説明

高厚コーティングの製造のための透明な光重合可能なシステム

本発明は、高厚コーティングの製造のための透明な光重合可能なシステム、それらの適用方法、およびそれらで被覆された固体表面に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高厚(high thickness)コーティングを製造するための透明な光重合可能なシステム、それらの適用方法、およびそれらで被覆された固体表面に関する。
【0002】
本明細書中、“高厚コーティング”の表現は、10ミクロン以上の厚さを有する固体状コーティングを意味する。
【0003】
特に、本発明の透明な光重合可能なシステムは、式Iの二官能性光開始剤を含む:
【化1】

ここで、XおよびXは異なっており;
【化2】

ここで、RおよびRは、独立して、直鎖状または分枝状または環状C〜Cアルキルであり、または共にC〜Cアルキレンを表し、Zは、−NRまたは−OHであり、ならびにRおよびRは、独立して、C〜C直鎖状もしくは分枝状もしくは環状アルキル、またはC〜Cオキサアルキレンである。
【背景技術】
【0004】
既知の光重合可能なシステムは、電磁励起、一般的にはUV照射によりラジカルを生じることができる官能基が分子内に存在することにより特徴付けられる、光開始剤を含有する。
【0005】
これらの化合物は、例えば、US 3,715,293、DE 2722264、EP 161463、EP 3002、EP 88050、EP 284561、EP 192967、EP 850253に記載され、通常、不飽和エチレンシステムの重合に用いられる。
【0006】
表面硬化と深部硬化の双方において良好な光重合を達成するためには、剤内で種々の光開始剤を結びつけることが一般的な方法である。
【0007】
本出願人による先のUS 6,492,514には、同一分子内に2つの活性な異なる官能基を含有する化合物が記載されており、双方の官能基は、光化学反応でラジカルを生じることができて、光開始剤として高い活性を示す。
【0008】
これらの分子は、それぞれの光開始剤が2種の官能基の1種を含有する、2種の光開始剤の使用と比較して、驚くべき相乗効果をもたらすことができる。
【発明の開示】
【0009】
本出願人による先のUS 6,492,514の化合物のうち、式I
【化3】

ここで、XおよびXは異なっており;
【化4】

ここで、RおよびRは、独立して、直鎖状または分枝状または環状C〜Cアルキルであり、または共にC〜Cアルキレンを表し、Zは、−NRまたは−OHであり、ならびにRおよびRは、独立して、C〜C直鎖状もしくは分枝状もしくは環状アルキル、またはC〜Cオキサアルキレンである、
で表される化合物が、深部硬化システムの実現のために有益な透明な光重合可能なシステムにおいて、驚くべきことに、特に高い反応性および剤内での改善された溶解性を示すことを見出した。これらの化合物を含む透明な光重合可能なシステムは、ジフェニルスルフィド誘導体を含有する類似体に対して、より良好でより速い架橋を示す。
【0010】
式Iの二官能性の化合物を含む透明なシステムは、好ましくは10〜100ミクロンの厚さを有する高厚コーティングの製造のために特に有益であり、それらが、本発明の基本的な目的である。
【0011】
特に、本発明の好ましい透明な光重合可能なシステムは、光開始剤として、以下の化合物、Ia、Ib、IcまたはIdの少なくとも1種を含む。
【化5】

