説明

高キャパシタンスニオブ粉末及び電解キャパシターアノード

【課題】本発明は、静電容量が大きいニオブ粉末を提供すること等を課題とする。
【解決手段】電解キャパシターのアノードにしたときに、このアノードのキャパシタンスが少なくとも65,000CV/gであるニオブ粉末を提供する。電解キャパシターのアノードにしたときにキャパシタンスが大きいフレーク状ニオブ粉末の製造方法も提供する。本発明はニオブと並んで他の金属、例えばバルブ金属に適用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオブ粉末及びこのニオブ粉末を使用する電解キャパシター、並びにこの粉末及び電解キャパシターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたって、ニオブ電解キャパシターの開発が行われてきた。これは、様々な他の金属と比較したときに、ニオブのコストが比較的安く且つその酸化物の誘電率が大きいことによる。初めにこの分野の研究者は、タンタルキャパシターのための代替物としてニオブを使用する可能性を考慮した。従って、多くの研究は、タンタルをニオブで置き換えることの適当さについて決定している。
【0003】
しかしながら、これらの研究のいくらかでは、ニオブには解決すべき重要な基本的問題があり、従ってニオブはタンタルを許容可能に置換できないことを結論づけている。(J. Electrochem. Soc.、p.408C、1977年12月を参照)。他の1つの研究では、固体電解キャパシターでのニオブの使用は、電界結晶化のような様々な物理的及び機械的問題のためにあまり好ましくないことを結論づけている。(Electrocomponent Science and Technology、Vol.1、p.27〜37(1974年)を参照)。更に、もう1つの研究では、陽極で形成されるニオブの不動態フィルムの電気的性質が、タンタルで達成される電気的性質とは異なること、及びニオブの使用が、タンタルでは存在しない問題をもたらすことを結論づけている。(Elecrochimica Act.、Vol.40、No.16、p.2623〜26(1995年)を参照)。ニオブがタンタルの好ましい代替物になるという当初の希望とは違って、電解キャパシターの市場において、ニオブはタンタルに取って代われないということが示されていた。
【0004】
タンタル電解キャパシターと並んで、アルミニウム電解キャパシターの市場も存在する。しかしながら、アルミニウム電解キャパシターの性能特性は、タンタル電解キャパシターの性能特性とはかなり異なっている。
【0005】
最近の電気回路は、比較的小さい等価直列抵抗(ESR)及び等価直列インダクタンス(ESL)を求めるようになってきている。ICの性能はサブミクロンの形状まで達しているので、比較的小さい供給電圧及びノイズ率が必要とされている。同時に、IC速度の向上は比較的多くの電力を必要としている。これらの矛盾した要求が、より良好な電力の取り扱いを必要としている。これは、電力供給源を分配することによって達成することができるが、このようにするとノイズを打ち消すために比較的大きな電流が必要になる。IC速度の向上は、切り替え時間を短くすること及び過渡電流を大きくすることも意味している。従って、電気回路は過渡負荷共鳴を減少させるように設計しなければならない。これらの多くの要求は、回路のキャパシタンスが十分に大きく且つESR及びESLが小さい場合に、達成される。
【0006】
アルミニウムキャパシターは典型的に、全てのタイプのキャパシターの中で最も大きいキャパシタンスを提供する。ESRは、キャパシタンスが増加すると小さくなる。従って現在では、上述の要求を満たすために、高キャパシタンスアルミニウムキャパシターの大きなバンクを使用している。しかしながら、アルミニウムキャパシターは、小さいESR及びESLという設計者の要求を実際には満たしていない。液体電解質を伴うその機械的な構造は本質的に、高インピーダンスで数百ミリオームのESRをもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の特徴は、静電容量が大きいニオブ粉末を提供することである。
