説明

高分子中間層を有する電解コンデンサの製造方法

本発明は、固体電解質、ならびに導電性ポリマーを含む中間層および外層からなる、低い等価直列抵抗および低い残留電流を有する電解コンデンサの製造方法、本方法を使用して製造される電解コンデンサ、ならびにこの種の電解コンデンサの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質、導電性ポリマーを含む中間層および外層からなる、低い等価直列抵抗および低い残留電流を有する電解コンデンサの製造方法、本方法を使用して製造される電解コンデンサ、ならびにこの種の電解コンデンサの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の商業的な固体電解コンデンサは、一般に、多孔性の金属電極、その金属表面上に設けられた酸化物層、この多孔性構造体の中へと導入される電気伝導性の固体、例えば銀層またはカソード箔などの外部電極(接触子)、およびさらなる電気接点および封止材からなる。
【0003】
固体電解コンデンサの例は、電荷移動錯体、軟マンガン鉱または高分子固体電解質を含んだタンタル、アルミニウム、ニオブおよび酸化ニオブコンデンサである。多孔体の使用は、大きい表面積のため、小さい空間において非常に高い静電容量密度、すなわち高い電気容量を達成することが可能であるという利点を有する。
【0004】
π−共役ポリマーの高い電気伝導率のため、π−共役ポリマーは固体電解質として特に適切なものとなる。π−共役ポリマーは、導電性ポリマーまたは合成金属とも呼ばれる。ポリマーは加工性、重量および化学修飾(化学変性)による特性の標的化された設定という点で金属に勝る利点を有するため、それらはますます経済的に重要になっている。公知のπ−共役ポリマーの例は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンおよびポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ−3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とも呼ばれることが多い)である。このポリ−3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェンは、その酸化された形態において非常に高い電気伝導率および高い熱安定性を有するので、特に重要で工業的に使用されるポリチオフェンである。
【0005】
電子機器における技術開発は、非常に低い等価直列抵抗(ESR)を有する固体電解コンデンサをますます求めている。これに対する理由は、例えば低下するロジック電圧、より高い集積密度および集積回路における上昇するクロック周波数である。さらに、低いESRは、消費されるエネルギー量も減少させる。これは、携帯型の、バッテリで作動する用途のために特に有利である。それゆえ、固体電解コンデンサのESRを可能な限り低下させることが望ましい。
【0006】
特許文献1は、3,4−エチレン−1,2−ジオキシチエフェンからの固体電解質の製造、および酸化重合によって製造されるそのカチオン性ポリマーの、電解コンデンサにおける固体電解質としての使用を記載する。固体電解コンデンサ中の二酸化マンガンまたは電荷移動錯体の代替物としてのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、より高い電気伝導率のため、コンデンサの等価直列抵抗を低下させ、周波数応答を改善する。
【0007】
低いESRに加えて、現代の固体電解コンデンサは、低い残留電流および外部負荷に対する良好な安定性をも要求する。特に製造プロセスの間に、コンデンサアノードの残留電流を大きく上昇させる可能性がある高い機械的負荷が、コンデンサアノードの封入の間に発生する。
【0008】
この種の負荷に対する安定性、および従って低い残留電流は、とりわけ、コンデンサアノード上の、導電性ポリマーで作られた約5〜50μm厚の外層によって成し遂げられてもよい。この種の層は、コンデンサアノードとカソード側の接触子との間の機械的緩衝材としての役割を果たす。これは、この銀層(接触子)が、例えば、機械的負荷の間に誘電体と直接接触するようになることまたはその誘電体を損傷させることを防止し、そしてこのコンデンサの残留電流が結果として増加することを防止する。この導電性ポリマーの外層自体は自己回復挙動として知られる挙動を呈するべきである。外側のアノード表面にあるその誘電体中の比較的軽微な欠陥は、この緩衝材効果にも関わらず発生するが、その外層の電気伝導率は電流によってその欠陥の位置で破壊されるという事実の結果として、この欠陥は電気的に隔離される。
【0009】
その場重合により厚い高分子外層を形成することは非常に困難である。層形成は、この場合、非常に多くのコーティングサイクルを必要とする。非常に多くのコーティングサイクルのため、この外層は非常に不均一になる。このコンデンサアノードの縁は、特に、不十分に覆われることが多い。特許文献2は、均一な縁の被覆は、プロセスパラメータの費用がかかる適合を必要とするということを記載する。しかしながら、このため、製造プロセスは非常に機能不全を起こし易いものになる。加えて、その場重合に供されたその層から残留する塩を、洗浄によって除去することが一般的に必要である。結果として、穴がそのポリマー層の中に生成する。
【0010】
良好な縁の被覆を備えた高密度の電気伝導性の外層は、電気化学重合によって成し遂げることができる。しかしながら、電気化学重合は、最初に導電性膜をコンデンサアノードの絶縁性の酸化物層上に堆積させて、次いでこの層を各々個々のコンデンサと電気的に接触させることを必要とする。この接触が大量生産においては非常に費用がかかり、しかもこの酸化物層を損傷する可能性がある。
【0011】
特許文献3および特許文献4では、高分子外層は、導電性ポリマーの粒子および結合剤を含む分散物を付与することによって生成される。高分子外層は、これらの方法を使用して比較的容易に生成することができる。しかしながら、この方法は、例えばコンデンサのはんだ付けの間に製造される場合などの熱負荷のもとではESRが著しく上昇する、という欠点を有する。加えて、ESRをさらに低下させることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第340 512号明細書
【特許文献2】特開2003−188052号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第1713103号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1746613号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、固体電解コンデンサを製造するための特許文献3および特許文献4に記載される2つの方法を、ESRがさらに低下するように、そして増加した熱負荷のもとでさえも著しくは上昇しないように、改良する必要性が存在する。
【0014】
それゆえ、本目的は、このような方法、およびこれにより改善されたコンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明において、驚くべきことに、1〜60nmの範囲の平均粒径を有する導電性のポリピロールおよび/またはポリアニリンおよび/またはポリチオフェンの粒子、特に導電性のポリチオフェンの粒子と、結合剤とを含む分散物を用いて、高分子中間層を固体電解質と高分子外層との間に設けることによって、これらの要求が満たされうるということが見出された。
【0016】
この導電性ポリマー粒子の直径と結合剤の存在との相互作用は、驚くべきことに、高分子中間層の形成において、電解コンデンサのESRに対してかなりの影響を有する。結合剤を用いずに製造された高分子中間層の電気伝導率ははるかに良好であるが、この中間層は、1〜60nmの平均サイズを有する粒子を用いた場合およびさらに大きい粒子を用いた場合ともに、より高いESRを導く。結合剤を用いて製造されたが60nmよりも大きい平均直径を有する粒子で作られた高分子中間層でさえ、より高いESRを導く。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】タンタルコンデンサの例に基づく固体電解コンデンサの構造の概略図。
【図2】当該タンタルコンデンサの概略的な層構造を表す、拡大された図1からの形態の細部10を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
それゆえ、本発明の主題は、コンデンサ体(1)の上に、
電極材料およびこの電極材料の表面を覆う誘電体(3)の多孔性電極体(2)と、
少なくとも電気伝導性物質を含みかつ全体にまたは部分的に上記誘電体表面を覆う固体電解質(4)と
を少なくとも含む電解コンデンサの製造方法であって、
少なくとも導電性ポリマーの粒子b1)と、分散剤d1)とを含む少なくとも1つの分散物a1)が付与され、かつ電気伝導性の高分子中間層を形成するために分散剤d1)が少なくとも部分的に取り除かれ、かつ
70〜1,000nmの平均直径を有する導電性ポリマーの粒子b2)と、分散剤d2)と、結合剤c2)とを少なくとも含む少なくとも1つの分散物a2)が付与され、かつ電気伝導性の高分子外層を形成するために分散剤d2)が少なくとも部分的に取り除かれ、および/または結合剤c2)が硬化され、
分散物a1)は結合剤c1)を含み、かつ分散物a1)中の導電性ポリマーの粒子b1)は1〜60nmの平均直径を有することを特徴とする方法である。
【0019】
粒子b1)およびb2)の直径は、超遠心分離測定によって測定される。一般的手順はColloid Polym.Sci.1989年、第267巻、1113−1116頁に記載されている。当該分散物中で膨潤する粒子b1)および/またはb2)の場合は、粒径は膨潤状態で測定される。粒子b1)およびb2)の直径分布は、粒径の関数としての、その分散物中の粒子の質量分布に関連する。
【0020】
分散物a1)中の導電性ポリマーの粒子b1)は、本発明に係る方法では、好ましくは1〜50nm、特に好ましくは5〜40nmの平均直径を有する。
【0021】
分散物a1)中の導電性ポリマーの粒子b1)は、当該方法では、好ましくは100nm未満、特に好ましくは80nm未満、なお特に好ましくは60nm未満の直径分布のd90値を有する。
【0022】
分散物a1)中の導電性ポリマーの粒子b1)は、当該方法では、好ましくは1nmよりも大きい、特に好ましくは3nmよりも大きい、なお特に好ましくは5nmよりも大きい直径分布のd10値を有する。
【0023】
分散物a2)中の導電性ポリマーの粒子b2)は、本発明に係る方法では、好ましくは90〜800nm、特に好ましくは100〜600nmの平均直径を有する。
【0024】
分散物a2)中の導電性ポリマーの粒子b2)は、当該方法では、好ましくは1,500nm未満、特に好ましくは1,000nm未満、なお特に好ましくは800nm未満の直径分布のd90値を有する。
【0025】
分散物a2)中の導電性ポリマーの粒子b2)は、当該方法では、好ましくは50nmよりも大きい、特に好ましくは70nmよりも大きい、なお特に好ましくは80nmよりも大きい直径分布のd10値を有する。
【0026】
直径分布のd10値は、この場合、その分散物中の当該導電性ポリマーのすべての粒子の全質量の10%を、そのd10値以下の直径を有する種類の粒子に割り当てることができるということを表す。直径分布のd90値は、その分散物中の当該導電性ポリマーのすべての粒子の全質量の90%を、そのd90値以下の直径を有する種類の粒子に割り当てることができるということを表す。