【0012】
金属、木、またはプラスチック表面の高厚コーティングを実現するための方法であって、反応性のエチレン不飽和オリゴマーおよび/またはモノマー、および少なくとも1種の、式I、好ましくは式Ia、Ib、IcまたはIdの二官能性の光開始剤を含有する透明な光重合可能なシステムを調製し、光重合後に10ミクロン以上、好ましくは10〜100ミクロンの厚さを有するコーティングを得るために適用し、その後に、400nmまでのUV−可視スペクトルを放つ光源で光重合する、前記方法が本発明のさらなる目的である。
【0013】
“透明な光重合可能なシステム”および“透明な光重合可能な剤”は、本明細書中では、顔料、染料および/または乳白剤、および分散された固体を含まない、少なくとも1種の光開始剤を有する反応性オリゴマーまたはモノマー、充填剤、分散剤、および一般的に用いられる他の添加剤の混合物を意味する。
【0014】
“光重合”の用語は、広い意味を対象としており、例えば、プレポリマーなどの重合性材料の重合または架橋、単一のモノマーの単独重合および共重合、ならびにこの種の反応の組み合わせを含む。
【0015】
上記のシステムに有益なモノマーは、例えば、アクリロニトリル、アクリルアミドおよびその誘導体、ビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、単官能性および多官能性アリルエーテル、例えば、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、スチレンおよびアルファ−メチルスチレン、アクリル酸およびメタクリル酸の、脂肪族アルコール、グリコール、ポリヒドロキシ化化合物とのエステル、例えば、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンまたはアミノアルコール、ビニルアルコールの、脂肪酸またはアクリル酸とのエステル、フマル酸またはマレイン酸の誘導体を含む。
【0016】
本発明で有益なオリゴマーは、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル官能基、マレイン官能基またはフマル官能基を有するポリエーテルを含む。
【0017】
本発明の式Iの化合物は、光開始剤として作用し、単独でも他の光開始剤と組み合わせても用いることができ、他の光開始剤は、例えば、ベンゾフェノンおよびその誘導体(例えば、メチルベンゾフェノン、トリメチルベンゾフェノン)、アセトフェノンおよびその誘導体、例えば、α−ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン、ケトスルホン(1−[4−(4−ベンゾイル−フェニルスルファニル)−フェニル]−2−メチル−2−(トルエン−4−スルホニル)−プロパン−1−オンなど)、α−ヒドロキシシクロアルキルフェニルケトン、ジアルコキシアセトフェノン(オリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]−プロパノン]、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパノン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−ブタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルスルファニル−フェニル)−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オン、1−[2,3−ジヒドロ−1−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)フェニル]−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−イル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノン、1−[2,3−ジヒドロ−3−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)フェニル]−1,1,3−トリメチル−1H−インデン−5−イル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノン、4,3’−ビス(α,α−ヒドロキシ−イソブチリル)−ジフェニルメタン、4,4’−ビス(α,α−ヒドロキシ−イソブチリル)−ジフェニルメタンなど)、ベンゾインのエーテル、ベンジルケタール(ベンジルジメチルケタールなど)、フェニルグリオキシレートおよびその誘導体(フェニルグリオキシル酸メチルエステル、2−(2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシエチル)オキシフェニル酢酸のエチルエステルなど)、モノアシルホスフィンオキシド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ジフェニル−ホスフィンオキシドまたはフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィン酸のエチルエステルなど、ビスアシルホスフィンオキシド(ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチル−ペン−1−チル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(2,4−ジペントキシフェニル)ホスフィンオキシドなど)、トリスアシルホスフィンオキシド、ハロゲノメチルトリアジン、フェロセンまたはチタノセン誘導体、ボレートまたはO−アシルオキシム基を含有する光開始剤、スルホニウム、ホスホニウムまたは芳香族ヨードニウム塩などである。
【0018】
トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸のエステルなどの3級アミンと組み合わせての、式Iの化合物の使用は、酸素の阻害作用を減少させることにより架橋スピードを増大させ、特に有利であることが明らかとなった。
【0019】
本発明の式Iの化合物に加えて、多くの他の成分を光重合可能システムに含ませることができ、これらは例えば、熱安定剤、増感剤、立体障害のあるアミンなどの光酸化安定剤、酸化防止剤、酸素抑制剤、有機パーオキシドおよび無機パーオキシドなどの熱ラジカル発生剤、パーエステル(peresters)、ヒドロパーオキシド、ベンゾピナコール、アゾイソブチロニトリルなどのアゾ誘導体、コバルト(II)塩などの金属化合物、マンガン、消泡剤、充填剤、ガラスおよび炭素繊維、チキソトロピック剤、および他の添加剤である。
【0020】
光重合システムに含まれる他の成分は、化学的に不活性な光重合しないポリマー、例えば、ニトロセルロース、ポリアクリルエステル、ポリオレフィン等、または他のシステム、例えば、パーオキシドおよび空気中の酸素または酸触媒作用もしくは熱活性化で架橋することができるポリマー、例えば、ポリイソシアネート、尿素、メラミンまたはエポキシ樹脂であってもよい。
【0021】
例えば、木、紙、ボール紙、プラスチック、金属などの固体基材を、高厚の透明なコーティング層でコーティングするために、本発明の光重合可能なシステムを利用することに留意することは重要である。
【0022】
式Ia、Ib、IcまたはIdの少なくとも1種の化合物を含む光重合可能なシステムの光重合により、10〜100ミクロンの厚さを有する透明なコーティングで被覆された固体基材が、本発明の更なる目的である。
【0023】
式Iの化合物は、一般的には、光重合可能なシステム中、光重合可能なシステムの全重量に対し、0.01〜20重量%、好ましくは、0.5〜5重量%の量で用いられ、それは完全にそのシステムに適合し、同システムに増大された光化学的反応性および光安定性を付与する。
【0024】
式Iの化合物、および特に化合物Ia、Ib、IcおよびIdは、通常の透明な光重合可能なシステムに優れた溶解性を示す。
【0025】
式Iの化合物は、有色素の光重合可能なシステムにおいても非常に有効な光開始剤であり、例えば、光架橋可能なインクの製造のためにも有益である。
【0026】
本発明により製造される光重合可能なシステムの光重合に有益な光源の例は、400nmまでのUV−可視光領域の発光バンドを有する、水銀蒸気ランプまたはスーパーアクチニック(superactinic)ランプまたはエキシマランプである。
【0027】
有益な光源には、太陽光、および180nmからIR領域までの波長の電磁放射線を放つ、他の人工的な光源も含まれる。
【0028】
式Iの化合物は、科学的文献および特許に記載され、当業者によく知られた種々の方法を用いて合成することができる。
【0029】
式Iの化合物の製造例、ならびにそれらを含有する透明な光重合可能なシステムおよび有色素の光重合可能なシステムの製造例は、本明細書中に記載されている。
【0030】
本発明の種々の修正および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明らかとなるだろう。本発明が、例示の態様および本明細書中に示した例により、不当に限定される意図はなく、そのような例および態様は、特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲の単なる例として提示される。
【0031】
例1
式Iaの化合物、2−エチル−2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−ブタン−1−オンの合成
1. 2−ブロモ−1−{4−[4−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−エチル−ブタン−1−オンの製造
7.83g(58.75mmol)のAlClを、100mlのジクロロメタン中の10g(58.75mmol)のジフェニルエーテルおよび15.4gの2−ブロモ−2−エチルブチリルブロミド(98.4%w/w)(58.75mmol)の溶液に、攪拌しながら、−10〜−12℃の温度で、30分間、分割して添加した。
