高分子カップリング剤およびそれらから製造された薬学的に活性のあるポリマー
一般式(I)の薬学的に活性のある高分子化合物について開示する:
Y-[Yn-LINK B-X]m-LINK B (I)
(式中、(i)Xは、一般式(II)のカップリングされた生物学的カップリング剤であり:
Bio-LINK A-Bio (II)
ここで、Bioは、加水分解可能な共有結合を介してLINK Aへ連結された生物学的活性物質断片またはそれらの前駆体であり;および、
LINK Aは、Bio断片の各々に連結された理論的分子量<2000のカップリングされた中心の柔軟な線状第一セグメントであり;
(ii)Yは、LINK B-OLIGOであり;ここで
(a)LINK Bは、一つのOLIGOを別のOLIGOへ、およびOLIGOをXまたはそれらの前駆体へ連結しているカップリングされた第二のセグメントであり;かつ
(b)OLIGOは、分子量5,000未満を有し、100個未満の単量体反復単位を含む、長さの短いポリマーセグメントであり;
(iii)mは、1〜40であり;かつ
(iv)nは、2〜50から選択される)。これらの化合物は、生体材料、特にインビボにおいて、抗菌活性を提供する際に有用である。薬学的に活性のある高分子化合物の調製における中間体として有用な生物学的カップリング剤も提供される。
Y-[Yn-LINK B-X]m-LINK B (I)
(式中、(i)Xは、一般式(II)のカップリングされた生物学的カップリング剤であり:
Bio-LINK A-Bio (II)
ここで、Bioは、加水分解可能な共有結合を介してLINK Aへ連結された生物学的活性物質断片またはそれらの前駆体であり;および、
LINK Aは、Bio断片の各々に連結された理論的分子量<2000のカップリングされた中心の柔軟な線状第一セグメントであり;
(ii)Yは、LINK B-OLIGOであり;ここで
(a)LINK Bは、一つのOLIGOを別のOLIGOへ、およびOLIGOをXまたはそれらの前駆体へ連結しているカップリングされた第二のセグメントであり;かつ
(b)OLIGOは、分子量5,000未満を有し、100個未満の単量体反復単位を含む、長さの短いポリマーセグメントであり;
(iii)mは、1〜40であり;かつ
(iv)nは、2〜50から選択される)。これらの化合物は、生体材料、特にインビボにおいて、抗菌活性を提供する際に有用である。薬学的に活性のある高分子化合物の調製における中間体として有用な生物学的カップリング剤も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、中間体としての高分子カップリング剤、それらから生成された薬学的に活性のあるポリマー、前記ポリマーを含有する組成物、およびそれらから製造された造形品に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
薬物注入および血液透析のアクセスなどの多種多様な医療状況のために、移植可能な医療用具を利用することは一般的になってきている。しかし医療用具の移植は、感染症(1)、炎症(2)、過形成(3)、凝固(4)のリスクを伴うことが多い。従って、増強された生体適合性を提供する材料をデザインすることは重要である。生体適合性は、特定の適用において適切な宿主反応を生じる材料の能力と定義される。宿主は、そこに生体材料が配置され、およびそれは血液、骨、軟骨、心臓、脳などとは異なるような環境に関連している。その独特な生物医学は、特定のポリマー群が有し得る恩恵に関連しているにもかかわらず、これらの材料自身は、生物医学的用具に一旦混入されると、それらは意図された特定の適用に関連した重要な生体適合性の問題点を全て満たすことができないので、それらの性能には固有の限界があることがある。例えば一つの材料は、血小板に関連したある抗凝固特性を有する一方で、これは凝固カスケードの重要な特性に対処することができず、細菌のコロニー形成を阻止することもできない。別の材料は、抗微生物機能を発揮することができるが、長期適用に関して生体安定性がないことがある。生物医学的用具における多機能性特徴の組込みは、複雑で経費のかかるプロセスであることが多く、ほとんどの場合一つのポリマー特性または生物学的機能を他のものに妥協させるが、それでも全ての血液および組織に接触する用具は、改善された生体適合性の特徴から恩恵を受けることができる。例え最も単純な用具における凝固反応、毒性反応、炎症反応、感染、免疫応答であっても、患者に死亡または不可逆的損傷を招くことがある。ほとんどの血液および組織材料の相互作用は、生物学的環境と医療用具の間の境界面で生じるので、高分子材料の外側分子層(ほとんどミクロン以下の層)の作製は、この境界面での生物学的相互作用に関連している。塊状ポリマーの浸食による新たな表面へ連続曝露が、表面の生体適合性部分の連続的回復(renewal)を必要とする場合に、これは、生分解性ポリマーシステムにとって特に困難な問題点である。
【0003】
医療用具表面の生体適合性を改善するために、ポリマーコーティングを含む生体活性物質が開発されている。Patnaikら(5)は、医療用具上の生体活性物質のコーティングを提供するために、親水性のイソシアネート/アミン-末端を有するスペーサーを介して、ヘパリン(抗凝固薬)のような生体活性物質をポリマー基材へ結合する方法を説明している。この研究者は、この生体活性物質の活性は、スペーサー基が分子量約100〜10,000ダルトンを有する場合に実現されることを認めた。しかし最も好ましくはこれは4000ダルトンである。残念なことに、ヘパリンは表面に限定されおよびポリマー鎖の塊状構造を形成しないので、このような材料は、生分解を受けおよび新たな組織一体化(integration)で置き換わることが意図されない基材にのみ適用可能であると思われる。
【0004】
生体材料デザインの別の例は、感染症の制御に関連している。最近10年間、医療用具感染症に関連したもののような問題点を解決しようとして、多くの戦略が使用されている。一つの方法は、細菌の接着を低下させるために、より生体適合性のある移植可能な用具を提供することである。銀被覆されたカテーテルが、長期静脈アクセス(6)および腹膜透析(7)に関連した出口部感染症を予防するために使用されている。しかし長期試験は、出口部感染症の数および重症度を有意に低下させることを明らかにすることに失敗した。加えて銀に対する耐性菌が、長年に渡り発生しており、これは多剤耐性のリスクを有する(8)。
【0005】
細菌接着は非常に複雑なプロセスであるので、細菌接着の完全な予防は、受動的方法によってのみ実現することは困難である。局所的に制御された薬物送達の必要性が依然残っている。この方法の利点は、1)同様の局所的薬物濃度を得るのに十分な全身性投与量から受ける全身毒性または副作用を伴わずに、高い且つ持続性の局所的薬物濃度が実現されること;2)例え全身性に使用される場合に迅速に代謝されるかまたは不安定な物質であっても、高い局所的薬物濃度が実現されること;3)部位指定送達の一部の形は、動脈壁からのその流出を防ぐかまたはビヒクルもしくは長期間作用を有する物質の使用のいずれかにより、局所的薬物作用を確立しかつ維持する可能性を有すること;4)放出の開始の引金を引きおよび/または感染症の状態に応じ放出速度を変更することができるような洗練された薬物送達システムをデザインする可能性をもたらすこと;である。
【0006】
生体活性物質放出コーティングを得るための複合材料の形で薬物およびポリマーを含有する組成物を得る方法は、公知である。例えば、Chudzikら(9)は、生体活性物質(例えば薬物)および2種のポリマー、すなわちポリ(メタクリル酸ブチル)およびポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)を含有するコーティング複合材料を配合した。前記配合により形成されたコーティングは、重要な薬物放出に加え、良好な耐久性および柔軟性を提供し、これはステントおよびカテーテルなど、それらの送達および/または使用の過程において著しい屈曲および/または膨張を受ける用具の用途に特に適合することができる。これらの方法は、高い薬物濃度での局所化された送達の利点があるが、薬物の長期に渡る持続されおよび制御された放出を維持することはできない。Raghebら(10)は、生体活性物質のポリマーコーティングからの制御された放出の方法を見出した。ここでは、二つのポリマーのコーティング層が、医療用具へ塗布される。この用具の第一層は、パリレン誘導体のような吸収材である。薬物または生体活性物質は、この層の少なくとも一部に付着される。薬物および第一層の表面上の第二の生体適合性のあるポリマー層は、多孔質でなければならない。このポリマーは、真空蒸着またはプラズマ蒸着により塗布される。薬物放出機構は細孔サイズにより全体的に制御されるので、必要な放出モデルを満足するために第二層内に適当な細孔サイズの分布を作製することは、技術的挑戦であることが多い。更にこの種のシステムは、複数の加工処理工程を必要とし、このことは製造コストを増大し、追加のQA/QC工程を必要とする。
【0007】
前記参考文献に説明された従来の拡散-制御式送達システムに加え、標的送達を改善しおよび送達速度の制御パラメータを変更することにより、薬物効能を変更することができる、いくつかのより洗練されたインサイチュ薬物送達ポリマーが存在する。これらは、生分解性ヒドロゲル(11)、高分子リポソーム(12)、生体吸収性ポリマー(13)およびポリマードラッグ(14〜16)を含む。ポリマードラッグは、ペンダント基としてポリマー鎖に共有結合された、または更にポリマー主鎖に組込まれた、薬学的物質を含む。例えばNathanら(17)は、ペンダント抗生物質としてペニシリンVおよびセフラジンをポリウレタンへ複合した。彼等の研究は、加水分解に脆いペンダント薬物は切断され、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)および溶血性連鎖球菌(S. pyogenes)に対し抗菌活性を発揮することを示した。
【0008】
Ghoshら(18)は、ナリジキシン酸、キノロン系抗生物質をペンダント様式で活性ビニル分子にカップリングした。これらのビニル基は次に重合され、各モノマー上にペンダント抗生物質を伴うポリマーを形成することができる。しかしこのようなペンダント基を有することは、ポリマーの物理構造を劇的に変更する。より良い戦略は、ポリマーの線状主鎖部分内にそのような薬物を有することであろう。彼等はインビボ加水分解試験において、最初の100時間にわたり、薬物部分の50%が放出されたことを報告した。このキノロン系薬物は、尿路感染症の治療において、グラム陰性菌に対して有効であることが示されているが、この薬物の化学修飾物(例えば、シプロフロキサシン、ノルフロキサシンなど)は、より広い活性スペクトルを有する。ごく最近になって、ノルフロキサシンのマンノシル化されたデキストランへの複合に関する研究が報告されている。これは、細胞による薬物取込みを増大しようとして行われ、それらの微生物へのより迅速なアクセスを可能にした(19)。これらの研究は、ノルフロキサシンは、酵素培地試験およびインビボ試験により薬物/ポリマー複合体から放出されること、およびこの薬物/ポリマー複合体は肝臓に宿る結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対し有効であることを示した(20)。このシステムにおいて、ノルフロキサシンは、リソソーム酵素であるカテプシンBによりその切断が可能であるアミノ酸配列へ結合されたペンダントである。
【0009】
Santerre(13a)は、ポリマーへ添加した場合に、事実上無傷のポリマーの塊状特性は残しつつ、表面を生体活性特性を有するように転換する新規材料の合成および使用を説明している。適用は、医用分野を標的としている。これらの材料は、フッ素基の空気/ポリマー境界面への移動(migration)による処理時に、塊状ポリマーの表面に送達されるペンダント薬物を伴う、オリゴマー性のフッ素化された添加物である。これらの材料は、抗微生物薬、抗凝固薬および抗炎症薬を含む、薬物の巨大なアレイを、表面へ送達することができる。しかし修飾は、その表面に限定されている。このことは、ポリマーの生体-浸食過程を通じて持続された活性を必要とする生分解性ポリマーにおける限界となり始めている。
【0010】
SanterreおよびMittleman(14)は、ポリマーのコモノマーの一つとして薬理学的活性物質を使用する、高分子材料の合成を示している。ここで 1,6-ジイソシアネートヘキサンモノマーおよび/または1,12-ジイソシアネートドデカンモノマーまたはそれらのオリゴマー分子が、抗微生物薬シプロフロキサシンと反応され、薬物ポリマーを形成する。この薬理学的活性化合物は、増強された長期の抗炎症、抗菌、抗微生物および/または抗真菌活性を提供する。しかしシプロフロキサシンのカルボン酸基および第2級アミン基は、イソシアネート基との反応が困難であるので、この反応速度論は挑戦的となってきている。加えて製剤は、薬物成分間の強力なファンデルワールス相互作用およびポリマー鎖の水素結合部分は薬物の効果的放出を遅延するので、これを最小にするように選択されなければならない。従ってこのシステムに勝る改善は、理論に結びつけられるものではないが、ポリマーの加水分解時の薬物の制限の少ない接近を保証し、更にイソシアネート基もしくは他のモノマー試薬との反応に関してより均一な化学機能を提供するような物質と、薬物で作製されたバイオモノマーである。
【0011】
文献
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
特に薬物ポリマーまたは複合材料において使用されるポリマーの合成のためにデザインされた、市販のモノマーとして利用することができる薬物の利用可能性には限界があるので、薬物前駆体の特注の合成法が必要である。一般的な市販の薬物が本来提供する化学機能に依存するよりもむしろ、加水分解可能な型のポリマーの合成のための、類似した多官能基、好ましくは類似した二官能基を有するモノマーの提供がより良いと考えられる。本発明は、以下の特徴を同時に組込んでいる、新規のジアミンまたはジオールモノマー群を提供する:1)これらは、加水分解可能な結合を介した、生物学的成分または薬学的成分または生体適合性成分のカップリングのために穏やかな条件下で合成される;2)これらは、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホンアミドの逐次重合(subsequent polymerization)および多くの他の古典的段階成長重合に使用することができる、選択的反応基(二官能性またはそれよりも多い)(アミン(第2級または第1級)およびヒドロキシル基を含む)を含む;3)これらは、生物学的成分または薬学的成分または生体適合性成分を有する限定された分解産物の放出を可能にする、選択的に加水分解可能な基を含む;4)それらの分子量は、4000と高い薬学的試薬または生体適合性試薬の分子量に応じて変動することができるが、典型的にはこれらの分子の分子量は、それらがポリマー内に一旦組込まれた分子セグメントの良好な移動性を有し、および反応重合液中で良好な反応性を有するように、好ましくは2000未満である;5)これらは、薬物のポリマー主鎖間の強力なファンデルワールス力または水素結合のために、そうでなければ加水分解反応において反応性の低い官能基(遮蔽されたエステル、スルホンアミド、アミドおよび酸無水物など)を含む、重要な生物学的試薬、薬学的試薬または生体適合性試薬の導入を増強する戦略を提供する;6)これらの分子は類似した官能基を有するので、これらは、古典的段階成長重合において一貫しより予測可能な反応性を提供する。本発明は、バイオモノマーの独自の合成経路を説明し、ポリマーの合成におけるそれらの使用例を提供し、ならびに生物医学的製品から環境に関連した製品までに及ぶ生分解性材料としての適用のために該ポリマーを加工処理する方法を規定する。
【0013】
本発明の目的は、段階成長ポリマー合成のための良好な反応性を持つバイオモノマー前駆体として、抗炎症薬、抗菌薬、抗微生物薬および/または抗真菌薬などを含む、生物学的カップリング剤/バイオモノマーの合成経路を提供することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、薬学的活性特性を有する生物学的カップリング化合物/モノマーを含む、生物学的ポリマーを提供することである。
【0015】
本発明の更なる目的は、薬学的に活性のある特性を有する造形品を提供するために、前記高分子化合物を、単独で、または相溶性のある高分子生体材料もしくはポリマー複合生体材料と混合して提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、生物医学的セクタ(biomedical sector)内で体液および組織に接触する用具を含む、医療用具として使用するための、または抗感染、抗炎症特性を提供するためのバイオテクノロジーセクタにおいて使用する該造形品を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、抗感染、抗炎症、抗微生物、抗凝固、抗酸化、抗増殖機能を増強するための生物医学的セクタ中の医療用具として使用するために、前記高分子化合物を、コーティングとして単独で、または基剤ポリウレタン、ポリシリコン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリオレフィンもしくはポリアミドのいずれかとの混合物で提供することである。
【0018】
更なる本発明の目的は、前記バイオモノマー、前記バイオモノマーを含むポリマー、前記混合物および前記造形品の製造法を提供することである。
【0019】
本発明は概して、穏やかな条件下で、例えばトリエチレングリコールもしくは他の種類の線状ジオールもしくはジアミンなどであるが限定されない柔軟なジオールまたはジアミンの両側に、生物学的成分または薬学的成分または生体適合性成分を共有的にカップリングする、独自の合成経路を提供する。生体活性物質は、カルボジイミドが媒介した反応を使用することにより、柔軟なジオールまたはジアミンと複合することができる、カルボン酸、スルホネートまたはホスホネート基などの、反応基を有さなければならない。このカップリング反応において使用される生体活性物質は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホンアミドとの逐次重合およびカップリング剤/モノマーを含有する薬学的他の古典的段階成長ポリマーにおいて使用されるような、選択的反応性多官能基、好ましくは二官能基(アミン(第2級または第1級)およびヒドロキシルを含む)も含まなければならない。
【0020】
本発明は一つの局面において、理論的分子量<2000の芳香環、線状または脂肪族(飽和した)セグメントおよび加水分解可能な連結が行うような、柔軟な、すなわち鎖の動的運動を制限しない中心部分を有する生物学的カップリング剤(バイオモノマー)を提供する。
【0021】
従って本発明は、一般式(III)の生物学的カップリング剤を提供する:
PBio-LINK A-PBio (III)
式中、PBioは、LINK Aへ加水分解可能な共有結合を介して連結されおよび段階成長重合を可能にする少なくとも1個の官能基を有する、生物学的活性物質断片またはそれらの前駆体であり;ならびに、LINK Aは、PBio断片の各々へ連結された、理論的分子量<2000のカップリングされた中心の柔軟な線状第一セグメントである。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲において用語「バイオモノマー」は、段階成長重合のための官能基の使用による式(I)の化合物の合成に使用される式(III)の化合物を意味する。
【0023】
最も好ましくは各PBio断片は、段階成長重合において使用するための単独の官能基に限定される。
【0024】
従って更なる局面において、本発明は、一般式(I)の薬学的に活性のある高分子化合物を提供する:
Y-[Yn-LINK B-X]m-LINK B (I)
式中、(i)Xは、一般式(II)のカップリングされた生物学的カップリング剤であり:
Bio-LINK A-Bio (II)
ここで、Bioは、加水分解可能な共有結合を介してLINK Aへ連結された生物学的活性物質断片またはそれらの前駆体であり;ならびに、LINK Aは、Bio断片の各々へ連結された、理論的分子量<2000のカップリングされた中心の柔軟な線状第一セグメントであり;
(ii)Yは、LINK B-OLIGOであり;ここで
(a)LINK Bは、一つのOLIGOを別のOLIGOへ、およびOLIGOをXまたはそれらの前駆体へ連結しているカップリングした第二のセグメントであり;
(b)OLIGOは、分子量5,000未満を有し、および100個未満の単量体反復単位を含む、長さの短いポリマーセグメントであり;
(iii)mは、1〜40であり;かつ
(iv)nは、2〜50から選択される。
【0025】
本発明は別の局面において、前記バイオモノマーで生成された主鎖を有する薬学的に活性のある高分子材料を提供する。このようなポリマーは、理論的分子量が<5,000のオリゴマーセグメントおよび任意の連結セグメントを含み、本明細書で示される[LINK B]は、本明細書で[OLIGO]と示されるオリゴマーセグメントおよび前記バイオモノマーに共有的にカップリングされている。
【0026】
用語「オリゴマーセグメント」は、長さが比較的短い1個または複数の反復単位であり、一般に約50個未満のモノマー単位であり、および分子量10,000未満であるが好ましくは<5000であるようなものを意味する。好ましくは[OLIGO]は、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド、ポリアルキレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリシリコン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリペプチド、多糖類;ならびにそれらのエーテルおよびアミン連結されたセグメントからなる群より選択される。
【0027】
用語「LINK A分子」は、バイオモノマーにおいて、生体活性物質と共に共有的にカップリングする分子を意味する。典型的には、LINK A分子は、分子量範囲60〜2000、好ましくは60〜700を有し、かつ多官能性であるが、好ましくは2種の生体活性物質へのカップリングを可能にするよう二官能性を有する。好ましくは、LINK A分子は、水への溶解度を伴うまたは伴わない、ジオール、ジアミンならびに/またはアミン基およびヒドロキシル基の両方を含む化合物から選択される前駆体モノマーの群から合成される。典型的LINK A前駆体の例を表1に示すが、この一覧に限定されるものではない。
【0028】
(表1)
−エチレングリコール
−ブタンジオール