【0008】
本発明の更なる特徴は、ニオブ粉末を提供することであり、このニオブ粉末は好ましくは、高表面積で、ニオブ粉末を高キャパシタンスのキャパシターにすることを可能にする物性を有する。
【0009】
本発明のもう1つの特徴は、低漏れ直流電流(DC leakage)のキャパシターにされるニオブ粉末を提供することである。
【0010】
本発明の更なる特徴及び利点については、以下に示す説明でその一部を示し、また一部は説明から明らかになり、又は本発明を実施することによって理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ニオブ粉末に関する。本発明のもう1つの面は、BET表面積が少なくとも約5.1m/gの任意のニオブ粉末に関する。
【0012】
本発明は、電解キャパシターのアノードにしたときに、このアノードのキャパシタンスが62,000CV/g超になるニオブ粉末にも関する。
【0013】
また本発明は、ニオブ粉末を微粉砕し、微粉砕されたニオブ粉末に脱酸素処理処理を行い、そしてニオブ粉末の微粉砕を継続する工程を含む、フレーク状ニオブ粉末を製造する方法に関する。
【0014】
上述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方が、単なる説明及び例示であり、特許請求の範囲に記載される本発明を更に説明することを意図していることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、ニオブ粉末のBET表面積と、それらをアノードにして1,150℃又は1,300℃で焼結したときのキャパシタンスとを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、静電容量が大きいニオブ粉末に関する。
【0017】
使用できるニオブは、任意のニオブ粉末、例えばフレーク状のもの、角張ったもの、ノジュラー状のもの、及びそれらの混合又は変形である。好ましくはニオブ粉末(例えばフレーク状のもの、角張ったもの、ノジュラー状のもの、及びそれらの混合)のBET表面積は少なくとも5.1m/g、又は好ましくは少なくとも5.5m/g、より好ましくは少なくとも6.0m/g、更により好ましくは約6.0〜約15.0m/g、最も好ましくは約8.0〜約15.0m/gである。BET表面積の範囲は、塊状化させる前のニオブ粉末に基づいている。ニオブ粉末は水素化されていても水素化されていなくてもよい。またニオブ粉末は塊状化させることができる。
【0018】
フレーク状ニオブ粉末に関して、このフレーク状ニオブ粉末は、平坦、プレート状、及び/又はペレット状の形状で特徴付けられる。また、フレーク状ニオブ粉末のアスペクト比(厚さに対する直径の比)は、約3〜約300、好ましくは約200〜約300でよい。フレーク状ニオブ粉末は、その形状によって表面積を増加させている。フレーク状ニオブ粉末のBET表面積は、好ましくは少なくとも5.5m/g、より好ましくは少なくとも約6.0m/g、更により好ましくは少なくとも約7.0m/gである。フレーク状ニオブ粉末の好ましいBET表面積の範囲は、約6.0m/g〜約15.0m/g、より好ましくは約8.0m/g〜約12.0m/g、又は約9.0m/g〜約11.0m/gである。このBET表面積は、塊状化させる前のフレーク状ニオブ粉末に基づいている。
【0019】
フレーク状ニオブ粉末は塊状化させることができる。フレーク状ニオブ粉末は、水素化されていても水素化されていなくてもよい。塊状化フレーク状ニオブ粉末は好ましくは、スコット密度が約35g/in未満、より好ましくは約10〜約35g/inである。非塊状化フレーク状ニオブ粉末は好ましくは、スコット密度が約12g/in未満、より好ましくは約5g/in未満である。好ましくは、塊状化フレーク状ニオブ粉末の流動性は、80mg/s超、より好ましくは約80mg/s〜約500mg/sである。
【0020】
