説明

高分子量分散剤組成物の製造および使用

本発明の態様では、ポリマー酸と親水性アミンの反応生成物である高分子量分散剤を開示する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本出願は、2009年12月2日付けで出願した米国特許出願番号61/266,049(引用することによって本明細書に組み入れられる)による優先権を請求するものである。
【政府援助研究開発に関する供述】
【0002】
該当なし。
【技術分野】
【0003】
本発明は一般に高分子量分散剤組成物、特にポリマー酸と親水性アミンの反応生成物から生じさせた新規な組成物およびそれらを水性分散液用途で用いることに関する。
【背景技術】
【0004】
今よりも良い分散配合物を提供することに関する注目が増していることから、水性系の使用の方が油が基になった対応物の使用よりも好適である。しかしながら、現在の水性分散液は、顔料充填率が低いこと、要求される粒径が大きいこと、発泡性能が劣ることおよび不安定であることなどの如き欠点を有する。
【0005】
この上に挙げた問題を克服しようとして特許文献1に示されている如き分散剤が開発された。特許文献1には硫黄を含有する一連の分散剤が記述されており、それらの製造は縮合反応で行われる。そのような縮合反応は高い温度が必要でありかつ反応を完了させるには水を除去する必要があると言った欠点を有する。水除去の補助として、その反応を減圧下で実施する必要があり得る。そのような欠点が理由で他の分散剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,846,882号
【いくつかの好適な態様の簡単な要約】
【0007】
本発明の態様では、ポリマー酸と親水性アミンの反応生成物である組成物を開示する。前記ポリマー酸はアクリル酸とマレイン酸の共重合体である。前記親水性アミンの分子量は少なくとも約100である。
【0008】
本発明の態様では、また、高分子量分散剤および少なくとも1種の分散粒子を含有する分散組成物も開示する。前記高分子量分散剤はポリマー酸と親水性アミンの反応生成物である。前記ポリマー酸はアクリル酸とマレイン酸の共重合体である。前記親水性アミンの分子量は少なくとも100である。
【0009】
本発明の態様では、更に、少なくとも1種の粒子を水性媒体中に分散させる方法も開示する。この方法では、少なくとも1種の粒子および少なくとも1種の高分子量分散剤を準備する。この方法では、少なくとも1種の粒子と高分子量分散剤を水性媒体中で一緒にする。前記高分子量分散剤はポリマー酸と親水性アミンの反応生成物である。前記ポリマー酸はアクリル酸とマレイン酸の共重合体である。前記親水性アミンの分子量は少なくとも100である。
【0010】
本発明の態様では、更に、高分子量分散剤を製造する方法も開示する。この方法では、アクリル酸とマレイン酸の共重合体を含有して成る少なくとも1種のポリマー酸および分
子量が少なくとも約100の少なくとも1種の親水性アミンを準備する。この方法では、前記少なくとも1種のポリマー酸と少なくとも1種の親水性アミンを温度が100℃未満の非縮合反応で反応させる。1つの態様では、前記ポリマー酸に中和を受けさせておかない。
【0011】
前記は、以下に行う本発明の詳細な説明の理解がより良好になり得るように本発明の特徴および技術的利点の概略をかなり幅広く示したものである。本発明の請求項の主題を構成する本発明の追加的特徴および利点を本明細書の以下に記述する。当業者は本発明の同じ目的を実施する目的でその開示する概念および具体的態様を他の構造物を修正または考案するための基礎として容易に利用することができることを理解すべきである。当業者は、また、そのような相当する構造物は添付請求項に示す如き本発明の精神からも範囲からも逸脱しないことも認識すべきである。
【好適な態様の詳細な説明】
【0012】
本発明の態様では、ポリマー酸と親水性アミンの反応生成物である組成物を開示する。前記ポリマー酸は、アクリル酸とマレイン酸の共重合体を含んで成る。アクリル酸(また2−プロペン酸とも呼ぶ)は式CHCHCOHで表される。これは不飽和カルボン酸である。前記共重合体の2番目の部分はマレイン酸である。マレイン酸はまた(Z)−ブテン二酸、シス−ブテン二酸、マレン酸、マレイン酸またはトキシル酸とも呼ばれる。マレイン酸は式Cで表され、それはジカルボン酸(カルボキシル基を2個有する分子)である。アクリル酸とマレイン酸を反応させて共重合体を生じさせるが、それを本発明のポリマー酸と呼ぶ。本発明の態様では、そのようなアクリル酸とマレイン酸の共重合体のアクリル酸とマレイン酸のモル比を約1:1から約1:7.5のいずれかの比率にしてもよい。そのようなポリマー酸はSigma−Aldrich Co.(セントルイス、MO)からカタログ番号416053の下でポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)が50%の溶液として商業的に入手可能である。
