説明

高分子光導波路及びその製造方法、光モジュール

【課題】高い耐熱性と優れた柔軟性を兼ね備えた高分子光導波路を提供する。
【解決手段】コアと、該コアを被覆するクラッドとを有し、前記コア及び/又はクラッドが、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又は、ラジカル重合性を有する他の化合物若しくはカチオン重合性を有する他の化合物とともに、ラジカル重合又はカチオン重合して得られるカチオン反応性樹脂又はラジカル反応性樹脂を必須成分とする樹脂組成物の硬化物を含むことを特徴とする高分子光導波路。
【化1】


(式中、R1、R2は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、Aは炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料により形成された光導波路(高分子光導波路)及びその製造方法、該高分子光導波路を備えた光モジュールに関する。より詳しくは、耐熱性及び柔軟性に優れた高分子光導波路及びその製造方法、該高分子光導波路を備えた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットを介した動画配信の普及により、サーバやルータに用いるボード内の通信容量が増加し、一部の高速信号線を電気配線から光配線に置き換える検討が進められている。高分子材料により形成された光導波路(高分子光導波路)は、石英系光導波路と比較して低コストであることなどから、光電気混載基板用の光配線として期待されている。特に、携帯用小型機器などの短距離間の情報伝達では、省スペース化を図るために曲率半径の小さい配線組みが望まれており、この点から屈曲性に優れた高分子光導波路が求められている。
【0003】
一方で、高分子光導波路には、ハンダリフロー工程における高温処理により光損失が増加したりクラックなどの熱劣化が発生することを防止するハンダリフロー耐熱性が要求される。そして、近年、溶解させるために約260℃の高温加熱を要する鉛フリーハンダの使用に対応するため、リフロー温度がより高くなっていることから、高分子光導波路には、より高い耐熱性が求められている。
【0004】
すなわち、高分子光導波路を構成するポリマー(高分子材料)には、高い耐熱性(特に、260℃を超える高温における耐熱性)と優れた柔軟性とを兼ね備えることが要求されている。
【0005】
しかしながら、耐熱性に優れた従来の高分子材料(例えば、樹脂硬化物)は、柔軟性が不足しているものが多く、さらなる改善が必要である。具体的には、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されたオキセタン環含有カチオン硬化性樹脂組成物は、透明性や耐熱性には優れているものの、柔軟性に乏しく、フレキシブル光導波路などの柔軟性を必要とする分野において必ずしも十分に満足できるものではない。
【0006】
また、特許文献3、特許文献4には、カチオン硬化性樹脂組成物を得るためのモノマーとして、グリシジル(メタ)アクリレートや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の1分子内にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物が開示されている。しかしながら、これらの化合物を用いて得られる硬化物は、硬化性が十分でなく、耐熱性及び柔軟性の点で十分に満足できるものではなかった。さらに、エポキシ基を有するため皮膚刺激性や毒性が高く、作業性の点でも問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−315181号公報
【特許文献2】特開2001−40205号公報
【特許文献3】特開2005−97515号公報
【特許文献4】特開2009−242242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、耐熱性及び柔軟性に優れた高分子光導波路を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、耐熱性及び柔軟性に優れた高分子光導波路を備える光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、1分子内にラジカル重合性を有する(メタ)アクリロイル基と、カチオン重合性を有し柔軟性を付与するオキセタン環を有し、これら2つの官能基を特定の構造を有するアルキレン基で連結して得られる特定の化合物(モノマー)を必須成分として構成された樹脂を少なくとも含む樹脂組成物の硬化物により、光導波路のコア及び/又はクラッドを形成することによって、耐熱性及び柔軟性に優れた高分子光導波路が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、コアと、該コアを被覆するクラッドとを有し、前記コア及び/又はクラッドが、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又は、ラジカル重合性を有する他の化合物若しくはカチオン重合性を有する他の化合物とともに、ラジカル重合又はカチオン重合して得られるカチオン反応性樹脂又はラジカル反応性樹脂を必須成分とする樹脂組成物の硬化物を含むことを特徴とする高分子光導波路を提供する。
【化1】

(式中、R1、R2は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、Aは炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示す。)
【0011】
さらに、前記コア及び/又はクラッドが、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有するその他の化合物とともに、ラジカル重合して得られる重量平均分子量500以上のカチオン反応性樹脂を必須成分とするカチオン反応性樹脂組成物の硬化物より形成された前記の高分子光導波路を提供する。
【0012】
さらに、前記コア及び/又はクラッドが、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はカチオン重合性を有するその他の化合物とともに、カチオン重合して得られる重量平均分子量500以上のラジカル反応性樹脂を必須成分とするラジカル反応性樹脂組成物の硬化物より形成された前記の高分子光導波路を提供する。
【0013】
さらに、前記コアが、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と、該オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体よりも屈折率が高い単独重合体を形成するラジカル重合性を有する他の化合物又はカチオン重合性を有する他の化合物とを含む組成物を、ラジカル重合又はカチオン重合して得られるカチオン反応性樹脂又はラジカル反応性樹脂を必須成分とする樹脂組成物の硬化物より形成された前記の高分子光導波路を提供する。
【0014】
さらに、前記クラッドが、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と、該オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体よりも屈折率が低い単独重合体を形成するラジカル重合性を有する他の化合物又はカチオン重合性を有する他の化合物とを含む組成物を、ラジカル重合又はカチオン重合して得られるカチオン反応性樹脂又はラジカル反応性樹脂を必須成分とする樹脂組成物の硬化物により形成された前記の高分子光導波路を提供する。
【0015】
さらに、前記クラッドの屈折率(D1)と前記コアの屈折率(D2)より算出される比屈折率差[=(D2−D1)/D1×100]が1〜10%である前記の高分子光導波路を提供する。
【0016】
さらに、前記コアの断面形状が矩形である前記の高分子光導波路を提供する。
【0017】
さらに、前記コアの断面形状が丸形である前記の高分子光導波路を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記の高分子光導波路のコアの長さ方向の端部の一方又は両方に、前記コア内部を伝播する光の進行方向を変換するためのミラーが形成されていることを特徴とする光モジュールを提供する。
【0019】
また、本発明は、前記の高分子光導波路を製造する方法であって、基板上に下層クラッドを形成し、次いで、該下層クラッド上にコアを形成した後、該コアを上層クラッドにより被覆することを特徴とする高分子光導波路の製造方法を提供する。
【0020】
さらに、前記上層クラッドを、該上層クラッドを形成する樹脂組成物を塗布し、次いで硬化させる工程を少なくとも2回繰り返して形成する前記の高分子光導波路の製造方法を提供する。
【0021】
さらに、前記コアを、有機物からなるスタンパを用いて前記下層クラッド上に形成する前記の高分子光導波路の製造方法を提供する。
【0022】
さらに、前記コアを、ファイバー状の硬化物を前記下層クラッド上に並べて形成する前記の高分子光導波路の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の高分子光導波路及び該高分子光導波路を備えた光モジュールは、上記構成を有するため、耐熱性及び柔軟性に優れる。また、本発明の高分子光導波路のコア及び/又はクラッドを構成する樹脂組成物は光照射や加熱により速やかに硬化するため、本発明の高分子光導波路及び該高分子光導波路を備えた光モジュールは、生産性が高く、コスト面でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の高分子光導波路の一例を示す概略図(断面図;コアの長さ方向に垂直な方向の断面図)である。
【図2】図2は、本発明の高分子光導波路の製造方法の一例(上層クラッドを、樹脂組成物を塗布し硬化させる工程を2回繰り返すことによって形成する場合)を説明する概略図(断面図;コアの長さ方向に垂直な方向の断面図)である。
【図3】図3は、実施例1における高分子光導波路の製造方法を説明する概略図(断面図;コアの長さ方向に垂直な方向の断面図)である。
