説明

高分子アクチュエータ

【課題】 産業機器や医療機器の分野において小型でかつ軽量で柔軟性に富む、高分子アクチュエータを提供する。
【解決手段】 スルホン酸基を有する芳香環が電子吸引性連結基で連なる構造の側鎖を有する高分子スルホン酸からなる高分子電解質を高分子アクチュエータのイオン交換樹脂として用いる。該側鎖は、分岐側鎖でも非分岐側鎖でもよいが、分岐側鎖が好ましい。電子吸引性連結基は、−CO−、−CONH−、−(CF)p−(pは1〜10の整数)、−C(CF−、−COO−、−SO−、−SO− から選ばれるものである。そして、少なくともスルホン酸基を2個以上導入された側鎖を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂として高分子電解質を用いるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器や医療機器の分野においては、小型・軽量なアクチュエータが求められている。エネルギーを運動に変える機構としては、電気モータや内燃機関のような慣性力を利用する機構がよく用いられてきたが、アクチュエータの小型化に伴い、慣性力よりも摩擦や粘性力が支配的となるため、前記電気モータや内燃機関を超小型アクチュエータの動力として用いることは困難であった。それゆえ、小型アクチュエータの作動機構として、(1)静電引力型、(2)圧電型、(3)超音波式、(4)形状記憶合金式、(5)高分子伸縮式などが提案されている。
【0003】
しかしながら、前記(1)〜(5)の超小型アクチュエータには、それぞれ作動環境に制限があったり、応答性が不充分であったり、構造が複雑であったり、また柔軟性が欠如しているなどの問題点があった。たとえば、高分子伸縮式アクチュエータを作動させるには、高分子が接触している溶液を他の塩類を含む溶液に交換する必要があり、このため小型で高速な応答を必要とする用途には利用困難であった。
これに対し、小型化が容易であり、応答性が速く、しかも小電力で作動する高分子アクチュエータとして、イオン交換膜とこのイオン交換膜の表面に接合した電極とからなり、イオン交換膜の含水状態においてイオン交換膜に電位差をかけてイオン交換膜に湾曲および変形を生じさせることによりアクチュエータとして機能することができる高分子アクチュエータが提案されている(特許文献1参照)。また、該高分子アクチュエータの製造方法が種々提案されている(例えば、特許文献1〜6)
この高分子アクチュエータは、イオン交換樹脂の含水物を一組以上の金属電極間に配置してなるものであり、金属電極間に電位差をかけることによりイオン交換樹脂に湾曲および変形を生じさせる。
【0004】
このような高分子アクチュエータに金属電極を形成する方法としては、イオン交換樹脂へのめっき(化学めっき、電気めっき)、真空蒸着、スパッタリング、塗布、圧着、溶着などが用いられる。
該高分子アクチュエータに用いられるイオン交換樹脂としては、従来、カチオン交換樹脂が、高分子アクチュエータの変位量を大きくすることができるとされ、使用されてきた。このようなカチオン交換樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレンなどにスルホン酸基などの官能基が導入された炭化水素系カチオン交換樹脂や、フッ素樹脂にスルホン酸基、カルボキシル基などの官能基が導入されたフッ素系カチオン交換樹脂が用いられてきた。
また、カチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン等の金属イオン(非特許文献1)や、アルキルアンモニウムイオン(特許文献7)などが用いられている。
ポリマーは、プロトン伝導性を向上すべくスルホン酸化率を高めると水溶性となる問題がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平4−275078号公報
【特許文献2】特開平9−32718号公報
【特許文献3】特開平11−206162号公報
【特許文献4】特開平11−235064号公報
【特許文献5】米国特許公開2004/0242709号明細書
【特許文献6】特開2002−330598号公報
【特許文献7】特開平11−280639号公報
【非特許文献1】Electrochim. Acta, vol. 46, 737 (2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これまで用いられてきたカチオン交換樹脂を用いる高分子アクチュエータは、変位量が充分ではなかった。そのため、さらに大きな変位量を発生することが可能な高分子アクチュエータの出現が望まれていた。カチオン交換樹脂として炭化水素系カチオン交換樹脂が用いられる場合、長期間使用時に、空気中の酸素によるカチオン交換樹脂の劣化が原因と考えられる特性の低下が見られる。一方、また、カチオン交換樹脂としてフッ素系交換樹脂を用いる場合には、使用時および廃棄時に発生するフッ素イオンの処理が問題となる。
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、(1)変位量および変位力が大きく、応答が速く、柔軟で、しかも構造が簡単で、小型化が容易、かつ、(2)特性の低下なしに長時間安定して作動し、(3)ハロゲンイオンを発生しない、高分子アクチュエータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、スルホン酸が置換した芳香環が電子吸引性連結基で連なる特定構造の側鎖を有する高分子スルホン酸からなる高分子電解質からなるイオン交換樹脂を用いることで、その目的に適合しうることを見いだし、この知見に基づいて本発明をなすに至った。本発明に係る高分子アクチュエータは、前記特定の高分子電解質からなるイオン交換樹脂の含水物を一組以上の金属電極間に配置してなるアクチュエータであり、前記金属電極間に電位差をかけて、イオン交換樹脂に湾曲および変形を生じさせることによりアクチュエータとして機能するものである。
【0008】
このようにイオン交換樹脂として特定の高分子電解質からなるイオン交換樹脂を用いることにより、従来のカチオン交換樹脂が用いられている高分子アクチュエータと比べて、変位量が大きくなる。その機構は明らかではないが、本発明で用いる高分子電解質は、従来のカチオン交換樹脂と比較してイオン交換容量を高くすることが可能であることと、さらに含水率を高くすることが可能であり、そのためイオンに伴われて水分子が電極に移動する際の、成型品の膨潤に由来する伸びが大きいこと、などにより変位量が大きくなるものと推察される。
【0009】
また、本発明の高分子アクチュエータは、特性の変化なしに長時間安定して作動する。その機構は定かではないが、次のように考えられる。本発明のカチオン交換樹脂は、前記のように、スルホン酸が置換した芳香環が電子吸引性連結基で連なる特定構造の側鎖を有している。電子吸引基で芳香環を連結させることにより、芳香環の耐酸化性が向上しているものと推察され、したがって、酸素存在下で長時間作動しても、劣化が少なく長時間安定に作動するものと考えられる。
さらに、本発明の高分子アクチュエータは、フッ素系カチオン交換樹脂と異なり、ハロゲンを含有しないか、含有していても低濃度である。したがって、使用時および廃棄時に発生するハロゲンはないか、あっても極少ない。
【0010】
すなわち本発明は、以下の通りである。
1.下記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)を有するイオン交換樹脂の含水物を一組以上の金属電極間に配置してなるアクチュエータ。
【0011】
【化1】

【0012】
(Yは(k+2)価の芳香族残基を表し、Pは −CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CONH−、−C(CF−、単結合から選ばれる連結基であり、kは1〜4の整数であって、式中の側鎖部分Zは、下記一般式(2)で表される。
Z=−(XAr(B))−(XAr(B))−・・・−(Xn−1Arn−1(Bn−1))−(XAr) (2)
上記一般式(2)中のB〜Bn−1は、側鎖部分Zにおける分岐鎖を意味し、以下の式で表される。
=−〔(XAr(B))−(XAr(B))−・・・−(Xn−1Arn−1(Bn−1))−(XAr)〕
=−〔(XAr(B))−・・・−(Xn−1Arn−1(Bn−1))−(XAr)〕



n−1=−〔XAr
上記一般式(2)中
nは各々独立に2〜5の整数、
fは各々独立に0〜5の整数、
Ar〜Arは各々独立に芳香族残基であって、
〜Xは各々独立に−CO−、−CONH−、−(CF−(pは1〜10の整数)、−C(CF−、−COO−、−SO−、−SO−から選ばれる連結基である。
そして、Zは−SOH基の1.0を超える数を有する。)
【0013】
2.Pが −CO−、−O−、−S−、−SO−、−C(CF−から選ばれる連結基であることを特徴とする前項1記載の高分子アクチュエータ。
3.kが1〜2の整数であり、fが各々独立に0〜2の整数であることを特徴とする前項1または2記載の高分子アクチュエータ。
4.少なくとも一つのfが1または2であることを特徴とする前項3記載の高分子アクチュエータ。
5.fが0または1であり、少なくとも一つのfが1であることを特徴とする前項3記載の高分子アクチュエータ。
【発明の効果】
【0014】
本発明の高分子アクチュエータは、(1)変位量および変位力が大きく、応答が速く、柔軟で、しかも構造が簡単で、小型化が容易、かつ、(2)特性の低下なしに長時間安定して作動し、(3)ハロゲンイオンを発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。図1は、本発明の高分子アクチュエータの例を示す概略断面図である。図1において高分子アクチュエータ1は、平板状のイオン交換樹脂2と、該イオン交換樹脂2の表面に相互に絶縁状態で形成された電極3−1、3−2
を備えている。この電極3−1、3−2には、開閉器5および電源6に接続されている一対のリード線4−1、4−2の一端がそれぞれ電気的に接続されている。イオン交換樹脂2の含水状態において、前記電極間に電位差をかけることにより、すなわち、開閉器5を閉じることにより、図2に示すようにイオン交換樹脂2を湾曲および変形させることができる。
【0016】
なお、本発明のような高分子アクチュエータの作動原理は次のように考えられている(例えば特許文献7)。図2に示すように金属電極間に配置されたイオン交換樹脂2に電位差が与えられることにより、該イオン交換樹脂2中のカチオン7がマイナス極側に移動する。この際、該カチオンに伴われて水分子が移動したマイナス極側において含水率が高まるため、マイナス極は膨潤して伸び、逆に、含水率が低下するためプラス極は収縮する。それにより、イオン交換樹脂2が湾曲すると考えられている(特許文献7)。
なお、イオン交換樹脂2としては、上記矩形平板状に限定されるものでではなく、膜状、円柱状、円筒状のものなど、任意の形状であってよい。本発明では、このようなイオン交換樹脂2が、少なくとも下記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)を有する高分子電解質を含むことを特徴とする。
【0017】
【化2】

【0018】
上記一般式(1)中、kは通常1〜4の整数であって、好ましくは1または2である。上記一般式(1)中、Yは(k+2)価の芳香族残基であり、例えば、下記一般式(7)に示す3価の芳香族残基、下記一般式(8)に示す4価の芳香族残基、下記一般式(9)に示す5価の芳香族残基などが挙げられる。これら芳香族残基の水素原子がアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、−CN、−NO2 、−COR、−COO R(Rは水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基から選ばれる。)、−CONRR’(R’はRと同様である。)、−SO3 R、−SOR、−SO2 Rで置換されていてもよく、F、パーフルオロアルキル、−CN、−NO2 、−COR、−COO R、−CONRR’、−SO3 R、−SOR、−SO2 R等の電子吸引基が置換していることが好ましい。
【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