−ヘキサンジオール
−ヘキサメチレンジオール
−1,5ペンタンジオール
−2,2-ジメチル-1,3プロパンジオール
−1,4-シクロヘキサンジオール
−1,4-シクロヘキサンジメタノール
−トリ(エチレングリコール)
−ポリ(エチレングリコール), Mn:100-2000
−ポリ(エチレンオキシド)ジアミン, Mn:100-2000
−リシンエステル
−シリコンジオールおよびジアミン
−ポリエーテルジオールおよびジアミン
−カーボネートジオールおよびジアミン
−ジヒドロキシビニル誘導体
−ジヒドロキシジフェニルスルホン
−エチレンジアミン
−ヘキサメチレンジアミン
−1,2-ジアミノ-2メチルプロパン
−3,3-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン
−1,4ジアミノブタン
−1,7ジアミノヘプタン
−1,8ジアミノオクタン
【0029】
用語「LINK B分子」は、中心部分内に第二のカップリングセグメントを形成するために、OLIGO単位と共有的にカップリングしている分子を意味する。典型的にはLINK B分子は、分子量範囲60〜2000、好ましくは60〜700を有し、二つのOLIGO単位のカップリングを可能にする二官能性を有する。好ましくはLINK B分子は、ジアミン、ジイソシアネート、ジスルホン酸、ジカルボン酸、二酸塩化物(diacid chlorides)およびジアルデヒドから合成される。オリゴ分子上の末端のヒドロキシル、アミンまたはカルボン酸は、ジアミンと反応し、オリゴ-アミドを形成;ジイソシアネートと反応し、オリゴ-ウレタン、オリゴ-尿素、オリゴ-アミドを形成;ジスルホン酸と反応し、オリゴ-スルホネート、オリゴ-スルホンアミドを形成;ジカルボン酸と反応し、オリゴ-エステル、オリゴ-アミドを形成;二酸塩化物と反応し、オリゴ-エステル、オリゴ-アミドを形成;ならびに、ジアルデヒドと反応し、オリゴ-アセタール、オリゴ-イミンを形成する。
【0030】
用語「薬学的または生物学的活性物質」またはそれらの前駆体は、LINK Aセグメントへ、加水分解可能な共有結合を介してカップリングすることができる分子を意味する。この分子は、いくつかの特異性および意図された薬学的または生物学的作用を有さなければならない。典型的には、[Bio]単位は、医薬品については分子量範囲40〜2000を有するが、生物薬剤についてはその分子の構造に応じてより大きくてもよい。好ましくはBio単位は、抗炎症薬、抗酸化剤、抗凝固薬、抗微生物剤(フルオロキノロンを含む)、細胞受容体リガンドおよびバイオ-接着分子、特にオリゴ-ペプチドおよびオリゴ糖、DNAおよび遺伝子配列結合のためのオリゴ核酸配列、ならびに細胞膜擬態を提供するリン脂質ヘッド部からなる群より選択される。LINK A分子とカップリングした後に、バイオモノマーは、オリゴマーセグメントの第二の基と反応し、LINK B連結を形成することができるように、Bio成分は、ヒドロキシル、アミン、カルボン酸またはスルホン酸から選択される二官能基を有さなければならない。第二の基は、第一の基のLINK Aとの反応の間は保護される。
【0031】
(表2) バイオモノマーカップリング剤の合成に使用される典型的な薬学的分子
【0032】
本発明は、少なくとも2個の官能基を有するが、この一つの官能基はジイソシアネートと低い反応性を有し、オリゴ-ウレタン、またはオリゴ-尿素、オリゴ-アミドを形成;ジスルホン酸と反応し、オリゴ-スルホネート、オリゴ-スルホンアミドを形成;ジカルボン酸と反応し、オリゴ-エステル、オリゴ-アミドを形成;二酸塩化物と反応し、オリゴ-エステル、オリゴ-アミドを形成;ならびに、ジアルデヒドと反応し、オリゴ-アセタール、オリゴ-イミンを形成するような、インビボでの薬理学的活性成分を提供するために、先に規定されたような生体反応性がある、薬理学的活性のある化合物を特に重視している。このような薬理学的物質は、抗生物質のフルオロキノロンファミリー、または前記表2に列記した型の抗凝固薬、抗炎症薬もしくは抗増殖薬を含む。
【0033】
本発明は特に、薬理学的-活性断片が、米国特許第4,670,444号に開示されたような抗菌薬、7-アミノ-1-シクロプロピル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリンおよびナフチリジン-3-カルボン酸から形成されるような使用である。これらのクラスの化合物で最も好ましい抗菌薬のメンバーは、各々一般名シプロフロキサシンおよびノルフロキサシンである、1-シクロプロピル-6-フルオロ-1,4-ジヒドロ-4-オキソ-7-ピペラジン-キノリン-3-カルボン酸および1-エチル-6-フルオロ-1,4-ジヒドロ-4-オキソ-7-ピペラジン-キノリン-3-カルボン酸である。このクラスの他のものは、スパルフロキサシンおよびトロバフロキサシンを含む。
【0034】
理論に結びつけられるものではないが、先に定義したようなLINK Aの存在は、本発明の生物学的に活性のあるポリマーにおける「バイオ間の距離(inter-bio distance)」を満足することを可能にすると考えられ、ここでバイオ-間の距離は、生物学的に活性のある成分を放出するために、インビボにおける加水分解を促進する。LINK Aは、鎖長の変動のために、ならびにおそらく更に鎖長の変動から生じる立体的およびコンホメーションの変動のために、幅のある加水分解速度を提供する。
【0035】
LINK A鎖長の変動を有さないが、二つの生物学的実体間にLINK B鎖長を有する先行技術の化合物は、加水分解速度のこの有利な変動を提供することができない。
【0036】
本発明は特に、薬理学的活性のある断片が、抗炎症薬で、一般名オキサセプロールを有する、(2S,3S)-1-アセチル-4-ヒドロキシ-ピロリジン-2-カルボン酸、および一般名エノキソロンを有する、(2S4aS,6aS,6bR,8aR,10S,12aS,12bR,14bR)-10-ヒドロキシ-2,4a,6a,6b,9,9,12a-ヘプタメチル-13-オキソ-1,2,3,4,4a,5,6,6a,6b,7,8,8a,9,10,11,12,12a,12b,13,14b-イコサヒドロ-ピセン-2-カルボン酸から形成されるような使用である。
【0037】
本発明は、特に、薬理学的活性のある断片が、抗血栓薬で、一般名チロフィバンを有する、(S)-2-(ブタン-1-スルホニルアミノ)-3-[4-(4-ピペリジン-4-イル-ブトキシ)フェニル]-プロピオン酸、および一般名ロトラフィバンを有する、[(S)-7-([4,4']ビピペリジニル-1-カルボニル)-4-メチル-3-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン-2-イル]酢酸から形成される使用である。
【0038】
本発明は、特に、薬理学的活性のある断片が、抗新生物形成薬(anti-neuplastic)で、一般名アシビシンを有する、(αS,5S)-α-アミノ-3-クロロ-2-イソオキサゾルアセティック-5-酢酸、および一般名アルケレン(Alkeren)を有する、4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ-]-L-フェニルアラニンから形成される使用である。
【0039】
このオリゴマーポリマーセグメントは、好ましくは、分子量<10,000を有し;より好ましくは、<5,000を有する。
【0040】
本明細書における用語「理論的分子量」は、任意の所定の生体活性ポリマーの合成に利用される試薬の反応から生じる絶対分子量に与えられた用語である。当技術分野において周知であるように、絶対分子量の実際の測定値は、ゲル透過クロマトグラフィーを使用するポリマーの分子量分析の物理的限界により複雑である。従ってポリスチレンと同等の分子量が、ゲル透過クロマトグラフィー測定により報告される。多くの薬学的活性化合物は、UV領域の光を吸収するので、ゲル透過クロマトグラフィー技術は、ポリマー鎖内にカップリングされた薬学的に活性のある化合物の分布を検出する方法も提供する。
【0041】
本発明の実践において使用する高分子材料は、2x103〜1x106の範囲、好ましくは2x103〜2x105の範囲の、ポリスチレンと同等の分子量を有する。
【0042】
更なる局面において、本発明は、好ましくは造形品の形で、先に定義されたように、バイオモノマーを単独で、またはバイオモノマーを含むポリマーと混合した基剤ポリマーを含有する高分子組成物を提供する。
【0043】
本発明の前述の生物活性のあるポリマーと混合して使用される典型的基剤ポリマーの例は、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリシリコン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエンスチレン)、ポリアミド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セルロースおよび他の多糖類を含む。好ましいポリマーは、ポリアミド、ポリウレタン、ポリシリコン、ポリスルホン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル誘導体、ポリペプチド誘導体および多糖類誘導体を含む。より好ましくは、生分解性基剤ポリマーの場合、これらはセグメント化されたポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、多糖類またはポリアミドを含む。
【0044】
本発明の前記バイオモノマーを含むポリマー、または混合された組成物は、製品を被覆する表面として、または最も好ましくはこれらのポリマーもしくは混合物が、1)自立式構造体(structural body)、2)フィルム;もしくは、3)ファイバー、好ましくは織物または編物に形成されることが可能な型である場合に、使用することができる。この組成物は、製品、好ましくは生物医学的用具または一般的バイオテクノロジー的用途のための用具の表面または全体もしくは一部を構成することができる。前者の場合の用途は、心臓補助装置、組織工学用高分子足場および関連用具、心臓代替装置、心臓中隔パッチ、大動脈内バルーン、経皮的心臓補助装置、体外循環、動静脈瘻、透析の構成要素(チューブ、フィルター、メンブレンなど)、アフェレシスユニット、膜式酸素加装置、心臓バイパス構成要素(チューブ、フィルターなど)、心嚢、コンタクトレンズ、蝸牛インプラント、縫合材、縫合リング、カニューレ、避妊具、注射筒、o-リング、膀胱、陰茎インプラント、薬物送達システム、排液チューブ、ペースメーカーリード絶縁体、心臓弁、輸血バッグ、移植可能なワイヤ、カテーテル、血管ステント、血管再建バルーンおよび用具のためのコーティング、包帯、心臓マッサージ用カップ、気管チューブ、乳房インプラントコーティング、人工ダクト、頭蓋顔面および顎顔面の再建用途、靱帯、卵管を含む。後者の用途は、環境に優しい製品(ごみ袋、ボトル、容器、貯蔵バッグおよび装置、昆虫、生物学的活性のある汚染物質の制御、細菌もしくはウイルス性物質の除去、飲料品および食品の栄養価の増強を含む健康関連因子の促進を含む、様々な生物学的システムを制御するための環境へ試薬を放出することができる製品、または生物学的システム(ヒト、動物およびその他を含む)に塗布される様々な軟膏剤およびクリーム剤を含むが、これらに限定されるものではない)において使用される生体吸収性ポリマーの合成を含む。
【0045】
好ましい局面において、本発明は、先に定義されたような、セグメント化されたポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、多糖類、ポリアミドまたはポリシリコンのいずれかを、前記バイオモノマーを含有する相溶性のあるポリマーとの混合することを含む、混合された組成物を提供する。
【0046】
本発明に係るバイオモノマーを含むポリマーは、ポリマーセグメント、すなわち[oligo]セグメント、ならびに固有の抗凝固薬、抗炎症薬、抗増殖、抗酸化、抗微生物能のいずれかを伴う生化学的機能物(biochemical function)、細胞受容体リガンド、例えばペプチドリガンド、および生体接着分子、例えばオリゴ糖、DNAおよび遺伝子配列結合のためのオリゴ核酸配列、または生体活性成分の前駆体を含む、ポリマーの主鎖内のバイオモノマーを含む様式で合成される。
【0047】
生じたインビボでの薬理学的活性は、例えば抗炎症、抗菌、抗微生物、抗増殖、抗真菌などであるが、本発明は、そのような生物学的活性に限定されない。
【0048】
本発明をより良く理解するために、ここで、添付図面を参照し、好ましい態様はを単なる例として説明する。
【0049】
好ましい態様の詳細な説明
バイオモノマーの合成
生成物Dの生物学的カップリング剤/バイオモノマーの調製に関する新規プロセスの説明をスキームAに示し、ここでRは、ノルフロキサシンおよびシプロフロキサシンについて、各々CH2CH3またはシクロプロピルである。典型的にはLink A分子は、分子量範囲60〜2000、好ましくは60〜700を有し、ならびに少なくとも2個の[Bio]単位のカップリングを可能にするために、少なくとも二官能性を有さなければならない。[Bio]単位は、分子量<2000を有するが、これはその分子の構造によりより大きくてもよい。好ましい[Bio]成分は、以下の範疇および例を含むが、これらに限定されるものではない:抗炎症薬:非-ステロイド系-オキサセプロール、ステロイド系エノキソロン;抗血栓薬:チロフィバン、ロトラフィバン;抗凝固薬:ヘパリン;抗増殖薬:アシビシンおよびアルケレン;抗微生物薬:フルオロキノロン、例えばノルフロキサシン、シプロフロキサシン、スパルフロキサシンおよびトロバフロキサシン、ならびに他のフルオロキノロン。
【0050】
スキームAは、式(I)の生成物Dの化合物を調製するための一般的合成法を提供する。
【0051】
スキーム1:生体活性モノマーの合成経路
【0052】
工程Aにおいて、ノルフロキサシンまたはシプロフロキサシン(塩酸塩の形)のような薬学的活性薬物は、トリエチレンアミンの存在下で、ハロゲン化トリチルのような保護基と反応し、トリチル基で保護されたアミン基およびカルボン酸基の両方の基を持つ中間体を提供する。当業者には、他の保護基を、本明細書の例において例証されたように使用することができることは理解される。
【0053】
適当なハロゲン化トリチルは、クロロホルムのような適当な溶媒中でノルフロキサシンまたはシプロフロキサシンの塩酸塩と反応される。多くの他の溶媒が、選択された保護基の溶解度およびバイオモノマーを形成する物質に応じて必要であることがある。適当なハロゲン化トリチルは、塩化トリチルおよび臭化トリチルである。好ましいハロゲン化トリチルは、塩化トリチルである。ハロゲン化トリチルの量は、ノルフロキサシン/シプロフロキサシンの2〜4モル当量の範囲であり、好ましい量は、2.2モル当量である。トリエチルアミンが、副産物として生成される遊離のHClを捕捉するために添加される。やや過剰量のトリエチルアミンは、次の選択的加水分解工程におけるN-トリエチルアミン基の脱保護を避けるであろう。シプロフロキサシンの場合、2〜4倍のような過剰モル量のトリエチレンアミンが、反応混合物へ添加された。好ましい量は、3倍である。反応混合物は、温度範囲0〜60℃で、2〜24時間の範囲の期間攪拌される。好ましい攪拌時間は4時間であり、および好ましい温度は25℃である。均質な溶液が得られる。この工程に続けて、生成物Aが、現場反応の次工程のための反応液中に残存される。生成物Aの単離は、処理の間は不要である。
【0054】
工程Bにおいて、トリチル基により保護されたアミンおよびカルボン酸基の両方を伴う、ノルフロキサシン/シプロフロキサシンのような、工程Aの反応生成物は、選択的に脱保護され、遊離のカルボン酸およびN-トリエチルアミン基を含む生成物Bを得る。
【0055】
例えば、工程Bにおいて、大量のメタノールが工程Aの反応混合物へ添加される。メタノール量は、工程Aで使用される溶媒量と当量から2倍までの範囲である。好ましい量は、溶媒量の1.5倍である。この反応混合物は、温度範囲25℃〜60℃で、1〜24時間攪拌される。好ましい攪拌時間は2時間であり、および好ましい温度は50℃である。選択的に脱保護されたフルオロキノロン物質は、反応液から沈殿する。生成物Bは、この反応混合物の室温への冷却後の濾過により、反応ゾーンから回収される。生成物Bは更に、標準の再結晶法により、CHCl3/メタノール(9:1)から精製される。
【0056】
工程Cにおいて、精製されたアミン-保護されたフルオロキノロンは、柔軟なおよび/または水溶性の中心部分を含むジオールまたはジアミン(この例では、トリエチレングリコールが使用される)の両側へカップリングされる。
【0057】
例えば精製されたアミン-保護されたフルオロキノロン(生成物B)が、ここでEDACと記される1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジミドのような適当なカップリング剤、および触媒のここでDMAPと記される4-(ジメチルアミノ)ピリジンのような適当な塩基の存在下で、トリ(エチレングリコール)へカップリングされる。他のカップリング試薬は、CMC(1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリノエチル)カルボジイミド)、DCC(N,N'-ジシクロヘキシル-カルボジイミド)、DIC(ジイソプロピルカルボジイミド)などの様々なカルボジイミドを含むことができるが、これらに限定されない。ジオールの量は、生成物Bの0.3〜0.5モル当量である。ジオールの好ましい量は、生成物Bの0.475モル当量である。カップリング剤EDACの量は、生成物Bの2〜10倍モル当量の範囲である。EDACの好ましい量は、8倍モル当量である。塩基DMAPの量は、生成物Bの0.1〜同数のモル量の範囲である。好ましい量は、0.5モル当量である。この反応は、窒素、アルゴンなどの希ガス大気下、ジクロロメタンなどの適当な溶媒中で進行される。他の溶媒は、生成物Bとのそれらの溶解度特性、ならびに試薬とのそれらの反応可能性に応じて適宜であってよい。これらの反応体は、典型的には24時間〜2週間の範囲の期間、温度範囲0℃〜50℃で攪拌される。好ましい攪拌時間は1週間であり、好ましい温度は25℃である。
【0058】
反応が完了した後、溶媒は、回転蒸発器により除去される。残渣を、水で数回洗浄し、EDACのような可溶性試薬を除去する。その後固形物はクロロホルムに溶解される。スキーム1の生成物Cは、抽出溶媒としてクロロホルムを使用する標準の抽出法により、溶液から回収される。生成物Cは、クロロホルム/メタノール/水酸化アンモニウム水溶液(9.2:0.6:0.2)で作製された展開剤を使用する、カラムクロマトグラフィーにより単離される。更に生成物Cは、クロロホルムおよびメタノールからの再結晶技法により精製される。
【0059】
工程Dにおいて、精製された生成物CのN-トリエチルアミン基は、脱保護され、対応する所望の薬学的カップリング剤/バイオモノマーを生じる。
【0060】
例えば適当な生成物Cは、ジクロロメタンのような適当な有機溶媒中で、少量の水と、トリフルオロ酢酸のような少量の弱酸の存在下で反応される。水の量は、1%〜10容量%の範囲であることができ、好ましい量は1%である。トリフルオロ酢酸の量は、1%〜10容量%の範囲であり、好ましい量は2%である。この反応混合物は、温度範囲0℃〜50℃で、2〜24時間の期間攪拌される。好ましい温度は25℃であり、好ましい期間は4時間である。生成物Dは、反応液から沈殿され、濾過により収集される。この生成物は更に、CHCl3による洗浄により精製される。
【0061】
ポリマー合成におけるバイオモノマーの使用
薬学的活性ポリマーは、当技術分野において周知の古典的段階重合法により合成される。多官能性LINK B分子および多官能性オリゴ分子は反応し、プレポリマーを形成する。このプレポリマー鎖は、バイオモノマーにより延長され、バイオモノマーを含むポリマーを得る。エチレンジアミン、ブタンジオール、エチレングリコールなどの非生物学的鎖延長剤も使用することができる。Link B分子は、バイオモノマーを含む線状ポリマーの形成に有利となるように、事実上二官能性であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。生物医学的およびバイオテクノロジー的用途に好ましいLink B分子は、ジイソシアネート:例えば、2,4-トルエンジイソシアネート;2,6-トルエンジイソシアネート;メチレンビス(p-フェニル)ジイソシアネート;リシンジイソシアネートエステル;1,6-ヘキサンジイソシアネート;1,12-ドデカンジイソシアネート;ビス-メチレンジ(シクロヘキシルイソシアネート);トリメチル-1,6-ジイソシアネートヘキサン、ジカルボン酸、二酸塩化物、ジスルホニルクロリドなどである。オリゴ成分は、バイオモノマーを含む線状ポリマーの形成に有利となるように、二官能性であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。好ましいオリゴ成分は、例えば、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、;ポリエチレン-ブチレンコ-ポリマー;ポリブタジエン;ポリカプロラクトン、ポリ乳酸および他のポリエステルを含む、ポリエステル;ポリウレタン/スルホンコ-ポリマー;ポリウレタン;ポリアミド;オリゴペプチド(ポリアラニン、ポリグリシンまたはアミノ酸コポリマー)およびポリ尿素を含むもの;ポリアルキレンオキシド、および特にポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシドおよびポリテトラメチレンオキシド;の末端がジアミンおよびジオールの試薬である。[oligo]基の分子量は、10,000未満であるが、分子量5000未満が好ましい。プレポリマーの生体活性ポリマーへの合成は、プレポリマーをLink B分子により末端キャップ形成するために、試薬の所望の組合せを使用する古典的ウレタン/尿素反応であるが、過剰量のLink B分子を使用し実行することができる。望ましい鎖長を伴うプレポリマーが反応される場合、バイオモノマーが添加され、プレポリマー鎖を延長し、最終の生体活性ポリマーを得る。あるいはバイオモノマーは、オリゴ基として含むために置換されてもよい。
【0062】
生体活性ポリマーは、様々な成分および化学量で合成することができる。合成前に、LINK B分子は好ましくは、減圧蒸留され、残存する水分が除去される。バイオモノマーは乾燥され、全ての水分が除去される。オリゴ成分は一晩脱気され、残存する水分および低分子量の有機物が除去される。
【0063】
