190】
(実施例7:アノードスラリーの調製)
体積分率60%の標準的リチウムイオンバッテリ電解質の中に体積分率40%の黒鉛を包含する懸濁液を、2.88gの銅めっき処理された黒鉛(3.1wt%の銅)を2.0mLの電解質と混合させることによって合成した。混合物を20分間超音波処理した。スラリーの伝導性は0.025S/cmであった。黒鉛上により高い銅添加が観察され、スラリー粘度を増加させた。
【0191】
(実施例8:カソードおよびアノードスラリーに関する静的半電池試験)
実施例6および7に記載されるように、懸濁液が静的であるアノード電気化学セルの中のリチウム金属電極に対して、半固体懸濁液試料を電気化学的に充電および放電した。カソードまたはアノードスラリーを、電流コレクタとして機能もする金属ウェルの中に置いた。ウェルおよび電流コレクタは、カソードおよびアノードそれぞれのために、アルミニウムおよび銅から機械加工して製作した。スラリーを保持するウェルは、6.3mmの直径および250−800μmに及ぶ深さの円筒形状を有する。Celgard2500の分離器フィルムはリチウム金属対電極からスラリーを分離し、電気化学的に試験された物質が、電解質で濡らされたままであることを保証するために、過剰の電解質をセルの中の隙間に追加した。試験は、アルゴンで充填されたグローブボックスの中で行われた。カソードスラリー半電池に対する充電容量の関数としての電圧の代表的なプロットを図6に示す。カソード放電容量対循環回数の代表的なプロットを図9に示す。アノードスラリーハーフセルに対する充電容量の関数としての電圧の代表的なプロットを図7に示す。アノードおよびカソードの両方は、それらの固体(非懸濁)対応物に類似した態様で電気化学的に振る舞った。実施例の容量測定を表2に示す。
【0192】
【表2−1】

【0193】
【表2−2】

Li金属に対する0.01Vと0.6Vとの間のC/20定電流循環実験における第2のサイクル放電から計算された容量;Li金属に対する0.01Vと1.6Vとの間のC/20CCCV充電、C/20定電流放電循環実験における第2のサイクル放電から計算された容量;Li金属に対する0.01Vと1.6Vとの間のC/20定電流循環実験における、第2のサイクル放電から計算された容量;4.4Vと2Vとの間のC/3定電流循環実験おける第2のサイクル放電から計算された容量。
【0194】
(実施例9:カソードおよびアノード半固体懸濁液を使用する、フルリチウムイオンセルの静的セル試験)
実施例6および7に記載されるように、カソードおよびアノードスラリーを静的電気化学セルの中で相互に対して電気化学的に放電および充電した。カソードおよびアノードスラリーを、実施例8に記載の寸法の金属ウェル/電流コレクタにそれぞれ置いた。ウェル/電流コレクタは、カソードおよびアノードそれぞれに対して、アルミニウムおよび銅からできていた。Celgard2500フィルムは、セルの中で2つのスラリーを分離した。カソードおよびアノード懸濁液は、定電位および定電流条件下で繰り返し相互に対して充電および放電され、定電流試験が、C/20からC/10に及ぶCレートで行われた。時間の関数としての代表的なプロットを図8のパネル下に示す。対応する充電または放電容量を図8のパネル上に示す。この試験では、セル電圧を4.4Vに保持しつつ、セルを定電位条件下で充電する一方で、充電容量を監視した。充電レートは最初高いが、次いで減少する。セルはその後、C/20レートの定電流で放電された。第1の放電で獲得された容量は〜3.4mAhであり、これはセルにおけるアノードの理論容量の88%である。従って、完全には利用されないこのセルには、過剰なカソードが存在する。
【0195】
(実施例10:チタン酸リチウムスピネルアノード懸濁液)
チタン酸リチウムスピネルは、Li:Ti:O比の範囲を有し得、また様々な金属または非金属でドープされ得、その非限定的な組成物はLiTiであって、Li/Liに関して、1.5V付近の熱力学的電圧によって容易にリチウム間に介入し、LiがTi4+からTi3+への還元によって挿入されると、その電子伝導性を増加する。試料5gのチタン酸リチウムスピネル粉末を、100mgのKetjen Blackと混合し、10mLの標準的リチウムイオンバッテリ電解質に懸濁し、懸濁液を20分間超音波処理する。そのような懸濁液は、少なくとも48時間の間は、構成要素に分離しない。この懸濁液を、実施例8に記載されるように、リチウム半電池において充電および放電した。図10は、比較的高いC/1.4レートでの懸濁液に対する定電流リチウム挿入および抽出曲線を示している。リチウム挿入ステップ中、平均電圧は1.55Vという熱力学的電圧に非常に近い一方で、抽出の時には平均電圧は幾分より高くなる。
【0196】
(実施例11:カソードおよびアノードスラリー上の流動する半電池の試験)
実施例6および7に記載されるように、流動する電気化学セルの中のリチウム金属電極に対して、試料を電気化学的に充電および放電した。カソードまたはアノードスラリーを、電流コレクタとして機能する、画定された形状の金属チャネルの中に汲み出した。電流コレクタは、カソードおよびアノードそれぞれに対して、アルミニウムおよび銅であった。チャネルは直径5mm、長さ50mmであり、深さ500μmを有した。2つのCelgard2500分離器フィルム間に挟まれた多孔PVDFシート(孔サイズ:250μm)によって、機械的強度が追加された。銅ワイヤに取り付けられ、両方の電流コレクタから電気的に絶縁されたリチウム金属参照電極が、2つの分離器フィルムの間で、スラリーから分離された。電気化学的活性構成要素が液体電解質の中に浸漬したままであることを確実にするために、過剰な液体電解質を装置の中の隙間に追加した。試験は、アルゴンで充填されたグローブボックスの中で行われた。チャネルの中のスラリーを、C/20からC/5までの範囲に及ぶレートで充電および放電した。充電中、チャネルにおいて完全に充電されたスラリーと交換するために、非充電スラリーを試験セルの中へ機械的に汲み出した。充電の最後まで、充電スラリーをセルから汲み出し、貯蔵した。放電に対しては、電気化学的および機械的の両方で、セルを逆に動かした。セルの中の体積が完全に放電されると、新しい量のスラリーを試験セルの中に汲み出した。放電の最後まで、非充電懸濁液の体積をセルから汲み出し、貯蔵した。
【0197】
(実施例12:カソードおよびアノードスラリー上の流動するフルセル試験)