一般にフレーク状ニオブ粉末は、ニオブインゴットを得て、これを水素ガスに露出させて水素化で脆性にすることによって調製できる。その後、水素化されたインゴットは、破壊して角張った粉末にすることができる。これは例えば、ジョークラッシャー及び衝撃ミルを1回又は複数回使用することによって行う。角張った粉末は、酸浸出等によってその後清浄化することができる。減圧化での加熱によって水素を除去し、ガス抜きした角張っている粉末を微粉砕することができる。これは例えば、撹拌ボールミルで行い、ここではエタノールのような流体媒体(水性又は非水性)に粉末を分散させて、回転棒の作用によって動くステンレス鋼ボールの衝撃でフレーク状粉末を作る。ここで媒体は、ステアリル酸等のような滑剤を含有することができる。水素脆性化を行い、その後でフレーク状体を衝撃微粉砕することによって、様々な大きさのフレーク状体を製造することができる。この衝撃微粉砕は例えば、流動層ジェットミル、Vortecミル、又は他の適当な微粉砕工程の使用によって行う。
【0021】
より詳細には、真空中での加熱によってニオブインゴットを水素化して、粉末に粉砕される脆性インゴットを作る。粉末中の水素は随意に、真空中で粒子を加熱することによって除去できる。粉末に微粉砕処理、好ましくは摩砕処理を行うことによって、様々なBET表面積を達成できる。粉末のBET表面積を比較的大きくするためには一般に、比較的長い微粉砕時間が必要である。例えば、微粉砕時間が約60分間である場合、約1.0m/gのBET表面積が達成できる。比較的大きいBET表面積を得るためには、比較的長い微粉砕時間が必要であり、約4〜約5m/g又はそれよりも大きいBET表面積を得るためには、磨砕装置で約24時間又はそれよりも長い期間にわたって微粉砕することが、そのようなBET表面積が大きいニオブ粉末を製造する1つの方法である。そのような高表面積をもたらす場合、好ましくは30−S Szegvari磨砕装置で、1,000ポンドの3/16インチSS媒体及び約40ポンドのニオブ粉末を使用して、磨砕装置の回転速度を約130rpmに設定する。また磨砕装置は、十分な量の媒体、例えば13ガロン又はそれよりも多量のエタノールを保持するようにする。微粉砕処理の後でニオブ粉末に熱処理を行い、また好ましくは、ニオブ粉末がリンを含有して、熱処理の間の表面積の減少を最小化するのを補助するようにする。熱処理は、好ましくは表面の減少をもたらさずに、一般に塊状化をもたらすのに十分な任意の温度で行える。使用できる熱処理の温度は、約1,100℃で30分間である。しかしながら、温度及び時間を変更して、大きいBET表面積が減少しないことを確実できる。
【0022】
好ましくはこのような微粉再処理では、微粉砕されたニオブ粉末を断続的に脱酸素処理する。任意の脱酸素処理、例えばマグネシウム脱酸素処理を使用できる。好ましくは高温マグネシウム脱酸素処理を使用する。他の脱酸素処理法、例えば限定するわけではないが、米国特許第4,960,471号明細書で示されているようなゲッター組成物のようなゲッターによる方法を使用できる。この特許明細書の記載はここで参照して本明細書の記載に含める。このタイプの脱酸素処理法を使用する場合、そのような工程の後で、ニオブ粉末に酸浸出処理を行って、全ての残留マグネシウムを除去できる。この後で、ニオブ粉末に更に微粉再処理、例えば磨砕処理を行うことができる。任意の回数で行えるこれらの追加の工程は好ましくは、高静電容量のフレーク状ニオブ粉末を製造するために使用する。酸浸出を伴う又は伴わない脱酸素処理は、フレーク状粒子の破損及び断片化をなくしはしないまでも減少させる能力を有し、従って比較的大きい表面積、及びフレーク状ニオブ粉末をキャパシターのアノードにしたときの比較的大きい静電容量を可能にする。
【0023】
