説明

高ジルコニア耐熱材料

本発明は、酸化物基準の重量%で全体を100%として、- ZrO2+HfO2:100%までの残り;- SiO2:3.5%〜6.0%;- Al2O3:0.7%〜1.5%;- Na2O+K2O:0.10%〜0.43%;- B2O3:0.05%〜0.80%;- CaO+SrO+MgO+ZnO:<0.4%;- P2O5:<0.05%;- Fe2O3+TiO2:<0.55%;- 他の化学種:<1.5%を含み;Al2O3/(Na2O+K2O)の重量%の比が3.5以上であり、B2O3/(Na2O+K2O)の重量%の比が0.3〜2.5である、溶融鋳造耐熱材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高ジルコニア濃度の新規な溶融鋳造耐熱製品に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱製品の中で、ガラス溶融炉の製作および焼結製品のための溶融鋳造製品は良く知られている。
【0003】
焼結製品とは対照的に、溶融鋳造製品は、結晶化した粒子を結合する粒子間ガラス相により多く曝される。焼結製品の他、溶融鋳造製品によっても引き起こされる問題およびそのような問題を解決するために採用される技術的解決策は、一般には互いに異なっている。したがって先験的に、焼結製品を製造するために開発された組成物を、溶融鋳造製品を製造するために用いることは容易ではなく、逆も同様である。
【0004】
しばしば電鋳物と称される溶融鋳造製品は、適当な原料の混合物を電気アーク炉の中で溶融することによって、またはこれらの種類の製品に適した他の任意の技術によって得られる。次いで溶融材料を型に注ぎ、得られる製品を引き続き、全く破砕を生じることなく製品を室温にまで冷却するという目的をもって制御された冷却サイクルに付す。このプロセスは当業者によって「アニーリング」と称されている。
【0005】
溶融鋳造製品の中で、高ジルコニア濃度を有する、即ち85%を超えるジルコニア(ZrO2)を含む電鋳製品は、ガラスを全く着色させることなく、また欠陥を全く生じることなく腐食に耐える能力があることが良く知られている。
【0006】
従来、高ジルコニア濃度を有する溶融鋳造製品は、製品中に存在するジルコニアおよびシリカからジルコンが生成するのを防ぐために酸化ナトリウム(Na2O)をも含んでいる。ジルコンの生成は有害である。というのは、これが20%に達する体積減少を伴い、これが亀裂に関与するある種の機械的束縛を生じるからである。
【0007】
Societe Europeenne des Produits Refractairesによって製造販売され、特許EP-B-403 387によってカバーされている製品ER-1195は、ガラス炉において今日広く用いられている。この製品の化学組成はおよそ94重量%のジルコニア、4または5重量%のシリカ、約1重量%のアルミナ、0.3重量%の酸化ナトリウムおよび0.05重量%未満のP2O5である。この組成は、ガラス炉において用いられている高濃度ジルコニア製品の典型である。
【0008】
FR 2 701 022は、7.0〜11.2重量%のSiO2、0.05〜1重量%のP2O5、0.05〜1.0重量%の酸化ホウ素B2O3および0.01〜0.12重量%のNa2O+K2Oを含む、高ジルコニア濃度を有する溶融鋳造製品を開示している。
【0009】
FR 2 723 583は、3〜8重量%のSiO2、0.1〜2重量%のAl2O3、0.05〜3重量%の酸化ホウ素B2O3、0.05〜3重量%のBaO+SrO+MgOおよび0.05〜0.6重量%のNa2O+K2O、および0.3重量%未満のFe2O3+TiO2を含む、高ジルコニア濃度を有する溶融鋳造製品を記載している。
【0010】
圧力(圧縮、張力または曲げ)を受ける材料のクリープは、粘塑性的に、換言するとこの負荷の影響下で永続的な様式でそれ自体を変形させる材料の能力として定義することができる。
【0011】
今日の高品質のガラスの開発によって、ガラス溶融炉のための耐熱製品に関する必要性が増大してきた。特に、クリープ特性および/または熱的変動に対する耐性が改善された耐熱製品、またはより一般的には、これらの2つの特性をより良く両立させる製品へのニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP-B-403 387
【特許文献2】FR 2 701 022
【特許文献3】FR 2 723 583
【特許文献4】仏国特許第1 208 577号
