高周波ノイズの反射抑制回路
【課題】
対地素子やローパスフィルタを用いずに定在波の減衰、すなわち反射抑制を果たすことを目的としたものである。
【解決手段】
配電系や接地系の電線路の分布定数によって生ずる共振と同じ共振周波数特性を持つコイルからなる共振回路及びこの共振回路に並列に接続した抵抗を設け、この共振回路の一端を配電系や接地系の電線路の終端に、他端を開放のまま接続した高周波ノイズの反射抑制回路とした。
これにより、配電系に共振が生じると同時に、共振回路に並列に抵抗を接続した回路(以下、LR並列回路という)にも共振が生じ、LR並列回路の両端に電位差が生じる。その電位差はLR並列回路の抵抗に電流を流して抵抗で発熱して送電系への反射を抑制させることができる。
対地素子やローパスフィルタを用いずに定在波の減衰、すなわち反射抑制を果たすことを目的としたものである。
【解決手段】
配電系や接地系の電線路の分布定数によって生ずる共振と同じ共振周波数特性を持つコイルからなる共振回路及びこの共振回路に並列に接続した抵抗を設け、この共振回路の一端を配電系や接地系の電線路の終端に、他端を開放のまま接続した高周波ノイズの反射抑制回路とした。
これにより、配電系に共振が生じると同時に、共振回路に並列に抵抗を接続した回路(以下、LR並列回路という)にも共振が生じ、LR並列回路の両端に電位差が生じる。その電位差はLR並列回路の抵抗に電流を流して抵抗で発熱して送電系への反射を抑制させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配電系や接地系の電線路における高周波ノイズの反射抑制回路に関するものである。さらに詳しく述べると、高周波領域において分布定数系を有するすべての電力線や接地系における電気設備の安全対策に特に有用な反射抑制回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図2に示すように、配電系や接地系の電線路において周波数の高い領域では分布定数を形成し、対地に対し両端あるいは受電端開放状態の場合では、4分の1波長の周波で直列共振、2分の1波長の周波では並列共振現象を起こす。そのため雷サージなどの際に入射波と反射波が干渉して生じる定在波が生じ、これらの系に繋がる機器の故障や破損、あるいは誤動作などが生じるおそれがある。
そこで、従来から、配電系のサージ対策としてRCアブソーバや酸化亜鉛を用いたアレスタなどが使われてきた。これらの素子は被保護ラインと対地間に挿入されるものである(以下、対地素子という)。
また、配電ラインや接地線の中間地点にローパスフィルタを直列に挿入し、サージ電圧の入射波や反射波の減衰化を図る方法もある。
【特許文献1】特許第3164992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記対地素子を用いたものは、竣工検査や定期点検などの際に絶縁耐圧試験などで配電系と大地間に試験用高電圧を印加するが、その場合にこれら対地素子が不要動作してしまうおそれがあるため、いちいちこれらの対地素子を取り外さなければならない。従って、当該対地素子の取り外しや検査の実施と復旧の措置には保安上の手間や管理を常に配慮しなければならなかった。
また、上記ローパスフィルタを用いる方法は、配電系に適用する場合は、ローパスフィルタに商用周波電力による発熱対策を施さなければならず、また、形状への制約や高周波領域においてローパスフィルタに用いているリアクトルが持つ静電容量で、ローパスフィルタとして機能を果たさず、十分な成果が得られない場合も生じるなど課題が残っている。
【0004】
そこで、この発明は、これらの問題点を解決するため、対地素子やローパスフィルタを用いずに定在波の減衰、すなわち反射抑制を果たすことを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、配電系や接地系の電線路の分布定数によって生ずる共振と同じ共振周波数特性を持つコイルからなる共振回路及びこの共振回路に並列に接続した抵抗を設け、この共振回路の一端を配電系や接地系の電線路の終端に、他端を開放のまま接続した高周波ノイズの反射抑制回路とした。
これにより、配電系に共振が生じると同時に、共振回路に並列に抵抗を接続した回路(以下、LR並列回路という)にも共振が生じ、LR並列回路の両端に電位差が生じる。その電位差はLR並列回路の抵抗に電流を流して抵抗で発熱して送電系への反射を抑制させることができる。
【0006】