実施例3および4に記載されるように、カソードおよびアノードスラリーを流動する電気化学セルの中において、協調して電気化学的に充電および放電した。カソードまたはアノードスラリーを金属チャネルの中に汲み出し、そのチャネル物質もまた電流コレクタとして機能する。電流コレクタは、カソードおよびアノードそれぞれに対してアルミニウムおよび銅であった。チャネルは、直径5mm、長さ50mmであり、深さ500μmを有した。2つのCelgard2500フィルム間に挟まれた、250μm穿孔されたPVDFシートによって、機械的強度が追加され、1つのスラリーチャネルを他方から分離した。銅ワイヤに取り付けられた1枚のリチウム箔もまた、分離器フィルム間に挟まれ、参照電極として機能した。チャネルの中のスラリーを、C/20からC/5までの範囲に及ぶレートで充電および放電した。電気化学セルの中のそれぞれのチャネルに給電するカソードおよびアノードスラリーによって充填されたエラストマーチューブ類に取り付けられた蠕動ポンプを使用して、スラリーをチャネルに通して汲み出した。充電中、完全に充電されたスラリーと交換するために、非充電スラリーを試験セルの中に機械的に汲み出した。放電については、セルを、電気化学的および機械的の両方で逆に動かした。2つのスラリーを相互に独立して流動させ、アノードおよびカソードスラリーの充電の状態を、リチウム金属参照電極を使用してリアルタイムで監視した。動作の幾つかの異なるモードを使用した。一実施例では、1つまたは両方のスラリーを断続的にチャネルの中へ汲み出し、汲み出しが終了すると、チャネルの中のスラリーを充電または放電し、続いて、チャネルの中のスラリーを新鮮なスラリーによって移動し、その過程を繰り返した。動作の別のモードでは、スラリーを継続的に汲み出し、そのそれぞれのチャネルの中における各スラリーの滞留時間を、チャネルから退出する前に完全に充電または放電するために十分なものとした。動作のさらに別のモードでは、1つまたは両方のスラリーを、滞留時間中に完全に充電または放電するには高速すぎる速度において、それらそれぞれのチャネルを通して汲み出したが、システムの中のスラリー全てが、時間とともに、充電されるかまたは放電されるかのいずれかとなるように、スラリーを継続的に循環した。動作のさらに別のモードでは、1つまたは両方のスラリーの汲み出し方向は、充電または放電のステップ中に、周期的に逆となり、それによって、チャネルが所与の時間で収容することができるより多くのスラリーを、充電または放電する。
【0198】
(実施例13:インライン電気化学センサ)
図11は、正および/または負の流動性のレドックス組成物が定電流センサを通り越して流れることを流路が可能にする、インライン電気化学センサの設計の概略図を含む。感知要素は、センサの一方の端子に接続されるリチウム金属電極と、センサの他方の端子に接続される金属電極とを含む。リチウム金属電極は、固体無機または有機イオン導体、あるいは液体電解質が注入された多孔性セパレータフィルムであってもよい、イオン伝導セパレータ層によって、正または負の流動性のレドックス組成物から電子的に隔離することができる。この特定の実施例では、電子的に隔離された金属電極は、微孔性リチウムイオンバッテリポリマーセパレータフィルムの層である。図12は、炭酸アルキルの混合物に1M LiPFを含む非水性電解質の中で20vol%のチタン酸リチウムスピネル活性物質および5vol%のKetjen blackを用いて処方された流動半固体懸濁液について測定された、時間の関数としての電位のプロットを含む。このプロットは、懸濁液の開回路電圧を経時的に監視できることを実証し、この場合、リチウム挿入時に、この物質の開回路電圧がLi/Liに対して1.55Vであるため、チタン酸リチウムスピネルが、高度に脱リチウム化した状態であることを示す。
【0199】
(実施例14:電子的伝導性半固体懸濁液)
わずかな割合の高表面積ナノ粒子伝導性炭素を含有する、半固体懸濁液のレオロジーおよび電子伝導率を測定し、「液体ワイヤ」に類似する電子的伝導性懸濁液が産生されることを示した。この実施例では、試験された活性物質は、酸化リチウムコバルト(AGC Seimi Chemical Co.Ltd,Kanagawa,JapanからのLiCoO,)、チタン酸リチウムスピネル(AltairNano,Reno, NevadaからのLiTi12)、およびKetjen black(Akzo Nobel Polymer Chemicals LLC,Chicago,IllinoisからのECP600JD)である。使用前に、その粒径を縮小するように、LiCoOをジェットミル粉砕し、酸化物を低減し、その電子伝導率を増加させるために、Lindberg/Blue M炉の内側に配置された石英管の中で20時間、800℃にて95:5の比におけるArおよびHのガス混合物下でLiTi12(LTO)を加熱した。熱処理後、粉末の色は白から青に変化していた。活性物質または炭素あるいは両方の重量を量り、20mLガラスバイアルの中で混合し、炭酸アルキルの混合物(Novolyte Technologies,Independence,Ohio)の中のリチウム塩としてLiPFを使用した従来のリチウムイオンバッテリ電解質の添加によって、固体混合物を懸濁した。結果として生じた懸濁液を混合し、Branson 1510超音波槽の中で20分から60分の間にわたって超音波処理した。電解質中の粒子懸濁の粘度を、Brookfield Digital Viscometer、モードDV−II+ Pro Extraを使用して、アルゴン充填グローブボックスの内側で測定した。流動を伴う、および伴わない懸濁液の電気伝導率を、その両側にステンレス鋼電極があった流路、およびPVdFポリマーでできた絶縁体を伴う装置の中で測定した。チャネル直径および流速から、流体のせん断速度を決定することができる。
【0200】
測定は、分散した電子伝導性炭素が、半固体懸濁液の充電および放電を可能にする、流動性の懸濁液内の物理的および電子的に浸透するネットワークを形成することを示した。図13Aは、炭酸アルキル電解質中のナノ粒子炭素(Ketjen black)およびLiCoO(LCO)の懸濁液の粘度対せん断速度を示す。懸濁液は、せん断応力によって部分的に妨害されるKetjenネットワークの存在と一致する、せん断菲薄化挙動を示す。したがって、炭素添加物の希釈濃度(この場合、Ketjen blackの<1%体積分率)でさえも、LiCoO(LCO)粒子およびKetjenを含有する懸濁液の両方は、炭素添加物の特徴を示す強力なせん断菲薄化挙動を示す。図13Bは、異なる懸濁液およびそれらの構成要素のイオンおよび電子伝導率を示す、ナイキストプロットを示す。懸濁液のイオン伝導率が、電解質によって設定された一方で、電子伝導率は、Ketjen blackネットワークによって設定された。0.6%Ketjen blackについて、非流動条件下の伝導率は、1.2mS/cmであったが、257sec−1の高せん断速度下での伝導率は、0.67mS/cmまでわずかにのみ低減され、電子伝導率が維持されたことを示した。0.6%Ketjenは、LCOまたはLTOのいずれか一方を含有する懸濁液に同様の電子伝導率を付与したことに留意されたい。LCOおよびKetjen混合物の伝導率は、0.06mS/cmであり、(LiTi12)LTOおよびKetjen懸濁液の伝導率は、0.01mS/cmであった。結果は、(流動による)せん断が、懸濁液の電気伝導率を変化させることができ、せん断によって物理的に改変される炭素ネットワークを示す一方で、非常に低い分率の炭素添加物を有し、それにもかかわらず、液体電解質のイオン伝導率に匹敵する高い電子伝導率を有する、懸濁処方を産生することが可能であることを示す。そのような状況は、半固体電極物質が、他のバッテリ電極のように、混合電子イオン伝導率を示すべきであると考えれば望ましい。
【0201】
(実施例15:陰極半固体懸濁液を使用した非水性フローセル)