添加を終えて15分後に、15.24g(64.62mmol)のα−ブロモイソブチリルブロミド97.5%を添加した。その後に、温度を−10〜−12℃に維持し、8.61gのAlClを添加した。
添加の終わりに、混合物を、1時間攪拌しながら、同じ温度で維持し、その後に400mlの氷水に注ぎこみ、8mlの濃塩酸で酸性にした。有機相を分離し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。
29.15gの生成物がオイルとして得られた。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ (ppm)): 8.25, m, 2H; 8.15, m, 2H; 7.05, m, 4H; 2.3, m, 4H; 2.05, s, 6H; 0.95, t, 6H.
【0032】
2. 2−エチル−2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−ブタン−1−オンの製造
60mlのジクロロメタン中に溶解した、29.15g(0.0587mol)の2−ブロモ−1−{4−[4−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−エチル−ブタン−1−オンの溶液に、16.88g(0.211mol)の50%NaOHおよび291.5mgの50%BTEACを添加した。30分毎に291.5mgのBTEACを添加しながら、反応物を3時間還流し、その後、水およびジクロロメタンで希釈した。
相を分離し、有機相を塩水で洗浄し、分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で乾燥した。
20.2gの化合物がオイルとして得られた。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ (ppm)): 8.13, d, 2H; 8.07, d, 2H; 7.1, m, 4H; 4.35, s, 1H ; 3.97, s, 1H ; 1.9-2.15, m, 4H; 1.65, s, 6H; 0.8, t, 6H.
【0033】
例2
式Ibの化合物、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(1−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの合成
1. 2−ブロモ−1−[4−(4−シクロヘキサンカルボニル−フェノキシ)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オンの製造
907mgのAlClを、10mlのジクロロメタン中の1.103g(6.48mmol)のジフェニルエーテルおよび969mg(6.48mmol)のシクロヘキシルカルボニルクロリド(98%w/w)の溶液に、0〜5℃の温度で、分割せずに添加した。30分後、1.68g(7.13mmol)のα−ブロモイソブチリルブロミドおよび950mg(7.13mmol)のAlClを、0〜5℃で添加した。
1時間後、168mgのα−ブロモイソブチリルブロミドおよび95mgのAlClを第2回目として添加した。30分後、反応物を、1%の濃HClを含有する水性溶液中に注ぎ込み、有機相を分離し、塩水および5%NaHCOで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。
2.8gの生成物を黄色オイルとして得た。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ (ppm)): 8.25, d, 2H; 7.97, d, 2H; 7.07, m, 4H; 3.25, m, 1 H ; 2.05, m, 6H;1.2〜1. 95, m, 10H.
【0034】
2. 2−ブロモ−1−{4−[4−(1−ブロモ−シクロヘキサンカルボニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの製造
48%HBrの一滴を、60mlのジクロロメタン中に2.7g(6.29mmol)の2−ブロモ−1−[4−(4−シクロヘキサンカルボニル−フェノキシ)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オンが溶解された溶液に添加した。5mlのジクロロメタン中に溶解した0.322ml(6.29mmol)のブロミドを、15分間滴加した。3時間後に、有機相を、水およびメタ重亜硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮して、黄色オイルとして、3.2gの生成物を得た。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ (ppm)): 8.25, d, 2H; 8.15, d, 2H; 7.1, m, 4H; 2.07, s, 6H; 1.3〜2.45, m, 10H.
【0035】
3. 2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(1−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの製造
1.83g(22.86mmol)の50%NaOH、および32mgのBTEACを、10mlのジクロロメタン中の3.2g(6.29mmol)の2−ブロモ−1−{4−[4−(1−ブロモ−シクロヘキサンカルボニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの溶液に添加した。
混合物を、ジクロロメタンを攪拌留去しながら、内部温度が50℃になるまで加熱し、その後に、20分毎に32mgのBTEACを加えながら、1時間還流した。溶液を冷却し、10mlのジクロロメタンおよび20mlの水を加えた。分離後、有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮すると、2.3gのオイル状化合物が得られ、これは放置すると結晶化した。このようにして得られた固体は、石油エーテルと共に粉末化し、濾過した。
2gの固体化合物が得られ、TPGDA中、20%より高い溶解性を示した。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ (ppm)): 8.15, d, 2H; 8.07, d, 2H; 7.07, m, 4H; 2.10〜1.25, m, 10H; 1.65, s, 6H.
【0036】
例3
式Icの化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−[4−(2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−プロパン−1−オンの合成
1. 2−ブロモ−2−メチル−1−(4−フェノキシ−フェニル)−プロパン−1−オンの製造
7.82gのAlClを、100mlのジクロロメタン中の10g(0.0587mol)のジフェニルエーテルおよび7.44ml(0.0587mol)のα−ブロモイソブチリルブロミド(97.5%w/w)の溶液に、約30分添加し、温度を0〜5℃に維持した。
添加終了後30分で、反応物を、200mlの氷水および4mlの濃縮HClでクエンチした。有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮すると、18.7gのオイルを得、これを、更なる精製を行わずに以下の反応に用いた。
【0037】
2. 2−メトキシ−3,3−ジメチル−2−(4−フェノキシ−フェニル)−オキシランの製造
17.6g(0.0551mol)の2−ブロモ−2−メチル−1−(4−フェノキシ−フェニル)−プロパン−1−オンを、170mlのメタノール中に溶解させた。11mlのメチラートナトリム溶液(メタノール中30%)を室温で添加した。15分後、溶媒を蒸発させ、生成物は、更なる精製を行わずに以下の反応に用いた。
【0038】
3. 2−メチル−2−モルホリン−4−イル−1−(4−フェノキシ−フェニル)−プロパン−1−オンの製造
14.89g(0.0551mol)の2−メトキシ−3,3−ジメチル−2−(4−フェノキシ−フェニル)−オキシランを、150mlの無水アセトニトリルに溶解させた。
58.62gの無水過塩素酸リチウム(0.551mol)、および48gのモルホリン(0.551mol)を、攪拌下で添加した。反応物を4時間還流し、溶媒を蒸発させた。粗生成物を水に溶解させ、ジクロロメタンで抽出し、有機相を水で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。その後に、粗生成物を5%HClで処理し、ジエチルエーテル(50ml)で水相を抽出し、その後に、10%NaOHでアルカリ性にし、ジクロロメタンで抽出した。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮した。
12gの黄色オイルが得られ、更なる精製を行わずに、以下の反応に用いた。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ(ppm)): 8.6, d, 2H; 7.4, m, 2H; 7.24, m, 1 H; 7.1, d, 2H; 6.95, d, 2H; 3.7, m, 4H; 2.6, m, 4H; 1.35, s, 6H.
【0039】
4. 1−{4−[4−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オンの製造
21.59g(0.162mol)のAlClを、240mlのジクロロメタン中の12g(0.0369mol)の2−メチル−2−モルホリン−4−イル−1−(4−フェノキシ−フェニル)−プロパン−1−オンおよび9.57g(0.0406mol)のα−ブロモイソブチリルブロミド(97.5%w/w)の溶液に、0〜5℃で攪拌しながら、分割して添加した。添加の最後に、温度を25℃にして、2.5時間後に、500mlの氷水で反応をクエンチした。有機相を分離し、水および5%NaOHで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮すると、17.5gの赤色調のオイルが得られた。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ (ppm)): 8.6, d, 2H; 8. 25, d, 2H; 7.07, m, 4H; 3.7, m, 4H; 2.07, m, 4H; 2.05, s, 6H; 1.26, s, 6H.