また、請求項2の発明は、上記請求項1の発明において、上記配電系や接地系の分布定数によって生ずる共振と同じ共振周波数特性を持つ共振回路の構成を、コイルとコンデンサを直列に接続したものとし、上記共振回路に並列に抵抗を接続した、高周波ノイズの反射抑制回路とした。また、請求項3の発明は、上記請求項1の発明において、上記共振回路の構成をコイルとコンデンサを直列に接続したものとし、この共振回路のコイルに並列に抵抗を接続した、高周波ノイズの反射抑制回路とした。また、請求項4の発明は、上記請求項1の発明において、上記共振回路の構成をコイルとコンデンサを直列に接続したものとし、この共振回路のコンデンサに並列に抵抗を接続した、高周波ノイズの反射抑制回路とした。また、請求項5の発明は、上記請求項1、2、3及び4のいずれかに記載の発明において、上記共振回路の構成を、上記コイルと直列にわずかな値の抵抗を接続した、高周波ノイズの反射抑制回路とした。
【発明の効果】
【0007】
請求項1乃至4の発明によれば、反射抑制回路を使用することにより、配電系や接地系に侵入する高周波ノイズや雷サージの終端での反射を低減することができるため、系の安定化を図ることが出来る。また、配電系や接地系の終端に片端開放の回路を取り付ければよいので、回路の電線は細くすることができ、また、回路としては対地間の耐電圧を考慮する必要がない。また、上記反射抑制回路自体極めて簡単な構造であり、配電系にも接地系にも容易に取り付けられる利点を有する。また、請求項5の発明は、上記請求項1乃至4の発明の効果に加え、各共振回路にわずかな値の抵抗を挿入することにより、共振回路のQ(共振特性の鋭さを表す量)を小さくし、それにより反射抑制回路として機能する対応周波数範囲を広げることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
配電系や接地系の電線路の分布定数によって生ずる共振と同じ共振周波数特性を持つコイルからなる共振回路及びこの共振回路に並列に接続した抵抗を設け、この共振回路の一端を配電系や接地系の電線路の終端に、他端を開放のまま接続したものである。
【実施例1】
【0009】
<サージ流入のモデル>
図2に一例として、雷サージが流入する配電系のモデルを示す。特別高圧線に雷サージがのると変圧器の一次/二次間の浮遊容量を介して高周波のコモンモードノイズが高圧側へ伝わっていく。高圧線と2)の変圧器の接続点では特性インピーダンスの不平衡により反射を生じ、ある特定の周波数で共振を起こす。これにより、配電系の絶縁破壊等が起こる危険がある。コモンモードノイズは三相一括同相でのるため、一相のみ考え、6.6kV送電線の共振現象に着目し対策を考える。
【0010】
<ノイズ対策>
分布定数系における配電系の線路のインピーダンスを求める。
周波数fにおける波長をλとする。無損失線路の透磁率と誘電率をμ、εとし、終端負荷インピーダンスをZL、特性インピーダンスをZO、線路長をdとすれば位相定数β、及び線路のインピーダンスZは
【0011】
【数1】
【0012】
【数2】
【0013】
で与えられる。
今回、送電線の両端は変圧器に接続されているため両端開放として扱う。よって、 ZL=∞となり式(2)から開放線路のインピーダンスは
【0014】
【数3】
【0015】
となる。従って、線路のインピーダンスは位相定数β、線路長d及び特性インピーダンスZOに依存する。
そのため、
【0016】
【数4】
【0017】
の時、直列共振現象が発生し、
【0018】
【数5】
【0019】
の時、並列共振現象が発生する。
そこで、コイルの分布定数を先の配電系分布定数で作られる共振周波数と同じ周波数で共振するようコイル長を調節した物を用い、このコイルと並列に抵抗を接続した回路(=LR並列回路)を先の配電系線路の終端に接続する。LR並列回路の他端は開放とした。これにより、LR並列回路の閉ループ内でエネルギーを消費し、反射波のエネルギーを小さくするようにした。
すなわち、回路に入射した電圧波は全反射し回路内で直列共振を引き起こす。よって、電流は回路内を循環し、抵抗によって熱としてエネルギーを消費させる。
【0020】
図1はこの発明の概略構成図を示し、図3は図2に示した分布定数系で構成される模擬の送電線にこの発明のLR並列回路を接続したものを示す。送電線のノイズ源と反対側終端に、送電線と同じ周波数で共振するLR並列回路を片端開放の状態で接続する。そして、ノイズ源にインパルス発生回路を用いて送電端と受電端の電圧を測定し、電源電圧との比をとる。LR並列回路に使用したコイルのインダクタンスは177〔μH〕,巻線長は送電線の共振特性に合わせるため、37.7mとし、抵抗は180Ωを使用した。
【0021】
