説明

高周波加熱装置の扉及びこの扉を備えた高周波加熱装置

【課題】 多開口金属板をドアフレームと別部材とすることにより、製造が簡単で設計や製造の自由度や視認性を高めることができ、その上電磁波の漏洩を防止することのできる高周波加熱装置の扉及びこの扉を備えた高周波加熱装置を提供する。
【解決手段】 周辺部にチョークカバー12で覆れたチョーク部6を有し中央に開口部5が設けられたドアフレーム3と、中央に開口部9を有しドアフレーム3が収容されるドアカバー8と、ドアフレーム3の庫外側及び開口部5を覆って設けられた外ガラス10及び内ガラス7と、多数の開口部を有しドアフレーム3の開口部5を覆って接合された多開口金属板15とを備え、この多開口金属板15をその全周にわたって使用高周波の波長の4分の1以下のピッチでドアフレーム3に接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被調理物を高周波により加熱する高周波加熱装置の扉及びこの扉を備えた高周波加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波加熱装置に、1枚板からなり周辺部にチョークカバーで保護された電磁波漏洩防止のためのチョーク部を有し、中心部に内部を視認するための多数の穴が型抜きされ、庫内側に内ガラスが取付けられたドアフレームを、外ガラスを介して内部視認用の開口部を有するドアカバーに取付けられた扉を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−141889号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の高周波加熱装置においては、扉のドアフレームに設けた視認用の多数の穴を型抜きによるいわゆるパンチング穴で形成する際、穴のゆがみをなくすために、板厚の厚い金属板を用いたり穴の間隔を大きくするなど、視認性が悪いばかりでなく製造時の制約事項が多く、穴の開口率を高めたり穴を丸形以外の複雑な形状にすることが困難であり、扉の視認部の設計の自由度が低いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、多開口金属板をドアフレームと別部材とすることにより、製造が簡単で設計や製造の自由度や視認性を高めることができ、その上電磁波の漏洩を防止することのできる高周波加熱装置の扉及びこの扉を備えた高周波加熱装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る高周波加熱装置の扉は、周辺部にチョークカバーで覆れたチョーク部を有し中央に開口部が設けられたドアフレームと、中央に開口部を有し前記ドアフレームが収容されるドアカバーと、前記ドアフレームの庫外側及び開口部を覆って設けられた外ガラス及び内ガラスと、多数の開口部を有し前記ドアフレームの開口部を覆って接合された多開口金属板とを備え、該多開口金属板をその全周にわたって使用高周波の波長の4分の1以下のピッチで前記ドアフレームに接合したものである。
また、本発明に係る高周波加熱装置は、上記の扉を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る高周波加熱装置の扉は、庫内を視認する開口部を有する多開口金属板を、ドアフレームと別部材で形成してドアフレームの開口部を覆って接合するようにしたので、視認のための開口部の寸法、形状、開口率を認意に定めることができ、これにより製造が容易であるばかりでなく、開口部の設計の自由度を高めることができる。
また、この多開口金属板を、全周にわたって使用高周波の波長の4分の1以下のピッチでドアフレームに接合するようにしたので、接合部からの電磁波の漏洩を防止することができる。
【0008】
また、本発明に係る高周波加熱装置は、上記の扉を備えたので、庫内の視認が容易で使い勝手がよく、その上安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の一実施の形態に係る高周波加熱装置の外観斜視図である。
高周波加熱装置の本体1の内部には加熱室(図示せず)が設けられており、加熱室の底面や側面に導波管を介して接続されたマグネトロンから発振されたマイクロ波や、加熱室の天面あるいは背面に設けられたヒータにより、加熱室内に収容された被調理物を加熱し、調理する。
【0010】
調理にあたっては、使用者が高周波加熱装置の本体1の前面側開口部に開閉自在に設けられた扉2を開けて被調理物を加熱室内に収容し、扉2を閉じて本体1の前面に設けた操作パネル14を操作し、また表示器の表示を確認して調理を行い、調理が終ったときは扉2を開いて被調理物を取出す。
【0011】
次に、上記の高周波加熱装置の扉2について、図2〜図4により説明する。なお、図2は図1の扉2の要部断面図、図3は図1の扉2の分解斜視図、図4は図2の多開口金属板の正面図である。
扉2を構成するドアフレーム3は、外周が櫛歯状に形成され、中央部に段部4を介して長方形状の開口部5が設けられ、また、周縁部には庫外側に突出する断面四角形状のチョーク部6が設けられて額縁状に形成されている。そして、段部4に囲まれ領域の庫内側には開口部5を覆うように内ガラス7がシリコン接着剤などにより接着されており、開口部5の庫外側には、ドアフレーム3と別部材からなり、内ガラス7と対向して多数の開口部17を有する多開口金属板15が接合されている。
【0012】
このように構成したドアフレーム3は、開口部9を有する額縁状のドアカバー8内に外ガラス10を介して収容されて固定される。これにより、ドアカバー8の開口部9、多開口金属板15、ドアフレーム3の開口部5を通して庫内を視認することができる。11はドアカバー8の庫外側上部に設けられた扉開閉用のハンドル、12は開口部13を有し、ドアフレーム3の庫内側に取付けられてチョーク部6を保護するチョークカバーである。
【0013】