実施例14の方法に従って、質量で51.3%LiCoO、0.7%Ketjen black、および炭酸アルキルの混合物中のLiPFから成る48%の非水性電解質(容量で22.4%LiCoO、0.7%Ketjen black、および76.9%電解質)を有する、半固体懸濁液を調製した。図14は、電気化学セル構成の概略図を示す。負の半分を101銅合金から、正の半分を6061アルミニウム合金から機械加工した。流路は、1/16”の直径および0.16mlの容積を有する。静止リチウム金属箔電極を、セルの銅の負の半分の中のチャネルに付加し、多孔性セパレータ(Tonen Chemical Corporation,Japan)の層によって流動陰極半固体から分離した。界面インピーダンスを低減するように、6061アルミニウム合金セル構成要素の作業表面をスパッタした。1400 Cell Test System(AMETEK Inc.,Paioli,Pennsylvania,USA)を動作するSolartronポテンショスタットを使用して、電気機械試験を行った。Masterflex蠕動ポンプ(Masterflex, Vernon Hills,Illinois,USA)を使用して、連続流実験を行い、Chem−SureTM管類(W.L.Gore and Associates,Elktron,Maryland,USA)をポンプの内側で使用し、Masterflex Chem−DuranceTM管類を使用してセルに接続した。半固体は、2から4.4Vの間(C/8.8からD/4.4の間で変化させられるレート)の多段階定電流充電/放電を行いながら、図14に描写される単一チャネルハーフフローセルを通して20.3mL/分で連続的に循環させられた。図15は、循環したセルに対する時間の関数としての充電状態、電流、および電圧のプロットを含む。4.4V(静止電圧4.2V)での充電容量が、146mAh/g(システム値)のLiCoO特異的容量に対応する一方で、放電容量は、127mAh/gに対応する。約140mAh/gの期待可逆容量と比較して、これらの値は、システムのLiCoOの高い利用を実証する。12.5%低い放電容量が、充電速度よりも高い平均放電速度で取得され、達成可能な最大クーロン効率を表さないことに留意されたい。
【0202】
(実施例16:陽極半固体懸濁液を使用した非水性フローセル)
質量で13.1%LiTi12(実施例14で見られるような還元雰囲気中で熱処理された)、1.7%Ketjen black、および1,3−ジオキソランおよびLiBETI塩の70:30質量比から成る85.1%の非水性電解質(容量で5.8%LiTi12、1.2%Ketjen black、および93%電解質)を有する、半固体懸濁液を調製した。懸濁液を、10mL/分の流速で、1/16”直径のチャネルを伴う、実施例15のようなセルを通して流した。実施例15のように、リチウム金属箔対電極を使用した。しかしながら、定電流で充電される代わりに、図16に示されるように、ポテンショスタットを用いて、最初に1.35Vで、次いで1.0Vでセルを充電した。ポテンショスタットを用いて完全に充電された後、面積が多孔性セパレータ(Tonen製)の面積である、17.1A/mの電流密度で、セルを定電流で放電した。図16は、時間の関数として電圧、充電容量、および電流を示す。連続的に流れる半固体懸濁液を、約180mAh/gの容量で充電し、約140mAh/gの放電容量で放電することができ、特異的容量は、LiTi12単独に対する容量であり、陽極化合物の実質的に完全な充電および放電を示すことが分かる。
【0203】
(実施例17:二重電解質リチウムイオンセル)
市販のLiイオンバッテリで見られる一般的な溶媒の安定性は、分子で見られる最も極性の化学基に直接依存している。最も安定した分子は、Li/Li電極と対比して5から0Vに及び、炭酸塩(炭酸ジメチル等)、エステル(γ−ブチロラクトン等)、およびエーテル(1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、または1,3−ジオキソラン等)である。多くの陽極の低い挿入電位で、溶媒還元は、有害な絶縁固体・電解質界面(SEI)フィルムを形成し得る。この実施例は、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスでの二重流体電解質の使用を実証する。質量で34.0%LiTi12(実施例14のように還元される)、1.1%Ketjen black、および1,3−ジオキソランおよびLiBETI塩の70:30質量比から成る64.9%の非水性電解質(容量で17.0%LiTi12、0.9%Ketjen black、および82.1%電解質)を有する、半固体陽極懸濁液を調製した。2つの懸濁液を、非流動セルの中の多孔性セパレータの層によって分離した。図17は、セパレータの9.4A/mの電流密度で測定された、セルに対する定電流充電・放電曲線を示す。充電および放電電圧は、セルの分極を考慮して、この電気化学対に期待される通りである。セルが陽極容量に対して過度の陰極容量を有するため、セルの特異的容量は、LiTi12陽極の質量に関して計算され、約130mAh/gであり、この半固体リチウムイオンセルでの活性物質の良好な利用を示す。
【0204】
(実施例18:半固体電極用のエーテルベースの電解質)
市販のLiイオンバッテリで見られる一般的な溶媒の安定性は、分子で見られる最も極性の化学基に直接依存している。最も安定した分子は、Li/Li電極と対比して5から0Vに及び、炭酸塩(炭酸ジメチル等)、エステル(γ−ブチロラクトン等)、およびエーテル(1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、または1,3−ジオキソラン等)である。多くの陽極の低い挿入電位で、溶媒還元は、有害な絶縁固体・電解質界面(SEI)フィルムを形成し得る。この実施例は、そのような条件下で電気化学安定性を提供するためのエーテルベースの電解質の使用を実証する。質量で51.8%MCMB黒鉛(グレード6−28, Osaka Gas Co., Osaka, Japan)および1,3−ジオキソラン中の2M LiClOから成る48.2%の電解質を有する、半固体陽極懸濁液を調製した。容量で、半固体は、40%MCMBおよび60%電解質を有する。C/8定電流条件(電流密度18.7A/mのTonenセパレータ)下で、非流動セルの中のリチウム金属陽極と対比して、リチウム金属陽極を試験した。図18は、低い挿入電位および伝導性添加物の不在にもかかわらず、可逆的循環が得られることを示す、電圧対容量の結果を示す。
【0205】
(実施例19:半固体電極用のイオン液体電解質)
4つ以上の酸素原子を伴う線形エーテルでは、溶媒がLiイオンを包み込んで、より安定した協調カチオンを形成することができる。溶媒対塩の1:1モル比で、混合の生成物は、式[Li(エーテル)](アニオン)のイオン液体である。そのようなイオン液体は、Li/Li電極と対比して、0から5Vの電位範囲内で電気化学的に安定しており、4V半固体フローセル用の好適な電解質となることが証明されている。図19は、非流動セルの中のリチウム金属対電極に対して試験された、質量で28.1%LiCoO、3.4%Ketjen black、ならびに1:1モル比において68.5%のテトラグリムおよびリチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド([Li(G4)]TFSIと呼ばれる)を有する、陰極半固体懸濁液のC/11定電流循環(3.4A/cmのCelgard 2500セパレータ、Celgard LLC, Charlotte, North Carolina)に対する、電圧対容量曲線を示す。容量で、半固体は、10.0%陰極、3.0%Ketjen、および87.9% 電解質を有する。LiCoO単独に対する陰極の特異的容量は、約120mAh/gであり、半固体懸濁液の良好な利用を示す。
【0206】
(実施例20:半固体フローセル用の陰極・陽極・電解質の組み合わせ)