高温マグネシウム脱酸素処理のような脱酸素処理は好ましくは、更なる微粉砕のために、ニオブ粉末を比較的延性にし又はニオブ粉末を比較的延性の状態に戻す。いずれの理論にも限定されることは望まないが、脱酸素処理工程は、ニオブ粉末から格子間酸素を除去し、またフレーク状ニオブへの応力を緩和させる能力を有すると考える。格子間酸素は微粉砕時間の関数として増加し、与えられるフレークの表面での飽和濃度では、フレーク粒子の破損又は断片化をもたらすので、脱酸素処理はこれらの問題を克服して、静電容量が比較的大きいフレーク状ニオブ粉末の形成を可能にする。好ましくは第1の脱酸素処理工程は、微粉再処理の間にフレーク状ニオブ粉末のBET表面積が約1.5m/gに達したら行い、またその後の間欠的な工程で行うこと、例えばフレーク状ニオブ粉末のBET表面積が約4.5m/gに達したとき、及びフレーク状ニオブ粉末のBET表面積が約10.0m/gに達したとき等に行うことができる。任意の回数の脱酸素処理工程を行うことができ、好ましくは上述の加工硬化の問題が起こる前に脱酸素処理を行うことが好ましい。マグネシウム脱酸素処理を使用する場合、マグネシウム脱酸素処理工程の間に、好ましくは全ニオブ重量の約4%〜約6%のマグネシウムを使用する。またこのマグネシウム脱酸素処理工程の温度は、好ましくは約700〜1,600℃、より好ましくは約750〜950℃、最も好ましくは約750〜約800℃である。好ましくはマグネシウム脱酸素処理は、アルゴンのような不活性雰囲気中において行う。また、マグネシウム脱酸素処理は一般に、フレーク状ニオブ粉末中の酸素の有意の部分を少なくとも除去するのに十分な温度及び十分な時間で行う。より好ましくはマグネシウム脱酸素処理の期間は、約20分〜約3時間、より好ましくは約45分〜約60分である。使用するマグネシウムは一般に、このマグネシウム脱酸素処理において、気化して、例えばMgOとして、例えば炉の低温の壁に堆積する。残った全てのマグネシウムは好ましくは、任意の処理、例えば希硝酸及びフッ化水素酸の溶液での浸出によって実質的に除去する。
【0024】
ニオブ粉末は随意に、酸素を含有してもよい。酸素含有量は約2,000ppm又はそれ未満又はそれよりも多くてよい。例えばニオブ粉末の酸素含有率は、約2,000ppm〜約60,000ppmでよい。あるいは、ニオブ又は任意の他のタイプのニオブは酸素含有率が低くてもよく、例えば酸素含有率が1,000ppm未満であってもよい。
【0025】
更に、例えば単独又は酸素と組み合わせたリンのドーピングによって、ニオブ粉末にリンを含有させてもよい。リンでのニオブ粉末のドーピングも随意である。本発明の1つの態様では、ニオブ粉末のリンドーピングの量は約400ppm未満、より好ましくは約100ppm未満、最も好ましくは約25ppm未満である。他の従来の添加剤、例えば1又は複数のタイプのドーピング剤を導入することもできる。例えば本発明のニオブ粉末は、様々な量の窒素を含有することができ、例えば窒素含有率が約5ppm〜20,000ppm、より好ましくは約100ppm〜約5,000ppmでよい。PCT国際公開WO99/57739号明細書に記載の窒素の導入又はドーピング方法を使用することができる。この特許明細書の記載はここで参照してその記載の全てを本明細書の記載に含める。
【0026】
上述の様々なニオブ粉末は、本発明のニオブ粉末を使用するキャパシターの電気的性質によって更に特徴付けることができる。一般に本発明のニオブ粉末の電気的性質は、ニオブ粉末を圧縮してアノードにし、圧縮されたニオブ粉末を適当な温度で焼結させ、そしてこのアノードを陽極処理して、電解キャパシターのアノードを作り、このアノードの電気的性質を試験することによって試験される。
【0027】
従って、本発明の他の態様は、本発明の窒素含有ニオブ粉末及び/又はニオブ粉末から作られたキャパシターに関する。いくらかの本発明のニオブ粉末から作られたアノードのキャパシタンスは約62,000CV/g超でよい。
【0028】
従って本発明は更に、電解キャパシターのアノードにしたときにキャパシタンスが約62,000CV/g超、より好ましくは約70,000CV/g超になるニオブ粉末に関する。好ましくはニオブ粉末を電解キャパシターのアノードにしたときに、このアノードのキャパシタンスは、約65,000CV/g〜約150,000CV/g、より好ましくは約65,000CV/g〜約175,000CV/g、最も好ましくは約65,000CV/g〜約250,000CV/gである。これらのキャパシタンスは以下の様式で測定され、またニオブ粉末は以下の様式でアノードにする。
