説明

高周波に基づいた材料強度測定のための方法および装置

本発明は、高周波送信器(24)によりギガヘルツ周波数帯域の測定信号(28)を検査すべき建築資材(10)に少なくとも一回侵入させ、高周波受信器(38)により検出するようにした建築資材侵入性の材料強度測定の方法、とりわけ、壁、天井、および床の厚さを測定する方法に関する。
本発明によれば、高周波送信器(24)および/または高周波受信器(34)の異なる位置(20,22)で測定された測定信号の少なくとも2つの伝播時間から建築資材(10)の材料強度(d)が求められる。
さらに、本発明は上記の方法を実行する装置システム(12,40,140,240,340)にも関している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築資材侵入性の材料強度測定のための方法および装置、とりわけ、壁、天井および床の厚さを測定する方法および装置に関する。
【0002】
従来技術
US5,434,500から、位置指示器を備えた検出器とともに磁界発生器が公知である。この磁界発生器は送信ユニットとして機能し、壁の第1の面の位置同定されるべき箇所に掛けられ、この箇所で磁界を発生させる。付属の検出器は受信ユニットとして機能し、送信ユニットとは逆側の壁表面上を動かされる。受信ユニットは、磁界の相対的な強さを測定するそれぞれ2つの検出器から成る2つの対を有している。個々の検出器のそれぞれについてこの磁界の相対的な強さを測定することにより、磁界発生器の位置または磁界発生器とは逆側の壁面へのこの位置の射影を同定することが可能になる。US5,434,500の装置では、検出された磁界の強さは光学式ディスプレイによって視覚化される。検出された磁界の強さが4つの検出器素子のすべてにとって同じならば、受信ユニットは送信ユニットに対してまっすぐに配置されている。しかしながら、US5,434,500の装置では壁強度の定量的な測定は行われない。
【0003】
DE 34 46 392 A1からは、壁の一方の面にある検査位置を壁の他方の面において同定する方法が公知である。特にタンクの金属壁において使用されるこの方法では、検査位置の同定を速くするとともに、位置同定の信頼性を高めるために、壁の検査位置に磁極が置かれ、この磁極とは逆側の他方の壁面において、壁を貫通する磁極の磁界が検出される。DE 34 46 392 A1の方法では、磁界を検出するために、有利にはホール効果素子が使用される。
【0004】
従来技術の公知の装置は、とりわけ、例えば、壁、天井または床のような建築資材の中にある金属部材、例えば、スチール製の梁や補強用鉄筋などが検出を強く妨害し、時には検出を不可能にしてしまうことさえあるという欠点を有している。その上、この種の装置の位置測定精度はむしろ低いと言える。
【0005】
本発明の課題は、材料強度の迅速、確実かつ精確な測定を可能にする方法および装置を提供することである。
【0006】
上記課題は請求項1に記載された特徴を備えた方法によって解決される。さらに、上記課題は請求項9に記載された特徴を備えた装置によって解決される。
【0007】
発明の利点
本発明による建築資材侵入性の材料強度測定のための方法、とりわけ、壁、天井および床の厚さを測定するためのこのような方法では、検査すべき材料内にギガヘルツ周波数帯域の測定信号を放射する高周波送信器が使用されているため、材料に侵入した測定信号を高周波受信器によって検出することができる。建築資材の材料強度は、高周波送信器および/または高周波受信器の位置を変えて測定信号の伝播時間を少なくとも2回測定することにより求められる。
【0008】
材料強度測定のためのこの評価プロセスによれば、壁の強度に関する情報、および/または、例えば壁材料の誘電率などの壁の材料特性に関する情報がなくても、壁の強度を求めることが可能になる。
【0009】
高周波方式を使用しているため、壁の強度は高い信頼性をもって求められる。というのも、位置測定精度は使用する周波数帯域によって高めることができるからである。その際、例えばスチール製の梁や補強用鉄筋のような壁の中の異物は、壁の強度測定にとって何ら障害にならない。
【0010】
本発明による方法およびこの方法を実行するための装置システムの有利な発展形態は、従属請求項において実施されている特徴から明らかになる。
【0011】