【0040】
5. 1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オンの製造
5.31g(0.0664mol)の50%NaOH、および175mgの50%BTEACを、35mlのジクロロメタン中の17.5g(0.0369mol)の1−{4−[4−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オンの溶液に添加した。1時間毎に175mgのBTEACを添加しながら反応物を3時間還流し、その後に20mlのジクロロメタンおよび20mlの水で希釈した。有機相を分離し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮して、14.7gのオイルを得た。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ (ppm)): 8.65, d, 2H; 8.13, d, 2H; 7.05, m, 4H; 4.03, s, 1 H; 3.68, m, 4H; 2.57, m, 4H; 2.55, s, 6H; 1.35, s, 6H.
【0041】
例4(比較)
1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェニルスルファニル]−フェニル}−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オン(化合物II)の合成
1. 2−ブロモ−2−メチル−1−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−プロパン−1−オンの製造
7.01g(0.0526mol)のAlClを、100mlのジクロロメタン中の10g(0.0526mol)のジフェニルスルフィドおよび6.67ml(0.0526mol)のα−ブロモイソブチリルブロミド97.5%(w/w)の溶液に、0〜5℃で30分間添加した。添加が終わって30分後に、反応物を、200mlの水、氷および4mlの濃HClの混合物に注ぎ込んだ。有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮すると、17.05gのオイルが得られ、これを更なる精製を行うことなく以下の反応に用いた。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ (ppm)): 8.1, d, 2H; 7.52, m, 2H; 7.4, m, 3H; 7.15, d, 2H; 2.05, s, 6H.
【0042】
2. 2−メトキシ−3,3−ジメチル−2−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−オキシランの製造
3g(0.0551mol)の2−ブロモ−2−メチル−1−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−プロパン−1−オンを、30mlのメタノールに溶解させた。メタノール中の30%メチラートナトリウム溶液1.79mlを室温で添加した。15分後、溶液を濃縮し、生成物は更なる精製を行うことなく以下の反応に用いた。
【0043】
3. 2−メチル−2−モルホリン−4−イル−1−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−プロパン−1−オンの製造
2.56g(8.94mmol)の2−メトキシ−3,3−ジメチル−2−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−オキシランを、30mlの無水アセトニトリルに溶解させ、その後に、9.51gの無水過塩素酸リチウム(89.4mmol)、および7.79gのモルホリン(89.4mmol)を、攪拌下で添加した。反応物を、穏やかに4時間還流し、その後に、溶媒を蒸発させた。粗生成物を水に溶解させ、ジクロロメタンで抽出した。有機相を3回、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。得られた生成物を、溶離液としてジクロロメタンを用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、2.53gの黄色オイルが得られた。
NMR (300 MHz, δ (ppm)): 8.4, d, 2H; 7.53, m, 2H; 7.45, m, 1H; 7.15, d, 2H; 3.65, m, 4H; 2.55, m, 4H, 1.30, s, 6H.
【0044】
4. 1−{4−[4−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−フェニルスルファニル]−フェニル}−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オンの製造
4.30g(32.20mol)のAlClを、50mlのジクロロメタン中の2.5g(7.32mmol)の2−メチル−2−モルホリン−4−イル−1−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−プロパン−1−オンおよび1.81g(7.69mmol)のα−ブロモイソブチリルブロミド(97.5%w/w)の溶液に、攪拌下、0〜5℃で、分割して添加した。添加の最後に、温度を25℃とし、2.5時間後に、反応を200mlの氷水でクエンチした。有機相を分離し、水および5%NaOHで洗浄してから、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮すると、赤色調のオイルとして、3.59gの生成物が得られた。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ (ppm)): 8.55, d, 2H; 8.25, d, 2H; 7.4, m, 4H; 3.7, m, 4H; 2.51, m, 4H; 2.05, s, 6H; 1.35, s, 6H.
【0045】
5. 1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェニルスルファニル]−フェニル}−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オンの製造
1.05g(13.18mmol)の50%NaOH、および35.9mgのBTEAC(50%)を、25mlのジクロロメタン中の3.59g(7.32mmol)の1−{4−[4−(2−ブロモ−2−メチル−プロピオニル)−フェニルスルファニル]−フェニル}−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オンの溶液に添加した。35.9mgのBTEACを1時間毎に添加しながら反応物を3時間還流してから、15mlのジクロロメタンおよび15mlの水で希釈した。有機相を分離し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して、2.93gの化合物IIをオイルとして得た。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ (ppm)): 8.65, d, 2H; 8.00, d, 2H; 7.4, m, 4H; 3.95, sb, 1H; 3.68, m, 4H; 2.57, m, 4H; 1.65, s, 6H; 1.30, s, 6H.
【0046】
例5(比較)
2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(1−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボニル)−フェニルスルファニル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(化合物III)の合成
1. 2−ブロモ−1−[4−(4−シクロヘキサンカルボニル−フェニルスルファニル)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オンの製造
3.76gのAlClを、50mlのジクロロメタン中の5g(26.84mmol)のジフェニルスルフィドおよび4.01g(26.84mmol)のシクロヘキシルカルボニルクロリド(98%w/w)の溶液に、0〜5℃で分割せず添加した。30分後に、6.96g(29.52mmol)のα−ブロモイソブチリルブロミドおよび3.93g(29.52mmol)のAlClを、0〜5℃で添加した。
1時間後に、696mgのα−ブロモイソブチリルブロミドおよび393mgのAlClの2回目の添加を行った。30分後に、反応物を、水および1%濃HClの溶液に注ぎ込み、有機相を分離し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、11.95gの黄色オイルを得た。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ (ppm)): 8.15, d, 2H; 7.93, d, 2H; 7.47, d, 2H; 7.35, d, 2H; 3.23, m, 1H ; 2.05, s, 6H; 1.2〜1.95, m, 10H.
【0047】
2. 2−ブロモ−1−{4−[4−(1−ブロモ−シクロヘキサンカルボニル)−フェニルスルファニル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの製造