【特許文献5】仏国特許第1 208 577号追加第75893号
【特許文献6】仏国特許第1 208 577号追加第82310号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、このニーズを満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の主要な実施形態によれば、本発明は酸化物基準の重量百分率で全体を100%として、
- ZrO2+HfO2:100%までの残り
- SiO2:3.5%〜6.0%
- Al2O3:0.7%〜1.5%
- Na2O+K2O:0.10%〜0.43%
- B2O3:0.05%〜0.80%
- CaO+SrO+MgO+ZnO:<0.4%
- P2O5:<0.05%
- Fe2O3+TiO2:<0.55%
- 他の化学種:<1.5%
を含み、
Al2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比(A/N)が3.5以上であり、
B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比(B/N)が0.3〜2.5の間である、溶融鋳造耐熱製品を提供する。
【0015】
後で分かるように、驚くべきことに、本発明によって製造される耐熱製品は、熱的変動に対するその耐性を保持しつつ、優れたクリープ特性を示す。
【0016】
有利には、これらのクリープ特性によって、特にガラス溶融炉の融解タンクの壁を形成するブロックに関して、そのようなガラス溶融炉の起動(加圧下の温度上昇)の間に亀裂を生じることなしに容積を確保することが可能になる。
【0017】
有利には、熱的変動に対する耐性の増大によって、炉の運転停止によって起こる熱的変動にも関わらず、長期にわたって寸法的な安定性を保つガラス溶融炉の製造が可能になる。
【0018】
本発明の一実施形態によって製造される耐熱製品はまた、以下の選択的特徴が以下に記述する特定の製造方法に従って得られ、かつそのような選択的特徴が上述の特定の製造方法と矛盾しない場合には、以下の選択的特徴の1つまたは複数を含み得る。
- ZrO2+HfO2の重量百分率は95.65%未満もしくは95.4%未満もしくは95.3%未満もしくは95.2%未満もしくは95.0%未満もしくは94.5%未満、および/または90.4%超もしくは91.0%超もしくは92.0%超もしくは93.0%超もしくは94.0%超である。
- アルミナAl2O3の重量百分率は1.4%以下または1.3%以下である。
- アルミナAl2O3の重量百分率は0.8%以上または1.0%以上または1.1%以上である。
- B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比(B/N)は0.35を超え、0.4を超え、0.5を超え、0.6を超え、0.8を超え、0.9を超え、1.0を超え、および/または2.2以下、2.0未満、1.7未満、もしくは1.5未満である。
- Al2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比(A/N)は4を超え、好ましくは5を超え、もしくは6を超え、および/または10未満、もしくは8未満、もしくは7.5未満である。
- (Na2O+K2O)≧0.15%および/または(Na2O+K2O)≦0.40%もしくは(Na2O+K2O)≦0.30%、
- B2O3≧0.10%、もしくはB2O3≧0.12%、もしくはB2O3≧0.15%、および/またはB2O3≦0.50%、B2O3≦0.40%、もしくはB2O3≦0.30%。
- 酸化カリウムK2Oは不純物としてのみ存在し、その重量百分率は0.2%未満または0.1%未満である。
- 「他の化学種」の全重量%は1.0%未満、0.6%未満、0.5%未満、または0.3%未満である。
- 酸化鉄および/または酸化チタンおよび/または酸化カルシウムおよび/または酸化ストロンチウムおよび/または酸化マグネシウムおよび/または酸化亜鉛および/または酸化リンは不純物としてのみ存在する。
- 酸化カルシウムおよび/または酸化ストロンチウムおよび/または酸化マグネシウムおよび/または酸化亜鉛、CaO+SrO+MgO+ZnOの全重量百分率は0.3%未満、好ましくは0.2%である。
- 酸化鉄および/または酸化チタン、Fe2O3+TiO2の重量百分率は0.4%未満、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.2%未満である。
- 「他の化学種」は不純物のみから成っている。