次に、この発明のLR並列回路がない場合の、上記図3に示した模擬の送電線の周波数応答特性を図4に示す。図4によれば、1.7MHz、5.2MHz、8.7MHzに直列共振特性を持つ分布定数系であることが分かる。そこでLR並列回路のコイルの周波数特性において、1.7MHzに直列共振特性を持つようコイルの線長を調節し、図5のような特性を持たせる(なお、図5において、Rは抵抗の実数を、XはLCの虚数を示す)。さらに、LR並列回路の抵抗に180Ωを使用してこのLR並列回路を上記図4の特性を持つ模擬の送電線の終端に接続し、送電端、受電端の電圧比を求めた結果を図6に示す。この図6において、図4のLR並列回路のない場合の結果と比べると、送電端において電圧比が極端に低くなる並列共振特性が抑えられるとともに、受電端の電圧比が1以下になり電圧比を抑える効果が認められる。
【0022】
また、上記模擬送電線の終端にLのみを接続したときの受電端電圧と送電線電流波形を図7に示す(ただし、f=1.7MHz)。受電端電圧と電流波形は90°位相がずれているのが分かる。そして、上記模擬送電線に上述のLR並列回路を接続した場合の受電端電圧と電流波形を図8に示す(ただし、f=1.7MHz)。受電端電圧波形と電流波形は同相であり、従って、LR並列回路を接続することによって電力が消費されるようになったことが分かる。
次に、図9に、上記模擬の送電線にインパルス波を印加したときの受電端電圧波形を示す。(a)は印加したインパルス波形、(b)はLR並列回路を接続していないときの受電端電圧波形である。(c)はLR並列回路を接続したときの受電端電圧波形を示す。(b)、(c)の波形を比べても分かるように、LR並列回路を接続することにより受電端電圧のピーク値がおよそ半減しており、LR並列回路の効果が分かる。
【0023】
また、上記実施例では、この発明の反射抑制回路として、分布定数を形成するコイルと抵抗を並列に接続したLR並列回路を示した〔図10の(1)〕が、図10の(2)、(3)、(4)の各図に示す集中定数を用いたLC直列共振回路に抵抗を接続した回路によっても、上記と同様な効果が得られる。
さらに、上記実施例に代えて、図11の(1)〜(4)に示したように、各共振回路にわずかな値の抵抗R´を挿入することにより、共振回路をのQを小さくし、それにより反射抑制回路として機能する対応周波数範囲を広げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の概略構成図である。
【図2】雷サージが流入する配電系送電線の模擬モデル及びその等価回路を示す概略構成図である。
【図3】図2に示した分布定数系で構成される模擬の送電線にこの発明のLR並列回路を接続した概略構成図である。
【図4】この発明のLR並列回路がない場合の上記模擬の送電線の周波数応答特性を示すグラフ図ある。
【図5】LR並列回路のコイルの周波数特性において、1.7MHzに直列共振特性を持つようコイルの線長を調節したコイルの周波数特性を示すグラフ図である。
【図6】模擬の送電線にLR(R=180Ω)を接続したときの周波数応答特性を示すグラフ図である。
【図7】模擬送電線にLのみを接続したときの受電端電圧と電流波形を示すグラフ図である。
【図8】模擬送電線にLR(R=180Ω)並列回路を接続したときの受電端電圧と電流波形を示すグラフ図である。
【図9】模擬送電線のインパルス応答波形を示すグラフ図であり、(a)は印加インパルス波形、(b)はLR並列回路を接続していないときの受電端電圧波形、(c)はLR並列回路を接続したときの受電端電圧波形をそれぞれ示す
【図10】この発明の実施例における、反射抑制回路の構成具体例(1)から(4)を示す構成図である。
【図11】この発明の他の実施例における、反射抑制回路の構成具体例(1)から(4)を示す構成図である。
【符号の説明】
【0025】
L コイル
R 抵抗
R´ わずかな値の抵抗
C コンデンサ
【技術分野】
【0001】
この発明は、配電系や接地系の電線路における高周波ノイズの反射抑制回路に関するものである。さらに詳しく述べると、高周波領域において分布定数系を有するすべての電力線や接地系における電気設備の安全対策に特に有用な反射抑制回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図2に示すように、配電系や接地系の電線路において周波数の高い領域では分布定数を形成し、対地に対し両端あるいは受電端開放状態の場合では、4分の1波長の周波で直列共振、2分の1波長の周波では並列共振現象を起こす。そのため雷サージなどの際に入射波と反射波が干渉して生じる定在波が生じ、これらの系に繋がる機器の故障や破損、あるいは誤動作などが生じるおそれがある。