【図4】図4は、実施例2における光モジュールの製造方法を説明する概略図(断面図;コアの長さ方向に平行な方向の断面図)である。
【図5】図5は、45°ミラー面を有するコア及び上層クラッドをスタンパを用いて形成する本発明の光モジュールの製造方法を説明する概略図(断面図;コアの長さ方向に平行な方向の断面図)である。
【図6】図6は、45°ミラー面を有するコア及び両端に45°ミラー面を有する上層クラッドをスタンパを用いて形成する本発明の光モジュールの製造方法を説明する概略図(断面図;コアの長さ方向に平行な方向の断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の高分子光導波路は、内部を光が伝播するコア(導光部分)と、該コアを被覆するクラッドとを有し、なおかつ高分子材料により形成された光導波路である。
【0026】
本発明の高分子光導波路においては、上記コア及び/又はクラッド(コア及びクラッドのいずれか一方又は両方)が、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物(「オキセタン環含有(メタ)アクリロイル化合物」と称する場合もある)を単独で、又は、ラジカル重合性を有する他の化合物若しくはカチオン重合性を有する他の化合物とともに、ラジカル重合又はカチオン重合して得られるカチオン反応性樹脂(カチオン硬化性樹脂)又はラジカル反応性樹脂(ラジカル硬化性樹脂)を必須成分とする樹脂組成物の硬化物を含むことを特徴としている。
【化2】

(式中、R1、R2は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、Aは炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示す。)
【0027】
即ち、本発明の高分子光導波路におけるコア及び/又はクラッドは、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で若しくはラジカル重合性を有する他の化合物とともにラジカル重合して得られるカチオン反応性樹脂(「本発明のカチオン反応性樹脂」と称する場合がある)、又は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で若しくはカチオン重合性を有する他の化合物とともにカチオン重合して得られるラジカル反応性樹脂(「本発明のラジカル反応性樹脂」と称する場合がある)を、必須成分とする樹脂組成物の硬化物を含む。
【0028】
[オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物]
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、本発明の高分子光導波路の必須の構成成分である。
【0029】
式(1)中、R1、R2におけるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖状C1-6(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基などの分岐鎖状のC3-6(好ましくはC3)アルキル基などが挙げられる。中でも、上記R1としては、水素原子又はメチル基が好ましい。また、上記R2としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0030】
式(1)中、Aは炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示す。中でも、上記Aとしては、優れた耐熱性と柔軟性とを兼ね備えた硬化物を形成できる点で、下記式(a1)で表される直鎖状アルキレン基、又は下記式(a2)で表される分岐鎖状アルキレン基が好ましい。なお、式(a2)の右端はエステル結合を構成する酸素原子と結合する。
【化3】

[式(a1)中、n1は2以上の整数を示す。式(a2)中、R3、R4、R7、R8は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、R5、R6は同一又は異なってアルキル基を示す。n2は0以上の整数を示し、n2が2以上の整数の場合、2以上のR7、R8はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい]
【0031】
式(a1)中のn1は2以上の整数を示し、特に限定されないが、2〜20の整数が好ましく、特に好ましくは2〜10の整数である。n1が1の場合、重合して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0032】
式(a2)中のR3、R4、R5、R6、R7、R8におけるアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの直鎖状C1-4(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの分岐鎖状のC3-4(好ましくはC3)アルキル基などが挙げられる。中でも、上記R3、R4としては水素原子が好ましい。また、上記R5、R6としてはメチル基、エチル基が好ましい。
【0033】
式(a2)中のn2は0以上の整数を示し、特に限定されないが、1〜20の整数が好ましく、特に好ましくは1〜10の整数である。
【0034】
式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の代表的な例としては、以下の化合物を挙げることができる。
【化4】

【0035】
式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、例えば、下記式(2)
【化5】

(式(2)中、R2は前記に同じ。Xは脱離性基を示す)
で表される化合物と、下記式(3)
HO−A−OH (3)
(式(3)中、Aは前記に同じ)
で表される化合物を、塩基性物質存在下、液相一相系で反応させて下記式(4)
【化6】

(式(4)中、R2、Aは前記に同じ)
で表されるオキセタン環含有アルコールを得、得られたオキセタン環含有アルコールを(メタ)アクリル化することにより合成することができる。
【0036】
式(2)中、Xは脱離性基を示し、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子(中でも、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい);p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基;アセチルオキシ基等のカルボニルオキシ基などの脱離性の高い基が挙げられる。
【0037】
上記塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;水素化ナトリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩;有機リチウム試薬(例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等)、有機マグネシウム試薬(グリニャール試薬:例えば、MeMgBr、EtMgBr等)等の有機金属化合物等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
上記「液相一相系」とは、液相が2相以上あるものではなく1相のみの場合を意味し、液相が一相であれば固体を含んでいてもよい。上記溶媒としては、式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物の両方を溶解することができればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;THF(テトラヒドロフラン)、IPE(イソプロピルエーテル)などのエーテル;DMSO(ジメチルスルホキシド)等の含硫黄系溶媒;DMF(ジメチルホルムアミド)等の含窒素系溶媒等が挙げられる。
【0039】
[カチオン反応性樹脂]
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有する他の化合物(「他のラジカル重合性化合物」と称する場合がある)とともに、ラジカル重合することによって、カチオン反応性樹脂(本発明のカチオン反応性樹脂)が得られる。即ち、本発明のカチオン反応性樹脂は、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を必須のモノマー成分として構成されたカチオン重合性を有する重合体であって、本発明の高分子光導波路のコア及び/又はクラッドを構成する硬化物を形成するための樹脂組成物の必須成分である。なお、上記「他のラジカル重合性化合物」とは、ラジカル重合性を有し、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とは異なる化合物を意味する。
【0040】
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、1分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でラジカル重合、又は他のラジカル重合性化合物と共にラジカル共重合することにより、下記式で表される構成単位を有するカチオン反応性樹脂が得られる。なお、ラジカル共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
【化7】

(式中、R1、R2、Aは上記に同じ)
【0041】
本発明のカチオン反応性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物を形成することができる点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のラジカル重合性化合物をラジカル共重合することにより得られる樹脂が好ましく、カチオン反応性樹脂を構成する全モノマー(100重量%)のうち、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の割合が0.1重量%以上100重量%未満(好ましくは1〜99重量%、より好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは10〜50重量%)となるように、ラジカル共重合して得られるカチオン反応性樹脂が特に好ましい。