好適な陰極・陽極・電解質の選択は、陰極および陽極がイオンを貯蔵する電位、ならびに電解質の安定性窓に依存する。表3は、いくつかの好適な組み合わせを示す。SSDEは、炭酸アルキルの混合物中のLiPFを指し、DMCは、炭酸時メチル中のLiPFを指し、DXLは、1,3−ジオキソラン中の2M LiClOを指し、DOLは、1,3−ジオキソランおよびLiBETIの70:30質量比を指し、Li(G4)]TFSIは、1:1モル比におけるテトラグリムおよびリチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドを指す。例えば:
リン酸鉄リチウムまたはリン酸マンガンリチウムあるいはそれらの固溶体等のオリビン陰極、またはドープおよびノスケールオリビンを、DMCベースの電解質中でLiTi12(LTO)とともに使用することができる。そのようなシステムは、1.9Vから2.5Vの動作電圧を有する。電力およびサイクル寿命は、これらのシステムにおけるナノスケール活性物質にとって優れていることが見込まれる。
【0207】
DXLとともに使用されるLiMn-黒鉛は、2.8Vのより高いセル電圧を有する。
【0208】
DMCとともに使用されるLiMnO・LiMO-LTOは、2.9Vのセル電圧を有する。この高容量陰極は、より高い電圧のLTO陽極とともに使用された時に、依然として高いセル電圧を有し、高い陽極安定性を有することが見込まれる。
【0209】
LiMnO・LiMOは、3MまたはSi、あるいは黒鉛によっても生成されるもの等の高容量陽極とともに使用され、[Li(G4)]TFSI電解質とともに使用された時に、陰極および陽極の両方の高い容量により、依然として高いエネルギー密度を有し、3.9−4.3Vのより高いセル電圧を有する。活性物質粒子は、従来の電極で生成するような大きな応力を生成することなく、液相内で自由に拡張および収縮できるため、充電および放電されるにつれて大きな体積変化を受ける、Siおよび3M合金等の高容量陽極のサイクル寿命は、我々の半固体電極において向上させられる可能性が高いことに留意されたい。
【0210】
【表3】

(実施例21:5M LiNO電解質中のLiV-LiCoOを使用した水性リチウムイオン半固体フローバッテリ)
この実施例は、水性リチウムイオン伝導電解質と併せて、陰極および陽極としてリチウム金属酸化物を使用する、半固体フローバッテリを例示する。
【0211】
(水性酸化リチウムバナジウム陽極スラリーの調製:)
LiVの組成物を伴う酸化リチウムバナジウム粉末を、固相反応方法を介して合成する。LiOHを、LiVにおいてLi対Vの化学量論比を生じる量でVと混合する。粉末混合物を、メタノール中で24時間ボールミル粉砕し、次いで、60℃で乾燥させる。次いで、乾燥した粉末混合物を空気中で24時間600℃にて燃焼し、LiV化合物をもたらす。陽極スラリーを調製するためには、容量で15−30%のバナジウム酸リチウムを、伝導性添加物としての容量で0.5−2%のCOOH官能化カーボンナノチューブと混合する。ボルテックスミキサを使用して、乾燥粉末を最初に2分間混合する。懸濁液のバランスは、水中のLiNOの5M溶液から成る電解質である。この電解質を粉末混合物に添加し、陽極スラリーを得るように、混合物を1時間超音波処理する。
【0212】
(水性酸化リチウムコバルト陰極スラリーの調製:)
容量で35%の酸化リチウムコバルト、容量で0.6−2%のCOOH官能化カーボンナノチューブ、および水中のLiNOの5M溶液から成る電解質であるバランスを含有する、懸濁液を調製する。例えば、ボルテックスミキサを使用して、3.5gの酸化リチウムコバルトを、0.0259gの炭素と2分間混合する。その後、半固体懸濁液のバランスを構成する適切な量で電解質を添加し、混合物を1時間超音波処理する。
【0213】
陰極および陽極懸濁液は、実施例15の設計のフローセルで使用されるが、両方の電流コレクタは、高クロム含量のステンレス鋼から製造される。随意で、半固体懸濁液と接触しているステンレス鋼は、電気めっきによって金で被覆される。セパレータ膜は、Celgard 3501等の水性電解質よる向上した湿潤を伴うものとなるように選択される。
【0214】
(実施例22:1M LiNOおよび1M LiOHを有する水性電解質中のLiFePO-LiTi12を使用した、リチウムイオン半固体フローバッテリ)
この実施例は、水性リチウムイオン伝導電解質と併せて、陰極および陽極としてリチウム金属酸化物を使用し、比較的高い動作電圧を有する、半固体フローバッテリを例示する。
【0215】
(水性チタン酸リチウムスピネル陽極スラリーの調製:)
最初に、ボルテックスミキサを使用して、乾燥状態で2.076gのLiTi12および0.0432gのKetjen blackを2分間混合することによって、1MずつのLiNOおよびLiOHを含有する容量で69%の水性電解質の中に、容量で30%の酸化リチウムチタン(LiTi12)および伝導性添加物としての容量で1%のKetjen blackを含有する、懸濁液を調製する。次いで、1.38mlの電解質を添加し、混合物を1時間超音波処理する。
【0216】
(水性リン酸鉄リチウム陰極スラリーの調製:)
ボルテックスミキサを使用して、2分間、乾燥状態で3.577gのリン酸鉄リチウムおよび0.108gの炭素を混合することによって、1MずつのLiNOおよびLiOHを含有する容量で69%の水性電解質の中に、容量で1%のKetjen blackとともに容量で20%の炭素被覆したリン酸鉄リチウムを含有する、懸濁液を合成する。次いで、3.95mlの電解質を添加し、混合物を1時間超音波処理する。
【0217】
陰極および陽極懸濁液は、実施例15の設計のフローセルで使用されるが、両方の電流コレクタは、高クロム含量のステンレス鋼から製造される。随意で、半固体懸濁液と接触しているステンレス鋼は、電気めっきによって金で被覆される。セパレータ膜は、Celgard 3501等の水性電解質よる向上した湿潤を伴うものとなるように選択される。
【0218】
(実施例23:1M NaSO電解質中のNaMnO−活性炭を使用した、水性ナトリウムイオン半固体フローバッテリ)
この実施例は、陰極としてのナトリウム金属酸化物および陽極として活性炭を使用する、水性ナトリウムイオン半固体フローバッテリを例示する。陰極が、主にインターカレーション反応によってNaを貯蔵する一方で、陽極は、主に表面吸着によってNaを貯蔵する。
【0219】
(水性活性炭陽極スラリーの調製:)
容量で20%の活性炭(Darco,G−60)および容量で80%の5M LiNO水性電解質を含有する、懸濁液を調製する。0.65gの活性炭を、水中の1M NaSOから成る1.2mlの電解質と混合する。混合物を1時間超音波処理する。
【0220】
(水性ナトリウムマンガン酸化物陰極スラリーの調製:)
固相反応方法を介して、Na0.44MnOの組成物を伴うナトリウムマンガン酸化物粉末を合成する。NaCO粉末を、酸化物化合物のNa:Mn化学量論を生じる比で、MnCO粉末と混合する。粉末混合物を、メタノール中で24時間ボールミル粉砕し、次いで、60℃で乾燥させる。次いで、均一に混合した粉末を空気中で8時間300℃にて燃焼する。300℃で燃焼した後、粉末を粉砕し、Na0.44MnOを得るように、さらに9時間800℃で再燃焼する。容量で20%のナトリウムマンガン酸化物および伝導性添加物として容量で2%のCOOH官能化カーボンナノチューブを含有する、陰極懸濁液を、水中のLiNOの5M溶液から成る容量で78%の電解質と混合する。具体的には、1.269gのナトリウムマンガン酸化物を、0.0648gのCOOH官能化カーボンナノチューブと混合する。ボルテックスミキサを使用して、乾燥粉末を2分間混合する。その後、1.17mlの1M NaSO電解質を粉末混合物に添加し、混合物を1時間超音波処理する。