そこで、従来から、配電系のサージ対策としてRCアブソーバや酸化亜鉛を用いたアレスタなどが使われてきた。これらの素子は被保護ラインと対地間に挿入されるものである(以下、対地素子という)。
また、配電ラインや接地線の中間地点にローパスフィルタを直列に挿入し、サージ電圧の入射波や反射波の減衰化を図る方法もある。
【特許文献1】特許第3164992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記対地素子を用いたものは、竣工検査や定期点検などの際に絶縁耐圧試験などで配電系と大地間に試験用高電圧を印加するが、その場合にこれら対地素子が不要動作してしまうおそれがあるため、いちいちこれらの対地素子を取り外さなければならない。従って、当該対地素子の取り外しや検査の実施と復旧の措置には保安上の手間や管理を常に配慮しなければならなかった。
また、上記ローパスフィルタを用いる方法は、配電系に適用する場合は、ローパスフィルタに商用周波電力による発熱対策を施さなければならず、また、形状への制約や高周波領域においてローパスフィルタに用いているリアクトルが持つ静電容量で、ローパスフィルタとして機能を果たさず、十分な成果が得られない場合も生じるなど課題が残っている。
【0004】
そこで、この発明は、これらの問題点を解決するため、対地素子やローパスフィルタを用いずに定在波の減衰、すなわち反射抑制を果たすことを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、配電系や接地系の電線路の分布定数によって生ずる共振と同じ共振周波数特性を持つコイルからなる共振回路及びこの共振回路に並列に接続した抵抗を設け、この共振回路の一端を配電系や接地系の電線路の終端に、他端を開放のまま接続した高周波ノイズの反射抑制回路とした。
これにより、配電系に共振が生じると同時に、共振回路に並列に抵抗を接続した回路(以下、LR並列回路という)にも共振が生じ、LR並列回路の両端に電位差が生じる。その電位差はLR並列回路の抵抗に電流を流して抵抗で発熱して送電系への反射を抑制させることができる。
【0006】
また、請求項2の発明は、上記請求項1の発明において、上記配電系や接地系の分布定数によって生ずる共振と同じ共振周波数特性を持つ共振回路の構成を、コイルとコンデンサを直列に接続したものとし、上記共振回路に並列に抵抗を接続した、高周波ノイズの反射抑制回路とした。また、請求項3の発明は、上記請求項1の発明において、上記共振回路の構成をコイルとコンデンサを直列に接続したものとし、この共振回路のコイルに並列に抵抗を接続した、高周波ノイズの反射抑制回路とした。また、請求項4の発明は、上記請求項1の発明において、上記共振回路の構成をコイルとコンデンサを直列に接続したものとし、この共振回路のコンデンサに並列に抵抗を接続した、高周波ノイズの反射抑制回路とした。また、請求項5の発明は、上記請求項1、2、3及び4のいずれかに記載の発明において、上記共振回路の構成を、上記コイルと直列にわずかな値の抵抗を接続した、高周波ノイズの反射抑制回路とした。
【発明の効果】
【0007】
請求項1乃至4の発明によれば、反射抑制回路を使用することにより、配電系や接地系に侵入する高周波ノイズや雷サージの終端での反射を低減することができるため、系の安定化を図ることが出来る。また、配電系や接地系の終端に片端開放の回路を取り付ければよいので、回路の電線は細くすることができ、また、回路としては対地間の耐電圧を考慮する必要がない。また、上記反射抑制回路自体極めて簡単な構造であり、配電系にも接地系にも容易に取り付けられる利点を有する。また、請求項5の発明は、上記請求項1乃至4の発明の効果に加え、各共振回路にわずかな値の抵抗を挿入することにより、共振回路のQ(共振特性の鋭さを表す量)を小さくし、それにより反射抑制回路として機能する対応周波数範囲を広げることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
配電系や接地系の電線路の分布定数によって生ずる共振と同じ共振周波数特性を持つコイルからなる共振回路及びこの共振回路に並列に接続した抵抗を設け、この共振回路の一端を配電系や接地系の電線路の終端に、他端を開放のまま接続したものである。
【実施例1】
【0009】
<サージ流入のモデル>
図2に一例として、雷サージが流入する配電系のモデルを示す。特別高圧線に雷サージがのると変圧器の一次/二次間の浮遊容量を介して高周波のコモンモードノイズが高圧側へ伝わっていく。高圧線と2)の変圧器の接続点では特性インピーダンスの不平衡により反射を生じ、ある特定の周波数で共振を起こす。これにより、配電系の絶縁破壊等が起こる危険がある。コモンモードノイズは三相一括同相でのるため、一相のみ考え、6.6kV送電線の共振現象に着目し対策を考える。