【0021】
【化5】

【0022】
上記一般式(7)〜(9)における2価の基Qは−CO−、−COO−、−O−、−S−、−SO−、−SO2 −、−CCR12−(R1 は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基から選ばれる)、単結合から選ばれ、好ましくは−CO−、−O−、−S−、−SO2 −から選ばれる。
上記一般式(1)中、Pは −CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CONH−、−C(CF−、単結合から選ばれる連結基であり、好ましくは、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−C(CF−から選ばれる連結基であり、さらに好ましくは−CO−、−O−、−S−、−SO−から選ばれる連結基である。
【0023】
上記一般式(1)中の側鎖部分Zは、下記一般式(2)で表される。
Z=−(XAr(B))−(XAr(B))−・・・−(Xn−1Arn−1(Bn−1))−(XAr) (2)
式(2)中のB〜Bn−1は、側鎖部分Zにおける分岐鎖を意味し、以下の式で表される。
=−〔(XAr(B))−(XAr(B))−・・・−(Xn−1Arn−1(Bn−1))−(XAr)〕
=−〔(XAr(B))−・・・−(Xn−1Arn−1(Bn−1))−(XAr)〕



n−1=−〔XAr
【0024】
上記一般式(2)式中nはそれぞれ独立に2〜5から選ばれる整数を表し、好ましくは2〜4から選ばれ、さらに好ましくは2〜3から選ばれる。fはそれぞれ独立に0〜5から選ばれる整数を表し、好ましくは0〜2から選ばれ、かつ、少なくとも一つのfが1または2であり、さらに好ましくは0〜1から選ばれ、かつ、少なくとも一つのfが1であ
る。
上記一般式(2)において、fが1以上である場合、上記一般式(2)で表される側鎖は芳香族残基Ar〜Arn−1 において分岐構造をとるが、その際、各分岐鎖は各々異なった鎖長および分岐構造をとることもできる。すなわち、本発明の上記一般式(2)で表される側鎖は、例えば、下記一般式(10)に示す構造をとることができる。
【0025】
【化6】

【0026】
上記一般式(2)におけるAr〜Arn-1は(f+2)価の芳香族残基を表し、例えば下記一般式(11)に示す2価の芳香族残基、上記一般式(7)に示す3価の芳香族残基、上記一般式(8)に示す4価の芳香族残基、上記一般式(9)に示す5価の芳香族残基などが挙げられる。これら芳香族残基の水素原子がアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、−CN、−NO2 、−COR、−COO R(Rは水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基から選ばれる。)、−CONRR’(R’はRと同様である。)、−SO3 R、−SOR、−SO2 Rで置換されていてもよく、F、パーフルオロアルキル、−CN、−NO2 、−COR、−COO R、−CONRR’、−SO3 R、−SOR、−SO2 R等の電子吸引基が置換していることが好ましい。また、Ar〜Arn-1 は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0027】
【化7】

【0028】
さらに上記一般式(1)におけるArは側鎖末端のアリール基を表し、例えば、下記一般式(12)に示すアリール基が挙げられ、当該アリール基の水素原子がアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、−CN、−NO2 、−COR、−COO R(Rは水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基から選ばれる。)、−CONRR’(R’はRと同様である。)、−SO3 R、−SOR、−SO2 Rで置換されていてもよく、Arは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0029】
【化8】

【0030】
また上記一般式(1)におけるX〜Xは2価の電子吸引基を表し、例えば、−CO−、−CONH−、−(CF2 p −(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CF3 2 −、−COO−、−SO−、−SO2 −などが挙げられ、好ましくは−CO−、−C(CF3 2 −、−SO−、−SO2 −さらに好ましくは−CO−、−SO−、−SO2 −などが用いられる。X〜Xは互いに同じであっても異なっていてもよい。本発明の上記一般式(1)中、Zで表される側鎖の具体例としては、例えば、下記一般式(13)の基が挙げられる。
【0031】
【化9】

(上記式中、スルホン酸基は記載していない。)
【0032】
本発明で用いられる高分子電解質としては、通常、非分岐型側鎖、分岐型側鎖から選ばれる側鎖が用いられ、好ましくは分岐型側鎖が用いられる。分岐型側鎖は、(i)スルホン化が容易な末端芳香環の数が多く、親水性のスルホン酸基を同一側鎖に複数導入することが可能であり、それゆえ含水率を高くすることができるものと考えられる。
上記一般式(2)において、fが1以上である場合、上記一般式(2)で表される側鎖
は芳香族残基Ar〜Arn−1 において分岐構造をとるが、その際、各分岐鎖は各々異なった鎖長および分岐構造をとることもできる。すなわち、本発明の上記一般式(2)で表される側鎖は、例えば、式(10)に示す構造をとることができる。
【0033】
本発明で用いる高分子電解質は、少なくとも上記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)を有し、通常、上記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)を1〜100モル%、好ましくは5〜95モル%、さらに好ましくは10〜80モル%、特に好ましくは15〜75モル%含み、その重量平均分子量が1000〜100万、好ましくは1万〜100万、さらに好ましくは2万〜80万、特に好ましくは3万〜40万の重合体である高分子電解質が挙げられる。
【0034】
本発明で用いる高分子電解質の製造方法は特に限定されるものではない。例えば、
(M1)高分子に側鎖導入剤を反応させて側鎖を導入する方法
上記一般式(1)においてZが置換していない構造に相当する、−Y−P−(Yは2価の芳香族残基、Pは前記のとおり)を繰り返し単位として有する高分子へ側鎖導入剤を反応させてZを導入させても良いし、予め反応性の置換基を導入した−Y(M)−P−(Yは3価の芳香族残基、Mは反応性基、Pは前記のとおり)に、Mと反応する側鎖導入剤を反応させることによりZを導入しても良い。
(M2)少なくとも側鎖を有するモノマーを重合させて製造する方法
【0035】
繰り返し構造単位(A)に対応するモノマーおよび他の繰り返し単位に対応するモノマーを重合することによっても得られるし、繰り返し単位(A)に対応するモノマーや他の繰り返し単位に対応するモノマーからまずオリゴマーを合成し、次に当該オリゴマー同士または当該オリゴマーとモノマーを反応させることにより得ることもできる。また、繰り返し単位(A)と一つのまたは複数の他の繰り返し単位が連結した構造に対応するモノマーを予め合成し、このものの単独重合や、このものと他の繰り返し構造に対応するモノマーとの重合によって合成することもできる。
前記方法(M1)の通常用いられる具体例を次に示す。すなわち、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子と下記一般式(4)で表される側鎖導入剤を反応させることにより、上記一般式(1)で示される高分子電解質を製造することができる。なお、この場合には、上記一般式(2)におけるXは−CO−および−SO−から選ばれる。
【0036】
【化10】

【0037】
上記一般式(3)において、YおよびPは上記一般式(1)に記載のものと同様であり、Uは水素原子、−COX、−SOXから選ばれる反応性基であり、Xはハロゲン原子、OR(Rは水素原子、アルキル基、またはアリール基)、水酸基から選ばれる。
Z’−V (4)
上記一般式(3)のUが水素原子の場合、Vは−COX、−SOXから選ばれる反応性基であり、Uが−COX、−SOXから選ばれる反応性基である場合には、Vは水素原子であり、Z’は、下記一般式(5)で表される。
Z’=−(Ar(B))−(XAr(B))−・・・−(Xn−1Arn−1(Bn−1))−(XAr) (5)
上記一般式(5)中、Ar、B、nは上記一般式(2)に記載のものと同様であり、Xは
上記一般式(2)に記載の連結基及び連結基前駆体から選ばれる。)
連結基前駆体とは、連結基に変換することのできる基をいう。連結基前駆体を連結基に変換する方法としては公知の方法を用いることができる。表1に例を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
連結基前駆体を連結基に変換するのはいずれの時点でもよいが、好ましくは次の方法が用いられる。すなわち、前記一般式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子と前記一般式(4)で表される側鎖導入剤を反応させるに際し、
(i)側鎖導入剤がスルホン酸基またはその前駆体を有せず、かつ、側鎖導入剤のXが、電子供与性の連結基前駆体であって、高分子と反応後、スルホン酸化を行い、続いて連結基前駆体を電子吸引性の連結基に変換することにより、または、
(ii)側鎖導入剤がスルホン酸基またはその前駆体を有し、かつ、側鎖導入剤のXが、(ii−1)電子供与性の連結基前駆体である場合には、続いて連結基前駆体を電子吸引性の連結基に変換することにより、(ii−2)電子吸引性の連結基である場合には、その状態で、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子電解質を得る方法である。
【0040】
本発明で使用する、上記一般式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子の例を以下に示す。
Uが水素原子のもの:上記一般式(11)で示される残基から選ばれる2価芳香族残基と、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CONH−、−C(CF−、単結合から選ばれる連結基Pの組み合わせからなる高分子が通常用いられ、好まし
くは、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレンから選ばれる2価芳香族残基と−CO−、−O−、−S−、−SO−から選ばれる連結基Pの組み合わせが用いられ、より好ましくはポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリチオエーテルケトン、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトンが用いられ、さらに好ましくは、下式で表される高分子においてZが水素原子のものが用いられる。
【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
Uが−COXまたは−SOXのもの:上記一般式(11)で示される残基から選ばれる2価芳香族残基と、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CONH−、−C(CF−、単結合から選ばれる連結基Pの組み合わせからなる高分子に−COXまたは−SOXを導入したものが通常用いられ、好ましくは、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレンから選ばれる2価芳香族残基と−CO−、−O−、−S−、−SO−から選ばれる連結基Pの組み合わせの高分子に−COXまたは−SOXを導入したものが用いられ、より好ましくはポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリチオエーテルケトン、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトンに−COXまたは−SOXを導入したものが用いられ、さらに好ましくは、上式で表される高分子においてZが−COXまたは−SOXを導入したものが用いられる。(−COXまたは−SOXの導入には公知の導入方法を用いることができる。)。上記一般式(3)UのCOX、SOXにおけるXは、通常、ハロゲン原子、OR(Rは水素原子、アルキル基、またはアリール基)、水酸基から選ばれ、好ましくは、ハロゲン原子、水酸基から選ばれる。上記一般式(4)で表される側鎖導入剤の例を次に示す。
側鎖導入剤がスルホン酸基またはその前駆体を有し、かつ、側鎖導入剤のXが電子吸引性の連結基であり、さらに、Vが−COX、−SOXから選ばれる反応性基である場合の、好ましいZ’−Vの例を下記一般式(14)および下記一般式(15)に示す。さらに好ましいZ’−Vは下記一般式(15)に示す分岐構造である。(式中、−SORはスルホン酸基またはその前駆体を表し、Rは水酸基、アルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属から選ばれる。)
【0044】
【化13】