- 「他の化学種」の重量百分率は、それが何であろうと、常に0.4%未満、または0.3%未満、好ましくは0.2%未満である。
【0019】
第1の好ましい実施形態によれば、本発明は酸化物基準の重量%で全体を100%として、
- ZrO2+HfO2:100%までの残り
- SiO2:3.5%〜6.0%
- Al2O3:0.7%〜1.5%
- Na2O+K2O:0.10%〜0.40%
- B2O3:0.05%〜0.80%
- CaO+SrO+MgO+ZnO:<0.4%
- P2O5:<0.05%
- Fe2O3+TiO2:<0.55%
- 他の化学種:<1.5%
を含み、
B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比(B/N)が0.3を超え、好ましくは0.35を超え、好ましくは0.4を超え、好ましくは0.5を超え、もしくは0.8を超え、もしくは1.0を超え、かつ2.5未満、2.2未満、2.0未満、もしくは1.5未満であり、
Al2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比(A/N)が3.5を超え、好ましくは4を超え、もしくは5を超え、もしくは6を超え、かつ15未満、12未満、10未満、8未満、もしくは7.5未満である、溶融鋳造耐熱製品を提供する。
【0020】
具体的には、Na2O+K2O≧0.15%および/またはNa2O+K2O≦0.30%である。
【0021】
第2の特定の実施形態によれば、本発明は酸化物基準の重量%で全体を100%として、
- ZrO2+HfO2:100%までの残り
- SiO2:3.5%〜6.0%
- Al2O3:0.7%〜1.5%
- Na2O+K2O:0.10%〜0.43%
- B2O3:0.05%〜0.60%
- CaO+SrO+MgO+ZnO:<0.4%
- P2O5:<0.05%
- Fe2O3+TiO2:<0.55%
- 他の化学種:<1.5%
を含み、
B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比(B/N)が0.3を超え、好ましくは0.35を超え、好ましくは0.4を超え、好ましくは0.5を超え、もしくは0.8を超え、もしくは1.0を超え、かつ2.5未満、2.2未満、2.0未満、もしくは1.5未満であり、
Al2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比(A/N)が3.5を超え、好ましくは4を超え、もしくは5を超え、もしくは6を超え、かつ15未満、12未満、10未満、8未満、もしくは7.5未満である、溶融鋳造耐熱製品を提供する。
【0022】
好ましくは、B2O3の重量百分率は0.10%以上、もしくは0.12%以上、もしくは0.15%以上、かつ0.50%以下、0.40%以下、もしくは0.30%以下である。
【0023】
第3の特定の実施形態によれば、本発明は酸化物基準の重量%で全体を100%として、
- ZrO2+HfO2:100%までの残り
- SiO2:3.5%〜6.0%
- Al2O3:1.1%〜1.5%
- Na2O+K2O:0.10%〜0.43%
- B2O3:0.05%〜0.80%
- CaO+SrO+MgO+ZnO:<0.4%
- P2O5:<0.05%
- Fe2O3+TiO2:<0.55%
- 他の化学種:<1.5%
を含み、
Al2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比(A/N)が3.5を超え、好ましくは4を超え、もしくは5を超え、もしくは6を超え、かつ15未満、12未満、10未満、8未満、もしくは7.5未満であり、
B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比(B/N)が0.3を超え、好ましくは0.35を超え、好ましくは0.4を超え、好ましくは0.5を超え、もしくは0.8を超え、もしくは1.0を超え、かつ2.5未満、2.2未満、2.0未満、もしくは1.5未満である、溶融鋳造耐熱製品を提供する。
【0024】
ある実施形態においては(Na2O+K2O)≧0.15%であり、好ましくは(Na2O+K2O)≦0.40%、もしくは(Na2O+K2O)≦0.30%でさえある。
【0025】
第4の特定の実施形態によれば、本発明は酸化物基準の重量%で全体を100%として、
- ZrO2+HfO2:100%までの残り
- SiO2:3.5%〜6.0%
- Al2O3:1.1%〜1.5%
- Na2O+K2O:0.10%〜0.40%