反応体は実践上溶媒の非存在下で反応することができるが、最終生成物の特徴をうまく制御するために、これらの試薬の化学的性質と相溶性のある有機溶媒を使用することが好ましい。典型的有機溶媒は、例えばジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、エーテル、クロロホルム、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドを含む。好ましい反応溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO、Aldrich Chemical Company、ミルウォーキー、WI)である。
【0064】
一部のジイソシアネート、例えばDDIおよびTHDIは、オリゴ前駆体ジオールと反応活性が低いという観点から、この合成には触媒が好ましい。典型的触媒は、ウレタン化学合成に使用されるものに類似しており、ジブチルスズジラウレート、オクタン酸第一スズ、N,N'-ジエチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、1,4-ジアゾ(2,2,2)ビシクロ-オクタンおよびジルコニウム錯体、例えばテトラキス(2,4-ペンタンジオネート)ジルコニウム錯体などである。
【0065】
プレポリマー調製の第一工程において、例えばLink B分子は、オリゴ成分、任意に触媒に添加され、生体活性ポリマーのプレポリマーを提供する。この反応混合物は、温度60℃で、反応成分および化学量によって決まる適当な期間攪拌される。別の温度範囲は、25℃〜110℃であることができる。引き続きバイオモノマーが、プレポリマーに添加され、一般にこの混合物は、一晩反応させる。この反応は、メタノールで停止し、生成物はエーテルまたは蒸留水のエーテルもしくは他の適当な溶媒との混合液中で沈殿される。沈殿は、アセトンなどの適当な溶媒に溶解され、エーテルまたは蒸留水とエーテルの混合液中に再度沈殿される。このプロセスは、あらゆる残存する触媒化合物を除去するために、3回繰り返される。洗浄後、生成物は減圧下40℃で乾燥される。
【0066】
またはバイオモノマーを使用し、以下に説明されるような古典的反応を用い、ポリアミドを作製することができる。
【0067】
生成物の二次加工:
バイオモノマーを含む薬学的ポリマーは、製品(article product)の二次加工において、単独で、または適量の基剤ポリマーとの混合物のいずれかで使用される。ブレンド中に混合される場合、適当なポリマーは、ポリウレタン、ポリエステルまたは他の基剤ポリマーを含むことができる。製品は、以下により形成することができる:1)引き続きの押出成形もしくは射出成形の方法または商品のためのコンパウンディング;2)商品の二次加工のための引き続きの金型中での商品の注型またはファイバーの紡糸のための、共通の相溶性のある溶媒への、基剤ポリマーの生体活性ポリマーとの同時溶解;3)生体活性ポリマー溶液、または生体活性ポリマー液が塗布されるポリウレタンもしくは他のポリマーと共通の相溶性のある溶媒中のブレンドによる、商品表面の湿潤;または、4)硬化性ポリウレタン、例えば化粧板(veneer)のような、2部分の硬化システムとの混合。前記プロセスは全て、バイオモノマー基を含む、純粋なポリマー、または該ポリマーおよび一般的生物医学的ポリマーのブレンドと共に使用することができる。
【0068】
従って本発明は、薬学的または生物学的性質の分子内特性を有する、幅のある新規高分子材料を合成する能力を提供する。ポリマーが、単独で、または例えば、ポリウレタンと混合して使用される場合、生体活性ポリマーは、特に医療用具における使用のために、より良い薬学的機能を有し、細胞の機能および調節、組織組込み、プロ-活性血液の相溶性および特異性のある抗凝固/血小板機能、生体安定性機能、抗微生物機能および抗炎症機能を促進し、または生物学的活性のためのバイオテクノロジーセクタにおいて使用するための、複合材料を提供する。
【0069】
これらの物質の適用は、生物学的製剤、調合薬の送達、または生分解時の体液(ヒトまたは動物)内のもしくはこれと接触している生体適合性材料の放出に必要な医療用具製品において使用される生体吸収性ポリマーの合成を含む。これは、任意の形の複合材料(セラミックス、金属または他のポリマーと任意の形で組合わされたポリマー)、射出成形された製品、圧縮成型された製品、押出された製品へ形成される、フィルム(流涎または加熱成形された)、ファイバー(溶剤または溶融紡糸)の形の製品の製造を含む。このような製品は、心臓補助装置、組織工学のための高分子足場および関連用具、心臓代替装置、心臓中隔パッチ、大動脈内バルーン、経皮的心臓補助装置、体外循環、動静脈瘻、透析の構成要素(チューブ、フィルター、メンブレンなど)、アフェレシスユニット、膜式酸素加装置、心臓バイパス構成要素(チューブ、フィルターなど)、心嚢、コンタクトレンズ、蝸牛インプラント、縫合材、縫合リング、カニューレ、避妊具、注射筒、o-リング、膀胱、陰茎インプラント、薬物送達システム、排液チューブ、ペースメーカーリード絶縁体、心臓弁、輸血バッグ、移植可能なワイヤ、カテーテル、血管ステント、血管再建バルーンおよび用具のためのコーティング、包帯、心臓マッサージ用カップ、気管チューブ、乳房インプラントコーティング、人工ダクト、頭蓋顔面および顎顔面の再建用途、靱帯、卵管を含むが、これらに限定されるものではない。
【0070】
他の医療以外の用途は、環境に優しい製品(ごみ袋、ボトル、容器、貯蔵バッグおよび装置、昆虫、生物学的活性のある汚染物質の制御、細菌もしくはウイルス性物質の除去、飲料品および食品の栄養価の増強を含む健康関連因子の促進を含む様々な生物学的システムを制御するための環境へ試薬を放出することができる製品、または生物学的システム(ヒト、動物およびその他を含む)に塗布される様々な軟膏剤およびクリーム剤を含むが、これらに限定されるものではない)において使用される生体吸収性ポリマーを含むことができる。
【0071】
これらの例において、下記の頭文字が使用される。
NORF(ノルフロキサシン)
CIPRO(シプロフロキサシン)
OC(オキサセプロール)
POC(保護されたオキサセプロール)
TF(チロフィバン)
PTF(保護されたチロフィバン)
AK(アルケレン)
PAK(保護されたアルケレン)
AF(アムフェナック)
AV(アシビシン)
BF(ブロムフェナック)
TEG(トリエチレングリコール)
HDL(1,6-ヘキサンジオール)
HDA(1,6-ヘキサンジアミン)
TrCl(トリチルクロリド)
DMAP(4-(ジメチルアミノ)ピリジン)
EDAC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミド)
TEA(トリエチレンアミン)
TFA(トリフルオロ酢酸)
THDI(トリメチル-1,6-ジイソシアネートヘキサン)
PCL(ポリカプロラクトンジオール)
AC(塩化アジポイル)
THDI/PCL/TEG(セグメント化されたポリウレタン)
DBTL(ジブチルスズジラウレート)
DCM(ジクロロメタン)
DMF(ジメチルホルムアミド)
TLC(薄層クロマトグラフィー)
CC(カラムクロマトグラフィー)
【0072】
適当であるならば、全てのイソシアネート反応は、DBTL(ジブチルスズジラウレート)により触媒される。
【0073】
核磁気共鳴は、バイオモノマーの構造を同定するために使用した。
【0074】
質量分析は、合成されたバイオモノマーの分子質量を確認するために使用した。
【0075】
ゲル透過クロマトグラフィーは、薬物ポリマー中の[Bio]部分の分布を規定し、およびこのポリマーの相対分子量を概算するために使用した。
【0076】
薬物ポリマーコーティングの表面に位置したスズ残渣の特徴決定は、90度でのX線光電子分光法(化学組成を測定)を用いて明らかにした。スズ残渣は毒性があるので、これを除去することは、生物学的適用にとって重要である。
【0077】
様々な抗微生物薬ポリマー製剤の分解速度を評価し、および有効期間を決定するために、抗微生物薬放出および生分解のインビトロ評価を行った。これらの試験において、ポリマーは、酵素と共にインキュベーションし、この溶液を回収し分解産物を分離した。pH7のリン酸緩衝された生理食塩水中で、単球マクロファージに関連した加水分解酵素、特にコレステロールエステラーゼ、および好中球(エラスターゼ)を、10週間の時間枠に及ぶインビトロ試験に使用することができる。分解産物は、質量分析と組合わせた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて特徴付けることができる。
【0078】
最小阻害濃度(MIC)アッセイ法を用い、緑膿菌(P. aeruginosa)に対する薬物ポリマー生分解試験から得られたインキュベーション溶液の抗微生物活性を評価した。各培地の濁度を記録し、薬物ポリマーの分解溶液の阻害特性を評価した。
【0079】
薬物ポリマーの滅菌安定性を、医療用具分野では標準的方法である、γ線照射(線量:25Kgy)による薬物ポリマーの滅菌後に評価した。GPC測定を、これらの試料について、これらを照射する前後、ならびに照射後1から4週間の期間に行った。
【0080】
対照および薬物ポリマーの哺乳類細胞との生体適合性を評価するために、薬物ポリマーの生体適合性試験も行った。この試験において、HeLa細胞を直接ポリウレタンポリマーフィルム上で培養し、37℃で24時間インキュベーションした。細胞生存度を、コハク酸デヒドロゲナーゼ染色により測定した。
【0081】
インビボ動物試験は、全体または一部が生体活性ポリマーで形成された本発明の基材、用具または製品について行った。生体活性ポリマーまたは生体非活性対照ポリマーのいずれかを含む製品を、緑膿菌を接種した雄のラットの腹膜炎部位に移植した。これらの製品は、ラットを1週間飼育後に、外植(explant)した。抗微生物ポリマーの作用を評価した。
【0082】
実施例
下記実施例は、本発明のバイオモノマーおよび生体反応性薬理学的活性のあるポリマーの調製を例示している。
【0083】
実施例1:
NORF-TEG-NORFおよびCIPRO-TEG-CIPROは、本発明のバイオモノマーを含む抗微生物薬の例である。この例は、単独の薬物または薬物組合せの使用を示す。この反応の合成条件は、以下である。
【0084】
工程Aにおいて、NORF(1.3g, 4mmol)/またはCIPRO塩酸塩(4mmol)を、トリチルクロリド(2.7g, 8.8mmol)およびTEA(0.6ml, 8mmol)(Aldrich, 99%)/またはCIPROの場合は12mmolのTEAと、CHCl3 40ml中で、室温で4時間反応した。透明な溶液を得た。
【0085】
工程Bにおいて、メタノール40mlを、前述の透明な溶液に添加した。この混合物を、50℃に加熱し、1時間攪拌し;溶液中に沈殿が出現した。この反応混合物を室温へ冷却後、濾過により沈殿を収集した。沈殿は更に、CHCl3/メタノールで精製した。生成物Bの3.4mmolを得た。収率は通常85%よりも大きかった。
【0086】
工程Cにおいて、生成物B(20mmol)、TEG(1.44g, 9.5mmol)、DMAP(1.24g, 10mmol)を、100ml DCMに溶解した。その後EDAC(31g, 160mmol)を、この反応システムへ添加した。反応混合物を、窒素大気下、室温で1週間攪拌した。反応が完了後、DCMを回転蒸発器により除去した。残渣を、脱イオン水で数回洗浄し、尿素副産物のような可溶性試薬を除去した。次に固形物を、クロロホルム中に溶解し、脱イオン水で再度洗浄した。反応の粗生成物を、抽出により、この溶液から回収した。生成物Cを、展開剤としてクロロホルム/メタノール/水酸化アンモニウム水溶液(9.2:0.6:0.2)を使用する、カラムクロマトグラフィーにより単離した。生成物Cを更に、クロロホルムおよびメタノールからの再結晶技術により精製した。生成物Cは収率85%で得た。
【0087】
工程Dにおいて、精製された生成物C(5.4g, 4.4mmol)を、1容量%の水および1容量%のトリフルオロ酢酸を含有するクロロホルムに溶解した。この反応液を室温で4時間攪拌した。この反応で生成した白色沈殿を、濾過により収集し、クロロホルムによる洗浄により精製した。洗浄後、生成物D、すなわちバイオモノマーを、真空炉中で温度40℃で24時間乾燥した。純粋な生成物D、すなわちバイオモノマーは、収率95%で得た。
NORF-TEG-NORFの1H NMR:
NORF-TEG-NORFの13C NMR:
NORF-TEG-NORFのES-MS(m/z, %)(ポジティブモード):C38H46F2N6O8質量の計算値:752 amu, 実測値:753, 377(M+2H)+。[図3]
CIPRO-TEG-CIPROの1H NMR:
CIPRO-TEG-CIPROの13C NMR:
CIPRO-TEG-CIPROのES-MS(m/z, %)(ポジティブモード):C40H46F2N6O8質量の計算値:776 amu、実測値777(M+H+);389(M+2H)+。[図6]
【0088】
実施例2:
CIPRO-HDL-CIPROは、本発明のバイオモノマーの例であり、実施例1とは、親水性LINK A分子ではなく、疎水性LINK A分子を導入したことにより、異なる。この反応の合成の条件は、以下である。
【0089】
CIPROの選択的保護アミン基の反応条件は、実施例1の工程AおよびBと同じである。
【0090】
工程Cにおいて、生成物B(20mmol)、HDL(9.5mmol)、DMAP(1.24g, 10mmol)を、100ml DCMに溶解した。その後EDAC(31g, 160mmol)を、この反応システムへ添加した。反応混合物を、窒素大気下、室温で1週間攪拌した。反応が完了後、DCMを回転蒸発器により除去した。残渣を、脱イオン水で数回洗浄し、尿素副産物のような可溶性試薬を除去した。次に固形物を、クロロホルム中に溶解し、脱イオン水で再度洗浄した。反応の粗生成物を、抽出により、この溶液から回収した。生成物Cを、展開剤としてクロロホルム/メタノール/水酸化アンモニウム水溶液(9.2:0.6:0.2)を使用する、カラムクロマトグラフィーにより単離した。生成物Cを更に、クロロホルムおよびメタノールからの再結晶技術により精製した。
【0091】
工程Dにおいて、精製された生成物C(4mmol)を、1容量%の水および1容量%のトリフルオロ酢酸を含有するクロロホルムに溶解した。この反応液を室温で4時間攪拌した。この反応で生成した白色沈殿を、濾過により収集し、クロロホルムによる洗浄により精製した。洗浄後、生成物D、すなわちバイオモノマーを、真空炉中で温度40℃で24時間乾燥した。
【0092】
実施例3:
NORF-HDA-NORFは、本発明のバイオモノマーの例であり、実施例1とは、ジアミンを使用し、バイオモノマー中にエステル連結よりもアミドを生成した点が、異なる。この反応の合成の条件は、以下である。
【0093】
NORFの選択的保護アミン基の反応条件は、実施例1の工程AおよびBと同じである。
【0094】
工程Cにおいて、生成物B(20mmol)、HDA(9.5mmol)、DMAP(1.24g, 10mmol)を、100ml DCMに溶解した。その後EDAC(31g, 160mmol)を、この反応システムへ添加した。反応混合物を、窒素大気下、室温で1週間攪拌した。反応が完了後、DCMを回転蒸発器により除去した。残渣を、脱イオン水で数回洗浄し、尿素副産物のような可溶性試薬を除去した。次に固形物を、クロロホルム中に溶解し、脱イオン水で再度洗浄した。反応の粗生成物を、抽出により、この溶液から回収した。生成物Cを、展開剤としてクロロホルム/メタノール/水酸化アンモニウム水溶液(9.2:0.6:0.2)を使用する、カラムクロマトグラフィーにより単離した。生成物Cを更に、クロロホルムおよびメタノールからの再結晶技術により精製した。
【0095】
工程Dにおいて、精製された生成物C(4mmol)を、1容量%の水および1容量%のトリフルオロ酢酸を含有するクロロホルムに溶解した。この反応液を室温で4時間攪拌した。この反応で生成した白色沈殿を、濾過により収集し、クロロホルムによる洗浄により精製した。洗浄後、生成物D、すなわちバイオモノマーを、真空炉中で温度40℃で24時間乾燥した。
【0096】
実施例4:
OC-TEG-OCは、本発明のバイオモノマーを含有する抗炎症薬の例である。このバイオモノマーは、オキサセプロール(OC)を用い、カルボン酸のTEGのヒドロキシルとの反応、ならびに逐次重合で使用するためのヒドロキシルの脱離により合成した。この反応の合成条件は以下である。
【0097】
工程Aにおいて、OC(11.55mmol)を、アセトニトリル4ml中のt-ブチルジメチルシリルクロリド(28.87mmol)および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7-エン(30.03mmol)と、0℃で塩基の添加の間反応させ、その後一晩周囲温度で反応した。反応の進行中に沈殿が生じた。沈殿を濾過した。
【0098】
工程Bにおいて、濾液を、水(10ml)で処理し、n-ペンタン(2x5ml)で抽出した。水性部分の溶媒を、減圧下で除去した。残渣を、メタノール(10mL)、テトラヒドロフラン(5mL)、水(5mL)に溶解し、その後2N水酸化ナトリウム水溶液(8mL)で処理した。反応混合物を、室温で1.5時間攪拌し、pH=3へ1N HClで調節し、濃縮および濾過した。得られた沈殿を、水で再結晶し、純粋な4(2.79g, 84%)を得た。
ES-MS (m/z, %) (ネガティブモード):C13H25NO4Si質量の計算値:287 amu、実測値286.1。[図9]
【0099】
工程Cにおいて、生成物B(3.48mmol)、TEG(1.58mmol)、DMAP(0.16mmol)を、DCM(5ml)中に溶解した。その後EDAC(3.95mmol)を、0℃に冷却した反応液に添加した。得られた溶液を、0℃で1時間攪拌し、冷却装置(cooling)を取り外し、この混合液を周囲温度で5日間攪拌した。溶媒を減圧下で除去した。水(20mL)およびこのシステムを、ペンタン(3x10mL)で抽出した。一緒にしたペンタン抽出物を、硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。これは、所望の生成物0.74g(67%)を生じた。
ES-MS (m/z, %) (ポジティブモード):C32H60N2O10Si2の質量の計算値:688 amu、実測値:689.3。[図12]
【0100】
工程Dにおいて、精製された生成物C(0.7mmol)は、THF(5ml)中に溶解した。得られた溶液を、0℃に冷却し、その後フッ化テトラn-ブチルアンモニウム(xml, 1.4mmol)を添加した。得られた溶液を、0℃で5分間攪拌し、その後氷浴を取り除き、周囲温度で更に40分間攪拌を続けた。溶媒を減圧下で除去し、残渣を水で処理し、溶液のpHを3に調節し、このとき沈殿が生じた。沈殿を濾過し、所望の生成物を得た。
【0101】
実施例5:
TF-TEG-TFは、本発明のバイオモノマーを含む抗血栓薬の例である。バイオモノマーは、チロフィバン(TF)を用い、カルボン酸のTEGのヒドロキシルとの反応、ならびに逐次重合で使用するためのヒドロキシルの脱離により合成した。この反応の合成条件は以下である。
【0102】
工程Aにおいて、TF(4mmol)を、CHCl3 40ml中のトリチルクロリド(8.8mmol)およびTEA(8mmol)(Aldrich, 99%)と、室温で4時間反応した。透明な溶液を得た。
【0103】
工程Bにおいて、前述の透明な溶液にメタノール40mlを添加した。この混合液を50℃に加熱し、1時間攪拌し、大量の沈殿が溶液中に出現した。反応混合物を室温に冷却後、沈殿を濾過により収集した。これらを更に、CHCl3/メタノールで精製した。生成物B 3.4mmolを得た。
【0104】
工程Cにおいて、生成物B(20mmol)、TEG(9.5mmol)、DMAP(1.24g, 10mmol)を、DCM 100mlに溶解した。EDAC(31g, 160mmol)を、この反応システムへ添加した。反応混合液を、窒素大気下室温で1週間攪拌した。反応が完了した後、DCMを回転蒸発器により除去した。残基を脱イオン水で数回洗浄し、尿素副産物のような可溶性試薬を除去した。その後固形物を、クロロホルムに溶解し、脱イオン水で再度洗浄した。粗反応生成物は、抽出により溶液から回収した。生成物Cは、展開剤クロロホルム/メタノール/水酸化アンモニウム水溶液(9.2:0.6:0.2)を用い、カラムクロマトグラフィーにより単離した。生成物Cは更に、クロロホルムおよびメタノールから再結晶技術により精製した。
【0105】
工程Dにおいて、精製された生成物C(4mmol)を、1容量%の水および1容量%のトリフルオロ酢酸を含有するクロロホルムに溶解した。この反応液を室温で4時間攪拌した。この反応で生成した白色沈殿を、濾過により収集し、クロロホルムによる洗浄により精製した。洗浄後、生成物D、すなわちバイオモノマーを、真空炉中で温度40℃で24時間乾燥した。
【0106】
実施例6:
AK-TEG-AKは、本発明のバイオモノマーを含有する抗増殖薬の例である。バイオモノマーは、アルケレン(AK)を用い、カルボン酸のTEGのヒドロキシルとの反応、ならびに逐次重合で使用するためのアミンの脱離により合成した。この反応の合成条件は以下である。
【0107】
工程Aにおいて、AK(0.32mmol)を、THF(4ml)中のジ-tert-ブチルカーボネート(0.5mmol)およびTEA(0.32mmol)(Aldrich, 99%)と反応した。懸濁液を0℃に冷却し、その後酸無水物を添加した。ジメチルホルムアミド(0.9ml)を添加し、反応混合液を均質とした。溶液を0℃で2時間攪拌し、その後一晩周囲温度で攪拌した。その後この溶液を、減圧下で蒸発させ、得られた黄色がかった油状残渣を、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(3ml)に再溶解した。この溶液を、石油エーテル(3x3ml)で洗浄し、水相を、1N塩酸溶液でpH3に酸性とした。混合物を、酢酸エチル(3x3ml)で抽出した。有機相を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、その後減圧下で蒸発した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよび酢酸(20:10:1)混合液(3ml)中に溶解した。これは引き続き、シリカカラムでのクロマトグラフィーにより精製した。これは所望の生成物115g(86%)を生じた(Rf=0.49)。
ES-MS (m/z, %) (ポジティブモード):C18H26Cl2N2O4質量の計算値:404 amu、実測値:405.1. [図15]
【0108】