【0045】
【化14】

【0046】
側鎖導入剤がスルホン酸基またはその前駆体を有せず、かつ、側鎖導入剤のXが、電子供与性の連結基前駆体であり、さらに、Vが−COX、−SOXから選ばれる反応性基である場合の、好ましいZ’−Vの例を下記一般式(16)および下記一般式(17)に示す。さらに好ましいZ’は下記一般式(17)に示す分岐構造である。Vが水素原子である場合の好ましいZ’−Vの例を下記一般式(18)および下記一般式(19)に示す。
【0047】
【化15】

【0048】
【化16】

【0049】
【化17】

【0050】
【化18】

【0051】
上記一般式(4)のVにおけるXは通常、ハロゲン原子、OR(Rは水素原子、アルキル基、またはアリール基)、水酸基から選ばれ、好ましくは、ハロゲン原子、水酸基から選ばれる。
高分子に側鎖導入剤を反応させる際の反応の種類は、特に制限されない。上記一般式(3)で表される高分子と上記一般式(4)で表される側鎖導入剤を反応させる際の好ましい方法としては次の方法が挙げられる。
(i)上記一般式(3)のUが水素原子で、上記一般式(4)のVが−COX(Xがハロゲン原子または水酸基)であるか、または、上記一般式(3)のUが−COX(Xがハロゲン原子)で、上記一般式(4)のVが水素原子である場合:フリーデル・クラフツ−アシル化反応を用いることができる。
(ii)上記一般式(3)のUが水素原子で、上記一般式(4)のVが−SOX(Xがハロゲン原子または水酸基)であるか、または、上記一般式(3)のUが−SOX(Xがハロゲン原子)で、上記一般式(4)のVが水素原子である場合:フリーデル・クラフツ型スルホニル化反応を用いることができる。
(iii)上記一般式(3)のUが水素原子で、上記一般式(4)のVが−COOHまたは−SOHであるか、または、上記一般式(3)のUが−COOHまたは−SOHで、上記一般式(4)のVが水素原子である場合:脱水縮合反応を用いることができる。
【0052】
前記方法(M2)の具体例を次に示す。すなわち、少なくとも上記一般式(18)で示されるモノマーを用いて重合させることにより、上記一般式(1)で示される高分子電解質を製造することができる。
連結基前駆体を連結基に変換するのはいずれの時点でもよいが、好ましくは次の方法が用いられる。すなわち、少なくとも下記一般式(6)で表されるモノマーを重合させるに際し、(i)Z”がスルホン酸基またはその前駆体を有せず、かつ、Z”のXが電子供与性の連結基前駆体であって、重合後、スルホン酸化を行い、続いて連結基前駆体を電子吸引性の連結基に変換することにより、または、(ii)Z”がスルホン酸基またはその前駆体を有し、かつ、Z”のXが、(ii−1)電子供与性の連結基前駆体である場合には、続いて連結基前駆体を電子吸引性の連結基に変換することにより、(ii−2)電子吸引性の連結基である場合には、その状態で、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子電解質を得る方法である。
【0053】
【化19】

【0054】
[式中、kおよびYは上記一般式(1)と同様であり、WおよびW’は水素原子、ハロゲン、−COX(XはハロゲンまたはOR(Rは水素原子、アルキル基、またはアリール基))、−OH、−SH、−SO2 X(Xは前記のとおり)から選ばれ、同一であっても異なっていても良く、Z”はXが連結基及び前記の連結基前駆体から選ばれ、Arがスルホン酸基を有していてよいことを除いて上記一般式(1)のZと同様である。]
【0055】
また、本発明の重合体において、繰り返し単位(A)以外の他の繰り返し単位としては、重合できるものであればいずれも用いることができ、下記一般式(20)で表される繰り返し単位(B)が好ましく用いられる。
−Y−P− (20)
式中、Y2 は前記一般式(11)に示されるものと同様の2価の芳香族残基から選ばれ、当該芳香族残基の水素原子がアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、またはアリール基で置換されていてもよく、P2 は−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO2 −、−COO−、−SO3 −、−CONH−、単結合から選ばれ、好ましくは−CO−、−O−、−S−、−SO2 −から選ばれる。]
【0056】
本発明の好ましい重合体において、繰り返し単位(A)と他の繰り返し単位は、(以下、簡単のため本段落ではYの側鎖基Zを略す)例えば−Y−P−Y2 −P2 −Y−P−のように、YまたはY2がPまたはP2を介してYまたはY2と結合していればよく、任意の繰返し順序を取ることができる。例えば、−(Y−P)m −(Y2 −P2 n −[m,nは正の整数]のようなブロックポリマーであってもよく、またはランダムポリマーであってもよい。 繰り返し単位(A)と他の繰り返し単位の割合は、繰り返し単位(A)5〜95モル%、好ましくは10〜80モル%、より好ましくは15〜75モル%、他の繰り返し単位が95〜5モル%、好ましくは90〜20モル%、より好ましくは85〜25モル%である。繰り返し単位(A)以外の他の繰り返し単位が、繰り返し単位(B)からなる場合、同一種類の繰り返し単位(B)が用いられても良いし複数の種類の繰り返し単位(B)が用いられても良い。
【0057】
以下、前記方法(M2)として通常用いられる合成法の例を述べる。
[合成方法−1]本発明において、連結基Pが単結合である重合体を製造する際の反応として好ましく用いられるのは、遷移触媒を用いた、芳香族ハロゲン化物同士のカップリング反応である。例えば特許文献3および特許文献6に記載された方法を用いることができる。
[合成方法−2]本発明において、連結基Pおよび/またはP2 が−O−である重合体を製造する際の反応として好ましく用いられるのは、芳香族ヒドロキシ化合物と芳香族ハロゲン化物の芳香族求核置換反応による芳香族ポリエーテルの合成反応である。
例えば、文献1(高分子学会編「高性能芳香族系高分子材料」丸善株式会社 1990年3月30日 p.128〜132)に記載された方法を用いることができる。別の方法としては、芳香族ハロゲン化物同士を炭酸塩と触媒の存在下に反応させて芳香族ポリエーテル類を合成する反応を用いることができる。例えば、文献2(Fukawaら、Macromolecules,1991年,24巻 p.3838)に記載された方法を用いることができる。
【0058】
[合成方法−3]本発明において、連結基Pおよび/またはP2 が−S−である重合体を製造する際の反応として好ましく用いられるのは、前記合成方法−2における芳香族ヒドロキシ化合物の代わりに芳香族チオール化合物を用いて芳香族ポリスルフィド類を合成する方法である。また、別の方法としては、芳香族ジクロリドと硫化ナトリウムから芳香族ポリスルフィドを合成する反応を用いることができる。例えば、前記文献1のp.133〜134に記載された方法を用いることができる。
[合成方法−4]本発明において、連結基Pおよび/またはP2 が−SO2 −である重合体を製造する際の反応として好ましく用いられるのは、上記合成法−3で製造した芳香族スルフィド類を過酸化水素などの酸化剤を用いて酸化する方法である。
また、別の方法としては、水素原子を芳香環に有する芳香族化合物に、芳香族スルホン酸ハライドを親電子置換反応させて芳香族スルホン結合を形成する方法を用いることができる。例えば、前記文献1のp.132〜133に記載された方法を用いることができる。
[合成方法−5]本発明において、連結基Pおよび/またはP2 が−CO−である重合体を製造する際の反応として好ましく用いられるのは、フリーデル・クラフツ−アシル化反応である。例えば、前記文献1のp.132〜133に記載された方法を用いることができる。
【0059】
次に、前記方法(M2)による好ましい合成法の例を説明する
[重合体の例−1]重合体が繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなり、連結基PおよびP2 がいずれも−O−の場合:例えば下記一般式(21)に示す繰り返し単位(A)モノマーと、下記一般式(22)に示す繰り返し単位(B)モノマーとの反応、または、下記一般式(23)に示す繰り返し単位(A)モノマーと、下記一般式(24)に示す繰り返し単位(B)モノマーとの反応、または、下記一般式(25)に示す繰り返し単位(A)モノマーと、下記一般式(26)に示す繰り返し単位(B)モノマーとの反応により、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなる下記一般式(27)で示される重合体を得ることができる。
【0060】
【化20】