【0013】
本発明の態様では、前記ポリマー酸を分子量が少なくとも約100の親水性アミンと反応させる。本発明の態様における親水性アミンはモノ−第一級アミン、即ち第一級アミンを1個のみ有するアミンである。1つの態様における親水性アミンはポリエーテルモノアミンである。そのポリエーテルモノアミンのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイド(EO/PO)の比率は約58:8から約19:3であってもよい。別の態様では、そのような親水性アミンをジメチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエトキシプロピルアミン、2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノールおよびこれらの組み合わせから選択してもよい。そのような親水性アミンが含有するアミンは1個以上であり得る。いくつかの態様における親水性アミンの分子量は少なくとも約100から約3,000である。1つの態様における親水性アミンの分子量は約1,000である。別の態様における親水性アミンの分子量は約2,000である。市販されている適切な親水性アミンの例には、Huntsman Corporation(The Woodlands、TX)から商業的に入手可能なSURFONAMINE(登録商標) L−207アミン(これは分子量が約2,000の比較的親水性のポリエーテルモノアミンである)が含まれる(SURFONAMINEはHuntsman Corporationの登録商標である)。SURFONAMINE L−100アミンは、分子量が約1000の親水性ポリエーテルモノアミンであり、これもまたHuntsman Corporation(The
Woodlands、TX)から商業的に入手可能である。本開示の利点を習得した当業者は、本発明で用いるに適した他の親水性アミンを認識するであろう。
【0014】
本発明の態様では、更に、高分子量分散剤の製造方法も開示する。この方法では、少なくとも1種のポリマー酸と分子量が少なくとも約100の少なくとも1種の親水性アミンを温度が100℃未満の非縮合反応で反応させる。1つの態様では、前記ポリマー酸に中
和を受けさせておかない。
【0015】
そのような高分子量分散剤の製造は以下の様式で実施可能である。前記ポリマー酸を前記親水性アミンに徐々に添加してもよい。この段階で高分子量触媒、例えばAMBERLYSTTM 36高分子量触媒などを用いてもよい。AMBERLYSTTM 36高分子量触媒はRohm and Haas Company(フィラデルフィア、PA)から商業的に入手可能である。AMBERLYSTはRohm and Haas Companyの登録商標である。前記親水性アミンを約50℃から100℃未満に加熱しながらそれに前記ポリマー酸の溶液を添加する。いくつかの態様では、その混合物を60℃、70℃、90℃および95℃に加熱する。その温度に到達した後、その温度を維持する。ポリマー酸の添加が終了した後の溶液を窒素下でその設定した温度に4時間加熱する。水性無機顔料分散液の配合が容易になるように、その反応の生成物を脱イオン水で希釈してもよい。
【0016】
そのような高分子量分散剤の製造は前記ポリマー酸と前記親水性アミンの非縮合反応で実施可能である。非縮合反応は、この反応中に水が生じないことを意味する。このような方法は現在の方法、例えば米国特許第6,846,882号に記述されている方法(それには反応を完了させる目的で除去する必要がある水が生じる方法が記述されている)などより有利である。
【0017】
前記ポリマー酸と親水性アミンの比率は生成物に望まれる結果に応じて調整可能である。いくつかの態様では、ポリマー酸と親水性アミンの比率を約0.5−2.0:1.0にする。他の態様では、前記ポリマー酸と親水性アミンをポリマー酸と親水性アミンの比率が約0.8−1.2:1.0になるように反応させる。1つの態様では、ポリマー酸と親水性アミンの比率を約1.0:1.0にする。当業者は、所望の特徴、例えば所望のpHなどを示す高分子量分散剤が得られるように前記比率を調整する方法を認識するであろう。
【0018】