- B2O3:0.10%〜0.40%
- CaO+SrO+MgO+ZnO:<0.4%
- P2O5:<0.05%
- Fe2O3+TiO2:<0.55%
- 他の化学種:<1.5%
を含み、
B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比が0.3〜2.5の間、好ましくは0.4〜2.2の間である、溶融鋳造耐熱製品を提供する。
【0026】
ある実施形態においては(Na2O+K2O)≧0.15%および/または(Na2O+K2O)≦0.30%である。
【0027】
ある実施形態においてはB2O3≧0.15%および/またはB2O3≦0.30%である。
【0028】
第2の特定の実施形態によれば、本発明は酸化物基準の重量%で全体を100%として、
- ZrO2+HfO2:100%までの残り
- SiO2:3.5%〜6.0%
- Al2O3:1.1%〜1.5%
- Na2O+K2O:0.10%〜0.43%
- B2O3:0.05%〜0.80%
- CaO+SrO+MgO+ZnO:<0.4%
- P2O5:<0.05%
- Fe2O3+TiO2:<0.55%
- 他の化学種:<1.5%
を含み、
B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比が0.3〜2.5の間、好ましくは0.4〜2.2の間である、溶融鋳造耐熱製品を提供する。
【0029】
特定の実施形態においては(Na2O+K2O)≦0.40%である。
【0030】
必要なものであれ、選択的なものであれ、本発明の第1の好ましい実施形態に従って製造される製品の特徴は、そのような特徴がそのような製品と矛盾しないものであれば、第2の特定の実施形態に従って作成される製品にも適用することができる。
【0031】
最後に、本発明は以下の一連の段階を含む、本発明による耐熱製品のための製造方法に関する:
a)最初の仕込み物を得るために原料を混合する段階、
b)溶融材料を得るまで前記仕込み物を溶融する段階、
c)耐熱製品を得るために冷却することによって前記溶融材料を鋳造固化する段階、
この方法は、得られる耐熱製品が発明の範囲に入るような様式で原料を選択する限り、注目に値する。
【0032】
好ましくは、それについて最小必要濃度がなければならない酸化物、具体的にはNa2O、Al2O3およびB2O3、またはこれらの酸化物の前駆体は、系統的かつ整然と添加される。好ましくは、通常不純物と考えられる他の酸化物の供給源の中のこれらの酸化物の濃度が考慮される。
【0033】
好ましくは、冷却段階は好ましくは20℃/hr未満の速度、好ましくは約10℃/hrの速度で実施されるように制御される。
【0034】
本発明はまた、特に溶融ガラスに接触することが意図された領域における、本発明による耐熱製品、または本発明による方法に従って製造された、もしくは製造され得る耐熱製品を含むガラス溶融炉に関する。本発明によって製造された炉において、耐熱製品は有利には溶融ガラスのため、より具体的には電気溶融のための準備タンクの部品であってよく、この場合、耐熱製品は1200℃を超える温度で溶融ガラスと接触する可能性がある。
【0035】
定義
酸化物の重量百分率は、工業規格に従って最も安定な酸化物の形態で表されたそれぞれの対応する化学元素の全体的な濃度に関連する。この中には、任意のサブ酸化物、場合により窒化物、炭化物、オキシ炭化物、炭窒化物または上述の元素の金属種までも含まれる。
【0036】
「溶融材料」は、その形態を保存するために容器内に保持しなければならない液体塊を意味する。この材料はいくらかの固体粒子を含んでもよいが、その量は、この塊に任意の構造を与えるためには不充分と思われる量のみである。
【0037】
「不純物」は、原料に関連してまたはこれらの成分の間の反応の結果として、意図的でなくまたやむを得ず導入された任意の避けられない成分を意味する。不純物は必要な要素ではなく、容認されるに過ぎない。たとえば、酸化物、窒化物、オキシ窒化物、炭化物、オキシ炭化物、炭窒化物ならびに鉄、チタン、バナジウムおよびクロムの金属種の群の中の化合物は、不純物である。
【0038】
他に記述しなければ、記載され特許請求される製品に含まれる酸化物の全体は酸化物基準の重量%である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明による溶融鋳造製品においては、ジルコニアZrO2の濃度が高いので、ガラス製品に着色を起こさず、ガラスの品質に有害な欠陥を生じることなしに、腐食に対する高い耐性の要求を満たすことが可能となる。