工程Cにおいて、生成物B(0.20mmol)、TEG(0.09mmol)、DMAP(0.009mmol)を、DCM(2ml)に溶解した。この0℃で攪拌している溶液へ、ジクロロメタン(1ml)中のEDC-HCl(0.22mmol)を10分間かけて滴下した。得られた溶液を、0℃で1時間攪拌し、冷却装置を取り除き、混合液を周囲温度で3日間攪拌した。反応の進行は、薄層クロマトグラフィーによりモニタリングした。一旦出発材料が完全に消失したのが認められたならば、反応溶媒を減圧下で除去した。生成物を、クロロホルム:メタノール(9:1)で溶離する、カラムクロマトグラフィーにより精製した(Rf=0.93)。これは、所望の生成物0.8g(73%)を生じた。
ES-MS (m/z, %) (ポジティブモード):C42H62Cl4N4O10質量の計算値:922 amu、実測値:923.2。[図18]
【0109】
工程Dにおいて、精製された生成物C(2mmol)を、1容量%の水および1容量%のトリフルオロ酢酸を含有するクロロホルムに溶解した。この反応液を、室温で2時間攪拌した。反応液中に生成した白色沈殿を、濾過により収集し、クロロホルムによる洗浄により精製した。洗浄後、生成物D、すなわちバイオモノマーを、真空炉中で温度40℃で24時間乾燥した。
【0110】
実施例7:
THDI/PCL/NORFは、本発明の薬物15%を含有する薬学的活性のあるポリウレタンの例である。この反応の合成条件は以下である。
【0111】
PCL 1.5gを、ジメチルスルホキシド(DMSO)(10mL)中で、窒素大気下で、触媒ジブチルスズジラウレート0.06mlの存在下で、THDI 0.27gと1時間反応した。反応温度は、60〜7O℃に維持した。NORF-TEG-NORF 0.32gを、DMSO 5ml中に溶解し、反応システムへ添加した。反応液を、60〜70℃で5時間維持し、その後室温で一晩維持した。最後にメタノール1mlの添加により、反応を停止した。最終の薬物ポリマーは、エーテル/水(50v/v%)の混合液中で沈殿した。次に沈殿したポリマーを、アセトン中に溶解し、再度エーテル中に沈殿した。この洗浄手法を、3回繰り返した。
【0112】
ノルフロキサシンは、UV範囲の280nmで強力な検出可能な吸光度を有する、薬物ポリマー中のただ一つの成分である。従ってその存在は、UV検出器を用いて検出することができる。図5は、薬物ポリマーのUVクロマトグラムを、汎用(universal)屈折率検出器を用いその汎用ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)曲線と重ねた。同様のデータは、図6のシプロフロキサシンポリマーについて認められた。後者は、特定時間にGPCカラムから溶出する、存在する物質の質量に依存性を有するので、これは全ての分子の存在を検出する。従って二つのシグナルの比較は、このノルフロキサシンの分布が、実際の分子量鎖の分布と同一であることを示し、これは、低分子量鎖、対、高分子量鎖、またはその逆に対しノルフロキサシン/シプロフロキサシンの優先的カップリングが存在しないことを意味し;ノルフロキサシン/シプロフロキサシンのカップリングが均一であることを暗示している。
【0113】
実施例8:
AC/CIPROは、本発明の抗微生物薬シプロフロキサシンを含有する薬学的に活性のあるポリアミドの例である。これは、実施例1とは、これはポリウレタンではなく、および範囲のある段階成長重合においてバイオモノマーの使用に関する融通性を示す点が異なる。この合成の条件は、一般的ポリアミド界面重縮合反応である。これらは以下のように説明される:
【0114】
水30ml中のCIPRO-TEG-CIPROの3.88g(5mmol)および炭酸ナトリウム1.06g(10mmol)の溶液を、氷浴中で15分間冷却し、その後水相として、攪拌棒が入った150mlフラスコへ添加した。20mlの塩化メチレン中に塩化アジポイル(AC, 5mmol)の0.915 gを含有する有機溶液を、激しく攪拌している水相へゆっくり添加した。有機溶液は、先に氷浴で15分間冷却した。有機相の添加直後に、更に塩化メチレン5mlを使用し、当初の酸塩化物容器をすすぎ、この溶媒を反応フラスコへ移した。重合媒体は、最大速度で更に5分間攪拌した。得られたポリマーを濾過により収集した。その後ポリマーを水で少なくとも3回洗浄した。その後これをアセトンで2回洗浄した。生成物を、40℃で24時間真空乾燥した。
【0115】
実施例9:
γ線照射は、一般的かつ良く確立されたポリマー-ベースの医療用具の滅菌手法である(21)。しかしこの技術は、処理される材料の著しい変化に繋がり得ることは知られている。高エネルギー照射は、ポリマー分子のイオン化および励起を生じる。照射されたポリマーの安定化プロセスは、物理的および化学的交差-連結または鎖切断を生じ、これらは、照射中、照射直後、または照射後数日、数週間後に生じる。本実施例において、NFおよびCPポリマーを、クロロホルムのような適当な溶媒に10%で溶解した。フィルムを、テフロン型のような適当なホルダーに流涎し、および60℃の空気流れのある炉中に配置し、乾燥した。乾燥したフィルムを、γ線照射により滅菌した。線量は、予め選択された滅菌保証レベルを実現することが可能である(22)。以下の二つの方法の一つを、滅菌線量を選択するために採用した:(a)1)生物負荷情報、もしくは2)漸増線量により得られた情報のいずれかを使用する、滅菌線量の選択;b)線量25Kgyの適切さの具体化後の、25Kgyの滅菌線量の選択。各試料は、γ線照射により滅菌される12個のフィルムを有した(N=3)。生じた化学変化は、以下の異なる時点で検出することができる:a)滅菌せず(3);b)照射直後(3);c)照射の2週間後(3);d)照射の1ヶ月後(3)。γ線照射滅菌後、フィルムを、GPCにより分析し、照射前後の、ポリマー鎖の数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、および多分散性(Mw/Mn)における変化を検出した。結果を、表3にまとめた。これは、照射滅菌後に薬物ポリマーに生じた明らかな物理的および化学的変化を示さなかった。
【0116】
(表3) 照射前後の薬物ポリマーのMn、Mwおよび多分散性
【0117】
実施例10:
本実施例は、直接接触法を使用する、哺乳類細胞株に対する、生物活性のない対照ポリマー、NFおよびCPポリマーの、インビトロ細胞毒性を示している。この方法において、対照または薬物ポリマーを、各々、1mg/ml、3mg/ml、および5mg/ml含有するポリマーDMSO溶液1mlを、ペトリ皿の寒天の表面に配置したMillipore 0.45μmフィルターに各々負荷した。その後これらの皿は、加湿した5%CO2大気中、37℃で24時間インキュベーションした。溶媒が寒天に拡散した後、その上にポリマーが負荷されたこれらのフィルターを、固化した寒天を含む新たなペトリ皿に移した。HeLa細胞を、これらのフィルター上に播種した。これらの皿を、加湿した5%CO2大気中、37℃で48時間インキュベーションした。細胞を、コハク酸デヒドロゲナーゼ染色用緩衝液で染色した。フィルター上の染色された面積は、物質の細胞毒性を示している。図7は、対照、NFおよびCPポリマーが異なる量負荷されたフィルター上に播種された染色された細胞の走査写真を示している。各フィルターに染色されない領域はなかった。これらの結果は、対照ポリマーおよび生体活性ポリマーは、哺乳類細胞と良好な生体適合性を有することを示している。
【0118】
実施例11:
NFポリマーを使用し、加水分解酵素のこの物質を分解する能力、および優先的に薬物を放出する能力を評価した。NFポリマーは、小型のガラスシリンダー上に被覆し、その後加水分解酵素(すなわち、コレステロールエステラーゼ)の存在または非存在下、37℃で最大10週間インキュベーションした。毎週間隔で、インキュベーション液を、NFポリマーから採取し、新たな酵素溶液を添加した。これらのインキュベーション液を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、アッセイした。純粋なノルフロキサシンの標準液を、HPLCシステムで試行し、このシステムの較正曲線を得た。インキュベーション溶液中のノルフロキサシン濃度は、インキュベーション溶液の薬物ピーク面積の、較正曲線との比較により決定した。図8は、コレステロールエステラーゼの存在または非存在下で、NFポリマーから放出されたノルフロキサシンを示している。CEの存在下で、ノルフロキサシンの10週間の明らかな放出が存在した。しかしCEの非存在下では、最初の6週間に薬物の若干の放出のみが存在し、これは実験を通じて、酵素がインキュベーションされた試料よりも低かった。
【0119】
HPLCでアッセイした同じNFポリマーインキュベーション溶液を、生物学的アッセイ法を使用し、抗微生物活性についても評価した。マクロ希釈した最小阻害濃度(MIC)アッセイ法を用い、用具に関連した感染症に関連することが多い病原体である緑膿菌の増殖を阻害する抗菌薬(ノルフロキサシン)の濃度を決定した。この生物およびノルフロキサシンに関するMICを、0.8mu g/mLと決定した。NFポリマーの酵素および緩衝液対照処理の両方からのインキュベーション溶液を、インキュベーション時間および処理の関数としてノルフロキサシン濃度を概算するようにデザインされた、生物学的アッセイマトリックスにおいて使用した。データは、表4に示した。抗微生物活性は、緩衝液(対照)インキュベーション溶液に曝されたNFポリマーにおいて、2週間後に検出されなかった。しかし、酵素処理したNFポリマーは、抗生物質を臨床的に有意なレベル(>MICレベル)で10週間のインキュベーション期間放出した。これらの生物学的アッセイデータは、先に説明されたHPLCデータとの有意な相関関係を示している。これらの実験の結果は、抗生物質は、酵素的に活性化されているNFポリマーから放出されること、および抗生物質は、臨床的に重要な細菌に対する抗微生物活性を有することを示している。更にこの抗生物質の臨床的に重要な濃度(すなわちMICレベル)は、長い期間、10週間にわたり放出された。
【0120】
(表4) 分解されたNFポリマー溶液の抗菌活性に関するMICアッセイ法
【0121】
実施例13:
インビボ動物試験を、寸法1x2cm2の対照およびCPポリマーで作製された成形されたクーポン上で行った。これらのクーポンを、雄のラットの腹腔に移植した。ラットを1週間飼育した後、クーポンを外植した。本発明の実験条件は、以下に従う:
【0122】
移植のために、各実験群について、5匹の雄のSprague-Dawleyラット(250〜300g)を使用した。これらに麻酔をかけた後、腹部へ2cmの開腹切開を行った。網組織および導帯組織は、クーポンを包む傾向があるので、切除した。その後対照クーポンまたはCPクーポン(1x2cm2)のいずれかを、腹腔に移植した。切開部を二層で閉鎖した。動物を1週間飼育した後(ラットは毎日モニタリングした)、クーポンをラットから外植した。接着、膿瘍、炎症および被包に関する肉眼による観察を行った。CPポリマークーポンに関連した接着、膿瘍および炎症は認められなかったが、移植された対照ポリマークーポンに関連した明らかな接着、膿瘍および重篤な炎症が存在した。クーポンは、滅菌した手術装置で回収した。スワブ標本を腹腔から採取した。クーポンは、PBS緩衝液中で洗浄し、非-接着細胞を除去し、更なる細菌培養のために滅菌チューブに入れた。対照およびCPクーポンの培養物から得られた細菌数を、図9に示した。明らかにCPクーポンは、抗微生物作用を示し、有意に低いコロニー形成単位(CFU)を生じた。
【0123】
実施例12:
以下に説明された方法1、2、3を使用するポリマーへ生体活性ポリマーを組込んでいる生物医学的製品の例は、例えば、全体または一部がポリウレタン成分で製造された以下の製品を含む:すなわち、心臓補助装置、組織工学のための高分子足場および関連用具、心臓代替装置、心臓中隔パッチ、大動脈内バルーン、経皮的心臓補助装置、体外循環、動静脈瘻、透析の構成要素(チューブ、フィルター、メンブレンなど)、アフェレシスユニット、膜式酸素加装置、心臓バイパス構成要素(チューブ、フィルターなど)、心嚢、コンタクトレンズ、蝸牛インプラント、縫合材、縫合リング、カニューレ、避妊具、注射筒、o-リング、膀胱、陰茎インプラント、薬物送達システム、排液チューブ、ペースメーカーリード絶縁体、心臓弁、輸血バッグ、移植可能なワイヤ、カテーテル、血管ステント、血管再建バルーンおよび用具のためのコーティング、包帯、心臓マッサージ用カップ、気管チューブ、乳房インプラントコーティング、人工ダクト、頭蓋顔面および顎顔面の再建用途、靱帯、卵管、バイオセンサーおよびバイオ-診断基材。
【0124】
先の方法1)により二次加工された生物医学的でない製品は、例えば押出健康製品、バイオリアクター触媒ビーズまたはアフィニティクロマトグラフィーカラム充填材、またはバイオセンサーおよびバイオ診断基材を含む。
【0125】
方法2)により例示される医療以外の用途は、水の精製のためのファイバーメンブレンを含む。
【0126】
方法3)により例示される型の医療以外の用途は、無菌の表面のための生物学的機能を伴うワニスを含む。
【0127】
本開示は、本発明のある好ましい態様を説明および例示しているが、本発明はこれらの特定の態様に制限されないことは理解されると思われる。むしろ本発明は、具体的態様の機能的または機械的同等物の全ての態様、ならびに説明されたおよび例示された特徴を含む。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】バイオモノマー(カップリング剤)NORF-TEG-NORFのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図2】バイオモノマーNOF-TEG-NORFの炭素核磁気共鳴スペクトルである。
【図3】バイオモノマーNORF-TEG-NORFのポジティブエレクトロスプレー質量分析である。
【図4】バイオモノマーCIPRO-TEG-CIPROのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図5】バイオモノマーCIPRO-TEG-CIPROの炭素核磁気共鳴スペクトルである。
【図6】バイオモノマーCIPRO-TEG-CIPROのポジティブエレクトロスプレー質量分析である。
【図7】POCのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図8】POCの炭素核磁気共鳴スペクトルである。
【図9】POCのポジティブエレクトロスプレー質量分析である。
【図10】バイオモノマーPOC-TEG-POCのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図11】バイオモノマーPOC-TEG-POCの炭素核磁気共鳴スペクトルである。
【図12】バイオモノマーPOC-TEG-POCのポジティブエレクトロスプレー質量分析である。
【図13】PAKのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図14】PAKの炭素核磁気共鳴スペクトルである。
【図15】PAKのポジティブエレクトロスプレー質量分析である。
【図16】バイオモノマーPAK-TEG-PAKのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図17】バイオモノマーPAK-TEG-PAKのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図18】バイオモノマーPAK-TEG-PAKのポジティブエレクトロスプレー質量分析である。
【図19】THDI/PCL/NORFのゲル透過クロマトグラフィー分析である。
【図20】THDI/PCL/CIPROのゲル透過クロマトグラフィー分析である。
【図21】哺乳類細胞による対照ポリマーおよび薬物ポリマーの細胞毒性試験である。
【図22】コレステロールエステラーゼの存在下および非存在下で、NFポリマーから放出されたノルフロキサシンのグラフである。
【図23】移植されたクーポンからの細菌数のグラフである。
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、中間体としての高分子カップリング剤、それらから生成された薬学的に活性のあるポリマー、前記ポリマーを含有する組成物、およびそれらから製造された造形品に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
薬物注入および血液透析のアクセスなどの多種多様な医療状況のために、移植可能な医療用具を利用することは一般的になってきている。しかし医療用具の移植は、感染症(1)、炎症(2)、過形成(3)、凝固(4)のリスクを伴うことが多い。従って、増強された生体適合性を提供する材料をデザインすることは重要である。生体適合性は、特定の適用において適切な宿主反応を生じる材料の能力と定義される。宿主は、そこに生体材料が配置され、およびそれは血液、骨、軟骨、心臓、脳などとは異なるような環境に関連している。その独特な生物医学は、特定のポリマー群が有し得る恩恵に関連しているにもかかわらず、これらの材料自身は、生物医学的用具に一旦混入されると、それらは意図された特定の適用に関連した重要な生体適合性の問題点を全て満たすことができないので、それらの性能には固有の限界があることがある。例えば一つの材料は、血小板に関連したある抗凝固特性を有する一方で、これは凝固カスケードの重要な特性に対処することができず、細菌のコロニー形成を阻止することもできない。別の材料は、抗微生物機能を発揮することができるが、長期適用に関して生体安定性がないことがある。生物医学的用具における多機能性特徴の組込みは、複雑で経費のかかるプロセスであることが多く、ほとんどの場合一つのポリマー特性または生物学的機能を他のものに妥協させるが、それでも全ての血液および組織に接触する用具は、改善された生体適合性の特徴から恩恵を受けることができる。例え最も単純な用具における凝固反応、毒性反応、炎症反応、感染、免疫応答であっても、患者に死亡または不可逆的損傷を招くことがある。ほとんどの血液および組織材料の相互作用は、生物学的環境と医療用具の間の境界面で生じるので、高分子材料の外側分子層(ほとんどミクロン以下の層)の作製は、この境界面での生物学的相互作用に関連している。塊状ポリマーの浸食による新たな表面へ連続曝露が、表面の生体適合性部分の連続的回復(renewal)を必要とする場合に、これは、生分解性ポリマーシステムにとって特に困難な問題点である。
【0003】
医療用具表面の生体適合性を改善するために、ポリマーコーティングを含む生体活性物質が開発されている。Patnaikら(5)は、医療用具上の生体活性物質のコーティングを提供するために、親水性のイソシアネート/アミン-末端を有するスペーサーを介して、ヘパリン(抗凝固薬)のような生体活性物質をポリマー基材へ結合する方法を説明している。この研究者は、この生体活性物質の活性は、スペーサー基が分子量約100〜10,000ダルトンを有する場合に実現されることを認めた。しかし最も好ましくはこれは4000ダルトンである。残念なことに、ヘパリンは表面に限定されおよびポリマー鎖の塊状構造を形成しないので、このような材料は、生分解を受けおよび新たな組織一体化(integration)で置き換わることが意図されない基材にのみ適用可能であると思われる。
【0004】
生体材料デザインの別の例は、感染症の制御に関連している。最近10年間、医療用具感染症に関連したもののような問題点を解決しようとして、多くの戦略が使用されている。一つの方法は、細菌の接着を低下させるために、より生体適合性のある移植可能な用具を提供することである。銀被覆されたカテーテルが、長期静脈アクセス(6)および腹膜透析(7)に関連した出口部感染症を予防するために使用されている。しかし長期試験は、出口部感染症の数および重症度を有意に低下させることを明らかにすることに失敗した。加えて銀に対する耐性菌が、長年に渡り発生しており、これは多剤耐性のリスクを有する(8)。
【0005】
細菌接着は非常に複雑なプロセスであるので、細菌接着の完全な予防は、受動的方法によってのみ実現することは困難である。局所的に制御された薬物送達の必要性が依然残っている。この方法の利点は、1)同様の局所的薬物濃度を得るのに十分な全身性投与量から受ける全身毒性または副作用を伴わずに、高い且つ持続性の局所的薬物濃度が実現されること;2)例え全身性に使用される場合に迅速に代謝されるかまたは不安定な物質であっても、高い局所的薬物濃度が実現されること;3)部位指定送達の一部の形は、動脈壁からのその流出を防ぐかまたはビヒクルもしくは長期間作用を有する物質の使用のいずれかにより、局所的薬物作用を確立しかつ維持する可能性を有すること;4)放出の開始の引金を引きおよび/または感染症の状態に応じ放出速度を変更することができるような洗練された薬物送達システムをデザインする可能性をもたらすこと;である。
【0006】
生体活性物質放出コーティングを得るための複合材料の形で薬物およびポリマーを含有する組成物を得る方法は、公知である。例えば、Chudzikら(9)は、生体活性物質(例えば薬物)および2種のポリマー、すなわちポリ(メタクリル酸ブチル)およびポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)を含有するコーティング複合材料を配合した。前記配合により形成されたコーティングは、重要な薬物放出に加え、良好な耐久性および柔軟性を提供し、これはステントおよびカテーテルなど、それらの送達および/または使用の過程において著しい屈曲および/または膨張を受ける用具の用途に特に適合することができる。これらの方法は、高い薬物濃度での局所化された送達の利点があるが、薬物の長期に渡る持続されおよび制御された放出を維持することはできない。Raghebら(10)は、生体活性物質のポリマーコーティングからの制御された放出の方法を見出した。ここでは、二つのポリマーのコーティング層が、医療用具へ塗布される。この用具の第一層は、パリレン誘導体のような吸収材である。薬物または生体活性物質は、この層の少なくとも一部に付着される。薬物および第一層の表面上の第二の生体適合性のあるポリマー層は、多孔質でなければならない。このポリマーは、真空蒸着またはプラズマ蒸着により塗布される。薬物放出機構は細孔サイズにより全体的に制御されるので、必要な放出モデルを満足するために第二層内に適当な細孔サイズの分布を作製することは、技術的挑戦であることが多い。更にこの種のシステムは、複数の加工処理工程を必要とし、このことは製造コストを増大し、追加のQA/QC工程を必要とする。
【0007】
前記参考文献に説明された従来の拡散-制御式送達システムに加え、標的送達を改善しおよび送達速度の制御パラメータを変更することにより、薬物効能を変更することができる、いくつかのより洗練されたインサイチュ薬物送達ポリマーが存在する。これらは、生分解性ヒドロゲル(11)、高分子リポソーム(12)、生体吸収性ポリマー(13)およびポリマードラッグ(14〜16)を含む。ポリマードラッグは、ペンダント基としてポリマー鎖に共有結合された、または更にポリマー主鎖に組込まれた、薬学的物質を含む。例えばNathanら(17)は、ペンダント抗生物質としてペニシリンVおよびセフラジンをポリウレタンへ複合した。彼等の研究は、加水分解に脆いペンダント薬物は切断され、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)および溶血性連鎖球菌(S. pyogenes)に対し抗菌活性を発揮することを示した。
