説明

高剛性ゴム材料

【課題】
高温領域での高剛性をも確保して、常温から高温までの広い範囲で温度依存性の小さい高剛性ゴム材料を提供する。
【解決手段】
下記の配合内容からなるEPDMゴム組成物の100℃ムーニー粘度が70〜100であり、その加硫組成物の剛性変化率が下記(1)式である高剛性ゴム材料

EPDMゴム100重量部に対し、
カーボンブラックが135〜180重量部、軟化剤が55〜100重量部、
カーボンブラック/軟化剤の配合比率が1.8〜2.5、
加硫剤と硫黄化合物を除いた配合量が300〜400重量部、
全硫黄配合量が1.0〜2.8重量部

(1)式
((100℃の30%モジュラス/23℃の30%モジュラス)−1)×100%≧−10%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度依存性の小さい高剛性ゴム材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムホースあるいはその他ゴム製品の薄肉化が、軽量・コスト低減を目的として検討されており、高剛性ゴム材料の利用が一つの手法となっている。ゴム材料の高剛性化には補強剤であるカーボンブラックの増量や熱可塑性樹脂の添加が一般的であるが、これらは常温領域では高剛性を発現するものの高温領域では効果がない。
【0003】
特許文献1には、耐油性ホースのゴム材料として、EPDM100重量部に対し150〜250重量部のカーボンブラックを配合した硫黄加硫系が開示されている。しかし、この配合系では薄肉化製品に適用できる応力特性を得る事ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−204924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、高温領域での高剛性をも確保して、常温から高温までの広い範囲で温度依存性の小さい高剛性ゴム材料を提供する。
なお、本発明における常温とは20℃〜25℃の範囲の温度であり、高温とは100℃〜110℃の範囲の温度を言う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の配合内容からなるEPDMゴム組成物の100℃ムーニー粘度が70〜100であり、その加硫組成物の剛性変化率が下記(1)式である高剛性ゴム材料であることを特徴とする。

EPDMゴム100重量部に対し、
全硫黄配合量が1.0〜2.8重量部、
カーボンブラックが135〜180重量部、軟化剤が55〜100重量部、
カーボンブラック/軟化剤の配合比率が1.8〜2.5、
総配合量が300〜400重量部

(1)式
((100℃の30%モジュラス/23℃の30%モジュラス)−1)×100%≧−10%
【0007】
本発明における各要素の態様を以下に例示する。
【0008】
1.EPDMゴム
EPDMゴムとして特に限定されないが、125℃におけるムーニー粘度(ML(1
+4)125℃)が40〜200、ジエン量が4〜7質量%、エチレン量が40〜70質量%であるものが好ましい。加工性等を考慮する場合は、適宜ブレンド材を用いても良い。
【0009】
2.硫黄
ふるい残分75μが3%以下の粉末硫黄。
【0010】
3.硫黄化合物
硫黄化合物としてはモルホリン・ジスルフィド、加硫時に硫黄を放出する加硫促進剤、アルキルフェノール・ジスルフィド、高分子多硫化物などを表す。加硫時に硫黄を放出する加硫促進剤としてはチウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤などがある。
【0011】
4.全硫黄配合量、硫黄配合量、硫黄化合物の配合量
全硫黄配合量とは、硫黄配合量と硫黄化合物配合量の硫黄含有率分に相当する硫黄量を加えた量の事を言う。その配合量はEPDMゴム100質量部に対し1.0〜2.8重量部であり、高温領域で剛性低下のない高剛性ゴム材料を得ることができる。
全硫黄配合量が1.0重量部未満では100℃における剛性が低下する一方、配合量が2.8重量部を超えると硬くなり過ぎる。
硫黄と硫黄化合物の配合量は、EPDMゴム100質量部に対し硫黄が0.4〜2.3重量部、硫黄化合物の配合量が0.7〜5.0重量部である。(硫黄含有率分に相当する硫黄量としては0.2〜0.9重量部となる。)
【0012】
5.他の配合剤
カーボンブラック
JISK6217カーボンブラック基本特性の、よう素吸着量が30〜80mg/g、DBP吸収量が80〜140cm3/100gのカーボンブラックが適している。
なお、配合量としてはEPDMゴム100質量部に対し135〜180重量部が良好である。
軟化剤
動粘度が360〜400mm2/S(JISK2283に準じて測定)のパラフィン系軟化剤が適している。
配合量としてはEPDMゴム100質量部に対し55〜100重量部が良好である。
その他
加硫促進助剤、老化防止剤、加工助剤、無機充填剤などを適宜配合する。
【0013】
用途
高剛性ゴム材料の用途としては、エアークリーナホース、ウォーターホースやシール部品のように、使用時に高温となる自動車用部品が例示できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、広い温度領域で剛性変化率が小さい高剛性ゴム材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
全硫黄配合量、加硫剤と硫黄化合物を除いた配合量、そして各配合剤である硫黄、各種硫黄化合物、カーボンブラック、軟化剤の配合量を変えた時の剛性等を測定するため、表1の配合表に基づき配合剤の種類と配合量を適宜変えて、16種類の実施例と11種類の比較例の試料を作成した(表3に記載)。
【0016】
【表1】