【0040】
本発明による製品中に存在する酸化ハフニウム、HfO2、は、ジルコニアの供給源に天然に存在する酸化ハフニウムである。したがって、本発明による製品中の酸化ハフニウムの濃度は5%以下、一般には2%以下である。
【0041】
シリカSiO2の存在によって、ジルコニアの可逆的同素変態の間、換言すれば単斜相から正方相への経過の間の、ジルコニアの体積変動に効果的に適合しやすい粒子間ガラス相の形成が特に可能になる。シリカの重量百分率は3.5%を超えるべきである。一方、シリカの添加は6.0%を超えるべきではない。というのは、この添加がジルコニア含量に不利益を生じ、したがって耐腐食性を低下させることがあるからである。
【0042】
アルミナAl2O3の存在は安定なガラス相の形成のためおよび鋳型に入れる最初の仕込み物の適切な成型性のために特に必要である。これは、熱的変動に対する非常に良好な耐性を得ることにも寄与する。しかしながら、アルミナの添加は1.5%を超えるべきではない。というのは、重量百分率が高いと特に酸化ホウ素の存在時にガラス相が不安定になる(ムライト結晶形成)ことがあるからである。
【0043】
重量百分率で0.10%を超えるNa2O+K2Oの存在は、熱的変動に対する耐性のレベルを増大させることに寄与する。クリープ容量を増大させるために、Na2Oの重量百分率は0.30%を超えないことが好ましい。本発明による製品においては、酸化物Na2OおよびK2Oは同様の効果を有すると考えられる。
【0044】
重量百分率で0.05%を超えるB2O3の存在は、クリープ容量を実質的に増大させる。しかしながら、B2O3の量はB2O3/(Na2O+K2O)の比が2.5以下、好ましくは2.2以下であるように保たれるべきである。酸化ホウ素は製品中のジルコンの形成を促進するので、正に好ましくない影響を有している。0.30%を超えると、熱的変動に対する耐性が低下する。しかし、これはB2O3の重量百分率0.80%までは許容できる。
【0045】
本発明によれば、Fe2O3+TiO2の重量百分率は0.55%未満で、P2O5の重量百分率は0.05%未満である。正にこれらの酸化物は有害であることが知られており、それらの含量は原料中に見出される微量の不純物に限定するべきである。
【0046】
「他の化学種」は、上で列挙していない化学種、換言すればZrO2、HfO2、SiO2、Al2O3、Na2O、K2O、B2O3、CaO、SrO、MgO、ZnO、P2O5、Fe2O3およびTiO2以外の化学種である。一実施形態においては、他の化学種は、その存在が特に望まれず、原料中に不純物として一般に存在する化学種に限定される。
【0047】
別の実施形態においては、「他の化学種」はその存在が有利であるいくつかの化学種を同様に含んでもよい。たとえばある実施形態においては、製品は有利に少なくとも0.05%の酸化バリウムBaOを含む。この酸化物は不純物であってもよく、または必要であれば最初の仕込み物に任意に添加してもよい。その濃度は好ましくは酸化物基準の重量%で0.5%未満である。
【0048】
本発明によれば、製品は通常、下に述べる以下のステップa)〜c)によって製造することができる。
a) 最初の仕込み物を得るための原料の混合、
b)溶融材料を得るまでの前記仕込み物の溶融、
c)本発明による耐熱製品が得られるように冷却することによる前記溶融材料の固化。
【0049】
ステップa)においては、原料は最終製品中の酸化物含量が保証されるように選択される。
【0050】
ステップb)においては、溶融は好ましくは還元を全く引き起こさない充分に長い電気アークと製品の再酸化に好都合な攪拌との総合作用によって行なわれる。
【0051】
金属性の外観を有する団塊の形成を最小化し、最終製品における亀裂または割れ目の形成を避けるために、酸化条件下で溶融を実施することが好ましい。
【0052】
好ましくは、フランス特許第1 208 577号ならびにその追加である第75893号および第82310号に記載された、長いアークを用いる溶融プロセスが用いられる。
【0053】
このプロセスは、仕込み物と仕込み物から分離された少なくとも1つの電極との間にアークが流れる電気アーク炉を用い、アークの長さをその還元作用が最小になるように調整し、その間、アークそれ自体の作用によるか、または浴中に酸化性気体(たとえば空気もしくは酸素)の気泡を吹き込むか、または過酸化物もしくは硝酸塩などの酸素放出性物質を浴に添加するかのいずれかによって、前記浴を攪拌しながら溶融浴の上部の酸化性雰囲気を保つことからなる。
【0054】