【0042】
上記他のラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルエーテル基、ビニルアリール基、ビニルオキシカルボニル基等のラジカル重合性基を1分子内に1つ以上有する化合物等を挙げることができる。
【0043】
(メタ)アクリロイル基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、1−ブテン−3−オン、1−ペンテン−3−オン、1−ヘキセン−3−オン、4−フェニル−1−ブテン−3−オン、5−フェニル−1−ペンテン−3−オン等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0044】
(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシ)エチルイソシアネート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0045】
(メタ)アクリロイルアミノ基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、アクリル酸モルホリン−4−イル、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0046】
ビニルエーテル基を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、p−キシレングリコールモノビニルエーテル、m−キシレングリコールモノビニルエーテル、o−キシレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0047】
ビニルアリール基を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、酢酸4−ビニルフェニル、(4−ビニルフェニル)ジヒドロキシボラン、(4−ビニルフェニル)ボラン酸、(4−ビニルフェニル)ボロン酸、4−エテニルフェニルボロン酸、4−ビニルフェニルボラン酸、4−ビニルフェニルボロン酸、p−ビニルフェニルホウ酸、p−ビニルフェニルボロン酸、N−(4−ビニルフェニル)マレインイミド、N−(p−ビニルフェニル)マレイミド、N−(p−ビニルフェニル)マレインイミド等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0048】
ビニルオキシカルボニル基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、ギ酸イソプロペニル、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル、酪酸イソプロペニル、イソ酪酸イソプロペニル、カプロン酸イソプロペニル、吉草酸イソプロペニル、イソ吉草酸イソプロペニル、乳酸イソプロペニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0049】
上記他のラジカル重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた硬化物を形成することができる点で、1分子内に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基から選ばれる官能基を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子内に1個のみ有する化合物が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
ラジカル重合反応は、加熱処理及び/又は光照射を行うことにより促進することができる。加熱処理を行う場合、その温度としては、反応に供する成分や触媒の種類などに応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、20〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃である。光照射を行う場合、その光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線、レーザー光等を使用することができる。また、光照射後、例えば、50〜180℃程度の温度で加熱処理を施してラジカル重合反応をさらに進行させてもよい。
【0051】
ラジカル重合反応は一般に溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PGMEA)、ベンゼン、トルエン等を挙げられる。
【0052】
また、ラジカル重合反応においては、重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、公知乃至慣用の熱重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得るものを特に限定されることなく使用することができ、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等を挙げることができる。
【0053】
ラジカル重合反応における重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、ラジカル重合性化合物(式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のラジカル重合性化合物の総重量)100重量部に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0054】
本発明のカチオン反応性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。重量平均分子量が上記範囲を外れると、カチオン反応性樹脂を含む樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の柔軟性が得られにくくなる傾向がある。
【0055】
本発明のカチオン反応性樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、100以上(例えば、100〜50万)が好ましく、より好ましくは300〜25万である。数平均分子量が上記範囲を外れると、カチオン反応性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の柔軟性が得られにくくなる傾向がある。なお、上記カチオン反応性樹脂の重量平均分子量、数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0056】
[ラジカル反応性樹脂]
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はカチオン重合性を有する他の化合物(「他のカチオン重合性化合物」と称する場合がある)とともに、カチオン重合することによって、ラジカル反応性樹脂(本発明のラジカル反応性樹脂)が得られる。即ち、本発明のラジカル反応性樹脂は、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を必須のモノマー成分として構成されたラジカル重合性を有する重合体であり、本発明の高分子光導波路のコア及び/又はクラッドを構成する硬化物を形成する樹脂組成物の必須成分である。なお、上記「他のカチオン重合性化合物」とは、カチオン重合性を有し、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とは異なる化合物を意味する。
【0057】
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、1分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でカチオン重合、又は他のカチオン重合性化合物と共にカチオン共重合することにより、下記式で表される構成単位を有するラジカル反応性樹脂を合成することができる。なお、カチオン共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
【化8】

(式中、R1、R2、Aは上記に同じ)
【0058】
上記ラジカル反応性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物を形成できる点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のカチオン反応性化合物をカチオン共重合することにより得られるラジカル反応性樹脂が好ましい。特に、ラジカル反応性樹脂を構成する全モノマー(100重量%)のうち、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物由来のモノマーの占める割合が0.1重量%以上100重量%未満(より好ましくは1〜99重量%、特に好ましくは10〜80重量%)となるように、カチオン共重合して得られる樹脂が好ましい。
【0059】
他のカチオン重合性化合物としては、例えば、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基等のカチオン重合性基を1分子内に1個以上有する化合物等を挙げることができる。
【0060】
オキセタン環を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、トリメチレンオキシド、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタン、3,3‐ビス(クロルメチル)オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、3−エチル−3{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等を挙げることができる。
【0061】
エポキシ環を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、グリシジルメチルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシルレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類等を挙げることができる。
【0062】
ビニルエーテル基を1分子内に1つ以上有する化合物、ビニルアリール基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、上記他のラジカル重合性化合物において挙げられた例と同様の例を挙げることができる。
【0063】
上記他のカチオン重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた硬化物を形成することができる点で、1分子内にオキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基から選ばれる官能基を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、トリメチレンオキシド、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン等のオキセタン環を1分子内に1つ以上有する化合物、グリシジルメチルエーテル、酪酸(R)−グリシジル等のエポキシ基を1分子内に1個のみ有する化合物等が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
カチオン重合反応は、一般に溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
【0065】
また、カチオン重合反応には重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、例えば、カチオン重合をおこし得るものであれば特に限定されることなく、公知乃至慣用のカチオン重合開始剤、酸発生剤等を使用することができる。重合開始剤としては、例えば、過塩素酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、塩化第二鉄、四塩化錫、四塩化チタン、塩化水銀、塩化亜鉛等のルイス酸等を使用することができる。また、その他、ヨウ素、トリフェニルクロロメタン等を使用することもできる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
カチオン重合反応における重合開始剤の使用量としては、例えば、カチオン重合性化合物(式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のカチオン重合性化合物の総重量)100重量部に対して、例えば、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0067】
また、カチオン重合反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、モノ−t−ブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、2,5−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、α−ナフトール、ニトロフェノール等のキノン・フェノール系禁止剤、チオエーテル系禁止剤、亜リン酸エステル系禁止剤等を挙げることができる。
【0068】
本発明のラジカル反応性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。ラジカル反応性樹脂の重量平均分子量が上記範囲を下回ると、ラジカル重合して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。なお、上記ラジカル反応性樹脂の重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0069】
[樹脂組成物]
本発明の高分子光導波路のコア及び/又はクラッドを構成する硬化物(樹脂硬化物)を形成する樹脂組成物は、本発明のカチオン反応性樹脂を必須成分として含む樹脂組成物(カチオン反応性樹脂組成物)、又は、本発明のラジカル反応性樹脂を必須成分として含む樹脂組成物(ラジカル反応性樹脂組成物)である。
【0070】
(カチオン反応性樹脂組成物)
上記カチオン反応性樹脂組成物(カチオン硬化性樹脂組成物)は、本発明のカチオン反応性樹脂を必須成分として含む樹脂組成物である。上記カチオン反応性樹脂組成物における本発明のカチオン反応性樹脂の割合(含有量)としては、例えば、カチオン反応性樹脂組成物(固形分)(100重量%)に対して5重量%以上であり、実質的にカチオン反応性樹脂組成物(固形分)が本発明のカチオン反応性樹脂のみで構成されていてもよい(例えば、本発明のカチオン反応性樹脂の割合が98重量%以上であってもよい)。本発明においては、中でも、より柔軟性に優れる硬化物を形成することができる点で、カチオン反応性樹脂組成物(固形分)中に占める本発明のカチオン反応性樹脂の割合が、10〜95重量%であることが好ましく、特に40〜95重量%が好ましい。カチオン反応性樹脂組成物(固形分)中に占める本発明のカチオン反応性樹脂の割合が5重量%を下回ると、カチオン重合により硬化して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0071】
上記カチオン反応性樹脂組成物には、本発明のカチオン反応性樹脂の他に、上述の他のカチオン重合性化合物が含まれていてもよい。
【0072】
上記カチオン反応性樹脂組成物に含まれる他のカチオン重合性化合物としては、中でも、光を照射することにより速やかに硬化する点で、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等のオキセタン環を1分子内に1つ以上有する化合物が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
上記カチオン反応性樹脂組成物は、より柔軟性に優れる硬化物を形成することができる点で、本発明のカチオン反応性樹脂と共に他のカチオン重合性化合物を含むことが好ましい。本発明のカチオン反応性樹脂と他のカチオン重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、特に限定されないが、95/5〜10/90が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜45/55である。本発明のカチオン反応性樹脂の配合割合が上記範囲を下回ると、得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0074】
また、上記カチオン反応性樹脂組成物は、必要に応じて重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、公知乃至慣用の光カチオン重合開始剤、光酸発生剤等のカチオン重合を起こし得るものを特に限定されることがなく使用することができる。重合開始剤としては、例えば、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩;ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヨードニウム[4−(4−メチルフェニル−2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等のホスホニウム塩;ピリジウム塩などが挙げられる。
【0075】
上記重合開始剤として、例えば、商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製、光酸発生剤)などの市販品を使用することもできる。
【0076】
カチオン重合反応における重合開始剤の使用量としては、カチオン重合性化合物(本発明のカチオン反応性樹脂と他のカチオン重合性化合物の総重量)100重量部に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0077】
さらに、上記カチオン反応性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の添加物を添加してもよい。他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、有機−無機ハイブリッド材料、フルオロシラン等の公知慣用の各種添加剤を挙げることができる。
【0078】
(ラジカル反応性樹脂組成物)
上記ラジカル反応性樹脂組成物(ラジカル硬化性樹脂組成物)は、本発明のラジカル反応性樹脂を必須成分として含む。上記ラジカル反応性樹脂組成物における本発明のラジカル反応性樹脂の割合(含有量)としては、例えば、ラジカル反応性樹脂組成物(固形分)(100重量%)に対して5重量%以上であり、実質的にラジカル反応性樹脂組成物(固形分)が本発明のラジカル反応性樹脂のみで構成されていてもよい(例えば、本発明のラジカル反応性樹脂の割合が98重量%以上であってもよい)。本発明においては、中でも、より柔軟性に優れる硬化物を形成することができる点で、ラジカル反応性樹脂組成物(固形分)中に占める本発明のラジカル反応性樹脂の割合が、10〜95重量%であることが好ましく、特に60〜90重量%が好ましい。ラジカル反応性樹脂組成物(固形分)中に占める本発明のラジカル反応性樹脂の割合が5重量%を下回ると、ラジカル重合により硬化して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0079】
上記ラジカル反応性樹脂組成物には、本発明のラジカル反応性樹脂の他に、上述の他のラジカル重合性化合物が含まれていてもよい。
【0080】
上記ラジカル反応性樹脂組成物に含まれる他のラジカル重合性化合物としては、中でも、より優れた耐熱性を有する硬化物を形成できる点で、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上(特に2つ)有する化合物が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
上記ラジカル反応性樹脂組成物としては、より優れた柔軟性を有する硬化物を形成できる点で、本発明のラジカル反応性樹脂と共に他のラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。本発明のラジカル反応性樹脂と他のラジカル重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、特に限定されないが、95/5〜5/95が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜60/40である。本発明のラジカル反応性樹脂の配合割合が上記範囲を下回ると、得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0082】
また、上記ラジカル反応性樹脂組成物は、必要に応じて重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、公知乃至慣用の熱重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得るものを特に限定されることがなく使用することができる。
【0083】
上記熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0084】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイト等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0085】
上記重合開始剤には、光吸収エネルギーの重合開始遊離基への転換を強めるための相乗剤を添加してもよい。相乗剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸メチル等のアミン;チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、アセチルアセトンなどのケトン等が挙げられる。
【0086】
上記ラジカル反応性樹脂組成物に重合開始剤を添加する場合、その添加量(使用量)としては、ラジカル反応性樹脂組成物中のラジカル重合性化合物(本発明のラジカル反応性樹脂と他のラジカル重合性化合物の総重量)100重量部に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0087】
さらに、上記ラジカル反応性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の添加物を添加してもよい。他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、有機−無機ハイブリッド材料、フルオロシラン等の公知慣用の各種添加剤を挙げることができる。
【0088】
図1は、本発明の高分子光導波路の一例を示す概略図(断面図)である。なお、図1は、コアの長さ方向に垂直な方向の断面図を表し、光はコア(図1における1)の内部を紙面に垂直な方向に伝播する。
【0089】
図1に示すように、本発明の高分子光導波路は、コア1と、該コア1を被覆するクラッド2を有する。なお、特に、コアの下方を被覆するクラッドを下層クラッド3、コアの側方及び上方を被覆するクラッドを上層クラッド4と称する場合がある。また、図1では、本発明の高分子光導波路が基板(図1における5)を有する例を示しているが、必ずしも基板を有する必要はない。
【0090】
本発明の高分子光導波路は、上記コア及び/又はクラッドが、上記カチオン反応性樹脂組成物の硬化物、又は、上記ラジカル反応性樹脂組成物の硬化物を含むことを特徴としている。中でも、本発明の高分子光導波路は、耐熱性及び柔軟性の向上の観点で、コアとクラッドがともに上記カチオン反応性樹脂組成物の硬化物又は上記ラジカル反応性樹脂組成物の硬化物より形成されることが好ましい。
【0091】
特に、本発明の高分子光導波路のコアは、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と、該オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体よりも屈折率が高い単独重合体を形成するラジカル重合性を有する他の化合物又はカチオン重合性を有する他の化合物とを含む組成物(モノマー組成物)を、ラジカル重合又はカチオン重合して得られるカチオン反応性樹脂又はラジカル反応性樹脂を必須成分とする樹脂組成物(カチオン反応性樹脂組成物又はラジカル反応性樹脂組成物)の硬化物より形成することが好ましい。本発明の高分子光導波路のコアを上記構成の硬化物より形成することによって、コアの屈折率を高くすることができるため、コアとクラッドの比屈折率差を後述の範囲に制御しやすく、光損失が低減する傾向がある。
【0092】
また、特に、本発明の高分子光導波路のクラッドは、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と、該オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体よりも屈折率が低い単独重合体を形成する他のラジカル重合性化合物又は他のカチオン重合性化合物とを含む組成物(モノマー組成物)を、ラジカル重合又はカチオン重合して得られるカチオン反応性樹脂又はラジカル反応性樹脂を必須成分とする樹脂組成物(カチオン反応性樹脂組成物又はラジカル反応性樹脂組成物)の硬化物より形成することが好ましい。本発明の高分子光導波路のクラッドを上記構成の硬化物より形成することによって、クラッドの屈折率を低くすることができるため、コアとクラッド
の比屈折率差を後述の範囲に制御しやすく、光損失が低減する傾向がある。
【0093】
本明細書において、「単独重合体」とは、単一の単量体[式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物、他のラジカル重合性化合物、他のカチオン重合性化合物]より形成される重合体(ホモポリマー)を意味する。具体的には、上記単量体の重合性官能基(カチオン重合性官能基、ラジカル重合性官能基など)の反応率(硬化度)[=未反応の重合性官能基(モル)/(反応した重合性官能基(モル)+未反応の重合性官能基(モル))×100]が50%以上であるホモポリマー、好ましくは、上記単量体が有する重合性官能基を実質的に全て反応させることによって形成されたホモポリマーである。なお、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物における重合性官能基は、オキセタン環及び(メタ)アクリロイル基である。他のカチオン重合性化合物における重合性官能基はカチオン重合性官能基であり、他のラジカル重合性化合物における重合性官能基はラジカル重合性官能基である。なお、上記反応率は、例えば、NMR、IR、ラマンスペクトル等により算出することができる。
【0094】
本発明の高分子光導波路のクラッドの波長850nmの光に対する、温度25℃における屈折率(「D1」と称する場合がある)は、特に限定されないが、汎用の光学樹脂の屈折率と大きく異ならず、光学材料としての汎用性が損なわれることがない点で、1.400〜1.700が好ましく、より好ましくは1.420〜1.680である。
【0095】
本発明の高分子光導波路のコアの波長850nmの光に対する、温度25℃における屈折率(「D2」と称する場合がある)は、特に限定されないが、汎用の光学樹脂の屈折率と大きく異ならず、光学材料としての汎用性が損なわれることがない点で、1.410〜1.710が好ましく、より好ましくは1.430〜1.690である。
【0096】
本発明の高分子光導波路における、波長850nmの光に対する、クラッドの屈折率(D1)とコアの屈折率(D2)より算出される比屈折率差は、特に限定されないが、1〜10%が好ましく、より好ましくは2〜10%である。比屈折率差が1%未満であると、光損失が増大する傾向がある。一方、比屈折率差が10%を超えると、コア及びクラッドを構成する材料の選定が困難となり、コスト面で不利となる場合がある。なお、上記比屈折率差は、下記式により算出される値である。
[比屈折率差(%)]=[(D2−D1)/D1×100]
【0097】
本発明の高分子光導波路におけるコアの屈折率、クラッドの屈折率、及び比屈折率差は、例えば、コアやクラッドを構成する硬化物の樹脂組成、金属ナノ粒子などの添加等により制御できる。
【0098】
本発明の高分子光導波路のコアの断面形状(コアの長さ方向に直交する断面の形状)は、特に限定されず、例えば、矩形、丸形(例えば、真円形、楕円形等)、不定形等が挙げられる。中でも、上記コアの断面形状としては、光損失の抑制や製造の容易さの観点から、矩形、丸形が好ましい。上記コアの断面形状は、特に、光損失の抑制の観点では丸形が好ましく、製造の容易さの観点では矩形が好ましい。
【0099】
本発明の高分子光導波路のコアの断面(コアの長さ方向に直交する断面)の幅及び高さは、特に限定されないが、1〜100μmが好ましく、より好ましくは5〜75μm、さらに好ましくは25〜60μmである。コアの断面の幅又は高さが100μmを超えると、未硬化部分が残る可能性があり、好ましくない。一方、コアの断面の幅又は高さが1μm未満であると、他の光素子等に対する位置合わせが困難となる場合がある。
【0100】
本発明の高分子光導波路のクラッドは、上記コアを被覆するものであればよく、その形状やサイズ等は、特に限定されない。
【0101】
本発明の高分子光導波路が基板を有する場合(例えば、図1参照)、上記基板としては、シリコン基板、ガラス基板、セラミック基板、ガラスエポキシ樹脂基板、金属基板、プラスチック基板(プラスチックフィルム等)などを使用することができ、特に限定されない。上記基板として、柔軟性が高い基材(例えば、プラスチックフィルムなど)を用いた場合には、本発明の高分子光導波路をフレキシブル光導波路として利用することができる。
【0102】
本発明の高分子光導波路は、公知乃至慣用の高分子光導波路の製造方法により製造することができる。より具体的には、本発明の高分子光導波路(例えば、図1の高分子光導波路)は、例えば、基板上にクラッド(下層クラッド)を形成し、次いで、該クラッド(下層クラッド)上にコア(コアパターン)を形成した後、該コア(コアの側面及び上面の露出部分)を、クラッド(上層クラッド)により被覆する方法などによって製造することができる。但し、これに限定されるものではない。
【0103】
基板上にクラッド(下層クラッド)を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、基板上に樹脂組成物(好ましくは、上記カチオン反応性樹脂組成物又はラジカル反応性樹脂組成物)を塗布し、硬化させる方法などが挙げられる。
【0104】
基板上に樹脂組成物を塗布(塗工)する方法としては、公知乃至慣用の方法を利用することができ、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、スプレー法、ロールコート法、インクジェット法などが挙げられる。
【0105】
基板上に塗布した樹脂組成物を硬化させる方法は、特に限定されないが、例えば、上記カチオン反応性樹脂組成物を用いた場合には、光を照射することによりカチオン重合反応を促進し、硬化させることでクラッド(下層クラッド)を形成することができる。光照射の際に用いる光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線、レーザー光等を使用することができる。また、光照射後、例えば、50〜180℃程度の温度で熱処理を施してさらに硬化を進行させてもよい。また、上記カチオン反応性樹脂組成物の硬化は、常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。硬化の際の雰囲気はカチオン反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。
【0106】
一方、上記樹脂組成物として、上記ラジカル反応性樹脂組成物を用いた場合には、加熱処理及び/又は光照射を行うことによりラジカル重合反応を促進し、硬化させることでクラッド(下層クラッド)を形成することができる。加熱処理の温度としては、反応に供する成分や触媒の種類などに応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、20〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃である。光照射を行う場合、その光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線、レーザー光等を使用することができる。また、光照射後、例えば、50〜180℃程度の温度で熱処理を施して硬化を進行させてもよい。また、ラジカル重合反応は常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。硬化の際の雰囲気はラジカル反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。
【0107】
上記下層クラッド上にコアを形成する方法は、特に限定されず、公知乃至慣用のパターン形成方法等を利用することができる。コアの形成方法の一例として、例えば、下層クラッド上にスタンパ(鋳型)を用いてコアを形成する方法が挙げられる。より具体的には、スタンパに樹脂組成物(好ましくは、上記カチオン反応性樹脂組成物又はラジカル反応性樹脂組成物)を注入し、これを下層クラッド上に転写した後、上記樹脂組成物を硬化させ、最後にコア(硬化物)よりスタンパを取り外すことにより、下層クラッド上にコアを形成できる。上記スタンパとしては、特に限定されないが、例えば、金属、石英、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等により構成されたスタンパを使用できる。中でも、コアを構成する樹脂組成物を光で硬化させる場合には、安価で、コアからの取り外しが容易である点で、有機物からなるスタンパが好ましく、より好ましくはポリエステル樹脂、フッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標))、シリコーン樹脂製のスタンパである。即ち、上記コアは、有機物からなるスタンパを用いて下層クラッド上に形成することが好ましい。当該コアの形成方法は、生産性に優れるため好ましい。
【0108】
コアの形成方法の他の一例としては、例えば、あらかじめファイバー状(糸状)に形成した硬化物(ファイバー状の硬化物、特に、断面形状が丸形又は矩形であるファイバー状の硬化物)を、下層クラッド上に並べて(配列して)形成する方法が挙げられる。当該コアの形成方法は、生産性に優れ、また、光損失を低減できる点で好ましい。
【0109】
コアの形成は、上記に限定されず、例えば、リソグラフィー(乾式リソグラフィーや湿式リソグラフィー)を利用した方法により行ってもよい。具体的には、例えば、上記下層クラッド上に、コアを形成するための樹脂組成物を塗布し、フォトマスクを介してコアを形成する部分のみを硬化させた後、現像する方法等によっても、コアを形成することができる。
【0110】
下層クラッド上にコア(コアパターン)を形成した後、該コアをクラッド(上層クラッド)により被覆する方法は、特に限定されないが、例えば、下層クラッド及びコア上に樹脂組成物(好ましくは、上記カチオン反応性樹脂組成物又はラジカル反応性樹脂組成物)を塗布し、硬化させる方法が挙げられる。樹脂組成物の塗布及び硬化は、特に限定されないが、例えば、上述の下層クラッドと同様の方法により実施することができる。
【0111】
中でも、上記のように、本発明の高分子光導波路の上層クラッドを、下層クラッド及びコア上に上記上層クラッドを形成する樹脂組成物を塗布(特に、スピンコート法で塗布)し、次いで硬化させる方法により製造する場合は、上層クラッドを、該上層クラッドを形成するための樹脂組成物を塗布し、次いで硬化させる工程を少なくとも2回繰り返して形成することが好ましい。このような方法により本発明の高分子光導波路を製造することにより、上層クラッド表面の平滑性が高く、高品質の高分子光導波路が得られるため、好ましい。
【0112】
図2は、本発明の高分子光導波路の製造方法の一例(上層クラッドを、樹脂組成物を塗布し硬化させる工程を2回繰り返すことによって形成する場合)を説明する概略図(コアの長さ方向に垂直な方向の断面図)である。なお、図2において、最初に形成される上層クラッドを「上層クラッドa」と称する場合がある。また、最後に形成される上層クラッドを「上層クラッドb」と称する場合がある。
【0113】
まず、基板5上に下層クラッド3を形成し(図2の(1)参照)、下層クラッド3上にコア1を形成する(図2の(2)参照)。次に、コア1及び下層クラッド3上に樹脂組成物を塗布し、硬化させて上層クラッドa(4a)を形成し(図2の(3)参照)、その後、さらに樹脂組成物を塗布し、硬化させて上層クラッドb(4b)を形成することによって(図2の(4)参照)、上層クラッド4を形成する。なお、図2に示すように、上層クラッドaは、上記コアの一部(側面のみ)を被覆するものであってもよいし、コアの側面及び上面を被覆するものであってもよい。また、上層クラッドを形成する工程は、図2に示すように2回に分割してもよいし、3回以上に分割して実施してもよい。
【0114】
また、上記コアを上層クラッドにより被覆する他の方法としては、例えば、下層クラッド及びコア上に、スタンパを用いて上層クラッドを形成(成形)する方法が挙げられる。上記スタンパとしては、例えば、有機物からなるスタンパが好ましい。より具体的には、例えば、スタンパに上層クラッドを形成するための樹脂組成物(好ましくは、上記カチオン反応性樹脂組成物又はラジカル反応性樹脂組成物)を注入し、これを、下層クラッド表面に形成されたコアを覆うように転写し、続いて硬化させる方法により、コアを上層クラッドにより被覆することができる。
【0115】
[光モジュール]
本発明の高分子光導波路と光素子を組み合わせることによって、本発明の高分子光導波路を備えた光モジュール(「本発明の光モジュール」と称する場合がある)を得ることができる。本明細書において、「光モジュール」とは、基板に実装された光素子と、該光素子に入射又は出射する光を伝播する光導波路(光導波路構造体)とを有するものをいう。なお、上記光素子とは、例えば、光の進行方向を変換する機能や、受光・発光機能等を有するものをいう。また、本発明の光モジュールには、上記基板に実装された光素子と、該光素子に入射又は出射する光を伝播する光導波路とを有するものに、さらに電気回路(電気配線)を組み合わせた、光・電気混載回路も含まれるものとする。
【0116】
本発明の光モジュールの一例としては、本発明の高分子光導波路のコアの長さ方向の端部の一方又は両方に、コア内部を伝播する光の進行方向を変換するためのミラーが形成された光モジュールなどが挙げられる。このようなミラーを形成することにより、光導波路内を伝播する光の進行方向を変換する(光路変換;例えば、90°変換)することができ、特に、光を所望の位置に伝送することが容易となる。このようなミラーが形成された光モジュールの製造方法としては、公知乃至慣用の方法を利用することができ、特に限定されないが、例えば、光導波路のコアの長さ方向の端部にミラー面としての傾斜面を形成する方法等が挙げられる(例えば、図4参照)。このような傾斜面を形成する方法としては、公知乃至慣用の成形加工方法等を利用でき、例えば、特開平10−300961号公報、特開2004−78034号公報などに開示された方法を利用することができる。
【0117】
本発明の光モジュール(ミラーが形成された光モジュール)の製造方法の具体例を、図5を参照しながら説明する。図5は、45°ミラー面を有するコア及び上層クラッドをスタンパを用いて形成する本発明の光モジュール(本発明の高分子光導波路を備えた光モジュール)の製造方法を説明する概略図(断面図;コアの長さ方向に平行な方向の断面図)である。まず、両端に45°ミラー面を有するコアパターンが形成できるスタンパ7aにコアを形成するための樹脂組成物6a(好ましくは、上記カチオン反応性樹脂組成物又はラジカル反応性樹脂組成物)を注入し(図5の(1)参照)、これを基板5上に形成された下層クラッド3表面に転写し(図5の(2)参照)、続いて上記樹脂組成物6aを硬化させて、下層クラッド3上に両端に45°ミラー面を有するコア8を形成する(図5の(3)参照)。次に、スタンパ7bに注入した上層クラッドを形成するための樹脂組成物6b(好ましくは、上記カチオン反応性樹脂組成物又はラジカル反応性樹脂組成物)を、45°ミラー面を有するコア8を覆うように下層クラッド3及び該コア8上に転写し(図5の(4)参照)、上記樹脂組成物6bを硬化させ、最後に硬化物よりスタンパを取り外すことにより、上層クラッド4を形成できる(図5の(5)参照)。
【0118】
本発明の光モジュール(ミラーが形成された光モジュール)の製造方法の他の具体例を、図6を参照しながら以下説明する。図6は、45°ミラー面を有するコア、及び両端に45°ミラー面を有する上層クラッドをスタンパを用いて形成する本発明の光モジュール(本発明の高分子光導波路を備えた光モジュール)の製造方法を説明する概略図(断面図;コアの長さ方向に平行な方向の断面図)である。まず、両端に45°ミラー面を有するコアパターンが形成できるスタンパ7aにコアを形成するための樹脂組成物6aを注入し(図6の(1)参照)、これを基板5上に形成された下層クラッド3の表面に転写し(図6の(2)参照)、次いで、上記樹脂組成物6aを硬化させて、下層クラッド3上に両端に45°ミラー面を有するコア8を形成する(図6の(3)参照)。次に、両端に45°ミラー面を有するクラッドパターンが形成できるスタンパ7cに注入した上層クラッドを形成するための樹脂組成物6bを、45°ミラー面を有するコア8を覆うように下層クラッド3及び該コア8上に転写し(図6の(4)参照)、その後、樹脂組成物6bを硬化させ、最後に硬化物からスタンパ7cを取り外すことにより、両端に45°ミラー面を有する上層クラッド9を形成できる(図6の(5)参照)。本発明の光モジュールは、図6の(5)に示す構造を有することにより、より効率よく光の進行方向を変換(90°変換)することが可能となる。
【0119】
なお、本発明の光モジュールの上層クラッド(45°ミラー面を有する上層クラッドも含む)は、本発明の高分子光導波路と同様に、図5、図6のようにスタンパを用いた方法以外にも、例えば、下層クラッド及びコア上に樹脂組成物を塗布(例えば、スピンコート法により塗布)し、続いて硬化させる方法等により形成してもよい。
【0120】
また、上記ミラーが形成された光モジュールは、ミラー面(反射面)を有する光素子(「ミラー部品」と称する場合がある)を、本発明の高分子光導波路のコアの長さ方向の端部に接合する方法によっても製造することができる。これらを接合する方法は、使用するミラー部品の構造等により異なり、特に限定されない。
【0121】
上記ミラー部品としては、公知乃至慣用のミラー部品を使用することができ、特に限定されないが、例えば、内部を光が伝播する導光部と、上記導光部の内部において光を入射方向と垂直な方向に反射させる45°ミラー面とを少なくとも有し、上記導光部は、上記45°ミラー面に対向し、光導波路と接合される接合面(第1の面)と、上記45°ミラー面を形成する第2の面と、上記45°ミラー面に対向し、光を入射又は出射させる第3の面とを少なくとも有するミラー部品を使用することができる。このようなミラー部品は安価に製造可能であるためコスト面で有利であり、また、ミラー部品内に45°ミラー面を備えた構造を有するため、光モジュールの光損失を低減させやすい。
【0122】
上記ミラー部品としては、その他に、例えば、特開2007−183467号公報に開示されたミラー部品等を使用することもできる。
【0123】
本発明の高分子光導波路及び光モジュールは、柔軟性に優れるため、自由に屈曲することができ、このような屈曲によってもクラックを生じにくいため、光損失の増大が生じにくい。このため、小型の製品や内部構造が複雑な製品中で特に好ましく使用できる。また、本発明の高分子光導波路及び光モジュールは、耐熱性にも優れるため、高温のハンダリフロー工程を経た際にも、光損失の増大が生じにくい。
【0124】
本発明の高分子光導波路及び光モジュールは、特に限定されないが、例えば、光通信用途や装飾用途等の広範な用途に使用することができる。より具体的には、例えば、携帯機器、FA機器、OA機器、オーディオ機器、車両、LAN等における通信用途、家庭用や工業用の内視鏡等におけるイメージ伝送用途、センサ用途、検査・測定用の照明、美術品等の照明等における光伝送用途、看板、サイン、景観照明等における装飾用途などにおいて用いられる、機器・装置の光配線回路や光・電気混載回路等に特に好ましく使用できる。
【実施例】
【0125】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0126】
[合成例1(カチオン反応性樹脂の作製)]
モノマーと開始剤の混合液の滴下ライン、温度計、還流管、及び攪拌翼を装着した5口フラスコに、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PGMEA)367gを仕込み、窒素気流下、85±1℃に加熱した。次いで、攪拌しながら、PGMEA630g、3−エチル−3−(3−アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルプロピルオキシメチル)オキセタン(EOXTM−NPAL)300g(1.17mol)、n−ブチルアクリレート(BA)750g(5.85mol)、及び2,2´−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(商品名「V−601」、和光純薬工業(株)製)0.65gの混合液を送液ポンプで5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間同温度で保持した後、40℃以下に冷却することにより、樹脂溶液を得た。上記樹脂溶液をPGMEA2100gで希釈した後、5倍量の60重量%メタノール水溶液で再沈精製し、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で60時間保持することにより、無色透明の液状樹脂(1)(カチオン反応性樹脂)を得た。
上記液状樹脂(1)のポリスチレン換算の重量平均分子量は235,700、数平均分子量は50,000であった。
【0127】
[合成例2(カチオン反応性樹脂の作製)]
モノマーと開始剤の混合液の滴下ライン、温度計、還流管、及び攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA391gを仕込み、窒素気流下、85±1℃に加熱した。次いで、攪拌しながら、PGMEA668g、EOXTM−NPAL90g(0.35mol)、BA135.6g(1.05mol)、スチレン(St)147g(1.40mol)、及び商品名「V601」51.8gの混合液を送液ポンプで5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間同温度で保持した後、40℃以下に冷却することで、樹脂溶液を得た。上記樹脂溶液を5倍量の60重量%メタノール水溶液で再沈精製し、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で60時間保持することで、無色透明の液状樹脂(2)(カチオン反応性樹脂)を得た。
上記液状樹脂(2)のポリスチレン換算の重量平均分子量は4,500、数平均分子量は2,700であった。
【0128】
[合成例3(カチオン反応性樹脂組成物の作製)]
液状樹脂(1)45重量部、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン6重量部、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン(商品名「OXT−212」、東亞合成(株)製)12重量部、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(商品名「OXT−221」、東亞合成(株)製)37重量部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド 2021P」、ダイセル化学工業(株)製)5重量部、及び「CPI−100P」(サンアプロ(株)製、光重合開始剤)3.15重量部を混合し、孔径1μmのフィルタでろ過し、光硬化性組成物(A)(カチオン反応性樹脂組成物)を得た。
【0129】
[合成例4(カチオン反応性樹脂組成物の作製)]
液状樹脂(2)65重量部、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イオキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼンを主成分(主生成物)とする(3−エチルオキセタン−3−イル)メタノール(ヒドロキシメチル)−オキセタンと1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンの反応生成物(商品名「OXT−121」、東亞合成(株)製)35重量部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド 2021P」、ダイセル化学工業(株)製)5重量部、及び「CPI−100P」(サンアプロ(株)製、光重合開始剤)3.15重量部を混合し、孔径0.2μmのフィルタでろ過し、光硬化性組成物(B)(カチオン反応性樹脂組成物)を得た。
【0130】
[実施例1(高分子光導波路の作製)、図3参照]
(下層クラッドの形成)
シリコンウエハ上に光硬化性組成物(A)をスピンコーター(商品名「ミカサスピンコータ IH−DX」、ミカサ(株)製)を用いて均一に塗布した後、塗布した全面に紫外線照射装置(商品名「ミカサマスクアライナー MA60−F」)を用いて紫外線を照射し(照射エネルギー:約2J、波長320〜390nm)、その後、乾燥機中90℃で5分間加熱して塗膜を硬化させ、下層クラッドを形成した(図3の(1)参照)。上記下層クラッドの厚みは、約30μmであった。
(コアの形成)
RIE装置(日電アネルバ(株)製)を用いて、上記下層クラッドの表面を酸素RIE処理した後、光硬化性組成物(B)をスピンコーターを用いて均一に塗布し(図3の(2)参照)、フォトマスクを圧着して紫外線を選択的に照射した(照射エネルギー:約2J、波長320〜390nm)。露光後、乾燥機中90℃で5分間加熱を行い、続いて30重量%のイソプロパノールを含むアセトン溶液、イソプロパノールの順で洗浄した。さらに乾燥機中90℃で5分間加熱を行い、図3に示す通り、コアを1本形成した(図3の(3)参照)。上記コアの厚みは、約40μmであった。
(上層クラッドの形成)
上記コアが形成された表面を酸素RIE処理した後、光硬化性組成物(A)をスピンコーターを用いて均一に塗布し、次いで、塗布した全面に紫外線を照射し(照射エネルギー:約2J、波長320〜390nm)、乾燥機中90℃で5分間加熱して塗膜を硬化させ、上層クラッドを形成した(図3の(4)参照)。上記上層クラッドを含むトータル膜厚(シリコンウエハの厚みを除く)は、約100μmであった。
【0131】
[実施例2(高分子光導波路を備えた光モジュールの作製)、図4参照]
(下層クラッドの形成)
光硬化性組成物(A)を、非シリコーン系離型フィルム基材(商品名「T789」、ダイセルバリューコーティング(株)製)上に、アプリケーターを用いて約30μmの厚みになるよう塗布し、ベルトコンベアー式紫外線照射装置(商品名「UVC−02516S1AA02」、ウシオ電機(株)製)を用いて紫外線を照射することにより(照射エネルギー:約2J、波長:320−390nm)、離型フィルム基材の片面に下層クラッドが形成されたクラッドフィルムを得た。
(ミラーが形成されたコアの形成)
図4に示すように、両端に45°のミラー面を有するパターンが形成できるシリコーン樹脂製の鋳型に光硬化性組成物(B)を流し込み(図4の(1)参照)、上記クラッドフィルムの下層クラッド表面に反転させた状態で静置した(図4の(2)参照)。この状態で、ベルトコンベアー式紫外線照射装置(商品名「UVC−02516S1AA02」、ウシオ電機(株)製)を用いて紫外線を照射し(照射エネルギー:約2J、波長:320−390nm)、光硬化性組成物(B)を硬化させた後、鋳型を取り外し、クラッドフィルム上に長さ方向の両端にミラー(ミラー面)が形成されたコア(コアパターン)を形成した(図4の(3)参照)。
(上層クラッドの形成)
上記ミラーが形成されたコア及び下層クラッド上に、光硬化性組成物(A)を該コアの上面から約30μmの厚みになるように塗布し、ベルトコンベアー式紫外線照射装置(商品名「UVC−02516S1AA02」、ウシオ電機(株)製)を用いて紫外線を照射することにより(照射エネルギー:約2J、波長:320−390nm)、上層クラッドを形成した(図4の(4)参照)。上記上層クラッドを含むトータル膜厚(離型フィルム基材の厚みを除く)は、約100μmであった。
【0132】
(評価)
[柔軟性評価]
高分子光導波路又は光モジュールを半径1mm棒に巻き付けて、クラック(ひび割れ)発生の有無を目視で観察し、クラック(ひび割れ)が見られなかった場合を合格(柔軟性に優れる)と判定した。
実施例1、2で得られた高分子光導波路及び光モジュールは、上記柔軟性評価においていずれも合格であった。
【0133】
[耐熱性評価]
高分子光導波路又は光モジュールを260℃で30秒間加熱し、加熱前後の光損失の差異が0.1dB/cm以下である場合を合格(耐熱性に優れる)と判定した。
実施例1、2で得られた高分子光導波路及び光モジュールは、上記耐熱性評価においていずれも合格であった。
【0134】
[屈折率評価]
光硬化性組成物(A)に光を照射して硬化させた硬化物の屈折率、及び光硬化性組成物(B)に光を照射して硬化させた硬化物の屈折率を、プリズムカプラー(Metricon社製)を用いて測定した。光硬化性組成物(A)に光を照射して硬化させた硬化物の波長850nmの光に対する屈折率は1.4753であり、光硬化性組成物(B)に光を照射して硬化させた硬化物の波長850nmの光に対する屈折率は1.5189であり、その比屈折率差は3%であった。
【0135】
[光損失評価]
波長857nmの光源(ADVANTEST Q81201)からの光をマッチングオイルを介してコア径50μmのGIファイバにて、実施例1、2で得られた高分子光導波路又は光モジュールに導入し、出射した光をマッチングオイルを介してコア径200μmのPCFファイバで受光し、パワーメータ(ADVANTEST Q82202、OPTICAL SENSOR Q82214)に接続して出射される光を該パワーメータで測定した。カットバック法により求めた、実施例1、2で得られた高分子光導波路及び光モジュールの直線部分の光損失は、いずれも0.1dB/cmであった。
【符号の説明】
【0136】
1 コア
2 クラッド
3 下層クラッド
4 上層クラッド
4a 上層クラッドa
4b 上層クラッドb
5 基板
6 樹脂組成物(光硬化性組成物)
6a コアを形成するための樹脂組成物
6b 上層クラッドを形成するための樹脂組成物
7a〜c スタンパ
8 長さ方向の両端に45°ミラー面を有するコア
9 長さ方向の両端に45°ミラー面を有する上層クラッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、該コアを被覆するクラッドとを有し、
前記コア及び/又はクラッドが、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又は、ラジカル重合性を有する他の化合物若しくはカチオン重合性を有する他の化合物とともに、ラジカル重合又はカチオン重合して得られるカチオン反応性樹脂又はラジカル反応性樹脂を必須成分とする樹脂組成物の硬化物を含むことを特徴とする高分子光導波路。
【化1】

(式中、R1、R2は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、Aは炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示す。)
【請求項2】
前記コア及び/又はクラッドが、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有するその他の化合物とともに、ラジカル重合して得られる重量平均分子量500以上のカチオン反応性樹脂を必須成分とするカチオン反応性樹脂組成物の硬化物より形成された請求項1に記載の高分子光導波路。
【請求項3】
前記コア及び/又はクラッドが、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はカチオン重合性を有するその他の化合物とともに、カチオン重合して得られる重量平均分子量500以上のラジカル反応性樹脂を必須成分とするラジカル反応性樹脂組成物の硬化物より形成された請求項1又は2に記載の高分子光導波路。
【請求項4】
前記コアが、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と、該オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体よりも屈折率が高い単独重合体を形成するラジカル重合性を有する他の化合物又はカチオン重合性を有する他の化合物とを含む組成物を、ラジカル重合又はカチオン重合して得られるカチオン反応性樹脂又はラジカル反応性樹脂を必須成分とする樹脂組成物の硬化物より形成された請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子光導波路。
【請求項5】
前記クラッドが、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と、該オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体よりも屈折率が低い単独重合体を形成するラジカル重合性を有する他の化合物又はカチオン重合性を有する他の化合物とを含む組成物を、ラジカル重合又はカチオン重合して得られるカチオン反応性樹脂又はラジカル反応性樹脂を必須成分とする樹脂組成物の硬化物により形成された請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子光導波路。
【請求項6】
前記クラッドの屈折率(D1)と前記コアの屈折率(D2)より算出される比屈折率差[=(D2−D1)/D1×100]が1〜10%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子光導波路。
【請求項7】
前記コアの断面形状が矩形である請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子光導波路。
【請求項8】
前記コアの断面形状が丸形である請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子光導波路。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子光導波路のコアの長さ方向の端部の一方又は両方に、前記コア内部を伝播する光の進行方向を変換するためのミラーが形成されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子光導波路を製造する方法であって、
基板上に下層クラッドを形成し、次いで、該下層クラッド上にコアを形成した後、該コアを上層クラッドにより被覆することを特徴とする高分子光導波路の製造方法。
【請求項11】
前記上層クラッドを、該上層クラッドを形成するための樹脂組成物を塗布し、次いで硬化させる工程を少なくとも2回繰り返して形成する請求項10に記載の高分子光導波路の製造方法。
【請求項12】
前記コアを、有機物からなるスタンパを用いて前記下層クラッド上に形成する請求項10又は11に記載の高分子光導波路の製造方法。
【請求項13】
前記コアを、ファイバー状の硬化物を前記下層クラッド上に並べて形成する請求項10〜12のいずれか1項に記載の高分子光導波路の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−242458(P2012−242458A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109940(P2011−109940)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】