有利には、測定の際、高周波送信器と高周波受信器は検査すべき建築資材の共通の第1の面に配置されており、材料に侵入した高周波送信器の測定信号は、部材の第2の面に配置された能動的または受動的な反射手段によって高周波受信器へはね返される。
【0012】
本発明による方法の特に有利な実施形態では、高周波送信器と高周波受信器は共通の装置内で、とりわけ、手持ち式の高周波測定装置内で動作する。
【0013】
本発明による方法の1つの実施形態では、高周波測定装置は、少なくとも2回の伝播時間測定を行うために、検査すべき材料の表面上を移動させられる。その際、測定装置が移動した経路は経路センサ系により検出され、評価ユニットにおいて使用される。
【0014】
有利には、測定信号を送り返す反射手段は少なくとも1つのトランスポンダを含んでいる。このトランスポンダは建築資材に侵入した高周波信号を受信し、相応する信号を高周波受信器に送り返す。
【0015】
有利には、建築資材に侵入する測定信号はギガヘルツ周波数帯域内にパルスレーダー方式により形成され、続いて材料内に放射される。その際、1ギガヘルツから5ギガヘルツまでの区間内に、有利には、1.5GHzから3.5GHzまでの区間内に、1つまたは複数の測定周波数が存在する。
【0016】
本発明による方法を実行するための装置システムは、有利には、建築資材の表面に配置可能なすくなくとも1つの高周波測定装置を有しており、この高周波測定装置は少なくとも1つの高周波送信器と高周波受信器、ならびにこの高周波測定装置に対して相対的に動くトランスポンダを備えている。パルス反射計として動作する高周波測定装置は、ギガヘルツ領域の周波数を有する測定信号を測定すべき建築資材の中へ送信する。これらの測定信号はトランスポンダによって検出され、場合よってはさらに処理される。トランスポンダは相応する信号を高周波測定装置の高周波受信器に送り返す。トランスポンダによって「反射された」この測定信号はその伝播時間に関して評価される。建築資材の2つの箇所で行われる少なくとも2回の異なる伝播時間測定から、有利には、材料特性を知らなくても、とりわけ誘電率を知らなくても、壁の材料強度が求められる。このために、高周波測定装置によって求められる測定信号の伝播時間に加えて、少なくとも2回の伝播時間測定の少なくとも2つの位置の間の高周波測定装置の移動経路が検出され、評価される。
【0017】
有利には、高周波測定装置はこうした理由から経路センサ系を介して2つの測定位置の間における測定装置の移動経路を検出し、測定装置の評価および制御ユニットに転送する。このような経路センサ系は、例えば測定装置のハウジングの相応する滑車や車輪を介して、走行経路を記録することができる。信号評価プロセスでは、パルス反射計とトランスポンダとの間の測定信号の伝播時間を介して、検査すべき建築資材の少なくとも2つの異なる位置において壁の厚さを測定するために、パルス反射計が2つの測定箇所の間で走破した移動区間が利用される。
【0018】
本発明による方法および本方法を実行するための本発明による装置はこのように、有利には、壁の強度に関する情報がなくても、とりわけ、壁の材料特性を知らなくても、壁の強度を求めることができる。そのために、装置として、高周波測定装置、例えばパルス反射計に基づいた壁測位装置と、トランスポンダまたは類似の反射手段が必要である。
【0019】
本発明による方法および本発明による装置の別の利点は、以下の図面とそれに付属する有利な実施例の説明とから知ることができる。
【0020】
図面
図面には、建築資材侵入性の材料強度測定のための本発明による方法および装置システムの実施形態が示されており、これらの実施形態は以下の説明においてより詳細に解説される。図面の個々の図、その説明、ならびに請求項には、数多くの特徴の組合せが含まれている。当業者であれば、これらの特徴を個別に考察することも、別の有効な組合せにまとめることもできよう。ただし、これらの有効な組合せも本明細書で開示されているものと見なされなければならない。
【0021】
図1は、本発明による方法の基礎をなす測定装置の概略図であり、
図2は、第1の測定箇所に対して適用された本発明による方法の概略図であり、
図3は、本発明による方法のためのトランスポンダの基本的な電子部品の第1の実施例を示しており、
図4は、本発明による方法のためのトランスポンダの択一的な実施形態を示しており、