本発明の高分子量分散剤に持たせる分子量は約45,000から約50,000であってもよい。他の態様では、本発明の分散剤の分子量を約100,000未満にする。
【0019】
本発明の高分子量分散剤は、反応温度がより低いことが理由で、主に塩である生成物をもたらし得る。他の態様では、塩とアミドの混合物がもたらされ得る。このことは、米国特許第6,846,882号の下に開示されている分散剤(これは反応温度がより高いことが理由で主にアミドの生成物がもたらされると考えている)のそれとは異なる。
【0020】
本発明の態様では、また、高分子量分散剤および少なくとも1種の粒子を含有する分散組成物も開示する。前記少なくとも1種の粒子、即ち分散粒子には、有機もしくは無機材料のいずれも含まれ得る。無機材料には如何なる無機酸化物も含まれ得る。無機顔料が適切な粒子である。1つの態様における無機顔料は酸化鉄である。商業的に適切な無機顔料には、透明な酸化鉄(Rockwood Pigments North America,Inc.(Beltsville、MD)から商標AC1000の下で商業的に入手可能)、赤色酸化鉄(硫酸鉄酸化鉄、Elementis Pigments Inc.(East St Louis、IL)から名称R1599Dの下で商業的に入手可能)および黄色酸化鉄(Rockwood Pigments North America,Inc.(Beltsville、MD)から名称YO1888Dの下で入手可能)が含まれる。他の態様では、セメント質粒子、粘土(例えばカオリン、タルク、他のケイ酸塩)、ナノ粒子(例えばナノチューブおよびフラーレン)、チョークガラス繊維、ガラスビード、金属粉末および窒化ホウ素などの如き粒子を用いることも可能である。分散液に入れて用いるに適した如何なる粒子も本発明の教示に従って使用可能である。
【0021】
本発明の態様では、水性分散組成物を開示する。本発明の典型的な分散組成物は下記の如くであり得る(重量パーセント):
高分子量分散剤 4−16%
無機顔料 15−60%
水 25−85%
【0022】
本発明の分散液にまたグリコールを入れることも可能である。適切なグリコールには、POGOL(登録商標) 400ポリエチレングリコール、分子量が400のポリエチレングリコール(これはHuntsman Corporation(The Woodlands、Texas)から商業的に入手可能である)が含まれる。POGOLはHuntsman Corporationの登録商標である。
【0023】
本発明の態様に更に少なくとも1種の添加剤を含有させることも可能である。そのような添加剤には、共溶媒、界面活性剤、消泡剤、充填材剤、防腐剤、湿潤剤、抗沈降剤、ワックス、流動学的添加剤、増粘剤、合体剤、チキソトロピー剤、界面活性剤、被覆剤、殺生物剤、金属イオン封鎖剤およびこれらの組み合わせが含まれ得る。本開示の利点を習得した当業者は、本発明の態様で用いるに適した他の添加剤を認識するであろう。
【0024】
本分散組成物を生じさせた時点で、顔料粒子が充分に湿るようにそれを激しく混合してもよい。本分散組成物を粉砕して粒径をより小さくする目的で粉砕用媒体を用いることも可能である。本開示の利点を習得した当業者は、所望の大きさおよび形状を有する分散組成物を生じさせるに適した他の方法および技術を認識するであろう。
【0025】
本発明の態様では、更に、少なくとも1種の粒子を水性媒体中に分散させる方法を教示する。この方法では、少なくとも1種の粒子および少なくとも1種の高分子量分散剤を準備する。この方法では、前記少なくとも1種の粒子と高分子量分散剤を水性媒体中で接触させる。水性媒体は、主要な溶媒が水である溶液を意味する。
【0026】
本発明の高分子量分散剤ばかりでなく本明細書に開示する分散組成物は、塗料、染料、色濃縮液、インクおよび塗装用途で適切に使用可能である。加うるに、本発明の態様は他の用途、例えば建設(セメント質および石膏ボード材料)、鉱業、農業および油田などの用途でも使用可能である。本開示の利点を習得した当業者は、本発明の高分子量分散剤の他の適切な用途を認識するであろう。
【0027】
本発明の態様を以下の実施例を考慮することで更に説明するが、本実施例は本発明の例示を意図したものである。
【実施例】
【0028】
高分子量分散剤の製造実施例
製造番号1:(8453−26):150.48gのポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)(50%の溶液)を102.28gのジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)[ポリマー酸と親水性アミンの当量比が1.0:1.0]と5.0gのAMBERLYSTTM 36高分子量触媒に徐々に添加した。そのポリマー酸の溶液を前記親水性アミンにそれを90℃に加熱しながら加えた。その温度に到達した後、その温度を維持した。ポリマー酸の添加が終了した後の溶液を窒素下で90℃に4時間加熱した。
【0029】
製造番号2:(8667−074−A):219.45gのポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)(50%の溶液)を307.06gのジメチルアミノエトキシプロピルアミン(DMAEPA)[ポリマー酸と親水性アミンの当量比が1.0:1.0]と15.0g
のAMBERLYSTTM 36高分子量触媒に徐々に加えた。そのポリマー酸の溶液を前記親水性アミンにそれを90℃に加熱しながら加えた。その温度に到達した後、その温度を維持した。ポリマー酸の添加が終了した後の溶液を窒素下で90℃に4時間加熱した。
【0030】
製造番号3:(8740−081−A):60.0gのポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)(50%の溶液)を800.0gのSURFONAMINE(登録商標) L−207 アミン[ポリマー酸と親水性アミンの当量比が1.0:1.0]に加えた。そのポリマー酸の溶液を前記親水性アミンにそれを90℃に加熱しながら加えた。その温度に到達した後、その温度を維持した。ポリマー酸の添加が終了した後の溶液を窒素下で90℃に4時間加熱した。
【0031】
製造番号4:(8740−088−A):60.0gのポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)(50%の溶液)を400.0gのSURFONAMINE(登録商標) L−100 アミン[ポリマー酸と親水性アミンの当量比が1.0:1.0]に加えた。そのポリマー酸の溶液を前記親水性アミンにそれを90℃に加熱しながら加えた。その温度に到達した後、その温度を維持した。ポリマー酸の添加が終了した後の溶液を窒素下で90℃に4時間加熱した。
【0032】
製造番号5:(8739−016−A):この製造ではポリマー酸中のマレイン酸を全く用いないように制御した。28.8gのポリアクリル酸(NOVERITETM K−7058ポリアクリレート(7300mw))を400.0gのSURFONAMINE(登録商標) L−100 アミン[ポリマー酸と親水性アミンの当量比が1.0:1.0]に加えた。NOVERITETM K−7058ポリアクリレートは水溶性であり、ある程度中和されたアクリル酸重合体である。NOVERITETM K−7058ポリアクリレートはThe Lubrizol Corporation(Cleveland、Ohio)から商業的に入手可能である。NOVERITEはThe Lubrizol Corporationの商標である。そのポリマー酸の溶液を前記親水性アミンにそれを70℃に加熱しながら加えた。その温度に到達した後、その温度を維持した。ポリマー酸の添加が終了した後の溶液を窒素下で70℃に4時間加熱した。
【0033】
製造番号6:(8739−017−A):64.7gのポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)(50%の溶液)を360.0gのSURFONAMINE(登録商標) L−100 アミン[ポリマー酸と親水性アミンの当量比が1.2:1.0]に加えた。そのポリマー酸の溶液を前記親水性アミンにそれを70℃に加熱しながら加えた。その温度に到達した後、その温度を維持した。ポリマー酸の添加が終了した後の溶液を窒素下で70℃に4時間加熱した。
【0034】
製造番号7:(8739−018−A):52.92gのポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)(50%の溶液)を440.0gのSURFONAMINE(登録商標) L−100 アミン[ポリマー酸と親水性アミンの当量比が0.8:1.0]に加えた。そのポリマー酸の溶液を前記親水性アミンにそれを70℃に加熱しながら加えた。その温度に到達した後、その温度を維持した。ポリマー酸の添加が終了した後の溶液を窒素下で70℃に4時間加熱した。
【0035】
製造番号8:(8739−019−A):120.0gのポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)(50%の溶液)を400.0gのSURFONAMINE(登録商標) L−100 アミン[ポリマー酸と親水性アミンの当量比が2.0:1.0]に加えた。そのポリマー酸の溶液を前記親水性アミンにそれを70℃に加熱しながら加えた。その温度に到達した後、その温度を維持した。ポリマー酸の添加が終了した後の溶液を窒素下で70
℃に4時間加熱した。
【0036】
製造番号9:(8739−021−A):116.3gのポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)(50%の溶液)を776.0gのSURFONAMINE(登録商標) L−100 アミン[ポリマー酸と親水性アミンの当量比が1.0:1.0]に加えた。そのポリマー酸の溶液を前記親水性アミンにそれを70℃に加熱しながら加えた。その温度に到達した後、その温度を維持した。ポリマー酸の添加が終了した後の溶液を窒素下で70℃に4時間加熱した。
【0037】
以下の比較実施例では下記の手順を用いた。
【0038】
Eigerミル手順:Eiger製実験室用小型ミル(Mini−100−VSE−TEFV、Eiger Machinery,Inc.(Grayslake、IL)から商業的に入手可能)を用いた。1番目として、冷却装置(VWR International,LLC.(West Chester、Pennsylvania)から入手可能なVWR Chiller)の温度を15℃に設定した。それによってビード室を冷却することでミルベースが過熱されないようにした。2番目として、前記高分子量分散剤、消泡剤および水をステンレス鋼製カップに加えた後、Waringの実験室用可変速混合装置(Conair CorporationのWaring部(East Windsor、New Jersey)から商業的に入手可能)で1分間混合した。3番目として、前記粒子(無機顔料)を前記混合物に三等分して添加しそして各添加後に30秒間混合した。4番目として、前記混合装置内の混合物全体を約1600rpmで10分間混合した。5番目として、その後、前記混合物をEigerミルに移した。6番目として、前記混合物を5000rpmで10分間粉砕した。7番目として、粉砕されたサンプルを取り出した。8番目として、前記ミルを脱イオン水で綺麗になるまで洗浄した。
【0039】
FLACKTEKTM SpeedMixer手順:FLACKTEKTM SpeedMixer(FlackTek Inc.(Landrum、SC)から商業的に入手可能なモデルDAC150 FVZ;FLACKTEKはFlackTek Inc.の商標である)。この手順では公認容器(FLACKTEKTM 501 223T Max 40カップ)を用いた。1番目として、本発明の高分子量分散剤、消泡剤および水をプラスチック製容器に加えた。2番目として、その混合物を3000rpmで20秒間混合した。3番目として、前記容器を取り外した後、粒子(無機顔料)を加えた。4番目として、次にその混合物を3000rpmで20秒間混合した。5番目として、前記容器を取り外した後、20gのガラスビードを加えた。6番目として、その混合物を3000rpmで2分間混合した。
【0040】
比較実施例番号1:(8740−047)
5種類の配合物の調製を分散剤、水、ポリエチレングリコール(PEG)および粒子(無機顔料:透明な酸化鉄(AC1000))を用いて実施した。分散組成物の調製をEigerミル手順を用いて実施した。比較する分散剤は下記であった。
1)製造番号2、ジメチルアミノエトキシプロピル−アミンおよびアクリル酸とマレイン酸の共重合体(3000mw)(50%の溶液)。
2)製造番号1、ジメチルアミノプロピルアミンおよびアクリル酸とマレイン酸の共重合体(3000mw)(50%の溶液)。
3)市販対照分散剤番号1、低分子量ポリカルボン酸重合体のアルキロールアンモニウム塩(The ALTANA GroupのByk−Chemie部(Wesel、ドイツ)から製品コードLP−N20897の下で商業的に入手可能)。
【0041】
【表1】

【0042】
DOP%は顔料を基にした活性分散剤のパーセントである。
【0043】
【表2】

【0044】
ミルベースは粉砕された顔料と添加剤の混合物であると定義する。
【0045】
HegmanはHegmanゲージを用いた粒径測定値である。Hegman 8は1um未満である。
【0046】
この比較実施例番号1は、本発明の分散剤が製造時に示す取り扱いの方がより容易であることを示している、と言うのは、粒径がより小さくかつ粘度がより低いからである。塗料および染料の用途における顔料の添加および混合の容易さに関して、粒径がより小さいことは当該粒子がどれくらい良好に分散するかの指標である。また、低分子量アミンである分散剤は透明な酸化鉄顔料と一緒にした時に向上した貯蔵安定性も示した。
【0047】
比較実施例番号2:(#8739−069)
9種類の配合物の調製を分散剤、水、消泡剤(以下の表3に示す如き)および無機顔料(赤色酸化鉄(R1599D))を用いて実施した。分散組成物の調製をEigerミル手順を用いて実施した。比較する分散剤は下記であった。
1)市販対照分散剤番号3:ZETASPERSE(登録商標) 1200顔料分散添加剤(Air Products and Chemicals,Inc.(Allentown、PA)から商業的に入手可能)。ZETASPERSEはAir Products and Chemicals,Inc.の登録商標である。
2)市販対照分散剤番号4:親水性共重合体である高分子電解質(Rohm and Haas Company(フィラデルフィア、PA)からTAMOLTM SG−1分散剤として商業的に入手可能)。TAMOLはRohm and Haas Companyの商標である。
3)市販対照分散剤番号5:SURFONAMINE(登録商標) L−100アミン(50%の溶液)。
4)市販対照分散剤番号6:構造化アクリレート共重合体(ALTANA Group
のByk−Chemie部(Wesel、ドイツ)から商標DISPERBYK(登録商標)−2010高分子量湿潤および分散添加剤として商業的に入手可能)。DISPERBYKはALTANA Groupの登録商標である。
5)市販対照分散剤番号7:ポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)(50%の溶液)。これはSigma−Aldrich Co.からカタログ番号416053の下で商業的に入手可能である。
6)8734−60−38 SURFONAMINE(登録商標) L−100アミンとポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)(3000mw)(50%の溶液)。50%の高分子量分散剤。
7)製造番号3:SURFONAMINE(登録商標) L−207アミンとポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)(3000mw)(50%の溶液)。
8)8739−058−B SURFONAMINE(登録商標) L−100アミンとポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)[この場合のポリマー酸はアクリル酸とマレイン酸を1.0:7.5のモルで有する](50%の溶液)。前記ポリマー酸はAccess
Chemical(香港)から商業的に入手可能である。
9)8739−067−B SURFONAMINE(登録商標) L−100アミンとポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)[ポリマー酸と親水性アミンが1.0:1.0のモル当量比](50%の溶液)。50%の高分子量分散剤。
【0048】
前記分散剤組成物6、8および9の調製をこの上に示した製造に概略を示した手順に従って実施した。
【0049】
【表3】

【0050】
DFは、水系の目的で考案されたオイルフリーの非シリコーン系消泡剤であり、これはAir Products and Chemicals,Inc.(Allentown、PA)から名称SURFYNOL(登録商標) DF−75消泡剤の下で商業的に入手可能である。SURFYNOLはAir Products and Chemicals,Inc.の登録商標である。
【0051】
DOP%は顔料を基にした活性分散剤のパーセントである。
【0052】
【表4】

【0053】
粘度の測定をB型粘度計のモデルDV−II+と番号3のスピンドルを用いて30rpmで実施した(Brookfield Engineering Laboratories,Inc.(Middleboro、MA)から商業的に入手可能)。
【0054】
Hegman 8=1um、Hegman 6=25um。1番目の数値は初期粒径であり、2番目の数値は24時間後の粒径である。
【0055】
比較実施例番号2では、本発明の高分子量分散剤の性能の方が市販対照分散剤のそれよりもずっと良好であった。対照番号4、対照番号5および対照番号7は、この実験で良好な性能を示さなかった。全部が混合装置内で最初に混合した後の粘度があまりにも高く過ぎたことでEigerミルに入れることができなかった。本発明のサンプルの粘度の方が市販対照分散剤よりも若干高かったが、粒径は実質的により小さく、20−25umに対比して1umであった。Hegman粒径測定を粉砕後最初に実施しかつ24時間後にも実施した。サンプル8734−60−38および製造番号3は24時間後に若干の粒径増大を示しはしたが、粒径は<5umのままであった。粉砕サンプルは各々が24時間後に目に見えるほどの沈降をいくらか示した。粉砕サンプルの粘度は全部が極めて低かった。
【0056】
比較実施例番号3:(8739−028)
6種類の配合物の調製を以下に示す分散剤、水および無機顔料(赤色酸化鉄(R1599D))を用いて実施した。これらの材料のより詳細な説明はこの上に示した。分散液の調製をEigerミル手順を用いて実施した。比較する分散剤は下記であった。
1)8740−088−C、SURFONAMINE(登録商標) L−100アミンおよびアクリル酸とマレイン酸の共重合体(AAMA)(3000mw)(50%の溶液)[ポリマー酸と親水性アミンの当量比が0.5:1.0]。90℃の反応温度(51%の高分子量分散剤)。
2)8739−025−B、SURFONAMINE(登録商標) L−100アミンおよびAAMA(50%の溶液)[ポリマー酸と親水性アミンの比率が0.5:1.0]。70℃の反応温度(51%の高分子量分散剤)。
3)8739−019−B、SURFONAMINE(登録商標) L−100アミンおよびAAMA(50%の溶液)[ポリマー酸と親水性アミンの比率が2.0:1.0]。70℃の反応温度(50%の高分子量分散剤)。
4)8739−016−B、SURFONAMINE(登録商標) L−100アミンおよびポリアクリル酸(NOVERITETM K−7058ポリアクリレート)(7300mw)(50%の溶液)[ポリマー酸と親水性アミンの比率が1.0:1.0]。70℃の反応温度(52%の高分子量分散剤)。
5)市販対照分散剤番号4
6)市販対照分散剤番号3
【0057】
前記分散剤1−4の調製をこの上に示した製造に概略を示した手順に従って実施した。
【0058】
【表5】

【0059】
【表6】

【0060】
*顔料が分散せず-粒径も粘度も試験しなかった。
【0061】
比較実施例番号3は、分散剤を製造する時の反応温度がミルベースの粘度特性に若干の影響を与えることを示している(反応温度を90℃にした8740−088−Cと反応温度を70℃にした8739−025−Bを比較)。また、親水性アミンに対するポリマー酸の比率を高くする(8739−019−B 2:1)と結果として容認されない性能を示す配合物がもたらされる可能性がある。マレイン酸を用いなかった分散剤(8739−016−B)は良好な性能を示さなかった。7.5(約5um)のHegmanを示した8740−088−Cおよび8739−025−Bは対照が示した6.5(約15um)に比べて粒径が改善されていた。24時間後の観察により、市販対照の方が8740−088−Cおよび8739−025−Bに比べて顔料沈降の度合が高くかつ粒径が大きいことが分かる。
【0062】
比較実施例番号4:(8739−044)
21種類の分散液の調製を以下の無機顔料を用いて実施した:比較実施例1ではこの上に示した如き透明な酸化鉄(TIO)、比較実施例2ではこの上に示した如き赤色酸化鉄(RED)、および黄色酸化鉄(YEL)(YO1888D)。分散液の調製をFLACKTEKTM SpeedMixer手順を用いて実施した。比較する分散剤は下記であった。
1)市販対照分散剤番号7
2)市販対照分散剤番号5
3)市販対照分散剤番号4
4)市販対照分散剤番号3
5)8734−60−38、SURFONAMINE(登録商標) L−100アミンおよびAAMA(50%の溶液)[70℃の反応温度]、これの調製をこの上に示した製造の手順に従って実施した。
【0063】
【表7】

【0064】
【表8】

【0065】
比較実施例番号4は、本発明の高分子量分散剤が示す性能特徴の方がそれの個々の部分(個別に用いたポリマー酸および個別に用いた親水性アミン)のそれに比べて向上したことを示している。市販対照番号5(水で希釈した親水性アミン-ポリマー酸が全く入っていないサンプル)、市販対照番号7(親水性アミンが入っていないポリマー酸溶液)および本発明の高分子量分散剤(8734−60−38)が示した性能を比べることで、本発明の高分子量分散剤が透明な酸化鉄、硫酸鉄酸化鉄および黄色酸化鉄の分散液中で向上した性能を示すことが分かる(混合物中の顔料充填率を70%にした時を包含)。
【0066】
比較実施例番号5:(8739−007)
赤色酸化鉄(R1599D)、この上に示した消泡剤および以下に示す分散剤を添加することで以下の分散組成物を生じさせたが、それの調製をEigerミル手順を用いて実施した。比較する分散剤は下記であった。
1)製造番号3.
2)8739−06−B Surfonamine L−100およびポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)(3000mw)(50%の溶液)(50%の高分子量分散剤)。
3)市販対照分散剤番号3
【0067】
【表9】

【0068】
DOP%は顔料を基にした活性分散剤のパーセントである。
【0069】
【表10】

【0070】
粉砕してから24時間後の観察:製造番号3−A、番号3−Bおよび番号3−Cは沈降をいくらか起こしはしたが、市販対照分散剤番号3のそれよりも少なかった。8739−006−B2には沈降が全く観察されず、8739−006−B1(4%DOP)が起こした沈降の度合は市販対照分散剤番号3のそれより低かった。サンプルは全部が低い粘度を示し、商業的に許容されるであろう。しかしながら、安定性が向上している(即ち、顔料が沈降する度合が低い)ことは本発明の高分子量分散剤の利点である。
【0071】
本発明および本発明の利点を詳細に記述してきたが、本明細書では添付請求項で定義する如き本発明の精神および範囲から逸脱しない限り様々な変更、置換および代替を行うことは可能であると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー酸と親水性アミンの反応生成物を含有して成る組成物であって、前記ポリマー酸がアクリル酸とマレイン酸の共重合体を含有して成りかつ前記親水性アミンの分子量が少なくとも約100である組成物。
【請求項2】
前記親水性アミンの分子量が少なくとも約100から約3,000である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記親水性アミンの分子量が約1,000である請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記親水性アミンがジメチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエトキシプロピルアミン、2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノールおよびこれらの組み合わせから成る群より選択される請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記親水性アミンがモノ−第一級アミンである請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記親水性アミンがポリエーテルモノアミンである請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマー酸と前記親水性アミンをポリマー酸と親水性アミンの比率が約0.5−2.0:1.0になるように反応させたものである請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリマー酸と前記親水性アミンをポリマー酸と親水性アミンの比率が約0.8−1.2:1.0になるように反応させたものである請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマー酸と前記親水性アミンをポリマー酸と親水性アミンの比率が約1.0:1.0になるように反応させたものである請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記アクリル酸とマレイン酸の共重合体がアクリル酸とマレイン酸を約1.0:1.0−7.5のモル比で含有して成る請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記反応生成物を100℃未満の温度で生じさせたものである請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記反応生成物が非縮合性反応生成物を含んで成る請求項1記載の組成物。
【請求項13】
分散組成物であって、
ポリマー酸と親水性アミンの反応生成物を含有して成る高分子量分散剤および少なくとも1種の分散粒子を含有して成り、かつ
前記ポリマー酸がアクリル酸とマレイン酸の共重合体を含有して成り、かつ
前記親水性アミンの分子量が少なくとも約100である、
分散組成物。
【請求項14】
前記分散粒子が無機顔料を含んで成る請求項13記載の分散組成物。
【請求項15】
前記無機顔料が酸化鉄を含んで成る請求項14記載の分散組成物。
【請求項16】
前記親水性アミンがジメチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエトキシプロピルアミン、2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノールおよびこれらの組み合わせから成る群より選択される請求項13記載の分散組成物。
【請求項17】
前記ポリマー酸と前記親水性アミンをポリマー酸と親水性アミンの比率が約0.5−2.0:1.0になるように反応させたものである請求項13記載の分散組成物。
【請求項18】
更に少なくとも1種のグリコールも含有して成る請求項13記載の分散組成物。
【請求項19】
更に少なくとも1種の添加剤も含有して成る請求項13記載の分散組成物。
【請求項20】
少なくとも1種の粒子を水性媒体中に分散させる方法であって、
少なくとも1種の粒子を準備し、
アクリル酸とマレイン酸の共重合体を含有して成るポリマー酸と分子量が少なくとも約100の親水性アミンの反応生成物を含有して成る少なくとも1種の高分子量分散剤を準備し、そして
前記少なくとも1種の粒子と前記少なくとも1種の高分子量分散剤を水性媒体中で接触させる、
段階を含んで成る方法。
【請求項21】
高分子量分散剤の製造方法であって、
アクリル酸とマレイン酸の共重合体を含有して成る少なくとも1種のポリマー酸および分子量が少なくとも約100の少なくとも1種の親水性アミンを準備し、そして
前記少なくとも1種のポリマー酸と少なくとも1種の親水性アミンを温度が100℃未満の非縮合反応で反応させる、
ことを含んで成る方法。
【請求項22】
前記ポリマー酸に中和を受けさせておかない請求項21記載の方法。

【公表番号】特表2013−512990(P2013−512990A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542042(P2012−542042)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/056523
【国際公開番号】WO2011/068658
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(505318547)ハンツマン ペトロケミカル エルエルシー (17)
【氏名又は名称原語表記】Huntsman Petrochemical LLC
【Fターム(参考)】