【0027】
当該電極材料は、本発明に係る方法を使用して製造される電解コンデンサにおいて、大きい表面積を有する多孔体を形成し、そして例えば多孔性の焼結体またはざらつきのある箔の形態にある。この多孔体は、本願明細書中で以降、略して電極体とも呼ばれるであろう。
【0028】
誘電体で覆われた電極体は、本願明細書中で以降、略して酸化された電極体とも呼ばれるであろう。用語「酸化された電極体」は、その電極体の酸化によって製造されなかった誘電体で覆われた種類の電極体をも含む。
【0029】
誘電体で覆われかつ全体にまたは部分的に固体電解質でも覆われた電極体は、本願明細書中で以降、略してコンデンサ体とも呼ばれるであろう。
【0030】
「コンデンサ体の外側表面」は、そのコンデンサ体の外側表面を指す。
【0031】
本発明に係る方法を使用して分散物a1)から製造される電気伝導性層は、本願明細書では高分子中間層と呼ばれる。
【0032】
本発明に係る方法を使用して分散物a2)から製造される電気伝導性層は、本願明細書では高分子外層と呼ばれる。
【0033】
分散物a1)および分散物a2)に当てはまる好ましい範囲を特定するときに、簡単のため、本願明細書中で以降、分散物a)と呼ばれるであろう。この表現は、記載された好ましい範囲が分散物a1)および/または分散物a2)に当てはまるということを意味する。同じ好ましい範囲が分散物a1)およびa2)の両方に当てはまるはずであるが、とはいうものの、それらはこの好ましい範囲の中で異なっていてもよい。
【0034】
粒子b1)および粒子b2)に当てはまる好ましい範囲を特定するときに、簡単のため、本願明細書中で以降、粒子b)と呼ばれるであろう。この表現は、記載された好ましい範囲が粒子b1)および/または粒子b2)に当てはまるということを意味する。同じ好ましい範囲が粒子b1)およびb2)の両方に当てはまるはずであるが、とはいうものの、それらはこの好ましい範囲の中で異なっていてもよい。
【0035】
結合剤c1)および結合剤c2)に当てはまる好ましい範囲を特定するときに、簡単のため、本願明細書中で以降、結合剤c)と呼ばれるであろう。この表現は、記載された好ましい範囲が結合剤c1)および/または結合剤c2)に当てはまるということを意味する。同じ好ましい範囲が結合剤c1)およびc2)の両方に当てはまるに当てはまるはずであるが、とはいうものの、それらはこの好ましい範囲の中で異なっていてもよい。
【0036】
分散剤d1)および分散剤d2)に当てはまる好ましい範囲を特定するときに、簡単のため、本願明細書中で以降、分散剤d)と呼ばれるであろう。この表現は、記載された好ましい範囲が分散剤d1)および/または分散剤d2)に当てはまるということを意味する。同じ好ましい範囲が分散剤d1)およびd2)の両方に当てはまるはずであるが、とはいうものの、それらはこの好ましい範囲の中で異なっていてもよい。
【0037】
好ましくは、乾燥状態において10S/cmよりも大きい、特に好ましくは20S/cmよりも大きい、なお特に好ましくは50S/cmよりも大きい、いっそう好ましくは100S/cmよりも大きい、そして特に好ましい実施形態では200S/cmよりも大きい比電気伝導率を有する膜を与える分散物a)が使用される。
【0038】
分散物a)は、金属および遷移金属を含まないか、またはわずか少量のみの金属および遷移金属を含むことが好ましい。用語「金属」は、この場合、元素の周期表の主族または亜族金属の金属または金属イオンを指し、この亜族金属は、本願明細書中で以降、遷移金属とも呼ばれる。公知のとおり、遷移金属は、特に誘電体を損傷する可能性があり、その結果、それから生じる残留電流の増加がそのコンデンサの耐用年数を大きく減少させ、または残留電流の増加のため高温および/もしくは高い空気の湿度などの過酷な条件下でそのコンデンサを使用することが不可能になることさえもある。
【0039】
分散物a)は、当該方法では、好ましくは5,000mg/kg未満の、特に好ましくは1,000mg/kg未満の、なお特に好ましくは200mg/kg未満の金属含量を有する。金属の例としては、この場合Na、K、Mg、Al、Ca、Fe、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Ru、CeまたはZnが挙げられる。
【0040】
分散物a)は、当該方法では、好ましくは1,000mg/kg未満の、特に好ましくは100mg/kg未満の、なお特に好ましくは20mg/kg未満の遷移金属含量を有する。遷移金属の例としては、この場合、例えばFe、Cu、Cr、Mn、Ni、Ru、Ce、ZnまたはCoが挙げられる。
【0041】
分散物a)は、当該方法では、好ましくは1,000mg/kg未満の、特に好ましくは100mg/kg未満の、なお特に好ましくは20mg/kg未満の鉄含量を有する。
【0042】
当該分散物中の金属の低い濃度は、高分子中間層および/または高分子外層の形成の間、ならびにその後のコンデンサの作動の間に誘電体が損傷されないという主要な利点を有する。
【0043】
好ましくは、分散物a)は、少なくとも1つの高分子有機結合剤c)を含む。特に好ましい高分子有機結合剤c)の例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ酪酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸アミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸アミド、ポリアクリロニトリル、スチレン/アクリル酸エステル、酢酸ビニル/アクリル酸エステルおよびエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂またはセルロース誘導体が挙げられる。高分子有機結合剤c)のさらなる例としては、好ましくは、例えばメラミン化合物、ブロック化イソシアネートまたは官能性シラン(例えば3−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、テトラエトキシシランおよびテトラエトキシシラン加水分解生成物など)などの架橋剤、または例えばポリウレタン、ポリアクリレートもしくはポリオレフィンなどの架橋性ポリマーの添加、ならびにその後の架橋によって生成されるものが挙げられる。高分子結合剤c)として適切なこの種の架橋生成物は、例えば、添加された架橋剤を分散物a)の中に任意に含まれる高分子アニオンと反応させることによっても形成される。完成したコンデンサが後で曝露される温度負荷、例えば220〜260℃というはんだ付け温度に耐えるために、熱に対して十分に安定である種類の結合剤c)が好ましい。
【0044】
分散物a)中の高分子結合剤c)の固形分含量は、0.1〜90重量パーセント(重量%)、好ましくは0.5〜30重量%、なお特に好ましくは0.5〜10重量%である。
【0045】
分散物a)は、1以上の分散剤d)を含むことができる。分散剤d)の例としては、以下の溶媒が挙げられる:メタノール、エタノール、i−プロパノールおよびブタノールなどの脂肪族アルコール;アセトンおよびメチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン;酢酸エチルエステルおよび酢酸ブチルエステルなどの脂肪族カルボン酸エステル;トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどの塩素化炭化水素;アセトニトリルなどの脂肪族ニトリル、ジメチルスルホキシドおよびスルホランなどの脂肪族スルホキシドおよびスルホン;メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドなどの脂肪族カルボン酸アミド;ジエチルエーテルおよびアニソールなどの脂肪族および芳香環を含む脂肪族エーテル。さらに、水または水と上述の有機溶媒との混合物もまた、分散剤d)として使用することができる。
【0046】
好ましい分散剤d)は、水またはアルコール、例えばメタノール、エタノール、i−プロパノールおよびブタノールなどの他のプロトン性溶媒、およびまた水とこれらのアルコールとの混合物である。水は特に好ましい溶媒である。
【0047】
任意に、結合剤c)も分散剤d)として機能することができる。
【0048】
用語「ポリマー」は、本発明の意味では、複数の同じまたは異なる繰り返し単位を含むすべての化合物を包含する。
【0049】
用語「導電性ポリマー」は、この場合、特に、酸化または還元後に電気伝導率を有するπ−共役ポリマーの化合物の種類を指す。好ましくは、用語「導電性ポリマー」は、酸化後に少なくとも1μScm−1の桁の電気伝導率を有する種類のπ−共役ポリマーを指す。
【0050】
分散物a)中の導電性ポリマーの粒子b)は、好ましくは少なくとも1つの任意に置換されたポリチオフェン、ポリピロールまたはポリアニリンを含む。
【0051】
特に好ましくは、当該導電性ポリマーの粒子b)は、一般式(I)の、または一般式(II)の、または一般式(X)の繰り返し単位、または式(I)および(II)の繰り返し単位、または式(I)および(X)の繰り返し単位、または式(II)および(X)の繰り返し単位、または式(I)、(II)および(X)の繰り返し単位を有する少なくとも1つのポリチオフェン
【化1】

(式中、
Aは、任意に置換されたC−Cアルキレンラジカルを表し、
Rは、互いに独立にH、直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC−C18アルキルラジカル、任意に置換されたC−C12シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC−C14アリールラジカル、任意に置換されたC−C18アラルキルラジカル、任意に置換されたC−Cヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルを表し、
xは0〜8の整数を表し、かつ
複数のラジカルRがAに結合されている場合、このラジカルは同じであってもよいし異なっていてもよい)
を含む。
【0052】
一般式(I)および(II)は、x個の置換基RがアルキレンラジカルAに結合することができるということを意味すると理解されるべきである。
【0053】
特に好ましいものは、一般式(I)もしくは(II)の繰り返し単位、または一般式(I)および(II)の繰り返し単位(式中、Aは任意に置換されたC−Cアルキレンラジカルを表し、xは0または1を表す)を有するポリチオフェンである。
【0054】
任意に置換されたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、粒子b)の導電性ポリマーとしてなお特に好ましい。
【0055】
接頭辞「ポリ」は、本発明に関しては、複数の同じまたは異なる繰り返し単位が当該ポリマーまたはポリチオフェンの中に含まれるという事実を表す。このポリチオフェンは、一般式(I)の、または一般式(II)の、または一般式(X)の、または一般式(I)および(II)の、または一般式(I)および(X)の、または一般式(II)および(X)の、または一般式(I)、(II)および(X)の繰り返し単位を全部でn個含み、ここでnは2〜2,000、好ましくは2〜100の整数である。一般式(I)の、または一般式(II)の、もしくは一般式(X)の繰り返し単位、または一般式(I)および(II)の繰り返し単位もしくは一般式(I)および(X)の繰り返し単位、もしくは一般式(II)および(X)の繰り返し単位、または一般式(I)、(II)および(X)の繰り返し単位は、ポリチオフェン内部で、各々、同じであってもよいし異なっていてもよい。一般式(I)の、もしくは一般式(II)の、もしくは一般式(X)のいずれの場合も同じ繰り返し単位を含む、または一般式(I)および(II)の、もしくは一般式(I)および(X)の、もしくは一般式(II)および(X)のいずれの場合も同じ繰り返し単位を含む、または一般式(I)、(II)および(X)のいずれの場合も同じ繰り返し単位を含むポリチオフェンが好ましい。一般式(I)の、もしくは一般式(II)のいずれの場合も同じ繰り返し単位を含む、または一般式(I)および(II)のいずれの場合も同じ繰り返し単位を含むポリチオフェンが特に好ましい。