【0221】
陰極および陽極懸濁液は、実施例15の設計のフローセルで使用されるが、両方の電流コレクタは、高クロム含量のステンレス鋼から製造される。随意で、半固体懸濁液と接触しているステンレス鋼は、電気めっきによって金で被覆される。セパレータ膜は、Celgard 3501等の水性電解質よる向上した湿潤を伴うものとなるように選択される。
【0222】
当然ながら、当業者が、当技術分野への本貢献の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の過程に種々の修正および追加を行ってもよいことが認識される。したがって、本明細書で得られることが求められる保護は、本発明の範囲内で適正に、請求項およびそれらの全ての同等物の主題にまで及ぶと見なされるべきであると理解されたい。
【0223】
本明細書および請求項で使用されるような「1つの」という不定冠詞は、それとは反対に明確に示されない限り、「少なくとも1つの」を意味すると理解されるべきである。
【0224】
本明細書および請求項で使用されるような「および/または」という語句は、そのように結合された要素、すなわち、一部の場合では接続して存在し、他の場合では離接して存在する要素の「いずれか一方または両方」を意味すると理解されるべきである。それとは反対に明確に示されない限り、具体的に識別される要素に関係しようと無関係であろうと、「および/または」の節によって具体的に識別される要素以外に、他の要素が随意で存在してもよい。したがって、非限定的実施例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「備える」等の制約のない言葉と併せて使用された時に、一実施形態では、BがないA(随意でB以外の要素を含む)、別の実施形態では、AがないB(随意でA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(随意で他の要素を含む)等を指すことができる。
【0225】
本明細書および請求項で使用されるような「または」は、上記で定義されるような「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リストの中の項目を分離する時に、「または」あるいは「および/または」は、包括的である、すなわち、少なくとも1つを含むが、いくつかの要素または要素のリストのうちの1つより多く、随意で、付加的な記載されていない項目も含むと解釈されるものである。「〜のうちの1つのみ」または「〜のうちの正確に1つ」、あるいは請求項で使用される時に「〜から成る」等の、それとは反対に明確に示される用語のみが、いくつかの要素または要素のリストのうちの正確に1つの要素の包含を指す。一般に、本明細書で使用されるような「または」という用語は、「いずれか一方」、「〜のうちの1つ」、「〜のうちの1つのみ」、または「〜のうちの正確に1つ」等の排他性の用語が続いた時に、排他的な代替案(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるものである。「本質的に〜から成る」は、請求項で使用される時に、特許法の分野で使用されるようなその通常の意味を有するものとする。
【0226】
本明細書および請求項で使用されるように、1つ以上の要素のリストを参照した「少なくとも1つの」という語句は、要素のリストの中の要素のうちのいずれか1つ以上から選択されるが、要素のリスト内で具体的に記載されたあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリストの中の要素の任意の組み合わせを除外しない、少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきである。この識別はまた、具体的に識別される要素に関係しようと無関係であろうと、「少なくとも1つの」という語句が指す要素のリスト内で具体的に識別される要素以外の要素が、随意で存在してもよいことも可能にする。したがって、非限定的実施例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」への言及は、一実施形態では、Bが存在しない、1つより多くのAを随意で含む、少なくとも1つのA(随意でB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Aが存在しない、1つより多くのBを随意で含む、少なくとも1つのB(随意でA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、1つより多くのAを随意で含む、少なくとも1つのA、および1つより多くのBを随意で含む、少なくとも1つのB(随意で他の要素を含む)等を指すことができる。
【0227】
請求項ならびに上記の明細書では、「〜を備える」、「〜を含む」、「〜を携持する」、「〜を有する」、「〜を含有する」、「〜を伴う」、「〜担持する」、および同等物等の全ての移行句は、制約がない、すなわち、「〜を含むが、それに限定されない」を意味すると理解される。「〜から成る」および「本質的に〜から成る」といった移行句のみが、それぞれ、米国特許審査手続便覧(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)第2111.03項に記載されているように、制約または半制約的な移行句となるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスであって、
第1の外側電極電流コレクタ、少なくとも部分的に該第1の電極電流コレクタ内に配置される第2の内側電極電流コレクタ、および該第1の電極電流コレクタと第2の電極電流コレクタとを少なくとも部分的に分離するイオン透過媒体と、
少なくとも部分的に該第1の電極電流コレクタと該イオン透過媒体との間に配置される第1の電極活物質と、
少なくとも部分的に該第2の電極電流コレクタと該イオン透過媒体との間に配置される第2の電極活物質と
を備え、該第1および第2の電極活物質のうちの少なくとも1つは、流体を含み、該第1の電極電流コレクタおよび該第2の電極電流コレクタのうちの少なくとも1つは、他方の電極電流コレクタに対して、それの長手軸の周りで回転させられることが可能である、デバイス。
【請求項2】
前記第1の電極活物質は、半固体または濃縮イオン貯蔵電気活性物質を含み、該半固体または濃縮イオン貯蔵電気活性物質は、前記エネルギー貯蔵デバイスの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である、請求項1に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項3】
流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物は、前記エネルギー貯蔵デバイスが動作される温度において導電性である、請求項2に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項4】
前記第2の電極活物質は、前記エネルギー貯蔵デバイスの動作中に前記イオンを取り込むことまたは放出することが可能である半固体または濃縮イオン貯蔵電気活性物質を含む、請求項1に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項5】