ステップc)においては、冷却は好ましくは20℃/hr未満の速度で、好ましくは約10℃/hr未満の速度で実施される。
【0055】
最初の仕込み組成によって本発明による製品に合致する組成を有する製品を得ることが可能である限り、ガラス溶融炉における使用を意図した任意の通常のジルコニア系溶融製品の製造プロセスを用いることができる。
【実施例】
【0056】
本発明を説明するために、以下の非限定的な実施例を提示する。
【0057】
これらの実施例においては、以下の原料を用いる:
- 重量平均で第1に98.5%のZrO2+HfO2、0.2%のSiO2および0.02%のNa2Oを含むジルコニア、
- 33%のシリカを有するジルコン砂、
- Pechineyによって販売されている、平均99.4%のアルミナAl2O3を含むAC44型アルミナ、
- 99%を超える純度を有するホウ素およびナトリウムの酸化物。
【0058】
製品は、従来のアーク炉溶融のプロセスに従い、次いで220mm×450mm×150mmのブロックを得るために鋳造して調製した。
【0059】
得られる製品の化学分析値をTable 1(表1)に示す。これは重量百分率で表した平均化学分析値である。
【0060】
「非等温」という表題を付けたクリープ試験において、4加圧点曲げ試験構成を用いる(外側加圧点間の距離L=125mm、内側加圧点間の距離I=40mm)。加圧点の上に25mm×15mm×150mmのディメンジョンストリップを置き、次いで1MPaの力を加え、温度を周囲温度から1500℃まで、30℃/hrの速度で上昇させる。全試験の間、ストリップの上の矢印の変動を(mmで)記録する。特に、ジルコニアの同素変態および1400℃において矢印を測定し、ジルコニアの同素変態の前の矢印に対するジルコニアの同素変態の後の矢印の百分率増加に等しいDTz値と、周囲温度における矢印に対する1400℃における矢印の百分率増加に等しいD1400とを決定する。
【0061】
熱的変動に対する耐性は、30mm×30mm×30mmの寸法を有する試料を800℃〜1250℃の間で25サイクルに供することからなる試験によって測定する。各サイクルにおいて試料は800℃に1時間保ち、温度を1時間で1250℃に上げ、この温度に1時間保つ。示されるVvの値は試験の最初と最後との間の、%で与えられる体積増加に対応する。
【0062】
以下のTable 1(表1)において、*は例が本発明の範囲外であることを示し、NDは<試験せず>を意味する。
【0063】
例1は参照を構成する製品ER1195に対応する。
【0064】
【表1】

【0065】
この結果は、本発明の試験した製品は優れた性質のパターンを提供することを示している。特に、クリープはジルコニアの同素変態温度において0.5%を超え、Vvの値は10%未満に留まっている。本発明による製品のクリープ容量は参照製品(例1)のクリープ容量より少なくとも2倍大きいことが観察される。
【0066】
Table 1(表1)は、本発明による製品組成の範囲が特に狭いことを示している。特に、アルカリ金属酸化物、酸化ホウ素およびアルミナの濃度の変化に関して、結果において大きな影響が観察される。
【0067】
例6〜9および13と例4との比較により、熱的変動への耐性レベルの増大を維持するために最小量のアルカリ金属酸化物、この場合には酸化ナトリウムの存在が重要であることが示される。
【0068】
例6〜9および13と例1との比較により、クリープ容量の増大を得るために最小量の酸化ホウ素の存在が重要であることが示される。しかし、例6〜9および13と例3、10および11との比較により、B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比(B/N)を2.5未満とするためおよび熱的変動に対する耐性の劣化を避けるために、この量を制限すべきであることが示される。
【0069】
例6〜9および13と例2および12との比較により、熱的変動に対する耐性の劣化を避けるために最小量のアルミナの存在が重要であることが示される。
【0070】
さらに他の試験により、本発明による製品はまた、高ジルコニア濃度を有する材料について認められる他の特性、特にガラスによる腐食に対する耐性を提供することが実証された。
【0071】
当然のことながら、本発明は非限定的な説明用実例として提示される、記述し説明した実施形態に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準の重量%で全体を100%として、
- ZrO2+HfO2:100%までの残り
- SiO2:3.5%〜6.0%