【0056】
末端基において、このポリチオフェンは、好ましくは各々Hを有する。
【0057】
−CアルキレンラジカルAは、本発明に関しては好ましくはメチレン、エチレン、n−プロピレン、n−ブチレンまたはn−ペンチレンである。C−C18アルキルRは、好ましくは、メチル、エチル、n−またはiso−プロピル、n−、iso−、sec−またはtert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルなどの直鎖状もしくは分枝状のC−C18アルキルラジカルを表し、C−C12シクロアルキルラジカルRは、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルまたはシクロデシルを表し、C−C14アリールラジカルRは、例えばフェニルまたはナフチルを表し、そしてC−C18アラルキルラジカルRは、例えばベンジル、o−、m−、p−トリル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−キシリルまたはメシチルを表す。上記の一覧は、本発明を例として記載する役割を果たすが、決定的なものであるとみなされるべきではない。
【0058】
任意に、ラジカルAおよび/またはラジカルRのさらなる置換基としては、本発明に関しては、多くの有機基、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、カーボネート、カルボキシレート、シアノ、アルキルシランおよびアルコキシシラン基が挙げられ、またカルボキシルアミド基も挙げられる。
【0059】
ポリアニリンまたはポリピロールについての置換基は、例えば上記のラジカルAおよびRならびに/またはラジカルAおよびRのさらなる置換基である。非置換ポリアニリンが好ましい。
【0060】
本発明の範囲は、全体的なまたは好ましい範囲の中で言及されるすべての上記のおよび下記のラジカルの定義、パラメータおよび実例を、相互に、すなわちそれぞれの範囲と好ましい範囲との間でいずれかの所望の組み合わせで包含する。
【0061】
好ましい方法において粒子b)の中で使用されるポリチオフェンは、中性またはカチオン性であってもよい。好ましい実施形態では、それらはカチオン性である。ここで、用語「カチオン性」は、単にこのポリチオフェン主鎖上の電荷のみを指す。ラジカルRの置換基に依存して、当該ポリチオフェンは正電荷および負電荷をその構造単位の中に有することができ、この正電荷は当該ポリチオフェン主鎖上に存在し、負電荷は任意に、スルホネート基またはカルボキシレート基によって置換されたラジカルR上に存在する。この場合、当該ポリチオフェン主鎖の正電荷は、ラジカルRにある任意に存在するアニオン性基によって部分的にまたは完全に飽和されていてもよい。全体的に見ると、このポリチオフェンは、これらの場合にはカチオン性、中性であってもよく、またはアニオン性でさえあってもよい。とはいうものの、本発明に関しては、ポリチオフェンは、すべてカチオン性ポリチオフェンであると考えられる。なぜなら、このポリチオフェン主鎖上の正電荷が非常に重要だからである。この正電荷は、上記式の中には示されていない。なぜなら、それらの正確な数および位置は最適に特定できないからである。しかしながら正電荷の数は、少なくとも1であり、多くともnである(nは、このポリチオフェン内のすべての(同じまたは異なる)繰り返し単位の総数である)。
【0062】
任意にスルホネートまたはカルボキシレート置換された、従って負に帯電したラジカルRによってこの正電荷が打ち消されていない限りでは、この正電荷を打ち消すために、このカチオン性ポリチオフェンは対イオンとしてアニオンを必要とする。
【0063】
対イオンは、単量体または高分子アニオンであってもよく、後者は、本願明細書中で以降、ポリアニオンとも呼ばれる。この対イオンは、本発明に関しては、分散物a1)および分散物a2)において、同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0064】
高分子アニオンは単量体アニオンよりも好ましい。なぜなら、高分子アニオンは、膜形成に寄与し、そしてそれらのサイズのため、熱的により安定な電気伝導性膜をもたらすからである。
【0065】
高分子アニオンは、この場合、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはポリマレイン酸などの高分子カルボン酸、またはポリスチレンスルホン酸およびポリビニルスルホン酸などの高分子スルホン酸のアニオンであってもよい。これらのポリカルボン酸およびポリスルホン酸は、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸と他の重合性単量体(アクリル酸エステルおよびスチレンなど)とのコポリマーであってもよい。
【0066】
高分子アニオンとして上述の項目b)において好ましいものは、高分子カルボン酸またはスルホン酸のアニオンであり、分散物a1)およびa2)の中の高分子アニオンは異なっていてもよい。
【0067】
この高分子アニオンとして特に好ましいものは、ポリスチレンスルホン酸(PSS)のアニオンである。
【0068】
このポリアニオンを提供するポリ酸の分子量は、好ましくは1,000〜2,000,000、特に好ましくは2,000〜500,000である。このポリ酸またはそのアルカリ塩は市販されており、例えばポリスチレンスルホン酸およびポリアクリル酸などは、公知の方法(例えばHouben Weyl、Methoden der organischen Chemie、第E20巻、 Makromolekulare Stoffe、第2部、(1987)、1141頁以下参照)を使用して製造することができる。
【0069】
高分子アニオンおよび導電性ポリマーは、分散物a)の中に、特に0.5:1〜50:1、好ましくは1:1〜30:1、特に好ましくは2:1〜20:1の重量比で含まれていてもよい。この導電性ポリマーの重量は、この場合、重合の間に反応が完結すると仮定して、使用される単量体の計量された部分に対応する。
【0070】
使用される単量体アニオンは、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸もしくはより高級のスルホン酸(ドデカンスルホン酸など)などのC−C20アルカンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸もしくはペルフルオロオクタンスルホン酸などの脂肪族ペルフルオロスルホン酸、2−エチルヘキシルカルボン酸などの脂肪族C−C20カルボン酸、トリフルオロ酢酸もしくはペルフルオロオクタン酸などの脂肪族ペルフルオロカルボン酸、およびベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸もしくはドデシルベンゼンスルホン酸などのC−C20アルキル基で任意に置換された芳香族スルホン酸、ならびにカンファースルホン酸などのシクロアルカンスルホン酸のアニオン、もしくはテトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、過塩素酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ヘキサフルオロひ酸アニオンまたはヘキサクロロアンチモン酸アニオンである。
【0071】
単量体アニオンとして好ましいものは、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはカンファースルホン酸のアニオンである。
【0072】
電荷補償のために対イオンとしてのアニオンを含むカチオン性ポリチオフェンは、当業者によってポリチオフェン/(ポリ)アニオン錯体とも呼ばれることが多い。
【0073】
分散物a)は、表面活性物質、例えばイオン性および/または非イオン性の界面活性剤;接着促進剤(例えば有機官能性シランもしくはその加水分解生成物、例えば3−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランもしくはオクチルトリエトキシシランなど);メラミン化合物、ブロック化イソシアネートなどの架橋剤、官能性シラン−例えばテトラエトキシシラン、例えばテトラエトキシシランに基づくアルコキシシラン加水分解生成物、エポキシシラン(3−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシランなど)−ポリウレタン、ポリアクリレートまたはポリオレフィン分散物またはさらなる添加剤などのさらなる構成成分をも含むことができる。
【0074】
本発明に関しては、分散物a1)および/または分散物a2)は、いずれの場合も単独でまたはいずれかの所望の組み合わせで、表面活性物質、接着促進剤、架橋剤およびさらなる添加剤を含むことができる。
【0075】
好ましくは、分散物a)は、例えば、エーテル基含有化合物(例えばテトラヒドロフランなど);ラクトン基含有化合物(γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなど);アミドまたはラクタム基含有化合物(カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド (DMF)、N−メチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン(NMP)、N−オクチルピロリドン、ピロリドンなど);スルホンおよびスルホキシド(例えばスルホラン(テトラメチレンスルホン)、ジメチルスルホキシド(DMSO)など);糖類または糖類誘導体(例えばサッカロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、糖アルコール(例えばソルビトール、マンニトールなど)など);イミド、(例えばスクシンイミドまたはマレイミドなど);フラン誘導体(例えば2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸など)、および/またはジオールまたはポリアルコール(例えばエチレングリコール、グリセロールまたはジエチレングリコールまたはトリエチレングリコールなど)などの電気伝導率を上昇させるさらなる添加剤を含む。特に好ましくは、使用される電気伝導率を上昇させる添加剤はテトラヒドロフラン、N−メチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシドまたはソルビトールである。このさらなる添加剤は、いずれの場合も単独でまたはそのいずれかの所望の組み合わせで、分散物a1)および分散物a2)の中に含まれていてもよく、それらは、分散物a1)および分散物a2)において異なっていてもよい。
【0076】
分散物a)は、1〜14のpHを有することができ、1〜8のpHが好ましく、4〜8のpHが特に好ましい。とりわけ、例えば水酸化アルミニウムまたは酸化ニオブなどの腐食に敏感な誘電体については、その誘電体を損傷しないように、4〜8のpHを有する分散物が好ましい。
【0077】