図5は、本発明による方法のためのトランスポンダのさらに別の実施形態を概略図で示したものである。
【0022】
実施例の説明
図1は、本発明による方法の基礎をなす典型的な測定状況を示している。ここでは、例えば壁、床、または天井などの建築資材10の材料強度または厚さdを、例えば材料10の誘電率など、材料特性に関する特別な情報を知らずに求めたい。
【0023】
検査すべき部材の表面14に配置され、パルス反射計として動作する高周波測定装置12を用いて、検査すべき材料10を通してギガヘルツ周波数帯域の測定信号を送信し、高周波測定装置12とは逆側の検査すべき材料の表面16に配置されたトランスポンダ18により、後で説明する方法で測定信号を高周波測定装置12の受信ユニットに送り返す。測定信号の伝播時間からは、移動した距離、ひいては材料強度を導き出すことができる。通常、このためには、材料内での測定信号の伝播速度に関する情報が必要である。一方で、伝播速度は材料特性に、とりわけ、材料の誘電率に依存する。
【0024】
しかし、高周波測定装置の2つの異なる既知の場所20および22で少なくとも2回の異なる測定を実行し、高周波測定装置12とトランスポンダ18との間の信号伝播時間を測定し評価すれば、材料定数を知る必要なく、幾何学的関係から壁の厚さdを求めることができる。
【0025】
図2は、第1の測定箇所20における測定状況に基づいて本発明による方法の基本的な方法ステップを描写している。高周波送信器24と高周波受信器38とから成る高周波測定装置12の高周波ユニット32は、例えばFMCWまたはパルスレーダー方式により、ギガヘルツ周波数帯域のマイクロ波を発生させる。HF送信器24は、したがって、1つまたは複数の個々の周波数(FMCW方式)、または広帯域パルススペクトル(パルスレーダー)を発生させる。測定信号28はギガヘルツ周波数帯域内にあり、一般に1ギガヘルツから5ギガヘルツまでの区間内の測定周波数を有している。有利には、本発明による方法では、1.5GHzから3.5GHzまでの周波数区間から1つまたは複数の測定周波数が使用される。
【0026】
本発明による方法では、建築資材の一方の面において、高周波測定装置12は材料の適当な表面14に保持または固定される。高周波測定装置12はアンテナ装置26を備えた高周波送信器24を有しており、アンテナ装置26は有利には建築資材10の方向を向いており、高周波測定信号28を建築資材10の中へ放射することができる。このようにして発生させられた測定信号28を形成するマイクロ波信号は、少なくとも1つのアンテナを含んだアンテナ装置26を介して放射される。高周波測定装置12が、例えば、壁、天井、または床などの建築資材10の一方の面14の所定の位置20に配置されると、マイクロ波は指向性高周波信号28として壁に侵入し、反射手段18の受信器34によって材料10の他方の面16において検出される。
【0027】
反射手段18は内部伝播時間の分だけ遅延した戻り測定信号36を再び壁を通して高周波測定装置12に送り返す。
【0028】
高周波測定装置12は高周波送信器24としても高周波受信器38としても形成されており、反射器18により送り返された戻り測定信号36を受信アンテナで検出する。高周波測定装置12の送信または受信アンテナとしては、相応の回路において単独の高周波アンテナ素子26が使用される。しかし、本発明による方法の別の実施形態では、分離された送信アンテナと受信アンテナを高周波測定装置12に設けてもよい。
【0029】
高周波測定装置12とは逆側の築資材10の面16には反射手段18があり、この反射手段18は、壁10に侵入した測定信号28を戻り測定信号28として高周波測定装置12の受信ユニットへ能動的にまたは受動的に送り返す。このような反射手段18は、例えば受動的な反射器によって、例えばSAW素子(Surface Acoustic Wave)によって形成することができる。反射手段18によって送り返された測定信号36は同じ周波数帯域内にあってもよいし、往きの測定信号28からシフトした周波数帯域内にあってもよい。
【0030】
反射手段18として、有利には、いわゆるトランスポンダ40が使用される。このトランスポンダ40は、建築資材10に侵入した測定信号28を検出および処理し、内部遅延時間を経た後に、検出された元の測定信号28に相関した応答信号36を再び材料10を通して送り返す。
【0031】