48%HBrの一滴を、120mlのジクロロメタンに溶解した11.95g(26.83mmol)の2−ブロモ−1−[4−(4−シクロヘキサンカルボニル−フェニルスルファニル)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オンに添加した。15分間で、10mlのジクロロメタン中に溶解した1.37ml(26.83mmol)の臭素を滴加した。1時間後に、有機相を、水およびメタ重亜硫酸ナトリウム溶液で洗浄した。有機相を分離し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、14.07gの帯黄色オイルを得た。
NMR (300 MHz, CDCl3 δ (ppm)): 8.12, d, 2H; 8.05, d, 2H; 7.4, m, 4H; 2.05, s, 6H; 1.3〜2.45, m, 1OH.
【0048】
3. 2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(1−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボニル)−フェニルスルファニル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの製造
7.73g(96.59mmol)の50%NaOH、および140.7mgのBTEACを、30mlのジクロロメタン中の14.07g(26.83mmol)の2−ブロモ−1−[4−(4−シクロヘキサンカルボニル−フェニルスルファニル)−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オンの溶液に添加した。
30分毎に140.7mgのBTEACを添加しながら、混合物を1時間攪拌下で還流した。溶液を冷却してから、ジクロロメタンおよび水を添加した。分離後、有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、オイルを得て、石油エーテルで粉末とし、9.2gの生成物IIIを、TPGDA中約8%の溶解性を示す帯白色の固体として得た。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ (ppm)): 8.05, m, 4H; 7.40, m, 4H; 3.92, s, 1H ; 3.15, s, 1H; 2.10〜0.9, m, 10H; 1.60, s, 6H.
【0049】
例6
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−ブタン−1−オン(化合物Id)の合成
1. 2−ブロモ−2−メチル−1−(4−フェノキシ−フェニル)−プロパン−1−オンの製造
39.19gの三塩化アルミニウム(0.294mol)を、250mlのジクロロメタン中の50gのジフェニルエーテル(0.294mol)、および37.27mlのα−ブロモイソブチリルブロミドの溶液に、0℃〜5℃で、45分間添加した。
1時間後に、反応物を、0℃で、400mlの水中の20mlの濃HClの溶液でクエンチした。有機相を分離し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、93.33gの生成物を帯黄色オイルとして得た。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ (ppm)): 8.2, d, 2H; 7.4, d, 2H; 7.2, m, 1H ; 7.07, d, 2H; 6.95, d, 2H; 2.1, s, 6H.
【0050】
2. 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−フェノキシ−フェニル)−プロパン−1−オンの製造
69.4g(0.347mol)の20%NaOHを、100mlのイソプロパノール中の92.33gの2−ブロモ−2−メチル−1−(4−フェノキシ−フェニル)−プロパン−1−オンの懸濁液に添加した。反応の終了時には、生成物は完全に溶解していた。反応物を濃HClで中和し、イソプロパノールを蒸発させた。残留物を水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、黄色オイルとして71.84gの生成物を得た。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ (ppm)): 8.04, d, 2H; 7.4, d, 2H; 7.2, m, 1H; 7.1, d, 2H; 7.00, d, 2H; 4.2, s, 1H ; 1,6, s, 6H.
【0051】
3. 2−ブロモ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−ブタン−1−オンの製造
7.8gの三塩化アルミニウム(0.0585mol)を、100mlのジクロロメタン中の5g(0.0195mol)の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−フェノキシ−フェニル)−プロパン−1−オンおよび2.9ml(0.0214mol)のα−ブロモイソブチリルブロミドの溶液に、0〜5℃で、10分間、分割して添加した。1時間後、反応物を、0℃で、200mlの水中の、4mlの濃HClの溶液でクエンチした。有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、9gの黄色オイルを得、更なる精製を行わずに以下の反応に用いた。
【0052】
4. 2−ジメチルアミノ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−ブタン−1−オンの製造
ジエチルエーテル中の7.9g(0.0195mol)の2−ブロモ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−ブタン−1−オンの溶液を、THF中の58.5mlのジメチルアミン2M溶液(0.117mol)に、温度を0℃〜5℃に維持しながら滴加した。一晩して、反応物をエーテルで希釈し、水で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、7.47gのオイルを得、更なる精製を行わずに以下の工程に用いた。
【0053】
5. 2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−ブタン−1−オンの製造
70mlのアセトニトリル中の、7.2gの2−ジメチルアミノ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−ブタン−1−オンの溶液に、2.78ml(0.0234mol)のベンジルブロミドを滴加した。
3時間後、室温で、溶媒を蒸発させ、半固体の泡状物質を得、これを70mlの水および70mlのエタノールに懸濁させ、5.86ml(0.0585mol)の30%NaOHを添加し、反応物を3時間60℃で加熱した。
エタノールを蒸発させ、溶液を酢酸で中和し、ジエチルエーテルで抽出した。
有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、7gの粗生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィーで精製して、帯黄色オイルとして4.7gの生成物を得た。
NMR (300 MHz, CDCl3, δ(ppm)): 8.4, d, 2H; 8.1, d, 2H; 7.0-7.3, m, 9H; 3.22, s, 2H; 2.4, s, 6H; 2.1, m, 1H; 1.85, m, 1H; 1.65, m, 6H; 0.70, t, 3H.
【0054】
適用テスト
透明な光重合可能なシステム
以下の適用可能性テストで評価される、光重合可能システムの製造のために用いられる物質は、以下のものである:
Ebecryl(登録商標)220(六官能性芳香族ウレタンアクリレート、UCB、ベルギーから);
OTA480(登録商標)(グリセロールから誘導される三官能性オリゴマーアクリレート、UCB、ベルギーから);
HDDA(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート;UCB、ベルギーから)。
【0055】
光開始剤として、以下の化合物が用いられた:
2−エチル−2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−ブタン−1−オン(Ia);
2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(1−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(Ib);
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−[4−(2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−プロパン−1−オン(Ic);
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−ブタン−1−オン(Id);
1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェニルスルファニル]−フェニル}−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オン(II、比較);
2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(1−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボニル)−フェニルスルファニル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(III、比較)。
【0056】
評価される光重合可能なシステムのためのマトリックスは、
Ebecryl220(登録商標) 75%
OTA480(登録商標) 12.5%
HDDA 12.5%
を混合して製造した(%w/w)。
光重合可能なシステムを製造する。それらの組成は表1に示される(%w/w)。
【表1】

