説明

高分子分散型液晶表示素子

【課題】画像を表示し、さらに鏡としても利用することができる高分子分散型液晶表示素子を提供する。
【解決手段】液晶/高分子複合層4を挟んで対向配置された一対の基板1,2のうちの観察側基板1の内面に、複数の画素電極7及び複数の能動素子8を設け、反対側基板2の内面に前記複数の画素電極7の配列領域に対応させて一枚膜状の対向電極9を設け、前記反対側基板の内面に、複数の画素電極7それぞれと対向電極9とが互いに対向する領域からなる複数の画素を配列した表示領域に対応させて、前記液晶/高分子複合層4側から入射した光を鏡面反射する反射面10を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高分子分散型液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子分散型液晶表示素子としては、例えば特許文献1に記載された構成のものがある。
【特許文献1】特開平7−104254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、画像を表示し、さらに鏡としても利用することができる高分子分散型液晶表示素子を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の請求項1に記載の高分子分散型液晶表示素子は、
高分子中に液晶が分散された液晶/高分子複合層と、
前記液晶/高分子複合層を挟んで対向配置された観察側とその反対側の一対の基板と、
前記観察側の基板の前記液晶/高分子複合層に対向する内面にマトリックス状に配列させて設けられた複数の画素電極及びこれらの画素電極にそれぞれ駆動信号を印加するための複数の能動素子と、
前記反対側の基板の前記液晶/高分子複合層に対向する内面に前記複数の画素電極の配列領域に対応させて設けられた一枚膜状の対向電極と、
前記反対側の基板の内面に、前記複数の画素電極それぞれと前記対向電極とが互いに対向する領域からなる複数の画素を配列した表示領域に対応させて形成され、前記液晶/高分子複合層側から入射した光を鏡面反射する反射面と、
を備えることを特徴とする。
【0005】
請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の高分子分散型液晶表示素子において、前記対向電極は、前記液晶/高分子複合層に対向する表面が鏡面に形成された金属膜により形成され、前記反射面は、前記対向電極の表面からなっていることを特徴とする。
【0006】
請求項3に記載の発明は、前記請求項1または2に記載の高分子分散型液晶表示素子において、前記観察側の基板の外面に、外光の表面反射を抑制するための表面反射抑制面が形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項4に記載の発明は、前記請求項1または2に記載の高分子分散型液晶表示素子において、前記液晶/高分子複合層の側方に、前記液晶/高分子複合層に向けて照明光を照射する光源が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の高分子分散型液晶表示素子によれば、画像を表示し、さらに鏡としても利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1はこの発明の一実施例を示す高分子分散型液晶表示素子の断面図であり、この高分子分散型液晶表示素子は、高分子5中に液晶6が分散された液晶/高分子複合層4と、前記液晶/高分子複合層4を挟んで対向配置された観察側とその反対側の一対の基板1,2と、前記観察側の基板1の前記液晶/高分子複合層4に対向する内面に行方向及び列方向にマトリックス状に配列させて設けられた複数の画素電極7、及びこれらの画素電極7にそれぞれ駆動データ信号を印加するための複数の能動素子8と、前記反対側の基板2の前記液晶/高分子複合層4に対向する内面に前記複数の画素電極7の配列領域に対応させて設けられた一枚膜状の対向電極9と、前記反対側の基板2の内面に、前記複数の画素電極7それぞれと前記対向電極9とが互いに対向する領域からなる複数の画素を配列した表示領域の略全体に対応させて形成され、前記液晶/高分子複合層4側から入射した光を鏡面反射する反射面10とを備えている。
【0010】
前記一対の基板1,2のうちの観察側の基板(以下、前基板という)1は、ガラス基板等の透明基板であり、この前基板1の内面に設けられた前記複数の画素電極7は、ITO膜等の透明導電膜からなり、前記複数の能動素子8は、TFT(薄膜トランジスタ)からなっている。
【0011】
なお、図1では前記TFT(能動素子)8を簡略化しているが、このTFT8は、前基板1の板面に形成されたゲート電極と、前記ゲート電極を覆って形成された透明なゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の膜面上に前記ゲート電極と対向させて形成されたi型半導体膜と、前記i型半導体膜の両側部にそれぞれn型半導体膜を介して積層形成されたソース電極及びドレイン電極とからなっており、前記複数の画素電極7は、前記ゲート絶縁膜の膜面上に形成され、対応するTFT8のソース電極に接続されている。
【0012】
さらに、図1では省略しているが、前記前基板1の内面には、各行のTFT8のゲート電極にゲート信号を供給する複数の走査線と、各列のTFT8のドレイン電極に駆動データ信号を供給する複数の信号線とが設けられており、前記TFT8は、前記ゲート信号の供給によりオンされ、前記信号線から供給された駆動データ信号を前記ソース電極から画素電極7に印加する。
【0013】
また、前記反対側の基板(以下、後基板という)2は、例えばガラス基板(透明基板でも不透明基板でもよい)であり、この後基板2の内面に設けられた前記対向電極9は、前記液晶/高分子複合層4に対向する表面が鏡面に形成されたアルミニウム膜等の金属膜により形成され、前記反射面10は、前記対向電極9の表面からなっている。
【0014】
そして、前記一対の基板1,2は、前記複数の画素を配列した表示領域を囲む枠状のシール材3を介して接合されており、これらの基板1,2間の間隙の前記シール材3で囲まれた領域に前記液晶/高分子複合層4が設けられている。
【0015】
前記液晶/高分子複合層4は、前記一対の基板1,2間の間隙の前記シール材3で囲まれた領域に、誘電異方性が正のネマティック液晶と、光によって重合反応する高分子材料との混合溶液を封入し、前記前基板1の外面側からの光照射により上記混合溶液の高分子材料を光重合させて高分子と液晶とを相分離させる方法で形成されたネットワーク型液晶/高分子複合層であり、立体的な網状にポリマー化した高分子(以下、高分子ネットワークという)5の間に前記液晶6が閉じ込められた構造をなしている。
【0016】
また、前記前基板1の外面には、光の屈折率が互いに異なる複数の透明膜を積層した多層フィルム、或いは表面を粗面化処理した透明フィルムからなる無反射または低反射フィルム11が貼り付けられており、この無反射または低反射フィルム11により、外光の表面反射を抑制するための表面反射抑制面11aが形成されている。
【0017】
なお、前記表面反射抑制面11aは、前記前基板1の外面に、光の屈折率が互いに異なる複数の透明膜を積層して成膜するか、或いは、前記前基板1の外面を粗面化処理して形成してもよい。
【0018】
さらに、この高分子分散型液晶表示素子は、前記液晶/高分子複合層4の側方に配置され、前記液晶/高分子複合層4に向けて照明光を照射する光源12を備えている。この光源12は、例えば、LED(発光ダイオード)、或いはLEDと前記LEDが発する光を導いて前記液晶/高分子複合層4に入射させる導光部材とからなっており、前記液晶/高分子複合層4の側方に、複数個並べて配置されている。
【0019】
なお、この実施例では、前記枠状のシール材3を光透過性を有する樹脂により形成し、前記光源12を前記シール材3の外側面に対向させて配置することにより、前記光源12からの照明光を前記シール材3を透過させて前記液晶/高分子複合層4に入射させるようにしている。
【0020】
この高分子分散型液晶表示素子は、観察側から入射した外光を利用して画像を表示するものであり、前記複数の画素はそれぞれ、前記画素電極7と対向電極9との間に電圧を印加しないとき(以下、電圧OFF時という)に明表示になり、前記電極7,9間に液晶分子を基板1,2面に対して実質的に垂直に配向させる電圧を印加したとき(以下、電圧ON時という)に暗表示になる。
【0021】
図2は前記高分子分散型液晶表示素子の1つの画素における外光を利用する表示の模式図であり、(a)は電圧OFF時、(b)は電圧ON時を示している。なお、この図では、立体的な網状にポリマー化した高分子ネットワーク5を太線で示している。
【0022】
図2(a)のように、電圧OFF時は、前記液晶/高分子複合層4の液晶分子6aが様々な方向に向いているため、観察側から入射した光13が、前記液晶/高分子複合層4と前記液晶6とのランダムな界面により散乱され、その散乱光が観察側へ出射する。なお、前記液晶/高分子複合層4において散乱された光のうちの観察側とは反対側に向かう光は、後基板2の内面の反射面10により鏡面反射され、前記液晶/高分子複合層4により再び散乱されて観察側へ出射する。
【0023】
そのため、電圧OFF時は、観察側から入射した光13の散乱光14が観察側へ出射し、前記画素の表示が明表示になる。
【0024】
また、図2(b)のように、電圧ON時は、前記液晶/高分子複合層4の液晶分子6aが基板1,2面に対して実質的に垂直に配向するため、観察側から入射した光13が、前記液晶/高分子複合層4を散乱されずに透過し、その光が前記反射面10により鏡面反射され、前記液晶/高分子複合層4を再び散乱されずに透過して観察側へ出射する。
【0025】
そのため、電圧ON時は、観察側へ出射する光が、観察側から入射した光13の正反射光15であり、この正反射光15は観察者の方向へは出射しないので、前記画素の表示が暗表示になる。
【0026】
すなわち、前記正反射光15は、観察側から入射した光13の入射角に対応した出射角で出射するため、観察者の眼に観察される光の量は少なく、したがって、前記画素の表示が暗表示になる。
【0027】
さらに、前記高分子分散型液晶表示素子は、前記液晶/高分子複合層4の側方に、前記液晶/高分子複合層4に向けて照明光を照射する光源12を配置しているため、前記光源12の点灯により、この光源12からの光を利用する表示も行うことができる。
【0028】
図3は前記高分子分散型液晶表示素子の1つの画素における前記光源12からの照明光を利用する表示の模式図であり、(a)は電圧OFF時、(b)は電圧ON時を示している。
【0029】
図3(a)のように、電圧OFF時は、前記液晶/高分子複合層4の液晶分子6aが様々な方向に向いているため、前記光源12から照射され、前記液晶/高分子複合層4にその側方から入射した光16が、前記液晶/高分子複合層4と前記液晶6とのランダムな界面により散乱され、その散乱光が観察側へ出射する。なお、前記液晶/高分子複合層4において散乱された光のうちの観察側とは反対側に向かう光は、後基板2の内面の反射面10により鏡面反射され、前記液晶/高分子複合層4により再び散乱されて観察側へ出射する。
【0030】
そのため、電圧OFF時は、観察側から入射した光13の散乱光14が観察側へ出射し、前記画素の表示が明表示になる。
【0031】
また、図3(b)のように、電圧ON時は、前記液晶/高分子複合層4の液晶分子6aが基板1,2面に対して実質的に垂直に配向するため、前記光源12から照射され、前記液晶/高分子複合層4にその側方から入射した光16が、散乱されること無く、前記液晶/高分子複合層4を横切る方向に透過する。
【0032】
そのため、電圧ON時は、観察側へはほとんど光が出射せず、前記画素の表示が黒の暗表示になる。
【0033】
なお、前記光源12は、白色光を発するものでも、着色光を発するものでもよく、着色光を発する光源を備えることにより、前記電圧ON時の明表示を着色表示にすることができる。
【0034】
前記光源12は、図2に示した外光を利用する表示において補助光源として点灯させてもよく、このようにすることにより、低照度の環境下でも、充分な明るさの表示を得ることができる。
【0035】
また、前記高分子分散型液晶表示素子は、前記液晶/高分子複合層4を挟んで対向配置された一対の基板1,2のうちの前基板1の内面に、複数の画素電極7及び複数の能動素子(TFT)8を設け、後基板2の内面に、前記複数の画素電極7の配列領域に対応させて一枚膜状の対向電極9を設け、さらに前記後基板2の内面に、前記複数の画素電極7それぞれと前記対向電極9とが互いに対向する領域からなる複数の画素を配列した表示領域の略全体に対応させて、前記液晶/高分子複合層4側から入射した光を鏡面反射する反射面19を形成しているため、前記複数の画素の全ての電極7,9間にON電圧を印加し、前記液晶/高分子複合層4の全域の液晶分子6aを前記基板1,2面に対して実質的に垂直に配向させることにより、前記複数の画素を配列した表示領域の全域において、観察側から入射した光の正反射光を観察側へ出射することができる。
【0036】
そのため、前記高分子分散型液晶表示素子は、上述した画像の表示を行うだけでなく、使用者の顔等を映して見るための鏡としても利用することができる。
【0037】
さらに、前記高分子分散型液晶表示素子は、前記対向電極9を、前記液晶/高分子複合層4に対向する表面が鏡面に形成された金属膜により形成し、この対向電極9の表面を前記反射面10としているため、製造工程を簡略化することができる。
【0038】
また、前記分子分散型液晶表示素子は、前基板1の外面に、外光の表面反射を抑制するための表面反射抑制面11aを形成しているため、高照度の環境下でも、外光が前記観察側の基板1の外面で反射されて画面がぎらついて見えることは無い。
【0039】
なお、上記実施例では、前記対向電極9を金属膜により形成し、この対向電極9の表面を反射面10としているが、後基板2の内面に金属膜を成膜して反射面を形成し、その上にITO膜等からなる透明な対向電極を形成してもよい。
【0040】
また、上記実施例の分子分散型液晶表示素子は、一対の基板1,2間にネットワーク型の液晶/高分子複合層4を設けたものであるが、液晶/高分子複合層は、高分子中にカプセル化された液晶を分散させたカプセル型液晶/高分子複合層でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の一実施例を示す高分子分散型液晶表示素子の断面図。
【図2】前記高分子分散型液晶表示素子の1つの画素における外光を利用する表示の模式図。
【図3】前記高分子分散型液晶表示素子の1つの画素における前記光源12からの照明光を利用する表示の模式図。
【符号の説明】
【0042】
1…前基板(観察側の基板)、2…後基板(反対側の基板)、3…シール材、4…液晶/高分子複合層、5…高分子ネットワーク、6…液晶、6a…液晶分子、7…画素電極、8…TFT(能動素子)、9…対向電極、10…反射面、11…無反射または低反射フィルム、11a…表面反射抑制面、12…光源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子中に液晶が分散された液晶/高分子複合層と、
前記液晶/高分子複合層を挟んで対向配置された観察側とその反対側の一対の基板と、
前記観察側の基板の前記液晶/高分子複合層に対向する内面にマトリックス状に配列させて設けられた複数の画素電極及びこれらの画素電極にそれぞれ駆動信号を印加するための複数の能動素子と、
前記反対側の基板の前記液晶/高分子複合層に対向する内面に前記複数の画素電極の配列領域に対応させて設けられた一枚膜状の対向電極と、
前記反対側の基板の内面に、前記複数の画素電極それぞれと前記対向電極とが互いに対向する領域からなる複数の画素を配列した表示領域に対応させて形成され、前記液晶/高分子複合層側から入射した光を鏡面反射する反射面と、
を備えることを特徴とする高分子分散型液晶表示素子。
【請求項2】
対向電極は、液晶/高分子複合層に対向する表面が鏡面に形成された金属膜により形成され、反射面は、前記対向電極の表面からなっていることを特徴とする請求項1に記載の高分子分散型液晶表示素子。
【請求項3】
観察側の基板の外面に、外光の表面反射を抑制するための表面反射抑制面が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子分散型液晶表示素子。
【請求項4】
液晶/高分子複合層の側方に、前記液晶/高分子複合層に向けて照明光を照射する光源が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子分散型液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−181069(P2009−181069A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21858(P2008−21858)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】