図3は、このようなトランスポンダの、本発明による方法向けの可能な第1の実施形態を示している。測定装置12によって形成された高周波交流磁界は、例えば検査すべき壁などの建築資材10に侵入する。測定装置12とは逆側の壁面にはトランスポンダ140があり、このトランスポンダ140が測定装置によって形成された信号の位置同定および検出を行い、後で説明する方法で測定装置に送り返す。
【0032】
このようなトランスポンダは、所定の、したがって既知の、内部伝播時間が経過した後に、新たな信号を形成する。この信号は固有のアンテナを介して例えばISM帯域において2.45GHzの周波数で放射される。この新たに発生させられた信号は壁に侵入し、測定装置12の高周波受信器24によって検出される。
【0033】
このように、パルス反射計を形成する測定装置12を用いることにより、トランスポンダの新たな送信信号の伝播時間の最小値を求めることができ、また壁の相応する箇所に例えばマークを付けることができる。マーキングユニットは測定装置12にあってもよいし、トランスポンダ140にあってもよい。反射計、すなわち、測定装置12と、トランスポンダ140との間の伝播時間の評価に基づいて、さらには壁の厚さの測定を行うこともできる。
【0034】
以下では、このようなトランスポンダの基本構造を説明する。トランスポンダ内の受信器としては、例えば、測定装置12の特徴的な測定信号の電力レベルを評価する電力検出器、または、測定装置12の磁界の典型的な変化を検出することのできるパルス検出器のような、さまざまなタイプの高周波受信器が適している。
【0035】
図3は、このようなトランスポンダ140の考えられる構造をブロック回路図で示したものである。アンテナ装置126を介してトランスポンダ140により受信された信号は、カプラ142またはサーキュレータを介して受信増幅器144へ導かれる。増幅後、この信号は零入力状態に切り換えられたHFスイッチ146を介してパルス検出器148に達する。パルス検出器148は入力電力に比例する出力電圧を渡す。パルス検出器148の電圧はNF増幅器150において増幅される。後続のコンパレータ152においては、アナログ電圧信号から再びディジタル信号が生成される。モノフロップ154では、比較的短いコンパレータ信号を所定の長さにする。この信号は遅延素子156および158により受信段のブランキングと送信パルス生成とに用いられる。送信パルス発生器160により生成された信号はカプラ142またはサーキュレータを介して再びアンテナ装置126に供給され、検査される壁を通して測定装置12へ送り返される。
【0036】
図4は、トランスポンダ240の択一的な実施形態を示している。ここでは、走査器が使用される。走査器の出力側に最大の電圧が現れるように、走査器を制御するクロックがマイクロコントローラ164を介して調整される。この出力信号の最大値に達すると、マイクロコントローラのクロックと測定装置12のクロックは互いに同期するが、測定信号の伝播時間の分だけずれている。このようにして、測定信号の侵入箇所を同定し、壁厚測定を行うことが可能である。走査器を制御する信号は直接送信されるので、トランスポンダの応答は最小の遅延で行われる。
【0037】
図5には、本発明による方法のためのトランスポンダの基本構造の別の択一的形態が簡略的に示されている。図5に示されているコンセプトでは、受信された測定信号はトランスポンダ340内で増幅器170により増幅され、伝播時間素子172を介して実現される所定の時間遅延の後に、リング形増幅器のように、再びカプラ142とアンテナ装置126を介して送出される。
【0038】
上に説明した本発明による方法のためのトランスポンダの構造および動作に加えて、さらに例えばACセンサ(50Hzセンサ)および/または誘導センサによるトランスポンダの拡張が可能である。トランスポンダのこのような追加機能により、ユーザは、例えば測定装置12とは逆側の壁面においても、例えば給電線の損傷を回避することができるようになる。
【0039】
情報の評価は有利には高周波測位装置12によって行われる。高周波測位装置12は、適切なソフトウェアまたはハードウェア回路によって受信モードに切り換えることができ、したがって例えばボーリングの位置や壁強度を示すことができる。
【0040】