【0010】
<ノイズ対策>
分布定数系における配電系の線路のインピーダンスを求める。
周波数fにおける波長をλとする。無損失線路の透磁率と誘電率をμ、εとし、終端負荷インピーダンスをZL、特性インピーダンスをZO、線路長をdとすれば位相定数β、及び線路のインピーダンスZは
【0011】
【数1】
【0012】
【数2】
【0013】
で与えられる。
今回、送電線の両端は変圧器に接続されているため両端開放として扱う。よって、 ZL=∞となり式(2)から開放線路のインピーダンスは
【0014】
【数3】
【0015】
となる。従って、線路のインピーダンスは位相定数β、線路長d及び特性インピーダンスZOに依存する。
そのため、
【0016】
【数4】
【0017】
の時、直列共振現象が発生し、
【0018】
【数5】
【0019】
の時、並列共振現象が発生する。
そこで、コイルの分布定数を先の配電系分布定数で作られる共振周波数と同じ周波数で共振するようコイル長を調節した物を用い、このコイルと並列に抵抗を接続した回路(=LR並列回路)を先の配電系線路の終端に接続する。LR並列回路の他端は開放とした。これにより、LR並列回路の閉ループ内でエネルギーを消費し、反射波のエネルギーを小さくするようにした。
すなわち、回路に入射した電圧波は全反射し回路内で直列共振を引き起こす。よって、電流は回路内を循環し、抵抗によって熱としてエネルギーを消費させる。
【0020】
図1はこの発明の概略構成図を示し、図3は図2に示した分布定数系で構成される模擬の送電線にこの発明のLR並列回路を接続したものを示す。送電線のノイズ源と反対側終端に、送電線と同じ周波数で共振するLR並列回路を片端開放の状態で接続する。そして、ノイズ源にインパルス発生回路を用いて送電端と受電端の電圧を測定し、電源電圧との比をとる。LR並列回路に使用したコイルのインダクタンスは177〔μH〕,巻線長は送電線の共振特性に合わせるため、37.7mとし、抵抗は180Ωを使用した。
【0021】
次に、この発明のLR並列回路がない場合の、上記図3に示した模擬の送電線の周波数応答特性を図4に示す。図4によれば、1.7MHz、5.2MHz、8.7MHzに直列共振特性を持つ分布定数系であることが分かる。そこでLR並列回路のコイルの周波数特性において、1.7MHzに直列共振特性を持つようコイルの線長を調節し、図5のような特性を持たせる(なお、図5において、Rは抵抗の実数を、XはLCの虚数を示す)。さらに、LR並列回路の抵抗に180Ωを使用してこのLR並列回路を上記図4の特性を持つ模擬の送電線の終端に接続し、送電端、受電端の電圧比を求めた結果を図6に示す。この図6において、図4のLR並列回路のない場合の結果と比べると、送電端において電圧比が極端に低くなる並列共振特性が抑えられるとともに、受電端の電圧比が1以下になり電圧比を抑える効果が認められる。
【0022】
また、上記模擬送電線の終端にLのみを接続したときの受電端電圧と送電線電流波形を図7に示す(ただし、f=1.7MHz)。受電端電圧と電流波形は90°位相がずれているのが分かる。そして、上記模擬送電線に上述のLR並列回路を接続した場合の受電端電圧と電流波形を図8に示す(ただし、f=1.7MHz)。受電端電圧波形と電流波形は同相であり、従って、LR並列回路を接続することによって電力が消費されるようになったことが分かる。
次に、図9に、上記模擬の送電線にインパルス波を印加したときの受電端電圧波形を示す。(a)は印加したインパルス波形、(b)はLR並列回路を接続していないときの受電端電圧波形である。(c)はLR並列回路を接続したときの受電端電圧波形を示す。(b)、(c)の波形を比べても分かるように、LR並列回路を接続することにより受電端電圧のピーク値がおよそ半減しており、LR並列回路の効果が分かる。
【0023】
また、上記実施例では、この発明の反射抑制回路として、分布定数を形成するコイルと抵抗を並列に接続したLR並列回路を示した〔図10の(1)〕が、図10の(2)、(3)、(4)の各図に示す集中定数を用いたLC直列共振回路に抵抗を接続した回路によっても、上記と同様な効果が得られる。
さらに、上記実施例に代えて、図11の(1)〜(4)に示したように、各共振回路にわずかな値の抵抗R´を挿入することにより、共振回路をのQを小さくし、それにより反射抑制回路として機能する対応周波数範囲を広げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の概略構成図である。