流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物は、前記エネルギー貯蔵デバイスが動作される温度において導電性である、請求項4に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項6】
前記第1の電極電流コレクタおよび前記イオン透過媒体は、該第1の電極が少なくとも部分的に配置される第1の電気活性帯を画定する、請求項1に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項7】
前記第2の電極電流コレクタおよび前記イオン透過媒体は、該第2の電極が少なくとも部分的に配置される第2の電気活性帯を画定する、請求項1に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項8】
前記第2の電極電流コレクタは、前記第1の電極電流コレクタ内に実質的に同心円状に配置される、請求項1に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項9】
前記第1および第2の電極電流コレクタのうちの少なくとも1つは、電極のすぐ近くにネジ山付き表面を備える、請求項1に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項10】
前記第1および第2の電極電流コレクタのうちの少なくとも1つは、該電極のすぐ近くの表面から該電極に向かって延在する突起を備える、請求項1に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項11】
前記突起は、支柱、フィン、およびバッフルのうちの少なくとも1つを備える、請求項10に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項12】
前記第1の電極電流コレクタは、正極電流コレクタを備え、
前記第1の電極活物質は、正極活物質を備え、
前記第2の電極電流コレクタは、負極電流コレクタを備え、
前記第2の電極活物質は、負極活物質を備える、
請求項1に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項13】
前記第1の電極電流コレクタは、負極電流コレクタを備え、
前記第1の電極活物質は、負極活物質を備え、
前記第2の電極電流コレクタは、正極電流コレクタを備え、
前記第2の電極活物質は、正極活物質を備える、
請求項1に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項14】
請求項1に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイスを提供することと、
前記第1および/または第2の電極電流コレクタをそれらの長手軸の周りで回転させることであって、それにより、前記第1および第2の電極のうちの少なくとも1つが、該レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスの長手軸に沿って輸送される、ことと
を含む、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスを動作する方法。
【請求項15】
レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス用の流動性イオン貯蔵レドックス組成物であって、該レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、
正極活物質、負極活物質、および該正極活物質と負極活物質とを分離するイオン透過媒体を備え、該正および負極活物質のうちの少なくとも1つは、該デバイスの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である該流動性イオン貯蔵レドックス組成物を含み、
該流動性イオン貯蔵レドックス組成物は、ケトン、ジケトン、トリエーテル、1つの窒素および1つの酸素の原子を含有する化合物、1つの窒素および2つの酸素の原子を含有する化合物、2つの窒素原子および1つの酸素原子を含有する化合物、リン含有化合物、および/またはこれらのフッ素化、ニトリル、および/またはペルフルオロ化誘導体から選択される少なくとも1つの化合物を含む、組成物。
【請求項16】
前記組成物は、ケトンを含む、請求項15に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項17】
前記組成物は、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、および4−メチルシクロヘキサノンのうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項18】
前記組成物は、ジケトンを含む、請求項15に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項19】
前記組成物は、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、1,2−シクロペンタンジオン、1,3−シクロペンタンジオン、1H−インデン−1,3(2H)−ジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、1,3−シクロヘキサンジオン、および1,4−シクロヘキサンジオンのうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項20】
前記組成物は、トリエーテルを含む、請求項15に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項21】
前記組成物は、1−メトキシ−2−(2−メトキシエトキシ)エタン、1−エトキシ−2−(2−エトキシエトキシ)エタン、トリメトキシメタン、2−メトキシ−1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、2−メトキシ−1,3−ジオキサン、および2−メトキシ−1,4−ジオキサンのうちの少なくとも1つを含む、請求項20に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項22】
前記組成物は、1つの窒素および1つの酸素の原子を含有する化合物を含む、請求項15に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項23】
前記組成物は、アミドを含む、請求項22に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項24】
前記組成物は、N,N−ジメチルホルモアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−ピペリドン、および1−ビニル−2−ピロリドンのうちの少なくとも1つを含む、請求項23に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項25】
前記組成物は、1つの窒素および2つの酸素の原子を含有する化合物を含む、請求項15に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項26】