光架橋可能なシステムの評価は、反応性、深部硬化、変換パーセンテージ、ならびに黄色度および白色度の決定によりなされた。
【0057】
反応性
光重合可能なシステムを、エレクトリックストレッチフィルム(electric stretch-film)に取り付けられたバーコーター(bar-coater)を用いて、ワニスが塗られたボール紙上に50ミクロンの厚さで置き、そして光源から26cmの距離で照射した。80W/cmのパワーの中圧水銀ランプを備えたGiardina(登録商標)光重合装置(photopolymerisator)を用いた。
光架橋の後のコーティングの厚さは、37ミクロンであった(Minitest 3000装置で測定した)。
m/分で測定された光重合スピードは、システムの完全な表面の架橋(“タックフリー”)をもたらす最大可能スピードである。表面の架橋は、表面が“親指ねじり試験(thumb twist test)”で損傷がないとき、完全であると判断される。
研磨紙でラビング後の可視損傷に対しての表面抵抗をもたらす最大スピード(m/分で表現される)も測定された(表面研磨)。
最大スピードが大きくなればなるほど、システムの効率が高くなる。
得られた結果を表2に示す。
【表2】

【0058】
深部硬化
光重合可能なシステムを、エレクトリックストレッチフィルムに取り付けられたバーコーターを用いて、ガラス支持体上に100ミクロンの厚さで置き、そして光源から26cmの距離にて、10m/分の速度で照射した。80W/cmのパワーの中圧水銀ランプを備えたGiardina(登録商標)光重合装置を用いた。
光架橋の後の光重合可能なシステムの厚さは、65ミクロンであった(Minitest 3000装置で測定した)。
深部硬化は、、光架橋されたシステムの弾性指標である振り子硬度を測定する、ISO 1522-1998標準テスト方法により決定された。
硬度が高ければ高いほど(振り子の振動の長い時間)、コーティングの弾性は小さく、およびコーティングの全架橋が、深部においても高度となる。
得られた結果を表3に示す。
【表3】