このpHを設定するために、例えば塩基または酸を、この分散物に加えることができる。当該分散物の膜形成を損なわず、かつ上昇した温度、例えばはんだ付け温度において揮発性ではなく、これらの条件下で当該高分子中間層および/または高分子外層の中に留まる添加剤、例えば塩基の2−ジメチルアミノエタノール、2,2’−イミノジエタノールまたは2,2’,2”−ニトリロトリエタノールおよび酸のポリスチレンスルホン酸などが好ましい。
【0078】
用途の種類に応じて、分散物a1)の粘度は、0.1〜1,000mPa・s(レオメータを使用して、20℃で100s−1のせん断速度で測定される)であってもよい。この粘度は、好ましくは0.5〜200mPa・s、特に好ましくは0.5〜100mPa・s、なお特に好ましくは1〜70mPa・sである。
【0079】
用途の種類に応じて、分散物a2)の粘度は、0.1〜100,000mPa・s(レオメータを使用して、20℃で100s−1のせん断速度で測定される)であってもよい。この粘度は、好ましくは1〜10,000mPa・s、特に好ましくは10〜1,000mPa・s、なお特に好ましくは30〜500mPa・sである。
【0080】
当該固体電解質の電気伝導性物質は、導電性ポリマーまたは例えば電荷移動錯体(例えばTCNQ(7,7,8,8−テトラシアノ−1,4−キノジメタン)など)などの非高分子導電性の物質、二酸化マンガンまたは塩(例えば、イオン液体を形成することができる塩など)を含むことができる。
【0081】
好ましくは、この固体電解質は、導電性ポリマーを含む。この使用される導電性ポリマーは、当該高分子中間層および/または高分子外層についても使用される上述の導電性ポリマーであってもよい。特に好ましくは、この固体電解質は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸を導電性ポリマーとして含む。
【0082】
この固体電解質は、当該誘電体表面上に、好ましくは1,000nm未満、特に好ましくは200nm未満、なお特に好ましくは50nm未満の厚さを有する層を形成する。
【0083】
この固体電解質を用いた当該誘電体の被覆は、以下のようにして測定することができる:コンデンサの静電容量は、乾燥および湿潤状態において、120Hzで測定される。被覆の程度は、百分率として表された、湿潤状態における静電容量に対する乾燥状態における静電容量の比である。用語「乾燥状態」は、このコンデンサが測定される前に上昇した温度(80〜120℃)で数時間乾燥されたことを意味する。用語「湿潤状態」は、このコンデンサが上昇した圧力で、例えば蒸気圧ボイラーの中で飽和した空気の湿度に数時間曝露されたことを意味する。この場合、湿気はこの固体電解質によって被覆されていない孔に浸透して、そこで液体電解質として作用する。
【0084】
固体電解質による当該誘電体の被覆は、好ましくは50%より大きく、特に好ましくは70%より大きく、なお特に好ましくは80%より大きい。
【0085】
当該高分子中間層は、図2に模式的にそして例として示されるように、当該コンデンサ体の外側周縁領域の全部または一部に配置されることが好ましい。用語「外側周縁領域」は、当該コンデンサ体の外側表面およびその直下に位置する孔構造を指す。この高分子中間層は、このコンデンサ体の周縁領域にあるその孔を満たすことができるし、またはこのコンデンサ体の表面上の層としてこの周縁領域に位置することもできる。この高分子中間層は、この周縁領域を越えてこのコンデンサ体の内部へと延在することもできる。
【0086】
当該高分子外層は、図1および図2に模式的にそして例として示されるように、当該コンデンサ体の外側表面の全部または一部に配置されることが好ましい。用語「外側表面」はこのコンデンサ体の外側表面を指す。
【0087】
図1は、タンタルコンデンサの例に基づく固体電解コンデンサの構造の概略図であり、
1 コンデンサ体
5 高分子外層
6 グラファイト/銀層
7 電極体2へのワイヤ接点
8 外部接点
9 封止材
10 形態の細部
である。
【0088】
図2は、当該タンタルコンデンサの概略的な層構造を表す、拡大された図1からの形態の細部10を示し、
10 形態の細部
2 多孔性電極体(アノード)
3 誘電体
4 固体電解質(カソード)
5 高分子外層
6 グラファイト/銀層
11 高分子中間層
である。
【0089】
この高分子中間層の厚さは、好ましくは0.001〜50μm、特に好ましくは0.01〜10μm、なお特に好ましくは0.05〜5μm、とりわけ特に好ましくは0.1〜1μmである。この高分子中間層の層の厚さは、外側周縁領域において変化してもよい。
【0090】
この高分子中間層は、結合剤c1)および導電性ポリマーに関するその組成という点において、均一なまたは不均一な分布を有することができる。均一な分布が好ましい。
【0091】
この高分子中間層は、異なっていてもよい複数の高分子中間層から構成されてもよい。
【0092】
当該高分子外層の厚さは、好ましくは1〜1,000μm、特に好ましくは1〜100μm、なお特に好ましくは2〜50μm、とりわけ特に好ましくは4〜20μmである。層の厚さは外側表面上で変化してもよい。特に、当該コンデンサ体の縁における層の厚さは、このコンデンサ体の側面よりも厚くてもよいし、薄くてもよい。しかしながら、ほとんど均一な層の厚さが好ましい。
【0093】
この高分子外層は、結合剤c2)および導電性ポリマーに関するその組成という点において、均一なまたは不均一な分布を有することができる。均一な分布は好ましい。
【0094】
この高分子外層は、当該コンデンサ体の外層を形成する多層系の一部分であってもよい。さらなる機能性層も、この高分子外層の上に配置されてよい。さらに、複数の高分子外層がこのコンデンサ体の上に配置されてもよい。
【0095】
特に好ましい実施形態では、この新しい方法を使用して製造される電解コンデンサは、導電性の物質としてのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)を含む固体電解質と、ポリスチレンスルホン酸(PSS)およびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む高分子中間層と(これらは、文献においては、PEDT/PSSまたはPEDOT/PSSと呼ばれるもしばしばである)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)およびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む高分子外層とを含む。
【0096】
なお特に好ましい実施形態では、この新しい方法を使用して製造される電解コンデンサは、PEDT/PSSを含む固体電解質と、PEDT/PSSおよび結合剤c1)を含む高分子中間層と、PEDT/PSSおよび結合剤c2)を含む高分子外層とを含む。本発明に係る方法を使用して製造される固体電解コンデンサは、低い残留電流および低い等価直列抵抗によって際立っている。この高分子中間層は、より低いESRおよび熱負荷のもとでのESRのより高い安定性につながる。
【0097】
原理上、本発明に係るこの種の電解コンデンサは、以下のようにして製造することができる。最初に、高い表面積を有するバルブ金属粉末が、例えば圧縮され、そして焼結されて多孔性電極体が形成される。好ましくはバルブ金属(例えばタンタルなど)で作られた電気接点ワイヤも、この場合、従来どおりにその電極体の中へとプレスされる。あるいは、多孔性の箔を得るために、金属箔をエッチングすることも可能である。巻回型コンデンサでは、電極体を形成する多孔性のアノード箔、およびカソード箔は、セパレータによって隔離され、そして巻回される。
【0098】
この電極体は、例えば電気化学的酸化によって、誘電体、すなわち酸化物層を用いて被覆される。次いで、固体電解質を形成する導電性ポリマーは、例えば酸化重合によって化学的または電気化学的その誘電体の上に堆積される。この目的のために、導電性ポリマーを製造するための前駆体、1以上の酸化剤、および任意に対イオンが一緒にもしくは連続的にこの多孔性電極体の誘電体に付与され、化学的酸化によって重合されるか、または導電性ポリマーを製造するための前駆体および対イオンが電気化学重合によって、この多孔性電極体の誘電体の上で重合される。例えば任意に置換されたポリチオフェン、ポリピロールまたはポリアニリンなどの導電性ポリマーの分散物または溶液は、当該固体電解質を形成するための導電性の物質としても使用することができる。例えば国際公開第2007/031206号パンフレットに記載されるもののような、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)に基づく導電性のポリチオフェンの分散物が好ましい。
【0099】
本発明によれば、導電性ポリマーの粒子b1)、結合剤c1)および分散剤d1)を少なくとも含む分散物a1)は、次に、当該コンデンサ体に付与され、そして分散剤d1)は、少なくとも部分的に取り除かれ、かつ/またはこの結合剤は硬化され、高分子中間層が形成される。本発明によれば、導電性ポリマーの粒子b2)、結合剤c2)および分散剤d2)を少なくとも含む分散物a2)は、次に、当該コンデンサ体に付与され、そして分散剤d2)は少なくとも部分的に取り除かれ、かつ/またはこの結合剤は硬化され、高分子外層が形成される。任意に、さらなる層がこの高分子外層に付与される。高い電気伝導率を有する層による被膜(グラファイトおよび銀など)、または金属カソード体(例えば、アルミニウム巻回型コンデンサにおけるものなど)は、電流を放電するための電極としての役割を果たす。最後に、このコンデンサは接触され、封入される。
【0100】
当該電極材料がバルブ金属またはバルブ金属に匹敵する電気特性を有する化合物であることを特徴とする、電解コンデンサの製造方法も好ましい。
【0101】
用語「バルブ金属」は、本発明に関しては、その金属の酸化物層は電流が両方の方向に均一に流れることを許容しない金属を指す。アノード側に印加された電圧の場合は、このバルブ金属の酸化物層は電流の流れをブロックするが、他方、カソード側に印加された電圧の場合には、この酸化物層を破壊することができる大電流が発生する。このバルブ金属としては、Be、Mg、Al、Ge、Si、Sn、Sb、Bi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、TaおよびW、ならびにこれらの金属のうちの少なくとも1つと他の元素との合金または化合物が挙げられる。バルブ金属の最もよく知られた代表例は、Al、Ta、およびNbである。バルブ金属に匹敵する電気特性を有する化合物は、金属的な電気伝導率を有し、易酸化性であり、かつその酸化物層が本願明細書にこれまでに記載された特性を有する、化合物である。例えば、NbOは金属的な電気伝導率を有するが、一般にはバルブ金属とは考えられない。しかしながら、酸化されたNbOの層は、バルブ金属酸化物層の典型的な特性を呈するため、NbOまたはNbOと他の元素との合金もしくは化合物は、バルブ金属に匹敵する電気特性を有するこのような化合物の典型例である。
【0102】
タンタル、アルミニウムで作られた電極材料およびニオブまたは酸化ニオブに基づく種類の電極材料が好ましい。
【0103】
用語「ニオブまたは酸化ニオブに基づく電極材料」は、ニオブまたは酸化ニオブが最大の物質量分率を有する構成成分である種類の材料を指す。
【0104】
ニオブまたは酸化ニオブに基づく電極材料は、好ましくはニオブ、NbO、酸化ニオブNbO(xは、0.8〜1.2の値をとることができる)、窒化ニオブ、ニオブ酸窒化物、またはこれらの物質の混合物、またはこれらの物質の少なくとも1つと他の元素との合金もしくは化合物である。
【0105】