【0008】
Ghoshら(18)は、ナリジキシン酸、キノロン系抗生物質をペンダント様式で活性ビニル分子にカップリングした。これらのビニル基は次に重合され、各モノマー上にペンダント抗生物質を伴うポリマーを形成することができる。しかしこのようなペンダント基を有することは、ポリマーの物理構造を劇的に変更する。より良い戦略は、ポリマーの線状主鎖部分内にそのような薬物を有することであろう。彼等はインビボ加水分解試験において、最初の100時間にわたり、薬物部分の50%が放出されたことを報告した。このキノロン系薬物は、尿路感染症の治療において、グラム陰性菌に対して有効であることが示されているが、この薬物の化学修飾物(例えば、シプロフロキサシン、ノルフロキサシンなど)は、より広い活性スペクトルを有する。ごく最近になって、ノルフロキサシンのマンノシル化されたデキストランへの複合に関する研究が報告されている。これは、細胞による薬物取込みを増大しようとして行われ、それらの微生物へのより迅速なアクセスを可能にした(19)。これらの研究は、ノルフロキサシンは、酵素培地試験およびインビボ試験により薬物/ポリマー複合体から放出されること、およびこの薬物/ポリマー複合体は肝臓に宿る結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対し有効であることを示した(20)。このシステムにおいて、ノルフロキサシンは、リソソーム酵素であるカテプシンBによりその切断が可能であるアミノ酸配列へ結合されたペンダントである。
【0009】
Santerre(13a)は、ポリマーへ添加した場合に、事実上無傷のポリマーの塊状特性は残しつつ、表面を生体活性特性を有するように転換する新規材料の合成および使用を説明している。適用は、医用分野を標的としている。これらの材料は、フッ素基の空気/ポリマー境界面への移動(migration)による処理時に、塊状ポリマーの表面に送達されるペンダント薬物を伴う、オリゴマー性のフッ素化された添加物である。これらの材料は、抗微生物薬、抗凝固薬および抗炎症薬を含む、薬物の巨大なアレイを、表面へ送達することができる。しかし修飾は、その表面に限定されている。このことは、ポリマーの生体-浸食過程を通じて持続された活性を必要とする生分解性ポリマーにおける限界となり始めている。
【0010】
SanterreおよびMittleman(14)は、ポリマーのコモノマーの一つとして薬理学的活性物質を使用する、高分子材料の合成を示している。ここで 1,6-ジイソシアネートヘキサンモノマーおよび/または1,12-ジイソシアネートドデカンモノマーまたはそれらのオリゴマー分子が、抗微生物薬シプロフロキサシンと反応され、薬物ポリマーを形成する。この薬理学的活性化合物は、増強された長期の抗炎症、抗菌、抗微生物および/または抗真菌活性を提供する。しかしシプロフロキサシンのカルボン酸基および第2級アミン基は、イソシアネート基との反応が困難であるので、この反応速度論は挑戦的となってきている。加えて製剤は、薬物成分間の強力なファンデルワールス相互作用およびポリマー鎖の水素結合部分は薬物の効果的放出を遅延するので、これを最小にするように選択されなければならない。従ってこのシステムに勝る改善は、理論に結びつけられるものではないが、ポリマーの加水分解時の薬物の制限の少ない接近を保証し、更にイソシアネート基もしくは他のモノマー試薬との反応に関してより均一な化学機能を提供するような物質と、薬物で作製されたバイオモノマーである。
【0011】
文献
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
特に薬物ポリマーまたは複合材料において使用されるポリマーの合成のためにデザインされた、市販のモノマーとして利用することができる薬物の利用可能性には限界があるので、薬物前駆体の特注の合成法が必要である。一般的な市販の薬物が本来提供する化学機能に依存するよりもむしろ、加水分解可能な型のポリマーの合成のための、類似した多官能基、好ましくは類似した二官能基を有するモノマーの提供がより良いと考えられる。本発明は、以下の特徴を同時に組込んでいる、新規のジアミンまたはジオールモノマー群を提供する:1)これらは、加水分解可能な結合を介した、生物学的成分または薬学的成分または生体適合性成分のカップリングのために穏やかな条件下で合成される;2)これらは、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホンアミドの逐次重合(subsequent polymerization)および多くの他の古典的段階成長重合に使用することができる、選択的反応基(二官能性またはそれよりも多い)(アミン(第2級または第1級)およびヒドロキシル基を含む)を含む;3)これらは、生物学的成分または薬学的成分または生体適合性成分を有する限定された分解産物の放出を可能にする、選択的に加水分解可能な基を含む;4)それらの分子量は、4000と高い薬学的試薬または生体適合性試薬の分子量に応じて変動することができるが、典型的にはこれらの分子の分子量は、それらがポリマー内に一旦組込まれた分子セグメントの良好な移動性を有し、および反応重合液中で良好な反応性を有するように、好ましくは2000未満である;5)これらは、薬物のポリマー主鎖間の強力なファンデルワールス力または水素結合のために、そうでなければ加水分解反応において反応性の低い官能基(遮蔽されたエステル、スルホンアミド、アミドおよび酸無水物など)を含む、重要な生物学的試薬、薬学的試薬または生体適合性試薬の導入を増強する戦略を提供する;6)これらの分子は類似した官能基を有するので、これらは、古典的段階成長重合において一貫しより予測可能な反応性を提供する。本発明は、バイオモノマーの独自の合成経路を説明し、ポリマーの合成におけるそれらの使用例を提供し、ならびに生物医学的製品から環境に関連した製品までに及ぶ生分解性材料としての適用のために該ポリマーを加工処理する方法を規定する。
【0013】
本発明の目的は、段階成長ポリマー合成のための良好な反応性を持つバイオモノマー前駆体として、抗炎症薬、抗菌薬、抗微生物薬および/または抗真菌薬などを含む、生物学的カップリング剤/バイオモノマーの合成経路を提供することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、薬学的活性特性を有する生物学的カップリング化合物/モノマーを含む、生物学的ポリマーを提供することである。
【0015】
本発明の更なる目的は、薬学的に活性のある特性を有する造形品を提供するために、前記高分子化合物を、単独で、または相溶性のある高分子生体材料もしくはポリマー複合生体材料と混合して提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、生物医学的セクタ(biomedical sector)内で体液および組織に接触する用具を含む、医療用具として使用するための、または抗感染、抗炎症特性を提供するためのバイオテクノロジーセクタにおいて使用する該造形品を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、抗感染、抗炎症、抗微生物、抗凝固、抗酸化、抗増殖機能を増強するための生物医学的セクタ中の医療用具として使用するために、前記高分子化合物を、コーティングとして単独で、または基剤ポリウレタン、ポリシリコン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリオレフィンもしくはポリアミドのいずれかとの混合物で提供することである。
【0018】
更なる本発明の目的は、前記バイオモノマー、前記バイオモノマーを含むポリマー、前記混合物および前記造形品の製造法を提供することである。
【0019】
本発明は概して、穏やかな条件下で、例えばトリエチレングリコールもしくは他の種類の線状ジオールもしくはジアミンなどであるが限定されない柔軟なジオールまたはジアミンの両側に、生物学的成分または薬学的成分または生体適合性成分を共有的にカップリングする、独自の合成経路を提供する。生体活性物質は、カルボジイミドが媒介した反応を使用することにより、柔軟なジオールまたはジアミンと複合することができる、カルボン酸、スルホネートまたはホスホネート基などの、反応基を有さなければならない。このカップリング反応において使用される生体活性物質は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホンアミドとの逐次重合およびカップリング剤/モノマーを含有する薬学的他の古典的段階成長ポリマーにおいて使用されるような、選択的反応性多官能基、好ましくは二官能基(アミン(第2級または第1級)およびヒドロキシルを含む)も含まなければならない。
【0020】
本発明は一つの局面において、理論的分子量<2000の芳香環、線状または脂肪族(飽和した)セグメントおよび加水分解可能な連結が行うような、柔軟な、すなわち鎖の動的運動を制限しない中心部分を有する生物学的カップリング剤(バイオモノマー)を提供する。
【0021】
従って本発明は、一般式(III)の生物学的カップリング剤を提供する:
PBio-LINK A-PBio (III)
式中、PBioは、LINK Aへ加水分解可能な共有結合を介して連結されおよび段階成長重合を可能にする少なくとも1個の官能基を有する、生物学的活性物質断片またはそれらの前駆体であり;ならびに、LINK Aは、PBio断片の各々へ連結された、理論的分子量<2000のカップリングされた中心の柔軟な線状第一セグメントである。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲において用語「バイオモノマー」は、段階成長重合のための官能基の使用による式(I)の化合物の合成に使用される式(III)の化合物を意味する。
【0023】
最も好ましくは各PBio断片は、段階成長重合において使用するための単独の官能基に限定される。
【0024】
従って更なる局面において、本発明は、一般式(I)の薬学的に活性のある高分子化合物を提供する:
Y-[Yn-LINK B-X]m-LINK B (I)
式中、(i)Xは、一般式(II)のカップリングされた生物学的カップリング剤であり:
Bio-LINK A-Bio (II)
ここで、Bioは、加水分解可能な共有結合を介してLINK Aへ連結された生物学的活性物質断片またはそれらの前駆体であり;ならびに、LINK Aは、Bio断片の各々へ連結された、理論的分子量<2000のカップリングされた中心の柔軟な線状第一セグメントであり;
(ii)Yは、LINK B-OLIGOであり;ここで
(a)LINK Bは、一つのOLIGOを別のOLIGOへ、およびOLIGOをXまたはそれらの前駆体へ連結しているカップリングした第二のセグメントであり;
(b)OLIGOは、分子量5,000未満を有し、および100個未満の単量体反復単位を含む、長さの短いポリマーセグメントであり;
(iii)mは、1〜40であり;かつ
(iv)nは、2〜50から選択される。
【0025】
本発明は別の局面において、前記バイオモノマーで生成された主鎖を有する薬学的に活性のある高分子材料を提供する。このようなポリマーは、理論的分子量が<5,000のオリゴマーセグメントおよび任意の連結セグメントを含み、本明細書で示される[LINK B]は、本明細書で[OLIGO]と示されるオリゴマーセグメントおよび前記バイオモノマーに共有的にカップリングされている。
【0026】
用語「オリゴマーセグメント」は、長さが比較的短い1個または複数の反復単位であり、一般に約50個未満のモノマー単位であり、および分子量10,000未満であるが好ましくは<5000であるようなものを意味する。好ましくは[OLIGO]は、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド、ポリアルキレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリシリコン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリペプチド、多糖類;ならびにそれらのエーテルおよびアミン連結されたセグメントからなる群より選択される。
【0027】
用語「LINK A分子」は、バイオモノマーにおいて、生体活性物質と共に共有的にカップリングする分子を意味する。典型的には、LINK A分子は、分子量範囲60〜2000、好ましくは60〜700を有し、かつ多官能性であるが、好ましくは2種の生体活性物質へのカップリングを可能にするよう二官能性を有する。好ましくは、LINK A分子は、水への溶解度を伴うまたは伴わない、ジオール、ジアミンならびに/またはアミン基およびヒドロキシル基の両方を含む化合物から選択される前駆体モノマーの群から合成される。典型的LINK A前駆体の例を表1に示すが、この一覧に限定されるものではない。
【0028】
(表1)
−エチレングリコール
−ブタンジオール
−ヘキサンジオール
−ヘキサメチレンジオール
−1,5ペンタンジオール
−2,2-ジメチル-1,3プロパンジオール
−1,4-シクロヘキサンジオール
−1,4-シクロヘキサンジメタノール
−トリ(エチレングリコール)
−ポリ(エチレングリコール), Mn:100-2000
−ポリ(エチレンオキシド)ジアミン, Mn:100-2000
−リシンエステル
−シリコンジオールおよびジアミン
−ポリエーテルジオールおよびジアミン
−カーボネートジオールおよびジアミン
−ジヒドロキシビニル誘導体
−ジヒドロキシジフェニルスルホン
−エチレンジアミン
−ヘキサメチレンジアミン
−1,2-ジアミノ-2メチルプロパン
−3,3-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン
−1,4ジアミノブタン
−1,7ジアミノヘプタン
−1,8ジアミノオクタン
【0029】
用語「LINK B分子」は、中心部分内に第二のカップリングセグメントを形成するために、OLIGO単位と共有的にカップリングしている分子を意味する。典型的にはLINK B分子は、分子量範囲60〜2000、好ましくは60〜700を有し、二つのOLIGO単位のカップリングを可能にする二官能性を有する。好ましくはLINK B分子は、ジアミン、ジイソシアネート、ジスルホン酸、ジカルボン酸、二酸塩化物(diacid chlorides)およびジアルデヒドから合成される。オリゴ分子上の末端のヒドロキシル、アミンまたはカルボン酸は、ジアミンと反応し、オリゴ-アミドを形成;ジイソシアネートと反応し、オリゴ-ウレタン、オリゴ-尿素、オリゴ-アミドを形成;ジスルホン酸と反応し、オリゴ-スルホネート、オリゴ-スルホンアミドを形成;ジカルボン酸と反応し、オリゴ-エステル、オリゴ-アミドを形成;二酸塩化物と反応し、オリゴ-エステル、オリゴ-アミドを形成;ならびに、ジアルデヒドと反応し、オリゴ-アセタール、オリゴ-イミンを形成する。
【0030】
用語「薬学的または生物学的活性物質」またはそれらの前駆体は、LINK Aセグメントへ、加水分解可能な共有結合を介してカップリングすることができる分子を意味する。この分子は、いくつかの特異性および意図された薬学的または生物学的作用を有さなければならない。典型的には、[Bio]単位は、医薬品については分子量範囲40〜2000を有するが、生物薬剤についてはその分子の構造に応じてより大きくてもよい。好ましくはBio単位は、抗炎症薬、抗酸化剤、抗凝固薬、抗微生物剤(フルオロキノロンを含む)、細胞受容体リガンドおよびバイオ-接着分子、特にオリゴ-ペプチドおよびオリゴ糖、DNAおよび遺伝子配列結合のためのオリゴ核酸配列、ならびに細胞膜擬態を提供するリン脂質ヘッド部からなる群より選択される。LINK A分子とカップリングした後に、バイオモノマーは、オリゴマーセグメントの第二の基と反応し、LINK B連結を形成することができるように、Bio成分は、ヒドロキシル、アミン、カルボン酸またはスルホン酸から選択される二官能基を有さなければならない。第二の基は、第一の基のLINK Aとの反応の間は保護される。
【0031】
(表2) バイオモノマーカップリング剤の合成に使用される典型的な薬学的分子
【0032】
本発明は、少なくとも2個の官能基を有するが、この一つの官能基はジイソシアネートと低い反応性を有し、オリゴ-ウレタン、またはオリゴ-尿素、オリゴ-アミドを形成;ジスルホン酸と反応し、オリゴ-スルホネート、オリゴ-スルホンアミドを形成;ジカルボン酸と反応し、オリゴ-エステル、オリゴ-アミドを形成;二酸塩化物と反応し、オリゴ-エステル、オリゴ-アミドを形成;ならびに、ジアルデヒドと反応し、オリゴ-アセタール、オリゴ-イミンを形成するような、インビボでの薬理学的活性成分を提供するために、先に規定されたような生体反応性がある、薬理学的活性のある化合物を特に重視している。このような薬理学的物質は、抗生物質のフルオロキノロンファミリー、または前記表2に列記した型の抗凝固薬、抗炎症薬もしくは抗増殖薬を含む。
【0033】
本発明は特に、薬理学的-活性断片が、米国特許第4,670,444号に開示されたような抗菌薬、7-アミノ-1-シクロプロピル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリンおよびナフチリジン-3-カルボン酸から形成されるような使用である。これらのクラスの化合物で最も好ましい抗菌薬のメンバーは、各々一般名シプロフロキサシンおよびノルフロキサシンである、1-シクロプロピル-6-フルオロ-1,4-ジヒドロ-4-オキソ-7-ピペラジン-キノリン-3-カルボン酸および1-エチル-6-フルオロ-1,4-ジヒドロ-4-オキソ-7-ピペラジン-キノリン-3-カルボン酸である。このクラスの他のものは、スパルフロキサシンおよびトロバフロキサシンを含む。
【0034】
理論に結びつけられるものではないが、先に定義したようなLINK Aの存在は、本発明の生物学的に活性のあるポリマーにおける「バイオ間の距離(inter-bio distance)」を満足することを可能にすると考えられ、ここでバイオ-間の距離は、生物学的に活性のある成分を放出するために、インビボにおける加水分解を促進する。LINK Aは、鎖長の変動のために、ならびにおそらく更に鎖長の変動から生じる立体的およびコンホメーションの変動のために、幅のある加水分解速度を提供する。
【0035】
LINK A鎖長の変動を有さないが、二つの生物学的実体間にLINK B鎖長を有する先行技術の化合物は、加水分解速度のこの有利な変動を提供することができない。
【0036】
本発明は特に、薬理学的活性のある断片が、抗炎症薬で、一般名オキサセプロールを有する、(2S,3S)-1-アセチル-4-ヒドロキシ-ピロリジン-2-カルボン酸、および一般名エノキソロンを有する、(2S4aS,6aS,6bR,8aR,10S,12aS,12bR,14bR)-10-ヒドロキシ-2,4a,6a,6b,9,9,12a-ヘプタメチル-13-オキソ-1,2,3,4,4a,5,6,6a,6b,7,8,8a,9,10,11,12,12a,12b,13,14b-イコサヒドロ-ピセン-2-カルボン酸から形成されるような使用である。
【0037】
本発明は、特に、薬理学的活性のある断片が、抗血栓薬で、一般名チロフィバンを有する、(S)-2-(ブタン-1-スルホニルアミノ)-3-[4-(4-ピペリジン-4-イル-ブトキシ)フェニル]-プロピオン酸、および一般名ロトラフィバンを有する、[(S)-7-([4,4']ビピペリジニル-1-カルボニル)-4-メチル-3-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン-2-イル]酢酸から形成される使用である。
【0038】
本発明は、特に、薬理学的活性のある断片が、抗新生物形成薬(anti-neuplastic)で、一般名アシビシンを有する、(αS,5S)-α-アミノ-3-クロロ-2-イソオキサゾルアセティック-5-酢酸、および一般名アルケレン(Alkeren)を有する、4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ-]-L-フェニルアラニンから形成される使用である。
【0039】
このオリゴマーポリマーセグメントは、好ましくは、分子量<10,000を有し;より好ましくは、<5,000を有する。
【0040】
本明細書における用語「理論的分子量」は、任意の所定の生体活性ポリマーの合成に利用される試薬の反応から生じる絶対分子量に与えられた用語である。当技術分野において周知であるように、絶対分子量の実際の測定値は、ゲル透過クロマトグラフィーを使用するポリマーの分子量分析の物理的限界により複雑である。従ってポリスチレンと同等の分子量が、ゲル透過クロマトグラフィー測定により報告される。多くの薬学的活性化合物は、UV領域の光を吸収するので、ゲル透過クロマトグラフィー技術は、ポリマー鎖内にカップリングされた薬学的に活性のある化合物の分布を検出する方法も提供する。
【0041】
本発明の実践において使用する高分子材料は、2x103〜1x106の範囲、好ましくは2x103〜2x105の範囲の、ポリスチレンと同等の分子量を有する。
【0042】
更なる局面において、本発明は、好ましくは造形品の形で、先に定義されたように、バイオモノマーを単独で、またはバイオモノマーを含むポリマーと混合した基剤ポリマーを含有する高分子組成物を提供する。
【0043】
本発明の前述の生物活性のあるポリマーと混合して使用される典型的基剤ポリマーの例は、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリシリコン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエンスチレン)、ポリアミド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セルロースおよび他の多糖類を含む。好ましいポリマーは、ポリアミド、ポリウレタン、ポリシリコン、ポリスルホン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニル誘導体、ポリペプチド誘導体および多糖類誘導体を含む。より好ましくは、生分解性基剤ポリマーの場合、これらはセグメント化されたポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、多糖類またはポリアミドを含む。
【0044】