[式中、Xはハロゲン原子を表し、Y 、Y2 、Z”は前記のとおりである。]
【0061】
【化21】

なお、上記一般式(22),(23),(25),(26)における酸素原子の代わりにイオウ原子を用いた原料を用いることにより、連結基PおよびP2 がいずれも−S−の重合体を得ることができる。
【0062】
上記一般式(21)で表される繰り返し単位(A)モノマーの具体例としては、2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジブロモ−4’−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジヨード−4’−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン、;2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジブロモ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジヨード−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン;2,5−ジクロロ−4’−チオフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジブロモ−4’−チオフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジヨード−4’−チオフェノキシベンゾフェノン;2,5−ジクロロ−1−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン、2,5−ジブロモ−1−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン、2,5−ジヨード−1−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン;2,5−ジクロロ−1−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン、2,5−ジブロモ−1−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン、2,5−ジヨード−1−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン;2,5−ジクロロ−4’−(4−ベンゾイル)ベンゾイルベンゾフェノン、2,5−ジブロモ−4’−(4−ベンゾイル)ベンゾイルベンゾフェノン、2,5−ジヨード−4’−(4−ベンゾイル)ベンゾイルベンゾフェノン;2,5−ジクロロ−4’−ベンゾイルベンゾフェノン、2,5−ジブロモ−4’−ベンゾイルベンゾフェノン、2,5−ジヨード−4’−ベンゾイルベンゾフェノン、およびこれらの位置異性体などが挙げられる。
【0063】
上記一般式(23)で表される繰り返し単位(A)モノマーの具体例としては、2,5−ジヒドロキシ−4’−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン;2,5−ジヒドロキシ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン;2,5−ジヒドロキシ−4’−チオフェノキシベンゾフェノン;2,5−ジヒドロキシ−1−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン;2,5−ジヒドロキシ−1−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン;2,5−ジヒドロキシ−4’−(4−ベンゾイル)ベンゾイルベンゾフェノン;2,5−ジヒドロキシ−4’−ベンゾイルベンゾフェノンおよびこれらの位置異性体などが挙げられる。
【0064】
上記一般式(25)で表される繰り返し単位(A)モノマーの具体例としては、2−クロロ−5−ヒドロキシ−4’−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン、2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4’−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン、2−ヨード−5−ヒドロキシ−4’−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン、;2−クロロ−5−ヒドロキシ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン、2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェ
ノン、2−ヨード−5−ヒドロキシ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン;2−クロロ−5−ヒドロキシ−4’−チオフェノキシベンゾフェノン、2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4’−チオフェノキシベンゾフェノン、2−ヨード−5−ヒドロキシ−4’−チオフェノキシベンゾフェノン;2−クロロ−5−ヒドロキシ−1−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン、2−ブロモ−5−ヒドロキシ−1−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン、2−ヨード−5−ヒドロキシ−1−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン;2−クロロ−5−ヒドロキシ−1−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン、2,5−ジブロモ−1−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン、2−ヨード−5−ヒドロキシ−1−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン;2−クロロ−5−ヒドロキシ−4’−(4−ベンゾイル)ベンゾイルベンゾフェノン、2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4’−(4−ベンゾイル)ベンゾイルベンゾフェノン、2−ヨード−5−ヒドロキシ−4’−(4−ベンゾイル)ベンゾイルベンゾフェノン;2−クロロ−5−ヒドロキシ−4’−ベンゾイルベンゾフェノン、2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4’−ベンゾイルベンゾフェノン、2−ヨード−5−ヒドロキシ−4’−ベンゾイルベンゾフェノン、およびこれらの位置異性体などが挙げられる。
【0065】
上記一般式(22)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例としては、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3′−ジヒドロキシベンゾフェノン;4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3′−ジヒドロキシジフェニルエーテル;4,4′−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、2,4′−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、3,3′−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン;ビス(ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン;4−ヒドロキシ安息香酸−4−ヒドロキシフェニル、4−ヒドロキシ安息香酸−3−ヒドロキシフェニル、3−ヒドロキシ安息香酸−3−ヒドロキシフェニル、3−ヒドロキシ安息香酸−4−ヒドロキシフェニル;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3−ヒドロキシフェニル)スルホキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−ヒドロキシフェニル)スルホン;2,5−ジヒドロキシ4′−フェノキシベンゾフェノン、p−ジヒドロキシベンゼン、2,5−ジヒドロキシトルエン、2,5−ジヒドロキシp−キシレン、2,5−ジヒドロキシベンゾトリフルオライド、1,4−ジヒドロキシ2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン;4,4′−ジヒドロキシビフェニル;m−ジヒドロキシベンゼン、2,4−ジヒドロキシトルエン、3,5−ジヒドロキシトルエン、2,6−ジヒドロキシトルエンなどが挙げられる。
【0066】
上記一般式(24)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例としては、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、2,4′−ジクロロベンゾフェノン、3,3′−ジクロロベンゾフェノン、4,4′−ジブロモベンゾフェノン、2,4′−ジブロモベンゾフェノン、3,3′−ジブロモベンゾフェノン、4,4′−ジヨードベンゾフェノン、2,4′−ジヨードベンゾフェノン、3,3′−ジヨードベンゾフェノン;4,4′−ジクロロジフェニルエーテル、2,4′−ジクロロジフェニルエーテル、3,3′−ジクロロジフェニルエーテル、4,4′−ジブロモジフェニルエーテル、2,4′−ジブロモジフェニルエーテル、3,3′−、ジブロモジフェニルエーテル、4,4′−ジヨードジフェニルエーテル、2,4′−ジヨードジフェニルエーテル、3,3′−ジヨードジフェニルエーテル;4,4′−ジクロロジフェニルチオエーテル、2,4′−ジクロロジフェニルチオエーテル、3,3′−ジクロロジフェニルチオエーテル、4,4′−ジブロモジフェニルチオエーテル、2,4′−ジブロモジフェニルチオエーテル、3,3′−、ジブロモジフェニルチオエーテル、4,4′−ジヨードジフェニルチオエーテル、2,4′−ジヨードジフェニルチオエーテル、3,3′−ジヨードジフェニルチオエーテル:
2,2−ビス(4−クロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−クロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ブロモフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−ブロモフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヨードフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−ヨードフェニル)ヘキサフルオロプロパン;ビス(クロロフェニル)ジフルオロメタン、ビス(ブロモフェニル)ジフルオロメタン、ビス(ヨードフェニル)ジフルオロメタン;4−クロロ安息香酸−4−クロロフェニル、4−クロロ安息香酸−3−クロロフェニル、3−クロロ安息香酸−3−クロロフェニル、3−クロロ安息香酸−4−クロロフェニル、4−ブロモ安息香酸−4−ブロモフェニル、4−ブロモ安息香酸−3−ブロモフェニル、3−ブロモ安息香酸−3−ブロモフェニル、3−ブロモ安息香酸−4−ブロモフェニル;ビス(4−クロロフェニル)スルホキシド、ビス(3−クロロフェニル)スルホキシド、ビス(4−ブロモフェニル)スルホキシド、ビス(3−ブロモフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヨードフェニル)スルホキシド、ビス(3−ヨードフェニル)スルホキシド;
ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(3−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−ブロモフェニル)スルホン、ビス(3−ブロモフェニル)スルホン、ビス(4−ヨードフェニル)スルホン、ビス(3−ヨードフェニル)スルホン;2,5−ジクロロ−4′−フェノキシベンゾフェノン、p−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジブロモトルエン、2,5−ジヨードトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、2,5−ジブロモ−p−キシレン、2,5−ジヨード−p−キシレン、2,5−ジクロロベンゾトリフルオライド、2,5−ジブロモベンゾトリフルオライド、2,5−ジヨードベンゾトリフルオライド、1,4−ジクロロ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、1,4−ジブロモ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、1,4−ジヨード−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン;4,4′−ジクロロビフェニル、4,4′−ジブロモビフェニル、4,4′−ジヨードビフェニル、4,4′−ジブロモオクタフルオロビフェニル;m−ジクロロベンゼン、m−ジブロモベンゼン、m−ジヨードベンゼン、2,4−ジクロロトルエン、2,4−ジブロモトルエン、2,4−ジヨードトルエン、3,5−ジクロロトルエン、3,5−ジブロモトルエン、3,5−ジヨードトルエン、2,6−ジクロロトルエン、2,6−ジブロモトルエン、2,6−ジヨードトルエン、1,3−ジブロモ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼンなどが挙げられる。なお、上記具体例において、上記一般式(15)における二つのXのうち一つをフッ素原子に置換したものも好ましく用いることができる。
【0067】
上記一般式(26)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例としては、上記一般式(15)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例における、非フッ素ハロゲン原子の一つを水酸基で置換した構造およびその位置異性体が挙げられる。
重合体が繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなり、連結基PおよびP2 がいずれも−O−の場合の合成例を以下に具体的に例示する。繰り返し単位(A)のモノマーとして2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノンを用い、繰り返し単位(B)のモノマーとしてp,p’−ジヒドロキシベンゾフェノンを用いる。両者を炭酸カリウムの存在下で共重合し、次いで、スルホン酸化剤を用いて、スルホン酸化した後に、スルフィド結合を酸化剤を用いて酸化してスルホンへ転化することで、連結基P=O、P2 =Oの下記一般式(28)に示すポリマー(Q=−CO−)のスルホン酸化物が高分子電解質として得られる。
【0068】
【化22】

[式中、Z”は側鎖基を示す。]
同様にして、Qが−O−、−S−、−SO2 −、−CR12−(R1 は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基から選ばれる)または単結合であるポリマーを合成することができる。
【0069】
[重合体の例−2]重合体が繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなり、連結基PおよびP2 がいずれも単結合の場合:下記一般式(29)に示す、繰り返し単位(A)モノマーと、下記一般式(30)に示す、繰り返し単位(B)モノマーとの反応により、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなる、下記一般式(31)で示される重合体を得ることができる。下記一般式(29)で表される繰り返し単位(A)モノマーの具体例としては、上記一般式(21)に対する具体例と同様の化合物が挙げられる。下記一般式(30)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例としては、上記一般式(24)に対する具体例と同様の化合物が挙げられる。
【0070】
【化23】

[式中、X、X’は互いに同一であっても異なっていても良いハロゲン原子を表し、Y、Y2 、Zは前記のとおりである。]
【0071】
【化24】

【0072】
重合体が繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなり、連結基PおよびP2 がいずれも単結合の場合の例を以下に具体的に例示する。繰り返し単位(A)のモノマーとして2,5−ジクロロ−4’−チオフェノキシベンゾフェノンを用い、繰り返し単位(B)のモノマーとしてp,p’−ジクロロジフェニルスルホンを用いる。両者を、遷移金属化合物を含む触媒の存在下で共重合し、次いで、スルホン酸化剤を用いて、スルホン酸化した後に、スルフィド結合を酸化剤を用いて酸化してスルホンへ転化することで、連結基P=単結合、P2 =単結合の下記一般式(32)に示すポリマー(Q=−SO2 −)のスルホン酸化物が高分子電解質として得られる。
【0073】
【化25】

[式中、Z”は側鎖基を示す。]
【0074】
[重合体の例−3]重合体が繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなり、連結基PおよびP2 がいずれも−CO−の場合:例えば下記一般式(33)に示す、繰り返し単位(A)モノマーと、下記一般式(34)に示す、繰り返し単位(B)モノマーとの反応、または、下記一般式(35)に示す、繰り返し単位(A)モノマーと、下記一般式(36)に示す、繰り返し単位(B)モノマーとの反応により、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなる、下記一般式(37)で示される重合体を得ることができる。なお、下記一般式(34),(35)におけるCOの代わりにSO2 を用いた原料を使用することにより、連結器P およびP2 がいずれも−SO2 −の重合体が得られる。[式中、Xはハロゲン原子を表し、Y、Y2 、Zは前記のとおりである。]
【0075】
【化26】

【0076】
【化27】

【0077】
上記一般式(33)で表される繰り返し単位(A)モノマーの具体例としては、 上記一般式(21)で表される繰り返し単位(A)モノマーの具体例における、−Xを水素原子で置換した構造のものおよびその位置異性体が挙げられる。
上記一般式(35)で表される繰り返し単位(A)モノマーの具体例としては、上記一般式(21)で表される繰り返し単位(A)モノマーの具体例における、−Xを−COX(Xはハロゲン原子を示す)で置換した構造のものおよびその位置異性体が挙げられる。
上記一般式(34)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例としては、上記一般式(24)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例における、−Xを−COX(Xはハロゲン原子を示す)で置換した構造のものおよびその位置異性体が挙げられる。
上記一般式(36)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例としては、上記一般式(24)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例における、Xを水素原子で置換した構造のものが挙げられる。
【0078】
重合体が繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなり、連結基PおよびP2 がいずれも−CO−の場合の合成例を以下に具体的に例示する。繰り返し単位(A)のモノマーとして2−[4−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾイル]テレフタルクロリドを用い、繰り返し単位(B)のモノマーとしてジフェニルエーテルを用いる。両者を塩化アルミニウム等のフリーデルクラフツ触媒の存在下で共重合し、次いで、スルホン酸化剤を用いて、スルホン酸化した後に、スルフィド結合を酸化剤を用いて酸化してスルホンへ転化することで、連結基P=CO、P2 =COの下記一般式(38)に示すポリマー(Q=−O−)のスルホン酸化物が高分子電解質として得られる。
【0079】
【化28】