好ましい合金は、例えばBe、Mg、Al、Ge、Si、Sn、Sb、Bi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、TaまたはWなどの少なくとも1つのバルブ金属を含む合金である。
【0106】
従って、用語「易酸化性金属」は、金属を指すだけでなく、金属と他の元素との合金または化合物が金属的な電気伝導率を有しかつ易酸化性である限り、その金属と他の元素との合金または化合物をも指す。
【0107】
多孔性電極体を形成するために、この易酸化性金属が、例えば粉末形態で焼結されるか、または多孔性の構造体が、金属体上に刻印される。後者のプロセスは、例えば、箔をエッチングすることにより実施することができる。好ましくは、この電極体は、高分子外層による外部被覆を改善するために、丸みのついた角および/または縁を有する。
【0108】
この多孔性電極体は、例えば電圧を印加することにより、適切な電解質(例えばリン酸など)の中で酸化される。この形成電圧の強さは、成し遂げられるべき酸化物層の厚さまたはこのコンデンサの将来の使用電圧に依存する。好ましい形成電圧は1〜800V、特に好ましくは1〜300Vである。
【0109】
この電極体を製造するために、好ましくは1,000〜1,000,000μC/gの比電荷を有する、特に好ましくは5,000〜500,000μC/gの比電荷を有する、なお特に好ましくは5,000〜300,000μC/gの比電荷を有する、いっそう好ましくは10,000〜200,000μC/gの比電荷を有する金属粉末が使用される。
【0110】
この金属粉末の比電荷は、この場合、以下のようにして算出される:
金属粉末の比電荷=(静電容量×アノード酸化電圧)/酸化された電極体の重量。
【0111】
静電容量は、この場合、電解質水溶液中で120Hzで測定される当該酸化された電極体の静電容量から得られる。この電解質の電気伝導率は、この場合、120Hzでこの電解質の電気抵抗のために静電容量の低下がまだ起こらないように、十分に大きい。例えば、18% 硫酸電解質水溶液がこの測定のために使用される。
【0112】
使用される電極体は、10〜90%、好ましくは30〜80%、特に好ましくは50〜80%の多孔性を有する。
【0113】
この多孔性電極体は、10〜10,000nm、好ましくは50〜5,000nm、特に好ましくは100〜3,000nmの平均孔径を有する。
【0114】
この多孔性電極体は、0.001mm〜100,000mmの容積を有することが好ましい。驚くべきことに、当該高分子中間層は、特に小さい電極体において、著しくESRを低下させるということが見出された。0.001mm〜10mmの容積を有する電極体はそれゆえ特に好ましい。0.001mm〜5mmの体積を有する電極体はなお特に好ましい。
【0115】
従って、特に好ましい本発明の主題は、当該バルブ金属またはバルブ金属に匹敵する電気特性を有する化合物がタンタル、ニオブ、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、これらの金属のうちの少なくとも1つと他の元素との合金もしくは化合物、NbOまたはNbOと他の元素との合金もしくは化合物であることを特徴とする電解コンデンサの製造方法である。
【0116】
この誘電体は、好ましくは当該電極材料の酸化物からなる。それは、任意にさらなる元素および/または化合物を含む。
【0117】
このコンデンサの静電容量は、当該誘電体の種類だけでなく、その誘電体の表面積および厚さにも依存する。比電荷は、その酸化された電極体が、単位重量あたりどのくらい多くの電荷を吸収することができるかの尺度である。当該コンデンサの比電荷は、以下のようにして算出される:
コンデンサの比電荷=(静電容量×名目上の電圧)/酸化された電極体の重量。
【0118】
この静電容量は、この場合、120Hzで測定された完成したコンデンサの静電容量から得られ、名目上の電圧は、そのコンデンサの特定された使用電圧(定格電圧)である。酸化された電極体の重量は、当該ポリマー、接点および封止材を含まない、誘電体で覆われた多孔性の電極材料の純の重量に関係する。
【0119】
好ましくは、この新しい方法を使用して製造される電解コンデンサは、500〜500,000μC/gの比電荷、特に好ましくは2,500〜250,000μC/gの比電荷、なお特に好ましくは2,500〜150,000μC/gの比電荷、いっそう好ましくは5,000〜100,000μC/gの比電荷を有する。
【0120】
本願明細書中で以降は前駆体とも呼ばれる、用語「分散物a)中の粒子b)の導電性ポリマーの製造のための前駆体」は、対応する単量体またはその誘導体を指す。異なる前駆体の混合物も、使用することができる。適切な単量体前駆体は、例えば任意に置換されたチオフェン、ピロールまたはアニリン、好ましくは任意に置換されたチオフェン、特に好ましくは任意に置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェン、3,4−アルキレンオキシチアチオフェンまたはチエノ[3,4−b]チオフェンである。
【0121】
任意に置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェン、3,4−アルキレンオキシチアチオフェンまたはチエノ[3,4−b]チオフェンの例としては、一般式(III)の、もしくは一般式(IV)の、もしくは一般式(XI)の化合物、または一般式(III)および(IV)のチオフェンの混合物、もしくは一般式(III)および(XI)のチオフェンの混合物、もしくは一般式(IV)および(XI)のチオフェンの混合物、または一般式(III)、(IV)および(XI)のチオフェンの混合物
【化2】

(式中、
Aは、任意に置換されたC−Cアルキレンラジカル、好ましくは任意に置換されたC−Cアルキレンラジカルを表し、
Rは、直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC−C18アルキルラジカル、好ましくは直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC−C14アルキルラジカル、任意に置換されたC−C12シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC−C14アリールラジカル、任意に置換されたC−C18アラルキルラジカル、任意に置換されたC−Cヒドロキシアルキルラジカル、好ましくは任意に置換されたC−Cヒドロキシアルキルラジカル、またはヒドロキシルラジカルを表し、
xは、0〜8、好ましくは0〜6の整数、特に好ましくは0または1を表し、かつ
複数のラジカルRがAに結合されている場合、このラジカルは同じであってもよいし異なっていてもよい)
が挙げられる。
【0122】
なお特に好ましい単量体前駆体は、任意に置換された3,4−エチレンジオキシチオフェンである。
【0123】
置換3,4−エチレンジオキシチオフェンの例としては、一般式(V)の化合物、
【化3】

(式中、Rおよびxは、一般式(III)および(IV)について言及した意味を有する)
が挙げられる。
【0124】
用語「これらの単量体前駆体の誘導体」は、本発明の意味においては、例えばこれらの単量体前駆体の二量体または三量体を指す。この単量体前駆体のより高分子量の誘導体、すなわち四量体、五量体などもこの誘導体として可能である。
【0125】
置換3,4−アルキレンジオキシチオフェンの誘導体の例としては、一般式(VI)の化合物、
【化4】

(式中、
nは、2〜20、好ましくは2〜6の整数、特に好ましくは2または3を表し、かつ
A、Rおよびxは、一般式(III)および(IV)について言及した意味を有する)
が挙げられる。
【0126】
これらの誘導体は、同じおよび異なる単量体単位の両方から構築されてもよく、そして純粋な形態で使用されてもよいし、互いにおよび/または上記単量体前駆体と混合されてもよい。これらの前駆体の酸化された形態または還元された形態もまた、その重合の間に、本願明細書中でこれまでに列挙した前駆体の場合と同じ導電性ポリマーが製造される限り、本発明の意味においては、用語「前駆体」に含まれる。
【0127】
上述の前駆体について、特にチオフェンについて、好ましくは3,4−アルキレンジオキシチオフェンについての置換基は、一般式(III)、(IV)または(XI)について言及したラジカルRの形態にあってもよい。
【0128】
ピロールおよびアニリンについての置換基の例としては、上に列挙したラジカルAおよびRならびに/またはこのラジカルAおよびRのさらなる置換基が挙げられる。
【0129】
任意に、このラジカルAおよび/またはラジカルRのさらなる置換基は、一般式(I)、(II)または(X)に関連して言及された有機基の形態にあってもよい。
【0130】
導電性ポリマーの製造のための単量体前駆体およびまたその誘導体の製造方法は、当業者に公知であり、例えばL.Groenendaal、F.Jonas、D.Freitag、H.PielartzikおよびJ.R.Reynolds、Adv.Mater. 2000年、第12巻、481−494頁およびその中で引用された文献に記載されている。
【0131】
使用しようとするポリチオフェンの製造のために必要とされる式(III)の3,4−アルキレンオキシチアチオフェンは当業者に公知であるか、または公知の方法を使用して(例えば、P.Blanchard、A.Cappon、E.Levillain、Y.Nicolas、P.Fre’reおよびJ.Roncali、Org.Lett. 2002年、第4巻、第4号、S.607−609頁に従って)製造することができる。
【0132】
使用しようとするポリチオフェンの製造のために必要とされる式(XI)のチエノ[3,4−b]チオフェンは当業者に公知であるか、または公知の方法を使用して(例えば、米国特許出願公開第2004/0074779(A1)号明細書に従って)製造することができる。
【0133】
当該分散物は、上記の前駆体から、例えば欧州特許出願公開第440 957号明細書で言及される条件のもとで製造される。当該分散物の製造のための改善された変法は、無機塩含量またはその一部分を取り除くためのイオン交換体の使用である。この種の変法は、例えば独国特許出願公開第19627071号明細書に記載されている。このイオン交換体は、例えば当該生成物と撹拌されることができ、またはその生成物は、イオン交換体で満たされたカラムを通って運ばれる。このイオン交換体の使用によって、例えば、上記の低金属含量が成し遂げられる。
【0134】
分散物a)中の粒子b)の粒径は、例えば高圧ホノジナイザーにより、脱塩の後に減少することができる。このプロセスは、その効果を大きくするために繰り返すこともできる。100〜2,000bar(10MPa〜200MPa)という特に高圧が、この粒径を大きく減少させるために有利であることが判明した。
【0135】
ポリアニリン/ポリアニオンまたはポリチオフェン/ポリアニオン錯体の製造およびその後の1以上の溶媒中での分散または再分散も可能である。
【0136】
分散物a)中の当該導電性ポリマーの粒子b)の固形分含量は、0.1〜90重量%、好ましくは0.5〜30重量%およびなお特に好ましくは0.5〜10重量%である。
【0137】
当該導電性ポリマーの粒子b)は、安定な分散物を形成することが好ましい。しかしながら、不安定な分散物を使用することも可能である。なぜなら、粒子b)の均一な分布を確実にするために、これらは使用に先立って例えば撹拌され、転がされまたは振盪されるからである。
【0138】
この分散物a)は、公知の方法を使用して、例えばスピンコーティング、浸漬、注ぎ込み、滴下、注入、噴霧、塗布、ブラッシングまたはインプリンティング、例えばインクジェット、スクリーン印刷またはパッド印刷によって当該コンデンサ体へと付与される。
