説明

高分子/液晶複合材料および液晶表示素子

【課題】素子等における繰り返し駆動等による光漏れに対して高い耐久性及び信頼性を発揮させることができ、且つ低駆動電圧が達成でき、低い高分子含有率でありながら相安定性に優れる高分子/液晶複合材料及び該材料を用いた液晶表示素子を提供すること。
【解決手段】本発明の複合材料は、特定の多官能性化合物の重合性ユニット(a)と、単官能性化合物の重合性ユニット(b)とを、重合性基を持たない液晶材料(Y)中に分散して、光学的等方相状態で重合した、ユニット(a)及び(b)の一方の少なくとも一部がメタクリレート骨格化合物に由来し、他方の少なくとも一部がアクリレート骨格化合物に由来し、メタクリレート骨格化合物に由来する構成単位の含有率がユニット(a)及び(b)の共重合体(X)全体に対して1〜99質量%で、共重合体(X)1〜40質量%、室温でカイラルネマチック相又はBPを示す液晶材料(Y)99〜60質量%からなり、電界無印加時に光学的に等方性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子と液晶材料とからなる高分子/液晶複合材料および該複合材料を用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示素子としては、ポリイミド等の高分子からなる配向膜を形成した2枚の基板の間隙に、誘電異方性を有するネマチック液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、これを2枚の偏光板の間に設置した構造のTN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、MVA(Multi domain Vertical Alignment)型およびIPS(In Plane Switching)型等の様々な表示モードが実用化されている。近年では、上記各表示モードは技術的な成熟を見ており、今後の表示特性の飛躍的な向上は困難な状況にある。
このような背景の下、菊池らによって、特許文献1に示されるような青色相(Blue Phase、ブルー相(BP))と呼ばれる、キラリティーを有する液晶材料において、コレステリック相と等方相との間の数℃の温度幅で出現することのある光学的等方性の液晶相状態を、その液晶相中に形成した高分子の3次元網目構造により、幅広い温度範囲で発現するように安定化した高分子/液晶複合材料が提案されている。該高分子/液晶複合材料は、液晶表示素子として用いる場合に、従来のネマチック液晶材料を用いた液晶表示素子と比較して100倍以上の高速応答性を示すことや、電圧無印加時において光学的な等方性を示すことに起因して配向膜を必要としない等のプロセル上の優位性を有することから、次世代液晶表示素子材料として期待されている。
特許文献1において、菊池らは高分子ネットワークによってBPの発現温度範囲が拡大した理由を以下のように推測している。すなわち、BPは分子配列の線欠陥と共存状態にあり、該欠陥を生成するエネルギーが大きいために高エネルギー状態となり、等方相直下のごくわずかな温度範囲でしか発現しない。しかし、モノマーとして低分子液晶と相溶性が低いものを用いることで該低分子液晶のBPの線欠陥にモノマー分子が濃縮され、さらに重合によりBPの線欠陥構造に対応した高分子ネットワークが形成され、BPの線欠陥を生成するエネルギーが低下し、より低温域においてもBPの線欠陥が生成されることでBPの発現温度範囲が拡大するというものである。このようなメカニズムに基づき、菊池らは高分子ネットワークとして、2−エチルへキシルアクリレートやヘキシルアクリレート等の非液晶性アクリレートモノマーと架橋剤として液晶性ジアクリレートモノマーの共重合体を例示している。
しかしながら、特許文献1において開示された技術により得られる高分子/液晶複合材料は、光シャッター等として用いた場合には駆動電圧が高く、また電圧を印加して繰り返し駆動することで、電圧無印加時においても光漏れが生ずるようになる等、耐久性、信頼性の点で十分とは言えない。
【0003】
高分子/液晶複合材料の駆動電圧が高いことは、該複合材料中の液晶材料含有率が低いことにも起因する。そこで、特許文献2には、キラリティーを有する液晶材料と重合性モノマーとの混合物を、該混合物が等方相を示す温度においてモノマーを重合させることで液晶材料中に高分子ネットワークを形成し、これによって液晶材料の分子配列秩序を光学オーダー以下のサイズに分断し、本来液晶相を示す温度においても等方相状態が安定に発現することを可能とした等方性高分子/液晶複合材料が提案されている。該複合材料は、液晶相中に形成された高分子ネットワークと液晶材料が有するカイラリティーの協同作用によって、液晶材料の分子配列秩序の分断に必要とされる高分子濃度を、著しく低減化でき、複合材料中の液晶材料含有率を60質量%以上とすることで、該複合材料を液晶表示素子として用いる際の駆動電圧を低減している。
特許文献2に記載された高分子ネットワークは、液晶基と3次元架橋構造を有するものを用いている。該高分子ネットワークを形成可能なモノマー材料としては、液晶基を有する三官能性アクリレートである1,2,4−トリ(4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)フェニルカルボニルオキシ)ベンゼンや、三官能性で液晶基を有さないトリメチロールプロパントリアクリレートと液晶基を有する二官能性の1,4−ジ(4−(6−(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ)−2−メチルベンゼンとの混合物等が例示されている。しかし、開示された技術においては、高分子濃度を10質量%以下とすることは実質的に困難であり、また、高分子濃度が低いことに起因して、電圧を印加して繰り返し駆動することで生じる光漏れ等に対する耐久性等の問題も解決されていない。