[式中、Z”は側鎖基を示す。]
同様にして、Qが−CO−、−S−、−SO2 −、−CR12−(R1 は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基から選ばれる)または単結合であるポリマーを合成することができる。
【0080】
[重合体の例−4]重合体が繰り返し単位(A)と複数の繰り返し単位(B)からなり、連結基Pが単結合、連結基P2 が−O−の場合:例えば下記一般式(39)に示す、繰り返し単位(A)モノマーと、下記一般式(40)および下記一般式(41)に示す、繰り返し単位(B)モノマーとの反応により、繰り返し単位(A)と2種類の繰り返し単位(B)からなる、下記一般式(42)で示される重合体を得ることができる。
【0081】
【化29】

[式中、X、X’、X’’はハロゲン原子を表し互いに異なっていても同一でも良く、Y2 ’はY2 と同様の基であり、Y、Y2 、Zは前記のとおりである。]
【0082】
【化30】

【0083】
上記一般式(39)で表される繰り返し単位(A)モノマーの具体例としては、上記一般式(21)に対する具体例と同様の化合物が挙げられる。上記一般式(40)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例としては、上記一般式(24)に対する具体例と同様の化合物が挙げられる。上記一般式(41)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例としては、上記一般式(22)に対する具体例と同様の化合物が挙げられる。
重合体が繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなり、連結基Pが単結合、連結基P2 が−O−の場合の例を以下に具体的に例示する。繰り返し単位(A)のモノマーと
して2,5−ジクロロ−4’−チオフェノキシベンゾフェノンを用い、繰り返し単位(B)のモノマーとして4−クロロフルオロベンゼンと4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンを用いる。まず、4−クロロフルオロベンゼンとビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンを炭酸カリウムの存在下で反応させてビス[4−(4−クロロフェノキシ)フェニル]スルホンを合成する。次にこのものと2,5−ジクロロ−4’−チオフェノキシベンゾフェノンを、遷移金属化合物を含む触媒の存在下で共重合し、次いで、スルホン酸化剤を用いて、スルホン酸化した後に、スルフィド結合を酸化剤を用いて酸化してスルホンへ転化することで、連結基P=単結合、P2 =−O−結合の下記一般式(43)に示すポリマー(Q=−SO2 −)のスルホン酸化物が高分子電解質として得られる。本発明の重合体において、他の繰り返し単位中の繰り返し単位(B)の割合は、10〜100モル%、好ましくは20〜100モル%である。
【0084】
【化31】

[式中、Z”は側鎖基を示す。]
【0085】
本発明で用いる高分子電解質の主鎖に含まれる芳香族残基は少なくとも一つの電子吸引基が結合していることが好ましい。この場合の電子吸引基は、例えば、−CO−、−CONH−、−(CF2 p −(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CF3 2 −、−COO−、−SO−、−SO−、−SO2 −などの2価の基;F、パーフルオロアルキル、−CN、−NO2 、−COR、−COOR(Rは水素、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ハロゲン化アリール基から選ばれる)、−CONRR’(R’は前記Rと同様の基である。)、−SO3 R、−SOR、−SO2 Rなどの1価の基が挙げられる。
【0086】
本発明で用いる高分子電解質の構造例を以下に示す。[式中、Zは上記一般式(1)で表される側鎖を示す。]
【化32】

【0087】
【化33】

【0088】
【化34】

【0089】
【化35】

【0090】
本発明で用いる高分子電解質においては、側鎖Zにスルホン酸基が存在する。そして、少なくともn≧2で、かつ、スルホン酸基が1.0を超える数導入されたZを有する。なお、Zが直鎖状の場合には、同一側鎖の複数のAr基にスルホン酸基が導入されていてもよい。さらに付加的に主鎖がスルホン酸基で置換されてもよい。本発明の製造方法においてスルホン酸基の導入方法は限定されず、例えば(1)重合体をスルホン酸化することにより導入してもよいし、(2)スルホン酸基を含有するモノマーを重合してもよいし、(3)スルホン酸基誘導体、スルホン酸基前駆体から選ばれる基を含有するモノマーを重合した後に当該基をスルホン酸基に変換することによりスルホン酸基を導入することもできる。
【0091】
本発明で用いる高分子電解質の製造方法のおいて、スルホン酸基を導入する方法として、スルホン基を含有しない高分子をスルホン酸化することにより導入する場合には、スルホン酸化剤による常法のスルホン酸化を用いることができる。スルホン酸基を導入する方法としては、例えば、上記スルホン酸基を有しない高分子を、無水硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸、硫酸、亜硫酸水素ナトリウムなどの公知のスルホン酸化剤を用いて、公知の条件でスルホン酸化することができる(本発明において、スルホン酸化とは、−Hなる基の水素原子をSO3 Hで置換する反応を示す。)。
【0092】
このスルホン酸化の反応条件としては、上記スルホン酸基を有しない高分子を、無溶剤下、あるいは溶剤存在下で、上記スルホン酸化剤と反応させる。溶剤としては、例えばn−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶
剤、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのような非プロトン系極性溶剤のほか、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。反応温度は特に制限はないが、通常、−50〜200℃、好ましくは−10〜100℃である。また、反応時間は、通常、0.5〜1,000時間、好ましくは1〜200時間である。
【0093】
このようにして得られる、本発明のスルホン酸基含有重合体中の、スルホン酸基量は、0.5〜5ミリグラム当量/g、好ましくは0.7〜4ミリグラム当量/g、さらに好ましくは0.8〜3ミリグラム当量/gである。低いスルホン酸基量では、プロトン伝導性が上がらず、一方、スルホン酸基量が高いと、親水性が向上し、構造によっては水溶性ポリマーとなってしまう。上記のスルホン酸基量は、反応条件(温度、時間)や仕込量(組成)により調整することができる。
【0094】
また、このようにして得られる本発明で用いる高分子電解質の、スルホン酸化前またはスルホン酸の前駆体のポリマーの分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、1000〜100万、好ましくは1万〜100万、さらに好ましくは2万〜80万、特に好ましくは3万〜40万である。1000未満では、成形フィルムが割れ易く、また強度的性質にも問題がある。一方、100万を超えると、溶解性が不充分となり、また溶液粘度が高く、加工性が不良になるなどの問題がある。
また、本発明のカチオン交換樹脂は、イオン交換容量が0.8〜3.0meq/g、好ましくは1.4〜2.8meq/gのものが望ましい。
電極3−1、3−2は、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選ばれる少なくとも1種の金属または合金から構成される。変位量が大きく、かつ表面抵抗の低い高分子アクチュエータを得るためには、イオン交換樹脂の厚さに対する電極の厚さの比の値は通常、0.03〜0.40、好ましくは0.15〜0.30の範囲で用いられる。
【0095】
本発明で用いる高分子電解質をイオン交換樹脂とする方法については、特に制限されず、例えば、本発明で用いる高分子電解質を溶剤に溶解したのち、塗布によりフィルム状に成形するキャスト法や、溶融成形法などを用いることができる。ここで、キャスト法における溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン系極性溶剤やメタノールなどのアルコール系溶剤などが挙げられる。
本発明で用いる高分子電解質の構造は、例えば、赤外線吸収スペクトルや核磁気共鳴スペクトル(H−NMR、13C−NMR)により確認することができる。また、組成比は元素分析によっても測定でき、スルホン酸の含量は中和滴定によって測定することができる。
なお、イオン交換樹脂表面への金属電極形成方法としては、従来公知の方法を特に制限なく採用することが可能である。例えば、化学めっき、電気めっき、真空蒸着、スパッタリング、塗布、圧着、溶着などの方法によって形成することができる。
【0096】
本発明の高分子アクチュエータは、イオン交換樹脂が含水状態であれば、水中であっても、大気中であっても作動させることができる。
本発明の高分子アクチュエータは、電極間に0.1〜4Vの直流電圧をかけると、数秒以内に素子長の1〜3倍程度の変位を得ることができる。また本発明の高分子アクチュエータは、柔軟に作用することができる。
本発明の高分子アクチュエータは、例えば特許文献7に示される応用例など、従来、高分子アクチュエータが使用されている応用分野に、いずれも用いることができる。
なお、金属電極はイオン交換樹脂の内周面に設けられていてもよく、また内周面、外周面の双方に設けられていてもよい。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を挙げ本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各種の測定項目は、下記のようにして求めた。
[重量平均分子量]スルホン酸化前の前駆体ポリマーの数平均分子量,重量平均分子量は、溶媒にテトラヒドロフラン(THF)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
[イオン交換容量]得られたポリマーの水洗水が中性になるまで充分に水洗し、乾燥後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解し、フェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液にて滴定し、中和点から、イオン交換容量(スルホン酸化当量)を求めた。
【0098】
[参考例1]高分子電解質1の製造
(1)2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン[下記式(44)]の合成
2,5−ジクロロ−4’−フルオロベンゾフェノン10.8g(40mmol)、4−フェニルスルファニルチオフェノール8.7g(40mmol)と炭酸カリウム8.29g(60mmol)をディーンスターク管、冷却管、温度計を備えた三口フラスコにとり、ジメチルアセトアミド50gとトルエン50gの混合溶媒を注ぎ、撹拌した。次いで130℃まで昇温し、加熱還流しながら生成する水を除去した。さらにトルエンを系外に除去しながら150℃で4時間反応させた。TLCで反応が終了したことを確認後、室温まで内容物を冷却し、水に注ぎ1時間撹拌した。この混合物溶液中から有機物を分離、さらに酢酸エチルで抽出し、抽出層を水、食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。無機塩を濾別後、溶媒を留去し粗生成物を得た。酢酸エチル:n−ヘキサン=1:5(容積比)の混合溶媒で再結晶を行い、目的物を収量85%で得た(15.8g)。
【0099】
【化36】

【0100】
(2)ビス[4−[4−(4−クロロフェニルスルホニル)フェノキシ]フェニル]スルホンの合成
(2−1)4−クロロフェニル−4’−フルオロフェニルスルホンの合成
フルオロベンゼン192g(2.0mol)と塩化アルミニウム69.5g(520mmol)を、温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに入れ、窒素置換した。氷水で10℃に冷却しながら、メカニカルスターラーにて撹拌した。4−クロロベンゼンスルホニルクロライド84.4g(400mmol)を滴下ろうとで30分かけて滴下し、室温で4時間撹拌した。反応混合物を、濃塩酸:氷=1:10水溶液に投入し、1時間撹拌した。酢酸エチルで抽出し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを減圧留去し、ヘキサン: 酢酸エチル混合溶媒で再結晶した。目的物が生成しているのをNMRおよびIRスペクトルで確認した。収率85%(92.0g)。
【0101】
(2−2)ビス[4−[4−(4−クロロフェニルスルホニル)フェノキシ] フェニル]スルホン[下記式(45)]の合成
ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)25.0g(100mmol)と炭酸カリウム30.4g(220mmol)、ジメチルアセトアミド100m
l、トルエン50mlを、温度計、Dean−Stark管、還流管、三方コックをつけた三口フラスコに入れ、窒素置換した。オイルバスで130℃に昇温しながら撹拌し、反応により生成する水とトルエンを共沸させ、Dean−Stark管で除去した。水の生成が見られなくなったら、150℃まで昇温し、トルエンを留去した。反応溶液を80℃まで冷却した後、4−クロロフェニル−4’−フルオロフェニルスルホン67.6g(250mmol)を入れ、110℃で7h撹拌した。副生成物である無機塩を濾過除去した後、濾液をメタノール500mlに投入して沈殿物をろ過し、トルエンにて再結晶した。目的物が生成しているのをNMRおよびIRスペクトルで確認した。収率71%(51.0g)。
【0102】
【化37】