本発明の前記バイオモノマーを含むポリマー、または混合された組成物は、製品を被覆する表面として、または最も好ましくはこれらのポリマーもしくは混合物が、1)自立式構造体(structural body)、2)フィルム;もしくは、3)ファイバー、好ましくは織物または編物に形成されることが可能な型である場合に、使用することができる。この組成物は、製品、好ましくは生物医学的用具または一般的バイオテクノロジー的用途のための用具の表面または全体もしくは一部を構成することができる。前者の場合の用途は、心臓補助装置、組織工学用高分子足場および関連用具、心臓代替装置、心臓中隔パッチ、大動脈内バルーン、経皮的心臓補助装置、体外循環、動静脈瘻、透析の構成要素(チューブ、フィルター、メンブレンなど)、アフェレシスユニット、膜式酸素加装置、心臓バイパス構成要素(チューブ、フィルターなど)、心嚢、コンタクトレンズ、蝸牛インプラント、縫合材、縫合リング、カニューレ、避妊具、注射筒、o-リング、膀胱、陰茎インプラント、薬物送達システム、排液チューブ、ペースメーカーリード絶縁体、心臓弁、輸血バッグ、移植可能なワイヤ、カテーテル、血管ステント、血管再建バルーンおよび用具のためのコーティング、包帯、心臓マッサージ用カップ、気管チューブ、乳房インプラントコーティング、人工ダクト、頭蓋顔面および顎顔面の再建用途、靱帯、卵管を含む。後者の用途は、環境に優しい製品(ごみ袋、ボトル、容器、貯蔵バッグおよび装置、昆虫、生物学的活性のある汚染物質の制御、細菌もしくはウイルス性物質の除去、飲料品および食品の栄養価の増強を含む健康関連因子の促進を含む、様々な生物学的システムを制御するための環境へ試薬を放出することができる製品、または生物学的システム(ヒト、動物およびその他を含む)に塗布される様々な軟膏剤およびクリーム剤を含むが、これらに限定されるものではない)において使用される生体吸収性ポリマーの合成を含む。
【0045】
好ましい局面において、本発明は、先に定義されたような、セグメント化されたポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、多糖類、ポリアミドまたはポリシリコンのいずれかを、前記バイオモノマーを含有する相溶性のあるポリマーとの混合することを含む、混合された組成物を提供する。
【0046】
本発明に係るバイオモノマーを含むポリマーは、ポリマーセグメント、すなわち[oligo]セグメント、ならびに固有の抗凝固薬、抗炎症薬、抗増殖、抗酸化、抗微生物能のいずれかを伴う生化学的機能物(biochemical function)、細胞受容体リガンド、例えばペプチドリガンド、および生体接着分子、例えばオリゴ糖、DNAおよび遺伝子配列結合のためのオリゴ核酸配列、または生体活性成分の前駆体を含む、ポリマーの主鎖内のバイオモノマーを含む様式で合成される。
【0047】
生じたインビボでの薬理学的活性は、例えば抗炎症、抗菌、抗微生物、抗増殖、抗真菌などであるが、本発明は、そのような生物学的活性に限定されない。
【0048】
本発明をより良く理解するために、ここで、添付図面を参照し、好ましい態様はを単なる例として説明する。
【0049】
好ましい態様の詳細な説明
バイオモノマーの合成
生成物Dの生物学的カップリング剤/バイオモノマーの調製に関する新規プロセスの説明をスキームAに示し、ここでRは、ノルフロキサシンおよびシプロフロキサシンについて、各々CH2CH3またはシクロプロピルである。典型的にはLink A分子は、分子量範囲60〜2000、好ましくは60〜700を有し、ならびに少なくとも2個の[Bio]単位のカップリングを可能にするために、少なくとも二官能性を有さなければならない。[Bio]単位は、分子量<2000を有するが、これはその分子の構造によりより大きくてもよい。好ましい[Bio]成分は、以下の範疇および例を含むが、これらに限定されるものではない:抗炎症薬:非-ステロイド系-オキサセプロール、ステロイド系エノキソロン;抗血栓薬:チロフィバン、ロトラフィバン;抗凝固薬:ヘパリン;抗増殖薬:アシビシンおよびアルケレン;抗微生物薬:フルオロキノロン、例えばノルフロキサシン、シプロフロキサシン、スパルフロキサシンおよびトロバフロキサシン、ならびに他のフルオロキノロン。
【0050】
スキームAは、式(I)の生成物Dの化合物を調製するための一般的合成法を提供する。
【0051】
スキーム1:生体活性モノマーの合成経路
【0052】
工程Aにおいて、ノルフロキサシンまたはシプロフロキサシン(塩酸塩の形)のような薬学的活性薬物は、トリエチレンアミンの存在下で、ハロゲン化トリチルのような保護基と反応し、トリチル基で保護されたアミン基およびカルボン酸基の両方の基を持つ中間体を提供する。当業者には、他の保護基を、本明細書の例において例証されたように使用することができることは理解される。
【0053】
適当なハロゲン化トリチルは、クロロホルムのような適当な溶媒中でノルフロキサシンまたはシプロフロキサシンの塩酸塩と反応される。多くの他の溶媒が、選択された保護基の溶解度およびバイオモノマーを形成する物質に応じて必要であることがある。適当なハロゲン化トリチルは、塩化トリチルおよび臭化トリチルである。好ましいハロゲン化トリチルは、塩化トリチルである。ハロゲン化トリチルの量は、ノルフロキサシン/シプロフロキサシンの2〜4モル当量の範囲であり、好ましい量は、2.2モル当量である。トリエチルアミンが、副産物として生成される遊離のHClを捕捉するために添加される。やや過剰量のトリエチルアミンは、次の選択的加水分解工程におけるN-トリエチルアミン基の脱保護を避けるであろう。シプロフロキサシンの場合、2〜4倍のような過剰モル量のトリエチレンアミンが、反応混合物へ添加された。好ましい量は、3倍である。反応混合物は、温度範囲0〜60℃で、2〜24時間の範囲の期間攪拌される。好ましい攪拌時間は4時間であり、および好ましい温度は25℃である。均質な溶液が得られる。この工程に続けて、生成物Aが、現場反応の次工程のための反応液中に残存される。生成物Aの単離は、処理の間は不要である。
【0054】
工程Bにおいて、トリチル基により保護されたアミンおよびカルボン酸基の両方を伴う、ノルフロキサシン/シプロフロキサシンのような、工程Aの反応生成物は、選択的に脱保護され、遊離のカルボン酸およびN-トリエチルアミン基を含む生成物Bを得る。
【0055】
例えば、工程Bにおいて、大量のメタノールが工程Aの反応混合物へ添加される。メタノール量は、工程Aで使用される溶媒量と当量から2倍までの範囲である。好ましい量は、溶媒量の1.5倍である。この反応混合物は、温度範囲25℃〜60℃で、1〜24時間攪拌される。好ましい攪拌時間は2時間であり、および好ましい温度は50℃である。選択的に脱保護されたフルオロキノロン物質は、反応液から沈殿する。生成物Bは、この反応混合物の室温への冷却後の濾過により、反応ゾーンから回収される。生成物Bは更に、標準の再結晶法により、CHCl3/メタノール(9:1)から精製される。
【0056】
工程Cにおいて、精製されたアミン-保護されたフルオロキノロンは、柔軟なおよび/または水溶性の中心部分を含むジオールまたはジアミン(この例では、トリエチレングリコールが使用される)の両側へカップリングされる。
【0057】
例えば精製されたアミン-保護されたフルオロキノロン(生成物B)が、ここでEDACと記される1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジミドのような適当なカップリング剤、および触媒のここでDMAPと記される4-(ジメチルアミノ)ピリジンのような適当な塩基の存在下で、トリ(エチレングリコール)へカップリングされる。他のカップリング試薬は、CMC(1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリノエチル)カルボジイミド)、DCC(N,N'-ジシクロヘキシル-カルボジイミド)、DIC(ジイソプロピルカルボジイミド)などの様々なカルボジイミドを含むことができるが、これらに限定されない。ジオールの量は、生成物Bの0.3〜0.5モル当量である。ジオールの好ましい量は、生成物Bの0.475モル当量である。カップリング剤EDACの量は、生成物Bの2〜10倍モル当量の範囲である。EDACの好ましい量は、8倍モル当量である。塩基DMAPの量は、生成物Bの0.1〜同数のモル量の範囲である。好ましい量は、0.5モル当量である。この反応は、窒素、アルゴンなどの希ガス大気下、ジクロロメタンなどの適当な溶媒中で進行される。他の溶媒は、生成物Bとのそれらの溶解度特性、ならびに試薬とのそれらの反応可能性に応じて適宜であってよい。これらの反応体は、典型的には24時間〜2週間の範囲の期間、温度範囲0℃〜50℃で攪拌される。好ましい攪拌時間は1週間であり、好ましい温度は25℃である。
【0058】
反応が完了した後、溶媒は、回転蒸発器により除去される。残渣を、水で数回洗浄し、EDACのような可溶性試薬を除去する。その後固形物はクロロホルムに溶解される。スキーム1の生成物Cは、抽出溶媒としてクロロホルムを使用する標準の抽出法により、溶液から回収される。生成物Cは、クロロホルム/メタノール/水酸化アンモニウム水溶液(9.2:0.6:0.2)で作製された展開剤を使用する、カラムクロマトグラフィーにより単離される。更に生成物Cは、クロロホルムおよびメタノールからの再結晶技法により精製される。
【0059】
工程Dにおいて、精製された生成物CのN-トリエチルアミン基は、脱保護され、対応する所望の薬学的カップリング剤/バイオモノマーを生じる。
【0060】
例えば適当な生成物Cは、ジクロロメタンのような適当な有機溶媒中で、少量の水と、トリフルオロ酢酸のような少量の弱酸の存在下で反応される。水の量は、1%〜10容量%の範囲であることができ、好ましい量は1%である。トリフルオロ酢酸の量は、1%〜10容量%の範囲であり、好ましい量は2%である。この反応混合物は、温度範囲0℃〜50℃で、2〜24時間の期間攪拌される。好ましい温度は25℃であり、好ましい期間は4時間である。生成物Dは、反応液から沈殿され、濾過により収集される。この生成物は更に、CHCl3による洗浄により精製される。
【0061】
ポリマー合成におけるバイオモノマーの使用
薬学的活性ポリマーは、当技術分野において周知の古典的段階重合法により合成される。多官能性LINK B分子および多官能性オリゴ分子は反応し、プレポリマーを形成する。このプレポリマー鎖は、バイオモノマーにより延長され、バイオモノマーを含むポリマーを得る。エチレンジアミン、ブタンジオール、エチレングリコールなどの非生物学的鎖延長剤も使用することができる。Link B分子は、バイオモノマーを含む線状ポリマーの形成に有利となるように、事実上二官能性であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。生物医学的およびバイオテクノロジー的用途に好ましいLink B分子は、ジイソシアネート:例えば、2,4-トルエンジイソシアネート;2,6-トルエンジイソシアネート;メチレンビス(p-フェニル)ジイソシアネート;リシンジイソシアネートエステル;1,6-ヘキサンジイソシアネート;1,12-ドデカンジイソシアネート;ビス-メチレンジ(シクロヘキシルイソシアネート);トリメチル-1,6-ジイソシアネートヘキサン、ジカルボン酸、二酸塩化物、ジスルホニルクロリドなどである。オリゴ成分は、バイオモノマーを含む線状ポリマーの形成に有利となるように、二官能性であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。好ましいオリゴ成分は、例えば、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、;ポリエチレン-ブチレンコ-ポリマー;ポリブタジエン;ポリカプロラクトン、ポリ乳酸および他のポリエステルを含む、ポリエステル;ポリウレタン/スルホンコ-ポリマー;ポリウレタン;ポリアミド;オリゴペプチド(ポリアラニン、ポリグリシンまたはアミノ酸コポリマー)およびポリ尿素を含むもの;ポリアルキレンオキシド、および特にポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシドおよびポリテトラメチレンオキシド;の末端がジアミンおよびジオールの試薬である。[oligo]基の分子量は、10,000未満であるが、分子量5000未満が好ましい。プレポリマーの生体活性ポリマーへの合成は、プレポリマーをLink B分子により末端キャップ形成するために、試薬の所望の組合せを使用する古典的ウレタン/尿素反応であるが、過剰量のLink B分子を使用し実行することができる。望ましい鎖長を伴うプレポリマーが反応される場合、バイオモノマーが添加され、プレポリマー鎖を延長し、最終の生体活性ポリマーを得る。あるいはバイオモノマーは、オリゴ基として含むために置換されてもよい。
【0062】
生体活性ポリマーは、様々な成分および化学量で合成することができる。合成前に、LINK B分子は好ましくは、減圧蒸留され、残存する水分が除去される。バイオモノマーは乾燥され、全ての水分が除去される。オリゴ成分は一晩脱気され、残存する水分および低分子量の有機物が除去される。
【0063】
反応体は実践上溶媒の非存在下で反応することができるが、最終生成物の特徴をうまく制御するために、これらの試薬の化学的性質と相溶性のある有機溶媒を使用することが好ましい。典型的有機溶媒は、例えばジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、エーテル、クロロホルム、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドを含む。好ましい反応溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO、Aldrich Chemical Company、ミルウォーキー、WI)である。
【0064】
一部のジイソシアネート、例えばDDIおよびTHDIは、オリゴ前駆体ジオールと反応活性が低いという観点から、この合成には触媒が好ましい。典型的触媒は、ウレタン化学合成に使用されるものに類似しており、ジブチルスズジラウレート、オクタン酸第一スズ、N,N'-ジエチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、1,4-ジアゾ(2,2,2)ビシクロ-オクタンおよびジルコニウム錯体、例えばテトラキス(2,4-ペンタンジオネート)ジルコニウム錯体などである。
【0065】
プレポリマー調製の第一工程において、例えばLink B分子は、オリゴ成分、任意に触媒に添加され、生体活性ポリマーのプレポリマーを提供する。この反応混合物は、温度60℃で、反応成分および化学量によって決まる適当な期間攪拌される。別の温度範囲は、25℃〜110℃であることができる。引き続きバイオモノマーが、プレポリマーに添加され、一般にこの混合物は、一晩反応させる。この反応は、メタノールで停止し、生成物はエーテルまたは蒸留水のエーテルもしくは他の適当な溶媒との混合液中で沈殿される。沈殿は、アセトンなどの適当な溶媒に溶解され、エーテルまたは蒸留水とエーテルの混合液中に再度沈殿される。このプロセスは、あらゆる残存する触媒化合物を除去するために、3回繰り返される。洗浄後、生成物は減圧下40℃で乾燥される。
【0066】
またはバイオモノマーを使用し、以下に説明されるような古典的反応を用い、ポリアミドを作製することができる。
【0067】
生成物の二次加工:
バイオモノマーを含む薬学的ポリマーは、製品(article product)の二次加工において、単独で、または適量の基剤ポリマーとの混合物のいずれかで使用される。ブレンド中に混合される場合、適当なポリマーは、ポリウレタン、ポリエステルまたは他の基剤ポリマーを含むことができる。製品は、以下により形成することができる:1)引き続きの押出成形もしくは射出成形の方法または商品のためのコンパウンディング;2)商品の二次加工のための引き続きの金型中での商品の注型またはファイバーの紡糸のための、共通の相溶性のある溶媒への、基剤ポリマーの生体活性ポリマーとの同時溶解;3)生体活性ポリマー溶液、または生体活性ポリマー液が塗布されるポリウレタンもしくは他のポリマーと共通の相溶性のある溶媒中のブレンドによる、商品表面の湿潤;または、4)硬化性ポリウレタン、例えば化粧板(veneer)のような、2部分の硬化システムとの混合。前記プロセスは全て、バイオモノマー基を含む、純粋なポリマー、または該ポリマーおよび一般的生物医学的ポリマーのブレンドと共に使用することができる。
【0068】
従って本発明は、薬学的または生物学的性質の分子内特性を有する、幅のある新規高分子材料を合成する能力を提供する。ポリマーが、単独で、または例えば、ポリウレタンと混合して使用される場合、生体活性ポリマーは、特に医療用具における使用のために、より良い薬学的機能を有し、細胞の機能および調節、組織組込み、プロ-活性血液の相溶性および特異性のある抗凝固/血小板機能、生体安定性機能、抗微生物機能および抗炎症機能を促進し、または生物学的活性のためのバイオテクノロジーセクタにおいて使用するための、複合材料を提供する。
【0069】
これらの物質の適用は、生物学的製剤、調合薬の送達、または生分解時の体液(ヒトまたは動物)内のもしくはこれと接触している生体適合性材料の放出に必要な医療用具製品において使用される生体吸収性ポリマーの合成を含む。これは、任意の形の複合材料(セラミックス、金属または他のポリマーと任意の形で組合わされたポリマー)、射出成形された製品、圧縮成型された製品、押出された製品へ形成される、フィルム(流涎または加熱成形された)、ファイバー(溶剤または溶融紡糸)の形の製品の製造を含む。このような製品は、心臓補助装置、組織工学のための高分子足場および関連用具、心臓代替装置、心臓中隔パッチ、大動脈内バルーン、経皮的心臓補助装置、体外循環、動静脈瘻、透析の構成要素(チューブ、フィルター、メンブレンなど)、アフェレシスユニット、膜式酸素加装置、心臓バイパス構成要素(チューブ、フィルターなど)、心嚢、コンタクトレンズ、蝸牛インプラント、縫合材、縫合リング、カニューレ、避妊具、注射筒、o-リング、膀胱、陰茎インプラント、薬物送達システム、排液チューブ、ペースメーカーリード絶縁体、心臓弁、輸血バッグ、移植可能なワイヤ、カテーテル、血管ステント、血管再建バルーンおよび用具のためのコーティング、包帯、心臓マッサージ用カップ、気管チューブ、乳房インプラントコーティング、人工ダクト、頭蓋顔面および顎顔面の再建用途、靱帯、卵管を含むが、これらに限定されるものではない。
【0070】
他の医療以外の用途は、環境に優しい製品(ごみ袋、ボトル、容器、貯蔵バッグおよび装置、昆虫、生物学的活性のある汚染物質の制御、細菌もしくはウイルス性物質の除去、飲料品および食品の栄養価の増強を含む健康関連因子の促進を含む様々な生物学的システムを制御するための環境へ試薬を放出することができる製品、または生物学的システム(ヒト、動物およびその他を含む)に塗布される様々な軟膏剤およびクリーム剤を含むが、これらに限定されるものではない)において使用される生体吸収性ポリマーを含むことができる。
【0071】
これらの例において、下記の頭文字が使用される。
NORF(ノルフロキサシン)
CIPRO(シプロフロキサシン)
OC(オキサセプロール)
POC(保護されたオキサセプロール)
TF(チロフィバン)
PTF(保護されたチロフィバン)
AK(アルケレン)
PAK(保護されたアルケレン)
AF(アムフェナック)
AV(アシビシン)
BF(ブロムフェナック)
TEG(トリエチレングリコール)
HDL(1,6-ヘキサンジオール)
HDA(1,6-ヘキサンジアミン)
TrCl(トリチルクロリド)
DMAP(4-(ジメチルアミノ)ピリジン)
EDAC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミド)
TEA(トリエチレンアミン)
TFA(トリフルオロ酢酸)
THDI(トリメチル-1,6-ジイソシアネートヘキサン)
PCL(ポリカプロラクトンジオール)
AC(塩化アジポイル)
THDI/PCL/TEG(セグメント化されたポリウレタン)
DBTL(ジブチルスズジラウレート)
DCM(ジクロロメタン)
DMF(ジメチルホルムアミド)
TLC(薄層クロマトグラフィー)
CC(カラムクロマトグラフィー)
【0072】
適当であるならば、全てのイソシアネート反応は、DBTL(ジブチルスズジラウレート)により触媒される。
【0073】
核磁気共鳴は、バイオモノマーの構造を同定するために使用した。
【0074】
質量分析は、合成されたバイオモノマーの分子質量を確認するために使用した。
【0075】
ゲル透過クロマトグラフィーは、薬物ポリマー中の[Bio]部分の分布を規定し、およびこのポリマーの相対分子量を概算するために使用した。
【0076】
薬物ポリマーコーティングの表面に位置したスズ残渣の特徴決定は、90度でのX線光電子分光法(化学組成を測定)を用いて明らかにした。スズ残渣は毒性があるので、これを除去することは、生物学的適用にとって重要である。
【0077】
様々な抗微生物薬ポリマー製剤の分解速度を評価し、および有効期間を決定するために、抗微生物薬放出および生分解のインビトロ評価を行った。これらの試験において、ポリマーは、酵素と共にインキュベーションし、この溶液を回収し分解産物を分離した。pH7のリン酸緩衝された生理食塩水中で、単球マクロファージに関連した加水分解酵素、特にコレステロールエステラーゼ、および好中球(エラスターゼ)を、10週間の時間枠に及ぶインビトロ試験に使用することができる。分解産物は、質量分析と組合わせた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて特徴付けることができる。
【0078】
最小阻害濃度(MIC)アッセイ法を用い、緑膿菌(P. aeruginosa)に対する薬物ポリマー生分解試験から得られたインキュベーション溶液の抗微生物活性を評価した。各培地の濁度を記録し、薬物ポリマーの分解溶液の阻害特性を評価した。
【0079】
薬物ポリマーの滅菌安定性を、医療用具分野では標準的方法である、γ線照射(線量:25Kgy)による薬物ポリマーの滅菌後に評価した。GPC測定を、これらの試料について、これらを照射する前後、ならびに照射後1から4週間の期間に行った。
【0080】
対照および薬物ポリマーの哺乳類細胞との生体適合性を評価するために、薬物ポリマーの生体適合性試験も行った。この試験において、HeLa細胞を直接ポリウレタンポリマーフィルム上で培養し、37℃で24時間インキュベーションした。細胞生存度を、コハク酸デヒドロゲナーゼ染色により測定した。
【0081】
インビボ動物試験は、全体または一部が生体活性ポリマーで形成された本発明の基材、用具または製品について行った。生体活性ポリマーまたは生体非活性対照ポリマーのいずれかを含む製品を、緑膿菌を接種した雄のラットの腹膜炎部位に移植した。これらの製品は、ラットを1週間飼育後に、外植(explant)した。抗微生物ポリマーの作用を評価した。