前記組成物は、3−メチル−1,3−オキサゾリジン−2−オンを含む、請求項25に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項27】
前記組成物は、2つの窒素原子および1つの酸素原子を含有する化合物を含む、請求項15に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項28】
前記組成物は、1,3−ジメチル2−イミダゾリジノン、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、および1,3−ジメチルテトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノンのうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項29】
前記組成物は、リン含有化合物を含む、請求項15に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項30】
前記組成物は、リン酸塩および亜リン酸塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項29に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項31】
前記正極活物質は、前記エネルギー貯蔵デバイスの動作中にイオンを取り込むことまたは放出することが可能である半固体または濃縮イオン貯蔵電気活性物質を含む、請求項15に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項32】
前記流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成は、前記エネルギー貯蔵デバイスが動作される温度において導電性である、請求項31に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項33】
前記正の電気活性物質は、高電圧スピネルを含む、請求項15に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項34】
前記負極活物質は、前記エネルギー貯蔵デバイスの動作中に前記イオンを取り込むことまたは放出することが可能である半固体または濃縮イオン貯蔵電気活性物質を含む、請求項15に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項35】
前記正極電流コレクタおよび前記イオン透過媒体は、前記正極活物質が少なくとも部分的に配置される正の電気活性帯を画定する、請求項15に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項36】
前記負極電流コレクタおよび前記イオン透過媒体は、前記負極活物質が少なくとも部分的に配置される負の電気活性帯を画定する、請求項15に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項37】
レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス用の音響エネルギー源であって、該レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、
正極活物質、負極活物質、および該正極活物質と負極活物質とを分離するイオン透過媒体を備え、該正および負極活物質のうちの少なくとも1つは、該デバイスの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である流動性イオン貯蔵レドックス組成物を含み、
該流動性イオン貯蔵レドックス組成物は、固体を含み、該音響エネルギー源は、該レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス内における該固体の蓄積を阻止すること、および/または該レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス内の該流動性イオン貯蔵レドックス組成物の粘度を低減することを行うように構築および配設される、音響エネルギー源。
【請求項38】
前記音響エネルギー源は、圧電または電歪アクチュエータを含む、請求項37に記載の音響エネルギー源。
【請求項39】
前記音響エネルギー源は、前記レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスの構成要素とモノリシックに統合される、請求項37に記載の音響エネルギー源。
【請求項40】
前記音響エネルギー源は、前記レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスに対して分離したデバイスを備える、請求項37に記載の音響エネルギー源。
【請求項41】
流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成は、前記エネルギー貯蔵デバイスが動作される温度において導電性である、請求項37に記載の音響エネルギー源。
【請求項42】
前記レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、潤滑剤を含む粒子を含む、請求項37に記載の音響エネルギー源。
【請求項43】
レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス用のインラインセンサであって、該レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、
正極活物質と、
負極活物質と、
該正極活物質と負極活物質とを分離するイオン透過媒体であって、該正および負極活物質のうちの少なくとも1つは、該デバイスの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である流動性イオン貯蔵レドックス組成物を含む、イオン透過媒体と、
該流動性イオン貯蔵レドックス組成物の特性を決定するように構築および配設されるインラインセンサと
を備える、インラインセンサ。
【請求項44】
前記インラインセンサは、前記レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスから独立の導管まで前記流動性イオン貯蔵レドックス組成物の一部分を進路変更させることにより、該組成物の特性を決定する、請求項43に記載のインラインセンサ。
【請求項45】
前記特性は、前記流動性イオン貯蔵レドックス組成物の充電状態を含む、請求項43に記載のインラインセンサ。
【請求項46】
前記特性は、前記流動性イオン貯蔵レドックス組成物の電子伝導率を含む、請求項43に記載のインラインセンサ。
【請求項47】
前記特性は、前記流動性イオン貯蔵レドックス組成物のイオン伝導率を含む、請求項43に記載のインラインセンサ。
【請求項48】
前記特性は、前記流動性イオン貯蔵レドックス組成物の凝集状態を含む、請求項43に記載のインラインセンサ。
【請求項49】
前記特性は、前記流動性イオン貯蔵レドックス組成物の粘度を含む、請求項43に記載のインラインセンサ。
【請求項50】
前記特性は、時間の関数として測定される、請求項43に記載のインラインセンサ。
【請求項51】
前記特性は、温度の関数として測定される、請求項43に記載のインラインセンサ。