【0017】
加硫剤と硫黄化合物を除いた配合量の4水準、硫黄配合量の6水準、硫黄化合物の種類として3〜5水準、硫黄化合物の配合量の4水準、全硫黄配合量の12水準をそれぞれ組み合わせて検討した。硫黄化合物としては、モルホリン・ジスルフィド(バルノックR)、加硫時に硫黄を放出する加硫促進剤であるチウラム系加硫促進剤(ノクセラーTET−G、ノクセラーTRA、ノクセラーTT)、チアゾール系加硫促進剤(ノクセラーMDB−P)を使用し、3種類から5種類の組み合わせで検討した。
表1に各加硫促進剤およびバルノックRの硫黄含有率を括弧内に示し、それらの硫黄含有率に相当する配合量をカッコ内に併記した。
加硫剤と硫黄化合物を除いた配合量の4水準は、表2記載のカーボンブラック量と軟化剤量をそれぞれ組み合わせ、その他の配合剤を加えたものである。
なお、カーボンブラックは、よう素吸着量が44mg/g、DBP吸収量が115cm3/100gのFEFを使用した。また、軟化剤は動粘度が380mm2/S(JISK2283に準じて測定)のパラフィン系オイルを使用した。
【0018】
【表2】

【0019】
各試料の100℃のムーニー粘度、23℃の30%モジュラス(常温剛性の測定)、100℃の30%モジュラス(高温剛性の測定)の測定データと剛性変化率を表3に示す。
なお、100℃のムーニー粘度以外は加硫ゴムでのデータであり、加硫は170℃×10分のプレス加硫で試料を作成した。
【0020】
各試験の測定法について説明する。
【0021】
ムーニー粘度
JISK6300−1に準拠して、100℃の温度でL形のロータを用いて1分間予熱し、ロータを4分間回転させてムーニー粘度(ML(1+4)100℃)を測定した。
【0022】
30%伸長モジュラス
JISK6251に準拠して、それぞれ23℃、100℃での30%伸長時のモジュラスを測定した。なお、剛性変化率は次の式より求めた。
((100℃の30%モジュラス/23℃の30%モジュラス)−1)×100%
【0023】
表2、表3の配合内容に基づく測定結果より、EPDMゴム100重量部に対しカーボンブラックが135〜180重量部、軟化剤が55〜100重量部、カーボンブラック/軟化剤の配合比率が1.8〜2.5、加硫剤と硫黄化合物を除いた配合量が300〜400重量部、全硫黄配合量が1.0〜2.8重量部(硫黄が0.4〜2.3重量部、硫黄化合物配合量の硫黄含有率分に相当する硫黄量が0.2〜0.9重量部)からなるEPDMゴム組成物の100℃ムーニー粘度が70〜100の場合、剛性変化率は−10%より大きくなる。すなわち実施例は23℃から100℃の温度領域で剛性変化率が小さい事が分かる。一方、比較例は剛性変化率が−10%未満である。
【0024】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の配合内容からなるEPDMゴム組成物の100℃ムーニー粘度が70〜100であり、その加硫組成物の剛性変化率が下記(1)式である高剛性ゴム材料

EPDMゴム100重量部に対し、
カーボンブラックが135〜180重量部、軟化剤が55〜100重量部、
カーボンブラック/軟化剤の配合比率が1.8〜2.5、
加硫剤と硫黄化合物を除いた配合量が300〜400重量部、
全硫黄配合量が1.0〜2.8重量部

(1)式
((100℃の30%モジュラス/23℃の30%モジュラス)−1)×100%≧−10%
【請求項2】
前記全硫黄配合量は硫黄配合量と硫黄化合物配合量の硫黄含有率分に相当する硫黄量を加えた量である請求項1記載の高剛性ゴム材料
【請求項3】
前記硫黄化合物はモルホリン・ジスルフィドおよび加硫時に硫黄を放出する加硫促進剤、または加硫時に硫黄を放出する加硫促進剤である請求項2記載の高剛性ゴム材料
【請求項4】
前記加硫促進剤はチウラム系加硫促進剤、または/およびチアゾール系加硫促進剤である請求項3記載の高剛性ゴム材料



【公開番号】特開2013−91746(P2013−91746A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235851(P2011−235851)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】