【0082】
実施例
下記実施例は、本発明のバイオモノマーおよび生体反応性薬理学的活性のあるポリマーの調製を例示している。
【0083】
実施例1:
NORF-TEG-NORFおよびCIPRO-TEG-CIPROは、本発明のバイオモノマーを含む抗微生物薬の例である。この例は、単独の薬物または薬物組合せの使用を示す。この反応の合成条件は、以下である。
【0084】
工程Aにおいて、NORF(1.3g, 4mmol)/またはCIPRO塩酸塩(4mmol)を、トリチルクロリド(2.7g, 8.8mmol)およびTEA(0.6ml, 8mmol)(Aldrich, 99%)/またはCIPROの場合は12mmolのTEAと、CHCl3 40ml中で、室温で4時間反応した。透明な溶液を得た。
【0085】
工程Bにおいて、メタノール40mlを、前述の透明な溶液に添加した。この混合物を、50℃に加熱し、1時間攪拌し;溶液中に沈殿が出現した。この反応混合物を室温へ冷却後、濾過により沈殿を収集した。沈殿は更に、CHCl3/メタノールで精製した。生成物Bの3.4mmolを得た。収率は通常85%よりも大きかった。
【0086】
工程Cにおいて、生成物B(20mmol)、TEG(1.44g, 9.5mmol)、DMAP(1.24g, 10mmol)を、100ml DCMに溶解した。その後EDAC(31g, 160mmol)を、この反応システムへ添加した。反応混合物を、窒素大気下、室温で1週間攪拌した。反応が完了後、DCMを回転蒸発器により除去した。残渣を、脱イオン水で数回洗浄し、尿素副産物のような可溶性試薬を除去した。次に固形物を、クロロホルム中に溶解し、脱イオン水で再度洗浄した。反応の粗生成物を、抽出により、この溶液から回収した。生成物Cを、展開剤としてクロロホルム/メタノール/水酸化アンモニウム水溶液(9.2:0.6:0.2)を使用する、カラムクロマトグラフィーにより単離した。生成物Cを更に、クロロホルムおよびメタノールからの再結晶技術により精製した。生成物Cは収率85%で得た。
【0087】
工程Dにおいて、精製された生成物C(5.4g, 4.4mmol)を、1容量%の水および1容量%のトリフルオロ酢酸を含有するクロロホルムに溶解した。この反応液を室温で4時間攪拌した。この反応で生成した白色沈殿を、濾過により収集し、クロロホルムによる洗浄により精製した。洗浄後、生成物D、すなわちバイオモノマーを、真空炉中で温度40℃で24時間乾燥した。純粋な生成物D、すなわちバイオモノマーは、収率95%で得た。
NORF-TEG-NORFの1H NMR:
NORF-TEG-NORFの13C NMR:
NORF-TEG-NORFのES-MS(m/z, %)(ポジティブモード):C38H46F2N6O8質量の計算値:752 amu, 実測値:753, 377(M+2H)+。[図3]
CIPRO-TEG-CIPROの1H NMR:
CIPRO-TEG-CIPROの13C NMR:
CIPRO-TEG-CIPROのES-MS(m/z, %)(ポジティブモード):C40H46F2N6O8質量の計算値:776 amu、実測値777(M+H+);389(M+2H)+。[図6]
【0088】
実施例2:
CIPRO-HDL-CIPROは、本発明のバイオモノマーの例であり、実施例1とは、親水性LINK A分子ではなく、疎水性LINK A分子を導入したことにより、異なる。この反応の合成の条件は、以下である。
【0089】
CIPROの選択的保護アミン基の反応条件は、実施例1の工程AおよびBと同じである。
【0090】
工程Cにおいて、生成物B(20mmol)、HDL(9.5mmol)、DMAP(1.24g, 10mmol)を、100ml DCMに溶解した。その後EDAC(31g, 160mmol)を、この反応システムへ添加した。反応混合物を、窒素大気下、室温で1週間攪拌した。反応が完了後、DCMを回転蒸発器により除去した。残渣を、脱イオン水で数回洗浄し、尿素副産物のような可溶性試薬を除去した。次に固形物を、クロロホルム中に溶解し、脱イオン水で再度洗浄した。反応の粗生成物を、抽出により、この溶液から回収した。生成物Cを、展開剤としてクロロホルム/メタノール/水酸化アンモニウム水溶液(9.2:0.6:0.2)を使用する、カラムクロマトグラフィーにより単離した。生成物Cを更に、クロロホルムおよびメタノールからの再結晶技術により精製した。
【0091】
工程Dにおいて、精製された生成物C(4mmol)を、1容量%の水および1容量%のトリフルオロ酢酸を含有するクロロホルムに溶解した。この反応液を室温で4時間攪拌した。この反応で生成した白色沈殿を、濾過により収集し、クロロホルムによる洗浄により精製した。洗浄後、生成物D、すなわちバイオモノマーを、真空炉中で温度40℃で24時間乾燥した。
【0092】
実施例3:
NORF-HDA-NORFは、本発明のバイオモノマーの例であり、実施例1とは、ジアミンを使用し、バイオモノマー中にエステル連結よりもアミドを生成した点が、異なる。この反応の合成の条件は、以下である。
【0093】
NORFの選択的保護アミン基の反応条件は、実施例1の工程AおよびBと同じである。
【0094】
工程Cにおいて、生成物B(20mmol)、HDA(9.5mmol)、DMAP(1.24g, 10mmol)を、100ml DCMに溶解した。その後EDAC(31g, 160mmol)を、この反応システムへ添加した。反応混合物を、窒素大気下、室温で1週間攪拌した。反応が完了後、DCMを回転蒸発器により除去した。残渣を、脱イオン水で数回洗浄し、尿素副産物のような可溶性試薬を除去した。次に固形物を、クロロホルム中に溶解し、脱イオン水で再度洗浄した。反応の粗生成物を、抽出により、この溶液から回収した。生成物Cを、展開剤としてクロロホルム/メタノール/水酸化アンモニウム水溶液(9.2:0.6:0.2)を使用する、カラムクロマトグラフィーにより単離した。生成物Cを更に、クロロホルムおよびメタノールからの再結晶技術により精製した。
【0095】
工程Dにおいて、精製された生成物C(4mmol)を、1容量%の水および1容量%のトリフルオロ酢酸を含有するクロロホルムに溶解した。この反応液を室温で4時間攪拌した。この反応で生成した白色沈殿を、濾過により収集し、クロロホルムによる洗浄により精製した。洗浄後、生成物D、すなわちバイオモノマーを、真空炉中で温度40℃で24時間乾燥した。
【0096】
実施例4:
OC-TEG-OCは、本発明のバイオモノマーを含有する抗炎症薬の例である。このバイオモノマーは、オキサセプロール(OC)を用い、カルボン酸のTEGのヒドロキシルとの反応、ならびに逐次重合で使用するためのヒドロキシルの脱離により合成した。この反応の合成条件は以下である。
【0097】
工程Aにおいて、OC(11.55mmol)を、アセトニトリル4ml中のt-ブチルジメチルシリルクロリド(28.87mmol)および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7-エン(30.03mmol)と、0℃で塩基の添加の間反応させ、その後一晩周囲温度で反応した。反応の進行中に沈殿が生じた。沈殿を濾過した。
【0098】
工程Bにおいて、濾液を、水(10ml)で処理し、n-ペンタン(2x5ml)で抽出した。水性部分の溶媒を、減圧下で除去した。残渣を、メタノール(10mL)、テトラヒドロフラン(5mL)、水(5mL)に溶解し、その後2N水酸化ナトリウム水溶液(8mL)で処理した。反応混合物を、室温で1.5時間攪拌し、pH=3へ1N HClで調節し、濃縮および濾過した。得られた沈殿を、水で再結晶し、純粋な4(2.79g, 84%)を得た。
ES-MS (m/z, %) (ネガティブモード):C13H25NO4Si質量の計算値:287 amu、実測値286.1。[図9]
【0099】
工程Cにおいて、生成物B(3.48mmol)、TEG(1.58mmol)、DMAP(0.16mmol)を、DCM(5ml)中に溶解した。その後EDAC(3.95mmol)を、0℃に冷却した反応液に添加した。得られた溶液を、0℃で1時間攪拌し、冷却装置(cooling)を取り外し、この混合液を周囲温度で5日間攪拌した。溶媒を減圧下で除去した。水(20mL)およびこのシステムを、ペンタン(3x10mL)で抽出した。一緒にしたペンタン抽出物を、硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。これは、所望の生成物0.74g(67%)を生じた。
ES-MS (m/z, %) (ポジティブモード):C32H60N2O10Si2の質量の計算値:688 amu、実測値:689.3。[図12]
【0100】
工程Dにおいて、精製された生成物C(0.7mmol)は、THF(5ml)中に溶解した。得られた溶液を、0℃に冷却し、その後フッ化テトラn-ブチルアンモニウム(xml, 1.4mmol)を添加した。得られた溶液を、0℃で5分間攪拌し、その後氷浴を取り除き、周囲温度で更に40分間攪拌を続けた。溶媒を減圧下で除去し、残渣を水で処理し、溶液のpHを3に調節し、このとき沈殿が生じた。沈殿を濾過し、所望の生成物を得た。
【0101】
実施例5:
TF-TEG-TFは、本発明のバイオモノマーを含む抗血栓薬の例である。バイオモノマーは、チロフィバン(TF)を用い、カルボン酸のTEGのヒドロキシルとの反応、ならびに逐次重合で使用するためのヒドロキシルの脱離により合成した。この反応の合成条件は以下である。
【0102】
工程Aにおいて、TF(4mmol)を、CHCl3 40ml中のトリチルクロリド(8.8mmol)およびTEA(8mmol)(Aldrich, 99%)と、室温で4時間反応した。透明な溶液を得た。
【0103】
工程Bにおいて、前述の透明な溶液にメタノール40mlを添加した。この混合液を50℃に加熱し、1時間攪拌し、大量の沈殿が溶液中に出現した。反応混合物を室温に冷却後、沈殿を濾過により収集した。これらを更に、CHCl3/メタノールで精製した。生成物B 3.4mmolを得た。
【0104】
工程Cにおいて、生成物B(20mmol)、TEG(9.5mmol)、DMAP(1.24g, 10mmol)を、DCM 100mlに溶解した。EDAC(31g, 160mmol)を、この反応システムへ添加した。反応混合液を、窒素大気下室温で1週間攪拌した。反応が完了した後、DCMを回転蒸発器により除去した。残基を脱イオン水で数回洗浄し、尿素副産物のような可溶性試薬を除去した。その後固形物を、クロロホルムに溶解し、脱イオン水で再度洗浄した。粗反応生成物は、抽出により溶液から回収した。生成物Cは、展開剤クロロホルム/メタノール/水酸化アンモニウム水溶液(9.2:0.6:0.2)を用い、カラムクロマトグラフィーにより単離した。生成物Cは更に、クロロホルムおよびメタノールから再結晶技術により精製した。
【0105】
工程Dにおいて、精製された生成物C(4mmol)を、1容量%の水および1容量%のトリフルオロ酢酸を含有するクロロホルムに溶解した。この反応液を室温で4時間攪拌した。この反応で生成した白色沈殿を、濾過により収集し、クロロホルムによる洗浄により精製した。洗浄後、生成物D、すなわちバイオモノマーを、真空炉中で温度40℃で24時間乾燥した。
【0106】
実施例6:
AK-TEG-AKは、本発明のバイオモノマーを含有する抗増殖薬の例である。バイオモノマーは、アルケレン(AK)を用い、カルボン酸のTEGのヒドロキシルとの反応、ならびに逐次重合で使用するためのアミンの脱離により合成した。この反応の合成条件は以下である。
【0107】
工程Aにおいて、AK(0.32mmol)を、THF(4ml)中のジ-tert-ブチルカーボネート(0.5mmol)およびTEA(0.32mmol)(Aldrich, 99%)と反応した。懸濁液を0℃に冷却し、その後酸無水物を添加した。ジメチルホルムアミド(0.9ml)を添加し、反応混合液を均質とした。溶液を0℃で2時間攪拌し、その後一晩周囲温度で攪拌した。その後この溶液を、減圧下で蒸発させ、得られた黄色がかった油状残渣を、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(3ml)に再溶解した。この溶液を、石油エーテル(3x3ml)で洗浄し、水相を、1N塩酸溶液でpH3に酸性とした。混合物を、酢酸エチル(3x3ml)で抽出した。有機相を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、その後減圧下で蒸発した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよび酢酸(20:10:1)混合液(3ml)中に溶解した。これは引き続き、シリカカラムでのクロマトグラフィーにより精製した。これは所望の生成物115g(86%)を生じた(Rf=0.49)。
ES-MS (m/z, %) (ポジティブモード):C18H26Cl2N2O4質量の計算値:404 amu、実測値:405.1. [図15]
【0108】
工程Cにおいて、生成物B(0.20mmol)、TEG(0.09mmol)、DMAP(0.009mmol)を、DCM(2ml)に溶解した。この0℃で攪拌している溶液へ、ジクロロメタン(1ml)中のEDC-HCl(0.22mmol)を10分間かけて滴下した。得られた溶液を、0℃で1時間攪拌し、冷却装置を取り除き、混合液を周囲温度で3日間攪拌した。反応の進行は、薄層クロマトグラフィーによりモニタリングした。一旦出発材料が完全に消失したのが認められたならば、反応溶媒を減圧下で除去した。生成物を、クロロホルム:メタノール(9:1)で溶離する、カラムクロマトグラフィーにより精製した(Rf=0.93)。これは、所望の生成物0.8g(73%)を生じた。
ES-MS (m/z, %) (ポジティブモード):C42H62Cl4N4O10質量の計算値:922 amu、実測値:923.2。[図18]
【0109】
工程Dにおいて、精製された生成物C(2mmol)を、1容量%の水および1容量%のトリフルオロ酢酸を含有するクロロホルムに溶解した。この反応液を、室温で2時間攪拌した。反応液中に生成した白色沈殿を、濾過により収集し、クロロホルムによる洗浄により精製した。洗浄後、生成物D、すなわちバイオモノマーを、真空炉中で温度40℃で24時間乾燥した。
【0110】
実施例7:
THDI/PCL/NORFは、本発明の薬物15%を含有する薬学的活性のあるポリウレタンの例である。この反応の合成条件は以下である。
【0111】
PCL 1.5gを、ジメチルスルホキシド(DMSO)(10mL)中で、窒素大気下で、触媒ジブチルスズジラウレート0.06mlの存在下で、THDI 0.27gと1時間反応した。反応温度は、60〜7O℃に維持した。NORF-TEG-NORF 0.32gを、DMSO 5ml中に溶解し、反応システムへ添加した。反応液を、60〜70℃で5時間維持し、その後室温で一晩維持した。最後にメタノール1mlの添加により、反応を停止した。最終の薬物ポリマーは、エーテル/水(50v/v%)の混合液中で沈殿した。次に沈殿したポリマーを、アセトン中に溶解し、再度エーテル中に沈殿した。この洗浄手法を、3回繰り返した。
【0112】
ノルフロキサシンは、UV範囲の280nmで強力な検出可能な吸光度を有する、薬物ポリマー中のただ一つの成分である。従ってその存在は、UV検出器を用いて検出することができる。図5は、薬物ポリマーのUVクロマトグラムを、汎用(universal)屈折率検出器を用いその汎用ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)曲線と重ねた。同様のデータは、図6のシプロフロキサシンポリマーについて認められた。後者は、特定時間にGPCカラムから溶出する、存在する物質の質量に依存性を有するので、これは全ての分子の存在を検出する。従って二つのシグナルの比較は、このノルフロキサシンの分布が、実際の分子量鎖の分布と同一であることを示し、これは、低分子量鎖、対、高分子量鎖、またはその逆に対しノルフロキサシン/シプロフロキサシンの優先的カップリングが存在しないことを意味し;ノルフロキサシン/シプロフロキサシンのカップリングが均一であることを暗示している。
【0113】
実施例8:
AC/CIPROは、本発明の抗微生物薬シプロフロキサシンを含有する薬学的に活性のあるポリアミドの例である。これは、実施例1とは、これはポリウレタンではなく、および範囲のある段階成長重合においてバイオモノマーの使用に関する融通性を示す点が異なる。この合成の条件は、一般的ポリアミド界面重縮合反応である。これらは以下のように説明される:
【0114】
水30ml中のCIPRO-TEG-CIPROの3.88g(5mmol)および炭酸ナトリウム1.06g(10mmol)の溶液を、氷浴中で15分間冷却し、その後水相として、攪拌棒が入った150mlフラスコへ添加した。20mlの塩化メチレン中に塩化アジポイル(AC, 5mmol)の0.915 gを含有する有機溶液を、激しく攪拌している水相へゆっくり添加した。有機溶液は、先に氷浴で15分間冷却した。有機相の添加直後に、更に塩化メチレン5mlを使用し、当初の酸塩化物容器をすすぎ、この溶媒を反応フラスコへ移した。重合媒体は、最大速度で更に5分間攪拌した。得られたポリマーを濾過により収集した。その後ポリマーを水で少なくとも3回洗浄した。その後これをアセトンで2回洗浄した。生成物を、40℃で24時間真空乾燥した。
【0115】
実施例9:
γ線照射は、一般的かつ良く確立されたポリマー-ベースの医療用具の滅菌手法である(21)。しかしこの技術は、処理される材料の著しい変化に繋がり得ることは知られている。高エネルギー照射は、ポリマー分子のイオン化および励起を生じる。照射されたポリマーの安定化プロセスは、物理的および化学的交差-連結または鎖切断を生じ、これらは、照射中、照射直後、または照射後数日、数週間後に生じる。本実施例において、NFおよびCPポリマーを、クロロホルムのような適当な溶媒に10%で溶解した。フィルムを、テフロン型のような適当なホルダーに流涎し、および60℃の空気流れのある炉中に配置し、乾燥した。乾燥したフィルムを、γ線照射により滅菌した。線量は、予め選択された滅菌保証レベルを実現することが可能である(22)。以下の二つの方法の一つを、滅菌線量を選択するために採用した:(a)1)生物負荷情報、もしくは2)漸増線量により得られた情報のいずれかを使用する、滅菌線量の選択;b)線量25Kgyの適切さの具体化後の、25Kgyの滅菌線量の選択。各試料は、γ線照射により滅菌される12個のフィルムを有した(N=3)。生じた化学変化は、以下の異なる時点で検出することができる:a)滅菌せず(3);b)照射直後(3);c)照射の2週間後(3);d)照射の1ヶ月後(3)。γ線照射滅菌後、フィルムを、GPCにより分析し、照射前後の、ポリマー鎖の数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、および多分散性(Mw/Mn)における変化を検出した。結果を、表3にまとめた。これは、照射滅菌後に薬物ポリマーに生じた明らかな物理的および化学的変化を示さなかった。
【0116】
(表3) 照射前後の薬物ポリマーのMn、Mwおよび多分散性
【0117】
実施例10:
本実施例は、直接接触法を使用する、哺乳類細胞株に対する、生物活性のない対照ポリマー、NFおよびCPポリマーの、インビトロ細胞毒性を示している。この方法において、対照または薬物ポリマーを、各々、1mg/ml、3mg/ml、および5mg/ml含有するポリマーDMSO溶液1mlを、ペトリ皿の寒天の表面に配置したMillipore 0.45μmフィルターに各々負荷した。その後これらの皿は、加湿した5%CO2大気中、37℃で24時間インキュベーションした。溶媒が寒天に拡散した後、その上にポリマーが負荷されたこれらのフィルターを、固化した寒天を含む新たなペトリ皿に移した。HeLa細胞を、これらのフィルター上に播種した。これらの皿を、加湿した5%CO2大気中、37℃で48時間インキュベーションした。細胞を、コハク酸デヒドロゲナーゼ染色用緩衝液で染色した。フィルター上の染色された面積は、物質の細胞毒性を示している。図7は、対照、NFおよびCPポリマーが異なる量負荷されたフィルター上に播種された染色された細胞の走査写真を示している。各フィルターに染色されない領域はなかった。これらの結果は、対照ポリマーおよび生体活性ポリマーは、哺乳類細胞と良好な生体適合性を有することを示している。
【0118】
実施例11:
NFポリマーを使用し、加水分解酵素のこの物質を分解する能力、および優先的に薬物を放出する能力を評価した。NFポリマーは、小型のガラスシリンダー上に被覆し、その後加水分解酵素(すなわち、コレステロールエステラーゼ)の存在または非存在下、37℃で最大10週間インキュベーションした。毎週間隔で、インキュベーション液を、NFポリマーから採取し、新たな酵素溶液を添加した。これらのインキュベーション液を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、アッセイした。純粋なノルフロキサシンの標準液を、HPLCシステムで試行し、このシステムの較正曲線を得た。インキュベーション溶液中のノルフロキサシン濃度は、インキュベーション溶液の薬物ピーク面積の、較正曲線との比較により決定した。図8は、コレステロールエステラーゼの存在または非存在下で、NFポリマーから放出されたノルフロキサシンを示している。CEの存在下で、ノルフロキサシンの10週間の明らかな放出が存在した。しかしCEの非存在下では、最初の6週間に薬物の若干の放出のみが存在し、これは実験を通じて、酵素がインキュベーションされた試料よりも低かった。
【0119】
HPLCでアッセイした同じNFポリマーインキュベーション溶液を、生物学的アッセイ法を使用し、抗微生物活性についても評価した。マクロ希釈した最小阻害濃度(MIC)アッセイ法を用い、用具に関連した感染症に関連することが多い病原体である緑膿菌の増殖を阻害する抗菌薬(ノルフロキサシン)の濃度を決定した。この生物およびノルフロキサシンに関するMICを、0.8mu g/mLと決定した。NFポリマーの酵素および緩衝液対照処理の両方からのインキュベーション溶液を、インキュベーション時間および処理の関数としてノルフロキサシン濃度を概算するようにデザインされた、生物学的アッセイマトリックスにおいて使用した。データは、表4に示した。抗微生物活性は、緩衝液(対照)インキュベーション溶液に曝されたNFポリマーにおいて、2週間後に検出されなかった。しかし、酵素処理したNFポリマーは、抗生物質を臨床的に有意なレベル(>MICレベル)で10週間のインキュベーション期間放出した。これらの生物学的アッセイデータは、先に説明されたHPLCデータとの有意な相関関係を示している。これらの実験の結果は、抗生物質は、酵素的に活性化されているNFポリマーから放出されること、および抗生物質は、臨床的に重要な細菌に対する抗微生物活性を有することを示している。更にこの抗生物質の臨床的に重要な濃度(すなわちMICレベル)は、長い期間、10週間にわたり放出された。