【0059】
白色度および黄色度
光重合可能なシステムを、エレクトリックストレッチフィルムに取り付けられたバーコーターを用いて、ワニスが塗られたボール紙上に100ミクロンの厚さで置き、そして光源から26cmの距離にて、10m/分のスピードで通過させた。80W/cmのパワーの中圧水銀ランプを備えたGiardina(登録商標)光重合装置を用いた。
白色度および黄色度は、ASTM D1925-70標準テスト方法に従って測定された。黄色度の低い値および白色度の高い値は、剤の色の良好な安定性に対応する。
結果を表4に示す。
【表4】

【0060】
適用テスト
有色素システム
反応性
光重合可能なシステムを、エレクトリックストレッチフィルムに取り付けられたバーコーターを用いて、ワニスが塗られたボール紙上に3ミクロンの厚さで置き、そして光源から26cmの距離で照射した。120W/cmのパワーの中圧水銀ランプを備えたFusion(登録商標)光重合装置を用いた。
m/分で測定された光重合スピードは、システムの完全な表面の架橋(“タックフリー”)をもたらす最大可能スピードである。表面の架橋は、表面が“親指ねじり試験”で損傷がないとき、完全であると判断される。
評価される有色素光重合可能なシステムのマトリックスは、Piacentini S. p. A.からのブルーアクリルインク(blue acrylic ink)であった。
【0061】
光開始剤として、以下の化合物が用いられた:
2−エチル−2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−ブタン−1−オン(Ia);
2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(1−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(Ib);
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−[4−(2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−プロパン−1−オン(Ic);
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−ブタン−1−オン(Id);
イソプロピルチオキサントン(ITX)。
該化合物は、剤中、単独で(3%w/w)、および、0.5%のITXで増感されて評価された。
結果を表5に示す。
【表5】