【0029】
アノードを製造するためにタンタルを使用できる。タンタル容器を測定し(直径0.201インチ×長さ0.446インチ)する。これは一方の端部で開放されており、外側に溶接されたタンタルワイヤーを有する。タンタル容器に低Scott密度ニオブフレーク粉末を自由充填し、計量し、そして焼結させる。焼結温度は1,000℃〜1,500℃、好ましくは1,100℃〜1,300℃でよい。焼結されたニオブ充填タンタル容器は、10Vf〜50Vf、好ましくは20Vf〜35Vfの形成電圧で陽極処理することができる。陽極処理及び焼結をされたニオブ充填タンタル容器を、キャパシタンス(μF)について試験する。空のタンタル容器のキャパシタンス(μF)を、ニオブ充填タンタル容器のキャパシタンスから引いて、真のキャパシタンス(μF)の読みを得る。得られる電気的解析の値はμFV/gの単位で報告している。
【0030】
本発明のキャパシターアノードの製造では、所望の性質を有するキャパシターアノードの製造を可能にする焼結温度を使用している。好ましくは焼結温度は約1,100℃〜約1,750℃、より好ましくは約1,100℃〜約1,400℃、最も好ましくは約1,150℃〜約1,300℃である。
【0031】
本発明のニオブ粉末から作られるアノードは好ましくは、約60V未満、好ましくは約30V〜約50V、より好ましくは約40Vの電圧で作られる。比較的小さい形成電圧、例えば約30V又はそれ未満の形成電圧も可能である。好ましくは本発明のニオブ粉末から作られるアノードの作用電圧は、約4〜16V、より好ましくは約4〜約10Vである。また本発明のニオブ粉末から作られるアノードの漏れ直流電流は好ましくは、約5.0na/CV未満である。本発明の1つの態様では、いくらかの本発明のニオブ粉末から作られるアノードの漏れ直流電流は、約5.0na/CV〜約0.50na/CVである。
【0032】
キャパシタンスが大きいこのニオブ粉末に関して、比較的大きい形成電圧及び比較的大きい作用電圧を使用でき、例えば形成電圧としては約50〜約80V、作用電圧として約10〜約20Vの電圧を使用できる。本発明の更なる利益は、漏れ直流電流の改良、すなわちニオブのBETの増加に伴う安定な又は比較的小さい漏れ直流電流である。
【0033】
本発明は、表面に酸化ニオブフィルムを有する本発明のキャパシターにも関する。好ましくは、酸化ニオブフィルムは、五酸化ニオブフィルムを有する。
【0034】
本発明のフレーク製造方法は、ニオブと並んで、フレーク状にすることができる任意の金属、例えばタンタルを包含するバルブ金属に適用可能である。比較的大きいBET表面積、フレーク状金属から作られるアノードの比較的大きいキャパシタンス、及び/又は関連する形成電圧、作用電圧及び改良された又は安定な漏れ直流電流のような得られる利益も、本発明で考慮される部分である。
【0035】
本発明のキャパシターは様々な用途、例えば自動車の電子機器;携帯電話;モニター、マザーボード等のようなコンピューター用品;TV及びCRTのような消費電気機器;プリンター/コピー;電力源;モデム;ノート型コンピューター;並びにディスクドライブで使用することができる。
【実施例】
【0036】
以下の例によって本発明をより明確にする。これらの例は本発明を例示することを意図している。
【0037】
[試験方法]
キャパシタンス 方法A:フレーク状体 CV/g 電気的測定
[1]アノード調製:
(a)それぞれの番号の試料粉末をTaの容器に入れる。
(1)粉末を充填する前に、それぞれの容器を計量する。
(2)粉末を詰め込まないで、容器を粉末で満たす。
(3)粉末を充填された容器を計量する。
[2]アノード焼結:
(a)1,300℃で10分間(特徴「A」)
(b)それぞれの番号の粉末を充填されている容器及び1つの空の容器を、個々の容器の識別ができるようにして、大きいトレイに乗せる。
[3]35V−Ef評価:
(a)60℃/0.1%HPO電解質で35V−Ef
2V/5分又は20mA/gの一定電流
[4]漏れ直流電流(DC Leakage)/キャパシタンス−ESR試験:
(a)漏れ直流電流試験
試験電圧はEfの70%(24.5Vの直流電流)
充電時間60秒
21℃で10%のHPO
(b)キャパシタンス−DF試験
21℃で18%のHSO
120Hz
【0038】
キャパシタンス 方法B:フレーク状粉末 CV/g 電気的測定
[1]アノード製造:
(a)2.5及び3.0Dp
(b)Nbの0.025インチの「伸張導線」を使用する非潤滑粉末
(c)寸法:直径0.197インチ、長さ0.230インチ
(d)粉末重量:340mg
[2]アノード焼結(10分/A勾配):
(a)1,100℃×10分
(b)1,200℃×10分
(c)1,300℃×10分
[3]35V−Ef陽極酸化処理:
(a)60℃/0.1%HPO電解質で35V−Ef
50mA/gの一定電流
[4]漏れ直流電流/キャパシタンス−ESR試験:
(a)漏れ直流電流試験
試験電圧はEfの70%(24.5Vの直流電流)
充電時間60秒
21℃で10%のHPO
(b)キャパシタンス−DF試験
21℃で18%のHSO
120Hz
[5]50V−Ef陽極酸化処理:
(a)60℃/0.1%HPO電解質で50V−Ef
50mA/gの一定電流
[6]漏れ直流電流/キャパシタンス−ESR試験:
(a)漏れ直流電流試験
試験電圧はEfの70%(35Vの直流電流)
充電時間60秒
21℃で10%のHPO
(b)キャパシタンス−DF試験
21℃で18%のHSO
120Hz
【0039】
スコット密度、酸素解析、リン解析、及びBET表面積解析は、米国特許第5,011,742号、同第4,960,471号、及び同第4,964,906号明細書で示される方法に従って行った。これら全ての特許明細書の記載は、ここで参照することによって本発明の記載に含める。
【0040】
例1〜10
電子ビームで作ったニオブインゴットを、10−4Torrの減圧下で1,050℃に加熱し、15分間にわたって1,050℃に維持し、そして減圧下で600℃までインゴットを冷却することによって水素化した。インゴットが600℃になったら、炉に入る水素分圧を下げて200scfhにし、この水素分圧流れで48時間にわたってインゴットを冷却した。減圧を−28mmHgまで行って、アルゴンで−5mmHgまで再び満たした。作用熱電対によって測定したときの温度が安定化するまで、圧力を維持した。空気を徐々に導入して圧力を徐々に増加させ、作業温度が上昇しないようにした。脆性化したインゴットを、ジョークラッシャー粉砕して角張った粉末にし、衝撃ミルで処理し、そして空気分級器で分級して5〜80μmにした。粒子から放出される水素によって圧力が影響を受けなくなるまで、大きさが小さくなった水素含有粒子を減圧下で700℃に加熱することによって、粒子から水素を除去した。
【0041】
脱ガス処理した角張った粉末を30−S Szegvari撹拌ボール磨砕装置(130rpmで6時間)で処理した。ここでは、15ガロンのエタノール媒体及び1,000ポンドの3/16インチ440Cステンレス鋼媒体中に分散した粉末を、回転棒の作用によって動かされるステンレス鋼ボールの衝撃によってフレーク状粉末にした。この初期微粉砕の後では、フレーク状ニオブ粉末の表面積が約1.5m/gであることが測定された。フレーク状ニオブ粉末は、ニオブの約4〜約6wt%のマグネシウムを使用してマグネシウム脱酸素処理した。マグネシウム脱酸素処理は約800℃の温度で約60分間にわたって行った。フレーク状ニオブ粉末を取り出し、酸浸出して全ての残留マグネシウムを除去した。この酸浸出は、40ポンドのフレーク状ニオブ、400g/ポンドの脱イオン水の氷、200ml/ポンドの硝酸及び2ml/ポンドのフッ化水素酸を含有するスラリーを作り、そしてこすこと及びすすぐことによって導電率を50μhosにして行った。その後、フレーク状ニオブ粉末を1−S Szegvari撹拌ボール磨砕装置に再び導入し、それぞれの例について表1で示すパラメータに従って更に微粉砕した。それぞれの例において、微粉砕の間の平均エタノールスラリー温度は、約85°Fであり、微粉砕速度は約350rpmであった。それぞれの例についての可変要素及び結果が表1に示されている。表に示すそれぞれの例において、2/3ガロンのエタノール及び随意に約1wt%(2.5g)の量のステアリル酸中の40ポンドの3/16インチ440Cステンレス鋼媒体を使用して、0.5ポンドの脱酸素処理されたフレーク状ニオブ粉末をボールミル処理した。