【0120】
(表4) 分解されたNFポリマー溶液の抗菌活性に関するMICアッセイ法
【0121】
実施例13:
インビボ動物試験を、寸法1x2cm2の対照およびCPポリマーで作製された成形されたクーポン上で行った。これらのクーポンを、雄のラットの腹腔に移植した。ラットを1週間飼育した後、クーポンを外植した。本発明の実験条件は、以下に従う:
【0122】
移植のために、各実験群について、5匹の雄のSprague-Dawleyラット(250〜300g)を使用した。これらに麻酔をかけた後、腹部へ2cmの開腹切開を行った。網組織および導帯組織は、クーポンを包む傾向があるので、切除した。その後対照クーポンまたはCPクーポン(1x2cm2)のいずれかを、腹腔に移植した。切開部を二層で閉鎖した。動物を1週間飼育した後(ラットは毎日モニタリングした)、クーポンをラットから外植した。接着、膿瘍、炎症および被包に関する肉眼による観察を行った。CPポリマークーポンに関連した接着、膿瘍および炎症は認められなかったが、移植された対照ポリマークーポンに関連した明らかな接着、膿瘍および重篤な炎症が存在した。クーポンは、滅菌した手術装置で回収した。スワブ標本を腹腔から採取した。クーポンは、PBS緩衝液中で洗浄し、非-接着細胞を除去し、更なる細菌培養のために滅菌チューブに入れた。対照およびCPクーポンの培養物から得られた細菌数を、図9に示した。明らかにCPクーポンは、抗微生物作用を示し、有意に低いコロニー形成単位(CFU)を生じた。
【0123】
実施例12:
以下に説明された方法1、2、3を使用するポリマーへ生体活性ポリマーを組込んでいる生物医学的製品の例は、例えば、全体または一部がポリウレタン成分で製造された以下の製品を含む:すなわち、心臓補助装置、組織工学のための高分子足場および関連用具、心臓代替装置、心臓中隔パッチ、大動脈内バルーン、経皮的心臓補助装置、体外循環、動静脈瘻、透析の構成要素(チューブ、フィルター、メンブレンなど)、アフェレシスユニット、膜式酸素加装置、心臓バイパス構成要素(チューブ、フィルターなど)、心嚢、コンタクトレンズ、蝸牛インプラント、縫合材、縫合リング、カニューレ、避妊具、注射筒、o-リング、膀胱、陰茎インプラント、薬物送達システム、排液チューブ、ペースメーカーリード絶縁体、心臓弁、輸血バッグ、移植可能なワイヤ、カテーテル、血管ステント、血管再建バルーンおよび用具のためのコーティング、包帯、心臓マッサージ用カップ、気管チューブ、乳房インプラントコーティング、人工ダクト、頭蓋顔面および顎顔面の再建用途、靱帯、卵管、バイオセンサーおよびバイオ-診断基材。
【0124】
先の方法1)により二次加工された生物医学的でない製品は、例えば押出健康製品、バイオリアクター触媒ビーズまたはアフィニティクロマトグラフィーカラム充填材、またはバイオセンサーおよびバイオ診断基材を含む。
【0125】
方法2)により例示される医療以外の用途は、水の精製のためのファイバーメンブレンを含む。
【0126】
方法3)により例示される型の医療以外の用途は、無菌の表面のための生物学的機能を伴うワニスを含む。
【0127】
本開示は、本発明のある好ましい態様を説明および例示しているが、本発明はこれらの特定の態様に制限されないことは理解されると思われる。むしろ本発明は、具体的態様の機能的または機械的同等物の全ての態様、ならびに説明されたおよび例示された特徴を含む。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】バイオモノマー(カップリング剤)NORF-TEG-NORFのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図2】バイオモノマーNOF-TEG-NORFの炭素核磁気共鳴スペクトルである。
【図3】バイオモノマーNORF-TEG-NORFのポジティブエレクトロスプレー質量分析である。
【図4】バイオモノマーCIPRO-TEG-CIPROのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図5】バイオモノマーCIPRO-TEG-CIPROの炭素核磁気共鳴スペクトルである。
【図6】バイオモノマーCIPRO-TEG-CIPROのポジティブエレクトロスプレー質量分析である。
【図7】POCのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図8】POCの炭素核磁気共鳴スペクトルである。
【図9】POCのポジティブエレクトロスプレー質量分析である。
【図10】バイオモノマーPOC-TEG-POCのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図11】バイオモノマーPOC-TEG-POCの炭素核磁気共鳴スペクトルである。
【図12】バイオモノマーPOC-TEG-POCのポジティブエレクトロスプレー質量分析である。
【図13】PAKのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図14】PAKの炭素核磁気共鳴スペクトルである。
【図15】PAKのポジティブエレクトロスプレー質量分析である。
【図16】バイオモノマーPAK-TEG-PAKのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図17】バイオモノマーPAK-TEG-PAKのプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【図18】バイオモノマーPAK-TEG-PAKのポジティブエレクトロスプレー質量分析である。
【図19】THDI/PCL/NORFのゲル透過クロマトグラフィー分析である。
【図20】THDI/PCL/CIPROのゲル透過クロマトグラフィー分析である。
【図21】哺乳類細胞による対照ポリマーおよび薬物ポリマーの細胞毒性試験である。
【図22】コレステロールエステラーゼの存在下および非存在下で、NFポリマーから放出されたノルフロキサシンのグラフである。
【図23】移植されたクーポンからの細菌数のグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の薬学的に活性のある高分子化合物:
Y-[Yn-LINK B-X]m-LINK B (I)
式中、(i)Xは、一般式(II)のカップリングされた生物学的カップリング剤であり:
Bio-LINK A-Bio (II)
ここで、Bioは、加水分解可能な共有結合を介してLINK Aへ連結された生物学的活性物質断片またはそれらの前駆体であり;かつ
LINK Aは、該Bio断片の各々に連結された理論的分子量<2000のカップリングされた中心の柔軟な線状第一セグメントであり;
(ii)Yは、LINK B-OLIGOであり;ここで
(a)LINK Bは、一つのOLIGOを別のOLIGOへ、およびOLIGOをXまたはそれらの前駆体へ連結しているカップリングされた第二セグメントであり;かつ
(b)OLIGOは、分子量5,000未満を有し、100個未満の単量体反復単位を含む、長さの短いポリマーセグメントであり;
(iii)mは、1〜40であり;かつ
(iv)nは、2〜50から選択される。
【請求項2】
LINK Aが、カルボン酸エステル、アミド、またはスルホンアミド結合によりBioへ連結されている、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
LINK Aが、それ自身内にポリアルキル、ポリエチレンオキシド、ポリアルキレンオキシド、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニル、ポリカーボネート、ポリ酸無水物、またはポリシロキサンを含む、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
LINK Aが、60〜700から選択された分子量を有する、請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
Ynが、15,000未満の理論的分子量を有する、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
Ynが、分子量<10,000を有する、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
Ynが、分子量<5,000を有する、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
LINK Bが、60〜2000から選択された分子量を有する、請求項1〜7記載の化合物。
【請求項9】
LINK Bが、60〜700から選択された分子量を有する、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
LINK Bが、ウレタン、エステル、尿素、スルホンアミド、カーボネート、酸無水物、またはアミドを介し、他のセグメントへ連結されている、請求項1〜9のいずれか一項記載の化合物。
【請求項11】
生物学的活性の異なる少なくとも2種のBio断片またはそれらの前駆体を有する、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
Bioが分子量<4000を有する、請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項13】
Bioが、分子量<2000を有する、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
Bioが、抗凝固薬、抗炎症薬、抗増殖薬、抗微生物薬、抗血栓薬、およびそれらの加水分解可能な前駆体断片から選択された、生物学的に活性のある実体である、請求項1〜13のいずれか一項記載の化合物。
【請求項15】
少なくとも2種のBio実体および/またはそれらの加水分解可能な前駆体断片を有する、請求項1〜14のいずれか一項記載の化合物。
【請求項16】
Bioが、抗微生物薬またはそれらの加水分解可能な前駆体断片である、請求項16記載の化合物。
【請求項17】
抗微生物薬が、シプロフロキサシンおよびノルフロキサシンから選択される、請求項14記載の化合物。
【請求項18】
抗炎症薬が、アムフェナック、アセクロフェナック、オキサセプロール、およびエノキソロンから選択される、請求項14記載の化合物。
【請求項19】
抗血栓薬が、ブロモフェナック、チロフィバン、およびロトラフィバンから選択される、請求項14記載の化合物。
【請求項20】
抗増殖薬が、アシビシンおよびアルケレンから選択される、請求項14記載の化合物。
【請求項21】
一般式(III)の生物学的カップリング剤:
PBio-LINK A-PBio (III)
式中、PBioは、LINK Aへ加水分解可能な共有結合を介して連結され、かつ段階成長重合を可能にする少なくとも1個の官能基を有する、生物学的活性物質断片またはそれらの前駆体であり;および
LINK Aは、該PBio断片の各々へ連結された、理論的分子量<2000のカップリングされた中心の柔軟な線状第一セグメントである。
【請求項22】
LINK Aは、Bioへ、カルボン酸エステル、アミド、またはスルホンアミド結合により連結されている、請求項21記載のカップリング剤。
【請求項23】
LINK Aは、60〜700から選択された分子量を有する、請求項21または22記載のカップリング剤。
【請求項24】
Bioは、抗凝固薬、抗炎症薬、抗増殖薬、抗微生物薬、抗血栓薬、およびそれらの加水分解可能な前駆体断片から選択された生物学的に活性のある実体である、請求項21〜23のいずれか一項記載のカップリング剤。
【請求項25】
抗微生物薬は、シプロフロキサシンおよびノルフロキサシンから選択される、請求項24記載のカップリング剤。
【請求項26】
抗炎症薬が、アムフェナック、アセクロフェナック、オキサセプロール、およびエノキソロンから選択される、請求項24記載のカップリング剤。
【請求項27】
抗血栓薬が、オキサセプロール、ブロモフェナック、チロフィバン、およびロトラフィバンから選択される、請求項24記載のカップリング剤。
【請求項28】
抗増殖薬が、アシビシンおよびアルケレンから選択される、請求項24記載のカップリング剤。
【請求項29】
請求項1〜20のいずれか一項記載の薬学的に活性のある高分子化合物を、相溶性のある基剤ポリマーと混合して含有する、薬学的に活性のある高分子組成物。
【請求項30】
基剤ポリマーが、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリシリコン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエンスチレン)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、テレフタレート、セルロース、および他の多糖類からなる群より選択される、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
基剤ポリマーが、セグメント化されたポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、多糖類、またはポリアミドもしくはポリシリコンである、請求項29または30記載の組成物。
【請求項32】
造形品の形である、請求項29〜31のいずれか一項記載の組成物。
【請求項33】
移植可能な医療用具、自立フィルム、またはファイバーの形である、請求項32記載の造形品。
【請求項34】
造形品の形である、請求項1記載の化合物。
【請求項35】
移植可能な医療用具、自立フィルム、またはファイバーの形である、請求項34記載の造形品。
【請求項1】
一般式(I)の薬学的に活性のある高分子化合物:
Y-[Yn-LINK B-X]m-LINK B (I)
式中、(i)Xは、一般式(II)のカップリングされた生物学的カップリング剤であり:
Bio-LINK A-Bio (II)
ここで、Bioは、加水分解可能な共有結合を介してLINK Aへ連結された生物学的活性物質断片またはそれらの前駆体であり;かつ
LINK Aは、該Bio断片の各々に連結された理論的分子量<2000のカップリングされた中心の柔軟な線状第一セグメントであり;
(ii)Yは、LINK B-OLIGOであり;ここで
(a)LINK Bは、一つのOLIGOを別のOLIGOへ、およびOLIGOをXまたはそれらの前駆体へ連結しているカップリングされた第二セグメントであり;かつ
(b)OLIGOは、分子量5,000未満を有し、100個未満の単量体反復単位を含む、長さの短いポリマーセグメントであり;
(iii)mは、1〜40であり;かつ
(iv)nは、2〜50から選択される。
【請求項2】
LINK Aが、カルボン酸エステル、アミド、またはスルホンアミド結合によりBioへ連結されている、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
LINK Aが、それ自身内にポリアルキル、ポリエチレンオキシド、ポリアルキレンオキシド、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニル、ポリカーボネート、ポリ酸無水物、またはポリシロキサンを含む、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
LINK Aが、60〜700から選択された分子量を有する、請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
Ynが、15,000未満の理論的分子量を有する、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
Ynが、分子量<10,000を有する、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
Ynが、分子量<5,000を有する、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
LINK Bが、60〜2000から選択された分子量を有する、請求項1〜7記載の化合物。
【請求項9】
LINK Bが、60〜700から選択された分子量を有する、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
LINK Bが、ウレタン、エステル、尿素、スルホンアミド、カーボネート、酸無水物、またはアミドを介し、他のセグメントへ連結されている、請求項1〜9のいずれか一項記載の化合物。
【請求項11】
生物学的活性の異なる少なくとも2種のBio断片またはそれらの前駆体を有する、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
Bioが分子量<4000を有する、請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項13】
Bioが、分子量<2000を有する、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
Bioが、抗凝固薬、抗炎症薬、抗増殖薬、抗微生物薬、抗血栓薬、およびそれらの加水分解可能な前駆体断片から選択された、生物学的に活性のある実体である、請求項1〜13のいずれか一項記載の化合物。
【請求項15】
少なくとも2種のBio実体および/またはそれらの加水分解可能な前駆体断片を有する、請求項1〜14のいずれか一項記載の化合物。
【請求項16】
Bioが、抗微生物薬またはそれらの加水分解可能な前駆体断片である、請求項16記載の化合物。
【請求項17】
抗微生物薬が、シプロフロキサシンおよびノルフロキサシンから選択される、請求項14記載の化合物。
【請求項18】
抗炎症薬が、アムフェナック、アセクロフェナック、オキサセプロール、およびエノキソロンから選択される、請求項14記載の化合物。
【請求項19】
抗血栓薬が、ブロモフェナック、チロフィバン、およびロトラフィバンから選択される、請求項14記載の化合物。
【請求項20】
抗増殖薬が、アシビシンおよびアルケレンから選択される、請求項14記載の化合物。
【請求項21】
一般式(III)の生物学的カップリング剤:
PBio-LINK A-PBio (III)
式中、PBioは、LINK Aへ加水分解可能な共有結合を介して連結され、かつ段階成長重合を可能にする少なくとも1個の官能基を有する、生物学的活性物質断片またはそれらの前駆体であり;および
LINK Aは、該PBio断片の各々へ連結された、理論的分子量<2000のカップリングされた中心の柔軟な線状第一セグメントである。
【請求項22】
LINK Aは、Bioへ、カルボン酸エステル、アミド、またはスルホンアミド結合により連結されている、請求項21記載のカップリング剤。
【請求項23】
LINK Aは、60〜700から選択された分子量を有する、請求項21または22記載のカップリング剤。
【請求項24】
Bioは、抗凝固薬、抗炎症薬、抗増殖薬、抗微生物薬、抗血栓薬、およびそれらの加水分解可能な前駆体断片から選択された生物学的に活性のある実体である、請求項21〜23のいずれか一項記載のカップリング剤。
【請求項25】
抗微生物薬は、シプロフロキサシンおよびノルフロキサシンから選択される、請求項24記載のカップリング剤。
【請求項26】
抗炎症薬が、アムフェナック、アセクロフェナック、オキサセプロール、およびエノキソロンから選択される、請求項24記載のカップリング剤。
【請求項27】
抗血栓薬が、オキサセプロール、ブロモフェナック、チロフィバン、およびロトラフィバンから選択される、請求項24記載のカップリング剤。
【請求項28】
抗増殖薬が、アシビシンおよびアルケレンから選択される、請求項24記載のカップリング剤。
【請求項29】
請求項1〜20のいずれか一項記載の薬学的に活性のある高分子化合物を、相溶性のある基剤ポリマーと混合して含有する、薬学的に活性のある高分子組成物。
【請求項30】
基剤ポリマーが、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリシリコン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエンスチレン)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、テレフタレート、セルロース、および他の多糖類からなる群より選択される、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
基剤ポリマーが、セグメント化されたポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、多糖類、またはポリアミドもしくはポリシリコンである、請求項29または30記載の組成物。
【請求項32】
造形品の形である、請求項29〜31のいずれか一項記載の組成物。
【請求項33】
移植可能な医療用具、自立フィルム、またはファイバーの形である、請求項32記載の造形品。
【請求項34】
造形品の形である、請求項1記載の化合物。
【請求項35】
移植可能な医療用具、自立フィルム、またはファイバーの形である、請求項34記載の造形品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図11】
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【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2007−537168(P2007−537168A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511817(P2007−511817)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000742
【国際公開番号】WO2005/110485
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(506381278)インターフェース バイオロジクス インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000742
【国際公開番号】WO2005/110485
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(506381278)インターフェース バイオロジクス インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】
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