【0103】
(3)高分子電解質の合成
(3−1)重合
上記で得られたビス[4−[4−(4−クロロフェニルスルホニル)フェノキシ]フェニル]スルホン25.17g(35.0mmol)、2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン16.3g(35.0mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド1.43g(2.2 mmol)、よう化ナトリウム1.37g(9.14mmol)、トリフェニルホスフィン7.73g(29.5mmol)、亜鉛末11.3g(172mmol)を反応容器に入れ、乾燥窒素で系内を置換した。N−メチル−2−ピロリドン(NMP)0.2リットルを加え、80℃に加熱し、4時間攪拌することで重合をおこなった。重合後の反応溶液をテトラヒドロフラン(THF)で希釈し、塩酸とメタノールの混合液を投入することでポリマーを回収し、次いでメタノール洗浄を4回繰り返し、THFに溶解させたポリマーをメタノールで再沈殿させることにより精製し、濾別したポリマーを真空乾燥して、所望の重合体34.7g(95%)を得た。GPC(THF)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は40,000、重量平均分子量は145,000であった。
【0104】
(3−2)重合体のスルホン酸化
上記で得られた重合体20.0gを0.5リットルの反応溶液に入れ、96%硫酸0.25リットルを加え、窒素下室温で2日間攪拌を続けた。得られた溶液を5リットルのイオン交換水の中に注ぎ入れることでポリマーを沈殿させた。洗浄液のpHが5になるまでポリマーの水洗を繰り返した。乾燥して、23.7g(95%)のスルホン酸化重合体を得た。
(3−3)スルホン酸化重合体の酸化
上記で得られたスルホン酸化重合体20.0gを2リットルのガラス反応容器へ入れ酢酸を0.8リットル、および34%過酸化水素水溶液200gを加え、攪拌しながら徐々に昇温し、90℃で6時間反応を続けた。反応後、放冷し、ポリマーを濾別水洗後、真空乾燥して、所望の高分子電解質[下記式(46)のスルホン酸化物]19.6g(92%)を得た。構造解析により、スルホン酸基が側鎖当たり複数個側鎖に導入されていることを確認した。
【0105】
【化38】

【0106】
(4)高分子電解質膜としての評価
上記の高分子電解質の固形分量が30wt%となるように、高分子電解質15gおよびNMPをフラスコに入れて、攪拌しながら80℃で加熱溶解させてポリマーワニスを得た。バーコーター(200μm用)を用い、ガラス基板上に貼り付けたPET薄膜上に塗布後、乾燥器にて80℃、0.5時間予備乾燥させ、塗膜をPET薄膜から剥がした。剥がした塗膜を真空乾燥器で100℃、3時間乾燥した。さらに、塗膜重量の1,000倍量のイオン交換水中に室温で2日間浸漬させることで、NMPを除去したフィルムを得た。次に、フィルムを25℃・50%RH環境に24時間静置することで調湿し、所望の高分子電解質フィルムを得た。物性測定結果を表2に示す。
【0107】
[参考例2]高分子電解質2の製造
(1)2,5−ジクロロ−4’−チオフェノキシベンゾフェノン[下記式(47)]の合成
4−フェニルスルファニルチオフェノールの代わりにチオフェノール4.4 g(40mmol)を用いたほかは、参考例1の2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノンの合成と同様の方法を用いて目的物を収率83%で得た(11.9g)
【0108】
【化39】

【0109】
(2)4,4’−ビス[4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ]ベンゾフェノンの合成
(2−1)4−クロロ−4’−フルオロベンゾフェノンの合成
4−クロロベンゼンスルホニルクロライドの代わりに4−クロロベンゾイルクロライド70.0g(400mmol)を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、所望の化合物を得た。NMRおよびIRスペクトルで構造を確認した。収率79%(74.1g)。
(2−2)4,4’−ビス[4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ]ベンゾフェノン[下記式(48)]の合成
ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンの代わりに4−クロロ−4’−フルオロベンゾフェノン58.6g(250mmol)を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、所望の化合物を得た。NMRおよびIRスペクトルで構造を確認した。収率75%(48.2g)。
【0110】
【化40】

【0111】
(3)高分子電解質の合成
(3−1)重合
ビス[4−[4−(4−クロロフェニルスルホニル)フェノキシ]フェニル]スルホンの代わりに、上記で得られた4,4’−ビス[4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ]ベンゾフェノン22.5g(35.0mmol)を用い、2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノンの代わりに2,5−ジクロロ−4’−チオフェノキシベンゾフェノン12.6g(35.0mmol)を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、所望の重合体30.6g(94%)を得た。数平均分子量は44,000、重量平均分子量は150,000 であった。
【0112】
(3−2)重合体のスルホン酸化
上記で得た重合体を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、スルホン酸化重合体を得た(収率96%)。
(3−3)スルホン酸化重合体の酸化
上記で得たスルホン酸化重合体を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、所望の高分子電解質[下記式(49)のスルホン酸化物](92%)を得た。構造解析により、スルホン酸基が側鎖当たり2.6個側鎖に導入されていることを確認した。
【0113】
【化41】

【0114】
(4)高分子電解質膜としての評価
上記で得た高分子電解質[下記式(49)]を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、調湿した高分子電解質フィルムを得た。物性測定結果を表2に示す。
[参考例3]高分子電解質3の製造
(1)2,5−ジクロロフェニル−4’−チオフェニルベンゼンスルフィド[下記式(50)]の合成
窒素下で撹拌されているキノリン(0.5リットル)と1,2,4−トリクロロベンゼン36g(0.2mol)中に、ナトリウム4−フェニルスルファニルチオフェノラート120g(0.5mol)を加えた。攪拌しながら昇温し反応温度160℃で3時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ、ジイソプロピルエーテルで抽出後、溶媒を除去すると目的物が得られた。収率90%(65.3g)。
【0115】
【化42】

【0116】
(2)高分子電解質の合成
(2−1)重合
ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン25.0g(100mmol)、炭酸カリウム30.4g(220mmol)、ジメチルアセトアミド0.1リットルおよびトルエン0.05リットルを、温度計、ディーンスターク管、還流管、三方コックを付けた三口フラスコへ入れ、窒素置換した。130℃の油浴で加熱しながら攪拌し、反応により生成する水をトルエンで共沸させてディーンスターク管で反応系から分離した。水が生成しなくなった時点で油浴温度を150℃としトルエンを留去した。反応溶液を80℃まで冷却した後、2,5−ジクロロフェニル−4’−チオフェニルベンゼンスルフィド36.3g(100 mmol)を入れ、油浴温度150℃で20時間攪拌した。副生物である無機塩を濾過分離した後、濾液をメタノール2リットルに投入して沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄後、真空乾燥することで目的の重合体を得た(収率87%)。数平均分子量は48,000、重量平均分子量は150,000であった。
【0117】
(2−2) 重合体のスルホン酸化
上記で得た重合体を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、スルホン酸化重合体を得た(収率95%)。
(3−3)スルホン酸化重合体の酸化
上記で得たスルホン酸化重合体を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、所望の高分子電解質[下記式(51)のスルホン酸化物](94%)を得た。構造解析により側鎖当たり2.1個のスルホン酸基が側鎖に導入されていることを確認した。
【0118】
【化43】

(4)高分子電解質膜としての評価
上記で得た高分子電解質[上記式(51)]を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、調湿した高分子電解質フィルムを得た。物性測定結果を表2に示す。
【0119】
[参考例4]高分子電解質4の製造
(1)高分子電解質の合成
(1−1)重合
ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンの代わりに4,4 ’−ジヒドロキシベンゾフェノンを使用し、2,5−ジクロロフェニル−4’−チオフェニルベンゼンスルフィドの代わりに2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノンを用いたほかは参考例3の重合と同様の方法で目的の重合体を得た(収率92%)。数平均分子量は51,000、重量平均分子量は160,000であった。
(1−2)重合体のスルホン酸化
上記で得た重合体を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、スルホン酸化重合体を得た(収率95%)。
(1−3)スルホン酸化重合体の酸化
上記で得たスルホン酸化重合体を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、所望の高分子電解質[下記式(52)のスルホン酸化物](92%)を得た。構造解析により、側鎖当たり1.9個のスルホン酸基が側鎖に導入されていることを確認した。
【0120】
【化44】

(2)高分子電解質膜としての評価
上記で得た高分子電解質[式(52)のスルホン化物]を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、調湿した高分子電解質フィルムを得た。物性測定結果を表2に示す。
【0121】
[比較参考例1]
ポリエーテルエーテルケトン(ICI社)を参考例1と同様の方法でスルホン酸化し、得られたスルホン酸化ポリエーテルエーテルケトン[S−PEEK、下記式(53)]のフィルムを得た。物性測定結果を表2に示す。
【0122】
【化45】

【0123】
[参考例5] 高分子電解質5の製造
(1) 4−(4’−スルホニルフェニルチオ)ベンゼンスルホニルクロライド[下記式
(55)]の合成
【0124】
【化46】

【0125】
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコにジフェニルスルフィド20.0g(108 mmol)とクロロホルム 35mlを入れ、乾燥窒素で系内を置換した。この溶液を氷水で5℃に冷却し、クロロ硫酸 25.1g(215mmol)をゆっくり滴下した。反応溶液を5℃、3時間撹拌すると、白色固体が析出してきた。薄層クロマトグラフィーにて、全てのジフェニルスルフィドが反応したことを確認したあと、塩化チオニル25.6g(215mmol)をゆっくり滴下した。90分還流したあと、溶媒のクロロホルムを留去し、真空乾燥した。収率:96%(37.8g)
(2)ポリエーテルスルホンへの4−(4’−スルホニルフェニルチオ)ベンゼンスルホニルクロライド[上記式(55)]の導入反応[下記式(56)]の合成
【0126】
【化47】