【0062】
変換パーセンテージ
光重合可能なシステムを、エレクトリックストレッチフィルムに取り付けられたバーコーターを用いて、ポリエチレンシート上に12ミクロンの厚さで置いた。
IRスペクトルを吸光度で記録し、1405cm−1でのピーク面積が測定され、参照として、1725cm−1でのピーク面積(A)を保持した。
その後に、光重合可能なシステムを、120W/cmのパワーの中圧水銀ランプを備えたFusion光重合装置で、50m/分のスピードで照射した。
その後に、IRスペクトルを吸光度で記録し、再び1405cm−1でのピーク面積が測定され、同じ参照(A)を保持した。1725cm−1でのピーク面積は光重合により影響を受けない。
変換パーセンテージ(%C)の値は以下の式:
%C=100−[(A/Ao)×100]
で計算され、それは、システムの架橋度の指標である(表面および深部の双方)。
結果を表6および7に示す。
【表6】

【表7】

データに示されるように、式Iの光開始剤の存在が、テストされた光重合可能なシステムの高い反応性、深部の完全な架橋、ならびに良好な黄色度および白色度の原因である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iaの光開始剤。
【化1】

【請求項2】
式Ibの光開始剤。
【化2】

【請求項3】
式Icの光開始剤。
【化3】

【請求項4】
式Idの光開始剤。
【化4】

【請求項5】
式Iの二官能性光開始剤を1種または2種以上含む、透明な光重合可能なシステムであって、
【化5】

ここで、XおよびXは異なっており;
【化6】

ここで、RおよびRは、独立して、直鎖状または分枝状または環状C〜Cアルキルであり、または共にC〜Cアルキレンを表し、Zは、−NRまたは−OHであり、ならびにRおよびRは、独立して、C〜C直鎖状もしくは分枝状もしくは環状アルキル、またはC〜Cオキサアルキレンである、前記システム。
【請求項6】
式Iaの少なくとも1種の光開始剤を含有する、請求項5に記載の透明な光重合可能なシステム。
【化7】

【請求項7】
式Ibの少なくとも1種の光開始剤を含有する、請求項5に記載の透明な光重合可能なシステム。
【化8】

【請求項8】
式Icの少なくとも1種の光開始剤を含有する、請求項5に記載の透明な光重合可能なシステム。
【化9】

【請求項9】
式Idの少なくとも1種の光開始剤を含有する、請求項5に記載の透明な光重合可能なシステム。
【化10】

【請求項10】
木、紙、プラスチック、ボール紙、または金属表面の高厚コーティングを実現するための方法であって、反応性のエチレン不飽和オリゴマーおよび/またはモノマー、および少なくとも1種の、式I、好ましくは式Ia、Ib、IcもしくはIdの二官能性の光開始剤を含有する透明な光重合可能なシステムを調製し、光重合後に10ミクロンより大きい厚さを有するコーティングを得るために適用し、その後に、400nmまでのUV−可視スペクトルを放つ光源で光重合する、前記方法。
【請求項11】
透明な光重合可能なシステムを、光重合後に10〜100ミクロンの厚さを有するコーティングを得るために適用する、請求項10に記載の木、紙、プラスチック、ボール紙、または金属表面の高厚コーティングを実現するための方法。
【請求項12】
透明な光重合可能なシステムが、少なくとも1種の式Iaの二官能性光開始剤を含有する、請求項11に記載の木、紙、プラスチック、ボール紙、または金属表面の高厚コーティングを実現するための方法。
【請求項13】
透明な光重合可能なシステムが、少なくとも1種の式Ibの二官能性光開始剤を含有する、請求項11に記載の木、紙、プラスチック、ボール紙、または金属表面の高厚コーティングを実現するための方法。
【請求項14】
透明な光重合可能なシステムが、少なくとも1種の式Icの二官能性光開始剤を含有する、請求項11に記載の木、紙、プラスチック、ボール紙、または金属表面の高厚コーティングを実現するための方法。
【請求項15】
透明な光重合可能なシステムが、少なくとも1種の式Idの二官能性光開始剤を含有する、請求項11に記載の木、紙、プラスチック、ボール紙、または金属表面の高厚コーティングを実現するための方法。
【請求項16】
請求項5〜9のいずれかに記載の光重合システムの光重合により得られる、10〜100ミクロンの厚さを有する透明なコーティングで被覆された固体基材。

【公表番号】特表2007−501776(P2007−501776A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522355(P2006−522355)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051699
【国際公開番号】WO2005/014515
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(501185604)ランベルティ ソシエタ ペル アチオニ (17)
【Fターム(参考)】