【請求項52】
前記特性は、流速の関数として測定される、請求項43に記載のインラインセンサ。
【請求項53】
前記特性は、印加された電位または電界の振幅の関数として測定される、請求項43に記載のインラインセンサ。
【請求項54】
前記特性は、印加された電位または電界の周波数の関数として測定される、請求項43に記載のインラインセンサ。
【請求項55】
レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス用の流動性イオン貯蔵レドックス組成物であって、該レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、
正極活物質、負極活物質、および該正極活物質と負極活物質とを分離するイオン透過媒体を備え、該正および負極活物質のうちの少なくとも1つは、セルの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である流動性イオン貯蔵レドックス組成物を含み、
該流動性イオン貯蔵レドックス組成物は、水性液体担体を含み、該イオンは、LiまたはNaを含む、組成物。
【請求項56】
前記イオンは、Naを含む、請求項55に記載の流動性イオン貯蔵レドックス組成物。
【請求項57】
レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスであって、
正極活物質、負極活物質、および該正極活物質と負極活物質とを分離するイオン透過媒体であって、該正および負極活物質のうちの少なくとも1つは、該デバイスの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である流動性イオン貯蔵レドックス組成物を含む、正極活物質、負極活物質、およびイオン透過媒体と、
該流動性イオン貯蔵レドックス組成物が配置される容積と流体的に連絡しているか、または容積内に位置する混合流体源であって、該混合流体は、該流動性イオン貯蔵レドックス組成物と非混和性である、混合流体源と
を備える、デバイス。
【請求項58】
前記混合流体は、液体を含む、請求項57に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項59】
前記混合流体は、気体を含む、請求項57に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項60】
前記混合流体は、前記流動性イオン貯蔵レドックス組成物と実質的に化学反応しない、請求項57に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項61】
前記混合流体源は、前記レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスから独立しており、前記流動性イオン貯蔵レドックス組成物の中へ輸送される、請求項57に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項62】
前記混合流体源は、前記流動性イオン貯蔵レドックス組成物内の反応物を含む、請求項57に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項63】
レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスであって、
第1の極性の第1の電極活物質と、
第2の反対極性の第2の電極活物質と、
該第1の電極活物質と第2の電極活物質とを分離するイオン透過媒体であって、該第1および第2の電極活物質のうちの少なくとも1つは、セルの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である流動性イオン貯蔵レドックス組成物を含む、イオン透過媒体と、
該流動性イオン貯蔵レドックス組成物と接触している可動表面であって、該可動表面は、該レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスを介して該流動性イオン貯蔵レドックス組成物の流動を少なくとも部分的に方向付けるように構築および配設される、可動表面と
を備える、レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項64】
前記可動表面は、電極電流コレクタの一部である、請求項63に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項65】
前記可動表面は、複数の突起を備える、請求項63に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項66】
前記可動表面は、ネジ山付き表面を備える、請求項63に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項67】
前記可動表面は、少なくとも1つの回転軸の周りに配設されるベルトの一部である、請求項63に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項68】
前記可動表面は、前記レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスの電気活性帯内に少なくとも部分的に配置される、請求項63に記載のレドックスフローエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項69】
レドックスフローエネルギー貯蔵デバイス用の流動性イオン貯蔵レドックス組成物であって、該レドックスフローエネルギー貯蔵デバイスは、
正極活物質、負極活物質、および該正極活物質と負極活物質とを分離するイオン透過媒体とを備え、
該正および負極活物質のうちの少なくとも1つは、該デバイスの動作中に該イオンを取り込むことまたは放出することが可能である流動性の半固体または濃縮液体イオン貯蔵レドックス組成物を含み、
該流動性イオン貯蔵レドックス組成物は、エーテル、ケトン、ジエーテル、ジケトン、エステル、トリエーテル、炭酸塩、アミド、イオウ含有化合物、リン含有化合物、イオン液体、およびこれらのフッ素化、ニトリル、および/またはペルフルオロ化誘導体のうちの少なくとも1つを含む、組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1J】
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【図1K】
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【図1L】
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【図1M】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−515335(P2013−515335A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544855(P2012−544855)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060876
【国際公開番号】WO2011/084649
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】