【0139】
分散物a)の付与後、分散剤d)は好ましくは取り除かれ、その結果、上記高分子中間層または高分子外層が粒子b)からおよび任意に分散物中のさらなる添加剤から生成することができる。しかしながら、分散剤d)の少なくとも一部分がこの高分子中間層または高分子外層に留まることも可能である。分散剤d)の種類に依存して、当該分散剤は、完結後および残部の単に部分的な除去後の両方で硬化されてもよい。
【0140】
分散剤d)は、その分散物の付与後に、室温での単純なエバポレーションにより、取り除かれてもよい。しかしながら、より高い加工速度を成し遂げるために、上昇した温度、例えば20〜300℃、好ましくは40〜250℃の温度で分散剤d)を取り除くことがより有利である。その後の熱処理は、溶媒の除去に直接つなげられてもよいし、コーティングの完結の後のある間隔の後に実施されてもよい。
【0141】
この熱処理の継続時間は、コーティングのために使用される分散物の種類に応じて、5秒〜数時間である。異なる温度および滞留時間を有する温度プロファイルもこの熱処理のために使用することができる。
【0142】
この熱処理は、例えば、コーティングされた酸化された電極体が、選択された温度で所望の滞留時間に到達するような速度で所望の温度にある加熱室を通って動かされるか、または所望の温度にある加熱プレートに所望の滞留時間のあいだ接触するようにして実施することができる。さらにこの熱処理は、例えば、加熱炉または各々異なる温度を有する複数の加熱炉の中で実施することができる。
【0143】
当該コンデンサ体の種類に依存して、より厚い高分子中間層を成し遂げるために、分散物a1)を繰り返し付与し、そして分散剤d1)を少なくとも部分的に除去することによってこの高分子中間層を形成することが有利である場合がある。
【0144】
当該コンデンサ体の種類に依存して、より厚い高分子外層を成し遂げるために、分散物a2)外層を形成することが有利である場合がある。
【0145】
この高分子外層の製造後、任意に、高い電気伝導率を有するさらなる層(例えばグラファイトおよび/または銀層など)が、このコンデンサに付与されることが好ましい。このコンデンサは、接触され封入される。
【0146】
本発明に係る方法は、高密度の高分子外層を有し、かつ低いESRおよび低い残留電流によって際立っている固体電解コンデンサを特に簡単な様式で製造するために使用されてもよい。加えて、熱負荷のもとでのこのESRの安定性は、本発明に係る方法を使用して製造されるコンデンサでは高められる。本発明に係る方法を使用して製造される電解コンデンサもまた、本発明の主題である。
【0147】
本発明に従って生成された電解コンデンサは、その低い残留電流およびその低いESRのために、電子回路における構成要素、例えばスムージングコンデンサ(フィルターコンデンサ)または干渉防止コンデンサ(デカップリングコンデンサ)としての使用にとって理想的である。この使用もまた、本発明の主題である。例えばコンピュータ(デスクトップ、ラップトップ、サーバー)の中に、コンピュータ周辺機器(例えばPCカード)の中に、例えば携帯電話、デジタルカメラまたは娯楽用電子機器などの携帯用電子装置の中に、娯楽用電子機器用の電気機具の中に、例えばCD/DVDプレーヤーおよびコンピュータゲームのコンソールの中に、ナビゲーションシステムの中に、電気通信設備の中に、家庭用電子機具の中に、電力供給装置の中に、または自動車用電子機器の中に存在するもののような電子回路が好ましい。
【0148】
以下の実施例は、本発明を具体例によって例証する働きをするが、何らかの限定を意味するとは解釈されるべきではない。
【実施例】
【0149】
(実施例1:導電性ポリマーの分散物の製造)
A)60nmよりも大きい平均粒径を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸塩分散物
1,736gの脱イオン水、660gの、70,000の平均分子量Mおよび3.8重量%の固形分含量を有するポリスチレンスルホン酸の水溶液を、撹拌機および温度計をつけた5l ガラス反応器の中に入れた。反応温度を20〜25℃に保った。撹拌しながら10.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンを加えた。この溶液を30分間撹拌した。その後、0.06gの硫酸鉄(III)および19gの過硫酸ナトリウムを加え、この溶液をさらに24時間撹拌した。反応の完結後、200mlの強酸性のカチオン交換体(Lewatit S100、ランクセス社(Lanxess AG))および500mlの弱塩基性のアニオン交換体(Lewatit MP 62、ランクセス社(Lanxess AG))を加えて、無機塩を取り除き、そしてこの溶液をさらに2時間撹拌した。このイオン交換体を濾過によって除去した。
【0150】
固形分含量を測定するために、5gの分散物を100℃で14時間乾燥した。分散物Aは、1%の固形分含量を有していた。
【0151】
分散物Aは以下の粒度分布を有していた:
10 60nm
50 163nm
90 271nm。
この導電性ポリマーの粒子b)の直径は、粒径の関数として、この分散物中の粒子b)の質量分布に関連する。分析は、超遠心分離測定によって実施した。粒径は、膨潤状態の粒子において測定した。
【0152】
B)60nm未満の平均粒径を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸塩分散物
PEDT/PSS分散物Aの一部を、高圧ホモジナイザーを使用して700bar(70MPa)の圧力で10回均質化した。
【0153】
このようにして製造した分散物Bは、以下の粒度分布を呈した:
10 20nm
50 28nm
90 44nm
この分散物Bの固形分含量は1%であった。
【0154】
10gの分散物Bを0.5gのジメチルスルホキシド(DMSO)に加え、よく撹拌して分散物を形成した。この分散物の一部分を、スピンコーター(Chemat Technology KW−4A)によって、スライドガラス(26mm×26mm×1mm)の上に広げた。この試料を120℃で10分間乾燥した。その後、このスライドの2つの向き合う縁を導電性の銀でコーティングした。いったん導電性の銀が乾燥すると、2つの銀の細線を接触させ、Keithley 199マルチメーターを使用して表面抵抗を測定した。この層の厚さを、Tencor Alpha Step 500表面プロファイラを使用して測定した。σ=1/(R×d)による比電気伝導率σを、表面抵抗および層厚さdから算出した。この層の厚さは75nmであり、比電気伝導率は430S/cmであった。
【0155】
この分散物の粘度は、100Hzのせん断速度および20℃において、30mPa*sであった。分散物Bの金属含有量のICP分析により以下の値を得た:
ナトリウム(Na):130mg/kg
マグネシウム(Mg):0.62mg/kg
アルミニウム(Al):1.1mg/kg
ケイ素(Si):1.3mg/kg
リン(P):6.3mg/kg
カリウム(K):0.71mg/kg
カルシウム(Ca):4.0mg/kg
クロム(Cr):0.17mg/kg
鉄(Fe):1.07mg/kg
亜鉛(Zn):<0.01mg/kg。
【0156】
C)高分子外層用のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸塩分散物
2.5lの脱イオン水を、撹拌機および温度計をつけた5l ガラス反応器に入れた。撹拌しながら、214.2gのp−トルエンスルホン酸一水和物および2.25gの硫酸鉄(III)七水和物を導入した。いったんすべてが溶解すると、85.8gの3,4−エチレンジオキシチオフェンを加え、この混合物を30分間撹拌した。その後、撹拌しながら192.9gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを導入し、この混合物を室温でさらに24時間撹拌した。反応の終了後、得られたPEDT/トルエンスルホン酸塩粉末を磁器製のヌッチェ式濾過機の上での濾過によって取り除き、3lの脱イオン水で洗浄し、最後に100℃で6時間乾燥した。89gの青みがかった黒色のPEDTトルエンスルホン酸塩粉末を得た。
【0157】
180gのPEDT/PSS分散物A、10gのスルホポリエステル(Eastek 1100、固形分含量30%、イーストマン(Eastman))、8gのジメチルスルホキシド、1gの3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−187、オーエスアイ・スペシャルティーズ(OSi Specialties))および0.4gの湿潤剤(Dynol 604、エアープロダクツ(Air Products))を、撹拌機を用いてガラスビーカーの中で1時間徹底的に混合した。その後、2gの上記PEDT/トルエンスルホン酸塩粉末を、ビーズミル溶解装置によって分散させた。この目的のために、300gの酸化ジルコニウムビーズ(φ1mm)を加え、水で冷却しながらこの混合物を7,000rpmで1時間撹拌した。最後に、粉砕されたビーズを0.8μmのふるいによって分離した。得られたこの分散物Cは、4.7%の固形分含量および200mPasの粘度を有していた。比電気伝導率は90S/cmであった。
【0158】
(実施例2:本発明に係る方法を使用するコンデンサの製造)
2.1.酸化された電極体の製造
30,000μFV/gの比容量を有するタンタル粉末を圧縮し、0.8mm×0.8mm×1mmの寸法を有する電極体を形成するために、タンタルワイヤーを含めてペレットへと焼結した。これらの多孔性電極体のうちの15個をリン酸電解質の中で100Vまでアノード酸化し、誘電体を形成した。
【0159】
2.2 固体電解質の製造
100gの実施例1から得た分散物Bおよび4gのジメチルスルホキシド(DMSO)を、撹拌機を用いてガラスビーカーの中で徹底的に混合し、分散物B1を形成した。
【0160】
酸化された電極体をこの分散物B1に1分間浸漬した。その後、120℃で10分間乾燥を行った。浸漬および乾燥をさらに9回行った。
【0161】
2.3 本発明に係る高分子中間層の製造
100gの(実施例1からの)分散物B、3gのスルホポリエステル(Eastek 1100、固形分含量 水中30%)および4gのジメチルスルホキシド(DMSO)を、撹拌機を用いてガラスビーカーの中で徹底的に混合し、分散物B2を形成した。この分散物B2の比電気伝導率は200S/cmであった。
【0162】
上記酸化された電極体をこの分散物B2に1分間浸漬した。その後、120℃で10分間乾燥を行った。浸漬および乾燥をさらに2回行った。
【0163】
2.4 高分子外層の製造
上記コンデンサ体を、実施例1から得た分散物Cに浸漬し、その後120℃で10分間乾燥した。
【0164】
最後に、この電極体をグラファイトおよび銀層で被覆した。
【0165】
前述のようにして製造したコンデンサ15個の平均の電気値を表1に示す。静電容量(マイクロファラド単位)および損失率(百分率として)を120Hzで測定し、等価直列抵抗(ESR)(ミリオーム単位)をLCRメーター(Agilent 4284A)によって100kHzで測定した。残留電流(マイクロアンペア単位)は、Keithley 199 マルチメーターを使用して25Vの電圧を印加した3分後に測定した。
【0166】
(実施例3:本発明に係る方法を使用するコンデンサの製造)
15個のコンデンサを実施例2でのようにして製造したが、高分子中間層を製造するための材料として以下の分散物を使用した。