【0127】
ポリエーテルスルホン(ソルベイアドバンストポリマーズ社製、Radel A−200)2.0g、ニトロベンゼン30mlを反応容器に入れ、60℃で加熱溶解しながら乾燥窒素で系内を置換した。このポリマー溶液に4−(4’−スルホニルフェニルチオ)ベンゼンスルホニルクロライド[上記式(55)] 6.28g(17.24mmol)を入れ、溶解させた。この溶液に塩化アルミニウム2.54g(18.80mmol)を少量ずつ加え、80℃、20時間で撹拌した。反応溶液をメタノール:塩酸=10:1混合溶液 500mlに投入し、析出した固体を粉砕しながら撹拌した。この固体をろ過したあと、メタノールで数回洗浄し、80℃で真空乾燥した。収量は2.22gであった。
【0128】
(3)上記で得た固体(上記式(56))を用いた他は参考例1と同様の方法でスルホン酸化を行った。
(4)酸化反応[下記式(57)の合成]
温度計をつけた二口フラスコに側鎖導入反応した式(56)記載のポリマー1.0gと酢酸20mlを入れた。この混合物に30%過酸化水素水1000mg(9.0mmol)を加え、3時間還流した。系内の固体を吸引ろ過して水洗し、100℃にて真空乾燥した。NMR、IRより側鎖のスルフィドがスルホンに変換していることを確認した。また
、側鎖当たり複数のスルホン酸基が側鎖に導入されていることを確認した。収量は880mgであった。
上記で得た高分子電解質[下記式(57)]を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、調湿した高分子電解質フィルムを得た。物性測定結果を表2に示す。
【0129】
【化48】

【0130】
[参考例6] 高分子電解質6の製造
(1)ポリエーテルスルホンへの4−(4’−スルホニルフェニルチオ)ベンゼンスルホニルクロライド[上記式(55)]の導入反応(2)
撹拌温度を90℃、撹拌時間を40時間にした以外は参考例1−(2)記載と同様の方法にて合成した。
(2)酸化反応
参考例1−(3)記載と同様の方法にて酸化反応を行った。得られた高分子電解質フィルムの物性測定結果を表2に示す。
[参考例7] 高分子電解質7の製造
(1) ポリエーテルエーテルスルホンへの4−(4’−スルホニルフェニルチオ)ベンゼンスルホニルクロライド[上記式(55)]の導入反応[下記式(58)]の合成
【0131】
【化49】

【0132】
ポリエーテルエーテルスルホン(Aldrich製)3.0g、ニトロベンゼン60mlを反応容器に入れ、60℃で加熱溶解しながら乾燥窒素で系内を置換した。このポリマー溶液に4−(4’−スルホニルフェニルチオ)ベンゼンスルホニルクロライド[上記式(55
)]3.50g(37mmol)を入れ、溶解させた。この反応溶液に塩化アルミニウム5.44g(40.8mmol)を少量ずつ加え、90℃、40時間で撹拌した。反応溶液をメタノール:塩酸=10:1混合溶液 500mlに投入し、析出した固体を粉砕しながら撹拌した。この固体をろ過したあと、メタノールで数回洗浄し、80℃で真空乾燥して、収量が4.36gのポリマー(上記式(58))を得た。
(2)上記で得たポリマー(式(58))を用いたほかは参考例1と同様の方法を用いてスルホン酸化を行った。
【0133】
(3)酸化反応[下記式(59)の合成]
参考例1−(3)記載と同様の方法にて酸化反応を行った。側鎖当たり1.6個のスルホン酸基が側鎖に導入されていることを確認した。
上記で得た高分子電解質[下記式(59)]を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、調湿した高分子電解質フィルムを得た。物性測定結果を表2に示す。
【0134】
【化50】

【0135】
[参考例8]高分子電解質8の製造
(1)ビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホニルクロリド(下記式(60))の合成
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに1,4−ジブロモベンゼン50g(212mmol)とクロロホルム16mlを入れ、乾燥窒素で系内を置換した。これに室温でクロロホルム100mlに溶解したクロロ硫酸27.2g(233mmol)をゆっくり滴下した。室温にて4時間、さらに冷却管を取り付けてクロロホルム還流下で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィーにて全ての1,4−ジブロモベンゼンが反応したことを確認したあと、減圧下クロロホルムとクロロ硫酸を留去し精製してジブロモベンゼンスルホン酸56.9g(180mmol)を得た(収率85%)。次にチオフェノール3.5g(79mmol)をディーンスターク管、冷却管、温度計を備えた三口フラスコにとり、水酸化カリウム4.5gとN,N−ジメチルアセトアミド25ml、トルエン25mlを加えてスターラーで攪拌した。150℃まで昇温し、加熱還流しながら生成する水を除去した。これにジブロモベンゼンスルホン酸7.1g(23mmol)を加え、160℃で4時間反応させた。薄層クロマトグラフィーで反応が終了したことを確認後、この混合物溶液中から有機物を分離、再結晶による精製をして、ビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホン酸7.2gを得た(収率84%)。これを温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに入れ、クロロホルム100mlを入れて溶解させる。滴下ろうとで塩化チオニル2.1g(21.2mmol)をゆっくり滴下し、90分還流したあと、クロロホルムを留去して真空乾燥し、ビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホニルクロリド(下記式(60))6.4gを得た(収率85%)。
【0136】
【化51】

【0137】
(2)ポリエーテルスルホンへのビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホニルクロライド(式(60))の導入反応[下記式(61)]の合成
ポリエーテルスルホン(ソルベイアドバンストポリマーズ社製、Radel A−200)2.0g、ニトロベンゼン30mlを反応容器に入れ、60℃で加熱溶解しながら乾燥窒素で系内を置換した。このポリマー溶液にビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホニルクロライド(下記式(60))6.70g(17.08mmol)を入れ、溶解させた。この溶液に塩化アルミニウム2.54g(18.96mmol)を少量ずつ加え、80℃、20時間で撹拌した。反応溶液をメタノール:塩酸=10:1混合溶液 500mlに投入し、析出した固体を粉砕しながら撹拌した。この固体をろ過したあと、メタノールで数回洗浄し、80℃で真空乾燥して側鎖導入したポリエーテルスルホン(下記式(61))を得た。収量は2.31gであった。
【0138】
【化52】

【0139】
(3)側鎖基のスルホン化
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに側鎖導入した上記式(61)記載のポリマー2.00gとクロロホルム16mlを入れ、乾燥窒素で系内を置換した。これに室温でクロロホルム100mlに溶解したクロロ硫酸4.0g(40mmol)をゆっくり滴下した。室温にて4時間、さらに冷却管を取り付けてクロロホルム還流下で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィーにて全ての原料ポリマーが反応したことを確認したあと、減圧下クロロホルムとクロロ硫酸を留去し精製して側鎖導入反応したポリエーテルスルホンのスルホン化物(下記式(62))2.03gを得た。
【0140】
【化53】

【0141】
(4)酸化反応
温度計をつけた二口フラスコに、側鎖導入しスルホン化反応した上記式(62)のポリマー1.0gと酢酸20mlを入れた。この混合物に30%過酸化水素水1000mg(9mmol)を加え、3時間還流した。系内の固体を吸引ろ過して水洗し、100℃にて真空乾燥して最終目的の電解質ポリマー(下記式(63))を得た。NMR、IRより側鎖のスルフィドがスルホンに変換していることを確認した。収量は0.87gであった。側鎖当たり複数のスルホン酸基が導入されていることを確認した。上記で得た高分子電解質(下記式(63))を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、調湿した高分子電解質フィルムを得た。物性測定結果を表2に示す。
【0142】
【化54】

【0143】
[参考例9]高分子電解質9の製造
(1)4−チオフェノキシベンゼンスルフィドの合成
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに3−ブロモ−1−フルオロベンゼン50.0g(286mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド300mlを入れ、ナトリウムチオメチラート22.0g(314mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド100mlに溶解したものを滴下ろうとでゆっくり滴下し、20℃で100時間攪拌して反応させた。薄層クロマトグラフィーにて全ての3−ブロモ−1−フルオロベンゼンが反応したことを確認したあと、この混合物溶液中から有機物を分離、再結晶による精製をして、4−ブロモフェニルメチルスルフィド49.3g(243mmol)を得た。次に温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに4−ブロモフェニルメチルスルフィド45.0g(222mmol)、酸化銅15.5g、ピリジン60mlキノリン240mlを入れ、チオフェノール26.8g(244mmol)をピリジン20mlキノリン80mlに溶解・分散したものを滴下ろうとで加え、150℃で40時間反応させた。薄層クロマトグラフィーで反応が終了したことを確認後、この混合物溶液中から有機物を分離、再結晶による精製をして、4−チオフェノキシフェニルメチルスルフィド 43.8g(189mmol)を得た。続いて得られた4−チオフェノキシフェニルメチルスルフィド40.0g(172mmol)とN,N−ジメチルホルムアミド300mlを温度計、冷却管をつけた三口フラスコに入れ、ナトリウムチオt−ブチラート21.3g(190mmol)をN,Nで反応が終了したことを確認後、この混合物溶液中から有機物を分離、再結晶による精−ジメチルホルムアミド300mlに溶解したものを滴下ろうとで加え、150℃で4時間反応させた。薄層クロマトグラフィー製をして、4−チオフェノキシベンゼンスルフィド32.2g(148mmol)を得た(収率86%)。
【0144】
(2)長分岐型スルフィドの合成
(1)でチオフェノールの代わりに(1)で得た4−チオフェノキシベンゼンスルフィド30.0g(138mmol)を用いる以外は同様にして、長分岐型スルフィド(下記式(64))31.0gを得た(収率83%)。
【0145】
【化55】

【0146】
(3)スルホン化反応
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに長分岐スルフィド(上記式(64))31.0g(57.2mmol)とクロロホルム200mlを入れ、乾燥窒素で系内を置換した。これに室温でクロロホルム100mlに溶解したクロロ硫酸7.34g(63.0mmol)をゆっくり滴下した。室温にて4時間、さらに冷却管を取り付けてクロロホルム還流下で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィーにて全ての原料ポリマーが反応したことを確認したあと、減圧下クロロホルムとクロロ硫酸を留去し精製して長分岐スルフィドのスルホン化物(下記式(65))36.1gを得た(収率90%)。
【0147】
【化56】

【0148】
(4)酸化反応
温度計をつけた二口フラスコに、長分岐スルフィドのスルホン化物36.0g(51.3mmol)と酢酸200mlを入れた。この混合物に30%過酸化水素水116g(1.03mmol)を加え、3時間還流した。系内の固体を吸引ろ過して水洗し、100℃にて真空乾燥して長分岐型スルホンのスルホン化物(下記式(66))42.8gを得た(収率95%)。
【0149】
【化57】

【0150】
(5)塩素化
長分岐型スルホンのスルホン化物(上記式(66))30.0g(34.2mmol)を温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに入れ、クロロホルム100mlを入れて溶解させる。滴下ろうとで塩化チオニル3.74g(37.6mmol)をゆっくり滴下し、90分還流したあと、クロロホルムを留去して真空乾燥し、長分岐型スルホンの塩化スルホニル(下記式(67))27.0gを得た(収率88%)。
【0151】
【化58】

【0152】
(6)ポリエーテルスルホンへの長分岐型スルホンの塩化スルホニルの導入反応
参考例8の(2)でビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホニルクロライドの代わりに長分岐型スルホンの塩化スルホニルを用いる以外は同様にして、長分岐型スルホンの側鎖を有するポリエーテルスルホン(下記式(68))を得た。収量は2.05gであった。上記で得た高分子電解質[下記式(68)]を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、調湿した高分子電解質フィルムを得た。物性測定結果を表2に示す。
【0153】
【化59】