本発明による方法のための高周波測位装置として、有利には、例えば出願人による出願DE 102 07 424 A1に記載されているような、高周波に基づいた測位装置が使用される。
【0041】
第1の測定箇所20を求めるために、高周波測定装置12とトランスポンダとの間の伝播時間が評価される。なお、トランスポンダは例えば上に示した形態40,140,240,340で形成されている。測定装置12またはトランスポンダは、測定装置12からトランスポンダに達して再び測定装置12に戻るまでの伝播時間の最小値が得られるまで、建築資材の表面上を走らされる。このように、パルス反射計を形成する測定装置12を用いることにより、測定信号の伝播時間の最小値を求めることができ、また壁の相応する箇所に例えばマークを付けることができる。建築資材10の材料の誘電率は既知ではないため、この検出された最小の伝播時間から直に建築資材10の厚さdを推測することはできず、離れた測定箇所22で第2の測定が行われる。
【0042】
本発明の方法による材料強度dの測定の際、高周波測定装置12は、図1に示されているように、例えば壁などの建築資材10の表面上を走らされる。高周波測定装置12は経路センサ系50を有しており、経路センサ系50は測定装置が移動した経路sを経路センサを介して測定装置の制御および評価ユニットに転送する高周波測定装置12はそのために転動体を有している。この転動体は、例えば車輪52として形成されており、高周波測定装置12が壁表面上で移動した距離sを測定する経路センサを構成している。
【0043】
本発明による方法では、第1の測定箇所20から距離sだけ離れた位置にある第2の測定箇所22において、第2の測定が行われる。第2の測定では、測定信号28が再び建築資材10を通して送信され、トランスポンダにより検出され、戻り測定信号36として送り返され、測定装置12によって再び検出および分析される。測定箇所20および22におけるこれら少なくとも2つの測定に関して、パルス反射計として使用される高周波測定装置とトランスポンダとの間の測定信号の伝播時間が評価されれば、以下に手短に示されるように、壁の厚さdを推測することができる。建築資材10の厚さdに関しては、数学的関係(式1参照)が成り立つ:
d=s/tanα (1)
ここで、sは2つの測定箇所の間の距離であり、αは2つの測定箇所と建築資材の反対側の面16に配置されたトランスポンダとの間の角度である。
【0044】
さらに、2つの測定箇所20,22とトランスポンダの位置によって形成される直角三角形に関しては:
d’=s/sinαおよびcosα=d/d’ (2),(3)
高周波測定装置12とトランスポンダの間の測定信号28の伝播時間tLは誘電率εrと測定信号が走破した距離Lとに依存するため、下式が成り立つ:
【数1】

ここで、cは光速を表している。材料10における誘電損は無視してよい。なぜならば、誘電損は信号を減衰するだけであり、信号の伝播速度
【数2】

に影響を与えないからである。
【0045】
本発明による方法では、壁の厚さdも建築資材10の誘電率εrも知られていないため、以下のアプローチをとる。2つの異なる測定箇所20および22での測定によって得られた建築資材10を通る2つの異なる経路を考察すれば、それぞれの測定信号に関して、通った経路と誘電率とに依存して2つの異なる伝播時間が得られる。なお、誘電率は両測定において一定であるか、または一定と見なされる。したがって、次が成り立つ:
【数3】

式(5)から、式(3)は下式のようになる:
cosα= tL20/tL22 (6)
したがって、求められた建築資材10の材料強度ないし厚さdは式(1)により下式のようになる:
【数4】

このように、壁の強度dは、測定箇所20と22の間の高周波測定装置の移動経路sと、高周波測定装置とトランスポンダの間の信号tL20およびtL22の伝播時間とから得られる。信号の伝播時間は信号処理によって壁10を通る伝播時間とトランスポンダ内での内部伝播時間とから合成されるので、正確に求めることができる。トランスポンダ内での時間は回路技術的に決まるものであり、既知である。このように、壁10を通る伝播時間tL20およびtL22は本発明による装置によって測定された伝播時間から求めることができる。
【0046】