100gの(実施例1からの)分散物B、1gのフェノール樹脂の水分散物(Phenodur VPW 1942、固形分含量52%、サイテック・インダストリーズ(Cytec Industries))、4gのジメチルスルホキシド(DMSO)、0.5gのジメチルエタノールアミン(50%水溶液)および0.2gの湿潤剤(Dynol 604、エアープロダクツ(Air Products))を撹拌機を用いてガラスビーカーの中で徹底的に混合し、分散物を形成した。この分散物は6.5のpHを有していた。
【0167】
前述のようにして製造したコンデンサ15個の平均電気値を表1に示す。
【0168】
(実施例4:本発明に係る方法を使用するコンデンサの製造)
15個のコンデンサを実施例2でのようにして製造したが、高分子中間層を製造するための材料として以下の分散物を使用した。
100gの(実施例1からの)分散物B、2.1gのエポキシノボラック樹脂(EPI−REZ 6006 W−70、固形分含量70%、レゾルーション(Resolution))、0.5gのジメチルエタノールアミン(50%水溶液)、5gのエチレングリコール、0.5gの3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−187、オーエスアイ・スペシャルティーズ(OSi Specialties))および0.2gの湿潤剤(Surfynol E−104、エアープロダクツ(Air Products))を、撹拌機を用いてガラスビーカーの中で徹底的に混合し、分散物を形成した。
【0169】
前述のようにして製造したコンデンサ15個の平均電気値を表1に示す。
【0170】
(比較例1:高分子中間層を有しないコンデンサの製造)
15個のコンデンサを実施例2でのようにして製造したが、実施例2の2.3でのような高分子中間層は設けなかった。
【0171】
前述のようにして製造したコンデンサ15個の平均電気値を表1に示す。
【0172】
【表1】

【0173】
実施例2〜4から得たコンデンサは、比較例のコンデンサよりもはるかに低いESRを有する。本発明に従って製造した高分子中間層は、固体電解コンデンサにおいてESRを著しく低下させる。
【0174】
(実施例5:本発明に係る方法を使用するコンデンサの製造)
5.1.酸化された電極体の製造
50,000μFV/gの比容量を有するタンタル粉末を圧縮し、0.8mm×0.8mm×1mmの寸法を有する電極体を形成するために、タンタルワイヤーを含めてペレットへと焼結した。これらの多孔性電極体のうちの9個をリン酸電解質の中で30Vまでアノード酸化し、誘電体を形成した。
【0175】
5.2 固体電解質の製造
100gの実施例1から得た分散物Bおよび4gのジメチルスルホキシド(DMSO)を、撹拌機を用いてガラスビーカーの中で徹底的に混合し、水で0.6%の固形分含量まで希釈して分散物B5を形成した。
【0176】
上記酸化された電極体をこの分散物B5に1分間浸漬した。その後、120℃で10分間乾燥を行った。浸漬および乾燥をさらに14回行った。
【0177】
5.3 本発明に係る高分子中間層の製造
この酸化された電極体を、分散物B2(実施例2.3)に1分間浸漬した。その後、120℃で10分間乾燥を行った。浸漬および乾燥をさらに4回行った。
【0178】
5.4 高分子外層の製造
上記コンデンサ体を実施例1から得た分散物Cに浸漬し、その後120℃で10分間乾燥した。
【0179】
最後に、この電極体をグラファイトおよび銀層で被覆した。
【0180】
前述のようにして製造したコンデンサ9個の平均電気値を表2に示す。静電容量(マイクロファラド単位)を120Hzで測定し、等価直列抵抗(ESR)(ミリオーム単位)をLCRメーター(Agilent 4284A)によって100kHzで測定した。
【0181】
電気値を測定した後、これらのコンデンサを、300℃まで加熱した炉の中に入れ、30秒後に再び取り出し、室温まで冷却した。このプロセスをさらに3回繰り返し、その後これらのコンデンサのESRを再測定した。値を表2に示す。
【0182】
(比較例2:高分子中間層を有しないコンデンサの製造)
9個のコンデンサを実施例5でのようにして製造したが、実施例5の5.3に記載したような高分子中間層を設けなかった。
【0183】
前述のようにして製造したコンデンサ9個の平均電気値を表2に示す。
【0184】
(比較例3:本発明に係らない中間層を有するコンデンサの製造)
9個のコンデンサを実施例5でのようにして製造したが、高分子中間層を製造するために使用した材料は、実施例5の5.2から得た分散物B5であった。この分散物B5は結合剤を含まない。
【0185】
前述のようにして製造したコンデンサ9個の平均電気値を表2に示す。
【0186】
(実施例6:本発明に係る方法を使用するコンデンサの製造)
6.1.酸化された電極体の製造
9個の酸化された電極体を、実施例5の5.1でのようにして製造した。
【0187】
6.2 固体電解質の製造
1重量部の3,4−エチレンジオキシチオフェン(BAYTRON(登録商標) M、エイチ・シー・スタルク社(H.C. Starck GmbH))および20重量部の、p−トルエンスルホン酸鉄(III)(BAYTRON(登録商標) C−E、エイチ・シー・スタルク社(H.C. Starck GmbH))の40重量%エタノール溶液からなる溶液を製造した。
【0188】
この溶液を用いて上記酸化された電極体に含浸させた。この電極体をこの溶液に浸漬し、その後室温で(20℃)30分間乾燥した。その後、これらを乾燥機の中で50℃で30分間熱処理した。その後、この電極体をp−トルイル酸の2重量%水溶液の中で60分間洗浄した。この電極体を、p−トルエンスルホン酸の0.25重量%水溶液の中で30分間改質させ、そのあと蒸留水の中で洗い流し、乾燥した。記載した浸漬、乾燥、熱処理および改質を同じ電極体を使用してさらに2回実施した。
【0189】
6.3 本発明に係る高分子中間層の製造
実施例5の5.3でのようにして高分子中間層を設けた。
【0190】
6.4 高分子外層の製造
実施例5の5.4でのようにして高分子外層を設けた。最後に、この電極体をグラファイトおよび銀層で被覆した。
【0191】
前述のようにして製造したコンデンサ9個の平均電気値を表2に示す。
【0192】
(比較例4:高分子中間層を有しないコンデンサの製造)
9個のコンデンサを実施例6でのようにして製造したが、6.3からの高分子中間層は設けなかった。
【0193】
前述のようにして製造したコンデンサ9個の平均電気値を表2に示す。
【0194】
【表2】

【0195】
実施例5〜6から得たコンデンサは、比較例2〜3のコンデンサよりもはるかに低いESRを有する。本発明に従って生成した高分子中間層は、固体電解コンデンサにおいてESRを著しく低下させる。加えて、実施例5〜6から得たコンデンサのESRは、熱負荷のもとでもほとんど増加しないのに対し、比較例では顕著な上昇に気がつくであろう。
【0196】
(実施例7:本発明に係る方法を使用するコンデンサの製造)
7.1.酸化された電極体の製造
100,000μFV/gの比容量を有するタンタル粉末を圧縮し、1.1mm×1.1mm×2.2mmの寸法を有する電極体を形成するために、タンタルワイヤーを含めてペレットへと焼結した。これらの多孔性電極体のうちの9個をリン酸電解質の中で30Vまでアノード酸化し、誘電体を形成した。
【0197】
7.2 固体電解質の製造
上記酸化された電極体を実施例5から得た分散物B5に1分間浸漬した。その後、120℃で10分間乾燥を行った。浸漬および乾燥をさらに14回行った。
【0198】
7.3 本発明に係る高分子中間層の製造
上記酸化された電極体を分散物B2(実施例2.3)に1分間浸漬した。その後、120℃で10分間乾燥を行った。浸漬および乾燥をさらに4回行った。
【0199】
7.4 高分子外層の製造
上記コンデンサ体を実施例1から得た分散物Cに浸漬し、その後120℃で10分間乾燥した。最後に、この電極体をグラファイトおよび銀層で被覆した。
【0200】
前述のようにして製造したコンデンサ9個の平均電気値を表3に示す。静電容量(マイクロファラド単位)を120Hzで測定し、等価直列抵抗(ESR)(ミリオーム単位)をLCRメーター(Agilent 4284A)によって100kHzで測定した。
【0201】
(比較例5:高分子中間層を有しないコンデンサの製造)
9個のコンデンサを実施例7でのようにして製造したが、実施例7の7.3に記載したような高分子中間層は設けなかった。
【0202】
前述のようにして製造したコンデンサ9個の平均電気値を表3に示す。
【0203】
【表3】

【0204】
実施例7から得たコンデンサは、比較例5のコンデンサよりもはるかに低いESRを有する。本発明に従って製造した高分子中間層は、固体電解コンデンサにおいてESRを著しく低下させる。ESRの低下は、実施例2〜6から得たいくらかはより小さいコンデンサほどには顕著ではない。
【0205】
(実施例8:本発明に係る方法を使用するコンデンサの製造)
8.1.酸化された電極体の製造
100,000μFV/gの比容量を有するタンタル粉末を圧縮し、0.8mm×0.8mm×1mmの寸法を有する電極体を形成するために、タンタルワイヤーを含めてペレットへと焼結した。これらの多孔性電極体のうちの9個をリン酸電解質の中で30Vまでアノード酸化し、誘電体を形成した。
【0206】
8.2 固体電解質の製造
100gの実施例1から得た分散物Bおよび4gのジメチルスルホキシド(DMSO)を、撹拌機を用いてガラスビーカーの中で徹底的に混合し、0.6%の固形分含量まで水で希釈して分散物B5を形成した。この分散物の比電気伝導率は430S/cmであった。
【0207】
上記酸化された電極体をこの分散物B5に1分間浸漬した。その後、120℃で10分間乾燥を行った。浸漬および乾燥をさらに14回行った。
【0208】
8.3 本発明に係る高分子中間層の製造
100gの(実施例1からの)分散物B、3gのaスルホポリエステル(Eastek 1100、固形分含量 水中の30%)および4gのジメチルスルホキシド(DMSO)を撹拌機を用いてガラスビーカーの中で徹底的に混合し、分散物B2を形成した。
【0209】
上記酸化された電極体をこの分散物B2に1分間浸漬した。その後、120℃で10分間乾燥を行った。浸漬および乾燥をさらに4回行った。
【0210】
8.4 高分子外層の製造
上記コンデンサ体を、実施例1から得た分散物Cに浸漬し、その後120℃で10分間乾燥した。
【0211】
最後に、この電極体をグラファイトおよび銀層で被覆した。
【0212】
前述のようにして製造したコンデンサ9個の平均電気値を表4に示す。静電容量(マイクロファラド単位)を120Hzで測定し、等価直列抵抗(ESR)(ミリオーム単位)をLCRメーター(Agilent 4284A)によって100kHzで測定した。
【0213】
(比較例6:高分子中間層を有しないコンデンサの製造)
9個のコンデンサを実施例8でのようにして製造したが、実施例8の8.3に記載したような高分子中間層は設けなかった。
【0214】
前述のようにして製造したコンデンサ9個の平均電気値を表4に示す。
【0215】
(比較例7:結合剤を含まない分散物による、本発明に係らない方法を使用するコンデンサの製造)
9個のコンデンサを実施例8でのようにして製造したが、高分子中間層を製造するために使用した材料は、実施例8の8.2から得た分散物B5であった。この分散物B5は結合剤を含まない。
【0216】
前述のようにして製造したコンデンサ9個の平均電気値を表4に示す。
【0217】
(比較例8:60nmよりも大きい平均直径を有する粒子および結合剤を含む分散物による、本発明に係らない方法を使用するコンデンサの製造)
9個のコンデンサを実施例8でのようにして製造したが、以下の分散物を高分子中間層を製造するために使用した。