【特許文献1】特開2003−327966号公報
【特許文献2】特開2005−336477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、液晶表示素子等に用いた際に、繰り返し駆動等による光漏れに対して高い耐久性及び信頼性を発揮させることができ、且つ低駆動電圧が達成でき、低い高分子含有率でありながら相安定性に優れる高分子/液晶複合材料を提供することにある。
本発明の別の課題は、繰り返し駆動等による光漏れに対して高い耐久性及び信頼性を有し、且つ駆動電圧が低い液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、高分子/液晶複合材料における高分子として、メタクリレート骨格とアクリレート骨格との共重合によって形成される重合体を含む高分子ネットワークを採用することにより、相安定化が実現でき、高分子/液晶複合材料に高い耐久性を付与しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば、液晶基含有多官能性化合物からなる重合性ユニット(a)と、単官能性化合物からなる重合性ユニット(b)とを、重合性基を持たない液晶材料中に分散して、光学的等方相状態で重合した高分子/液晶複合材料であって、該重合性ユニット(a)及び該重合性ユニット(b)のいずれか一方の重合性ユニットの少なくとも一部がメタクリレート骨格を有する化合物に由来し、他方の重合性ユニットの少なくとも一部がアクリレート骨格を有する化合物に由来し、且つメタクリレート骨格を有する化合物に由来する構成単位の含有率が、重合性ユニット(a)及び重合性ユニット(b)との共重合体(X)全体に対して1〜99質量%であり、該共重合体(X)1〜40質量%と、少なくとも室温でカイラルネマチック相又はブルー相を示し、且つ重合性基を持たない液晶材料(Y)99〜60質量%とからなり、電界無印加時において光学的に等方性を示す高分子/液晶複合材料(以下、本発明の複合材料と略すことがある)が提供される。
また本発明によれば、少なくとも一方が透明な一対の基板と、該一対の基板の少なくとも一方に形成された電極と、該一対の基板間に挟持された液晶層と、該一対の基板の一方の外側に形成された偏光板と、前記電極を介して液晶層に電界を印加する電界印加手段とを備えた液晶表示装置であって、前記液晶層が、上記本発明の複合材料を含むことを特徴とする液晶表示素子が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の複合材料は、高分子として、メタクリレート骨格とアクリレート骨格との共重合によって形成される特定の共重合体(X)を含むので、低い高分子含有率でありながら該複合材料に優れた相安定性を付与することができ、例えば、液晶表示素子として用いた場合に、高い耐久性及び低電圧駆動が達成できる。
本発明の液晶表示素子は、上記本発明の複合材料を用いるので、繰り返し駆動等による光漏れに対して高い耐久性及び信頼性を示し、また、該複合材料が少ない高分子含有率で高い液晶相の安定化効果を発現するため、結果として低電圧駆動が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の複合材料は、液晶基含有多官能性化合物からなる重合性ユニット(a)と、単官能性化合物からなる重合性ユニット(b)とを、重合性基を持たない特定の液晶材料中に特定割合で分散して、光学的等方相状態で重合した、共重合体と液晶材料とからなる複合材料である。
重合性ユニット(a)及び(b)は、本発明の複合材料における共重合体(X)を構成し得る重合性の成分であって、モノマー、オリゴマー又はプレポリマー等の化合物もしくはこれらの2種以上の混合物からなるものをいう。ここでオリゴマーとは、モノマーに由来する構成単位2〜10個からなる重合体を指し、プレポリマーとは、モノマーに由来する構成単位11〜100000個からなる重合体を指す。これら重合性ユニットがオリゴマー又はプレポリマーとして用いられる場合、オリゴマー又はプレポリマーが重合性であるためには、その構造中には未反応の重合性の官能基が少なくとも1つ以上必要であり、この様なオリゴマー又はプレポリマーは、例えば、Eur. Polym. J. Vol. 28, No. 12, pp.1527, 1992に示される公知の方法により製造することができる。
【0008】
本発明において、重合性ユニット(a)及び(b)のいずれか一方の重合性ユニットの少なくとも一部又は全部がメタクリレート骨格を有する化合物に由来し、他方の重合性ユニットの少なくとも一部又は全部がアクリレート骨格を有する化合物に由来する。
これら重合性ユニットが有するアクリレート骨格又はメタクリレート骨格とは、オリゴマー又はプレポリマーにおいては前述のオリゴマー又はプレポリマーの構造中の未反応の重合性の官能基がアクリレート又はメタクリレートであることを指し、重合性ユニットとしてモノマーを用いる場合には、モノマーそのものがアクリレート又はメタクリレートであることを指す。
本発明において重合性ユニット(a)及び(b)として用いることが可能なオリゴマー又はプレポリマーの分子量は特に限定されないが、あまり重合度が高くなると使用する液晶材料中に均一に溶解せず、その結果、液晶相の安定化効果を発現できない懸念がある。このため、該分子量は、重量平均分子量として50000以下が好ましく、更に好ましくは10000以下であり、反応性の観点からはモノマーとして用いることが最も好ましい。
【0009】
重合性ユニット(a)は、液晶基含有多官能性化合物からなり、1種以上の液晶基を有する多官能性モノマー、オリゴマー、プレポリマー又はこれらの混合物であって、後述する重合性ユニット(b)の重合基がアクリレート基のみ又はメタクリレート基のみで構成されている時には、それぞれ重合基としてメタクリレート基、またはアクリレート基を含有するものを少なくとも1種類含む。該液晶基含有多官能性化合物は、高分子液晶複合材料とする際の溶解性の観点から、それ自体が液晶性を示す化合物が用いられる。
このような液晶基含有多官能性化合物としては、例えば、式(1)で表される化合物が挙げられる。該化合物は、重合基としてアクリレート基又はメタクリレート基を有する。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)中、B1は炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルケニル基を表し、該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。X1は1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表し、該1,4−フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができる。X2は1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基を表し、該1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、インダン−2,5−ジイル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができる。Y1及びY2はそれぞれ独立して、単結合、−CH2CH2−、−C=C−、又は−CF2O−、−COO−、−OCO−を表し、B3は水素原子又はメチル基を表し、nは0、1又は2を表す。ただし、n=2の場合、各X1及び各Y1は同じでなくて良い。
【0012】
式(1)で表される化合物の具体例としては、アクリレート基を有する例として、例えば、3,3'−(ビフェニル−4,4'−ジイルビス(オキシ))ビス(プロパン−3,1−ジイル)ジアクリレート、1,4−ジ(4−(3−(アクリロイルオキシ)プロピルオキシ)ベンゾイルオキシ)−2−メチルベンゼン、3−(4−(4'−(3−(アクリロイルオキシ)プロポキシ)ビフェニル−4−カーボキシレート、3,3'−(4,4'−(エチン−1,2−ジイル)ビス(4,1−フェニレン))ビス(オキシ)ビスプロパン−3,1−ジイル)ジアクリレートが挙げられる。
一方、メタクリレート基を有する例としては、例えば、3,3'−(ビフェニル−4,4'−ジイルビス(オキシ))ビス(プロパン−3,1−ジイル)ジメタクリレート、1,4−ジ(4−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピルオキシ)ベンゾイルオキシ)−2−メチルベンセン、3−(4−(4'−(3−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ)ビフェニル−4−カーボキシレート、3,3'−(4,4'−(エチン−1,2−ジイル)ビス(4,1−フェニレン))ビス(オキシ)ビスプロパン−3,1−ジイル)ジメタクリレートが挙げられる。
中でも液晶材料への溶解性及び結晶性等の理由からは、1,4−ジ(4−(3−(アクリロイルオキシ)プロピルオキシ)ベンゾイルオキシ)−2−メチルベンゼン、1,4−ジ(4−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピルオキシ)ベンゾイルオキシ)−2−メチルベンゼンが好ましく、また、反応性と液晶相の安定化効果の理由からは、1,4−ジ(4−(3−(アクリロイルオキシ)プロピルオキシ)ベンゾイルオキシ)−2−メチルベンゼンが好ましい。
【0013】
重合性ユニット(b)は、単官能性化合物からなり、1種類以上の単官能性モノマー、オリゴマー、プレポリマー又はこれらの混合物であって、前述の重合性ユニット(a)の重合基がアクリレート基のみ又はメタクリレート基のみで構成されている時には、それぞれ重合基としてメタクリレート基又はアクリレート基を含有するものを少なくとも1種類含む。
このような単官能性化合物としては、得られる本発明の複合材料の透明性の観点から、例えば、脂肪族モノマーの一種である式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0014】
【化2】

【0015】
式(2)中、A1は単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとし、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、それぞれ独立にフッ素原子で置換されていても良い。A2、A3及びA4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数3〜13のアルキル基を表し、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとし、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、それぞれ独立にフッ素原子で置換されていても良い。Bは水素原子又はメチル基を表す。
【0016】
式(2)で表されるモノマーとしては、アクリレート骨格を形成するモノマーとして、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレートが挙げられる。
一方、メタクリレート骨格を形成するモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレートが挙げられる。特に好ましくは、炭素数4〜15の直鎖アルキル基を置換基として有するメタクリレートが挙げられる。
【0017】
本発明の複合材料は、上記重合性ユニット(a)と(b)とを、重合性基を持たない液晶材料中に分散して、後述する光学的等方相状態で重合されて得られる。この際、本発明の複合材料中における高分子、即ち、重合性ユニット(a)と(b)とを共重合させた共重合体(X)は、上述のとおり、メタクリレート骨格及びアクリレート骨格を有し、且つメタクリレート骨格に由来する構成単位の含有率は、本発明の複合材料における所望の効果を得るために、該共重合体(X)全体に対して1〜99質量%、好ましくは25〜75質量%である。
【0018】
前記共重合体(X)は、重合性ユニット(a)及び(b)により、アクリレート基とメタクリレート基を同時に有する高分子ネットワークが形成されており、このような高分子の共重合体(X)を用いることで、電圧を印加して繰り返し駆動することで生じる光漏れ等に対する耐久性の問題が改善される。これは、前述した耐久性が、重合性ユニット(a)の液晶基を有する多官能性化合物の重合基の反応転化率に大きく支配されていることによる。液晶基を有する多官能性化合物は複数の重合基を有するが、高分子ネットワークの形成過程において複数の重合基が同時に反応して高分子ネットワークを形成することはほとんど起こり得ず、多くは1つの重合基だけが反応した状態を経て高分子ネットワークの形成は進行する。この時、一方が反応した液晶基を有する多官能性化合物の残る重合基の反応性は、分子の拡散が抑制されるために著しく低下することが予想される。その結果として充分に架橋形成が進行しないまま重合反応が停止してしまうと考えられる。このような概念を模式的に示した概略図を図1に示す。
一方、共重合体(X)の製造には、アクリレート基とメタクリレート基を有する重合性ユニット(a)及び(b)の混合物を用いるので、これら官能基の反応性の違いからアクリレート基はメタクリレート基とより選択的に反応できる。この結果、本発明の複合材料においては、重合性ユニット(a)の液晶基を有する多官能性化合物の反応転化率が向上し、架橋形成が充分に進行した高分子ネットワークが得られるものと考えられ、これにより高分子/液晶複合材料の耐久性が向上したものと考えられる。このような概念を模式的示した概略図を図2に示す。
【0019】
本発明の複合材料における液晶材料(Y)は、液晶性化合物にカイラル剤を組合せた材料であって、その構造中に重合性の官能基を含まない。本発明においては液晶性化合物とカイラル剤を組合せた材料を広義にカイラルネマチック液晶として扱い、該液晶材料が示す液晶相をカイラルネマチック相とする。
本発明の複合材料における液晶材料(Y)は、少なくとも室温でカイラルネマチック相又はブルー相(BP)を示し、最も好ましい材料はBPを示す液晶材料である。ここで、室温とは、10〜45℃を意味する。
本発明の複合材料において液晶材料(Y)がBPを示すには、カイラルネマチック液晶において、らせんピッチが500nm以下であることが好ましい。BPが発現することは偏光顕微鏡による特徴的な小板状組織の観察や反射スペクトルの測定による小板状組織に対応する波長に現れるピークによって確認できる。
【0020】
上述の液晶材料(Y)を構成する液晶性化合物としては、例えば、ネマチック性液晶化合物、スメクチック性液晶化合物、ディスコチック性液晶化合物が挙げられ、ネマチック性液晶化合物が好ましい。液晶性化合物は1種を用いてもよいが、種々の特性を最適化するためには2種以上を用いるのが好ましい。2種以上を用いる場合には、混合した後にネマチック液晶相を示すことが好ましい。
具体例としては、ビフェニル系液晶化合物、ターフェニル系液晶化合物、トラン系液晶化合物が挙げられる。
【0021】
上述の液晶材料(Y)を構成するカイラル剤としては、液晶性化合物であっても非液晶性化合物であっても良い。カイラル剤が有する不斉構造としては、不斉炭素原子、軸不斉のいずれでもよいがらせん誘起力の観点からは軸不斉を有する化合物が好ましい。例えば、イソソルビトール誘導体、ビナフトール誘導体、アトロプ異性体が好ましく挙げられる。
カイラル剤の添加量は、液晶性化合物及びカイラル剤の組み合わせにより所望のらせんピッチとなるように適宜決定できるが、カイラル剤があまり多いと高分子/液晶複合材料としたときに、析出や相分離等により材料の特性に悪影響を及ぼす可能性があるため、液晶材料(Y)中に20質量%以下、好ましくは1〜10質量%とすることが好ましい。
【0022】
本発明の複合材料は、重合性ユニット(a)及び(b)を、液晶材料中に分散して、光学的等方相状態で、熱又は光により重合することにより製造できる。重合性ユニット(a)及び(b)の配合割合は、多いほど高分子/液晶複合材料としたときの耐久性は向上するが、同時に駆動電圧の上昇を招くため、耐久性を損なわない範囲では少ないほど好ましく、得られる共重合体(X)及び液晶材料(Y)との合計量に対して1〜40質量%となるような割合にすることが好ましく、得られる高分子/液晶複合材料を表示素子等として用いる場合には、実用的には得られる共重合体(X)及び液晶材料(Y)との合計量に対して5〜15質量%となるような割合にすることが好ましい。従って、液晶材料の配合割合は、得られる共重合体(X)及び液晶材料(Y)との合計量に対して、99〜60質量%、好ましくは95〜85質量%となるような割合にすることが好ましい。
【0023】
前記重合にあたっては、重合性ユニット(a)及び(b)の反応性に応じて、別途光重合開始剤及び熱重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、ベンジル類、ミヒラーケトン類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール類又はチオキサントン類が挙げられる。
熱重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。
重合開始剤の添加量は、重合性ユニット(a)及び(b)の反応性に応じて適宜決定できるが、あまり過剰に加えると好ましくない副反応等が起こる可能性があるため、重合性ユニット(a)及び(b)と、液晶材料と、重合開始剤との合計量に対して1質量%以下とすることが好ましい。
重合温度は、重合性ユニット(a)及び(b)と液晶材料(Y)との混合物が、重合開始時において光学的等方性を示す温度とすることがよく、BPを示す温度とすることが最も好ましい。このような温度は、該混合物の種類及び組み合わせに応じて適宜選択することができる。
【0024】
前記重合性ユニット(a)及び(b)を液晶材料(Y)中に分散させ、光学的等方相状態で重合することにより、高分子ネットワークとしての共重合体(X)が形成される。この高分子ネットワークは液晶材料(Y)における液晶性化合物中において、該液晶性化合物の重合時における配列秩序構造の熱力学的安定性を向上し、該配列秩序構造の利用可能な温度範囲を拡大することを可能とする。
本発明の複合材料は、光学的に等方性の状態、すなわちBP又は等方相の状態で重合を行う。ここで、光学的に等方性の状態とは、高分子/液晶複合材料中の配列秩序構造が光学オーダー以下であり、巨視的な異方性を有さないことを言う。液晶性化合物において、この様な光学的に等方性を示す状態としては、BPあるいは等方相が挙げられる。
【0025】
重合性ユニット(a)及び(b)と液晶材料(Y)との混合物が、重合する温度において光学的等方性を示すことは、例えば、BPを示していることは前述したように偏光顕微鏡による特徴的な小板状組織の観察や、反射スペクトルの測定による小板状組織に対応する波長に現れるピークによって確認でき、等方相を示す場合においては偏光顕微鏡観察によって異方性が観察されないことなどによって確認することができる。
上記方法により確認された該混合物が光学的に等方性の状態にある温度において、光又は熱によって該混合物中の重合性ユニット(a)及び(b)を重合させることで本発明の複合材料が製造できる。この時、重合の途中の過程において重合性ユニット(a)及び(b)が高分子へ反応することで、混合物が光学的に等方性の状態から、ネマチック相やカイラルネマチック相等の光学的に異方性の状態へ変化することのないように、適宜温度を調節することが好ましい。
【0026】
本発明の複合材料は、電界無印加時において光学的に等方性の状態であり、電界印加状態においては印加電界強度の二乗に比例した電気複屈折値ΔnEを示す。ここで電気複屈折値ΔnEとは、等方性媒体に電界を印加した際に誘起される複屈折値である。
本発明の複合材料が電界無印加時において光学的等方性の状態にあることは、前述したように偏光顕微鏡観察及び反射スペクトル測定において確認することができる。
【0027】
本発明の高分子/液晶複合材料は前記した電気光学効果に基づく光変調素子や光スイッチング等の電気光学素子として利用することができる。これら光変調素子としての最適な利用の形態は、それぞれの用途に応じて適宜構成され、特に限定されない。
例えば、光変調あるいは光スイッチングのための基本的な素子としては、本発明の複合材料を、電極付基板で挟持させてなるもの、あるいは櫛型電極を有する基板と電極を有しない基板で挟持させてなるものが挙げられ、本発明の液晶表示素子も好ましく挙げられる。
本発明の液晶表示素子は、少なくとも一方が透明な一対の基板と、該一対の基板の少なくとも一方に形成された電極と、該一対の基板間に挟持された液晶層と、該一対の基板の一方の外側に形成された偏光板と、前記電極を介して液晶層に電界を印加する電界印加手段とを備え、前記液晶層が、本発明の複合材料を含むものである。この時、基板上の液晶分子を水平又は垂直方向に配向させる目的で、ポリイミド等からなる配向膜を用いても良い。
【0028】
電極は、ITO(Indium-Tin-Oxide)、酸化錫、酸化亜鉛等の透明電極、または金、銀、クロム等の金属導電膜等が挙げられ、透過率の向上等のためには透明電極の使用が好ましい。この素子は電場を印加することで複屈折が誘起され、従来用いられているTN型液晶素子と同様に、偏光板と組合せて用いることで光シャッターとすることができる。
表示装置として用いる場合には、光シャッターをカラーフィルター及びバックライトと共に組合せて構成することができる。また、この様な表示装置として用いる場合には、表示特性の向上のために位相差フィルム等の各種の光学フィルムと共に用いることも有効である。
この様にして得られた液晶表示素子は、耐久性に優れているため、結果として液晶材料が同一である場合にはより低い駆動電圧で利用することが可能である。
【0029】
本発明の複合材料を構成する共重合体(X)は、前述したようにアクリレート基とメタクリレート基を有する重合性ユニット(a)及び(b)の混合物の共重合させたものであり、これら重合基の反応の選択性の違いにより重合性ユニット(a)の液晶基を有する多官能性化合物の反応転化率を向上させることができる。
したがって、重合性ユニット(a)がアクリレート骨格を有する化合物に由来し、重合性ユニット(b)がメタクリレート骨格を有する化合物に由来する重合性ユニットの混合物を共重合させた共重合体(X)(以下、共重合体(X')と言うことがある)と、重合性ユニット(a)がメタクリレート骨格を有する化合物に由来し、重合性ユニット(b)がアクリレート骨格を有する化合物に由来する重合性ユニットの混合物を共重合させた共重合体(X)(以下、共重合体(X'')と言うことがある)では、重合性ユニット(a)の液晶基を有する多官能性化合物の最終的な反応転化率は共に向上する。
【0030】
一方、アクリレート骨格を有する重合性モノマーと、メタクリレート骨格を有する重合性モノマーとでは、一般に反応の速度に違いがあることが知られ、アクリレート骨格を有する重合性モノマーの反応速度は、メタクリレート骨格を有する重合性モノマーの反応速度よりも速い。
したがって、本発明の複合材料を構成する共重合体(X)において、共重合体(X')では重合性ユニット(a)の液晶基を有する多官能性化合物の複数の重合基の反応が、より反応の後期に進行し、一方で共重合体(X'')においては、重合性ユニット(a)の液晶基を有する多官能性化合物の複数の重合基の反応が、反応の初期から進行することになる。
この様な多官能性化合物の複数の重合基の反応の進行の違いは、多官能性化合物の複数の重合基の反応が反応途中で形成される高分子全体の拡散を抑制することになるため、最終的に得られる高分子/液晶複合材料中における高分子ネットワークの凝集構造に影響を及ぼす。さらに、高分子/液晶複合材料中の高分子ネットワークの凝集構造の違いは、高分子ネットワークと液晶分子の接触界面面積を顕著に変化させるため、共重合体(X)の液晶材料(Y)に対する配合比が等しい場合には、高分子/液晶複合材料を表示素子等として利用する際の駆動電圧に影響を及ぼす。
【0031】
すなわち、本発明の複合材料を構成する共重合体(X)が、共重合体(X')の場合においては、重合性ユニット(a)の液晶基を有する多官能性化合物の複数の重合基の反応が、より反応の後期に進行するため、反応途中で形成される高分子は比較的分子量が大きくなっても拡散、凝集し、結果として比較的大きな構造の高分子ネットワークが形成される。このため共重合体(X')からなる高分子/液晶複合材料においては、高分子と液晶分子の界面面積が比較的小さくなり、高分子と液晶分子間の相互作用の影響の小さい低駆動電圧の材料が得られる。
一方、本発明の複合材料を構成する共重合体(X'')においては、重合性ユニット(a)の液晶基を有する多官能性化合物の複数の重合基の反応が、反応初期の比較的分子量が小さい高分子が形成されると同時に進行するため、拡散、凝集が抑制され、比較的小さな構造の高分子ネットワークとなる。このため共重合体(X'')からなる高分子/液晶複合材料においては、高分子と液晶分子の界面面積が大きくなり、高分子と液晶分子間の相互作用の影響により駆動電圧が比較的高いものとなることが懸念される。
したがって、本発明における高分子/液晶複合材料を表示素子等として利用する際には、共重合体(X)の液晶材料(Y)に対する配合比、共重合体(X)からなる高分子液晶複合材料の耐久性、駆動電圧等のバランスを考慮すると、重合性ユニット(a)がアクリレート骨格を有する化合物に由来し、重合性ユニット(b)がメタクリレート骨格を有する化合物に由来する重合性ユニットの混合物を共重合させた共重合体(X')を用いることが最も良い。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが本発明はこれらに限定されない。
尚、例中、Iは等方相、Nはネマチック相を表し、I−N相転移点をI−N点と、等方
性液晶をIsoと略す。
相転移温度は、相転移温度は温度制御ステージ(LTS−E350:LINKAM社製)を装備した偏光顕微鏡(OPTIPHOT2−POL:Nikon社製)を用い、毎分1℃で加熱した際の光学組織観察により測定した。
【0033】
実施例1
液晶組成物としてフッ素系混合液晶JC−1041XX(チッソ社製)(I−N点97℃、誘電率異方性(Δε)=5.7、Δn=0.142)41質量%、4−ペンチル−4'−
シアノビフェニル(5CB)41質量%及びキラル化合物2,5−ビス−[4'−(ヘキシルオキシ)−フェニル−4−カルボニル]−1,4,3,6−ジアンハイドライド−D−ソルビトール(ISO−6OBA2)8質量%を、系全体が等方相を示す温度65℃で均一に混合し、液晶組成物を調製した。得られた液晶組成物の相転移温度はIso−47.6℃−BP−44.6℃−N*であった。
【0034】
<光重合性モノマー液晶混合物の調製>
液晶材料(Y)としての上記で調製した液晶組成物92質量%、重合性ユニット(a)であるアクリレート骨格を有するモノマーとしての液晶性を示す二官能性アクリレートモノマーであるRM−257(Merck社製)(融点64℃、I−N点126℃)3.8質量%、重合
性ユニット(b)であるメタクリレート骨格を有するモノマーとしてドデシルメタクリレート(nC12M)3.8質量%、および光重合開始剤として2,2'−ジメトキシフェニルアセトフェノン0.4質量%を、系全体が等方相を示す温度60℃で均一に混合し、光重合性モノマー液晶混合物を調製した。
得られた光重合性モノマー液晶混合物の相転移温度はIso−38.5℃−BP−34.5℃−N*であった。
【0035】
<相安定化高分子/液晶複合材料(A1)の調製>
上記で調製した光重合性モノマー液晶混合物を、配向処理の施されていない櫛型電極基板とガラス基板の間(基板間距離6μm)に充填し、得られたセルを光学的等方相であるブルー相が発現する温度である35.5℃に保持し、この状態で紫外光(紫外光強度1.5mW cm-2(波長365nm)を20分間照射した。得られた相安定化高分子/液晶複合材料(A1)は0℃以下においてもブルー相の光学組織を安定に保持した。
【0036】
<相安定化高分子/液晶複合材料の繰り返し駆動耐久性評価>
調製した相安定化高分子/液晶複合材料(A1)を図3に示す光学系に配置した。セルに矩形波交流電界(周波数1kHz)を印加し、電界印加前後の透過光強度を評価した。印加電界は0Vから150Vまで段階的に上げ、繰り返し駆動によって光透過強度が初期の透過光強度に戻らなくなった電界強度を評価し、耐久性の指標とした。測定試験結果を表1に示す。なお、150Vまで印加しても電場印加後の透過光強度が測定開始時と変化が無いものについては○と表記した。
【0037】
<相安定化高分子/液晶複合材料の駆動電圧評価>
相安定化高分子/液晶複合材料の繰り返し駆動耐久性評価において、電界印加時における透過率が100V電界印加時の透過率の10%を越える電界強度を駆動電圧と定義して測定した。結果を表2に示す。
【0038】
実施例2
実施例1において、光重合性モノマーを調製する際にメタクリレート骨格を有するモノマーをブチルメタクリレート(nC4M)とした以外は同様の手順により相安定化高分子/液晶複合材料(A2)を調製した。ただし、重合前の光重合性モノマー液晶混合物の相転移温度はIso−33.0℃−BP−28.7℃−N*であり、重合温度はBPが発現する温度である29.7℃とした。
得られた相安定化高分子/液晶複合材料(A2)は0℃以下においてもブルー相の光学組織を安定に保持した。繰り返し駆動耐久性の測定結果を表1に、駆動電圧評価の結果を表2に示す。
【0039】
実施例3
実施例1において、光重合性モノマーを調製する際にアクリレート骨格を有するモノマーをドデシルアクリレート(nC12A)、メタクリレート骨格を有するモノマーとして液晶性を示す二官能性の1,4−ジ(4−(3−(メタクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ)−2−メチルベンゼン(LC6DM)としたこと以外は同様の手順により相安定化高分子/液晶複合材料(A3)を調製した。ただし、重合前の光重合性モノマー液晶混合物の相転移温度はIso−37.5℃−BP−33.2℃−N*であり、重合温度はBPが発現する温度である35.2℃とした。得られた相安定化高分子/液晶複合材料(A3)は0℃以下においてもブルー層の光学組織を安定に保持した。繰り返し駆動耐久性の測定結果を表1に、駆動電圧評価の結果を表2に示す。
【0040】
実施例4
実施例1において光重合性モノマー液晶混合物として、液晶組成物92質量%、メタクリレート骨格を有するモノマーとしてブチルメタクリレート1.9質量%及びアクリレート骨格を有するモノマーとしてドデシルアクリレート1.9質量%、液晶性モノマーを示す二官能性のアクリレートモノマーであるRM−257(Merck社製)(融点64℃、I−N
点126℃)3.8質量%及び光重合開始剤として2,2'−ジメトキシフェニルアセトフェノン0.4質量%を混合して用いたこと以外は同様の手順により相安定化高分子/液晶複合材料(A4)を調製した。ただし、重合前の光重合性モノマー液晶混合物の相転移温度はIso−36.0℃−BP−33.3℃−N*であり、重合温度はBPが発現する温度である35.3℃とした。得られた相安定化高分子/液晶複合材料(A4)は0℃以下においてもブルー相の光学組織を安定に保持した。繰り返し駆動耐久性の測定結果を表1に、駆動電圧評価の結果を表2に示す。
【0041】
実施例5
実施例1において、紫外光を照射する際にセルの温度を光重合性モノマー液晶混合物が等方相を示す温度である45℃としたこと以外は同様の手順により相安定化高分子/液晶複合材料(A5)を調製した。得られた相安定化高分子/液晶複合材料(A5)は室温以下において、高透明性と等方性を示した。繰り返し駆動耐久性の測定結果を表1に、駆動電圧評価の結果を表2に示す。
【0042】
実施例6
実施例1において、液晶組成物としてJC1041XX(チッソ社製)(I−N点 97℃、Δε
=5.7、Δn=0.142)92質量%及びキラル化合物2,5−ビス−[4'−(ヘキシ
ルオキシ)−フェニル−4−カルボニル]−1,4,3,6−ジアンハイドライド−D−ソルビトール(ISO-6OBA2)8質量%を混合した液晶組成物を用い、紫外光を照射する際にセルの温度を光重合性モノマー液晶混合物が光学的等方相であるブルー相を示す温度である80.0℃としたこと以外は同様の手順により相安定化高分子/液晶複合材料(A6)を調製した。ただし、重合前の光重合性モノマー液晶混合物の相転移温度はIso−82.0℃−BP−78.5℃−N*であった。
得られた相安定化高分子/液晶複合材料(A6)は0℃以下においてもブルー相の光学組織を安定に保持した。繰り返し駆動耐久性の測定結果を表1に、駆動電圧評価の結果を表2に示す。
【0043】
比較例1
実施例1において、光重合性モノマーを調製する際にメタクリレート骨格を有するモノマーであるドデシルメタクリレート(nC12M)に代えてアクリレート骨格を有するモノマーであるドデシルアクリレートを用いた以外は同様の手順により相安定化高分子/液晶複合材料(B1)を調製した。ただし、重合前の光重合性モノマー液晶混合物の相転移温度はIso−39.5℃−BP−35.8℃−N*であり、重合温度はBPが発現する温度である36.8℃とした。
得られた相安定化高分子/液晶複合材料(B1)は0℃以下においてもブルー相の光学組織を安定に保持した。繰り返し駆動耐久性の測定結果を表1に、駆動電圧評価の結果を表2に示す。
【0044】
比較例2
実施例1において、光重合性モノマーを調製する際にメタクリレート骨格を有するモノマーであるドデシルメタクリレート(nC12M)に代えてアクリレート骨格を有するモノマーであるトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)としたこと以外は同様の手順により相安定化高分子/液晶複合材料(B2)を調製した。ただし、重合前の光重合性モノマー液晶混合物の相転移温度はIso−38.5℃−BP−34.5℃−N*であり、重合温度はBPが発現する温度である35.5℃とした。得られた相安定化高分子/液晶複合材料(B2)は0℃以下においてもブルー相の光学組織を安定に保持した。繰り返し駆動耐久性の測定結果を表1に、駆動電圧評価の結果を表2に示す。
【0045】
比較例3
実施例1において、光重合性モノマーを調製する際にメタクリレート骨格を有するモノマーであるドデシルメタクリレート(nC12M)に代えてアクリレート骨格を有するモノマーであるペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)としたこと以外は同様の手順により相安定化高分子/液晶複合材料(B3)を調製した。ただし、重合前の光重合性モノマー液晶混合物の相転移温度はIso−39.0℃−BP−32.0℃−N*であり、重合温度はBPが発現する温度である32.6℃とした。得られた相安定化高分子/液晶複合材料(B3)は0℃以下においてもブルー相の光学組織を安定に保持した。繰り返し駆動耐久性の測定結果を表1に、駆動電圧評価の結果を表2に示す。
【0046】
比較例4
実施例1において、光重合性モノマーを調製する際にメタクリレート骨格を有するモノマーであるドデシルメタクリレート(nC12M)に代えてアクリレート骨格を有するモノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPEHA)としたこと以外は同様の手順により相安定化高分子/液晶複合材料(B4)を調製した。ただし、重合前の光重合性モノマー液晶混合物の相転移温度はIso−41.6℃−BP−33.8℃−N*であり、重合温度はBPが発現する温度である34.3℃とした。得られた相安定化高分子/液晶複合材料(B4)は0℃以下においてもブルー相の光学組織を安定に保持した。繰り返し駆動耐久性の測定結果を表1に、駆動電圧評価の結果を表2に示す。
【0047】
比較例5
実施例1において、光重合性モノマーを調製する際にアクリレート骨格を有するモノマーであるRM−257に代えて1,4−ジ(4−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピルオキシ)ベンゾイルオキシ)−2−メチルベンゼン(LC3DM)としたこと以外は同様の手順により相安定化高分子/液晶複合材料B5を調整した。ただし、重合前の光重合性モノマー液晶混合物の相転移温度はIso−35.8℃−BP−31.3℃−N*であり、重合温度はBPが発現する温度である34.0℃とした。得られた相安定化高分子/液晶複合材料(B5)は室温以下においてもブルー相の光学組織を安定に保持した。繰り返し駆動耐久性の試験結果を表1に、駆動電圧評価の結果を表2に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】アクリレート基とメタクリレート基を同時に有していない高分子ネットワークを用いた高分子/液晶複合材料の概念的構造を示す模式図である。
【図2】アクリレート基とメタクリレート基を同時に有する高分子ネットワークを用いた高分子/液晶複合材料の概念的構造を示す模式図である。
【図3】実施例及び比較例で行った高分子/液晶複合材料の繰り返し駆動耐久性評価に用いた光学系を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶基含有多官能性化合物からなる重合性ユニット(a)と、単官能性化合物からなる重合性ユニット(b)とを、重合性基を持たない液晶材料中に分散して、光学的等方相状態で重合した高分子/液晶複合材料であって、
該重合性ユニット(a)及び該重合性ユニット(b)のいずれか一方の重合性ユニットの少なくとも一部がメタクリレート骨格を有する化合物に由来し、他方の重合性ユニットの少なくとも一部がアクリレート骨格を有する化合物に由来し、且つメタクリレート骨格を有する化合物に由来する構成単位の含有率が、重合性ユニット(a)及び重合性ユニット(b)との共重合体(X)全体に対して1〜99質量%であり、
該共重合体(X)1〜40質量%と、
少なくとも室温でカイラルネマチック相又はブルー相を示し、且つ重合性基を持たない液晶材料(Y)99〜60質量%とからなり、
電界無印加時において光学的に等方性を示す高分子/液晶複合材料。
【請求項2】
液晶基含有多官能性化合物からなる重合性ユニット(a)の少なくとも一部がアクリレート骨格を有し、単官能性化合物からなる重合性ユニット(b)の少なくとも一部がメタクリレート骨格を有する請求項1記載の高分子/液晶複合材料。
【請求項3】
少なくとも一方が透明な一対の基板と、該一対の基板の少なくとも一方に形成された電極と、該一対の基板間に挟持された液晶層と、該一対の基板の一方の外側に形成された偏光板と、前記電極を介して液晶層に電界を印加する電界印加手段とを備えた液晶表示装置であって、
前記液晶層が、請求項1又は2記載の高分子/液晶複合材料を含むことを特徴とする液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−266633(P2008−266633A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83159(P2008−83159)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】