- Al2O3:0.7%〜1.5%
- Na2O+K2O:0.10%〜0.43%
- B2O3:0.05%〜0.80%
- CaO+SrO+MgO+ZnO:<0.4%
- P2O5:<0.05%
- Fe2O3+TiO2:<0.55%
- 他の化学種:<1.5%
を含み、
Al2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比が3.5以上であり、
B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比が0.3〜2.5の間である、
溶融鋳造耐熱製品。
【請求項2】
Al2O3≧1.1%である、請求項1に記載の溶融鋳造耐熱製品。
【請求項3】
酸化物基準の重量百分率で全体を100%として、
- ZrO2+HfO2:100%までの残り
- SiO2:3.5%〜6.0%
- Al2O3:1.1%〜1.5%
- Na2O+K2O:0.10%〜0.43%
- B2O3:0.05%〜0.80%
- CaO+SrO+MgO+ZnO:<0.4%
- P2O5:<0.05%
- Fe2O3+TiO2:<0.55%
- 他の化学種:<1.5%
を含み、
B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比が0.3〜2.2の間である、
溶融鋳造耐熱製品。
【請求項4】
B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比が0.5を超える、請求項1から3のいずれか一項に記載の溶融鋳造耐熱製品。
【請求項5】
B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比が0.8を超える、請求項1から4のいずれか一項に記載の溶融鋳造耐熱製品。
【請求項6】
B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比が1.0を超える、請求項1から5のいずれか一項に記載の溶融鋳造耐熱製品。
【請求項7】
B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比が2.2未満である、請求項1から6のいずれか一項に記載の溶融鋳造耐熱製品。
【請求項8】
B2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比が1.5未満である、請求項7に記載の溶融鋳造耐熱製品。
【請求項9】
(Na2O+K2O)≦0.40%および/またはB2O3≦0.60%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の溶融鋳造耐熱製品。
【請求項10】
(Na2O+K2O)≦0.30%および/またはB2O3≦0.30%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の溶融鋳造耐熱製品。
【請求項11】
(Na2O+K2O)≧0.15%および/またはB2O3≧0.15%である、請求項1から10のいずれか一項に記載の溶融鋳造耐熱製品。
【請求項12】
Al2O3/(Na2O+K2O)の重量百分率の比が6を超える、請求項1から11のいずれか一項に記載の溶融鋳造耐熱製品。
【請求項13】
「他の化学種」の全重量百分率が0.5%未満である、請求項1から12のいずれか一項に記載の溶融鋳造耐熱製品。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の耐熱製品を含むガラス溶融炉。
【請求項15】
前記耐熱製品が1200℃を超える温度で溶融ガラスと接触することが意図される領域に設置される、請求項14に記載の炉。
【請求項16】
請求項14または15に記載の炉のクリープ耐性を増大させるための、請求項1から13のいずれか一項に記載の溶融鋳造耐熱製品の使用。

【公表番号】特表2011−524331(P2011−524331A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514099(P2011−514099)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051141
【国際公開番号】WO2009/153517
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(506426269)サン−ゴベン・セントル・ドゥ・レシェルシェ・エ・デチュード・ユーロペアン (42)