上述の多開口金属板15は、図4に示すように、薄い金属板(例えば、板厚0.1〜1mm程度)からなり、外周縁の接合部16を除く領域には多数の小孔からなる開口部17(図には斜線で示してある)が設けられている。この開口部17は、例えば図5に示すように、円形の小孔17aを密に設けた集合体、あるいは図6に示すように、六角形の小孔17bを密に設けた集合体によって構成されている。これにより、この開口部17は、可視光を透過すると共に、電磁波の漏洩を防止することができるので、視認性と電磁波漏洩防止の両立をはかることができる。なお、上記の開口部17の小孔17a,17bの形状は一例を示すもので、他の形状であってもよい。
【0014】
上記のような多開口金属板15は外周部に設けた接合部16の全周にわたって、ドアフレーム3の開口部5の周縁の庫外側に、ピッチPにより例えばバーリングかしめの如き点接合18によって接合される。この場合、点接合18のピッチPは必ずしも一定である必要はないが、使用する高周波の波長の4分の1以下であることが必要である。
【0015】
発明者らは、使用周波数2.45GHz、1000W入力の電子レンジにおいて、汎用の鉄製のパンチングメタルを多開口金属板15として使用し、接合部16をバーリングかしめによってドアフレーム3に接合した扉2を用い、その点接合18のピッチPを種々変えた場合の電磁波漏洩量を測定した。なお、接合部16の点接合18以外の部分は、ドアフレーム3と多開口金属板15との間に意図的に0.1mm程度のすき間を設けた。これは製造上のばらつきやゆがみ等の影響を考慮したものである。
【0016】
測定結果を図7に示す。図から明らかなように、点接合18のピッチPが例えば110mmの場合は、電磁波漏洩量が50mW/cm2、60mmの場合は約32mW/cm2と多いが、ピッチPが35〜30mmになると電磁波漏洩量が急激に減少することがわかった。
この点接合18のピッチPの寸法35〜30mmは、使用高周波の波長の約4分の1にあたり、万一、多開口金属板15のドアフレーム3への接合あたり、ゆがみが発生した場合にも、点接合18のピッチPを使用高周波の波長の4分の1以下とすることにより、電磁波の漏洩を防止できる寸法に制限されることになるため、電子レンジにおける法規制値である電磁波漏洩量1.0mW/cm2以下に抑制することができる。
【0017】
上記の説明では、板厚の薄い金属板に密に設けた小孔の集合体により開口部17を形成した場合を示したが、枠状の接合部16の開口部に金網を取付けて多開口金属板15を形成してもよい。
また、多開口金属板15をバーリングかしめによりドアフレーム3に接合した場合を示したが、スポット溶接により接合してもよく、この場合も点接合18のピッチPは、使用高周波の波長の4分の1以下とすることが必要である。
【0018】
さらに、多開口金属板15(又は接合部16)をドアフレーム3と同種の材料で形成すれば、熱膨張率の差がなくなるため接合時のゆがみなどを防止することができるので、より効果的である。
また、庫内を視認するにあたり、多開口金属板に可視光を反射しにくい黒色などのつや消塗装をすれば、視認性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る高周波加熱装置の斜視図である。
【図2】図1の扉の要部断面図である。
【図3】図1の扉の分解斜視図である。
【図4】図2の多開口金属板の正面図である。
【図5】図4の多開口金属板の開口部の一例を示す説明図である。
【図6】図4の多開口金属板の開口部の他の例を示す説明図である。
【図7】多開口接合板をドアフレームに接合する点接合のピッチと電磁波漏洩量との関係を示す線図である。
【符号の説明】
【0020】
1 本体、2 扉、3 ドアフレーム、5 開口部、6 チョーク部、7 内ガラス、8 ドアカバー、9 開口部、10 外ガラス、12 チョークカバー、15 多開口金属板、16 接合部、17 開口部、18 点接合、P 点接合のピッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺部にチョークカバーで覆れたチョーク部を有し中央に開口部が設けられたドアフレームと、中央に開口部を有し前記ドアフレームが収容されるドアカバーと、前記ドアフレームの庫外側及び開口部を覆って設けられた外ガラス及び内ガラスと、多数の開口部を有し前記ドアフレームの開口部を覆って接合された多開口金属板とを備え、
該多開口金属板をその全周にわたって使用高周波の波長の4分の1以下のピッチで前記ドアフレームに接合したことを特徴とする高周波加熱装置の扉。
【請求項2】
前記多開口金属板を、バーリングかしめ又はスポット溶接によりドアフレームに接合したことを特徴とする請求項1記載の高周波加熱装置の扉。
【請求項3】
前記多開口金属板の開口部を、円形又は六角形の小孔の密集体で形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の高周波加熱装置の扉。
【請求項4】
前記多開口金属板を、ドアフレームと同じ金属材料で形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高周波加熱装置の扉。
【請求項5】
前記多開口金属板を、可視光を反射しにくい色に塗装したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高周波加熱装置の扉。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの扉を備えたことを特徴とする高周波加熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−266525(P2006−266525A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81502(P2005−81502)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】