【0154】
[参考例10]高分子電解質10の製造
(1)ビス(3,5−チオフェノキシ)ベンゼンスルフィドの合成
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに3,5−ジブロモ-1-フルオロベンゼン50.0g(197mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド300mlを入れ、ナトリウムチオメチラート15.2g(217mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド100mlに溶解したものを滴下ろうとでゆっくり滴下し、20℃で4.5日間攪拌して反応させた。薄層クロマトグラフィーにて全ての3,5−ジブロモ-1-フルオロベンゼンが反応したことを確認したあと、この混合物溶液中から有機物を分離、再結晶による精製をして、3,5−ジブロモフェニルメチルスルフィド48.3g(171mol)を得た(収率87%)。次に温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに3,5−ジブロモフェニルメチルスルフィド45g(160mmol)、酸化銅22.4g、ピリジン60mlキノリン240mlを入れ、チオフェノール38.7g(352mmol)をピリジン20mlキノリン80mlに溶解・分散したものを滴下ろうとで加え、150℃で40時間反応させた。薄層クロマトグラフィーで反応が終了したことを確認後、この混合物溶液中から有機物を分離、再結晶による精製をして、ビス(3,5−チオフェノキシ)フェニルメチルスルフィド45.7g(134mmol)を得た。続いて得られたビス(3,5−チオフェノキシ)フェニルメチルスルフィド40.0g(118mmol)を温度計、冷却管をつけた三口フラスコに入れ、ナトリウムチオt−ブチラート14.5g(129mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド300mlに溶解したものを滴下ろうとで加え、150℃で4時間反応させた。薄層クロマトグラフィーで反応が終了したことを確認後、この混合物溶液中から有機物を分離、再結晶による精製をして、ビス(3,5−チオフェノキシ)ベンゼンスルフィド33.1g(101mmol)を得た(収率86%)。
【0155】
(2)多分岐型スルフィド(下記式(69))の合成
(1)でチオフェノールの代わりに(1)で得たビス(3,5−チオフェノキシ)ベンゼンスルフィド30.0g(92.0mmol)を用いる以外は同様にして、多分岐型スルフィド(下記式(69))31.4gを得た。(収率90%)
【0156】
【化60】

【0157】
(3)スルホン化反応
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに多分岐型スルフィド(上記式(69))30.0g(39.6mmol)とクロロホルム200mlを入れ、乾燥窒素で系内を置換した。これに室温でクロロホルム100mlに溶解したクロロ硫酸5.07g(43.5mmol)をゆっくり滴下した。室温にて4時間、さらに冷却管を取り付けてクロロホルム還流下で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィーにて全ての原料スルフィドが反応したことを確認したあと、減圧下クロロホルムとクロロ硫酸を留去し精製して多分岐型スルフィドのスルホン化物(下記式(70))36.3gを得た(収率85%)。
【0158】
【化61】

【0159】
(4)酸化反応
温度計をつけた二口フラスコに、多分岐型スルフィドのスルホン化物36.0g(33.4mmol)と酢酸200mlを入れた。この混合物に30%過酸化水素水114g(1.00mol)を加え、3時間還流した。系内の固体を吸引ろ過して水洗し、100℃にて真空乾燥して多分岐型スルホンのスルホン化物(下記式(71))39.6gを得た(収率90%)。
【0160】
【化62】

【0161】
(5)塩素化
多分岐型スルホンのスルホン化物(上記式(71))30.0g(22.8mol)を温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに入れ、クロロホルム100mlを入れて溶解させる。滴下ろうとで塩化チオニル2.49g(25.0mmol)をゆっくり滴下し、90分還流したあと、クロロホルムを留去して真空乾燥し、多分岐型スルホンのスルホニルクロライド(下記式(72))27.1gを得た(収率89%)。
【0162】
【化63】

【0163】
(6)ポリエーテルスルホンへの多分岐型スルホンのスルホニルクロライドの導入反応
参考例8−(2)でビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホニルクロライドの代わりに多分岐型スルホンの塩化スルホニルを用いる以外は同様にして、多分岐型スルホンの側鎖を有するポリエーテルスルホン(下記式(73))を得た。収量は2.10gであった。
【0164】
【化64】

上記で得た高分子電解質[上記式(73)]を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、調湿した高分子電解質フィルムを得た。物性測定結果を表2に示す。
【0165】
[参考例11]高分子電解質11の製造
(1)TTBS3の合成
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに1,3,5−トリス(フェニルチオ)−ベンゼン(TTB)50.0g(124mmol)とスルホラン120mlを入れ、乾燥窒素で系内を置換した。液温を70℃に保ち、クロロ硫酸15.9g(136mmol)をゆっくり滴下し、その後1.5時間攪拌した。反応の確認は液体クロマトグラフィー[Agilent社製100シリーズ、カラム:GLサイエンス社製、Intersil ODS−3、移動相:10Mギ酸アンモニウム/アセトニトリル、UV検出波長:254nm]にて行なった。TTBのトリスルホン化物[TTBS3、下記式(74)]53gを含む混合物を得た(収率67%)。
【0166】
【化65】

【0167】
(2)TTBS3Cの合成
TTBS3を含む上記の混合物を、温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに入れた。液温を70℃に保ち、滴下ろうとから塩化チオニル12.4g(124mmol)をゆっくり滴下し、2時間攪拌した。反応の確認は液体クロマトグラフィーにて行なった。TTBトリスルホン化物のスルホニルクロライド[TTBS3C、下記式(75)]18.5gを含む混合物を得た(収率34%)。
【0168】
【化66】

【0169】
(3)ポリエーテルスルホンへの側鎖導入反応
参考例8−(2)でビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホニルクロライドの代わりに上記のTTBS3C[上記式(75)]11.3g(17.1mmol)を含む混合物を用いる以外は同様にして、側鎖スルホン酸ポリエーテルスルホン[下記式(76)]を得た。収量は2.30gであった。
【0170】
【化67】

上記で得た高分子電解質[上記式(76)]を用いたほかは参考例1と同様の方法を用い、調湿した高分子電解質フィルムを得た。物性測定結果を表2に示す。
【0171】
[実施例1]参考例1で製造した高分子電解質フィルム(イオン交換容量2.47meq/g)の両面に金電極を形成した矩形イオン交換樹脂を、1.0mm×20mmの大きさに切断したものを試験片として、0.1N NaOH水溶液に24時間浸漬したものを試験片とし、表・裏の電極を介して電圧を印加(0.1Hz、1.5Vの方形波)して、変位量を測定した。なお、曲げ変位量は、試験片の一方から8mmの位置を白金板で挟んで、水中に保持し、かつ白金板からリード線をのばし、ポテンショスタットを介して試験片の両端の金電極に印加することで行った。変位量は固定端から10mmの位置の変位をレーザー変位計を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0172】
[比較例1〜2]イオン交換樹脂として、上記式(53)(比較参考例1)、デュポン社製
ナフィオン117(イオン交換容量0.91meq/g)を用いたほかは参考例1と同様の方法で矩形イオン交換イオン樹脂成形品を作製し、変位量を測定した。結果を表2に示す。[参考例2〜11]イオン交換樹脂として参考例2〜11で製造した高分子電解質フィルムを用いた(実施例と参考例の数字は各々一致する)ほかは実施例1と同様の方法で矩形イオン交換イオン樹脂成形品を作製し、変位量を測定した。結果を表2に示す。
【0173】
【表2】

【0174】
[実施例12]大気と接触する水面を有し、酸素を飽和濃度で含有する水中で、500時間作動を行なったことの他は、実施例11と同じ条件で測定を実施した。結果を表3に示す。
[比較例3]高分子電解質として比較例1で用いた上記式(53)を用いたことのほかは、実施例12と同様の条件で測定を実施した。結果を表3に示す。実施例12と本比較例の結果を比較すると、酸素を含む水中での長時間の運転を行なった場合、従来の炭化水素系カチオン交換樹脂であるS−PEEKを用いた高分子アクチュエータが経時と共に変位量が低下するのに比べ、本発明のカチオン交換樹脂を用いた高分子アクチュエータは、特性の低下がないことが判る。
【0175】
【表3】

【0176】
以上の結果から、特定構造の高分子電解質を用いる本発明の高分子アクチュエータは、比較例1のように従来より用いられているイオン交換樹脂(炭化水素系イオン交換樹脂およびフッ素系イオン交換樹脂)を用いる高分子アクチュエータと比べて、変位量が大きく、酸素が存在する条件で長時間作動させても特性の低下することはないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明は、産業機器や医療機器の分野において小型でかつ軽量で柔軟性に富む、高分子アクチュエータとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明の高分子アクチュエータの電圧無印加状態の概略断面図である。
【図2】本発明の高分子アクチュエータの電圧印加状態の概略断面図である。
【符号の説明】
【0179】
1 本発明の高分子アクチュエータ
2 イオン交換樹脂
3−1、3−2 電極
4−1、4−2 リード線
5 開閉器
6 電源
7 カチオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)を有するイオン交換樹脂の含水物を一組以上の金属電極間に配置してなるアクチュエータ。
【化1】

(Yは(k+2)価の芳香族残基を表し、Pは −CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CONH−、−C(CF−、単結合から選ばれる連結基であり、kは1〜4の整数であって、式中の側鎖部分Zは、下記一般式(2)で表される。
Z=−(XAr(B))−(XAr(B))−・・・−(Xn−1Arn−1(Bn−1))−(XAr) (2)
上記一般式(2)中のB〜Bn−1は、側鎖部分Zにおける分岐鎖を意味し、以下の式で表される。
=−〔(XAr(B))−(XAr(B))−・・・−(Xn−1Arn−1(Bn−1))−(XAr)〕
=−〔(XAr(B))−・・・−(Xn−1Arn−1(Bn−1))−(XAr)〕



n−1=−〔XAr
上記一般式(2)中
nは各々独立に2〜5の整数、
fは各々独立に0〜5の整数、
Ar〜Arは各々独立に芳香族残基であって、
〜Xは各々独立に−CO−、−CONH−、−(CF−(pは1〜10の整数)、−C(CF−、−COO−、−SO−、−SO−から選ばれる連結基である。
そして、Zは−SOH基の1.0を超える数を有する。)
【請求項2】
Pが −CO−、−O−、−S−、−SO−、−C(CF− から選ばれる連結基であることを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
kが1〜2の整数であり、fが各々独立に0〜2の整数であることを特徴とする請求項1または2記載のアクチュエータ。
【請求項4】
少なくとも一つのfが1または2であることを特徴とする請求項3記載のアクチュエータ。
【請求項5】
fが0または1であり、少なくとも一つのfが1であることを特徴とする請求項3記載のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−43778(P2007−43778A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222915(P2005−222915)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】