【0042】
【表1】

EtOH及びステアリル酸
【0043】
所望のようにフレーク状にした後で、ニオブ粉末を取り出し、洗浄して存在する全てのアルコールを除去した。その後、ニオブ粉末を、750ml/ポンドの脱イオン水、10ml/ポンドのフッ化水素酸、350/750ml/ポンドの硝酸及び750ml/ポンドの塩化水素酸の混合物で洗浄して、炭素及び金属(例えばステンレス鋼ボールとの接触でもたらされる鉄、ニッケル、クロム等)の汚染物質を除去した。ここでこれらの混合物成分の量は、ニオブの量(ポンド)に基づいている。酸濃度は、HClが約30%、HNOが約68〜70%、HFが約48〜51%であった。その後、ニオブ粉末を脱イオン水で再び洗浄し、乾燥させた。酸洗浄したフレーク状粉末は、空気中において150°F(65℃)で乾燥させた。
【0044】
様々なロットのニオブ粉末を、直径0.6mmのニオブ導線の周囲で直径5mmのアノード型内に入れ、密度を3.5g/ccにした。圧縮されたニオブ粉末の飼料を、表1に示す温度で10分間にわたって、減圧下(10−3Pa未満)において焼結させ、表1に示す形成電圧で20mA/gの定常電流を、0.1wt%のリン酸に浸漬させたアノードに提供することによって陽極処理して、電解キャパシターのアノードを作り、これを洗浄して乾燥させた。18wt%の硫酸に浸漬させたアノードについての測定で評価された性能特性は、表1に示している。120Hzの周波数で決定されたキャパシタンスは、マイクロファラッド・ボルト/グラム(CV/g)及びマイクロファラッド・ボルト/アノード体積の立方センチメートル(CV/cc)で報告し、35Vの電圧を加えて1分後に測定される漏れ直流電流は、ナノアンペア/マイクロファラッド・ボルト(nA/CV)で報告している。
【0045】
様々な例のBET表面積とキャパシタンスを示している図1及び表1から理解されるように、ニオブ粉末から作られたアノードのキャパシタンスは、フレーク状ニオブ粉末を破損させずに比較的長期間にわたって微粉砕を行うことを可能にする本発明の方法を使用することによって、かなり増加している。表1から理解されるように、20Vの形成電圧を使用して、1,150℃で焼結させたフレーク状ニオブ粉末からアノードを作る場合、キャパシタンスは204,498CV/gであった。更に、アルコール、好ましくはエタノールと、ステアリル酸のような滑剤を使用することの利益も観察されている。
【0046】
本発明の他の態様は、本明細書の記載を参照すること及び本明細書の記載で示された本発明の実施を考慮することによって当業者に明らかである。本明細書の説明及び例は単なる例示であり、本発明の実際の範囲及び本質は特許請求の範囲で示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解キャパシターのアノードにしたときに、このアノードのキャパシタンスが少なくとも65,000CV/gである、ニオブ粉末。
【請求項2】
前記アノードのキャパシタンスが65,000〜約250,000CV/gである、請求項1に記載のニオブ粉末。
【請求項3】
前記アノードのキャパシタンスが約75,000〜約250,000CV/gである、請求項1に記載のニオブ粉末。
【請求項4】
前記アノードのキャパシタンスが約100,000〜約250,000CV/gである、請求項1に記載のニオブ粉末。
【請求項5】
前記アノードのキャパシタンスが約125,000〜約250,000CV/gである、請求項1に記載のニオブ粉末。
【請求項6】
前記アノードのキャパシタンスが約100,000〜約210,000CV/gである、請求項1に記載のニオブ粉末。
【請求項7】
BET表面積が少なくとも約5.5m/gである、ニオブ粉末。
【請求項8】
BET表面積が少なくとも約7.0m/gである、請求項7に記載のニオブ粉末。