100gの(実施例1からの)分散物A、3gのスルホポリエステル(Eastek 1100、固形分含量 水中の30%)および4gのジメチルスルホキシド(DMSO)を、撹拌機を用いてガラスビーカーの中で徹底的に混合し、分散物を形成した。この分散物の比電気伝導率は200S/cmであった。
【0218】
前述のようにして製造したコンデンサ9個の平均電気値を表4に示す。
【0219】
(比較例9:60nmよりも大きい平均直径を有する粒子を含むが結合剤は含まない分散物による、本発明に係らない方法を使用するコンデンサの製造)
9個のコンデンサを実施例8でのようにして製造したが、以下の分散物を高分子中間層を製造するために使用した。
100gの(実施例1からの)分散物Aおよび4gのジメチルスルホキシド(DMSO)を、撹拌機を用いてガラスビーカーの中で徹底的に混合し、分散物を形成した。この分散物の比電気伝導率は430S/cmであった。
【0220】
前述のようにして製造したコンデンサ9個の平均電気値を表4に示す。
【0221】
【表4】

【0222】
実施例8から得たコンデンサは、比較例6〜9のコンデンサよりもはるかに低いESRを有する。本発明に従って生成した高分子中間層は、固体電解コンデンサにおいてESRを著しく低下させる。結合剤を用いずに製造した高分子中間層の電気伝導率ははるかに良好であったが、この中間層は、1〜60nmの平均サイズを有する粒子を用いた場合(比較例7)およびより大きな粒子を用いた場合(比較例9)ともに、より高いESRをもたらした。結合剤を用いて製造されたが60nmよりも大きい平均直径を有する粒子から作られた高分子中間層も、より高いESRをもたらした(比較例8)。
【0223】
(実施例9:本発明に係る方法を使用するコンデンサの製造)
9.1.酸化された電極体の製造
10個の4mm×4mmのサイズを有する多孔性のアルミニウム箔を20Vでアノード酸化した。
【0224】
9.2 固体電解質の製造
100gの(実施例1からの)分散物B、4gのジメチルスルホキシド(DMSO)および0.5gの3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−187、オーエスアイ・スペシャルティーズ(OSi Specialties))を撹拌機を用いてガラスビーカーの中で徹底的に混合し、分散物を形成した。その後、2−ジメチルアミノエタノールを加えることにより、この分散物のpHを6という値に設定した。
【0225】
酸化されたアルミニウム箔をこの分散物に1分間浸漬した。その後、120℃で10分間乾燥を行った。浸漬および乾燥をさらに9回行った。
【0226】
9.3 本発明に係る高分子中間層の製造
100gの(実施例1からの)分散物B、4gのジメチルスルホキシド(DMSO)、0.5gの3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−187、オーエスアイ・スペシャルティーズ(OSi Specialties))および3gのスルホポリエステル(Eastek 1100、固形分含量 水中30%)を、撹拌機を用いてガラスビーカーの中で徹底的に混合し、分散物を形成した。その後、2−ジメチルアミノエタノールを加えることにより、この分散物のpHを6という値に設定した。
【0227】
酸化されたアルミニウム体をこの分散物に1分間浸漬した。その後、120℃で10分間乾燥を行った。浸漬および乾燥をもう1回実施した。
【0228】
9.4 高分子外層の製造
上記コンデンサ体を実施例1から得た分散物Cに浸漬し、その後120℃で10分間乾燥した。
【0229】
最後に、電極体をグラファイトおよび銀層で被覆した。
【0230】
このようにして製造した10個のコンデンサの平均電気値を表5に示す。静電容量(マイクロファラド単位)を120Hzで測定し、等価直列抵抗(ESR)(ミリオーム単位)をLCRメーター(Agilent 4284A)によって100kHzで測定した。
【0231】
(比較例10:高分子中間層を有しないコンデンサの製造)
10個のコンデンサを実施例9でのようにして製造したが、実施例9の9.3に記載したような高分子中間層は設けなかった。
【0232】
前述のようにして製造したコンデンサ9個の平均電気値を表5に示す。
【0233】
【表5】

【0234】
実施例9から得たコンデンサは、比較例10のコンデンサよりもはるかに低いESRを有する。本発明に従って生成した高分子中間層は、固体電解コンデンサにおいてESRを著しく低下させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ体(1)の上に、
電極材料および前記電極材料の表面を覆う誘電体の多孔性電極体(2)と、
少なくとも電気伝導性物質を含みかつ全体にまたは部分的に上記誘電体表面を覆う固体電解質(4)と
を少なくとも含む電解コンデンサの製造方法であって、
導電性ポリマーの粒子b1)と、分散剤d1)とを少なくとも含む少なくとも1つの分散物a1)が付与され、かつ電気伝導性の高分子中間層を形成するために前記分散剤d1)が少なくとも部分的に取り除かれ、かつ
70〜1,000nmの平均直径を有する導電性ポリマーの粒子b2)と、分散剤d2)と、結合剤c2)とを少なくとも含む少なくとも1つの分散物a2)が付与され、かつ電気伝導性の高分子外層を形成するために前記分散剤d2)が少なくとも部分的に取り除かれ、かつ/または前記結合剤c2)が硬化され、
前記分散物a1)は結合剤c1)を含み、かつ前記分散物a1)中の導電性ポリマーの前記粒子b1)は1〜60nmの平均直径を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
粒子b1)から作られた膜および/または粒子b2)から作られた膜が、乾燥状態において10S/cmよりも大きい比電気伝導率を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分散物a1)および/または分散物a2)が5,000mg/kg未満の金属含量を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分散物a1)に含まれる前記結合剤c1)および/または分散物a2)に含まれる前記結合剤c2)が高分子有機結合剤であり、分散物a1)および分散物a2)中の前記結合剤は異なっていてもよいことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記分散物a1)および/または分散物a2)が、前記分散剤として有機溶媒、水またはこれらの混合物を含み、分散物a1)および分散物a2)中の前記分散剤は異なっていてもよいことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記分散物a1)中の前記粒子b1)および/または前記分散物a2)中の前記粒子b2)が、前記導電性ポリマーとして、任意に置換された少なくとも1つのポリチオフェン、ポリアニリンまたはポリピロールを含み、前記粒子b1)およびb2)の前記導電性ポリマーは異なっていてもよいことを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記分散物a1)中の前記粒子b1)および/または前記分散物a2)中の前記粒子b2)が、一般式(I)の、もしくは一般式(II)の、もしくは一般式(X)の繰り返し単位、または式(I)および(II)の繰り返し単位、もしくは式(I)および(X)の繰り返し単位、もしくは式(II)および(X)の繰り返し単位、または式(I)、(II)および(X)の繰り返し単位を有する少なくとも1つのポリチオフェン
【化1】

(式中、
Aは、任意に置換されたC−Cアルキレンラジカルを表し、
Rは、互いに独立にH、直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC−C18アルキルラジカル、任意に置換されたC−C12シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC−C14アリールラジカル、任意に置換されたC−C18アラルキルラジカル、任意に置換されたC−Cヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルを表し、
xは0〜8の整数を表し、かつ
複数のラジカルRがAに結合されている場合、前記ラジカルは同じであってもよいし異なっていてもよい)
を含み、前記粒子b1)およびb2)の前記導電性ポリマーは異なっていてもよいことを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記分散物a1)および/または前記分散物a2)中の前記ポリチオフェンが任意に置換されたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)であることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記分散物a1)および/または前記分散物a2)が、少なくとも1つの高分子アニオンをさらに含み、分散物a1)および分散物a2)中の前記高分子アニオンは異なっていてもよいことを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
分散物a1)および/または分散物a2)中の前記高分子アニオンが高分子カルボン酸またはスルホン酸アニオンであり、分散物a1)および分散物a2)中の前記高分子アニオンは異なっていてもよいことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記分散物a1)および/または分散物a2)が、架橋剤および/または表面活性物質および/またはさらなる添加剤をさらに含み、分散物a1)および分散物a2)中の前記架橋剤および/または表面活性物質および/またはさらなる添加剤は異なっていてもよいことを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記分散物a1)および/または分散物a2)が複数回付与されることを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記固体電解質(4)の前記導電性の物質が導電性ポリマーであることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記固体電解質中に含まれる前記導電性ポリマーがポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記電極体(2)の前記電極材料がバルブ金属またはバルブ金属に匹敵する電気特性を有する化合物であることを特徴とする、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の方法を使用して製造される電解コンデンサ。
【請求項17】
電子回路における、請求項16に記載の電解コンデンサの使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−541260(P2010−541260A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527383(P2010−527383)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061650
【国際公開番号】WO2009/047059
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510050269)エイチ・シー・スタルク・クレビオス・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (12)