有利には、本発明による方法は、高周波測定装置とトランスポンダの間の伝播時間の評価により壁厚測定を可能にする。ここで、トランスポンダは、非常に小さく且つ時間的に短い高周波パルスを検出し、同様のスペクトルを有する能動的に生成される「反射パルス」を再現可能な形で送出するための低コストの回路を有している。
【0047】
本発明による方法ならびにこの方法を実行するための本発明による装置は、実施例において示された実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による方法の基礎をなす測定装置の概略図である。
【図2】第1の測定箇所に対して適用された本発明による方法の概略図である。
【図3】本発明による方法のためのトランスポンダの基本的な電子部品の第1の実施例を示す。
【図4】本発明による方法のためのトランスポンダの択一的な実施形態を示す。
【図5】本発明による方法のためのトランスポンダのさらに別の実施形態を概略図で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築資材侵入性の材料強度測定の方法、とりわけ、壁、天井、および床の厚さを測定する方法であって、高周波送信器(24)によりギガヘルツ周波数帯域の測定信号(28)を検査すべき建築資材(10)に少なくとも一回侵入させ、高周波受信器(38)により検出するようにした方法において、高周波送信器(24)および/または高周波受信器(34)の異なる位置(20,22)で測定された測定信号の少なくとも2つの伝播時間から建築資材(10)の材料強度(d)を求めることを特徴とする建築資材侵入性の材料強度測定の方法。
【請求項2】
高周波送信器(24)と高周波受信器(38)を建築資材(10)の共通する第1の面(14)の上で動作させ、高周波送信器(24)の測定信号(28)を反射手段(18)により高周波受信器(38)に送り返すようにした、請求項1記載の方法。
【請求項3】
反射手段(18)はトランスポンダ(40,140,240,340)を含んでいる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
高周波送信器(24)と高周波受信器(38)を共通の装置、とりわけ、手持ち式の装置の中で動作させる、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2回の伝播時間測定を記録する測定装置(12)を材料表面(14)上で移動させる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
測定装置(12)の移動経路(s)を検出する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ギガヘルツ周波数帯域の測定信号(28)をパルスレーダー方式で発生させ、建築資材(10)に入力結合させる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
1000MHzから5000MHzまでの区間内の、有利には、1500MHzから3500MHzまでの区間内の1つまたは複数の測定周波数(28)を使用する、請求項1または7記載の方法。
【請求項9】
建築資材(10)の表面(14)に配置可能な少なくとも1つの高周波測定装置(12)を有しており、該高周波測定装置(12)が少なくとも1つの高周波送信器(24)および高周波受信器(38)ならびにこの高周波測定装置に対して相対的に動くトランスポンダ(40,140,240,340)を含んでいることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項記載の方法を実行するための装置システム。
【請求項10】
高周波測定装置(12)が経路(s)を記録するための経路センサ系(50,52)を使用する、請求項9記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−504542(P2008−504542A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518574(P2007−518574)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052660
【国際公開番号】WO2006/003070
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】