【請求項9】
BET表面積が少なくとも約10m/gである、請求項7に記載のニオブ粉末。
【請求項10】
BET表面積が6.0m/g〜約12m/gである、請求項7に記載のニオブ粉末。
【請求項11】
リン含有率が約400ppm未満である、請求項1〜10のいずれかに記載のニオブ粉末。
【請求項12】
窒素でドーピングされている、請求項1〜11のいずれかに記載のニオブ粉末。
【請求項13】
窒素含有率が少なくとも約100ppmである、請求項1〜11のいずれかに記載のニオブ粉末。
【請求項14】
窒素含有率が約100ppm〜約5,000ppmである、請求項1〜11のいずれかに記載のニオブ粉末。
【請求項15】
窒素含有率が約100ppm〜20,000ppmである、請求項1〜11のいずれかに記載のニオブ粉末。
【請求項16】
フレーク状窒素粉末を含む、請求項1〜15のいずれかに記載のニオブ粉末。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載のニオブ粉末を有するキャパシター。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれかに記載のニオブ粉末を含む組成物から調製されたキャパシター。
【請求項19】
前記粉末を約1,200〜約1,750℃の温度で焼結させた、請求項18に記載のキャパシター。
【請求項20】
ニオブチップを微粉砕してフレーク状ニオブ粉末を作り、このフレーク状ニオブ粉末に脱酸素処理を行い、そしてこのフレーク状ニオブ粉末の微粉砕を継続することを含む、フレーク状ニオブ粉末の製造方法。
【請求項21】
前記フレーク状ニオブ粉末の微粉砕の間に、前記フレーク状ニオブ粉末の脱酸素処理を1又は複数回行う、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記脱酸素処理が無機脱酸素処理を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記脱酸素処理がマグネシウム脱酸素処理である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
ニオブの約4wt%〜約6wt%のマグネシウムをマグネシウム脱酸素処理で使用し、この脱酸素処理を約700℃〜約1,600℃の温度で行う、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記フレーク状ニオブ粉末の微粉砕を継続する前に、全ての残留マグネシウムを実質的に除去する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記残留マグネシウムを酸浸出によって除去する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記フレーク状ニオブ粉末の脱酸素処理の前に、最初の前記微粉砕を約2時間〜約8時間にわたって行う、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記フレーク状ニオブ粉末の脱酸素処理の前に、前記フレーク状ニオブ粉末のBET表面積が少なくとも約1.5m/gになっている、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記微粉砕を磨砕ミルで行う、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−23745(P2011−23745A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−230569(P2010−230569)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【分割の表示】特願2000−618038(P2000−618038)の分割
【原出願日】平成12年5月5日(2000.5.5)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION