説明

高分子材料

高分子材料の製造方法が記載されている。その方法は、式(I)の化合物を式(II)の化合物と接触、例えば、重縮合させることを備える。各Xは塩素原子及びフッ素原子からなる群より選択され、nは1,2又は3を示し、各Yはアルカリ金属原子及び水素原子からなる群より選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料に関し、特に、限定されないがポリアリールエーテルケトン含有反復単位を備える高分子材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルエーテルケトンは、ビクトレックス・ピーエルシー社から登録商標名ビクトレックピークで市販される周知の高性能熱可塑性物質である。そのガラス転移温度(Tg)は143℃であり、融点(Tm)は343℃である。用途によっては、Tgがより高いポリアリールエーテルケトン材料を利用することが好ましい。しかしながら、一般に、Tgがより高いポリアリールエーテルケトンはそのTmもより高くなっている。これは、例えば、押出成形装置又は射出成形装置にて材料を溶融するためには、より高温で加熱しなければならないことを意味する。これは、エネルギー利用の観点から不利となる。更に、材料のTmが高いほど、融解処理中に、その材料は分解温度により近くなる。そのため、高Tm材料は、溶融処理温度を慎重に制御しない限り、融解処理中に部分的に分解されてしまう虞がある。
【0003】
1990年代前半に、多国籍化学薬品会社ビーエーエスエフ(BASF)は、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)の高分子材料をUltraPEKの登録商標で製造及び販売していた。その材料は、以下の図式
【0004】
【化1】

に従って、4,4’−ジフェンオキシベンゾフェノンを塩化テラフタロイル及び三塩化アルミニウムの存在下で反応させて求電子プロセスによって調製されていた。
【0005】
出願人は、表1にて報告するように、本明細書に記載の方法を用いてUltraPEK(登録商標)を試験し、Tgが161℃であり、Tmが380℃であることを測定した。UltraPEK(登録商標)は数年間販売されたが、販売から撤退された。その高分子の処理時間枠は(Tmが高いため)比較的狭くなっている。これは、材料を慎重に処理する必要があることを意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の問題を検討することにある。本発明の別の目的は、比較的Tgが高く(しかしながら、Tmは許容レベルである)ポリアリールエーテルケトンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に従って高分子材料の製法が提供される。その製法は以下の式
【0008】
【化2】

の化合物を式
【0009】
【化3】

の化合物と接触、例えば、重縮合させることを備える。式中、各Xは塩素原子とフッ素原子からなる群より選択され、nは1,2又は3を示し、各Yはアルカリ金属原子及び水素原子からなる群より選択される。
【0010】
特に記載しない限り、本明細書に記載の高分子材料の分子量は、0.5×3.175mmの炭化タングステンダイを用いた400℃、1000s−1のせん断速度で稼動するキャピラリーレオメトリーを用いて高分子材料の溶融粘度(MV)を測定して評価することができる。
【0011】
特に記載しなければ、本明細書に記載の高分子材料のガラス転移温度(Tg)は、以下の実施例4に記載するように測定される。
特に記載しなければ、本明細書に記載の高分子材料の溶融温度(Tm)は、以下の実施例4に記載するように測定される。
【0012】
特に記載しなければ、高分子材料は、以下の実施例3に記載するように評価されるとき、本明細書において「強靭である」と記載される。
本方法は、式I及びIIの化合物を以下の化合物III〜V
【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

からなる群より選択した一又は複数の化合物と接触させることを含む。式中、Y,Y,Yは、アルカリ金属原子及び水素原子からなる群とは無関係に選択される。
【0016】
好ましくは、前記方法が化合物III、IV及びVの少なくとも一つを含む場合、各Y,Y及びYの少なくとも一つは同じ原子を示すことが好ましい。前記方法にて用いられる各Y,Y,Y及びYの少なくとも一つは同じ原子を示すことが好ましい。
【0017】
前記方法は、化合物III〜Vのうちの一化合物のみが存在する条件下で、又は式III〜Vの全ての化合物が存在しない条件下で化合物I及びIIの接触を含むことができる。
【0018】
前記方法は、式III〜Vの全ての化合物が存在しない条件下で行われることが好ましい。
前記方法において接触させる式Iの化合物のモル数と式IIの化合物のモル数との比率は1〜4の範囲であり、適切には1〜3の範囲であり、好ましくは1〜2の範囲、より好ましくは1〜1.5の範囲、特に好ましくは1〜1.1の範囲である。
【0019】
式Iの化合物のモル数と式II,III,IV及びV(提供される場合)の化合物の総モル数との比率は1〜4の範囲であり、適切には1〜3の範囲であり、好ましくは1〜2の範囲、より好ましくは1〜1.5の範囲、特に好ましくは1〜1.1の範囲である。
【0020】
式Iの化合物のモル数はOY,OY,OY又はOYの官能基を含む他の単量体のモル数より大きいことが好ましい。
適切には、式Iの化合物のモル数と式II,III,IV又はV(提供される場合)の化合物のモル数との比率は1.0より大きく、好ましくは1.01より大きく、より好ましくは1.015より大きい。その比率は1.1未満であり、好ましくは1.06未満、より好ましくは1.04未満、特に好ましくは1.03未満である。
【0021】
好ましくは、式Iの一化合物のみが前記方法において用いられる。
好ましくは、式IIの一化合物のみが前記方法において用いられる。
前記高分子材料は、化合物I及びIIを伴う求核置換反応により前記方法において製造することが好ましい。適切には、求核試薬は化合物IIから(及び/又は提供される場合、化合物III,IV又はVから)得られ、そのような求核試薬は、適切には重縮合反応において化合物Iと反応させてXを置換する。
【0022】
がアルカリ金属を示す場合、ナトリウム又はカリウム、ルビジウム又はセシウムから選択することができる。Yはナトリウム又はカリウムから選択することが好ましい。当然のことながら、この場合、化合物IIは末端基が−ONa又は−Oの塩を示す。一実施形態において、前記方法は、Yがアルカリ金属を示す式IIの化合物(化合物IIは塩を表す)を選択することを備える。選択された塩は、式Iの化合物と接触可能な容器内に導入される。従って、この場合、塩を予め形成した後、前記化合物Iと反応させることができる。別の好ましい実施形態において、各Yが水素原子を示す式IIの化合物を選択でき、そのような化合物は、化合物IIが化合物Iと接触可能な容器内に導入することができる。後者の実施形態によって、ナトリウム・フェノキシド又はカリウム・フェノキシドのような高い感水性があって、かつ潜在的に爆発性の塩を調製及び単離する必要姓がなくなる。
【0023】
一又は適切には、各Yは水素原子を示す式IIの化合物が選択されて容器内に導入される場合、前記方法は、式I及びIIの化合物を前記容器内の塩基と接触させることを含む。前記塩基は、アルカリ金属の炭酸塩又は重炭酸塩を含むことが好ましい。前記炭酸塩又は重炭酸塩におけるアルカリ金属は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択することができる。塩基、例えば、炭酸塩の性質は、高分子材料を形成する反応速度に作用する。一般に、前記方法において塩基が強いほど、フェノキシド部分の形成が速くなり、I及びIIの重縮合反応が速くなる。しかし、重縮合反応が速すぎると、実質的に架橋化されたゲルである高分子材料が形成されてしまう虞があり、比較的低いMV及び弱い熱(又は他の)特性の少なくとも一つを備えることがある。
【0024】
好ましくは、前記炭酸塩又は重炭酸塩におけるアルカリ金属は、ナトリウム又はカリウムである。前記塩基は、少なくとも幾らかの炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムを含むことが好ましい。適切には、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムは、前記方法にて用いられる炭酸塩又は重炭酸塩の総量の少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも91モル%、特に好ましくは少なくとも95モル%を構成する。特に好ましい実施形態において、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムは、前記方法にて用いられる炭酸塩又は重炭酸塩の98モル%よりも多くを構成する。炭酸ナトリウムは重炭酸ナトリウムよりも好適であるため、前述のモル%は、炭酸ナトリウム単独で適用されることが好ましい。
【0025】
一又は適切には、各Yは水素原子を示す式IIの化合物が前記方法において選択される場合、用いられる塩基、例えば炭酸塩/重炭酸塩の量は、適切には、前記方法にて用いられるヒドロキシル基含有化合物(例えばII〜V)の各陽子を中和するのに要する量を上回る。好ましくは、ヒドロキシル基含有化合物(例えばII〜V)のモルの総数と前記塩基における陽子許容部分のモル数との比率は1.0未満、好ましくは0.99未満である。前記比率は0.95より大きく、好ましくは0.96より大きく、より好ましくは0.97より大きくなる可能性がある。従って、ヒドロキシ含有単量体だけが化合物IIであり、炭酸アルカリ金属が用いられる場合、化合物IIのモル数と炭酸塩のモル数との比率は、各モルの化合物IIが二個のヒドロキシ基を含み、各炭酸塩分子は二個の陽子を受容(及び/又は中和)できるとの理由のため記載した通りになる。
【0026】
記載されている塩基を用いた場合、前記塩基中の陽子受容部分のモル数と前記方法にて用いられる化合物IIのモル数との比率は、適切には0.9〜1.1の範囲、好ましくは0.95〜1.05の範囲、より好ましくは約1である。
【0027】
前記方法において、化合物I及びII(及び提供される場合、III〜V)は、溶媒の存在下で接触させることが好ましい。溶媒は式
【0028】
【化7】

である。式中、Wは直接結合、酸素原子又は二個の水素原子であり(一個が各ベンゼン環に付着される)、同じ又は異なるZ及びZ’は水素原子又はフェニル基である。そのような芳香族スルホンの例として、ジフェニルスルホン、二酸化ジベンゾチオフェン、二酸化フェノキサチインと4−フェニルスルホニル・ビフェニルが挙げられる。ジフェニルスルホンは好適な溶媒である。
【0029】
高分子材料の調製に用いられる溶媒(化合物I及びIIの重縮合を促進するため重縮合溶媒と称される)は、少なくとも所望MVの高分子材料が得られるまで、溶液中で前記方法により形成された高分子材料を維持すべく適切に選択される。用いる溶媒が少なすぎる場合、高分子材料は、所望MVが得られる前に沈殿してしまう虞がある。適切には、用いる溶媒(特にジフェニル・スルホン)のモル数と式Iの化合物のモル数との比率は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも4、特に好ましくは少なくとも5である。前記比率は10未満、適切には8未満、より好ましくは7未満、特に好ましくは6未満である。
【0030】
適切には、前記方法にて用いられる溶媒(特に、ジフェニル・スルホン)の重量と式Iの化合物の重量との比率は、少なくとも1、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、特に好ましくは少なくとも3.4である。前記比率は8未満、好ましくは6未満、より好ましくは5未満、特に好ましくは4未満である。
【0031】
好ましくは、前記高分子材料を調製する全ての方法は400℃未満で行われる。即ち、化合物I及びIIが接触した後の温度は、400℃未満に維持されることが好ましい。I及びII(及び用いられる任意の他の単量体)の接触、例えば、重縮合は150℃〜400℃の範囲の温度で行われることが好ましい。最初に、化合物I及びIIを接触させた後、温度を低く保つことによって、任意の比較的揮発性の単量体の損失を回避でき、及び又は副反応が最小限に抑えられる。上記の前記塩基を添加した後、最終高分子が中間段階で溶液中にあるレベルにまで段階的に、又は連続的に昇温させることができる。温度は、その最大値、例えば、約160℃〜約340℃にまで、5時間未満、好ましくは4時間未満、より好ましくは3.5時間未満の時間をかけて上昇させてもよい。続いて、反応混合物をその最大温度で2時間未満維持してもよい。好ましくは、前記塩基を添加した後、反応混合物は6時間未満、好ましくは5時間未満加熱し、その後加熱を終了し、混合物を冷却させる。適切には、反応混合物は、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも3時間かけて加熱される。
【0032】
好ましくは、化合物I及びIIは不活性雰囲気、例えば、窒素ブランケット下で加熱される。
高分子材料の分子量は、X末端基を備える反応物質又はOY,OYなどの末端基を含む反応物質を、等モルより僅かに過剰量だけ用いて制御することができる。好ましくは、例えば、僅かに過剰な量、例えば、最大5モル%のX末端基を含む反応物質が用いられる。これによって、フェノキシド末端基よりむしろハロゲン化物末端基の形成に有利になるため、より大きな熱安定性を備える高分子を提供する。また、重縮合は、分子量が所望レベルに達したときに終結させる。
【0033】
前記高分子材料のMVは、少なくとも0.06kNsm−2であり、好ましくは少なくとも0.08kNsm−2であり、特に好ましくは少なくとも0.085kNsm−2である。MVは、4.0kNsm−2未満であり、適切には2.0kNsm−2未満であり、好ましくは1.0kNsm−2未満であり、より好ましくは0.75kNsm−2未満であり、特に好ましくは0.5kNsm−2未満である。
【0034】
適切には、MVは、0.08kNsm−2〜1.0kNsm−2の範囲であり、好ましくは0.085kNsm−2〜0.5kNsm−2の範囲である。
前記高分子材料は、ASTM(米国試験材料協会)D638に従って測定したとき、少なくとも100MPaの引張強度を有している。引張強度は、105MPaより大きいことが好ましい。引張強度は、100〜120MPaの範囲、より好ましくは105〜110MPaの範囲である。
【0035】
前記高分子材料は、ASTM D790に従って測定したとき、少なくとも145MPa、好ましくは少なくとも150MPa、より好ましくは少なくとも155MPaの曲げ強度を有している。曲げ強度は、好ましくは145〜180MPaの範囲、より好ましくは150〜170MPaの範囲、特に好ましくは155〜160MPaの範囲である。
【0036】
前記高分子材料は、ASTM D790に従って測定したとき、少なくとも3.5GPa、好ましくは少なくとも4GPaの曲げ弾性率を有している。曲げ弾性率は、好ましくは3.5〜4.5GPaの範囲、より好ましくは3.8〜4.4GPaの範囲である。
【0037】
好ましくは、前記方法にて式Iの化合物の少なくとも1kgを選択し、式IIの前記化合物と接触させる。
前記方法において調製される前記高分子材料は、式
【0038】
【化8】

の一部、例えば反復単位を含むことができる。
【0039】
更に、例えば、以下の実施例にて述べるようなエーテル基転移のため、前記方法において、反復単位のスクランブルが存在する。従って、高分子材料は、式
【0040】
【化9】

及び
【0041】
【化10】

の一部、例えば反復単位を含む。
【0042】
従って、好ましくは、前記高分子材料は、以下の二つの部分
【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

の実質的ランダム共重合体を含む。
【0045】
前記高分子材料中のIX及びXの部分の総モル%は、適切には少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも90モル%、特に好ましくは少なくとも95モル%である。特に好ましい実施形態において、前記高分子材料の調製に用いる実質的に唯一の単量体は、上記のI及びIIである(適切には、I及びIIのうちの各々一種類のみが用いられる)。その場合、高分子材料は、適切には本質的にIX及びXの一部からなる。
【0046】
好ましい実施形態において、第1態様の方法は、各Xが塩素原子、又は特にフッ素原子から選択され、nは1を示す式IIの化合物を選択することと、各Yが水素原子を示す式IIIの化合物を選択することとを備える。III〜Vは含まれないことが好ましい。I及びIIのモル数の比率は1より大きいことが好ましい。好ましくは、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムを塩基として用い、任意に炭酸カリウム又は重炭酸カリウムと組み合わせる。しかしながら、炭酸/重炭酸カリウム及び炭酸/重炭酸ナトリウムのモル%の比率は、適切には0〜0.5の範囲、好ましくは0〜0.3の範囲、より好ましくは0〜0.15の範囲である。塩基(例えば炭酸塩/重炭酸塩)の量は、存在するヒドロキシ基含有化合物の各陽子の中和に要する量を上回ることが好ましい。化合物I及びIIは、上記のような溶媒、特にジフェニルスルホン中、上に示したレベルで接触させることが好ましい。
【0047】
有利なことに第1態様の方法を用いることによって、比較的Tgが高く、Tmが許容できる高分子材料を製造することができる。前記材料は、強靭であり(本明細書に記載したように測定した場合)、優れた機械特性及び電気特性を備えている。
【0048】
前記高分子材料のTgは、適切には少なくとも163℃、好ましくは164℃、より好ましくは164.5℃である。Tgは、約165℃である。Tgは180℃未満、175℃未満、170℃未満又は167℃未満である。
【0049】
前記高分子材料のTmは、適切には前述のように測定したとき、380℃未満であり、適切には378℃未満、好ましくは376℃未満、より好ましくは374℃未満、特に好ましくは372℃未満である。Tmは365℃又は370℃より大きくてもよい。
【0050】
前記高分子材料のTm及びTgの比率は、2.32未満、好ましくは2.30未満、より好ましくは2.29未満、特に好ましくは2.28未満である。前記比率は、少なくとも2、又は2.1、又は2.2である。
【0051】
本明細書に記載したように評価するとき、調製された高分子材料は強靭であることが好ましい。
前記高分子材料は半結晶質であることが好ましい。高分子における結晶化度のレベル及び程度は、例えば、ブルンデル及びオズボーン(ポリマー 第24巻、p.953、1983)により記載される広角X線回折(広角X線散乱又はWAXSとも称される)によって測定されることが好ましい。また、結晶化度は、示差走査熱量測定(DSC)によって評価することができる。
【0052】
前記高分子材料の結晶化度のレベルは、少なくとも1%、適切には少なくとも3%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%である。特に好ましい実施形態において、結晶化度は20%より大きく、より好ましくは25%より大きく、特に好ましくは30%より大きくなる。
【0053】
前記高分子材料は、強靭な結晶性熱可塑性高分子材料であることが好ましい。
本発明の第2態様に従って、第1態様に従う方法で調製した高分子材料が提供される。
前記高分子材料は、強靭な結晶性熱可塑性高分子材料であることが好ましい。
【0054】
nは1を示すことが好ましい。
本発明の第3態様に従って、上記の式VIIIの一部、例えば反復単位を含む高分子材料が提供される。前記高分子材料のTgは、本明細書に記載されるように測定したとき、少なくとも162℃である。
【0055】
前記高分子材料は、強靭な結晶性熱可塑性高分子材料であることが好ましい。
nは1を示すことが好ましい。
Tgは少なくとも163℃、好ましくは少なくとも164℃、より好ましくは少なくとも164.5℃である。Tgは170℃未満又は166℃未満である。
【0056】
前記高分子材料のTmは385℃未満、適切には379℃未満、好ましくは378℃未満、より好ましくは377℃未満、特に好ましくは376℃未満である。特に好ましい実施形態において、Tmは374℃未満又は373℃未満でさえある。
【0057】
前記高分子材料のTm及びTgの比率は、2.32未満、好ましくは2.30未満、より好ましくは2.29未満、特に好ましくは2.28未満である。前記比率は少なくとも2、又は少なくとも2.1又は2.2である。
【0058】
本発明の第4態様に従って、上記の式VIの一部、例えば反復単位を含む高分子材料が提供される。前記高分子材料のTmは380℃未満である。Tmは第3態様に従って記載した通りになる。前記高分子材料の他の特徴は第1又は第3の態様に記載した通りになる。
【0059】
本発明の第5態様に従って、上記の式VIIの一部、例えば反復単位及び上記の式VIIIの一部、例えば反復単位を含む高分子材料が提供される。
第5態様の前記高分子材料は、本明細書中の他の何れかの態様に記載した高分子材料の何れかの特徴を備えることができる。好ましくは、第5態様の高分子材料は、少なくとも162℃のTg及び380℃未満のTmを備える。Tm及びTgの比率は2.32未満である。
【0060】
好ましくは、高分子材料においてnは1を示す。
本発明の第6態様に従って、式IXの一部、例えば反復単位及び式Xの一部、例えば反復単位を含む実質的ランダム共重合体である高分子材料が提供される。好ましくは、nは1を示す。
【0061】
第6態様の高分子材料は、本明細書中の他の何れかの態様に記載した高分子材料の特徴を備えることができる。
本発明の第7態様に従って、本明細書に記載した高分子材料を備えるパックが提供される。
【0062】
前記パックは、少なくとも1kg、適切には少なくとも5kg、好ましくは少なくとも10kg、より好ましくは少なくとも14kgの材料を含む。前記材料の少なくとも一部は前記高分子材料から構成される。前記パックは、1000kg以下、好ましくは500kg以下の前記材料を含む。好ましいパックは、10〜500kgの前記材料を含む。
【0063】
前記パックは、少なくとも1kg、適切には少なくとも5kg、好ましくは少なくとも10kg、より好ましくは少なくとも14kgの記載した前記高分子材料を含む。前記パックは、1000kg以下、好ましくは500kg以下の前記高分子材料を含むことができる。好ましいパックは、10〜500kgの前記高分子材料を含む。
【0064】
前記パック内の材料は、粉末か顆粒の形態である。
前記パックは、包装材料(廃棄又は再利用を目的とする)を備えることができる。前記包装材料は、前記所望材料を実質的に完全に密閉することが好ましい。前記包装材料は、前記所望材料が配置される第1容器、例えばプラスチックバッグなどの可撓性を有する容器を備えることができる。第一容器は、例えば段ボール箱などの箱の中の第二容器内に含むことができる。
【0065】
前記高分子材料は、ポリエーテルエーテルケトンの連続使用温度が過度に低い用途で使用することができる。
前記高分子材料は、ポリエーテルエーテルケトンのTgが過度に低い用途で使用することができる。例えば、昇温させる摩擦を部品が受ける幾つかの用途、及び/又は部品がポリエーテルエーテルケトンのTg(143°)より高い温度で有意な負荷に晒される用途では、ポリエーテルエーテルケトンを前記部品の作製ために使用することはできない。
【0066】
従って、第8態様において、本発明は、使用時に145℃より高い(例えば、150℃、155℃、160℃又は163℃より高い)温度で負荷を受ける条件下で用いられる部品の製造方法を提供する。前記方法は、本明細書に記載される高分子材料から部品を形成することを備える。
【0067】
前記部品の少なくとも一表面が前述した温度である場合、前記部品は記載したような負荷を受ける可能性がある。例えば、前記表面とは、摩擦に起因して前述した温度に達する可能性のある磨耗表面である。場合によっては、前記部品の表面及びバルクの両方が前記温度に達する可能性がある。
【0068】
前記方法は、前記部品の製造において、射出成形、押出、熱成形、回転成形又は圧縮成形などのステップを含むことができる。前記方法は、前記部品の製造において射出成形又は押出を含むことが好ましい。
【0069】
使用する環境によっては、前記部品は少なくとも150℃、適切には少なくとも155℃、好ましくは少なくとも160℃のTgを備える必要があるかもしれない。
第9態様において、本発明は、環境、例えば機械、装置又はデバイスに使用される部品に及ぶ。前記部品は、使用時に150℃よりも温度が高いときに負荷を受ける。前記部品は、本明細書に記載される高分子材料を備える。
【0070】
前記部品の少なくとも一表面が前述した温度に達するとき、前記部品は、記載されるような負荷を受ける可能性がある。例えば、前記表面は、摩擦に起因して前述した前記温度に達する磨耗表面である可能性がある。場合によっては、前記部品の表面及びバルクの両方が前記温度に達する可能性がある。
【0071】
前記部品は、適切には1mm〜400mm、好ましくは5mm〜350mm、最も好ましくは8mm〜300mm、特に10mm〜250mmの外径を有するパイプ、及びそのパイプから製造された機械加工部品、旋盤仕上げ部品、ドリル仕上げ部品、挽部品、破砕部品又は溶接部品などを含む。
【0072】
前記部品は、適切には厚さが1ミクロン〜1000ミクロン、好ましくは2ミクロン〜500ミクロン、最も好ましくは5ミクロン〜250ミクロンのフィルム又はテープを含むことができる。
【0073】
前記部品は、適切には直径が1mm〜500mm、好ましくは2mm〜400mm、最も好ましくは3mm〜300mm、特に3mm〜250mmの押出棒、及びその押出棒から製造された機械加工部品、旋盤仕上げ部品、ドリル仕上げ部品、挽部品、破砕部品又は溶接部品などを含む。
【0074】
前記部品は、適切には厚さが2mm〜150mm、好ましくは4mm〜100mm、最も好ましくは5mm〜80mm、特に6mm〜60mmの押出シート、及びその押出シートから製造された機械加工部品、旋盤仕上げ部品、ドリル仕上げ部品、挽部品、破砕部品又は溶接部品などを含むことができる。
【0075】
前記部品は、押出成形物、及びその押出成形物から製造された機械加工部品、旋盤仕上げ部品、ドリル仕上げ部品、挽部品、破砕部品又は溶接部品をなど含む。
前記部品は、適切には直径が1ミクロン〜1000ミクロン、好ましくは2ミクロン〜500ミクロン、最も好ましくは5ミクロン〜250ミクロンの繊維を含むことができる。
【0076】
第10態様において、本発明は、第8態様に記載するように製造された部分、又は第9態様に記載する部分が組み込まれた機械、装置又はデバイスに及ぶ。
第11態様において、記載した高分子材料及び充填材手段を含む複合材料が提供される。
【0077】
前記充填材手段は、繊維充填材又は非繊維充填材を含む。前記充填材手段は、繊維充填材及び非繊維充填材の両方を含むことができる。
前記繊維充填材は、連続性又は非連続性である。好ましい実施形態において、前記繊維充填材は非連続性である。
【0078】
前記繊維充填材は、アラミド繊維及び炭素繊維などの無機繊維材料、非溶融性及び高溶融性を有する有機繊維材料から選択することができる。
前記繊維充填材は、ガラス繊維、炭素繊維、アスベストス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、ホウ素繊維、フッ化炭素樹脂繊維及びチタン酸カリウム繊維から選択することができる。好ましい繊維充填材はガラス繊維及び炭素繊維である。
【0079】
繊維充填材はナノ繊維を備えることができる。
前記非繊維充填材は、マイカ、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、フェライト、粘土、ガラス粉末、酸化亜鉛、炭酸ニッケル、酸化鉄、石英粉末、炭酸マグネシウム、フッ化炭素樹脂、黒鉛、炭素粉末、ナノチューブ及び硫酸バリウムから選択することができる。非繊維充填材は、粉末又はフレーク状粒子の形態で導入することができる。
前記複合材料は、30〜80重量%の前記高分子材料、及び20〜70重量%の充填材手段を含むことが適切である。前記複合材料は、30〜70重量%の高分子材料、及び30〜70重量%の充填材手段を含むことが好ましい。
【0080】
第7〜第10態様の何れかの高分子材料は、第11態様に従って記載される複合材料の構成成分であってもよい。
本明細書に言及される単量体は市販のもの、或いは、ケー・エー・ウォーカー)、エル・ジェー・マコーリ、ジェー・エス・ムーアらによる高分子 第26巻、p.3713、1993年に記載の方法で製造できる。
【0081】
本明細書に記載の発明の態様又は実施形態の特徴は、いずれも必要な変更を加えて、本明細書中の他の発明の態様又は実施形態のあらゆる特徴と組み合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
次に、本発明を具体化した実施形態を、例示目的で、添付の図面を参照して説明する。
(実施例1−ポリエーテルケトンエーテルケトンケトンの調製)
クイックフィットすりガラス栓、撹拌機/撹拌機ガイド、窒素の注入口及び排出口を備えた1lのフランジ付きフラスコに、1,4−ビス(4−フルオロベンゾイル)ベンゼン(131.51g、0.408モル)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(85.69g、0.4モル)、及びジフェニルスルホン(493.60g)を充填し、窒素で1時間以上パージした。次に、内容物を窒素ブランケット下で160℃に加熱して、ほぼ無色の溶液を調整した。窒素ブランケットを維持しながら、乾燥炭酸ナトリウム(43.24g、0.408モル)を加えた。1℃/分で340℃にまで昇温して、90分間保持した。フラスコから注がれた反応混合物には粘性があった。
【0083】
反応混合物を放冷して粉砕し、アセトン及び水で洗浄した。得られた高分子を空気乾燥器中120℃で乾燥して、粉末を生成した。高分子は、400℃、1000s−1で0.44kNsm−2の溶融粘度を有していた。
【0084】
(実施例2−(比較用)−BASF UltraPEK(登録商標)ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン)
BASF Ultrapek(登録商標)の試料の400℃、1000s−1での溶融粘度は、0.45kNsm−2であることが認められた。
【0085】
(実施例3−ポリエーテルケトンエーテルケトンケトンの圧縮成形フィルム)
実施例1及び2由来の高分子は、以下に述べる手順に従って圧縮成形した。
約5gの高分子を乾燥器中150℃で少なくとも3時間置く。
【0086】
プレスプラテンを400℃に設定し、この温度で安定化させる。
200mm×200mmのアルミホイル片を1mmの厚さの受け板上に置く。
5.0±0.1gの乾燥高分子を秤量し、アルミホイルの中央に置き、200mm×200mmのアルミホイル片と厚さが1mmの受け板とを用いて覆う。
【0087】
この組立品をプレス内に置く。
プレスのプラテンをゼロ圧に閉め、4分間放置する。
プレスの圧力を5,10,15,20トンに増大させ、各圧力で通気する。各圧力で1又は2秒間保持するだけでよい。
【0088】
20トンで5分間保持する。
試料をプレス内で30分間かけて400℃から120℃に冷却し、厚さが約0.2mmの薄い半結晶性フィルムを生成する。生成されたフィルムを(蝶番を中心に形成されたフィルムの二面のため)180°蝶番で動かし、それに続いて、形成された折り目を中心に(蝶番を中心にフィルムの両側の対向面が交互に互いに触れるように)360°蝶番で動かすことを5回繰り返した。フィルムが破断(例えばパキッと折れたり、裂けたり)しなければ、強靭であるものとみなした。そうでなければ、脆いとみなす。その結果を以下の表1に示す。
【0089】
(実施例4−ポリエーテルケトンエーテルケトンケトンのガラス転移温度(Tg)と溶融温度(Tm))
実施例1及び2のポリエーテルケトンエーテルケトンケトンのガラス転移温度(Tg)と溶融温度(Tm)とは、窒素下、及び40ml/minの流速で、ティー・エー・インスツルメント社のDSC Q100における10mg±10μgのポリエーテルケトンエーテルケトンケトンの粉末試料を試験する示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。
【0090】
走査手順は以下の通りであった。
ステップ1 以前の熱履歴を消去するため、試料を30℃から450℃に20℃/分で加熱することによって、予備熱サイクルを実施及び記録する。
【0091】
ステップ2 2分間保持する。
ステップ3 10℃/分で30℃に冷却し、5分間保持する。
ステップ4 20℃/分で30℃から450℃に加熱し、Tg及びTmを記録する。
【0092】
得られた曲線から、Tgの開始は、転移前の基線に沿って引いた直線と、転移中に得られた最大傾斜に沿って引いた直線との交点として得られた。Tmは、融解吸熱の主ピークが最大値に達する温度であった。
【0093】
融合熱(DH(J/g))は、融解吸熱が比較的直線状の基線から外れる二つの点を結ぶことにより得られた。時間の関数とする吸熱下の積分面積は、転移のエンタルピ(mJ)をもたらす。融合の質量正規化熱は、エンタルピを試料の質量で割ることによって演算される(J/g)。結晶化レベル(C(%))は、試料の融合熱を全結晶性高分子の融合熱で割ることによって測定される。データが入手できるポリエーテルケトンの融合熱は160J/gである。
【0094】
実施例の結果を表1に要約する。
【0095】
【表1】

(実施例5−ポリエーテルケトン・エーテルエーテルケトンの射出成形と機械特性)
実施例1に記載した工程を繰り返すことによって、約2kgの高分子を生成し、バレル温度420℃、ノズル温度190℃、成形温度190℃、保持圧力100バール及びスクリュー速度100rpmを用いて、機械特性試験用の標準試験片内に射出成形した。BASF UltraPEKポリエーテルケトンエーテルケトンケトンの試験片を同じ方法で調製した。機械特性を測定し、結果を下方の表2に列挙する。
【0096】
【表2】

(a)ASTM D638
(b)ASTM D790
(c)ASTM D790
(d)ASTM D256
(実施例6−ポリエーテルケトン・エーテルケトンケトンの射出成形と機械特性)
実施例5に記載の工程を繰り返した。そして、バレル温度405℃、ノズル温度190℃、成形温度190℃、保持圧力100バール及びスクリュー速度100rpmを用いて、2kgの高分子を機械特性試験用の標準試験片内に射出成形した。前記材料は何の問題もなく成形された。また、試験片の機械特性を測定した。その結果を以下の表3に示す。BASF Ultrapekポリエーテルケトンエーテルケトンケトンの試験片は、高分子が射出成形機内で連続的に凍結するこれらの条件下で成形することができなかった。
【0097】
【表3】

(a)ASTM D638
(b)ASTM D790
(c)ASTM D790
(a)ASTM D256
(考察)
表1から明らかなように、実施例1に記載したように調製したポリエーテルケトン・エーテルケトンケトンは、有利なことにUltraPEK(登録商標)材料より約4℃高いTgを有している。このようなTgの有意な増加は、例えば、高分子材料の必要な連続使用温度が260℃より高いことが要求される状況下での高分子の使用を可能にする。そのような状況が自動車の用途にて広がっている。更に、実施例1の高分子は、有利なことにUltraPEK(登録商標)高分子よりも低いTmを有している。これは、溶融処理が容易になり、及び又は、処理時間帯がより一層広くなることを意味する。
【0098】
更に、表2に示すように、実施例1の高分子は、記載した幾つかの重要な機械特性、例えばノッチ衝撃を有している。
驚くべきことに、実施例1及び2の高分子は異なる特性を備えている。その違いは、調製の際の異なるプロセスによるものと考えられる。具体的には、UltraPEK(登録商標)は、本明細書の導入にて記載した求電子プロセスにより製造されていたが、実施例1の手順は、以下の理論に示す求核プロセスを含む。
【0099】
そのプロセスにおいて、−OH基の酸素原子は、塩基(炭酸塩)の存在下でフッ素原子に結合した炭素原子と反応してフッ素イオンを置き換える。僅かに過剰のフッ素含有単量体は、高分子の末端がフッ素であることを確実にする。
【0100】
実施例1及び2のプロセスは、異なる高分子をもたらすように見える。これに関して、実施例2のUltraPEK(登録商標)の試料を硫酸中で13C NMR分光法によって分析した。得られたスペクトルを図2に示す。実施例1の材料のスペクトルを図1に示すが、図2よりも複雑であることに注目すべきである。図1のスペクトルは、高分子が−エーテル−フェニル−ケトン−フェニル−及び−エーテル−フェニル−ケトン−フェニル−ケトン−フェニル配列を備えたランダム共重合体であることに基づいて解釈される。そのような配列の形成は、エーテル基転移プロセスが生じて、その結果、電子不足エーテル基がフッ素イオン又はフェノールイオンによる求核置換を受け易いことから説明できる。
【0101】
出願人は、あらゆる理論によって制約されることを望まない。しかしながら、−エーテル−フェニル−ケトン−フェニル−及び−エーテル−フェニル−ケトン−フェニル−ケトン−フェニル−配列の形成に対する説明は、以下の理論において提供される。
【0102】
以下の理論を参照すれば、図1に記載の単量体は、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンに対してE−K−E(「E」はエーテル部分を示し、「K」はケトン部分を示し、E部分とK部分との間のフェニル部分は明瞭化のため省略される)と記載され、1,4−ビス(4−フルオロベンゾイル)ベンゼンに対してはKKと記載されている。
【0103】
理論を参照すれば、図示されるポリエーテルケトンエーテルケトンケトン反復単位には、フッ素イオン(F−1)(又はフェノールイオン)(表示なし)による攻撃に対して二つの選択肢が存在する。選択肢1において、F−1は、−EKEKKEKEKK−単位の第二EK単位を攻撃する。その結果、エーテル部分と隣接するフェニル基との間の結合が開裂され、続いて、別の単量体(KK及びEKE)と反応して−EKE及びFKKEKEKK−を生成する。−EKE及びFKKEKEKK−は、当然のことながら、出発配列と同じEKEKK及びEKEKKEKEKKを生成する。従って、選択肢1に従うFの攻撃は、高分子材料における反復単位の配置に対して全体的な変化を形成しない。
【0104】
しかしながら、選択肢2において、Fは−EKEKKEKEKK−単位の第三EK単位を攻撃し、それによって、エーテル部分と隣接するフェニル基との間の結合が開裂され、−EKEKKE及び−FKEKK−単位を生成する。これらの単位が更に別の単量体(KK及びEKE)と反応した場合、単位−EKEKKEKK−及び−EKEKEKK−が形成される。この場合、規則的なEKEKK反復単位において存在しない配列、即ちEKEKKEKK及びEKEKEKKが生成されることに注目すべきである。従って、高分子は、EK及びEKKの配列の実質的なランダム共重合体であるように見える。
【0105】
【化13】

【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】実施例1の高分子材料の13C NMRスペクトル。
【図2】実施例2の高分子材料の13C NMRスペクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料を製造する方法であって、

【化1】

の化合物を式
【化2】

の化合物と接触させることを備え、
各Xは塩素原子及びフッ素原子からなる群より選択され、nは1,2又は3を示し、各Yはアルカリ金属原子及び水素原子からなる群より選択される方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記方法において接触させられる式Iの化合物のモル数と式IIの化合物のモル数との比率は1〜4の範囲である方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、
式Iの化合物のモル数は、式IIの化合物のモル数より大きい方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の方法において、
各Yは水素原子を示し、前記方法は、式I及び式IIの化合物を塩基と接触させることを備える方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、
前記塩基は、炭酸アルカリ金属又は重炭酸アルカリ金属を含む方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の方法において、
化合物I及びIIは式
【化3】

の溶媒の存在下で接触させられ、
Wは直接結合、酸素原子又は二個の水素原子であり(一個が各ベンゼン環に付着される)、ZとZ’は同じ又は異なる水素原子、或いはフェニル基である方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の方法において、
最大5モル%までの過剰量のX末端基を含む反応試薬を用いる方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の方法において、
前記高分子材料のMVは少なくとも0.06kNsm−2である方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の方法において、
調製される前記高分子材料は式
【化4】

の一部を含む方法。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の方法において、
前記高分子材料は以下の二つの部分
【化5】

【化6】

の実質的ランダム共重合体を含む方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、
前記高分子材料は本質的に部分IX及びXからなる方法。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の方法において、
前記方法は、
各Xが塩素原子又はフッ素の原子から選択され、nは1を示す式Iの化合物を選択することと、
各Yが水素原子を示す式IIの化合物を選択することと
を備え、
式I及び式IIのモル数の比率は1より大きく、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムを塩基として使用する方法。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか一項に記載の方法において、
前記高分子材料は少なくとも163℃であって、380℃未満のTgを備え、前記高分子材料のTmとTgとの比率は2.32未満であり、少なくとも2である方法。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載の方法において調製される高分子材料。
【請求項15】
nは1,2又は3を示す式
【化7】

の一部を含む高分子材料であって、前記高分子材料は少なくとも162℃のTgを備える高分子材料。
【請求項16】
請求項15記載の高分子材料において、
前記高分子材料は、強靭な結晶性熱可塑性高分子材料である高分子材料。
【請求項17】
請求項15又は16記載の高分子材料において、
nは1を示す高分子材料。
【請求項18】
請求項15〜17の何れか一項に記載の高分子材料において、
前記高分子材料のTgは少なくとも163℃であって、170℃未満である高分子材料。
【請求項19】
請求項15〜18の何れか一項に記載の高分子材料において、
前記高分子材料は378℃未満のTmを有する高分子材料。
【請求項20】
請求項15〜19の何れか一項に記載の高分子材料において、
前記高分子材料のTmとTgとの比率は2.32未満である高分子材料。
【請求項21】
nは1,2又は3を示す式
【化8】

の一部を含む高分子材料であって、前記高分子材料のTmは380℃未満である高分子材料。
【請求項22】

【化9】

の一部と、式
【化10】

の一部とを含む高分子材料であって、nは1,2又は3である高分子材料。
【請求項23】

【化11】

【化12】

の一部を含む実質的ランダム共重合体である高分子材料であって、nは1,2又は3である高分子材料。
【請求項24】
請求項14〜23の何れか一項に記載の高分子材料及び充填材手段を含む複合材料。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−545038(P2008−545038A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518945(P2008−518945)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001954
【国際公開番号】WO2007/003872
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(501097318)ビクトレックス マニュファクチャリング リミテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】VICTREX MANUFACTURING LIMITED
【Fターム(参考)】