【図2】雷サージが流入する配電系送電線の模擬モデル及びその等価回路を示す概略構成図である。
【図3】図2に示した分布定数系で構成される模擬の送電線にこの発明のLR並列回路を接続した概略構成図である。
【図4】この発明のLR並列回路がない場合の上記模擬の送電線の周波数応答特性を示すグラフ図ある。
【図5】LR並列回路のコイルの周波数特性において、1.7MHzに直列共振特性を持つようコイルの線長を調節したコイルの周波数特性を示すグラフ図である。
【図6】模擬の送電線にLR(R=180Ω)を接続したときの周波数応答特性を示すグラフ図である。
【図7】模擬送電線にLのみを接続したときの受電端電圧と電流波形を示すグラフ図である。
【図8】模擬送電線にLR(R=180Ω)並列回路を接続したときの受電端電圧と電流波形を示すグラフ図である。
【図9】模擬送電線のインパルス応答波形を示すグラフ図であり、(a)は印加インパルス波形、(b)はLR並列回路を接続していないときの受電端電圧波形、(c)はLR並列回路を接続したときの受電端電圧波形をそれぞれ示す
【図10】この発明の実施例における、反射抑制回路の構成具体例(1)から(4)を示す構成図である。
【図11】この発明の他の実施例における、反射抑制回路の構成具体例(1)から(4)を示す構成図である。
【符号の説明】
【0025】
L コイル
R 抵抗
R´ わずかな値の抵抗
C コンデンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系や接地系の電線路の分布定数によって生ずる共振と同じ共振周波数特性を持つコイルからなる共振回路及びこの共振回路に並列に接続した抵抗を設け、この共振回路の一端を配電系や接地系の電線路の終端に、他端を開放のまま接続することを特徴とする、高周波ノイズの反射抑制回路。
【請求項2】
上記共振回路が、コイルとコンデンサを直列に接続して成り、この共振回路に並列に抵抗を接続した構成であることを特徴とする、請求項1に記載の高周波ノイズの反射抑制回路。
【請求項3】
上記共振回路が、コイルとコンデンサを直列に接続して成り、この共振回路のコイルに並列に抵抗を接続した構成であることを特徴とする、請求項1に記載の高周波ノイズの反射抑制回路。
【請求項4】
上記共振回路が、コイルとコンデンサを直列に接続して成り、この共振回路のコンデンサに並列に抵抗を接続した構成であることを特徴とする、請求項1に記載の高周波ノイズの反射抑制回路。
【請求項5】
上記共振回路が、上記コイルと直列にわずかな値の抵抗を接続したことを特徴とする、上記請求項1、2、3及び4のいずれかに記載の高周波ノイズの反射抑制回路。
【請求項1】
配電系や接地系の電線路の分布定数によって生ずる共振と同じ共振周波数特性を持つコイルからなる共振回路及びこの共振回路に並列に接続した抵抗を設け、この共振回路の一端を配電系や接地系の電線路の終端に、他端を開放のまま接続することを特徴とする、高周波ノイズの反射抑制回路。
【請求項2】
上記共振回路が、コイルとコンデンサを直列に接続して成り、この共振回路に並列に抵抗を接続した構成であることを特徴とする、請求項1に記載の高周波ノイズの反射抑制回路。
【請求項3】
上記共振回路が、コイルとコンデンサを直列に接続して成り、この共振回路のコイルに並列に抵抗を接続した構成であることを特徴とする、請求項1に記載の高周波ノイズの反射抑制回路。
【請求項4】
上記共振回路が、コイルとコンデンサを直列に接続して成り、この共振回路のコンデンサに並列に抵抗を接続した構成であることを特徴とする、請求項1に記載の高周波ノイズの反射抑制回路。
【請求項5】
上記共振回路が、上記コイルと直列にわずかな値の抵抗を接続したことを特徴とする、上記請求項1、2、3及び4のいずれかに記載の高周波ノイズの反射抑制回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−42560(P2006−42560A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222770(P2004−222770)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(503018205)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(503018205)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【Fターム(参考)】
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